車両の動力伝達制御装置
【課題】動力源として内燃機関と電動機とを備えた車両に適用される車両の動力伝達制御装置において、電動機の出力軸の接続状態を適切に選択して、電動機の状態、或いは電動機に電気エネルギを供給する電池の状態を良好に維持すること。
【解決手段】この装置は、電動機出力軸の接続状態を、変速機の入力軸と電動機出力軸との間で動力伝達系統が形成される「IN接続状態」、変速機出力軸と電動機出力軸との間で動力伝達系統が形成される「OUT接続状態」、いずれの間にも動力伝達系統が形成されない「ニュートラル状態」の3つの状態の何れかに選択可能な切替機構を備える。この選択は、車速Vと要求駆動トルクTとの組み合わせ(領域)に基づいてなされる。係る選択の際、電池温度が高いほど、電動機温度が高いほど、又は、電池残量が大きいほど、ニュートラル領域が拡大されて、ニュートラル状態が選択され易くなる。
【解決手段】この装置は、電動機出力軸の接続状態を、変速機の入力軸と電動機出力軸との間で動力伝達系統が形成される「IN接続状態」、変速機出力軸と電動機出力軸との間で動力伝達系統が形成される「OUT接続状態」、いずれの間にも動力伝達系統が形成されない「ニュートラル状態」の3つの状態の何れかに選択可能な切替機構を備える。この選択は、車速Vと要求駆動トルクTとの組み合わせ(領域)に基づいてなされる。係る選択の際、電池温度が高いほど、電動機温度が高いほど、又は、電池残量が大きいほど、ニュートラル領域が拡大されて、ニュートラル状態が選択され易くなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の動力伝達制御装置に関し、特に、動力源として内燃機関と電動機とを備えた車両に適用されるものに係わる。
【背景技術】
【0002】
近年、動力源として内燃機関と電動機(電動モータ、電動発電機)とを備えた所謂ハイブリッド車両が開発されてきている(例えば、特許文献1を参照)。ハイブリッド車両では、電動機が、内燃機関と協働又は単独で、車両を駆動する駆動トルクを発生する動力源として、或いは、内燃機関を始動するための動力源として使用される。加えて、電動機が、車両を制動する回生トルクを発生する発電機として、或いは、車両のバッテリに供給・貯留される電気エネルギを発生する発電機として使用される。このように電動機を使用することで、車両全体としての総合的なエネルギ効率(燃費)を良くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−224710号公報
【発明の概要】
【0004】
ところで、ハイブリッド車両では、電動機の出力軸と変速機の入力軸との間で動力伝達系統が形成される接続状態(以下、「IN接続状態」と称呼する。)が採用される場合と、電動機の出力軸と変速機の出力軸(従って、駆動輪)との間で変速機を介することなく動力伝達系統が形成される接続状態(以下、「OUT接続状態」と称呼する。)が採用される場合と、がある。
【0005】
IN接続状態では、変速機の変速段を変更することで、車両速度に対する電動機の出力軸の回転速度を変更することができる。従って、変速機の変速段を調整することで、電動機の出力軸の回転速度をエネルギ変換効率(より具体的には、駆動トルク、回生トルク等の発生効率)が良好となる範囲内に維持し易いというメリットがある。
【0006】
一方、OUT接続状態では、動力伝達系統が複雑な機構を有する変速機を介さないから、動力の伝達損失を小さくできるというメリットがある。また、変速機(特に、トルクコンバータを備えない形式の変速機)では、通常、変速作動中(変速段を切り替える作動中)において、変速機の入力軸から出力軸への動力の伝達が一時的に遮断される場合が多い。この結果、車両前後方向の加速度の急激な変化(所謂変速ショック)が発生し易い。このような変速作動中においても、OUT接続状態では、電動機の駆動トルクを変速機の出力軸(従って、駆動輪)へ連続して出力し続けることができ、変速ショックを低減できるというメリットもある。
【0007】
以上のことに鑑み、本出願人は、特願2007−271566号において、電動機の出力軸の接続状態をIN接続状態とOUT接続状態とに切り替え可能な切替機構について既に提案している。この切替機構は、電動機の出力軸の接続状態を、電動機の出力軸と変速機の入力軸との間も電動機の出力軸と変速機の出力軸との間も動力伝達系統が形成されない状態(以下、「非接続状態」と称呼する。)に切り替えることも可能である。
【0008】
ところで、電動機に電気エネルギを供給する電池(通常は、二次電池)、及び、電動機の保護等のため、電池の温度及び電動機の温度(例えば、コイル部の温度)が過度に高くならないように(駆動源、或いは発電機として)電動機を作動させることが好ましい。また、電池に蓄積されているエネルギの量(以下、「電池残量」と称呼する。)が十分に大きい場合、電池を更に充電する必要性が低い。
【0009】
他方、非接続状態では、IN接続状態及びOUT接続状態とは異なり、電動機の動力源としての駆動及び発電機としての駆動が中止されて電動機の出力軸の回転が停止され得る。この状態では、電池の温度及び電動機の温度の上昇が抑制され得、また、電池が充電され得ない。従って、電池の温度が高い場合、電動機の温度が高い場合、或いは、電池残量が大きい場合、非接続状態が選択される時間を長くする(選択される頻度を多くする)ことが好ましいと考えられる。
【0010】
本発明の目的は、動力源として内燃機関と電動機とを備えた車両に適用される車両の動力伝達制御装置であって、電動機の出力軸の接続状態を適切に選択して、電動機の状態、或いは電動機に電気エネルギを供給する電池の状態を良好に維持できるものを提供することにある。
【0011】
本発明による車両の動力伝達制御装置は、変速機と、切替機構と、状態量取得手段と、制御手段とを備える。以下、順に説明していく。
【0012】
前記変速機は、前記内燃機関の出力軸との間で動力伝達系統が形成される入力軸と、前記車両の駆動輪との間で動力伝達系統が形成される出力軸とを備え、前記出力軸の回転速度に対する前記入力軸の回転速度の割合(変速機減速比)を調整可能に構成されている。ここにおいて、前記変速機は、前記変速機減速比として予め定められた異なる複数の減速比を設定可能な多段変速機であっても、前記変速機減速比として減速比を連続的に(無段階に)調整可能な無段変速機であってもよい。
【0013】
また、前記変速機は、トルクコンバータを備えるとともに車両の走行状態に応じて変速作動が自動的に実行される多段変速機又は無段変速機(所謂オートマチックトランスミッション(AT))であっても、トルクコンバータを備えない多段変速機(所謂マニュアルトランスミッション(MT))であってもよい。MTの場合、運転者によるシフトレバーの操作力により直接的に変速作動が実行される形式であっても、運転者により操作されるシフトレバーの位置を示す信号に基づいてアクチュエータの駆動力により変速作動が実行される形式であっても、運転者によるシフトレバー操作によらず車両の走行状態に応じてアクチュエータの駆動力により変速作動が自動的に実行され得る形式(所謂、オートメイティッド・マニュアル・トランスミッション)であってもよい。
【0014】
前記切替機構は、前記電動機の出力軸の接続状態を、前記電動機の出力軸と前記変速機の入力軸との間で動力伝達系統が形成される入力側接続状態(IN接続状態)と、前記電動機の出力軸と前記駆動輪との間で前記変速機を介することなく動力伝達系統が形成される出力側接続状態(OUT接続状態)と、前記電動機の出力軸と前記変速機の入力軸との間も前記電動機の出力軸と前記変速機の出力軸との間も動力伝達系統が形成されない非接続状態とのうちで非接続状態を含む2以上の状態に切り替え可能である。即ち、前記切替機構として、IN接続状態及び非接続状態のみに切替可能なもの、OUT接続状態及び非接続状態のみに切替可能なもの、IN接続状態、OUT接続状態、及び非接続状態の何れにも切り替え可能なものが挙げられる。
【0015】
IN接続状態では、通常、前記変速機の入力軸の回転速度に対する前記電動機の出力軸の回転速度の割合(以下、「第1減速比」と称呼する。)が一定(例えば、1)に固定される。以下、IN接続状態における「第1減速比」と「変速機減速比」との積を「IN接続減速比」と称呼する。「IN接続減速比」は、変速機の変速作動による「変速機減速比」の変化に合わせて変化する。一方、OUT接続状態では、通常、前記変速機の出力軸の回転速度に対する前記電動機の出力軸の回転速度の割合が一定(例えば、1よりも大きい値、2速に相当する変速機減速比の近傍の値など)に固定される。以下、この割合を「OUT接続減速比」と称呼する。「OUT接続減速比」は、「変速機減速比」が変化しても一定に維持される。なお、通常、前記変速機の入力軸の回転速度に対する前記内燃機関の出力軸の回転速度の割合は一定(例えば、1)とされる。
【0016】
状態量取得手段では、前記電動機に電気エネルギを供給する電池の温度、前記電動機の温度、及び、前記電池に蓄積されているエネルギの量(電池残量)のうちの1つ以上が状態量として取得される。
【0017】
制御手段では、前記状態量と、前記状態量以外の前記車両の走行状態を表すパラメータとに基づいて、前記状態量に応じて前記非接続状態の選択のされ易さが変化するように(選択される時間が変化するように、選択される頻度が変化するように)前記電動機の出力軸の接続状態が選択され、前記電動機の出力軸の接続状態が前記選択された状態になるように前記切替機構が制御される。具体的には、電池の温度そのもの、電動機の温度そのもの、電池残量そのもの、電池の温度と電動機の温度と電池残量とのうちの2つ以上の組み合わせから算出される値等、に応じて、非接続状態の選択のされ易さが変化する。なお、非接続状態では、電動機の動力源としての駆動及び発電機としての駆動が中止されて電動機の出力軸の回転が停止され得る。
【0018】
前記車両の走行状態を表すパラメータとしては、前記車両の速度に相関する値、前記車両の運転者による加速操作部材の操作に基づいて得られる要求駆動トルクに相関する値等が挙げられる。前記車両の速度に相関する値としては、前記車両の速度そのもの、前記変速機の入力軸の回転速度、前記内燃機関の出力軸の回転速度、及び前記電動機の出力軸の回転速度等が挙げられる。前記要求駆動トルクに相関する値としては、前記加速操作部材の操作量、及び前記内燃機関の吸気通路に配設されたスロットル弁の開度等が挙げられる。
【0019】
上記構成によれば、前記状態量に応じて非接続状態の選択のされ易さが変化する。従って、例えば、電池の温度が高い場合、電動機の温度が高い場合、或いは、電池残量が大きい場合において、非接続状態が選択される時間が長くされ得る(選択される頻度が多くされ得る)。この結果、電動機の動力源としての駆動及び発電機としての駆動が中止されて電動機の出力軸の回転が停止される時間が長くなるから、電池の温度、又は電動機の温度の上昇が抑制され得、また、電池が更に不必要に充電されることがない。即ち、電動機の状態、或いは電池の状態を良好に維持することができる。
【0020】
より具体的には、前記制御手段は、前記車両の速度に相関する値が増大しながら閾値を通過したことに基づいて前記電動機の出力軸の接続状態を前記非接続状態以外の接続状態(即ち、IN接続状態又はOUT接続状態)から前記非接続状態に切り替える場合、前記電池の温度が高いほど、前記電動機の温度が高いほど、又は、前記電池残量が大きいほど、前記閾値がより小さい値になるように前記閾値を調整するように構成されることが好適である。これによれば、車両速度が増大する過程において、電池の温度が高いほど、電動機の温度が高いほど、又は、電池残量が大きいほど、非接続状態以外の接続状態から非接続状態に移行するタイミングが早まる。即ち、非接続状態が選択されている時間が長くなる。この結果、電池の温度、又は電動機の温度の上昇が抑制され得、また、電池が更に不必要に充電されることが抑制され得る。
【0021】
同様に、前記制御手段は、前記車両の運転者による加速操作部材の操作に基づいて得られる要求駆動トルクに相関する値が増大しながら閾値を通過したことに基づいて前記電動機の出力軸の接続状態を前記非接続状態以外の接続状態(即ち、IN接続状態又はOUT接続状態)から前記非接続状態に切り替える場合、前記電池の温度が高いほど、前記電動機の温度が高いほど、又は、前記電池残量が大きいほど、前記閾値がより小さい値になるように前記閾値を調整するように構成されることが好適である。これによれば、要求駆動トルクが増大する過程において、電池の温度が高いほど、電動機の温度が高いほど、又は、電池残量が大きいほど、非接続状態以外の接続状態から非接続状態に移行するタイミングが早まる。即ち、非接続状態が選択されている時間が長くなる。この結果、電池の温度、又は電動機の温度の上昇が抑制され得、また、電池が更に不必要に充電されることが抑制され得る。
【0022】
これらの場合において、前記制御手段は、前記電池の温度が第1所定値以上の場合、又は、前記電動機の温度が第2所定値以上の場合、前記電動機の出力軸の接続状態を前記非接続状態に常に固定するように構成され得る。これによれば、電池の温度、又は電動機の温度が相当に高くなった場合において、非接続状態が常に選択される。この結果、電池の温度、又は電動機の温度の更なる上昇が確実に抑制され得る。
【0023】
また、前記制御手段は、前記車両の速度に相関する値が増大しながら第1閾値を通過したことに基づいて前記電動機の出力軸の接続状態をIN接続状態(以下、「第1IN接続状態」とも呼ぶ。)からOUT接続状態に切り替え、前記車両の速度に相関する値が増大しながら前記第1閾値よりも大きい第2閾値を通過したことに基づいて前記電動機の出力軸の接続状態をOUT接続状態からIN接続状態(以下、「第2IN接続状態」とも呼ぶ。)に切り替え、前記要求駆動トルクに相関する値が第4閾値よりも大きい場合において前記車両の速度に相関する値が増大しながら前記第2閾値よりも大きい第3閾値を通過したこと又は前記車両の速度に相関する値が前記第3閾値よりも大きい場合において前記要求駆動トルクに相関する値が増大しながら前記第4閾値を通過したことに基づいて前記電動機の出力軸の接続状態を(第2)IN接続状態から非接続状態に切り替えるように構成され得る。この場合、前記電池の温度が高いほど、前記電動機の温度が高いほど、又は、前記電池残量が大きいほど、前記第3、第4閾値がより小さい値になるように前記第3、第4閾値を調整するように構成されることが好適である。ここにおいて、前記第1、第2、第3閾値は、前記要求駆動トルクに応じて変化する値であっても一定であってもよい。前記第4閾値は、前記車両の速度に相関する値に応じて変化する値であっても一定であってもよい。
【0024】
これによれば、車両速度が増大する過程において、電池の温度が高いほど、電動機の温度が高いほど、又は、電池残量が大きいほど、(第2)IN接続状態から非接続状態に移行するタイミングが早まり、或いは、要求駆動トルクが増大する過程において、電池の温度が高いほど、電動機の温度が高いほど、又は、電池残量が大きいほど、(第2)IN接続状態から非接続状態に移行するタイミングが早まる。即ち、非接続状態が選択されている時間が長くなる。この結果、電池の温度、又は電動機の温度の上昇が抑制され得、また、電池が更に不必要に充電されることが抑制され得る。
【0025】
この場合において、前記制御手段は、前記電池の温度が第1所定値以上の場合、又は、前記電動機の温度が第2所定値以上の場合、前記車両の速度に相関する値が前記第2閾値以上の状態では前記電動機の出力軸の接続状態を前記非接続状態に固定するように構成され得る。これによれば、電池の温度、又は電動機の温度が相当に高くなった場合において、(第2)IN接続状態が選択されている期間が消滅するから、非接続状態が選択される時間が長くなる。この結果、電池の温度、又は電動機の温度の更なる上昇が確実に抑制され得る。
【0026】
更には、前記制御手段は、前記電池の温度が第1所定値以上の場合、又は、前記電動機の温度が第2所定値以上の場合、前記車両の速度に相関する値及び前記要求駆動トルクに相関する値に依存することなく前記電動機の出力軸の接続状態を前記非接続状態に常に固定するように構成されてもよい。これによれば、電池の温度、又は電動機の温度が相当に高くなった場合において、非接続状態が常に選択される。この結果、電池の温度、又は電動機の温度の更なる上昇が確実に抑制され得る。
【0027】
以上、本発明に係る動力伝達制御装置は、上述したオートメイティッド・マニュアル・トランスミッション)に適用されることが好適である。この場合、前記内燃機関の出力軸と前記変速機の入力軸との間に、前記内燃機関の出力軸と前記変速機の入力軸との間の動力伝達系統を遮断・接続するクラッチ機構が備えられ、前記変速機は、トルクコンバータを備えておらず、且つ、前記変速機減速比として予め定められた異なる複数の減速比を設定可能な多段変速機であり、前記制御手段は、前記車両の運転状態(例えば、車両速度及び要求駆動トルク)に応じて、前記クラッチ機構の遮断・接続、及び前記変速機の変速段を制御するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る車両の動力伝達制御装置を搭載した車両の概略構成図である。
【図2】図1に示した変速機内の第1切替機構において切り替え可能な3状態を示した図である。
【図3】図1に示した変速機内の第2切替機構において切り替え可能な3状態を示した図である。
【図4】図1に示した変速機内の第3切替機構において切り替え可能な2状態を示した図である。
【図5】図1に示したモータジェネレータにおける、回転速度と、発生し得る最大トルク及びエネルギ変換効率との関係を示したグラフである。
【図6】図1に示した切替機構において切り替え可能な3状態を示した図である。
【図7】図1に示した実施形態における、車速及び要求駆動トルクと、選択される変速機の変速段との関係を示したグラフである。
【図8】図1に示した実施形態における、車速及び要求駆動トルクと、切替機構において選択される接続状態との関係を示したグラフである。
【図9】図1に示した実施形態における、バッテリ温度と、境界線の移動量との関係を示したグラフである。
【図10】図1に示した実施形態における、M/G温度と、境界線の移動量との関係を示したグラフである。
【図11】図1に示した実施形態における、バッテリ残量と、境界線の移動量との関係を示したグラフである。
【図12】図1に示した実施形態の変形例における、M/G温度又はバッテリ温度が所定値以上の場合での、車速及び要求駆動トルクと、切替機構において選択される接続状態との関係を示したグラフである。
【図13】図1に示した実施形態の他の変形例における、M/G温度又はバッテリ温度が所定値以上の場合での、車速及び要求駆動トルクと、切替機構において選択される接続状態との関係を示したグラフである。
【図14】図1に示した実施形態の変形例における、バッテリ温度と、境界線の移動量との関係を示したグラフである。
【図15】図1に示した実施形態の変形例における、M/G温度と、境界線の移動量との関係を示したグラフである。
【図16】図1に示した実施形態の変形例における、バッテリ残量と、境界線の移動量との関係を示したグラフである。
【図17】図1に示した実施形態の変形例における、車速及び要求駆動トルクと、切替機構において選択される接続状態との関係を規定する複数のマップのうちのマップAを示したグラフである。
【図18】図1に示した実施形態の変形例における、車速及び要求駆動トルクと、切替機構において選択される接続状態との関係を規定する複数のマップのうちのマップBを示したグラフである。
【図19】図1に示した実施形態の変形例における、車速及び要求駆動トルクと、切替機構において選択される接続状態との関係を規定する複数のマップのうちのマップCを示したグラフである。
【図20】図1に示した実施形態の変形例における、車速及び要求駆動トルクと、切替機構において選択される接続状態との関係を規定する複数のマップのうちのマップDを示したグラフである。
【図21】図1に示した実施形態の変形例における、車速及び要求駆動トルクと、切替機構において選択される接続状態との関係を規定する複数のマップのうちのマップEを示したグラフである。
【図22】バッテリ温度、M/G温度、及びバッテリ残量と、マップA〜Eのうちで選択されるマップとの関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明による車両の動力伝達制御装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0030】
(構成)
図1は、本発明の実施形態に係る動力伝達制御装置(以下、「本装置」と称呼する。)を搭載した車両の概略構成を示している。この車両は、動力源として内燃機関とモータジェネレータとを備え、且つ、トルクコンバータを備えない多段変速機を使用した所謂オートメイティッド・マニュアル・トランスミッションを備えた車両に適用されている。
【0031】
この車両は、エンジン(E/G)10と、変速機(T/M)20と、クラッチ(C/T)30と、モータジェネレータ(M/G)40と、切替機構50とを備えている。E/G10は、周知の内燃機関の1つであり、例えば、ガソリンを燃料として使用するガソリンエンジン、軽油を燃料として使用するディーゼルエンジンである。E/G10の出力軸A1は、C/T30を介してT/M20の入力軸A2と接続されている。
【0032】
T/M20は、前進用に5つの変速段(1速、2速、3速、4速、5速)を有するトルクコンバータを備えない周知の多段変速機の1つである。即ち、T/M20は、出力軸A3の回転速度に対する入力軸A2の回転速度の割合である変速機減速比Gtmを5段階に設定可能となっている。変速段の切り替えは、第1、第2、第3切替機構21,22,23を制御することで達成される。
【0033】
より具体的には、図2に示すように、第1切替機構21は、入力軸A2に相対回転不能に軸支されたギヤG11と、出力軸A3に相対回転可能に軸支されギヤG11に常時歯合するギヤG12と、入力軸A2に相対回転不能に軸支されたギヤG21と、出力軸A3に相対回転可能に軸支されギヤG21に常時歯合するギヤG22とを備える。また、第1切替機構21は、出力軸A3と一体回転する連結ピース21aと、ギヤG12と一体回転する連結ピース21bと、ギヤG22と一体回転する連結ピース21cと、スリーブ21dと、アクチュエータ24とを備える。
【0034】
スリーブ21dは、出力軸A3の軸線方向に移動可能に配設されていて、アクチュエータ24によりその軸線方向の位置が制御されるようになっている。スリーブ21dは、連結ピース21a,21b,21cとスプライン嵌合可能となっている。スリーブ21dが図2(a)に示す非接続位置(ニュートラル位置)にある場合、スリーブ21dは、連結ピース21aのみとスプライン嵌合するから、ギヤG12,G22共に出力軸A3と相対回転可能となる。スリーブ21dが図2(b)に示す1速接続位置にある場合、スリーブ21dは、連結ピース21a及び21bとスプライン嵌合するから、ギヤG22が出力軸A3と相対回転可能である一方、ギヤG12が出力軸A3と相対回転不能となる。スリーブ21dが図2(c)に示す2速接続位置にある場合、スリーブ21dは、連結ピース21a及び21cとスプライン嵌合するから、ギヤG12が出力軸A3と相対回転可能である一方、ギヤG22が出力軸A3と相対回転不能となる。
【0035】
図3に示すように、第2切替機構22は、入力軸A2に相対回転可能に軸支されたギヤG31と、出力軸A3に相対回転不能に軸支されギヤG31に常時歯合するギヤG32と、入力軸A2に相対回転可能に軸支されたギヤG41と、出力軸A3に相対回転不能に軸支されギヤG41に常時歯合するギヤG42とを備える。また、第2切替機構22は、入力軸A2と一体回転する連結ピース22aと、ギヤG31と一体回転する連結ピース22bと、ギヤG41と一体回転する連結ピース22cと、スリーブ22dと、アクチュエータ25とを備える。
【0036】
スリーブ22dは、入力軸A2の軸線方向に移動可能に配設されていて、アクチュエータ25によりその軸線方向の位置が制御されるようになっている。スリーブ22dは、連結ピース22a,22b,22cとスプライン嵌合可能となっている。スリーブ22dが図3(a)に示す非接続位置(ニュートラル位置)にある場合、スリーブ22dは、連結ピース22aのみとスプライン嵌合するから、ギヤG31,G41共に入力軸A2と相対回転可能となる。スリーブ22dが図3(b)に示す3速接続位置にある場合、スリーブ22dは、連結ピース22a及び22bとスプライン嵌合するから、ギヤG41が入力軸A2と相対回転可能である一方、ギヤG31が入力軸A2と相対回転不能となる。スリーブ22dが図3(c)に示す4速接続位置にある場合、スリーブ22dは、連結ピース22a及び22cとスプライン嵌合するから、ギヤG31が入力軸A2と相対回転可能である一方、ギヤG41が入力軸A2と相対回転不能となる。
【0037】
図4に示すように、第3切替機構23は、入力軸A2に相対回転可能に軸支されたギヤG51と、出力軸A3に相対回転不能に軸支されギヤG51に常時歯合するギヤG52と、を備える。また、第3切替機構23は、入力軸A2と一体回転する連結ピース23aと、ギヤG51と一体回転する連結ピース23bと、スリーブ23dと、アクチュエータ26とを備える。
【0038】
スリーブ23dは、入力軸A2の軸線方向に移動可能に配設されていて、アクチュエータ26によりその軸線方向の位置が制御されるようになっている。スリーブ23dは、連結ピース23a,23bとスプライン嵌合可能となっている。スリーブ23dが図4(a)に示す非接続位置(ニュートラル位置)にある場合、スリーブ23dは、連結ピース23aのみとスプライン嵌合するから、ギヤG51が入力軸A2と相対回転可能となる。スリーブ23dが図4(b)に示す5速接続位置にある場合、スリーブ23dは、連結ピース23a及び23bとスプライン嵌合するから、ギヤG51が入力軸A2と相対回転不能となる。
【0039】
変速段が「1速」に設定される場合、切替機構21,22,23がそれぞれ、「1速接続位置」、「ニュートラル位置」、「ニュートラル位置」に制御される。これにより、ギヤG11,G12を介して入力軸A2と出力軸A3との間で動力伝達系統が形成され、Gtmは、(G12の歯数)/(G11の歯数)となる。この値をGtm(1)とも表記する。変速段が「2速」に設定される場合、切替機構21,22,23がそれぞれ、「2速接続位置」、「ニュートラル位置」、「ニュートラル位置」に制御される。これにより、ギヤG21,G22を介して入力軸A2と出力軸A3との間で動力伝達系統が形成され、Gtmは、(G22の歯数)/(G21の歯数)となる。この値をGtm(2)とも表記する。
【0040】
変速段が「3速」に設定される場合、切替機構21,22,23がそれぞれ、「ニュートラル位置」、「3速接続位置」、「ニュートラル位置」に制御される。これにより、ギヤG31,G32を介して入力軸A2と出力軸A3との間で動力伝達系統が形成され、Gtmは、(G32の歯数)/(G31の歯数)となる。この値をGtm(3)とも表記する。変速段が「4速」に設定される場合、切替機構21,22,23がそれぞれ、「ニュートラル位置」、「4速接続位置」、「ニュートラル位置」に制御される。これにより、ギヤG41,G42を介して入力軸A2と出力軸A3との間で動力伝達系統が形成され、Gtmは、(G42の歯数)/(G41の歯数)となる。この値をGtm(4)とも表記する。
【0041】
変速段が「5速」に設定される場合、切替機構21,22,23がそれぞれ、「ニュートラル位置」、「ニュートラル位置」、「5速接続位置」に制御される。これにより、ギヤG51,G52を介して入力軸A2と出力軸A3との間で動力伝達系統が形成され、Gtmは、(G52の歯数)/(G51の歯数)となる。この値をGtm(5)とも表記する。以上、T/M20では、アクチュエータ24,25,26を制御することで、変速機減速比Gtmを5段階に設定可能となっている。ここで、Gtm(1)>Gtm(2)>Gtm(3)>Gtm(4)>Gtm(5)という関係が成立している。
【0042】
C/T30は、周知の構成の1つを備えていて、E/G10の出力軸A1とT/M20の入力軸A2との間の動力伝達系統を遮断・接続可能となっている。この車両では、クラッチペダルは設けられていない。C/T30の状態は、アクチュエータ31のみにより制御されるようになっている。C/T30が接続状態となっている場合において、E/G10の出力軸A1とT/M20の入力軸A2とは同じ回転速度で回転する。
【0043】
M/G40は、周知の構成(例えば、交流同期モータ)の1つを有していて、ロータ41が、T/M20の入力軸A2と同軸的且つ相対回転可能に配置された出力軸A4と一体回転するようになっている。M/G40は、動力源としても発電機としても機能する。
【0044】
図5は、M/G40の出力軸A4の回転速度と、発生し得る最大トルク及びエネルギ変換効率(トルクの発生効率)との関係を示す。図5に示すように、M/G40では、発生し得る最大トルクは、出力軸A4の回転速度が或る値以下では一定であり、或る値を超えると、回転速度の増大に応じて小さくなる。そして、回転速度が許容回転速度を超えると、M/G40はトルクを発生しなくなる。また、エネルギ変換効率(トルクの発生効率)は、出力軸A4の回転速度が或る値で最大となり得、回転速度がその値から離れるに従って小さくなっていく。従って、回転速度が許容回転速度に近づくにつれて低下していく。
【0045】
切替機構50は、M/G40の出力軸A4の接続状態を切り替える機構である。切替機構50は、ロータ41と一体回転する連結ピース51と、T/M20の入力軸A2と一体回転する連結ピース52と、入力軸A2に相対回転可能に軸支された連結ピース53と、スリーブ54と、アクチュエータ55とを備える。また、切替機構50は、連結ピース53と一体回転するとともに入力軸A2に相対回転可能に軸支されたギヤGo1と、T/M20の出力軸A3と一体回転するとともにギヤGo1に常時歯合するギヤGo2とを備える。
【0046】
スリーブ54は、T/M20の入力軸A2の軸線方向に移動可能に配設されていて、アクチュエータ55によりその軸線方向の位置が制御されるようになっている。スリーブ54は、連結ピース51,52,53とスプライン嵌合可能となっている。
【0047】
スリーブ54が図6(a)に示すIN接続位置に制御される場合、スリーブ54は、連結ピース51,52とスプライン嵌合するから、M/G40の出力軸A4とT/M20の入力軸A2とが相対回転不能となる。これにより、T/M20の入力軸A2と出力軸A4との間で動力伝達系統が形成される。この状態を「IN接続状態」と呼ぶ。
【0048】
IN接続状態において、T/M20の入力軸A2の回転速度に対するM/G40の出力軸A4の回転速度の割合を「第1減速比G1」と呼び、第1減速比G1と変速機減速比Gtmとの積(G1・Gtm)を「IN接続減速比Gin」と呼ぶ。本例では、G1=1であるから、Gin=Gtmとなる。即ち、Ginは、T/M20の変速段の変化に応じて変化する。
【0049】
また、スリーブ54が図6(b)に示すOUT接続位置に制御される場合、スリーブ54は、連結ピース51,53とスプライン嵌合するから、M/G40の出力軸A4とギヤGo1とが相対回転不能となる。これにより、ギヤGo1,Go2を介してT/M20の出力軸A3と出力軸A4との間でT/M20を介することなく動力伝達系統が形成される。この状態を「OUT接続状態」と呼ぶ。
【0050】
OUT接続状態において、T/M20の出力軸A3の回転速度に対するM/G40の出力軸A4の回転速度の割合を「OUT接続減速比Gout」と呼ぶ。本例では、Goutは、(Go2の歯数)/(Go1の歯数)で一定となる。即ち、Goutは、T/M20の変速段の変化に応じて変化しない。本例では、Goutは、例えば、Gtm(2)と略等しい値に設定されている。
【0051】
また、スリーブ54が図6(c)に示す非接続位置(ニュートラル位置)に制御される場合、スリーブ54は、連結ピース51のみとスプライン嵌合するから、入力軸A2及びギヤGo1共に出力軸A4と相対回転可能となる。これにより、T/M20の出力軸A3と出力軸A4との間でもT/M20の入力軸A2と出力軸A4との間でも動力伝達系統が形成されない。この状態を「非接続状態(ニュートラル状態)」と呼ぶ。
【0052】
以上、切替機構50では、アクチュエータ55を制御することで、M/G40の出力軸A4の接続状態を、「IN接続状態」、「OUT接続状態」、「ニュートラル状態」の何れかに選択的に切り替え可能となっている。
【0053】
T/M20の出力軸A3には、ギヤGf1が相対回転不能に軸支されている。このギヤGf1は、ギヤGf2と常時歯合している。このギヤGf2は、周知の構成の1つを有する差動機構D/Fと連結されていて、差動機構D/Fは、左右1対の駆動輪と連結されている。ここで、(Gf2の歯数)/(Gf1の歯数)は、所謂最終減速比に相当する。
【0054】
また、本装置は、駆動輪の車輪速度を検出する車輪速度センサ61と、アクセルペダルAPの操作量を検出するアクセル開度センサ62と、シフトレバーSFの位置を検出するシフト位置センサ63と、M/G40に電気エネルギを供給する二次電池(バッテリB)の温度を検出するバッテリ温度センサ68と、M/G40の温度(特に、コイル部の温度)を検出するM/G温度センサ69を備えている。
【0055】
更に、本装置は、電子制御ユニットECU70を備えている。ECU70は、上述のセンサ61〜63、68、69からの情報等に基づいて、上述のアクチュエータ24,25,26,31,55を制御することで、T/M20の変速段、及びC/T30の状態を制御する。加えて、ECU70は、E/G10、及びM/G40のそれぞれの出力(駆動トルク)、並びにバッテリBの充電状態等を制御するようになっている。
【0056】
T/M20の変速段は、車輪速度センサ61から得られる車速Vと、アクセル開度センサ62から得られる運転者によるアクセルペダルAPの操作量に基づいて算出される駆動輪の要求駆動トルクTと、シフト位置センサ63から得られるシフトレバーSFの位置に基づいて制御される。シフトレバーSFの位置が「手動モード」に対応する位置にある場合、T/M20の変速段が、シフトレバーSFの操作により運転者により選択された変速段に原則的に設定される。一方、シフトレバーSFの位置が「自動モード」に対応する位置にある場合、T/M20の変速段が、車速Vと要求駆動トルクTとの組み合わせと、図7に示すマップと、に従って、シフトレバーSFが操作されることなく1速〜5速の何れかに自動的に制御される。
【0057】
図7において、実線は、車速Vの増大に伴ってシフトアップ(変速機減速比Gtmを小さくする変速作動)がなされる場合に対応する境界線であり、破線は、車速Vの減少に伴ってシフトダウン(変速機減速比Gtmを大きくする変速作動)がなされる場合に対応する境界線である。このように実線と破線の位置に差Δxが設けられているのは、車速Vが実線に対応する値の近傍で頻繁に増減するような場合において、シフトアップ、或いはシフトダウンが不必要に頻繁になされる事態(所謂ハンチング)の発生を抑制するためである。
【0058】
C/T30は、通常、接続状態に維持され、T/M20のシフトアップ・シフトダウンの作動中等において一時的に接続状態から遮断状態へと切り換えられる。
【0059】
M/G40は、E/G10と協働又は単独で、車両を駆動する駆動トルクを発生する動力源として、或いは、E/G10を始動するための動力源として使用される。また、M/G40は、車両を制動する回生トルクを発生する発電機として、或いは、車両のバッテリ(図示せず)に供給・貯留される電気エネルギを発生する発電機としても使用される。
【0060】
M/G40が車両を駆動する動力源として使用される場合、周知の手法の1つに従って、駆動輪に伝達されるE/G10の出力に基づく駆動トルクと駆動輪に伝達されるM/G40の出力に基づく駆動トルクの和が要求駆動トルクTと一致するように、E/G10の出力(駆動トルク)とM/G40の出力(駆動トルク)との配分が調整される。
【0061】
(M/G40の出力軸A4の接続状態の選択)
次に、M/G40の出力軸A4の接続状態の選択について説明する。M/G40の出力軸A4の接続状態は、車速Vと要求駆動トルクTとの組み合わせと、図8に示すマップと、に従って、自動的に選択される。
【0062】
図8に示すように、車速Vと要求駆動トルクTとの組み合わせに対して、第1IN接続領域、OUT接続領域、第2IN接続領域、及びニュートラル領域の4つの領域が存在する。第1、第2IN接続領域では「IN接続状態」が選択される。OUT接続領域では「OUT接続状態」が選択される。ニュートラル領域では「ニュートラル状態」が選択される。以下、第1、第2IN接続領域に対応する「IN接続状態」が、それぞれ、「第1IN接続状態」、「第2IN接続状態」と区別して称呼される。
【0063】
「第1IN接続状態」から「OUT接続状態」への切り替えは、車速Vが境界線L1(前記「第1閾値」に対応)を増大しながら通過したときになされる。「OUT接続状態」から「第2IN接続状態」への切り替えは、車速Vが境界線L2(前記「第2閾値」に対応)を増大しながら通過したときになされる。「第2IN接続状態」から「ニュートラル状態」への切り替えは、要求駆動トルクTが境界線L4(前記「第4閾値」に対応)よりも大きい場合において車速Vが増大しながら境界線L3(前記「第3閾値」に対応)を通過したとき、又は、車速Vが境界線L3よりも大きい場合において要求駆動トルクTが増大しながら境界線L4を通過したときになされる。
【0064】
一方、「OUT接続状態」から「第1IN接続状態」への切り替えは、車速Vが境界線L1’を減少しながら通過したときになされる。「第2IN接続状態」から「OUT接続状態」への切り替えは、車速Vが境界線L2’を減少しながら通過したときになされる。「ニュートラル状態」から「第2IN接続状態」への切り替えは、車速Vが境界線L3’を減少しながら通過したとき、又は、要求駆動トルクTが境界線L4’を減少しながら通過したときになされる。
【0065】
このように、境界線L1,L1’の位置、境界線L2,L2’の位置、境界線L3,L3’の位置、及び境界線L4,L4’の位置にそれぞれ差ΔV1〜ΔV3、及びΔT4が設けられているのは、車速Vが境界線L1,L2,L3のそれぞれの近傍で頻繁に増減するような場合、或いは、要求駆動トルクTが境界線L4の近傍で頻繁に増減するような場合において、出力軸A4の接続状態の切り替えが頻繁になされる事態(所謂ハンチング)の発生を抑制するためである。なお、差ΔV1〜ΔV3は、同じ値であっても異なる値であってもよい。
【0066】
境界線L1(低速域)は、1速から2速へのシフトアップに対応する車速よりも若干小さい車速に設定されている。即ち、境界線L1は、図7に示す1速から2速へのシフトアップに対応する境界線(実線)を車速Vが減少する方向(図において左方向)に若干移動した位置に設けられている。従って、図8に示す境界線L1は、図7に示す1速から2速へのシフトアップに対応する境界線(実線)の形状と同じ形状を有している。
【0067】
境界線L2(中速域)は、「OUT接続状態」においてM/G40の出力軸A4の回転速度が許容回転速度(図5を参照)に基づいて決定される値(例えば、許容回転速度よりも若干小さい値)と一致する場合に対応する車速に設定されている。また、本例では、この境界線L2は、図7に示す3速〜5速に対応する領域に位置している。上述のように、OUT接続減速比GoutはT/M20の変速段にかかわらず一定(本例では、例えば、Gtm(2)と略等しい値)である。従って、「OUT接続状態」においては、M/G40の出力軸A4の回転速度が上記「許容回転速度に基づいて決定される値」と一致する車速が、T/M20の変速段にかかわらず、1つの値にのみ決定される。従って、図8に示す境界線L2に対応する車速Vは、要求駆動トルクTにかかわらず一定となる(即ち、境界線L2は、図8において上下に延びる直線となる)。境界線L2に対応する車速Vは、「OUT接続減速比Gout」と前記「最終減速比」とで決定される。
【0068】
境界線L3(高速域)は、「(第2)IN接続状態」においてM/G40のエネルギ変換効率(駆動トルク側)が所定値(例えば、70パーセント)以上の領域(図5に微細なドットで示した領域を参照)の境界(特に、車速が大きい側(図において右側)の境界)にある場合に対応する車速に設定されている。
【0069】
境界線L4は、車両の走行抵抗(駆動系統に存在する種々の回転部材の摩擦抵抗、走行に伴う風により車両が受ける減速方向の抵抗、路面の勾配により車両が受ける減速方向の抵抗等の総和)に対応する駆動輪のトルク(以下、「走行抵抗トルク」と称呼する。)に基づいて決定される。走行抵抗トルクと駆動輪の駆動トルクとが一致するとき車両の前後加速度がゼロになり、駆動輪の駆動トルクが走行抵抗トルクよりも大きい(小さい)ときに前後加速度が正(負)となる。従って、境界線L4は、例えば、前後加速度が所定値(例えば、ゼロ、正の微小値、負の微小値)になる場合に対応する駆動トルクに設定され得る。即ち、境界線L4は、車輪速度センサ61の出力から得られる前後加速度の計算値、或いは、前後加速度センサ(図示せず)の出力、或いは、前後加速度に相関する値(例えば、車速変化量、エンジン回転速度変化量)等に基づいて設定され得る。
【0070】
走行抵抗トルクは、車速の増加に従って増大する。従って、図8に示すように、境界線L4は、車速Vの増加に従って上昇していく。また、走行抵抗トルクは、上り勾配が大きいほど大きい。従って、境界線L4は、上り勾配が大きいほど上方に移動する。要求駆動トルクTが境界線L4に対応する値よりも大きい状態は車両の加速状態に対応し、要求駆動トルクTが境界線L4に対応する値よりも小さい状態は車両の減速状態に対応する。
【0071】
以下、M/G40の出力軸A4の接続状態が図8に示すように選択されることによる作用・効果について説明する。なお、以下の説明では、説明の便宜上、OUT接続減速比Goutが、例えば、Gtm(2)と略等しい値に設定されているものとする。
【0072】
先ず、「車速V=0からの車両発進時では「(第1)IN接続状態」が選択されること」による作用・効果について説明する。一般に、車両発進時では、T/M20の変速段が1速に設定されるから、IN接続減速比Gin(=Gtm(1))がOUT接続減速比Goutよりも大きい。従って、「OUT接続状態」が選択される場合に比して、駆動輪に伝達されるM/G40の出力に基づく駆動トルクを大きくすることができる。この結果、車両発進時にて強い駆動トルクを駆動輪に発生させることができる。
【0073】
次に、「境界線L1が、1速から2速へのシフトアップに対応する車速よりも若干小さい車速に設定されていること」による作用・効果について説明する。車両発進後、「(第1)IN接続状態」において車速が増加しながら境界線L1(低速域)を通過した場合、「(第1)IN接続状態」から「OUT接続状態」への切り替えがなされる。この切り替えは、1速から2速へのシフトアップがなされる前になされる。従って、この切り替えが完了した後の「OUT接続状態」にて1速から2速へのシフトアップがなされる。ここで、発明の概要の欄でも述べたように、「OUT接続状態」では、T/M20の変速作動中においてもM/G40の駆動トルクを変速機T/M20の出力軸A3(従って、駆動輪)へ連続して出力し続けることができるから、変速ショックを低減できる。特に、1速から2速への変速では、変速機減速比Gtmの変化量が大きいから大きな変速ショックが発生し易い。以上より、1速から2速へのシフトアップにおける変速ショックを大幅に低減できる。
【0074】
加えて、「(第1)IN接続状態」から「OUT接続状態」への切り替えは、1速の状態でなされる。即ち、この切り替えは、OUT接続減速比GoutがIN接続減速比Gin(=Gtm(1))より小さい状態でなされる。従って、この切り替えにより、M/G40の出力軸A4の回転速度が小さくなる。ここで、上述したように、M/G40が発生し得る最大トルクは、出力軸A4の回転速度が小さいほど大きい(図5を参照)。以上より、この切り替えにより、M/G40が発生し得る最大トルクが拡大されるという効果も発揮され得る。
【0075】
次に、「境界線L2が、「OUT接続状態」において出力軸A4の回転速度が許容回転速度に基づいて決定される値と一致する場合に対応する車速に設定されていること」による作用・効果について説明する。「OUT接続状態」において車速が増加しながら境界線L2を通過した場合、「OUT接続状態」から「(第2)IN接続状態」への切り替えがなされる。上述したように、境界線L2は、図7に示す3速〜5速に対応する領域に位置しているから、この切り替えは、3速以上の変速段が選択された状態でなされる。即ち、この切り替えは、IN接続減速比Gin(=Gtm(3)、Gtm(4)、Gtm(5)の何れか)がOUT接続減速比Goutより小さい状態でなされる。従って、この切り替えにより、M/G40の出力軸A4の回転速度が、許容回転速度に近い値から小さくなる(図5において、点aから点bへの移行を参照)。この結果、出力軸A4の回転速度が許容回転速度を超える事態の発生が抑制され得ることに加え、M/G40が発生し得る最大トルクが拡大されるという効果も発揮され得る。
【0076】
次に、「境界線L3が、「(第2)IN接続状態」においてM/G40のエネルギ変換効率が所定値以上の領域の境界にある場合に対応する車速に設定されていること」による作用・効果について説明する。「(第2)IN接続状態」、且つ、要求駆動トルクTが境界線L4よりも大きい状態(即ち、車両が加速状態にある場合)において、車速が増加しながら境界線L3を通過した場合、「(第2)IN接続状態」から「非接続状態」への切り替えがなされる。これに伴い、M/G40の駆動が中止され、E/G10のみにより要求駆動トルクTが発生させられる。ここで、車速が増加している状態(即ち、M/G40の出力軸A4の回転速度が増加している状態)で車速が境界線L3を通過することは、M/G40のエネルギ変換効率が図5に微細なドットで示した領域における車速が大きい側(図において右側)の境界を通過したことを意味する(図5において、点bから点cへの移行を参照)。即ち、エネルギ変換効率が所定値以上の状態から所定値未満の状態に移行した場合に、「(第2)IN接続状態」から「非接続状態」への切り替えがなされる。他方、このようにM/G40のエネルギ変換効率が低下する高速域では、逆に、E/G10のエネルギ発生効率が良好な状態となっている場合が多い。この場合、M/G40とE/G10との協働で要求駆動トルクTを発生させるよりも、E/G10のみにより要求駆動トルクTを発生させた方が、車両全体としての総合的なエネルギ効率(燃費)を良くすることができる。以上より、車両が加速状態にあり、且つ「(第2)IN接続状態」にある高速域においてM/G40のエネルギ変換効率が所定値を下回る場合、車両全体としての総合的なエネルギ効率(燃費)を良くすることができる。
【0077】
次に、「境界線L4が、前後加速度が所定値(例えば、ゼロ、正の微小値、負の微小値)になる場合に対応する駆動トルクに設定されていること」による作用・効果について説明する。車両が加速状態にある場合、上述のように、車速が増加しながら境界線L3を通過した場合に「(第2)IN接続状態」から「非接続状態」への切り替えがなされた方が車両全体としての総合的なエネルギ効率(燃費)を良くすることができる。これに対し、車両が減速状態にある場合(即ち、要求駆動トルクTが境界線L4よりも小さい状態では)、「(第2)IN接続状態」を維持することで、M/G40により回生トルクを発生させて回生により発生する電力をバッテリに供給・貯留することができる。即ち、この場合、「非接続状態」よりも「(第2)IN接続状態」を選択した方が、車両全体としての総合的なエネルギ効率(燃費)を良くすることができる。以上より、車両が減速状態にある場合、車速Vが境界線L3に対応する値より大きくても、「(第2)IN接続状態」が維持される。
【0078】
(バッテリ温度、M/G温度、及びバッテリ残量による接続状態の調整)
本装置では、バッテリBの温度(以下、「バッテリ温度」と呼ぶ)、M/G40の温度(以下、「M/G温度」と呼ぶ)、又は、バッテリBに蓄積されている化学エネルギの量(以下、「バッテリ残量」と呼ぶ)に応じて、移動量DL3,DL4が決定される。図8に示したように、DL3が正の場合、境界線L3及びL3’の位置が、図8に示した基準位置から車速Vの減少方向(図8において左方向)にDL3だけ移動され、DL3が負の場合、境界線L3及びL3’の位置が、図8に示した基準位置から車速Vの増加方向(図8において右方向)に|DL3|だけ移動される。DL4が正の場合、境界線L4及びL4’の位置が、図8に示した基準位置から要求駆動トルクTの減少方向(図8において下方向)にDL4だけ移動され、DL4が負の場合、境界線L4及びL4’の位置が、図8に示した基準位置から要求駆動トルクTの増加方向(図8において上方向)に|DL4|だけ移動される。以下、移動量DL3,DL4をDL*と表記することもある。
【0079】
図9は、バッテリ温度と移動量DL*aとの関係を規定するマップを示したグラフである。図9に示すように、移動量DL*aは、バッテリ温度=T1のときにゼロとなり(前記基準位置に対応)、バッテリ温度>T1のときにはバッテリ温度の上昇に応じてゼロから増大し、バッテリ温度<T1のときにはバッテリ温度の低下に応じてゼロから減少していく。移動量DL3a,DL4aは、バッテリ温度に応じた同じ値であっても異なる値であってもよい。バッテリ温度は、バッテリ温度センサ68の出力から取得され得る。
【0080】
図10は、M/G温度と移動量DL*bとの関係を規定するマップを示したグラフである。図10に示すように、移動量DL*bは、M/G温度=T2のときにゼロとなり(前記基準位置に対応)、M/G温度>T2のときにはM/G温度の上昇に応じてゼロから増大し、M/G温度<T2のときにはM/G温度の低下に応じてゼロから減少していく。移動量DL3b,DL4bは、M/G温度に応じた同じ値であっても異なる値であってもよい。M/G温度は、M/G温度センサ69の出力から取得され得る。
【0081】
図11は、バッテリ残量と移動量DL*cとの関係を規定するマップを示したグラフである。図11に示すように、移動量DL*cは、バッテリ残量=V1のときにゼロとなり(前記基準位置に対応)、バッテリ残量>V1のときにはバッテリ残量の上昇に応じてゼロから増大し、バッテリ残量<V1のときにはバッテリ残量の低下に応じてゼロから減少していく。移動量DL3c,DL4cは、バッテリ残量に応じた同じ値であっても異なる値であってもよい。バッテリ残量は、周知の手法の1つに基づいて取得され得る。
【0082】
移動量DL*は、DL*aそのもの、DL*bそのもの、DL*cそのもの、或いは、DL*a,DL*b,DL*cのうちの2つ以上の組み合わせから算出される値(例えば、平均値)である。
【0083】
移動量DL*を上記のように決定することで、図8において、バッテリ温度が高いほど、M/G温度が高いほど、又は、バッテリ残量が大きいほど、ニュートラル領域が拡大する(と同時に、第2IN接続領域が縮小される)。即ち、バッテリ温度が高いほど、M/G温度が高いほど、又は、バッテリ残量が大きいほど、ニュートラル状態が選択され易くなる(選択される頻度が多くなる)。
【0084】
以下、このことによる作用・効果について説明する。ニュートラル状態では、IN接続状態及びOUT接続状態とは異なり、M/G40の動力源としての駆動及び発電機としての駆動が中止されてM/G40の出力軸A4の回転が停止される。このため、ニュートラル状態では、バッテリ温度及びM/G温度の上昇が抑制され得、且つ、バッテリBが充電され得ない。
【0085】
他方、バッテリB、及び、M/G40の保護等のため、バッテリ温度及びM/G温度が過度に高くならないように(駆動源、或いは発電機として)M/G40を作動させることが好ましい。また、バッテリ残量が十分に大きい場合、バッテリBを更に充電する必要性が低い。従って、バッテリ温度が高い場合、M/G温度が高い場合、或いは、バッテリ残量が大きい場合、ニュートラル状態が選択される時間を長くする(選択される頻度を多くする)ことが好ましい。
【0086】
上述のように、本装置では、バッテリ温度が高いほど、M/G温度が高いほど、又は、バッテリ残量が大きいほど、ニュートラル状態がより選択され易くなる。従って、バッテリ温度又はM/G温度が高い場合において、並びに、バッテリ残量が大きい場合において、ニュートラル状態が選択される時間が長くなる。この結果、バッテリ温度又はM/G温度の上昇が抑制され得、また、バッテリBが更に不必要に充電されることがなくなる。
【0087】
以上、本発明の実施形態に係る車両の動力伝達制御装置は、E/G10とM/G40とを動力源として備え、トルクコンバータを備えないT/M20を使用した所謂オートメイティッド・マニュアル・トランスミッションを備えた車両に適用される。この装置は、M/G40の出力軸A4の接続状態を、T/M20の入力軸A2と出力軸A4との間で動力伝達系統が形成される「IN接続状態」、T/M20の出力軸A3と出力軸A4との間で動力伝達系統が形成される「OUT接続状態」、いずれの間にも動力伝達系統が形成されない「ニュートラル状態」の3つの状態の何れかに選択可能な切替機構50を備える。この選択は、車速Vと要求駆動トルクTとの組み合わせ(領域)に基づいてなされる。係る選択の際、バッテリ温度が高いほど、M/G温度が高いほど、又は、バッテリ残量が大きいほど、ニュートラル領域が拡大されて、「ニュートラル状態」が選択され易くなる(選択される頻度が多くなる)。これにより、バッテリ温度又はM/G温度の上昇が抑制され得、また、バッテリBが更に不必要に充電されることがなくなる。
【0088】
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態では、変速機としてトルクコンバータを備えない多段変速機を使用した所謂オートメイティッド・マニュアル・トランスミッションが使用されているが、変速機として、トルクコンバータを備えるとともに車両の走行状態に応じて変速作動が自動的に実行される多段変速機又は無段変速機(所謂オートマチックトランスミッション(AT))が使用されてもよい。この場合、C/T30が省略される。
【0089】
また、変速機として、トルクコンバータを備えない多段変速機であって、運転者によるシフトレバーの操作力に基づくリンク機構の動作により(アクチュエータを用いることなく)直接的に変速作動が実行される形式のもの(所謂マニュアルトランスミッション(MT))が使用されてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、切替機構50では、「IN接続状態」、「OUT接続状態」、及び「ニュートラル状態」が選択可能となっているが、「ニュートラル状態」、及び「IN接続状態」のみが選択可能となっていてもよい。この場合、図8に示す境界線L1,L1’,L2,L2’が省略されて、OUT接続領域であった領域、及び、第1、第2IN接続領域であった領域、が1つのIN接続領域に統合される。また、「ニュートラル状態」、及び「OUT接続状態」のみが選択可能となっていてもよい。この場合、図8に示す境界線L1,L1’,L2,L2’が省略されて、OUT接続領域であった領域、及び、第1、第2IN接続領域であった領域、が1つのOUT接続領域に統合される。
【0091】
また、上記実施形態では、車速Vと要求駆動トルクTとの組み合わせに基づいて、M/G40の出力軸A4の接続状態が選択されているが(図8を参照)、車速V、E/G10の出力軸A1の回転速度、T/M20の入力軸A2の回転速度、及びM/G40の出力軸A4の回転速度のうちの任意の1つと、要求駆動トルクT、アクセルペダルAPの操作量、及びE/G10の吸気通路に配設されたスロットル弁(図示せず)の開度のうちの任意の1つとの組み合わせに基づいて、M/G40の出力軸A4の接続状態が選択されてもよい。スロットル弁の開度は、スロットル弁開度センサ64の出力から取得することができる。E/G10の出力軸A1の回転速度、T/M20の入力軸A2の回転速度、及びM/G40の出力軸A4の回転速度はそれぞれ、エンジン出力軸回転速度センサ65、変速機入力軸回転速度センサ66、及び電動機出力軸回転速度センサ67の出力から取得することができる。
【0092】
また、上記実施形態において、バッテリ温度が第1所定値(図9に示す値T1よりも十分に高い値)以上の場合、又は、M/G温度が第2所定値(図10に示す値T2よりも十分に高い値)以上の場合、図12に示すように、境界線L3,L3’,L4,L4’が省略されて、第2IN接続領域であった領域がニュートラル領域に統合されてもよい。これにより、第2IN接続状態が選択されていた期間が、ニュートラル状態が選択される期間に代わるから、ニュートラル状態が選択される時間が長くなる。この結果、バッテリ温度又はM/G温度が相当に高い場合において、バッテリ温度又はM/G温度の更なる上昇が確実に抑制され得、バッテリB又はM/G40を確実に保護することができる。
【0093】
同様に、上記実施形態において、バッテリ温度が第1所定値(図9に示す値T1よりも十分に高い値)以上の場合、又は、M/G温度が第2所定値(図10に示す値T2よりも十分に高い値)以上の場合、図13に示すように、車速V、及び要求駆動トルクTに依存することなくニュートラル状態のみが選択されるように構成されてもよい。これによっても、バッテリ温度又はM/G温度の更なる上昇が確実に抑制され得、バッテリB又はM/G40を確実に保護することができる。
【0094】
また、上記実施形態においては、境界線L1〜L4の位置の移動量DL*の計算に使用されるDL*a,DL*b,DL*cがそれぞれ、バッテリ温度、M/G温度、バッテリ残量に応じて連続的に変化するように設定されているが(図9〜図11を参照)、図9に対応する図14に示すように、バッテリ温度がDL*a=0に対応する値T1を含む所定の範囲内(所謂、不感帯)にある場合において、DL*a=0に維持されるように移動量DL*aが設定されてもよい。同様に、図10に対応する図15に示すように、M/G温度がDL*b=0に対応する値T2を含む所定の範囲内(所謂、不感帯)にある場合において、DL*b=0に維持されるように移動量DL*bが設定されてもよい。同様に、図11に対応する図16に示すように、バッテリ残量がDL*c=0に対応する値V1を含む所定の範囲内(所謂、不感帯)にある場合において、DL*c=0に維持されるように移動量DL*cが設定されてもよい。更には、DL*a,DL*b,DL*cがそれぞれ、バッテリ温度、M/G温度、バッテリ残量に応じてステップ的(1段階、或いは2段階以上)に変化するように設定されてもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、バッテリ温度、M/G温度、バッテリ残量に応じて境界線L3,L4の位置が変更されているが、境界線L3,L4の何れか1つのみの位置が変更されるように構成されてもよい。また、上記実施形態では、図8において、境界線L3,L4の位置が、平行移動する(即ち、座標軸に対する線の傾きが一定に維持された状態で移動する)ように変更されているが、境界線L3,L4の位置が、平行移動でない形態(即ち、座標軸に対する線の傾きが一定に維持されない状態)で移動するように変更されてもよい。
【0096】
加えて、上記実施形態では、「バッテリ温度、M/G温度、バッテリ残量」に応じて境界線L3,L4の位置を変更するにあたり、1つのマップ(図8を参照)から境界線L1〜L4が取得され、その取得された境界線L3,L4の位置が変更されるように構成されている。これに対し、複数の異なる「バッテリ温度、M/G温度、バッテリ残量」に対応するそれぞれの図8に対応する図17〜図21に示すマップA〜マップE(境界線L3,L4の位置等が異なる複数のマップ)が予め作製され、これらのマップA〜マップEの中から現在の「バッテリ温度、M/G温度、バッテリ残量」に対応するマップが選択され、選択されたマップに基づいてM/G40の出力軸A4の接続状態が選択されるように構成されてもよい。
【0097】
図17〜図21から理解できるように、マップA〜マップEのうちで、マップAが、ニュートラル領域が最も狭い(従って、ニュートラル状態が最も選択され難い)マップに対応し、マップEが、ニュートラル領域が最も広い(従って、ニュートラル状態が最も選択され易い)マップに対応する。加えて、マップAよりマップB、マップBよりマップC、マップCよりマップD、マップDよりマップEの方が、ニュートラル領域がより広い(従って、ニュートラル状態がより選択され易い)マップに対応する。この場合、図22に示すように、「バッテリ温度、M/G温度、バッテリ残量」が5つの領域に分割され、「バッテリ温度、M/G温度、バッテリ残量」が最も低い(小さい)領域から最も高い(大きい)領域に順に移行するにつれて、マップA、マップB、マップC、マップD、マップEが順に選択される。即ち、「バッテリ温度、M/G温度、バッテリ残量」がより高いほど(大きいほど)、ニュートラル領域がより広い(従って、ニュートラル状態がより選択され易い)マップが選択される。
【符号の説明】
【0098】
10…エンジン、20…変速機、30…クラッチ、40…モータジェネレータ、50…切替機構、61…車輪速度センサ、62…アクセル開度センサ、63…シフト位置センサ、68…バッテリ温度センサ、69…M/G温度センサ、70…ECU、AP…アクセルペダル、SF…シフトレバー
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の動力伝達制御装置に関し、特に、動力源として内燃機関と電動機とを備えた車両に適用されるものに係わる。
【背景技術】
【0002】
近年、動力源として内燃機関と電動機(電動モータ、電動発電機)とを備えた所謂ハイブリッド車両が開発されてきている(例えば、特許文献1を参照)。ハイブリッド車両では、電動機が、内燃機関と協働又は単独で、車両を駆動する駆動トルクを発生する動力源として、或いは、内燃機関を始動するための動力源として使用される。加えて、電動機が、車両を制動する回生トルクを発生する発電機として、或いは、車両のバッテリに供給・貯留される電気エネルギを発生する発電機として使用される。このように電動機を使用することで、車両全体としての総合的なエネルギ効率(燃費)を良くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−224710号公報
【発明の概要】
【0004】
ところで、ハイブリッド車両では、電動機の出力軸と変速機の入力軸との間で動力伝達系統が形成される接続状態(以下、「IN接続状態」と称呼する。)が採用される場合と、電動機の出力軸と変速機の出力軸(従って、駆動輪)との間で変速機を介することなく動力伝達系統が形成される接続状態(以下、「OUT接続状態」と称呼する。)が採用される場合と、がある。
【0005】
IN接続状態では、変速機の変速段を変更することで、車両速度に対する電動機の出力軸の回転速度を変更することができる。従って、変速機の変速段を調整することで、電動機の出力軸の回転速度をエネルギ変換効率(より具体的には、駆動トルク、回生トルク等の発生効率)が良好となる範囲内に維持し易いというメリットがある。
【0006】
一方、OUT接続状態では、動力伝達系統が複雑な機構を有する変速機を介さないから、動力の伝達損失を小さくできるというメリットがある。また、変速機(特に、トルクコンバータを備えない形式の変速機)では、通常、変速作動中(変速段を切り替える作動中)において、変速機の入力軸から出力軸への動力の伝達が一時的に遮断される場合が多い。この結果、車両前後方向の加速度の急激な変化(所謂変速ショック)が発生し易い。このような変速作動中においても、OUT接続状態では、電動機の駆動トルクを変速機の出力軸(従って、駆動輪)へ連続して出力し続けることができ、変速ショックを低減できるというメリットもある。
【0007】
以上のことに鑑み、本出願人は、特願2007−271566号において、電動機の出力軸の接続状態をIN接続状態とOUT接続状態とに切り替え可能な切替機構について既に提案している。この切替機構は、電動機の出力軸の接続状態を、電動機の出力軸と変速機の入力軸との間も電動機の出力軸と変速機の出力軸との間も動力伝達系統が形成されない状態(以下、「非接続状態」と称呼する。)に切り替えることも可能である。
【0008】
ところで、電動機に電気エネルギを供給する電池(通常は、二次電池)、及び、電動機の保護等のため、電池の温度及び電動機の温度(例えば、コイル部の温度)が過度に高くならないように(駆動源、或いは発電機として)電動機を作動させることが好ましい。また、電池に蓄積されているエネルギの量(以下、「電池残量」と称呼する。)が十分に大きい場合、電池を更に充電する必要性が低い。
【0009】
他方、非接続状態では、IN接続状態及びOUT接続状態とは異なり、電動機の動力源としての駆動及び発電機としての駆動が中止されて電動機の出力軸の回転が停止され得る。この状態では、電池の温度及び電動機の温度の上昇が抑制され得、また、電池が充電され得ない。従って、電池の温度が高い場合、電動機の温度が高い場合、或いは、電池残量が大きい場合、非接続状態が選択される時間を長くする(選択される頻度を多くする)ことが好ましいと考えられる。
【0010】
本発明の目的は、動力源として内燃機関と電動機とを備えた車両に適用される車両の動力伝達制御装置であって、電動機の出力軸の接続状態を適切に選択して、電動機の状態、或いは電動機に電気エネルギを供給する電池の状態を良好に維持できるものを提供することにある。
【0011】
本発明による車両の動力伝達制御装置は、変速機と、切替機構と、状態量取得手段と、制御手段とを備える。以下、順に説明していく。
【0012】
前記変速機は、前記内燃機関の出力軸との間で動力伝達系統が形成される入力軸と、前記車両の駆動輪との間で動力伝達系統が形成される出力軸とを備え、前記出力軸の回転速度に対する前記入力軸の回転速度の割合(変速機減速比)を調整可能に構成されている。ここにおいて、前記変速機は、前記変速機減速比として予め定められた異なる複数の減速比を設定可能な多段変速機であっても、前記変速機減速比として減速比を連続的に(無段階に)調整可能な無段変速機であってもよい。
【0013】
また、前記変速機は、トルクコンバータを備えるとともに車両の走行状態に応じて変速作動が自動的に実行される多段変速機又は無段変速機(所謂オートマチックトランスミッション(AT))であっても、トルクコンバータを備えない多段変速機(所謂マニュアルトランスミッション(MT))であってもよい。MTの場合、運転者によるシフトレバーの操作力により直接的に変速作動が実行される形式であっても、運転者により操作されるシフトレバーの位置を示す信号に基づいてアクチュエータの駆動力により変速作動が実行される形式であっても、運転者によるシフトレバー操作によらず車両の走行状態に応じてアクチュエータの駆動力により変速作動が自動的に実行され得る形式(所謂、オートメイティッド・マニュアル・トランスミッション)であってもよい。
【0014】
前記切替機構は、前記電動機の出力軸の接続状態を、前記電動機の出力軸と前記変速機の入力軸との間で動力伝達系統が形成される入力側接続状態(IN接続状態)と、前記電動機の出力軸と前記駆動輪との間で前記変速機を介することなく動力伝達系統が形成される出力側接続状態(OUT接続状態)と、前記電動機の出力軸と前記変速機の入力軸との間も前記電動機の出力軸と前記変速機の出力軸との間も動力伝達系統が形成されない非接続状態とのうちで非接続状態を含む2以上の状態に切り替え可能である。即ち、前記切替機構として、IN接続状態及び非接続状態のみに切替可能なもの、OUT接続状態及び非接続状態のみに切替可能なもの、IN接続状態、OUT接続状態、及び非接続状態の何れにも切り替え可能なものが挙げられる。
【0015】
IN接続状態では、通常、前記変速機の入力軸の回転速度に対する前記電動機の出力軸の回転速度の割合(以下、「第1減速比」と称呼する。)が一定(例えば、1)に固定される。以下、IN接続状態における「第1減速比」と「変速機減速比」との積を「IN接続減速比」と称呼する。「IN接続減速比」は、変速機の変速作動による「変速機減速比」の変化に合わせて変化する。一方、OUT接続状態では、通常、前記変速機の出力軸の回転速度に対する前記電動機の出力軸の回転速度の割合が一定(例えば、1よりも大きい値、2速に相当する変速機減速比の近傍の値など)に固定される。以下、この割合を「OUT接続減速比」と称呼する。「OUT接続減速比」は、「変速機減速比」が変化しても一定に維持される。なお、通常、前記変速機の入力軸の回転速度に対する前記内燃機関の出力軸の回転速度の割合は一定(例えば、1)とされる。
【0016】
状態量取得手段では、前記電動機に電気エネルギを供給する電池の温度、前記電動機の温度、及び、前記電池に蓄積されているエネルギの量(電池残量)のうちの1つ以上が状態量として取得される。
【0017】
制御手段では、前記状態量と、前記状態量以外の前記車両の走行状態を表すパラメータとに基づいて、前記状態量に応じて前記非接続状態の選択のされ易さが変化するように(選択される時間が変化するように、選択される頻度が変化するように)前記電動機の出力軸の接続状態が選択され、前記電動機の出力軸の接続状態が前記選択された状態になるように前記切替機構が制御される。具体的には、電池の温度そのもの、電動機の温度そのもの、電池残量そのもの、電池の温度と電動機の温度と電池残量とのうちの2つ以上の組み合わせから算出される値等、に応じて、非接続状態の選択のされ易さが変化する。なお、非接続状態では、電動機の動力源としての駆動及び発電機としての駆動が中止されて電動機の出力軸の回転が停止され得る。
【0018】
前記車両の走行状態を表すパラメータとしては、前記車両の速度に相関する値、前記車両の運転者による加速操作部材の操作に基づいて得られる要求駆動トルクに相関する値等が挙げられる。前記車両の速度に相関する値としては、前記車両の速度そのもの、前記変速機の入力軸の回転速度、前記内燃機関の出力軸の回転速度、及び前記電動機の出力軸の回転速度等が挙げられる。前記要求駆動トルクに相関する値としては、前記加速操作部材の操作量、及び前記内燃機関の吸気通路に配設されたスロットル弁の開度等が挙げられる。
【0019】
上記構成によれば、前記状態量に応じて非接続状態の選択のされ易さが変化する。従って、例えば、電池の温度が高い場合、電動機の温度が高い場合、或いは、電池残量が大きい場合において、非接続状態が選択される時間が長くされ得る(選択される頻度が多くされ得る)。この結果、電動機の動力源としての駆動及び発電機としての駆動が中止されて電動機の出力軸の回転が停止される時間が長くなるから、電池の温度、又は電動機の温度の上昇が抑制され得、また、電池が更に不必要に充電されることがない。即ち、電動機の状態、或いは電池の状態を良好に維持することができる。
【0020】
より具体的には、前記制御手段は、前記車両の速度に相関する値が増大しながら閾値を通過したことに基づいて前記電動機の出力軸の接続状態を前記非接続状態以外の接続状態(即ち、IN接続状態又はOUT接続状態)から前記非接続状態に切り替える場合、前記電池の温度が高いほど、前記電動機の温度が高いほど、又は、前記電池残量が大きいほど、前記閾値がより小さい値になるように前記閾値を調整するように構成されることが好適である。これによれば、車両速度が増大する過程において、電池の温度が高いほど、電動機の温度が高いほど、又は、電池残量が大きいほど、非接続状態以外の接続状態から非接続状態に移行するタイミングが早まる。即ち、非接続状態が選択されている時間が長くなる。この結果、電池の温度、又は電動機の温度の上昇が抑制され得、また、電池が更に不必要に充電されることが抑制され得る。
【0021】
同様に、前記制御手段は、前記車両の運転者による加速操作部材の操作に基づいて得られる要求駆動トルクに相関する値が増大しながら閾値を通過したことに基づいて前記電動機の出力軸の接続状態を前記非接続状態以外の接続状態(即ち、IN接続状態又はOUT接続状態)から前記非接続状態に切り替える場合、前記電池の温度が高いほど、前記電動機の温度が高いほど、又は、前記電池残量が大きいほど、前記閾値がより小さい値になるように前記閾値を調整するように構成されることが好適である。これによれば、要求駆動トルクが増大する過程において、電池の温度が高いほど、電動機の温度が高いほど、又は、電池残量が大きいほど、非接続状態以外の接続状態から非接続状態に移行するタイミングが早まる。即ち、非接続状態が選択されている時間が長くなる。この結果、電池の温度、又は電動機の温度の上昇が抑制され得、また、電池が更に不必要に充電されることが抑制され得る。
【0022】
これらの場合において、前記制御手段は、前記電池の温度が第1所定値以上の場合、又は、前記電動機の温度が第2所定値以上の場合、前記電動機の出力軸の接続状態を前記非接続状態に常に固定するように構成され得る。これによれば、電池の温度、又は電動機の温度が相当に高くなった場合において、非接続状態が常に選択される。この結果、電池の温度、又は電動機の温度の更なる上昇が確実に抑制され得る。
【0023】
また、前記制御手段は、前記車両の速度に相関する値が増大しながら第1閾値を通過したことに基づいて前記電動機の出力軸の接続状態をIN接続状態(以下、「第1IN接続状態」とも呼ぶ。)からOUT接続状態に切り替え、前記車両の速度に相関する値が増大しながら前記第1閾値よりも大きい第2閾値を通過したことに基づいて前記電動機の出力軸の接続状態をOUT接続状態からIN接続状態(以下、「第2IN接続状態」とも呼ぶ。)に切り替え、前記要求駆動トルクに相関する値が第4閾値よりも大きい場合において前記車両の速度に相関する値が増大しながら前記第2閾値よりも大きい第3閾値を通過したこと又は前記車両の速度に相関する値が前記第3閾値よりも大きい場合において前記要求駆動トルクに相関する値が増大しながら前記第4閾値を通過したことに基づいて前記電動機の出力軸の接続状態を(第2)IN接続状態から非接続状態に切り替えるように構成され得る。この場合、前記電池の温度が高いほど、前記電動機の温度が高いほど、又は、前記電池残量が大きいほど、前記第3、第4閾値がより小さい値になるように前記第3、第4閾値を調整するように構成されることが好適である。ここにおいて、前記第1、第2、第3閾値は、前記要求駆動トルクに応じて変化する値であっても一定であってもよい。前記第4閾値は、前記車両の速度に相関する値に応じて変化する値であっても一定であってもよい。
【0024】
これによれば、車両速度が増大する過程において、電池の温度が高いほど、電動機の温度が高いほど、又は、電池残量が大きいほど、(第2)IN接続状態から非接続状態に移行するタイミングが早まり、或いは、要求駆動トルクが増大する過程において、電池の温度が高いほど、電動機の温度が高いほど、又は、電池残量が大きいほど、(第2)IN接続状態から非接続状態に移行するタイミングが早まる。即ち、非接続状態が選択されている時間が長くなる。この結果、電池の温度、又は電動機の温度の上昇が抑制され得、また、電池が更に不必要に充電されることが抑制され得る。
【0025】
この場合において、前記制御手段は、前記電池の温度が第1所定値以上の場合、又は、前記電動機の温度が第2所定値以上の場合、前記車両の速度に相関する値が前記第2閾値以上の状態では前記電動機の出力軸の接続状態を前記非接続状態に固定するように構成され得る。これによれば、電池の温度、又は電動機の温度が相当に高くなった場合において、(第2)IN接続状態が選択されている期間が消滅するから、非接続状態が選択される時間が長くなる。この結果、電池の温度、又は電動機の温度の更なる上昇が確実に抑制され得る。
【0026】
更には、前記制御手段は、前記電池の温度が第1所定値以上の場合、又は、前記電動機の温度が第2所定値以上の場合、前記車両の速度に相関する値及び前記要求駆動トルクに相関する値に依存することなく前記電動機の出力軸の接続状態を前記非接続状態に常に固定するように構成されてもよい。これによれば、電池の温度、又は電動機の温度が相当に高くなった場合において、非接続状態が常に選択される。この結果、電池の温度、又は電動機の温度の更なる上昇が確実に抑制され得る。
【0027】
以上、本発明に係る動力伝達制御装置は、上述したオートメイティッド・マニュアル・トランスミッション)に適用されることが好適である。この場合、前記内燃機関の出力軸と前記変速機の入力軸との間に、前記内燃機関の出力軸と前記変速機の入力軸との間の動力伝達系統を遮断・接続するクラッチ機構が備えられ、前記変速機は、トルクコンバータを備えておらず、且つ、前記変速機減速比として予め定められた異なる複数の減速比を設定可能な多段変速機であり、前記制御手段は、前記車両の運転状態(例えば、車両速度及び要求駆動トルク)に応じて、前記クラッチ機構の遮断・接続、及び前記変速機の変速段を制御するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る車両の動力伝達制御装置を搭載した車両の概略構成図である。
【図2】図1に示した変速機内の第1切替機構において切り替え可能な3状態を示した図である。
【図3】図1に示した変速機内の第2切替機構において切り替え可能な3状態を示した図である。
【図4】図1に示した変速機内の第3切替機構において切り替え可能な2状態を示した図である。
【図5】図1に示したモータジェネレータにおける、回転速度と、発生し得る最大トルク及びエネルギ変換効率との関係を示したグラフである。
【図6】図1に示した切替機構において切り替え可能な3状態を示した図である。
【図7】図1に示した実施形態における、車速及び要求駆動トルクと、選択される変速機の変速段との関係を示したグラフである。
【図8】図1に示した実施形態における、車速及び要求駆動トルクと、切替機構において選択される接続状態との関係を示したグラフである。
【図9】図1に示した実施形態における、バッテリ温度と、境界線の移動量との関係を示したグラフである。
【図10】図1に示した実施形態における、M/G温度と、境界線の移動量との関係を示したグラフである。
【図11】図1に示した実施形態における、バッテリ残量と、境界線の移動量との関係を示したグラフである。
【図12】図1に示した実施形態の変形例における、M/G温度又はバッテリ温度が所定値以上の場合での、車速及び要求駆動トルクと、切替機構において選択される接続状態との関係を示したグラフである。
【図13】図1に示した実施形態の他の変形例における、M/G温度又はバッテリ温度が所定値以上の場合での、車速及び要求駆動トルクと、切替機構において選択される接続状態との関係を示したグラフである。
【図14】図1に示した実施形態の変形例における、バッテリ温度と、境界線の移動量との関係を示したグラフである。
【図15】図1に示した実施形態の変形例における、M/G温度と、境界線の移動量との関係を示したグラフである。
【図16】図1に示した実施形態の変形例における、バッテリ残量と、境界線の移動量との関係を示したグラフである。
【図17】図1に示した実施形態の変形例における、車速及び要求駆動トルクと、切替機構において選択される接続状態との関係を規定する複数のマップのうちのマップAを示したグラフである。
【図18】図1に示した実施形態の変形例における、車速及び要求駆動トルクと、切替機構において選択される接続状態との関係を規定する複数のマップのうちのマップBを示したグラフである。
【図19】図1に示した実施形態の変形例における、車速及び要求駆動トルクと、切替機構において選択される接続状態との関係を規定する複数のマップのうちのマップCを示したグラフである。
【図20】図1に示した実施形態の変形例における、車速及び要求駆動トルクと、切替機構において選択される接続状態との関係を規定する複数のマップのうちのマップDを示したグラフである。
【図21】図1に示した実施形態の変形例における、車速及び要求駆動トルクと、切替機構において選択される接続状態との関係を規定する複数のマップのうちのマップEを示したグラフである。
【図22】バッテリ温度、M/G温度、及びバッテリ残量と、マップA〜Eのうちで選択されるマップとの関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明による車両の動力伝達制御装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0030】
(構成)
図1は、本発明の実施形態に係る動力伝達制御装置(以下、「本装置」と称呼する。)を搭載した車両の概略構成を示している。この車両は、動力源として内燃機関とモータジェネレータとを備え、且つ、トルクコンバータを備えない多段変速機を使用した所謂オートメイティッド・マニュアル・トランスミッションを備えた車両に適用されている。
【0031】
この車両は、エンジン(E/G)10と、変速機(T/M)20と、クラッチ(C/T)30と、モータジェネレータ(M/G)40と、切替機構50とを備えている。E/G10は、周知の内燃機関の1つであり、例えば、ガソリンを燃料として使用するガソリンエンジン、軽油を燃料として使用するディーゼルエンジンである。E/G10の出力軸A1は、C/T30を介してT/M20の入力軸A2と接続されている。
【0032】
T/M20は、前進用に5つの変速段(1速、2速、3速、4速、5速)を有するトルクコンバータを備えない周知の多段変速機の1つである。即ち、T/M20は、出力軸A3の回転速度に対する入力軸A2の回転速度の割合である変速機減速比Gtmを5段階に設定可能となっている。変速段の切り替えは、第1、第2、第3切替機構21,22,23を制御することで達成される。
【0033】
より具体的には、図2に示すように、第1切替機構21は、入力軸A2に相対回転不能に軸支されたギヤG11と、出力軸A3に相対回転可能に軸支されギヤG11に常時歯合するギヤG12と、入力軸A2に相対回転不能に軸支されたギヤG21と、出力軸A3に相対回転可能に軸支されギヤG21に常時歯合するギヤG22とを備える。また、第1切替機構21は、出力軸A3と一体回転する連結ピース21aと、ギヤG12と一体回転する連結ピース21bと、ギヤG22と一体回転する連結ピース21cと、スリーブ21dと、アクチュエータ24とを備える。
【0034】
スリーブ21dは、出力軸A3の軸線方向に移動可能に配設されていて、アクチュエータ24によりその軸線方向の位置が制御されるようになっている。スリーブ21dは、連結ピース21a,21b,21cとスプライン嵌合可能となっている。スリーブ21dが図2(a)に示す非接続位置(ニュートラル位置)にある場合、スリーブ21dは、連結ピース21aのみとスプライン嵌合するから、ギヤG12,G22共に出力軸A3と相対回転可能となる。スリーブ21dが図2(b)に示す1速接続位置にある場合、スリーブ21dは、連結ピース21a及び21bとスプライン嵌合するから、ギヤG22が出力軸A3と相対回転可能である一方、ギヤG12が出力軸A3と相対回転不能となる。スリーブ21dが図2(c)に示す2速接続位置にある場合、スリーブ21dは、連結ピース21a及び21cとスプライン嵌合するから、ギヤG12が出力軸A3と相対回転可能である一方、ギヤG22が出力軸A3と相対回転不能となる。
【0035】
図3に示すように、第2切替機構22は、入力軸A2に相対回転可能に軸支されたギヤG31と、出力軸A3に相対回転不能に軸支されギヤG31に常時歯合するギヤG32と、入力軸A2に相対回転可能に軸支されたギヤG41と、出力軸A3に相対回転不能に軸支されギヤG41に常時歯合するギヤG42とを備える。また、第2切替機構22は、入力軸A2と一体回転する連結ピース22aと、ギヤG31と一体回転する連結ピース22bと、ギヤG41と一体回転する連結ピース22cと、スリーブ22dと、アクチュエータ25とを備える。
【0036】
スリーブ22dは、入力軸A2の軸線方向に移動可能に配設されていて、アクチュエータ25によりその軸線方向の位置が制御されるようになっている。スリーブ22dは、連結ピース22a,22b,22cとスプライン嵌合可能となっている。スリーブ22dが図3(a)に示す非接続位置(ニュートラル位置)にある場合、スリーブ22dは、連結ピース22aのみとスプライン嵌合するから、ギヤG31,G41共に入力軸A2と相対回転可能となる。スリーブ22dが図3(b)に示す3速接続位置にある場合、スリーブ22dは、連結ピース22a及び22bとスプライン嵌合するから、ギヤG41が入力軸A2と相対回転可能である一方、ギヤG31が入力軸A2と相対回転不能となる。スリーブ22dが図3(c)に示す4速接続位置にある場合、スリーブ22dは、連結ピース22a及び22cとスプライン嵌合するから、ギヤG31が入力軸A2と相対回転可能である一方、ギヤG41が入力軸A2と相対回転不能となる。
【0037】
図4に示すように、第3切替機構23は、入力軸A2に相対回転可能に軸支されたギヤG51と、出力軸A3に相対回転不能に軸支されギヤG51に常時歯合するギヤG52と、を備える。また、第3切替機構23は、入力軸A2と一体回転する連結ピース23aと、ギヤG51と一体回転する連結ピース23bと、スリーブ23dと、アクチュエータ26とを備える。
【0038】
スリーブ23dは、入力軸A2の軸線方向に移動可能に配設されていて、アクチュエータ26によりその軸線方向の位置が制御されるようになっている。スリーブ23dは、連結ピース23a,23bとスプライン嵌合可能となっている。スリーブ23dが図4(a)に示す非接続位置(ニュートラル位置)にある場合、スリーブ23dは、連結ピース23aのみとスプライン嵌合するから、ギヤG51が入力軸A2と相対回転可能となる。スリーブ23dが図4(b)に示す5速接続位置にある場合、スリーブ23dは、連結ピース23a及び23bとスプライン嵌合するから、ギヤG51が入力軸A2と相対回転不能となる。
【0039】
変速段が「1速」に設定される場合、切替機構21,22,23がそれぞれ、「1速接続位置」、「ニュートラル位置」、「ニュートラル位置」に制御される。これにより、ギヤG11,G12を介して入力軸A2と出力軸A3との間で動力伝達系統が形成され、Gtmは、(G12の歯数)/(G11の歯数)となる。この値をGtm(1)とも表記する。変速段が「2速」に設定される場合、切替機構21,22,23がそれぞれ、「2速接続位置」、「ニュートラル位置」、「ニュートラル位置」に制御される。これにより、ギヤG21,G22を介して入力軸A2と出力軸A3との間で動力伝達系統が形成され、Gtmは、(G22の歯数)/(G21の歯数)となる。この値をGtm(2)とも表記する。
【0040】
変速段が「3速」に設定される場合、切替機構21,22,23がそれぞれ、「ニュートラル位置」、「3速接続位置」、「ニュートラル位置」に制御される。これにより、ギヤG31,G32を介して入力軸A2と出力軸A3との間で動力伝達系統が形成され、Gtmは、(G32の歯数)/(G31の歯数)となる。この値をGtm(3)とも表記する。変速段が「4速」に設定される場合、切替機構21,22,23がそれぞれ、「ニュートラル位置」、「4速接続位置」、「ニュートラル位置」に制御される。これにより、ギヤG41,G42を介して入力軸A2と出力軸A3との間で動力伝達系統が形成され、Gtmは、(G42の歯数)/(G41の歯数)となる。この値をGtm(4)とも表記する。
【0041】
変速段が「5速」に設定される場合、切替機構21,22,23がそれぞれ、「ニュートラル位置」、「ニュートラル位置」、「5速接続位置」に制御される。これにより、ギヤG51,G52を介して入力軸A2と出力軸A3との間で動力伝達系統が形成され、Gtmは、(G52の歯数)/(G51の歯数)となる。この値をGtm(5)とも表記する。以上、T/M20では、アクチュエータ24,25,26を制御することで、変速機減速比Gtmを5段階に設定可能となっている。ここで、Gtm(1)>Gtm(2)>Gtm(3)>Gtm(4)>Gtm(5)という関係が成立している。
【0042】
C/T30は、周知の構成の1つを備えていて、E/G10の出力軸A1とT/M20の入力軸A2との間の動力伝達系統を遮断・接続可能となっている。この車両では、クラッチペダルは設けられていない。C/T30の状態は、アクチュエータ31のみにより制御されるようになっている。C/T30が接続状態となっている場合において、E/G10の出力軸A1とT/M20の入力軸A2とは同じ回転速度で回転する。
【0043】
M/G40は、周知の構成(例えば、交流同期モータ)の1つを有していて、ロータ41が、T/M20の入力軸A2と同軸的且つ相対回転可能に配置された出力軸A4と一体回転するようになっている。M/G40は、動力源としても発電機としても機能する。
【0044】
図5は、M/G40の出力軸A4の回転速度と、発生し得る最大トルク及びエネルギ変換効率(トルクの発生効率)との関係を示す。図5に示すように、M/G40では、発生し得る最大トルクは、出力軸A4の回転速度が或る値以下では一定であり、或る値を超えると、回転速度の増大に応じて小さくなる。そして、回転速度が許容回転速度を超えると、M/G40はトルクを発生しなくなる。また、エネルギ変換効率(トルクの発生効率)は、出力軸A4の回転速度が或る値で最大となり得、回転速度がその値から離れるに従って小さくなっていく。従って、回転速度が許容回転速度に近づくにつれて低下していく。
【0045】
切替機構50は、M/G40の出力軸A4の接続状態を切り替える機構である。切替機構50は、ロータ41と一体回転する連結ピース51と、T/M20の入力軸A2と一体回転する連結ピース52と、入力軸A2に相対回転可能に軸支された連結ピース53と、スリーブ54と、アクチュエータ55とを備える。また、切替機構50は、連結ピース53と一体回転するとともに入力軸A2に相対回転可能に軸支されたギヤGo1と、T/M20の出力軸A3と一体回転するとともにギヤGo1に常時歯合するギヤGo2とを備える。
【0046】
スリーブ54は、T/M20の入力軸A2の軸線方向に移動可能に配設されていて、アクチュエータ55によりその軸線方向の位置が制御されるようになっている。スリーブ54は、連結ピース51,52,53とスプライン嵌合可能となっている。
【0047】
スリーブ54が図6(a)に示すIN接続位置に制御される場合、スリーブ54は、連結ピース51,52とスプライン嵌合するから、M/G40の出力軸A4とT/M20の入力軸A2とが相対回転不能となる。これにより、T/M20の入力軸A2と出力軸A4との間で動力伝達系統が形成される。この状態を「IN接続状態」と呼ぶ。
【0048】
IN接続状態において、T/M20の入力軸A2の回転速度に対するM/G40の出力軸A4の回転速度の割合を「第1減速比G1」と呼び、第1減速比G1と変速機減速比Gtmとの積(G1・Gtm)を「IN接続減速比Gin」と呼ぶ。本例では、G1=1であるから、Gin=Gtmとなる。即ち、Ginは、T/M20の変速段の変化に応じて変化する。
【0049】
また、スリーブ54が図6(b)に示すOUT接続位置に制御される場合、スリーブ54は、連結ピース51,53とスプライン嵌合するから、M/G40の出力軸A4とギヤGo1とが相対回転不能となる。これにより、ギヤGo1,Go2を介してT/M20の出力軸A3と出力軸A4との間でT/M20を介することなく動力伝達系統が形成される。この状態を「OUT接続状態」と呼ぶ。
【0050】
OUT接続状態において、T/M20の出力軸A3の回転速度に対するM/G40の出力軸A4の回転速度の割合を「OUT接続減速比Gout」と呼ぶ。本例では、Goutは、(Go2の歯数)/(Go1の歯数)で一定となる。即ち、Goutは、T/M20の変速段の変化に応じて変化しない。本例では、Goutは、例えば、Gtm(2)と略等しい値に設定されている。
【0051】
また、スリーブ54が図6(c)に示す非接続位置(ニュートラル位置)に制御される場合、スリーブ54は、連結ピース51のみとスプライン嵌合するから、入力軸A2及びギヤGo1共に出力軸A4と相対回転可能となる。これにより、T/M20の出力軸A3と出力軸A4との間でもT/M20の入力軸A2と出力軸A4との間でも動力伝達系統が形成されない。この状態を「非接続状態(ニュートラル状態)」と呼ぶ。
【0052】
以上、切替機構50では、アクチュエータ55を制御することで、M/G40の出力軸A4の接続状態を、「IN接続状態」、「OUT接続状態」、「ニュートラル状態」の何れかに選択的に切り替え可能となっている。
【0053】
T/M20の出力軸A3には、ギヤGf1が相対回転不能に軸支されている。このギヤGf1は、ギヤGf2と常時歯合している。このギヤGf2は、周知の構成の1つを有する差動機構D/Fと連結されていて、差動機構D/Fは、左右1対の駆動輪と連結されている。ここで、(Gf2の歯数)/(Gf1の歯数)は、所謂最終減速比に相当する。
【0054】
また、本装置は、駆動輪の車輪速度を検出する車輪速度センサ61と、アクセルペダルAPの操作量を検出するアクセル開度センサ62と、シフトレバーSFの位置を検出するシフト位置センサ63と、M/G40に電気エネルギを供給する二次電池(バッテリB)の温度を検出するバッテリ温度センサ68と、M/G40の温度(特に、コイル部の温度)を検出するM/G温度センサ69を備えている。
【0055】
更に、本装置は、電子制御ユニットECU70を備えている。ECU70は、上述のセンサ61〜63、68、69からの情報等に基づいて、上述のアクチュエータ24,25,26,31,55を制御することで、T/M20の変速段、及びC/T30の状態を制御する。加えて、ECU70は、E/G10、及びM/G40のそれぞれの出力(駆動トルク)、並びにバッテリBの充電状態等を制御するようになっている。
【0056】
T/M20の変速段は、車輪速度センサ61から得られる車速Vと、アクセル開度センサ62から得られる運転者によるアクセルペダルAPの操作量に基づいて算出される駆動輪の要求駆動トルクTと、シフト位置センサ63から得られるシフトレバーSFの位置に基づいて制御される。シフトレバーSFの位置が「手動モード」に対応する位置にある場合、T/M20の変速段が、シフトレバーSFの操作により運転者により選択された変速段に原則的に設定される。一方、シフトレバーSFの位置が「自動モード」に対応する位置にある場合、T/M20の変速段が、車速Vと要求駆動トルクTとの組み合わせと、図7に示すマップと、に従って、シフトレバーSFが操作されることなく1速〜5速の何れかに自動的に制御される。
【0057】
図7において、実線は、車速Vの増大に伴ってシフトアップ(変速機減速比Gtmを小さくする変速作動)がなされる場合に対応する境界線であり、破線は、車速Vの減少に伴ってシフトダウン(変速機減速比Gtmを大きくする変速作動)がなされる場合に対応する境界線である。このように実線と破線の位置に差Δxが設けられているのは、車速Vが実線に対応する値の近傍で頻繁に増減するような場合において、シフトアップ、或いはシフトダウンが不必要に頻繁になされる事態(所謂ハンチング)の発生を抑制するためである。
【0058】
C/T30は、通常、接続状態に維持され、T/M20のシフトアップ・シフトダウンの作動中等において一時的に接続状態から遮断状態へと切り換えられる。
【0059】
M/G40は、E/G10と協働又は単独で、車両を駆動する駆動トルクを発生する動力源として、或いは、E/G10を始動するための動力源として使用される。また、M/G40は、車両を制動する回生トルクを発生する発電機として、或いは、車両のバッテリ(図示せず)に供給・貯留される電気エネルギを発生する発電機としても使用される。
【0060】
M/G40が車両を駆動する動力源として使用される場合、周知の手法の1つに従って、駆動輪に伝達されるE/G10の出力に基づく駆動トルクと駆動輪に伝達されるM/G40の出力に基づく駆動トルクの和が要求駆動トルクTと一致するように、E/G10の出力(駆動トルク)とM/G40の出力(駆動トルク)との配分が調整される。
【0061】
(M/G40の出力軸A4の接続状態の選択)
次に、M/G40の出力軸A4の接続状態の選択について説明する。M/G40の出力軸A4の接続状態は、車速Vと要求駆動トルクTとの組み合わせと、図8に示すマップと、に従って、自動的に選択される。
【0062】
図8に示すように、車速Vと要求駆動トルクTとの組み合わせに対して、第1IN接続領域、OUT接続領域、第2IN接続領域、及びニュートラル領域の4つの領域が存在する。第1、第2IN接続領域では「IN接続状態」が選択される。OUT接続領域では「OUT接続状態」が選択される。ニュートラル領域では「ニュートラル状態」が選択される。以下、第1、第2IN接続領域に対応する「IN接続状態」が、それぞれ、「第1IN接続状態」、「第2IN接続状態」と区別して称呼される。
【0063】
「第1IN接続状態」から「OUT接続状態」への切り替えは、車速Vが境界線L1(前記「第1閾値」に対応)を増大しながら通過したときになされる。「OUT接続状態」から「第2IN接続状態」への切り替えは、車速Vが境界線L2(前記「第2閾値」に対応)を増大しながら通過したときになされる。「第2IN接続状態」から「ニュートラル状態」への切り替えは、要求駆動トルクTが境界線L4(前記「第4閾値」に対応)よりも大きい場合において車速Vが増大しながら境界線L3(前記「第3閾値」に対応)を通過したとき、又は、車速Vが境界線L3よりも大きい場合において要求駆動トルクTが増大しながら境界線L4を通過したときになされる。
【0064】
一方、「OUT接続状態」から「第1IN接続状態」への切り替えは、車速Vが境界線L1’を減少しながら通過したときになされる。「第2IN接続状態」から「OUT接続状態」への切り替えは、車速Vが境界線L2’を減少しながら通過したときになされる。「ニュートラル状態」から「第2IN接続状態」への切り替えは、車速Vが境界線L3’を減少しながら通過したとき、又は、要求駆動トルクTが境界線L4’を減少しながら通過したときになされる。
【0065】
このように、境界線L1,L1’の位置、境界線L2,L2’の位置、境界線L3,L3’の位置、及び境界線L4,L4’の位置にそれぞれ差ΔV1〜ΔV3、及びΔT4が設けられているのは、車速Vが境界線L1,L2,L3のそれぞれの近傍で頻繁に増減するような場合、或いは、要求駆動トルクTが境界線L4の近傍で頻繁に増減するような場合において、出力軸A4の接続状態の切り替えが頻繁になされる事態(所謂ハンチング)の発生を抑制するためである。なお、差ΔV1〜ΔV3は、同じ値であっても異なる値であってもよい。
【0066】
境界線L1(低速域)は、1速から2速へのシフトアップに対応する車速よりも若干小さい車速に設定されている。即ち、境界線L1は、図7に示す1速から2速へのシフトアップに対応する境界線(実線)を車速Vが減少する方向(図において左方向)に若干移動した位置に設けられている。従って、図8に示す境界線L1は、図7に示す1速から2速へのシフトアップに対応する境界線(実線)の形状と同じ形状を有している。
【0067】
境界線L2(中速域)は、「OUT接続状態」においてM/G40の出力軸A4の回転速度が許容回転速度(図5を参照)に基づいて決定される値(例えば、許容回転速度よりも若干小さい値)と一致する場合に対応する車速に設定されている。また、本例では、この境界線L2は、図7に示す3速〜5速に対応する領域に位置している。上述のように、OUT接続減速比GoutはT/M20の変速段にかかわらず一定(本例では、例えば、Gtm(2)と略等しい値)である。従って、「OUT接続状態」においては、M/G40の出力軸A4の回転速度が上記「許容回転速度に基づいて決定される値」と一致する車速が、T/M20の変速段にかかわらず、1つの値にのみ決定される。従って、図8に示す境界線L2に対応する車速Vは、要求駆動トルクTにかかわらず一定となる(即ち、境界線L2は、図8において上下に延びる直線となる)。境界線L2に対応する車速Vは、「OUT接続減速比Gout」と前記「最終減速比」とで決定される。
【0068】
境界線L3(高速域)は、「(第2)IN接続状態」においてM/G40のエネルギ変換効率(駆動トルク側)が所定値(例えば、70パーセント)以上の領域(図5に微細なドットで示した領域を参照)の境界(特に、車速が大きい側(図において右側)の境界)にある場合に対応する車速に設定されている。
【0069】
境界線L4は、車両の走行抵抗(駆動系統に存在する種々の回転部材の摩擦抵抗、走行に伴う風により車両が受ける減速方向の抵抗、路面の勾配により車両が受ける減速方向の抵抗等の総和)に対応する駆動輪のトルク(以下、「走行抵抗トルク」と称呼する。)に基づいて決定される。走行抵抗トルクと駆動輪の駆動トルクとが一致するとき車両の前後加速度がゼロになり、駆動輪の駆動トルクが走行抵抗トルクよりも大きい(小さい)ときに前後加速度が正(負)となる。従って、境界線L4は、例えば、前後加速度が所定値(例えば、ゼロ、正の微小値、負の微小値)になる場合に対応する駆動トルクに設定され得る。即ち、境界線L4は、車輪速度センサ61の出力から得られる前後加速度の計算値、或いは、前後加速度センサ(図示せず)の出力、或いは、前後加速度に相関する値(例えば、車速変化量、エンジン回転速度変化量)等に基づいて設定され得る。
【0070】
走行抵抗トルクは、車速の増加に従って増大する。従って、図8に示すように、境界線L4は、車速Vの増加に従って上昇していく。また、走行抵抗トルクは、上り勾配が大きいほど大きい。従って、境界線L4は、上り勾配が大きいほど上方に移動する。要求駆動トルクTが境界線L4に対応する値よりも大きい状態は車両の加速状態に対応し、要求駆動トルクTが境界線L4に対応する値よりも小さい状態は車両の減速状態に対応する。
【0071】
以下、M/G40の出力軸A4の接続状態が図8に示すように選択されることによる作用・効果について説明する。なお、以下の説明では、説明の便宜上、OUT接続減速比Goutが、例えば、Gtm(2)と略等しい値に設定されているものとする。
【0072】
先ず、「車速V=0からの車両発進時では「(第1)IN接続状態」が選択されること」による作用・効果について説明する。一般に、車両発進時では、T/M20の変速段が1速に設定されるから、IN接続減速比Gin(=Gtm(1))がOUT接続減速比Goutよりも大きい。従って、「OUT接続状態」が選択される場合に比して、駆動輪に伝達されるM/G40の出力に基づく駆動トルクを大きくすることができる。この結果、車両発進時にて強い駆動トルクを駆動輪に発生させることができる。
【0073】
次に、「境界線L1が、1速から2速へのシフトアップに対応する車速よりも若干小さい車速に設定されていること」による作用・効果について説明する。車両発進後、「(第1)IN接続状態」において車速が増加しながら境界線L1(低速域)を通過した場合、「(第1)IN接続状態」から「OUT接続状態」への切り替えがなされる。この切り替えは、1速から2速へのシフトアップがなされる前になされる。従って、この切り替えが完了した後の「OUT接続状態」にて1速から2速へのシフトアップがなされる。ここで、発明の概要の欄でも述べたように、「OUT接続状態」では、T/M20の変速作動中においてもM/G40の駆動トルクを変速機T/M20の出力軸A3(従って、駆動輪)へ連続して出力し続けることができるから、変速ショックを低減できる。特に、1速から2速への変速では、変速機減速比Gtmの変化量が大きいから大きな変速ショックが発生し易い。以上より、1速から2速へのシフトアップにおける変速ショックを大幅に低減できる。
【0074】
加えて、「(第1)IN接続状態」から「OUT接続状態」への切り替えは、1速の状態でなされる。即ち、この切り替えは、OUT接続減速比GoutがIN接続減速比Gin(=Gtm(1))より小さい状態でなされる。従って、この切り替えにより、M/G40の出力軸A4の回転速度が小さくなる。ここで、上述したように、M/G40が発生し得る最大トルクは、出力軸A4の回転速度が小さいほど大きい(図5を参照)。以上より、この切り替えにより、M/G40が発生し得る最大トルクが拡大されるという効果も発揮され得る。
【0075】
次に、「境界線L2が、「OUT接続状態」において出力軸A4の回転速度が許容回転速度に基づいて決定される値と一致する場合に対応する車速に設定されていること」による作用・効果について説明する。「OUT接続状態」において車速が増加しながら境界線L2を通過した場合、「OUT接続状態」から「(第2)IN接続状態」への切り替えがなされる。上述したように、境界線L2は、図7に示す3速〜5速に対応する領域に位置しているから、この切り替えは、3速以上の変速段が選択された状態でなされる。即ち、この切り替えは、IN接続減速比Gin(=Gtm(3)、Gtm(4)、Gtm(5)の何れか)がOUT接続減速比Goutより小さい状態でなされる。従って、この切り替えにより、M/G40の出力軸A4の回転速度が、許容回転速度に近い値から小さくなる(図5において、点aから点bへの移行を参照)。この結果、出力軸A4の回転速度が許容回転速度を超える事態の発生が抑制され得ることに加え、M/G40が発生し得る最大トルクが拡大されるという効果も発揮され得る。
【0076】
次に、「境界線L3が、「(第2)IN接続状態」においてM/G40のエネルギ変換効率が所定値以上の領域の境界にある場合に対応する車速に設定されていること」による作用・効果について説明する。「(第2)IN接続状態」、且つ、要求駆動トルクTが境界線L4よりも大きい状態(即ち、車両が加速状態にある場合)において、車速が増加しながら境界線L3を通過した場合、「(第2)IN接続状態」から「非接続状態」への切り替えがなされる。これに伴い、M/G40の駆動が中止され、E/G10のみにより要求駆動トルクTが発生させられる。ここで、車速が増加している状態(即ち、M/G40の出力軸A4の回転速度が増加している状態)で車速が境界線L3を通過することは、M/G40のエネルギ変換効率が図5に微細なドットで示した領域における車速が大きい側(図において右側)の境界を通過したことを意味する(図5において、点bから点cへの移行を参照)。即ち、エネルギ変換効率が所定値以上の状態から所定値未満の状態に移行した場合に、「(第2)IN接続状態」から「非接続状態」への切り替えがなされる。他方、このようにM/G40のエネルギ変換効率が低下する高速域では、逆に、E/G10のエネルギ発生効率が良好な状態となっている場合が多い。この場合、M/G40とE/G10との協働で要求駆動トルクTを発生させるよりも、E/G10のみにより要求駆動トルクTを発生させた方が、車両全体としての総合的なエネルギ効率(燃費)を良くすることができる。以上より、車両が加速状態にあり、且つ「(第2)IN接続状態」にある高速域においてM/G40のエネルギ変換効率が所定値を下回る場合、車両全体としての総合的なエネルギ効率(燃費)を良くすることができる。
【0077】
次に、「境界線L4が、前後加速度が所定値(例えば、ゼロ、正の微小値、負の微小値)になる場合に対応する駆動トルクに設定されていること」による作用・効果について説明する。車両が加速状態にある場合、上述のように、車速が増加しながら境界線L3を通過した場合に「(第2)IN接続状態」から「非接続状態」への切り替えがなされた方が車両全体としての総合的なエネルギ効率(燃費)を良くすることができる。これに対し、車両が減速状態にある場合(即ち、要求駆動トルクTが境界線L4よりも小さい状態では)、「(第2)IN接続状態」を維持することで、M/G40により回生トルクを発生させて回生により発生する電力をバッテリに供給・貯留することができる。即ち、この場合、「非接続状態」よりも「(第2)IN接続状態」を選択した方が、車両全体としての総合的なエネルギ効率(燃費)を良くすることができる。以上より、車両が減速状態にある場合、車速Vが境界線L3に対応する値より大きくても、「(第2)IN接続状態」が維持される。
【0078】
(バッテリ温度、M/G温度、及びバッテリ残量による接続状態の調整)
本装置では、バッテリBの温度(以下、「バッテリ温度」と呼ぶ)、M/G40の温度(以下、「M/G温度」と呼ぶ)、又は、バッテリBに蓄積されている化学エネルギの量(以下、「バッテリ残量」と呼ぶ)に応じて、移動量DL3,DL4が決定される。図8に示したように、DL3が正の場合、境界線L3及びL3’の位置が、図8に示した基準位置から車速Vの減少方向(図8において左方向)にDL3だけ移動され、DL3が負の場合、境界線L3及びL3’の位置が、図8に示した基準位置から車速Vの増加方向(図8において右方向)に|DL3|だけ移動される。DL4が正の場合、境界線L4及びL4’の位置が、図8に示した基準位置から要求駆動トルクTの減少方向(図8において下方向)にDL4だけ移動され、DL4が負の場合、境界線L4及びL4’の位置が、図8に示した基準位置から要求駆動トルクTの増加方向(図8において上方向)に|DL4|だけ移動される。以下、移動量DL3,DL4をDL*と表記することもある。
【0079】
図9は、バッテリ温度と移動量DL*aとの関係を規定するマップを示したグラフである。図9に示すように、移動量DL*aは、バッテリ温度=T1のときにゼロとなり(前記基準位置に対応)、バッテリ温度>T1のときにはバッテリ温度の上昇に応じてゼロから増大し、バッテリ温度<T1のときにはバッテリ温度の低下に応じてゼロから減少していく。移動量DL3a,DL4aは、バッテリ温度に応じた同じ値であっても異なる値であってもよい。バッテリ温度は、バッテリ温度センサ68の出力から取得され得る。
【0080】
図10は、M/G温度と移動量DL*bとの関係を規定するマップを示したグラフである。図10に示すように、移動量DL*bは、M/G温度=T2のときにゼロとなり(前記基準位置に対応)、M/G温度>T2のときにはM/G温度の上昇に応じてゼロから増大し、M/G温度<T2のときにはM/G温度の低下に応じてゼロから減少していく。移動量DL3b,DL4bは、M/G温度に応じた同じ値であっても異なる値であってもよい。M/G温度は、M/G温度センサ69の出力から取得され得る。
【0081】
図11は、バッテリ残量と移動量DL*cとの関係を規定するマップを示したグラフである。図11に示すように、移動量DL*cは、バッテリ残量=V1のときにゼロとなり(前記基準位置に対応)、バッテリ残量>V1のときにはバッテリ残量の上昇に応じてゼロから増大し、バッテリ残量<V1のときにはバッテリ残量の低下に応じてゼロから減少していく。移動量DL3c,DL4cは、バッテリ残量に応じた同じ値であっても異なる値であってもよい。バッテリ残量は、周知の手法の1つに基づいて取得され得る。
【0082】
移動量DL*は、DL*aそのもの、DL*bそのもの、DL*cそのもの、或いは、DL*a,DL*b,DL*cのうちの2つ以上の組み合わせから算出される値(例えば、平均値)である。
【0083】
移動量DL*を上記のように決定することで、図8において、バッテリ温度が高いほど、M/G温度が高いほど、又は、バッテリ残量が大きいほど、ニュートラル領域が拡大する(と同時に、第2IN接続領域が縮小される)。即ち、バッテリ温度が高いほど、M/G温度が高いほど、又は、バッテリ残量が大きいほど、ニュートラル状態が選択され易くなる(選択される頻度が多くなる)。
【0084】
以下、このことによる作用・効果について説明する。ニュートラル状態では、IN接続状態及びOUT接続状態とは異なり、M/G40の動力源としての駆動及び発電機としての駆動が中止されてM/G40の出力軸A4の回転が停止される。このため、ニュートラル状態では、バッテリ温度及びM/G温度の上昇が抑制され得、且つ、バッテリBが充電され得ない。
【0085】
他方、バッテリB、及び、M/G40の保護等のため、バッテリ温度及びM/G温度が過度に高くならないように(駆動源、或いは発電機として)M/G40を作動させることが好ましい。また、バッテリ残量が十分に大きい場合、バッテリBを更に充電する必要性が低い。従って、バッテリ温度が高い場合、M/G温度が高い場合、或いは、バッテリ残量が大きい場合、ニュートラル状態が選択される時間を長くする(選択される頻度を多くする)ことが好ましい。
【0086】
上述のように、本装置では、バッテリ温度が高いほど、M/G温度が高いほど、又は、バッテリ残量が大きいほど、ニュートラル状態がより選択され易くなる。従って、バッテリ温度又はM/G温度が高い場合において、並びに、バッテリ残量が大きい場合において、ニュートラル状態が選択される時間が長くなる。この結果、バッテリ温度又はM/G温度の上昇が抑制され得、また、バッテリBが更に不必要に充電されることがなくなる。
【0087】
以上、本発明の実施形態に係る車両の動力伝達制御装置は、E/G10とM/G40とを動力源として備え、トルクコンバータを備えないT/M20を使用した所謂オートメイティッド・マニュアル・トランスミッションを備えた車両に適用される。この装置は、M/G40の出力軸A4の接続状態を、T/M20の入力軸A2と出力軸A4との間で動力伝達系統が形成される「IN接続状態」、T/M20の出力軸A3と出力軸A4との間で動力伝達系統が形成される「OUT接続状態」、いずれの間にも動力伝達系統が形成されない「ニュートラル状態」の3つの状態の何れかに選択可能な切替機構50を備える。この選択は、車速Vと要求駆動トルクTとの組み合わせ(領域)に基づいてなされる。係る選択の際、バッテリ温度が高いほど、M/G温度が高いほど、又は、バッテリ残量が大きいほど、ニュートラル領域が拡大されて、「ニュートラル状態」が選択され易くなる(選択される頻度が多くなる)。これにより、バッテリ温度又はM/G温度の上昇が抑制され得、また、バッテリBが更に不必要に充電されることがなくなる。
【0088】
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態では、変速機としてトルクコンバータを備えない多段変速機を使用した所謂オートメイティッド・マニュアル・トランスミッションが使用されているが、変速機として、トルクコンバータを備えるとともに車両の走行状態に応じて変速作動が自動的に実行される多段変速機又は無段変速機(所謂オートマチックトランスミッション(AT))が使用されてもよい。この場合、C/T30が省略される。
【0089】
また、変速機として、トルクコンバータを備えない多段変速機であって、運転者によるシフトレバーの操作力に基づくリンク機構の動作により(アクチュエータを用いることなく)直接的に変速作動が実行される形式のもの(所謂マニュアルトランスミッション(MT))が使用されてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、切替機構50では、「IN接続状態」、「OUT接続状態」、及び「ニュートラル状態」が選択可能となっているが、「ニュートラル状態」、及び「IN接続状態」のみが選択可能となっていてもよい。この場合、図8に示す境界線L1,L1’,L2,L2’が省略されて、OUT接続領域であった領域、及び、第1、第2IN接続領域であった領域、が1つのIN接続領域に統合される。また、「ニュートラル状態」、及び「OUT接続状態」のみが選択可能となっていてもよい。この場合、図8に示す境界線L1,L1’,L2,L2’が省略されて、OUT接続領域であった領域、及び、第1、第2IN接続領域であった領域、が1つのOUT接続領域に統合される。
【0091】
また、上記実施形態では、車速Vと要求駆動トルクTとの組み合わせに基づいて、M/G40の出力軸A4の接続状態が選択されているが(図8を参照)、車速V、E/G10の出力軸A1の回転速度、T/M20の入力軸A2の回転速度、及びM/G40の出力軸A4の回転速度のうちの任意の1つと、要求駆動トルクT、アクセルペダルAPの操作量、及びE/G10の吸気通路に配設されたスロットル弁(図示せず)の開度のうちの任意の1つとの組み合わせに基づいて、M/G40の出力軸A4の接続状態が選択されてもよい。スロットル弁の開度は、スロットル弁開度センサ64の出力から取得することができる。E/G10の出力軸A1の回転速度、T/M20の入力軸A2の回転速度、及びM/G40の出力軸A4の回転速度はそれぞれ、エンジン出力軸回転速度センサ65、変速機入力軸回転速度センサ66、及び電動機出力軸回転速度センサ67の出力から取得することができる。
【0092】
また、上記実施形態において、バッテリ温度が第1所定値(図9に示す値T1よりも十分に高い値)以上の場合、又は、M/G温度が第2所定値(図10に示す値T2よりも十分に高い値)以上の場合、図12に示すように、境界線L3,L3’,L4,L4’が省略されて、第2IN接続領域であった領域がニュートラル領域に統合されてもよい。これにより、第2IN接続状態が選択されていた期間が、ニュートラル状態が選択される期間に代わるから、ニュートラル状態が選択される時間が長くなる。この結果、バッテリ温度又はM/G温度が相当に高い場合において、バッテリ温度又はM/G温度の更なる上昇が確実に抑制され得、バッテリB又はM/G40を確実に保護することができる。
【0093】
同様に、上記実施形態において、バッテリ温度が第1所定値(図9に示す値T1よりも十分に高い値)以上の場合、又は、M/G温度が第2所定値(図10に示す値T2よりも十分に高い値)以上の場合、図13に示すように、車速V、及び要求駆動トルクTに依存することなくニュートラル状態のみが選択されるように構成されてもよい。これによっても、バッテリ温度又はM/G温度の更なる上昇が確実に抑制され得、バッテリB又はM/G40を確実に保護することができる。
【0094】
また、上記実施形態においては、境界線L1〜L4の位置の移動量DL*の計算に使用されるDL*a,DL*b,DL*cがそれぞれ、バッテリ温度、M/G温度、バッテリ残量に応じて連続的に変化するように設定されているが(図9〜図11を参照)、図9に対応する図14に示すように、バッテリ温度がDL*a=0に対応する値T1を含む所定の範囲内(所謂、不感帯)にある場合において、DL*a=0に維持されるように移動量DL*aが設定されてもよい。同様に、図10に対応する図15に示すように、M/G温度がDL*b=0に対応する値T2を含む所定の範囲内(所謂、不感帯)にある場合において、DL*b=0に維持されるように移動量DL*bが設定されてもよい。同様に、図11に対応する図16に示すように、バッテリ残量がDL*c=0に対応する値V1を含む所定の範囲内(所謂、不感帯)にある場合において、DL*c=0に維持されるように移動量DL*cが設定されてもよい。更には、DL*a,DL*b,DL*cがそれぞれ、バッテリ温度、M/G温度、バッテリ残量に応じてステップ的(1段階、或いは2段階以上)に変化するように設定されてもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、バッテリ温度、M/G温度、バッテリ残量に応じて境界線L3,L4の位置が変更されているが、境界線L3,L4の何れか1つのみの位置が変更されるように構成されてもよい。また、上記実施形態では、図8において、境界線L3,L4の位置が、平行移動する(即ち、座標軸に対する線の傾きが一定に維持された状態で移動する)ように変更されているが、境界線L3,L4の位置が、平行移動でない形態(即ち、座標軸に対する線の傾きが一定に維持されない状態)で移動するように変更されてもよい。
【0096】
加えて、上記実施形態では、「バッテリ温度、M/G温度、バッテリ残量」に応じて境界線L3,L4の位置を変更するにあたり、1つのマップ(図8を参照)から境界線L1〜L4が取得され、その取得された境界線L3,L4の位置が変更されるように構成されている。これに対し、複数の異なる「バッテリ温度、M/G温度、バッテリ残量」に対応するそれぞれの図8に対応する図17〜図21に示すマップA〜マップE(境界線L3,L4の位置等が異なる複数のマップ)が予め作製され、これらのマップA〜マップEの中から現在の「バッテリ温度、M/G温度、バッテリ残量」に対応するマップが選択され、選択されたマップに基づいてM/G40の出力軸A4の接続状態が選択されるように構成されてもよい。
【0097】
図17〜図21から理解できるように、マップA〜マップEのうちで、マップAが、ニュートラル領域が最も狭い(従って、ニュートラル状態が最も選択され難い)マップに対応し、マップEが、ニュートラル領域が最も広い(従って、ニュートラル状態が最も選択され易い)マップに対応する。加えて、マップAよりマップB、マップBよりマップC、マップCよりマップD、マップDよりマップEの方が、ニュートラル領域がより広い(従って、ニュートラル状態がより選択され易い)マップに対応する。この場合、図22に示すように、「バッテリ温度、M/G温度、バッテリ残量」が5つの領域に分割され、「バッテリ温度、M/G温度、バッテリ残量」が最も低い(小さい)領域から最も高い(大きい)領域に順に移行するにつれて、マップA、マップB、マップC、マップD、マップEが順に選択される。即ち、「バッテリ温度、M/G温度、バッテリ残量」がより高いほど(大きいほど)、ニュートラル領域がより広い(従って、ニュートラル状態がより選択され易い)マップが選択される。
【符号の説明】
【0098】
10…エンジン、20…変速機、30…クラッチ、40…モータジェネレータ、50…切替機構、61…車輪速度センサ、62…アクセル開度センサ、63…シフト位置センサ、68…バッテリ温度センサ、69…M/G温度センサ、70…ECU、AP…アクセルペダル、SF…シフトレバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源として内燃機関と電動機とを備えた車両に適用される車両の動力伝達制御装置であって、
前記内燃機関の出力軸との間で動力伝達系統が形成される入力軸と、前記車両の駆動輪との間で動力伝達系統が形成される出力軸とを備え、前記出力軸の回転速度に対する前記入力軸の回転速度の割合である変速機減速比を調整可能な変速機と、
前記電動機の出力軸の接続状態を、前記電動機の出力軸と前記変速機の入力軸との間で動力伝達系統が形成される入力側接続状態と、前記電動機の出力軸と前記駆動輪との間で前記変速機を介することなく動力伝達系統が形成される出力側接続状態と、前記電動機の出力軸と前記変速機の入力軸との間も前記電動機の出力軸と前記変速機の出力軸との間も動力伝達系統が形成されない非接続状態と、のうちで前記非接続状態を含む2以上の状態に切り替え可能な切替機構と、
前記電動機に電気エネルギを供給する電池の温度、前記電動機の温度、及び、前記電池に蓄積されているエネルギの量である電池残量のうちの1つ以上を状態量として取得する状態量取得手段と、
前記状態量と、前記状態量以外の前記車両の走行状態を表すパラメータとに基づいて、前記状態量に応じて前記非接続状態の選択のされ易さが変化するように前記電動機の出力軸の接続状態を選択し、前記電動機の出力軸の接続状態が前記選択された状態になるように前記切替機構を制御する制御手段と、
を備えた車両の動力伝達制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の動力伝達制御装置において、
前記制御手段は、
前記パラメータとしての前記車両の速度に相関する値が増大しながら閾値を通過したことに基づいて前記電動機の出力軸の接続状態を前記非接続状態以外の接続状態から前記非接続状態に切り替えるとともに、
前記電池の温度が高いほど、前記電動機の温度が高いほど、又は、前記電池残量が大きいほど、前記閾値がより小さい値になるように前記閾値を調整するように構成された車両の動力伝達制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両の動力伝達制御装置において、
前記制御手段は、
前記パラメータとしての前記車両の運転者による加速操作部材の操作に基づいて得られる要求駆動トルクに相関する値が増大しながら閾値を通過したことに基づいて前記電動機の出力軸の接続状態を前記非接続状態以外の接続状態から前記非接続状態に切り替えるとともに、
前記電池の温度が高いほど、前記電動機の温度が高いほど、又は、前記電池残量が大きいほど、前記閾値がより小さい値になるように前記閾値を調整するように構成された車両の動力伝達制御装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の車両の動力伝達制御装置において、
前記制御手段は、
前記電池の温度が第1所定値以上の場合、又は、前記電動機の温度が第2所定値以上の場合、前記電動機の出力軸の接続状態を前記非接続状態に常に固定するように構成された車両の動力伝達制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車両の動力伝達制御装置において、
前記制御手段は、
前記パラメータとしての前記車両の速度に相関する値が増大しながら第1閾値を通過したことに基づいて前記電動機の出力軸の接続状態を前記入力側接続状態から前記出力側接続状態に切り替え、前記車両の速度に相関する値が増大しながら前記第1閾値よりも大きい第2閾値を通過したことに基づいて前記電動機の出力軸の接続状態を前記出力側接続状態から前記入力側接続状態に切り替え、前記パラメータとしての前記車両の運転者による加速操作部材の操作に基づいて得られる要求駆動トルクに相関する値が第4閾値よりも大きい場合において前記車両の速度に相関する値が増大しながら前記第2閾値よりも大きい第3閾値を通過したこと又は前記車両の速度に相関する値が前記第3閾値よりも大きい場合において前記要求駆動トルクに相関する値が増大しながら前記第4閾値を通過したことに基づいて前記電動機の出力軸の接続状態を前記入力側接続状態から前記非接続状態に切り替えるととともに、
前記電池の温度が高いほど、前記電動機の温度が高いほど、又は、前記電池残量が大きいほど、前記第3、第4閾値がより小さい値になるように前記第3、第4閾値を調整するように構成された車両の動力伝達制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両の動力伝達制御装置において、
前記制御手段は、
前記電池の温度が第1所定値以上の場合、又は、前記電動機の温度が第2所定値以上の場合、前記車両の速度に相関する値が前記第2閾値以上の状態では前記電動機の出力軸の接続状態を前記非接続状態に固定するように構成された車両の動力伝達制御装置。
【請求項7】
請求項5に記載の車両の動力伝達制御装置において、
前記制御手段は、
前記電池の温度が第1所定値以上の場合、又は、前記電動機の温度が第2所定値以上の場合、前記車両の速度に相関する値及び前記要求駆動トルクに相関する値に依存することなく前記電動機の出力軸の接続状態を前記非接続状態に常に固定するように構成された車両の動力伝達制御装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の車両の動力伝達制御装置であって、
前記内燃機関の出力軸と前記変速機の入力軸との間に、前記内燃機関の出力軸と前記変速機の入力軸との間の動力伝達系統を遮断・接続するクラッチ機構を備え、
前記変速機は、
トルクコンバータを備えておらず、且つ、前記変速機減速比として予め定められた異なる複数の減速比を設定可能な多段変速機であり、
前記制御手段は、
前記車両の運転状態に応じて、前記クラッチ機構の遮断・接続、及び前記変速機の変速段を制御するように構成された車両の動力伝達制御装置。
【請求項1】
動力源として内燃機関と電動機とを備えた車両に適用される車両の動力伝達制御装置であって、
前記内燃機関の出力軸との間で動力伝達系統が形成される入力軸と、前記車両の駆動輪との間で動力伝達系統が形成される出力軸とを備え、前記出力軸の回転速度に対する前記入力軸の回転速度の割合である変速機減速比を調整可能な変速機と、
前記電動機の出力軸の接続状態を、前記電動機の出力軸と前記変速機の入力軸との間で動力伝達系統が形成される入力側接続状態と、前記電動機の出力軸と前記駆動輪との間で前記変速機を介することなく動力伝達系統が形成される出力側接続状態と、前記電動機の出力軸と前記変速機の入力軸との間も前記電動機の出力軸と前記変速機の出力軸との間も動力伝達系統が形成されない非接続状態と、のうちで前記非接続状態を含む2以上の状態に切り替え可能な切替機構と、
前記電動機に電気エネルギを供給する電池の温度、前記電動機の温度、及び、前記電池に蓄積されているエネルギの量である電池残量のうちの1つ以上を状態量として取得する状態量取得手段と、
前記状態量と、前記状態量以外の前記車両の走行状態を表すパラメータとに基づいて、前記状態量に応じて前記非接続状態の選択のされ易さが変化するように前記電動機の出力軸の接続状態を選択し、前記電動機の出力軸の接続状態が前記選択された状態になるように前記切替機構を制御する制御手段と、
を備えた車両の動力伝達制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の動力伝達制御装置において、
前記制御手段は、
前記パラメータとしての前記車両の速度に相関する値が増大しながら閾値を通過したことに基づいて前記電動機の出力軸の接続状態を前記非接続状態以外の接続状態から前記非接続状態に切り替えるとともに、
前記電池の温度が高いほど、前記電動機の温度が高いほど、又は、前記電池残量が大きいほど、前記閾値がより小さい値になるように前記閾値を調整するように構成された車両の動力伝達制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両の動力伝達制御装置において、
前記制御手段は、
前記パラメータとしての前記車両の運転者による加速操作部材の操作に基づいて得られる要求駆動トルクに相関する値が増大しながら閾値を通過したことに基づいて前記電動機の出力軸の接続状態を前記非接続状態以外の接続状態から前記非接続状態に切り替えるとともに、
前記電池の温度が高いほど、前記電動機の温度が高いほど、又は、前記電池残量が大きいほど、前記閾値がより小さい値になるように前記閾値を調整するように構成された車両の動力伝達制御装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の車両の動力伝達制御装置において、
前記制御手段は、
前記電池の温度が第1所定値以上の場合、又は、前記電動機の温度が第2所定値以上の場合、前記電動機の出力軸の接続状態を前記非接続状態に常に固定するように構成された車両の動力伝達制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車両の動力伝達制御装置において、
前記制御手段は、
前記パラメータとしての前記車両の速度に相関する値が増大しながら第1閾値を通過したことに基づいて前記電動機の出力軸の接続状態を前記入力側接続状態から前記出力側接続状態に切り替え、前記車両の速度に相関する値が増大しながら前記第1閾値よりも大きい第2閾値を通過したことに基づいて前記電動機の出力軸の接続状態を前記出力側接続状態から前記入力側接続状態に切り替え、前記パラメータとしての前記車両の運転者による加速操作部材の操作に基づいて得られる要求駆動トルクに相関する値が第4閾値よりも大きい場合において前記車両の速度に相関する値が増大しながら前記第2閾値よりも大きい第3閾値を通過したこと又は前記車両の速度に相関する値が前記第3閾値よりも大きい場合において前記要求駆動トルクに相関する値が増大しながら前記第4閾値を通過したことに基づいて前記電動機の出力軸の接続状態を前記入力側接続状態から前記非接続状態に切り替えるととともに、
前記電池の温度が高いほど、前記電動機の温度が高いほど、又は、前記電池残量が大きいほど、前記第3、第4閾値がより小さい値になるように前記第3、第4閾値を調整するように構成された車両の動力伝達制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両の動力伝達制御装置において、
前記制御手段は、
前記電池の温度が第1所定値以上の場合、又は、前記電動機の温度が第2所定値以上の場合、前記車両の速度に相関する値が前記第2閾値以上の状態では前記電動機の出力軸の接続状態を前記非接続状態に固定するように構成された車両の動力伝達制御装置。
【請求項7】
請求項5に記載の車両の動力伝達制御装置において、
前記制御手段は、
前記電池の温度が第1所定値以上の場合、又は、前記電動機の温度が第2所定値以上の場合、前記車両の速度に相関する値及び前記要求駆動トルクに相関する値に依存することなく前記電動機の出力軸の接続状態を前記非接続状態に常に固定するように構成された車両の動力伝達制御装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の車両の動力伝達制御装置であって、
前記内燃機関の出力軸と前記変速機の入力軸との間に、前記内燃機関の出力軸と前記変速機の入力軸との間の動力伝達系統を遮断・接続するクラッチ機構を備え、
前記変速機は、
トルクコンバータを備えておらず、且つ、前記変速機減速比として予め定められた異なる複数の減速比を設定可能な多段変速機であり、
前記制御手段は、
前記車両の運転状態に応じて、前記クラッチ機構の遮断・接続、及び前記変速機の変速段を制御するように構成された車両の動力伝達制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図18】
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【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2010−208520(P2010−208520A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57470(P2009−57470)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(592058315)アイシン・エーアイ株式会社 (490)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(592058315)アイシン・エーアイ株式会社 (490)
【Fターム(参考)】
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