説明

車両の操作装置

【課題】 運転者の利き手による操作部材の操作量を良好に反映して車両を運転できる車両の操作装置を提供すること。
【解決手段】 利き手操作判定部41は、回転操作部材13,14の検出回転角θL,θRに基づき、回転操作部材13,14の操作時間を比較判定して利き手側操作部材を決定する。重み係数決定部42は、利き手側操作部材としての回転操作部材13(回転操作部材14)の操作比率に応じて重み係数KL(重み係数KR)を大きな値に決定し、他側の回転操作部材14(回転操作部材13)の重み係数KR(重み係数KL)を小さな値に決定する。指令値演算部43は、回転角θL,θRおよび重み係数KL,KRを用いて指令値(要求値)Sを計算する。これにより、運転者が利き手によって利き手側操作部材を操作している状況において、同利き手側操作部材の操作量を車速の設定に良好に反映させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者によって独立的に操作される複数の操作部材を有する車両の操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、下記特許文献1に示された車両の運転操作装置は知られている。この従来の車両の運転操作装置は、第1のレバーと、第2のレバーと、第1のレバーの操作量を検出する第1の操作量検出手段と、第2のレバーの操作量を検出する第2の操作量検出手段とを備えている。そして、この従来の車両の運転操作装置においては、第1の操作量検出手段によって検出された第1のレバーの操作量検出値を主値とし、この主値に対して、第2の操作量検出手段によって検出された第2のレバーの操作量検出値のゲインを下げた低ゲイン信号を付加することにより転舵輪の転舵量を決定するようになっている。
【0003】
また、従来から、例えば、下記特許文献2に示された操作要素配置構造も知られている。この従来の操作要素配置構造は、互いに無関係に操作できる2つの制御ノブのうち、一方がプロペラシャフトトンネルに設けられ、他方が運転席ドアに設けられる配置構造となっている。そして、この従来の操作要素配置構造においては、各操作ノブから異なる制御指令信号が出力された場合には、各制御指令信号を重畳したり、予め優先順位を設定したりして、各制御ノブ間の指令の矛盾を阻止するようになっている。
【0004】
また、従来から、例えば、下記特許文献3に示された自動車のかじ取り装置も知られている。この従来の自動車のかじ取り装置は、少なくとも2つの操作部材を備えている。そして、運転者によりそれぞれの操作部材に対して操作力が入力されると、これら操作力を、例えば、平均化して目標値を算出するようになっている。
【0005】
さらに、従来から、例えば、下記特許文献4に示された車両の速度制御方法も知られている。この従来の車両の速度制御方法は、ステアリング操作装置の左右に配設された一対のアクセル操作部材の操作量をそれぞれ検出し、これら左右のアクセル部材のうち、所定時間内におけるアクセル変位量の小さい方または先に操作された方を選択し、この選択された側のアクセル操作部材のアクセル出力値に対応してスロットル開度を調整して走行速度を制御するようになっている。
【特許文献1】特開平9−301193号公報
【特許文献2】特開2002−160642号公報
【特許文献3】特開2000−118427号公報
【特許文献4】特開2004−108244号公報
【発明の開示】
【0006】
ところで、上記特許文献1から特許文献4に示された各装置のように、運転者が左右それぞれの手で操作部材を操作できる状況においては、一般的に、運転者は操作しやすい利き手で主に操作する機会が多い。また、利き手で操作しているときに、例えば、疲労等を覚えると、一時的に利き手ではない側の手で操作する場合もある。このように、運転者は、自身の運転操作状況に応じて左右の手を使い分け、操作部材を操作することによって車両を運転する。
【0007】
ところが、上記特許文献1に示された装置においては、主値を入力する第1のレバーと低ゲインの第2のレバーとが予め設定されている。このため、例えば、第2のレバーに対応する側の手が利き手である場合には、運転者は、車両側の設定に合わせて操作しにくい(操作慣れしていない)手で第1のレバーを操作して主値を入力しなければならない、すなわち、自身の運転スタイルを変更しなければならない場合がある。
【0008】
これに対して、上記特許文献2から特許文献4に示された各装置においては、各操作部材の操作特性が同様となるように構成されている。このため、運転者は、左右いずれの手で操作部材を操作しても同様に車両を走行させることができる。ここで、利き手によって操作する場合には操作部材を介して入力する操作量を微妙に調整することができる。このため、左右いずれの手でも同様に操作できる場合には、利き手によって入力された操作量をより大きく反映させて、車両を滑らかに走行させることが望ましい。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、運転者の利き手による操作部材の操作量を良好に反映して車両を運転できる車両の操作装置を提供することにある。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、運転者によって把持されてそれぞれ独立的に操作される第1操作部材および第2操作部材と、同第1操作部材および第2操作部材の各操作に応じて、車両の走行挙動を設定するための指令値を出力する制御装置とを備えた車両の操作装置において、前記制御装置を、前記第1操作部材の操作量を検出する第1操作量検出手段と、前記第2操作部材の操作量を検出する第2操作量検出手段と、運転者による前記第1操作部材および前記第2操作部材の操作状態を判定し、前記第1操作部材および前記第2操作部材のうちの一方を運転者の利き手によって操作される利き手側操作部材として決定する利き手操作判定手段と、前記指令値に対する前記第1操作部材の検出操作量の寄与度を表す第1重み係数および前記指令値に対する前記第2操作部材の検出操作量の寄与度を表す第2重み係数を決定するものであって、前記利き手操作判定手段によって前記利き手側操作部材として決定された前記第1操作部材の検出操作量に対する前記第1重み係数または前記第2操作部材の検出操作量に対する前記第2重み係数を、前記利き手側操作部材として決定されない前記第2操作部材の検出操作量に対する前記第2重み係数または前記第1操作部材の検出操作量に対する前記第1重み係数に比して増大して決定する重み係数決定手段と、前記決定された第1重み係数を反映した前記第1操作部材の検出操作量と、前記決定された第2重み係数を反映した前記第2操作部材の検出操作量とを用いて前記指令値を演算する指令値演算手段とで構成したことにある。
【0011】
この場合、前記利き手操作判定手段が、例えば、前記第1操作量検出手段によって検出された前記第1操作部材の操作量および前記第2操作量検出手段によって検出された前記第2操作部材の操作量を用いて、所定時間内または車両の所定走行距離内における前記第1操作部材および前記第2操作部材の運転者による操作頻度を判定し、前記第1操作部材および前記第2操作部材のうち、前記判定した操作頻度の大きい側を前記利き手側操作部材として決定するとよい。また、前記制御装置が、運転者によって前記第1操作部材および前記第2操作部材が把持されるときのそれぞれの圧力を検出する圧力検出手段を備えており、前記利き手操作判定手段が、例えば、前記圧力検出手段によって検出されたそれぞれの圧力の大きさを判定し、前記第1操作部材および前記第2操作部材のうち、前記判定した圧力の大きさが大きい側を前記利き手側操作部材として決定するとよい。
【0012】
これらによれば、運転者による第1操作部材および第2操作部材の操作頻度、あるいは、第1操作部材および第2操作部材を把持しているときの圧力(把持力)の大きさに基づいて、運転者が利き手で操作している利き手側操作部材を決定することができる。すなわち、運転者は、利き手側で操作する機会が多いため、第1操作部材および第2操作部材の所定時間あたり、または、車両の所定走行距離あたりの操作頻度を比較判定することにより、利き手側操作部材を良好に決定することができる。また、運転者が第1操作部材および第2操作部材を把持する際には、利き手側の方の圧力(把持力)が大きくなる傾向にある。このため、第1操作部材および第2操作部材が運転者によって把持されたときの圧力(把持力)を比較判定することにより、利き手側操作部材を良好に決定することができる。
【0013】
また、計算される指令値に対する利き手側操作部材側の重み係数を利き手側操作部材ではない側の重み係数よりも増大させて(大きくして)決定することができる。これにより、計算される指令値に対して、運転者によって利き手側操作部材を介して入力された操作量をより大きく反映させることができる。その結果、利き手によってきめ細かく調整された操作量を車両の走行に反映させることができ、車両をスムーズに走行させることができる。そして、このように利き手側操作部材を決定するとともに利き手側操作部材に対応する重み係数を増大して(大きくして)決定することにより、運転者は、操作しやすい運転スタイルによって第1操作部材および第2操作部材を操作することができる。言い換えれば、運転者は、車両の操作装置側で予め設定された操作特性に合わせて自身の運転スタイルを変更する必要がない。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記重み係数決定手段が、前記第1操作部材の検出操作量および前記第2操作部材の検出操作量を合算した全検出操作量に対する前記利き手側操作部材として決定された前記第1操作部材の検出操作量または前記第2操作部材の検出操作量の比に応じて、前記利き手側操作部材に対応する前記第1重み係数または前記第2重み係数を増大して決定することにもある。
【0015】
また、本発明の他の特徴は、前記制御装置は、車両の走行状態を検出する走行状態検出手段を備えており、前記重み係数決定手段が、前記走行状態検出手段によって検出された車両の走行状態が所定の走行状態であるときに、前記利き手側操作部材に対応する前記第1重み係数または前記第2重み係数を増大して決定することにもある。この場合、前記走行状態検出手段は、例えば、車両に搭載されたナビゲーション装置から出力された車両の現在位置における道路形状に基づいて車両の走行状態を検出するとよく、前記所定の走行状態は、例えば、車両の旋回頻度が大きくなる走行状態であるとよい。
【0016】
さらに、本発明の他の特徴は、前記重み係数決定手段は、前記第1操作部材および前記第2操作部材のそれぞれの検出圧力を合算した全検出圧力に対する前記利き手側操作部材として決定された前記第1操作部材または前記第2操作部材の検出圧力の比に応じて、前記利き手側操作部材に対応する前記第1重み係数または前記第2重み係数を増大して決定することにもある。
【0017】
これらによれば、運転者による利き手側操作部材の操作量や把持時の圧力(把持力)などの操作状態に応じて、利き手側操作部材に対応する重み係数を増大させることができる。また、例えば、山岳路や狭小路を走行する場合など、旋回状態が多くきめ細かな操作が必要となる走行状態に応じて、利き手側操作部材に対応する重み係数を増大させることができる。これにより、運転者が利き手側操作部材をしっかりと把持し、利き手によってきめ細かく操作量を調整する必要がある場合には、利き手側操作部材の操作量をより良好に指令値に反映させることができる。したがって、車両をよりスムーズに走行させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る車両の操作装置について図面を用いて説明する。図1は、第1実施形態に係る車両の操作装置を概略的に示している。この車両の操作装置は、運転者によって操作される操作部10と、同操作部10の操作状態に応じて種々の指令値(要求値)を算出して出力する電気制御部20とを備えている。
【0019】
操作部10は、図1および図2に概略的に示すように、車体に対して回転可能に組み付けられたシャフト11に対して、運転者による回動操作が可能となるように組み付けられた本体部材12を備えている。そして、この本体部材12には、運転者によって把持されるとともに、左右独立的に回転操作される第1および第2操作部材としての回転操作部材13,14が組み付けられている。
【0020】
回転操作部材13,14は、その軸線回りにて左右方向に独立的に回転可能に組み付けられている。そして、回転操作部材13,14は、図示しない弾性部材(例えば、バネなど)によって、運転者による回転操作に対して反力が付与されるようになっている。これにより、運転者が回転操作部材13,14から手を放した場合には、弾性部材による付勢力によって、回転操作部材13,14は、それぞれ初期位置(以下、この初期位置を中立位置という)方向に復帰動作するようになっている。ここで、以下の説明においては、それぞれの回転操作部材13,14はアクセル操作機能とブレーキ操作機能を有するものとして説明する。そして、回転操作部材13,14が、例えば、図2にて矢印で示す右方向に回転操作されたときに運転者が車両を加速させることを意図し、左方向に回転操作されたときに運転者が車両を減速させることを意図するとして説明する。
【0021】
電気制御部20は、運転者による操作部10の操作状態、より詳しくは、本体部材12の回動操作量および回転操作部材13,14の回転操作量に基づいて、後述する車両に搭載された各種電気制御装置30に対する指令値(要求値)を算出して出力する。このため、電気制御部20は、運転者による本体部材12の回動操作量(実操舵角に対応)を検出する操舵角センサ21と、運転者による回転操作部材13,14の回転操作量をそれぞれ検出する第1および第2操作量検出手段としての回転量検出センサ22,23と、車両の車速を検出する車速センサ24とを備えている。
【0022】
操舵角センサ21は、例えば、本体部材12と一体的に回転するシャフト11に組み付けられており、運転者による本体部材12の回動操作量を操舵角θsとして出力する。回転量検出センサ22,23は、例えば、本体部材12と回転操作部材13,14とをそれぞれ回転可能に連結する図示しないシャフトに組み付けられており、運転者による回転操作部材13,14の回転操作量をそれぞれ回転角θL,θRとして出力する。なお、回転量検出センサ22,23は、それぞれ、運転者によって回転操作部材13,14が中立位置から右方向(加速側)に回転操作されたときに回転角θL,θRを正の値として出力し、回転操作部材13,14が中立位置から左方向(減速側)に回転操作されたときに回転角θL,θRを負の値として出力する。また、回転量検出センサ22,23は、それぞれ、中立位置にあるときには、回転角θL,θRを「0」として出力する。車速センサ24は、車両の車速を検出して車速Vとして出力する。
【0023】
これらセンサ21〜24は、電子制御ユニット25に接続されている。電子制御ユニット25は、CPU、EEPROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品とするもので、図示しない各種プログラムの実行により、各電子制御装置30に対して出力する指令値(要求値)を算出する。このため、電子制御ユニット25は、車両内に構築された通信回線A(例えば、LANなど)に接続されており、この通信回線Aを介して算出した指令値(要求値)を各電子制御装置30に出力するようになっている。
【0024】
ここで、車両に搭載された電子制御装置30として、本明細書においては、運転者による本体部材12の回動操作に対して付与する反力の大きさを抑制する反力制御ユニット31、運転者による本体部材12の回動操作に応じて図示省略の転舵輪を転舵制御する転舵制御ユニット32、運転者による回転操作部材13,14の回転操作に応じて図示省略のエンジンを出力制御するエンジン制御ユニット33および運転者による回転操作部材13,14の回転操作に応じて図示省略のブレーキ装置を作動制御するブレーキ制御ユニット34を採用するものとする。なお、これら反力制御ユニット31、転舵制御ユニット32、エンジン制御ユニット33およびブレーキ制御ユニット34も、CPU、EEPROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品とするものである。そして、図示しない各種プログラムの実行により、それぞれ、制御対象としてのアクチュエータの作動を制御する。また、反力制御ユニット31、転舵制御ユニット32、エンジン制御ユニット33およびブレーキ制御ユニット34は、それぞれ、通信回線Aに接続されており、電子制御ユニット25と通信可能とされている。
【0025】
次に、上記のように構成した車両の操作装置が運転者によって操作されたときの動作について説明する。運転者は、操作部10の本体部材12を回動操作することによって車両を旋回させ、操作部10の回転操作部13,14を回転操作することによって車両の前後方向における走行挙動としての車速を設定することができる。以下、このような運転者の操作に対する電子制御ユニット25の動作を具体的に説明する。
【0026】
運転者が回転操作部材13,14を把持して本体部材12を回動操作すると、電子制御ユニット25は、この回動操作に応じて操舵角センサ21によって検出された操舵角θsを通信回線Aを介して反力制御ユニット31と転舵制御ユニット32に出力する。また、電子制御ユニット25は、車速センサ24によって検出された車速Vを通信回線Aを介して転舵制御ユニット32に出力する。これにより、反力制御ユニット31は出力された検出操舵角θsに応じて運転者による回動操作に対する適切な反力を付与し、転舵制御ユニット32は出力された検出操舵角θsおよび検出車速Vに応じて運転者が意図する態様で車両を旋回させるために転舵輪を転舵させる。なお、反力付与制御および転舵動作制御に関しては、直接本発明と関連するものではないため、以下に簡単に説明しておく。
【0027】
まず、反力付与制御から説明すると、反力制御ユニット31は、例えば、図3に示す特性テーブルを用いて、供給された検出操舵角θsの絶対値に対して比例関数的に変化する反力トルクTzを決定する。ここで、反力トルクTzは、検出操舵角θsの絶対値の増大に伴って増大する変化特性であるとよく、比例関数的な変化特性に代えて、例えば、検出操舵角θsの絶対値に対して指数関数的に増大する変化特性や、検出操舵角θsの絶対値に対してべき乗関数的に増大する変化特性を採用することもできる。そして、反力制御ユニット31は、例えば、シャフト11に連結された図示しない反力アクチュエータの電動モータを駆動制御することによって、運転者による本体部材12の回動操作に対して適切な反力トルクTzすなわち反力を付与する。
【0028】
次に、転舵動作制御を説明すると、転舵制御ユニット32は、供給された検出操舵角θsに応じて、転舵輪の目標転舵角δdを計算する。具体的には、転舵制御ユニット32は、検出操舵角θsを入力すると、同入力した操舵角θsに応じた転舵輪の目標転舵角δdを、例えば、下記式1に従って計算する。
δd=G・θs …式1
ただし、前記式1中のGは、操舵角θsに対する転舵輪の転舵角の比すなわち操舵ゲインである。ここで、操舵ゲインGは、例えば、図4に示すように、車速センサ24によって検出された車速Vに応じて、その大きさが変化するように決定される。すなわち、検出車速Vが小さい場合には、操舵ゲインGは大きく設定されるため、前記式1に従い操舵角θsに対して大きな目標転舵角δdが計算される。一方、検出車速Vが大きい場合には、操舵ゲインGは小さく設定されるため、前記式1に従い操舵角θsに対して小さな目標転舵角δdが計算される。
【0029】
そして、転舵制御ユニット32は、転舵輪の実転舵角が計算した目標転舵角δdと一致するように、図示しない転舵アクチュエータを構成する電動モータを駆動制御する。これにより、転舵アクチュエータと機械的に連結された転舵輪が目標転舵角δdとなるように転舵されるため、運転者は車速Vに応じて、所望の態様により車両を旋回させることができる。
【0030】
次に、運転者によって回転操作部材13,14が回転操作された場合、言い換えれば、運転者によって車両の車速を設定する操作がなされた場合について、電子制御ユニット25内にてコンピュータプログラム処理によって実現される機能を表す図5の機能ブロック図を用いて説明する。ここで、電子制御ユニット25は、回転操作部材13,14が互いに中立位置から逆方向に回転操作された場合、例えば、回転操作部材13が加速側(右方向)に回転操作されており、回転操作部14が減速側(左方向)に回転操作された場合には、減速側(左方向)への回転操作を優先して有効な操作として採用するものとする。
【0031】
上述したように、電子制御ユニット25は、操作部10における各回転操作部材13,14の回転操作に応じて、車両の車速を設定するための指令値(要求値)を算出する。このため、運転者によって操作部10の回転操作部材13,14が回転操作されると、回転量検出センサ22,23によって回転操作部13,14の回転操作量である回転角θL,θRが検出され、同検出された回転角θL,θRは利き手操作判定手段としての利き手操作判定部41に出力される。
【0032】
利き手操作判定部41は、回転操作部材13,14のうち、運転者の利き手によって操作されている側の回転操作部材13または回転操作部材14(以下、運転者が利き手で操作している側の回転操作部材13または回転操作部材14を単に利き手側操作部材という)を判定する。以下、この利き手側操作部材の判定について具体的に説明する。
【0033】
通常、運転者は、車両の加減速をきめ細かくかつ滑らかに変化させて設定するために、自身の利き手に対応する回転操作部材13または回転操作部材14を主に回転操作する傾向にある。そして、例えば、長時間の走行により、利き手に疲労を感じると、利き手ではない側の手に対応する回転操作部材14または回転操作部材13を回転操作する場合もある。このように、回転操作部材13,14の回転操作が切り替わる状況において、利き手操作判定部41は、運転者の利き手によって回転操作されている側を判定し、同判定した側の回転操作部材13または回転操作部材14を利き手側操作部材として決定する。
【0034】
すなわち、利き手操作判定部41は、回転量検出センサ22,23から出力される回転操作部材13,14の回転角θL,θRを取得する。次に、利き手操作判定部41は、回転操作部材13,14が中立位置ではない位置に操作されている状態、言い換えれば、回転量検出センサ22,23から入力した回転角θL,θRが「0」ではない状態で維持される時間(以下、この時間を操作時間という)を計測する。なお、上述したように、回転操作部材13,14には弾性部材によって中立位置方向に反力が付与されているため、運転者が手を放して回転操作していない側の回転操作部材13または回転操作部材14は中立位置(すなわち回転角θLまたは回転角θRが「0」)で維持される。
【0035】
そして、利き手操作判定部41は、回転操作部材13,14のそれぞれの操作時間を判定し、操作時間の長い側の回転操作部材13または回転操作部材14を利き手側操作部材として決定する。ここで、説明を簡単にするために、以下においては、利き手操作判定部41が回転操作部材14を利き手側操作部材として決定する場合を例示して説明する。なお、利き手操作判定部41が回転操作部材13を利き手側操作部材として決定した場合であっても、同様に実施できることはいうまでもない。このように、利き手側操作部材を判定して決定すると、利き手操作判定部41は、決定した利き手側操作部材(すなわち回転操作部材14)を表す操作部材決定情報を重み係数決定部42に供給する。
【0036】
ここで、この実施形態においては、利き手操作判定部41が回転操作部材13,14の操作時間を判定することによって、利き手側操作部材を決定するように実施する。しかしながら、このことに代えて、または、加えて、例えば、運転者によって回転操作部材13または回転操作部材14が回転操作されることによって車両が走行した走行距離を判定し、この走行距離の長い側を利き手側操作部材として決定するように実施することも可能である。
【0037】
重み係数決定手段としての重み係数決定部42は、後述するように、指令値演算部43により演算される車速を設定するための指令値(要求値)Sに対して、利き手側操作部材の操作量(すなわち回転角θR)が適切に反映されるように、回転操作部材13の回転角θLに対する重み係数KLと回転操作部14の回転角θRに対する重み係数KRを決定する。ここで、重み係数KL,KRは、それぞれ、回転操作部材13,14の回転角θL,θRの指令値(要求値)Sに対する割合(寄与度)を表すものであり、下記式2に示す関係が成立する。
KL+KR=1 …式2
【0038】
すなわち、重み係数決定部42は、利き手操作判定部41から操作部材決定情報を取得すると、同情報によって表される回転操作部材14の重み係数KRの値を増大させて大きく決定するとともに、前記式2に従って利き手側操作部材ではない側の回転操作部材13の重み係数KLの値を小さく決定する。具体的に説明すると、重み係数決定部42は、回転操作部材14の重み係数KRの値を決定するにあたり、図6にてその変化特性を概略的に示すように、回転操作部材13,14の全操作量すなわち回転角θL,θRの合算値に対する回転操作部材14の回転角θRの比(以下、この比を操作比率という)に基づいて、重み係数KRを「0.5」以上で「1」以下となる範囲で決定する。
【0039】
これにより、運転者によって利き手側操作部材である回転操作部材14が回転操作されている状況においては、常に、重み係数KRが「0.5」よりも大きく決定される。一方、重み係数決定部42は、回転操作部材14の重み係数KRの値を「0.5」以上に決定することにより、前記式2に従って回転操作部材13の重み係数KLを「0.5」以下の値に決定する。また、運転者によって回転操作部材14のみが回転操作されている状況においては、重み係数KRが「1」に決定され、重み係数KLは「0」に決定される。さらに、運転者によって回転操作部材13のみが回転操作されている状況または回転操作部材13,14がともに最大回転角まで回転操作されている状況においては、回転操作部材13,14の重み係数KL,KRがともに「0.5」に決定される。このように、重み係数決定部42は、重み係数KL,KRを決定すると、指令値演算部43に決定した重み係数KL,KRを供給する。
【0040】
指令値演算手段としての指令値演算部43は、重み係数決定部42によって決定された重み係数KL,KRを用いた下記式3に従って、車速を設定するための指令値(要求値)Sを計算する。
S=θL・KL+θR・KR …式3
ただし、前記式3中のθL,θRは、それぞれ、回転量検出センサ22,23によって検出された回転角である。
【0041】
ここで、前記式3に従って計算される指令値(要求値)Sについて説明する。上述したように、運転者が自身の利き手で回転操作部材14を回転操作している状況においては、運転者は、きめ細かくかつ滑らかに(緩やかに)回転操作することができる。そして、利き手側操作部材としての回転操作部材14が回転操作されている状況においては、重み係数決定部42によって重み係数KRが「0.5」よりも大きな値に決定される。このため、指令値(要求値)Sに対する回転操作部材14の回転角θRの割合(寄与度)を大きくすることができる。これにより、きめ細かくかつ滑らかに回転操作される回転操作部材14の回転角θRが指令値(要求値)Sに良好に反映され、その結果、運転者は極めて良好な操作フィーリングを知覚しながら極めてスムーズに車速を設定することができる。
【0042】
また、利き手側操作部材である回転操作部材14が回転操作されている状況においては、回転操作部材14の操作比率に基づき、回転操作部材13の重み係数KLが重み係数決定部42によって「0.5」以下の値に設定される。これにより、運転者が操作慣れしていない回転操作部材13を回転操作した場合であっても、計算される指令値(要求値)Sに対する回転角θLの影響を小さくすることができ、回転操作部材13の回転操作に伴う車速の変化を抑制することができる。
【0043】
一方、利き手側操作部材としての回転操作部材14が回転操作されていない状況においては、重み係数KRの値が「0.5」に決定されるため、前記式2に従い他側の回転操作部材13の重み係数KLの値が「0.5」に決定される。これにより、運転者が利き手ではない側の手で回転操作部材13を回転操作する場合であっても、比較的滑らかに車速を設定することができる。すなわち、この状況においては、運転者が操作慣れしていないため、運転者が回転操作部材13を比較的大きな変化量ですなわちギクシャクした操作態様で回転操作する可能性が高い。このため、例えば、回転操作部材13の重み係数KLを「0.5」よりも大きな値を用いて指令値(要求値)Sを計算した場合には、この指令値(要求値)Sに基づいて設定される車速の変化が大きくなり、車両の走行状態がギクシャクしたものとなる。
【0044】
これに対して、回転操作部材13の重み係数KLは「0.5」に設定されるため、計算される指令値(要求値)Sに対する回転操作部材13の大きな変化量の影響を良好に抑制することができる。したがって、運転者は、比較的容易に車速を設定することができて、車両をスムーズに走行させることができる。
【0045】
このように、指令値(要求値)Sを計算すると、指令値演算部43は計算した指令値(要求値)Sを指令値出力部44に供給する。指令値出力部44は、計算された指令値(要求値)Sを、通信回線Aを介して、エンジン制御ユニット33とブレーキ制御ユニット34に出力する。これにより、エンジン制御ユニット33とブレーキ制御ユニット34は、指令値出力部44によって出力された指令値(要求値)Sに基づき、エンジンの出力およびブレーキ装置の作動を互いに協調して制御する。したがって、回転操作部13,14の回転操作状態に基づいて計算される指令値(要求値)Sに対応した車速で車両を走行させることができる。
【0046】
以上の説明からも理解できるように、第1実施形態によれば、回転操作部材13,14のうち、運転者が自身の利き手で操作している側の操作部材を利き手側操作部材として決定することができる。そして、運転者によって利き手側操作部材が回転操作されている状況においては、同利き手側操作部材の操作量としての回転角θLまたは回転角θRの指令値(要求値)Sに対する割合(寄与度)を表す重み係数KLまたは重み係数KRの値が大きくなるように決定することができる。さらに、利き手側操作部材の操作比率に基づいて、重み係数KLまたは重み係数KRの値を「0.5」から「1」まで連続的に増大することもできる。これにより、きめ細かくかつ滑らかに回転操作される利き手側操作部材の回転角θLまたは回転角θRを指令値(要求値)Sに良好に反映することができ、その結果、運転者は極めて良好な操作フィーリングを知覚しながら極めてスムーズに車速を設定することができる。
【0047】
さらに、利き手側操作部材を決定するとともに利き手側操作部材に対応する重み係数KLまたは重み係数KRの値を増大して(大きくして)決定することにより、運転者は、操作しやすい運転スタイルによって回転操作部材13および回転操作部材14を回転操作することができる。言い換えれば、運転者は、車両の操作装置側で予め設定された操作特性に合わせて自身の運転スタイルを変更する必要がない。
【0048】
上記第1実施形態においては、利き手操作判定部41によって決定された利き手側操作部材の重み係数KLまたは重み係数KRを、操作比率に基づいて「0.5」から連続的に「1」まで増大させるように実施した。ところで、車両の走行状態として、例えば、山岳路や狭小路などを走行する際には、車両を旋回させる頻度が大きくなるため、きめ細かく車速を変更させて設定する必要がある。このため、車両の走行状態に応じて、利き手側操作部材の重み係数KLまたは重み係数KRを「0.5」から連続的に「1」まで増大させるように実施することも可能である。以下、この第2実施形態を説明するが、利き手操作判定部41、指令値演算部43および指令値出力部44に関しては、上記実施形態と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0049】
この第2実施形態においては、図7に示すように、通信回線Aに接続されたナビゲーション装置50が設けられている。なお、ナビゲーション装置50の構成およびその動作に関しては、本発明と直接関係しないため、以下に簡単に説明しておく。
【0050】
ナビゲーション装置50は、通信回線Aに接続されて電子制御ユニット25と通信可能なナビゲーション制御ユニット51と、このナビゲーション制御ユニット51に接続されるGPS(Global Positioning System)受信機52、ジャイロスコープ53および記憶装置54とで構成されている。ナビゲーション制御ユニット51は、CPU、EEPROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品としており、各種プログラムを実行してナビゲーション装置50の作動を統括的に制御する。GPS受信機52は、自車両の現在位置を検出するための電波を衛星から受信し、検出した自車両の現在位置を例えば座標データとして出力する。ジャイロスコープ53は、自車両の進行方向を検出するための車両の旋回速度を検出して出力する。記憶装置54は、ナビゲーション制御ユニット51によって実行される各種プログラムを記憶するとともに、全国に存在する道路の位置を表す地図情報、高速道路や国道、県道、市道などの道路種別を表す道路種別情報および車線数やカーブ半径、道路勾配などの道路形状を表す道路形状情報を互いに関連付けて記憶している。そして、ナビゲーション制御ユニット51は、自車両の現在位置を検出すると、検出した現在位置に対応する道路種別情報および道路形状情報を記憶装置54から取得して電子制御ユニット25に出力するようになっている。
【0051】
そして、この第2実施形態においては、重み係数決定部42は、上記第1実施形態と同様に利き手操作判定部41から操作部材決定情報を取得するとともに、図5にて破線で示すように、ナビゲーション装置50のナビゲーション制御ユニット51から出力された道路種別情報および道路形状情報に基づいて、例えば、利き手側操作部材である回転操作部材14の重み係数KRの値を増大して決定する。
【0052】
具体的に説明すると、重み係数決定部42は、取得した道路種別情報および道路形状情報に基づいて例えば車両が車線数の少なく曲がりくねった市道を走行しているなど、車速をきめ細かく設定する必要がある場合には、例えば、重み係数KRを「1」まで連続的に増大させて決定する。一方、重み係数決定部42は、取得した道路種別情報および道路形状情報に基づいて例えば車線数が多く直線部分の多い高速道路を走行しているなど、車速の変更頻度が小さい場合には、例えば、重み係数KRを「0.5」より僅かに大きな値に決定する。なお、この場合においても、重み係数決定部42は、前記式2に従い、他側の回転操作部材13の重み係数KLを算出する。
【0053】
このように、重み係数決定部42は、重み係数KL,KRを決定すると、上記第1実施形態と同様に、指令値演算部43に決定した重み係数KL,KRを供給する。これにより、指令値演算部43は、取得した重み係数KL,KRに基づき、前記式3に従って指令値(要求値)Sを計算する。
【0054】
このように、この第2実施形態においては、車両の走行状態に応じて、利き手側操作部材の重み係数KLまたは重み係数KRを決定することができる。これにより、車両の車速を変更する頻度が大きくなる山岳路や狭小路を走行する場合には、利き手側操作部材の回転操作状態を良好に反映させた指令値(要求値)Sを計算して車速を設定することができる。したがって、運転者は、きめ細かくかつ滑らかに車速を設定することができ、極めて良好な操作フィーリングを知覚しながら極めてスムーズに車速を設定することができる。
【0055】
ここで、上記第2実施形態においては、重み係数決定部42がナビゲーション装置50から供給される道路種別情報および道路形状情報に基づいて車両が山岳路や狭小路を走行していると判断し、利き手側操作部材に対応する重み係数KLまたは重み係数KRを増大させるように実施した。これに対し、ナビゲーション装置50が搭載されていない車両においては、例えば、運転者による本体部材12の回動操作状態すなわち操舵角センサ21によって検出される操舵角θsの変化に基づいて、重み係数決定部42が利き手側操作部材に対応する重み係数KLまたは重み係数KRを増大させることも可能である。これによっても、重み係数決定部42は、検出操舵角θsの変化に基づいて車両が曲がりくねった山岳路や狭小路を走行しているか否かを判断することができ、上記第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0056】
上記第1および第2変形例においては、利き手操作判定部41が、回転操作部材13,14の操作時間を判定することによって、利き手側操作部材を決定するように実施した。これに代えて、または、加えて、直接的に回転操作部材13,14の操作状態を検出して判定することによって、利き手操作判定部41が利き手側操作部材を決定するように実施することも可能である。以下、この変形例について説明する。
【0057】
この変形例においては、図8にて概略的に示すように、操作部10の本体部材12に対して、運転者による回転操作部材13,14の回転操作状態を画像として検出するための左右一対の画像検出センサ26が設けられている。画像検出センサ26は、運転者の手と回転操作部材13,14との相対的な位置関係、より詳しくは、運転者の手が回転操作部材13,14から離れたか否かを画像処理として検出する。そして、画像検出センサ26は、運転者の手が回転操作部材13,14を把持している状態を表す把持情報と、運転者の手が回転操作部材13,14から離間している状態を表す離間情報とをそれぞれ電子制御ユニット25に出力するようになっている。
【0058】
このように構成した変形例においては、図5にて破線で示すように、利き手操作判定部41は、回転操作部材13,14のそれぞれに対応して設けられた画像検出センサ26から出力された把持情報または離間情報を取得する。そして、利き手操作判定部41は、取得した把持情報および離間情報のうち、把持情報を取得している時間を判定する。これにより、利き手操作判定部41は、それぞれの画像検出センサ26から把持情報を長く取得している側の回転操作部材13または回転操作部材14を利き手側操作部材として決定する。このように、利き手側操作部材を決定すると、利き手操作判定部41は、上記第1および第2実施形態と同様に、操作部材決定情報を重み係数決定部42に供給する。したがって、この変形例においても、上記第1および第2実施形態と同様の効果が期待できる。
【0059】
また、上記変形例においては、運転者による回転操作部材13,14の把持状態を直接的に画像として検出する画像検出センサ26を設けて実施した。これに代えて、または、加えて、運転者が回転操作部材13,14を把持して回転操作するときの圧力を検出して実施することも可能である。この場合においては、図9に示すように、回転操作部材13,14に対して、運転者が把持したときの圧力(把持力)を検出して出力する左右一対の圧力センサ27が設けられている。
【0060】
そして、この場合には、図5にて破線で示すように、利き手操作判定部41は、回転操作部材13,14のそれぞれに対応して設けられた圧力センサ27から出力された圧力(把持力)を取得する。そして、利き手操作判定部41は、圧力センサ27から出力された検出圧力(把持力)を判定することによって、回転操作部材13,14のうちの何れが利き手側操作部材であるかを決定する。
【0061】
すなわち、利き手操作判定部41は、それぞれの圧力センサ27から取得した圧力値が所定の圧力値以上であるか否かを判定する。通常、運転者は、利き手で回転操作部材13または回転操作部材14を把持する際には、強い圧力(把持力)で把持するため、利き手操作判定部41は、所定の圧力値以上の圧力値を取得している側の回転操作部材13または回転操作部材14を利き手側操作部材として決定する。このように、利き手側操作部材を決定すると、利き手操作判定部41は、上記第1および第2実施形態と同様に、操作部材決定情報を重み係数決定部42に供給する。したがって、この変形例においても、上記第1および第2実施形態と同様の効果が期待できる。
【0062】
ここで、このように圧力センサ27を設けた場合においては、運転者が回転操作部材13,14をそれぞれ把持するときの検出圧力(把持力)を合算した全圧力に対する回転操作部材14の検出圧力(または回転操作部材13の検出圧力)の比(以下、この比を圧力比率という)に基づいて、重み係数決定部42が重み係数KL,KRの値を決定するように実施することも可能である。具体的に説明すると、重み係数決定部42は、図5にて破線で示すように、それぞれの圧力センサ27から回転操作部材13,14の検出圧力(把持力)を取得する。そして、重み係数決定部42は、取得したそれぞれの検出圧力(把持力)を用いて、利き手側操作部材の重み係数を「0.5」以上で「1」以下となる範囲で決定する。
【0063】
これにより、例えば、運転者によって利き手側操作部材である回転操作部材14が回転操作されている状況においては、常に、重み係数KRが「0.5」よりも大きく決定される。一方、重み係数決定部42は、回転操作部材14の重み係数KRの値を「0.5」以上に決定することにより、前記式2に従って回転操作部材13の重み係数KLを「0.5」以下の値に決定する。また、運転者によって回転操作部材14のみが回転操作されている状況においては、重み係数KRが「1」に決定され、重み係数KLは「0」に決定される。さらに、運転者によって回転操作部材13のみが回転操作されている状況または回転操作部材13,14がともに最大回転角まで回転操作されている状況においては、回転操作部材13,14の重み係数KL,KRがともに「0.5」に決定される。
【0064】
そして、重み係数決定部42は、重み係数KL,KRを決定すると、上記第1および第2実施形態と同様に、指令値演算部43に決定した重み係数KL,KRを供給する。したがって、この場合においても、上記第1および第2実施形態と同様の効果が期待できる。
【0065】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態および各変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0066】
例えば、上記実施形態および各変形例においては、回転操作部材13,14がシャフト11に一体的に組み付けられた本体部材12に形成して実施した。しかし、運転者によって独立的に操作可能であれば、例えば、運転席周りに配置されて傾倒動作可能なジョイスティックタイプの操作部本体に対して回転操作部材を形成するようにしてもよい。
【0067】
また、上記実施形態および各変形例においては、第1および第2操作部材として運転者の両手によって回転操作される回転操作部材13,14を設けて実施した。しかし、運転者の両手によって操作可能であれば、例えば、レバータイプやジョイスティックタイプなどいかなるものを用いてもよい。また、上記実施形態および各変形例においては、左右一対の回転操作部材13,14を設けて実施した。しかし、運転者が同時に独立的に操作できるように設けられていれば、その数に関してはいくつであってもよい。
【0068】
さらに、上記実施形態および各変形例においては、検出操作量として、回転操作部材13,14の回転操作量を表す回転角θL,θRを採用して実施した。しかし、運転者が操作入力可能であればいかなる値を用いてもよく、例えば、回転操作部材13,14を回転操作するときの操作力を操作量として採用して実施することも可能である。この場合、運転者が回転操作部材13,14を回転操作することによって入力された操作力を検出する力検出センサが設けられ、同センサによって検出されるそれぞれの操作力の大きさに基づいて、利き手操作判定部41は利き手側操作部材を決定し、重み係数決定部42は利き手側操作部材に対応する重み係数を増大させて決定する。そして、指令値演算部43は、検出された操作力および設定した重み係数を用いて指令値(要求値)を計算することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1および第2実施形態に共通する車両の操作装置の概略図である。
【図2】運転者によって操作される操作部をより具体的に示す斜視図である。
【図3】操舵角と反力トルクの関係を示すグラフである。
【図4】車速と操舵ゲインの関係を示すグラフである。
【図5】図1の電子制御ユニットにて実行されるコンピュータプログラム処理を機能的に表す機能ブロック図である。
【図6】図5の重み係数決定部が決定する利き手側操作部材の重み係数の変化特性を表す特性マップを概略的に示した図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係り、車両に搭載されたナビゲーション装置の構成を説明するための概略図である。
【図8】本発明の第1および第2実施形態の変形例に係り、画像検出センサを設けた操作部材を示す斜視図である。
【図9】本発明の第1および第2実施形態の変形例に係り、圧力センサを設けた操作部材を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0070】
10…操作部、11…シャフト、12…本体部材、13,14…回転操作部材、20…電気制御部、21…操舵角センサ、22,23…回転量検出センサ、24…車速センサ、25…電子制御ユニット、26…画像検出センサ、27…圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者によって把持されてそれぞれ独立的に操作される第1操作部材および第2操作部材と、同第1操作部材および第2操作部材の各操作に応じて、車両の走行挙動を設定するための指令値を出力する制御装置とを備えた車両の操作装置において、前記制御装置を、
前記第1操作部材の操作量を検出する第1操作量検出手段と、
前記第2操作部材の操作量を検出する第2操作量検出手段と、
運転者による前記第1操作部材および前記第2操作部材の操作状態を判定し、前記第1操作部材および前記第2操作部材のうちの一方を運転者の利き手によって操作される利き手側操作部材として決定する利き手操作判定手段と、
前記指令値に対する前記第1操作部材の検出操作量の寄与度を表す第1重み係数および前記指令値に対する前記第2操作部材の検出操作量の寄与度を表す第2重み係数を決定するものであって、前記利き手操作判定手段によって前記利き手側操作部材として決定された前記第1操作部材の検出操作量に対する前記第1重み係数または前記第2操作部材の検出操作量に対する前記第2重み係数を、前記利き手側操作部材として決定されない前記第2操作部材の検出操作量に対する前記第2重み係数または前記第1操作部材の検出操作量に対する前記第1重み係数に比して増大して決定する重み係数決定手段と、
前記決定された第1重み係数を反映した前記第1操作部材の検出操作量と、前記決定された第2重み係数を反映した前記第2操作部材の検出操作量とを用いて前記指令値を演算する指令値演算手段とで構成したことを特徴とする車両の操作装置。
【請求項2】
請求項1に記載した車両の操作装置において、
前記利き手操作判定手段は、
前記第1操作量検出手段によって検出された前記第1操作部材の操作量および前記第2操作量検出手段によって検出された前記第2操作部材の操作量を用いて、所定時間内または車両の所定走行距離内における前記第1操作部材および前記第2操作部材の運転者による操作頻度を判定し、前記第1操作部材および前記第2操作部材のうち、前記判定した操作頻度の大きい側を前記利き手側操作部材として決定することを特徴とする車両の操作装置。
【請求項3】
請求項1に記載した車両の操作装置において、さらに、
前記制御装置は、
運転者によって前記第1操作部材および前記第2操作部材が把持されるときのそれぞれの圧力を検出する圧力検出手段を備えており、
前記利き手操作判定手段は、
前記圧力検出手段によって検出されたそれぞれの圧力の大きさを判定し、前記第1操作部材および前記第2操作部材のうち、前記判定した圧力の大きさが大きい側を前記利き手側操作部材として決定することを特徴とする車両の操作装置。
【請求項4】
請求項1に記載した車両の操作装置において、
前記重み係数決定手段は、
前記第1操作部材の検出操作量および前記第2操作部材の検出操作量を合算した全検出操作量に対する前記利き手側操作部材として決定された前記第1操作部材の検出操作量または前記第2操作部材の検出操作量の比に応じて、前記利き手側操作部材に対応する前記第1重み係数または前記第2重み係数を増大して決定することを特徴とする車両の操作装置。
【請求項5】
請求項1に記載した車両の操作装置において、さらに、
前記制御装置は、
車両の走行状態を検出する走行状態検出手段を備えており、
前記重み係数決定手段は、
前記走行状態検出手段によって検出された車両の走行状態が所定の走行状態であるときに、前記利き手側操作部材に対応する前記第1重み係数または前記第2重み係数を増大して決定することを特徴とする車両の操作装置。
【請求項6】
請求項5に記載した車両の操作装置において、
前記走行状態検出手段は、
車両に搭載されたナビゲーション装置から出力された車両の現在位置における道路形状に基づいて車両の走行状態を検出することを特徴とする車両の操作装置。
【請求項7】
前記所定の走行状態は、車両の旋回頻度が大きくなる走行状態である請求項5に記載した車両の操作装置。
【請求項8】
請求項3に記載した車両の操作装置において、
前記重み係数決定手段は、
前記第1操作部材および前記第2操作部材のそれぞれの検出圧力を合算した全検出圧力に対する前記利き手側操作部材として決定された前記第1操作部材または前記第2操作部材の検出圧力の比に応じて、前記利き手側操作部材に対応する前記第1重み係数または前記第2重み係数を増大して決定することを特徴とする車両の操作装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−184045(P2008−184045A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19570(P2007−19570)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】