説明

車両の衝突時安全装置

【課題】車両衝突時の二次被害を防止および軽減する衝突時安全装置に関し、エアバッグが展開しないような軽度の衝突時の安全策も含めて、簡単な制御によって二次被害を防止および軽減することを目的とする。
【解決手段】自動ブレーキ制御装置5と、エンジン制御装置7と、加速度センサ15と車速センサ17からの信号に基づいて、エアバッグ21、自動ブレーキ制御装置5およびエンジン制御装置7を制御する衝突制御装置9とを備え、衝突制御装置9は衝突時の加速度の大きさを基に重度衝突と軽度衝突とを判定し、重度衝突と判定した場合には、エアバッグを作動させると同時に、自動ブレーキをフルブレーキ状態とし且つエンジンを停止状態にし、軽度衝突と判定した場合には、エアバッグを作動させずに、自動ブレーキを衝突時の加速度に対応した中間ブレーキ力とし且つエンジンを停止状態にすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の衝突時安全装置に関するものであり、特に、車両衝突時の二次被害を防止および軽減する衝突時の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の衝突時の乗員保護装置としてエアバッグシステムが搭載されているが、このシステムにおいては、車両衝突等に伴ってエアバッグを作動させるのみであり、二次的に発生する被害、例えば、衝突後に惰性走行してさらなる衝突を発生する問題等については、十分な対策がなされていなかった。
【0003】
この二次的被害の防止に関する技術として、例えば、特開平6−234342号公報(特許文献1)が知られており、該特許文献1によれば、Gセンサにより加速度G,Gが検出されると、ECUが加速度の絶対値及び方向を演算し、演算結果に基づき車載の複数の各種衝突時対策システムを選択的に動作させる。動作対象となるシステムには、操縦席用前突エアバッグ、助手席用前突エアバッグ、操縦席用側突エアバッグ、助手席用側突エアバッグ、自動消火装置、電源遮断装置、事故通報装置、プリローダシートベルト、自動ブレーキ及びドアロック解除装置を含めて制御することが開示されている。
【0004】
また、同様に二次的被害の防止技術として特開2000−219111号公報(特許文献2)が知られており、該特許文献2によれば、後部衝突の際に連続的に発生する事故を減少又は回避するために、車両長手方向加速度を検出して閾値と比較して、閾値を上回った場合に、車両ブレーキをトリガするブレーキ信号が発生することが示されている。
【0005】
また、後続車両の追突による二次衝突を防止する技術として、特開2009−101736号公報(特許文献3)、特開2009−101756号公報(特許文献4)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−234342号公報
【特許文献2】特開2000−219111号公報
【特許文献3】特開2009−101736号公報
【特許文献4】特開2009−101756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の特許文献1の二次被害防止装置では、衝突発生時の衝突方向(前突、側突、後突)および衝突の大きさに基づいて、各種衝突時対策システム(操縦席用前突エアバッグ、助手席用前突エアバッグ、操縦席用側突エアバッグ、助手席用側突エアバッグ、自動消火装置、電源遮断装置、事故通報装置、プリローダシートベルト、自動ブレーキ及びドアロック解除装置)が選択されるため、各種システムの設置等のため制御およびシステムが複雑化する。さらに、エアバッグを作動させる必要がない軽度の衝突時の場合でも、重度の二次衝突に繋がらないようにすることまでは示されていない。
【0008】
また、特許文献2は衝突時の二次衝突の防止であり、特許文献3、4は後続車両が追突するのを防止する技術であり、アクセルとブレーキの操作を間違えてアクセル操作をしてしまい縁石や車止め等を乗り越えてしまうような軽度の衝突時までを含めた防止策については示されていない。
【0009】
そこで、本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、車両衝突時の二次被害を防止および軽減する衝突時安全装置に関し、エアバッグが展開しないような軽度の衝突時の安全策も含めて、簡単な制御によって二次被害を防止および軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため、本発明は、車体に設けられ衝突を検出する加速度センサと、車速を検出する車速センサと、該加速度センサからの信号を基に展開される乗員保護用のエアバッグと、車両を乗員の操作とは別に自動で制動させる自動ブレーキ制御装置と、エンジンの作動を制御するエンジン制御装置と、前記加速度センサと車速センサからの信号に基づいて、前記エアバッグ、自動ブレーキ制御装置およびエンジン制御装置を制御する衝突制御装置とを備え、
該衝突制御装置は、制御を開始する所定の車速以上の場合に、加速度センサからの検出信号が第1閾値以上の加速度を検出した場合には重度衝突と判定する重度衝突判定部と、
前記第1閾値より小さい第2閾値と前記第1閾値との間の加速度を検出した場合には軽度衝突と判定する軽度衝突判定部と、を有し、
前記重度衝突判定部で重度衝突と判定した場合には、前記エアバッグを展開するとともに前記エンジン制御装置によってエンジンを停止し、さらに前記自動ブレーキ制御装置を車速がゼロを検出するまで全制動で作動し、
前記軽度衝突判定部で軽度衝突と判定した場合には、前記エアバッグを展開させることなく前記エンジン制御装置によってエンジンを停止し、さらに前記自動ブレーキ制御装置を車速がゼロを検出するまで中間制動で作動することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、衝突時の加速度の大きさを基に重度の衝突と軽度の衝突とを判定する。
重度の衝突とは他車両等への衝突等によって生じる加速度の変化量を想定して設定される第1閾値以上の加速度が検出された場合をいい、軽度の衝突とは、縁石や車止めの乗り越し等によって生じる加速度の変化量を想定して設定される第2閾値以上であって第1閾値に達しない範囲の加速度が生じた場合をいう。
【0012】
そして、加速度センサからの信号を基に、重度の衝突と判定した場合には、エアバッグを作動させると同時に、自動ブレーキをフルブレーキ状態とし、且つエンジンのアクセルをOFF(燃料供給を停止)にしてエンジンを停止状態にする。これによって、衝突後に車両が惰性走行してさらなる二次衝突が発生する問題を回避できる。
【0013】
また、加速度センサからの信号を基に、軽度の衝突と判定した場合には、エアバッグを作動させずに、自動ブレーキを中間のブレーキ力状態とし、且つエンジンのアクセルをOFF(燃料供給を停止)にしてエンジンを停止状態にする。これによって、エアバッグを作動させるほどの衝突でない場合であっても、つまり、運転者の操作ミス、居眠り運転、体調不等による軽度の接触事故による衝突、または、アクセルペダルとブレーキペダルの操作ミスによる縁石や車止めの乗り越し等の場合であっても、エンジン停止と自動ブレーキの作動によって車両が安全に停止するため、そのまま重大事故につながることが防止され、また、二次衝突を生じても被害を軽減できる。
【0014】
また、本発明において好ましくは、前記軽度衝突と判定した場合の前記自動ブレーキ制御装置による中間制動の制動力は、前記第1閾値と前記第2閾値の間の加速度の大きさに応じた制動力に設定されるとよい。
【0015】
このような構成によれば、軽度衝突時の自動ブレーキの制動力が、衝突時の大きさを表す加速度の大きさに応じて設定されるため、つまり、大きい加速度の場合には大きな衝突であるため、それに応じて大きさの制動力で停止させることが必要である。また、軽度衝突時にはエアバッグが展開しないため、乗員は衝突に伴う衝撃から座席に安定して保護する手段がなく、乗員自身が腕等で姿勢を保持するしかない。このため、衝突の大きさに対応しないで常にフルブレーキのような全制動を掛けると、かえって乗員に危険が伴う問題を回避でき、軽度衝突に対しても、安全に二次被害を防止および軽減することが可能となる。このように軽度衝突時には衝突の大きさに応じて制動力を変化させることで、安全に二次被害を防止および軽減することができる。
【0016】
また、本発明において好ましくは、前記第1閾値は他車両や建物等への衝突によって生じる加速度の大きさ判定閾値であり、前記第2閾値は、該第1閾値より小さく、縁石や車止めの乗り越し等によって生じる加速度大きさの判定閾値であるとよい。
このように構成することで、前述のように、重度衝突と軽度衝突との判定ができ、エアバッグを作動させる必要がない軽度の衝突時の場合をも含めて、エアバッグの展開が必要な重度衝突とともに二次被害の防止及び軽減が可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、車両衝突時の二次被害を防止および軽減する衝突時安全装置に関し、エアバッグが展開しないような軽度の衝突時の安全策も含めて、簡単な制御によって二次被害を防止および軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の車両の衝突安全装置の全体構成図を示す。
【図2】本発明の衝突制御装置および自動制御装置を示す構成ブロック図である。
【図3】本発明の衝突制御装置の制御フローを示すフローチャートである。+
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0020】
図1は、本発明の車両の衝突安全装置の全体構成を示す。車両としては特に限定するものではなく、乗用車や、トラック、バス等の大型車両も含む。
車両1に設けられた衝突安全装置3は、自動ブレーキ制御装置5、エンジン制御装置7、衝突制御装置9を備えている。
自動ブレーキ制御装置5は、操作者のブレーキペダルの操作とは関係なく自動で制動力を発生させる自動ブレーキ装置11を制御して、ブレーキ制動力の大きさや、制動の開始および停止タイミングを制御するものである。自動ブレーキ装置11は、油圧式若しくは電動式のブレーキ装置であり、各車輪に制動力を発生させるブレーキアクチュエータが前記自動ブレーキ制御装置5からの指令信号に応じて制動力を各車輪に発生させるようになっている。
また、トラックやバス等の大型車両の自動ブレーキ装置として、特に、エアブレーキを用いたシステムにおいてはフルブレーキを作動させる装置として、所謂マキシブレーキといわれるようなスプリングブレーキによって制動するようにしてもよい。
【0021】
エンジン制御装置7は、エンジン13の回転数や出力を制御するものであり、アクセル開度制御(燃料供給制御)や、燃料供給タイミング(着火タイミング)制御等を行う。本実施形態においては、アクセル開度制御を行ってエンジンへの燃料供給量及び供給タイミングを制御している。
【0022】
衝突制御装置9は、図1に示すように、車体に設けられ衝突時に発生する加速度を検出する加速度センサ15と、車速を検出する車速センサ17と、エンジン13の回転数を検出するエンジン回転数センサ19からの信号が入力され、該加速度センサ15からの信号および車速センサ17からの信号を基に展開される乗員保護用のエアバッグ21を展開させる。さらに、衝突制御装置9は、前記自動ブレーキ制御装置5およびエンジン制御装置7を制御への制御信号をも出力するようになっている。
【0023】
衝突制御装置9は、図2に示すように、加速度センサ15からの検出信号が第1閾値α1以上の加速度を検出した場合には重度衝突と判定する重度衝突判定部23と、第1閾値α1より小さい第2閾値α2と第1閾値α1との間の加速度を検出した場合には軽度衝突と判定する軽度衝突判定部25とを有している。
この第1閾値α1は他車両や建物等への衝突によって、エアバッグ21を展開する必要がある加速度の大きさの基準となる閾値であり、第2閾値α2は、第1閾値α1より小さく、縁石や車止めの乗り越し、またはエアバッグ21が展開しない軽度の衝突によって生じる加速度の大きさの基準となる閾値である。
【0024】
これら第1閾値α1、第2閾値α2は、判定閾値設定部27によって設定される。予め固定値として設定してもよく、また、実車での確認試験に基づいて車速に対応した値としてα1、α2が設定された閾値マップ29として記憶しておいてもよい。
この閾値マップ29は、車速が大きくなるに従って、閾値も大きくなる傾向で設定されるが、軽度の衝突判定の第2閾値α2の設定においては、運転者の操作ミス、居眠り運転、体調不等による軽度の接触事故による衝突の場合の判定閾値と、アクセルペダルとブレーキペダルの操作ミスによる縁石や車止めの乗り越し等の場合の判定閾値とで車速との関係を別の判定閾値を用いるようにしてもよい。
【0025】
すなわち、アクセルペダルとブレーキペダルの操作ミスによる縁石や車止めの乗り越し等の場合の加速度の変化と、運転者の操作ミス、居眠り運転、体調不良による軽度の接触による衝突の場合の加速度の変化とでは、車速と加速度の変化との関係が同一の傾向を示しにくいため、つまりアクセルペダルとブレーキペダルの操作ミスによる縁石や車止めの乗り越し等の場合における加速度の変化は、車速との関連性は弱くアクセルペダルの踏込量との関連性が強いため、所定車速以下(例えば制御を実行する車速Vより大きい車速V以下)では、さらにアクセルペダルの踏込量のパラメータも加味して、車速とアクセルペダルの踏込量とに基づいて閾値の加速度を設定するような3次元の閾値マップとしてもよい。
【0026】
この所定車速以下でさらにアクセルペダルの踏込量をも加味した3次元の閾値マップによって設定した場合には、アクセルペダルとブレーキペダルの操作ミスによる縁石や車止めの乗り越し等の場合の加速度の変化を、運転者の操作ミス、居眠り運転、体調不等による軽度の接触による衝突の場合の加速度の変化と区別して判定することができ、それぞれに対応した自動ブレーキ装置11の制動力の設定が可能になり、安全性をより高めることができる。
【0027】
図2に示すように、自動ブレーキ制御装置5は、前記重度衝突判定部23で重度衝突と判定した場合に、車速ゼロを検出するまで自動ブレーキ装置11を全制動(フルブレーキ)で作動させるフルブレーキ作動部31と、前記軽度衝突判定部25で軽度衝突と判定した場合に、車速ゼロを検出するまで自動ブレーキ装置11を中間制動力で作動させる中間ブレーキ作動部33とを備えている。
【0028】
この中間ブレーキ作動部33には、ブレーキ力算出部35が設けられ、このブレーキ力算出部35では、軽度衝突と判定したときの自動ブレーキ装置11による中間制動力が算出される。中間制動力は、衝突時に検出される第1閾値α1と第2閾値α2との間の加速度の大きさに対応した制動力として算出される。また、この中間制動力を予め設定された制動力マップを用いて算出するようにしてもよい。
そして、自動ブレーキ制御装置5からの制動力信号は、自動ブレーキ装置11に出力されて車速がゼロになるまで継続される。
【0029】
このように、軽度衝突時の自動ブレーキの制動力は、衝突時に加速度センサ15によって検出される加速度の大きさに対応して設定されるので、大きい加速度の場合には大きな衝突であるため、それに応じて大きな制動力で停車させることができ、二次衝突等の危険性を確実に防止できる。
また、軽度衝突時にはエアバッグが展開しないため、シートベルトによる保護しかないため、着座姿勢を安定に保持し難いため、衝突の大きさに対応しないで常にフルブレーキのような全制動を掛けると、ブレーキによる衝撃によってかえって乗員に危険が伴う問題があるが、本発明ではこのような問題を回避でき、軽度衝突に対しても、完全に二次被害を防止および軽減することができる。
【0030】
次に、以上の衝突制御装置9による制御について、図3のフローチャートを参照して説明する。
制御を開始すると、まず、ステップS1で車速センサ17、加速度センサ15の検出信号を読み取る。次にステップS2で、車速Vが所定のα車速Vすなわち、本制御を実行する車速以上かを判定する。例えば5km/h〜10km/h以上かを判定する。この車速以下であれば衝突による二次被害を受けても大きな損傷を生じないため、所定の車速V以上で作動するようになっている。
【0031】
そして、所定の車速以上である場合には、ステップS3に進み、所定の車速未満の場合には制御を終了する。ステップS3では、重度衝突か否かを加速度センサ15の検出値と、第1閾値α1とを比較して重度衝突の判定をする。第1閾値α1以上であれば重度衝突と判定して、ステップS4に進んでエアバッグ21を展開させる。
さらに、ステップS5に進んで、自動ブレーキ制御装置5によって自動ブレーキ装置11を強ブレーキ(フルブレーキ)にする。さらに、エンジン制御装置7によってエンジン13にアクセル開度をOFF(燃料供給停止)にする。
【0032】
その後、ステップS6で、エンジン13が停止したかをエンジン回転数センサ19からの信号を基に判定するとともに、車速がゼロかを車速センサ17からの信号を基に判定する。ともに満たした場合には、終了し、満たさない場合には、ステップS5に戻って、フルブレーキとアクセル開度OFF状態を維持する制御が繰り返される。
【0033】
また、ステップS3で、第1閾値α1以上でないと判定した場合には、ステップS7で、第2閾値α2以上か否かを比較して軽度衝突であるかを判定する。第2閾値α2以上であれば軽度衝突と判定して、エアバッグ21を展開させることなく、ステップS8に進んで、自動ブレーキ制御装置5よって自動ブレーキ装置11を弱ブレーキ(中間制動力)にする。さらに、エンジン制御装置7によってエンジン13にアクセル開度をOFF(燃料供給停止)にする。
この弱ブレーキは、フルブレーキの中間のブレーキ力が付与され、前述のように、ブレーキ力算出部35によって中間制動力が算出されて、その制動力によって制動する。
【0034】
その後、ステップS9で、エンジン13が停止したかをエンジン回転数センサ19からの信号を基に判定するとともに、車速がゼロかを車速センサ17からの信号を基に判定する。ともに満たした場合には、終了し、満たさない場合には、ステップS8に戻って、中間制動力による弱ブレーキとアクセル開度OFF状態を維持する制御が繰り返される。
【0035】
本実施形態によれば、加速度センサ15からの信号および、あらかじめ設定された第1閾値α1、第2閾値α2を用いて、重度衝突と軽度衝突とを判定することで、エアバッグの展開が必要な重度衝突の場合だけでなく、エアバッグを作動させる必要のない軽度の衝突時の場合をも含めて、二次被害の防止及び軽減を簡単な制御によって行うことができるようになる。
【0036】
また、重度衝突と判定した場合には、エアバッグ21を作動させると同時に、自動ブレーキ装置11をフルブレーキ状態とし、且つエンジン13のアクセルをOFF(燃料供給を停止)にしてエンジンを停止状態にする。これによって、衝突後に車両が惰性走行してさらなる二次衝突が発生する問題を回避できる。
また、軽度衝突と判定した場合には、エアバッグ21を作動させずに、自動ブレーキ装置11を中間のブレーキ力状態とし、且つエンジン13のアクセルをOFF(燃料供給を停止)にしてエンジンを停止状態にする。
【0037】
これによって、エアバッグ21を作動させるほどの衝突でない場合であっても、つまり、運転者の操作ミス、居眠り運転、体調不等による軽度の接触事故による衝突、または、アクセルペダルとブレーキペダルの操作ミスによる縁石や車止めの乗り越し等の場合であっても、エンジン停止と自動ブレーキの作動によって車両が安全に停止するため、そのまま重大事故につながることが防止され、また、二次衝突を生じても被害を軽減できる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、エアバッグが展開かないような軽度の衝突時の安全策も含めて、簡単な制御によって二次被害を防止および軽減することができるので、車両の衝突安全装置に適している。
【符号の説明】
【0039】
1 車体
3 衝突安全装置
5 自動ブレーキ制御装置
7 エンジン制御装置
9 衝突制御装置
11 自動ブレーキ装置
15 加速度センサ
17 車速センサ
19 エンジン回転数センサ
21 エアバッグ
23 重度衝突判定部
25 軽度衝突判定部
27 判定閾値設定部
29 閾値マップ
31 フルブレーキ作動部
33 中間ブレーキ作動部
35 ブレーキ力算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられ衝突を検出する加速度センサと、
車速を検出する車速センサと、
該加速度センサからの信号を基に展開される乗員保護用のエアバッグと、
車両を乗員の操作とは別に自動で制動させる自動ブレーキ制御装置と、
エンジンの作動を制御するエンジン制御装置と、
前記加速度センサと車速センサからの信号に基づいて、前記エアバッグ、自動ブレーキ制御装置およびエンジン制御装置を制御する衝突制御装置とを備え、
該衝突制御装置は、制御を開始する所定の車速以上の場合に、加速度センサからの検出信号が第1閾値以上の加速度を検出した場合には重度衝突と判定する重度衝突判定部と、
前記第1閾値より小さい第2閾値と前記第1閾値との間の加速度を検出した場合には軽度衝突と判定する軽度衝突判定部と、を有し、
前記重度衝突判定部で重度衝突と判定した場合には、前記エアバッグを展開するとともに前記エンジン制御装置によってエンジンを停止し、さらに前記自動ブレーキ制御装置が車速ゼロを検出するまで全制動で作動し、
前記軽度衝突判定部で軽度衝突と判定した場合には、前記エアバッグを展開させることなく前記エンジン制御装置によってエンジンを停止し、さらに前記自動ブレーキ制御装置が車速ゼロを検出するまで中間制動で作動することを特徴とする車両の衝突時安全装置。
【請求項2】
前記軽度衝突と判定した場合の前記自動ブレーキ制御装置による中間制動の制動力は、前記第1閾値と前記第2閾値の間の加速度の大きさに応じた制動力に設定されることを特徴とする請求項1記載の車両の衝突時安全装置。
【請求項3】
前記第1閾値は他車両や建物等への衝突によって生じる加速度の大きさ判定閾値であり、前記第2閾値は、該第1閾値より小さく、縁石や車止めの乗り越し等によって生じる加速度大きさの判定閾値であることを特徴とする請求項1記載の車両の衝突時安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−82298(P2013−82298A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222901(P2011−222901)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】