説明

車両の走行支援装置

【課題】前走車の追い越しなどのために自車が一時的に対向車線にはみ出す走行を行なう場合に、必要以上に早期に警報発生や自車の制動などの接触対策処理が実行されるのを防止することができる車両の走行支援装置を提供する。
【解決手段】自車1の走行形態が一時的に対向車線にはみ出した走行形態であるか否かを判断する走行形態判断手段7を備える。接触可能性判断手段9は、走行形態判断手段7の判断結果が肯定的である場合に、否定的である場合よりも、自車1の進行方向前方の領域で物体検出手段2により検出される物体と自車1との接触可能性が有るか否かの判断結果が肯定的な判断結果となるのを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車と周辺の物体との接触回避や接触時の衝撃軽減のための走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車の進行方向前方に存在する物体(対向車、前走車など)を撮像カメラやレーダなどで検出しながら、その物体と自車との接触の可能性が有るか否かを判断し、該判断結果が肯定的となる場合に、運転者に対して警報を発したり、ブレーキ装置による車両の制動を自動的に行なうようにすることで、自車と物体との接触回避や接触時の衝撃軽減を支援する走行支援装置が知られている。例えば特許文献1に見られる技術では、自車の所定時間経過後の走行位置(推定位置)が対向車の走行レーンの所定範囲にあり、且つ、自車と対向車との車間距離の検出値が、自車の走行速度と対向車の走行速度とに応じて設定された安全車間距離よりも小さい場合に、自車と対向車との接触の可能性が有ると判断される。そして、このように接触の可能性が有ると判断した場合に、運転者に対して警報を発したり、自車の制動を自動的に行なうことで、自車と対向車との接触回避や接触時の衝撃軽減を支援するようにしている。
【特許文献1】特許第3031119号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来のこの種の走行支援装置では、自車と対向車などの物体との接触の可能性を十分な余裕をもって判断するのが一般的である。例えば、特許文献1に見られるように自車と対向車との接触の可能性の有無を判断する場合には、前記安全車間距離を十分に余裕をもった大きめの距離に設定しておき、自車と対向車とが接近する状況で早めに警報の出力が開始されたり、車両の自動的な制動が開始されるようにすることが一般的である。
【0004】
一方、対面通行の二車線道路において、前走車を追い越そうとする場合や、自車の進行方向前方で路側に駐停車している車両などの静止物体を迂回して走行しようとする場合のように、運転者が意図的に自車を一時的に対向車線にはみ出させて走行する場合には、自車と対向車とがある程度接近せざるを得ない状況が多々ある。
【0005】
しかるに、特許文献1に見られるような従来の走行支援装置では、前走車の追い越しや、自車の進行方向前方の駐停車車両などの静止物体の迂回のために、運転者が意図的に自車を一時的に対向車線で走行させようとしている状況であるか否かによらずに、一律的に自車と対向車との接触の可能性の有無を判断するようにしている。このため、前走車の追い越し途中や、駐停車車両などの静止物体を迂回する走行途中で、警報が発生したり、車両の制動が自動的に行なわれる場合がある。そして、このような場合には、却って、運転者に煩わしさを及ぼしてしまう恐れがあった。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、自車が前走車を追い越したり、進行方向前方の静止物体を迂回するために、自車が一時的に対向車線にはみ出す走行を行なう場合に、必要以上に早期に警報発生や自車の制動などの接触対策処理が実行されて、運転者に煩わしさを及ぼすのを防止することができる車両の走行支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両の走行支援装置は、かかる目的を達成するために、少なくとも自車の進行方向前方の領域を含む周辺領域に存在する物体を検出する物体検出手段と、該物体検出手段により検出された物体の自車に対する相対運動情報を含む物体情報を該物体検出手段の出力に基づいて取得する物体情報取得手段と、少なくとも該物体情報取得手段により取得された物体情報に基づいて前記検出された物体と自車との接触の可能性が有るか否かを判断する接触可能性判断手段と、該接触可能性判断手段により接触の可能性が有ると判断された場合に、所定の接触対策処理を実行する接触対策処理手段とを備えた車両の走行支援装置において、自車の走行形態が一時的に対向車線にはみ出した走行形態であるか否かを判断する走行形態判断手段を備え、前記接触可能性判断手段は、該走行形態判断手段の判断結果が肯定的である場合に、該走行形態判断手段の判断結果が否定的である場合よりも、自車の進行方向前方の領域で前記物体検出手段により検出される物体と自車との接触可能性が有るか否かの判断結果が肯定的な判断結果となるのを抑制するように、該接触可能性が有るか否かを判断するための判断条件を該走行形態判断手段の判断結果に応じて変更する手段を備えることを特徴とする(第1発明)。
【0008】
かかる第1発明によれば、前走車を追い越したり、進行方向前方の駐停車車両などの静止物体を迂回する場合のように、自車の走行形態が一時的に対向車線にはみ出した走行形態である場合には、そうでない場合よりも、自車の進行方向前方の領域で前記物体検出手段により検出される物体と自車との接触可能性が有るか否かの判断結果が肯定的な判断結果となるのを抑制するように、該接触可能性が有るか否かを判断するための判断条件が前記走行形態判断手段の判断結果に応じて変更される。このため、自車の走行形態が一時的に対向車線にはみ出した走行形態である場合には、そうでない場合よりも前記接触対策処理手段による接触対策処理が実行され難くなる。
【0009】
この結果、自車が前走車を追い越したり、進行方向前方の静止物体を迂回するために、自車が一時的に対向車線にはみ出す走行を行なう場合に、必要以上に早期に警報発生や自車の制動・減速などの接触対策処理が実行されて、運転者に煩わしさを及ぼすのを防止する。
【0010】
なお、前記物体情報に含まれる相対運動情報としては、前記物体検出手段により検出された物体の自車に対する相対位置、相対速度などが挙げられる。また、物体情報には、前記物体検出手段により検出された物体の相対運動情報のほか、該物体のサイズ、形状、種類などの情報が含まれていてもよい。
【0011】
かかる第1発明では、前記接触可能性判断手段は、例えば前記物体情報取得手段により取得された物体情報に基づいて、前記検出された物体と自車とが接触するまでの予測時間である接触時間を逐次予測する手段と、該接触時間が所定の閾値以下であるか否かを前記判断条件とし、該接触時間が該所定の閾値以下になった場合に前記接触の可能性が有ると判断する手段とを具備する。この場合、接触可能性判断手段は、さらに前記走行形態判断手段の判断結果が肯定的である場合に、該走行形態判断手段の判断結果が否定的である場合よりも前記所定の閾値を小さくするように該走行形態判断手段の判断結果に応じて該所定の閾値を変更することにより前記判断条件を変更する手段を備える(第2発明)。
【0012】
この第2発明によれば、前記走行形態判断手段の判断結果が肯定的である場合に、該走行形態判断手段の判断結果が否定的である場合よりも前記所定の閾値を小さくするように該走行形態判断手段の判断結果に応じて該所定の閾値を変更するので、該走行形態判断手段の判断結果が肯定的である場合には、該判断結果が否定的である場合よりも、前記接触時間がより小さい閾値に達するまでは、前記接触可能性判断手段によって、自車と物体との接触の可能性が無いと判断されることとなる。従って、前記物体検出手段によって前記物体としての対向車が検出されるようになってから、該接触可能性判断手段によって、自車と該対向車との接触の可能性が有ると判断されるようになるまでの時間が、走行形態判断手段の判断結果が肯定的である場合の方が、該判断結果が否定的である場合よりも長くなる。これにより、走行形態判断手段の判断結果が肯定的である場合の方が、該判断結果が否定的である場合よりも、物体としての対向車との接触の可能性が有ると判断されるタイミングが遅くなり、当該判断が抑制される。そして、前記接触時間に基づいて、自車と物体との接触の可能性を判断するので、該接触の可能性の判断を適切に行なうことができる。
【0013】
前記第1発明または第2発明では、例えば、自車の走行中の走行車線が対向車線であるか否かを判断する車線判断手段と、自車が前走車の追い越し中であるか否かを判断する追い越し判断手段とを備え、前記走行形態判断手段は、少なくとも前記車線判断手段により自車の走行車線が対向車線であると判断され、且つ、前記追い越し判断手段により自車が前走車の追い越し中である判断された場合に、自車の走行形態が一時的に対向車線にはみ出した走行形態であると判断する(第3発明)。
【0014】
この第3発明によれば、前走車の追い越しのために自車を対向車線にはみ出させた走行が行なわれた場合に、前記走行形態判断手段によって、自車の走行形態が一時的に対向車線にはみ出した走行形態であると判断される。このため、前走車の追い越しのために自車を対向車線にはみ出させた走行が行なわれた場合に必要以上に早期に前記接触対策処理が実行されるのを防止することができる。
【0015】
なお、第3発明では、片側複数車線の道路での前走車の追い越しのように、自車が対向車線にはみ出すことなく、前走車を追い越す場合には、走行形態判断手段の判断結果は否定的となる。
【0016】
あるいは、前記第1発明または第2発明において、自車の走行中の走行車線が対向車線であるか否かを判断する車線判断手段と、自車が進行方向前方の静止物体を迂回する走行中であるか否かを判断する迂回走行判断手段とを備え、前記走行形態判断手段は、少なくとも前記車線判断手段により自車の走行車線が対向車線であると判断され、且つ、前記迂回走行判断手段により自車が静止物体を迂回する走行中である判断された場合に、自車の走行形態が一時的に対向車線にはみ出した走行形態であると判断する(第4発明)。
【0017】
この第4発明によれば、自車の進行方向前方の駐停車車両などの静止物体を迂回するために自車を対向車線にはみ出させた走行が行なわれた場合に、前記走行形態判断手段によって、自車の走行形態が一時的に対向車線にはみ出した走行形態であると判断される。このため、静止物体を迂回するために自車を対向車線にはみ出させた走行が行なわれた場合に必要以上に早期に前記接触対策処理が実行されるのを防止することができる。
【0018】
なお、第4発明では、片側複数車線の道路で路側の静止物体を迂回する場合のように、自車が対向車線にはみ出すことなく、該静止物体を迂回する場合には、走行形態判断手段の判断結果は否定的となる。
【0019】
また、第3発明と第4発明とを組合わせてもよい。その場合には、前記車線判断手段により自車の走行車線が対向車線であると判断され、且つ、前記追い越し判断手段および迂回走行判断手段のいずれかの判断結果が肯定的となる場合に、自車の走行形態が一時的に対向車線にはみ出した走行形態であると判断するようにすればよい。
【0020】
前記第3発明では、前記追い越し判断手段は、前記物体検出手段により前記物体としての前記前走車が自車の進行方向前方に検出されている状況で、自車が対向車線に近づく向きに移動していることと、自車に対する該前走車の相対速度が対向車線と反対側に向かう横方向の速度成分を有していることと、自車の進行方向での該相対速度の速度成分が該前走車を自車に近づける向きで所定値以上の大きさを有していることとが検出された場合に、自車が該前走車の追い越しを開始したと判断することが好ましい(第5発明)。
【0021】
これにより、前走車の追い越しの開始を的確に認識することができる。
【0022】
同様に、前記第4発明では、前記迂回走行判断手段は、前記物体検出手段により前記物体としての前記静止物体が自車の進行方向前方に検出されている状況で、自車が対向車線に近づく向きに移動していることと、自車に対する該静止物体の相対速度が対向車線と反対側に向かう横方向の速度成分を有していることと、自車の進行方向での該相対速度の速度成分が該静止物体を自車に近づける向きで所定値以上の大きさを有していることとが検出された場合に、自車が該静止物体を迂回する走行を開始したと判断することが好ましい(第6発明)。
【0023】
これにより、自車の進行方向前方の静止物体を迂回する走行の開始を的確に認識することができる。
【0024】
前記第3〜第6発明では、前記車線判断手段は、例えば、前記物体検出手段により前記物体として検出される対向車についての前記物体情報に基づいて該対向車の進路領域を推定する手段と、自車の運動状態に基づいて自車の進路領域を推定する手段とを備え、前記推定された対向車の進路領域と自車の進路領域との重なり度合いに基づいて自車の走行中の走行車線が対向車線であるか否かを判断する(第7発明)。
【0025】
すなわち、第7発明では、前記車線判断手段は、対向車についての前記物体情報に基づいて該対向車の進路領域を推定する手段を備えることで、自車に対する対向車線の領域としての、該対向車の進路領域を認識しておく。そして、該車線判断手段は、自車の運動状態(例えば自車の車速、ヨーレートなど)に基づいて自車の進路領域を推定する。この場合、自車が対向車線を走行している場合には、自車の進路領域と対向車の進路領域とが重なりを生じる。そこで、車線判断手段は、その重なり度合い(例えば自車の横方向での両進路領域の重なり幅や両進路領域の中心軸間の距離など)に基づいて、自車の走行中の走行車線が対向車線であるか否かを判断する。これにより、その判断を適切に行なうことができる。
【0026】
また、前記第1〜第7発明は、前記接触予防処理が、自車の制動処理を少なくとも含む場合に特に好適である(第8発明)。
【0027】
この第8発明によれば、自車が前走車を追い越したり、進行方向前方の静止物体を迂回するために、自車が一時的に対向車線にはみ出す走行を行なう場合に、必要以上に早期に、自車の自動的な制動が行なわれるのを防止することができ、その追い越しや迂回走行を運転者による自車の操縦によって速やかに行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の一実施形態を図1〜図6を参照して説明する。図1は本実施形態の装置の概略構成を示すブロック図、図2は図1の装置に備えたコントローラの処理を示すフローチャート、図3は図2のSTEP5の処理の詳細を示すフローチャート、図4〜図6は本実施形態の装置の作動を説明するための図である。
【0029】
図1に示すように本実施形態の車両(自車)1には、その進行方向前方の領域に存在する他車両などの物体を検出するレーダ装置2と、該レーダ装置2により検出された物体と自車1との接触の可能性が有るか否かを判断したり、その判断結果に応じて車両1に備えた警報器4およびブレーキ装置5を適宜作動させるコントローラ3とが走行支援装置の構成要素として備えられている。なお、車両1は、エンジンを走行用動力源とする通常の自動車、エンジンと電動モータとを走行用動力源とするハイブリッド車、電動モータを走行用動力源とする電動車両のいずれであってもよい。
【0030】
レーダ装置2は、自車1のフロントグリルなどの前部に搭載されており、例えば図4(a)〜(c)に示すような領域A(自車1の進行方向前方の領域)にミリ波、レーザ光などの電磁波を放射し、その電磁波の反射波から該領域A(以下、監視領域Aという)に存在する他車両などの物体を検出する。
【0031】
なお、本実施形態では、物体検出手段としてレーダ装置2を備えるようにしたが、レーダ装置2の代わりに、撮像カメラを用いてもよく、あるいは、レーダ装置2と撮像カメラとの両者を物体検出手段として併用してもよい。また、複数のレーダ装置あるいは複数の撮像カメラを自車1に搭載し、自車1の進行方向前方の領域だけでなく、自車1の後方や側方の領域を含めた自車1の周辺領域に存在する物体を検出し得るようにしてもよい。
【0032】
コントローラ3は、マイクロコンピュータやインターフェース回路などを含む電子回路ユニットであり、レーダ装置2の出力が入力されると共に、図示しないセンサから自車1の車速、ヨーレートなどの自車1の運動状態の検出値が入力される。
【0033】
そして、コントローラ3は、これに実装されたプログラムにより実現される機能として、物体情報取得手段6、走行形態判断手段7、接触可能性判断手段8、接触対策処理手段9を備えている。
【0034】
物体情報取得手段6は、レーダ装置2の出力に基づいて、前記監視領域Aに存在する個々の物体(レーダ装置2で検出された物体)に関する物体情報を取得する手段である。該物体情報には、個々の物体の自車1に対する相対位置(もしくは該物体と自車1の距離)および相対速度を含む該物体の相対運動情報や、該物体のサイズ、形状、種類に関する情報などが含まれる。
【0035】
また、走行形態判断手段7は、物体情報取得手段6で取得された物体情報や、自車1の運動状態を基に、自車1の走行形態が一時的に対向車線にはみ出した走行形態であるか否かを判断する手段である。そして、この走行形態判断手段7は、自車1の走行形態を判断するために、自車1に対する対向車線の位置を認識する対向車線認識手段10と、自車1の走行中の走行車線が対向車線であるか否かを判断する車線判断手段11と、自車1が前走車を追い越し中であるか否かを判断する追い越し判断手段12と、自車1が進行方向前方の静止物体(駐停車中の他車両など)を迂回する走行を行なっているか否かを判断する迂回走行判断手段13とを該走行形態判断手段7の処理機能として具備している。
【0036】
前記接触可能性判断手段8は、基本的には、物体情報取得手段6で取得された物体情報や、自車1の運動状態を基に、前記監視領域Aに存在する個々の物体と自車1との接触の可能性を判断する手段である。ただし、この判断においては、該接触可能性判断手段8は、前記走行形態判断手段7の判断結果に応じて、接触の可能性の有無の判断条件を変更する。
【0037】
前記接触対策処理手段9は、接触可能性判断手段8の判断結果が、接触の可能性が有るという判断結果となるような物体が存在する場合に、その接触の回避や接触時の衝撃軽減のための所定の接触対策処理を実行する手段である。本実施形態では、接触対策処理手段9は、自車1と物体との接触の可能性が有ることを運転者に認識させるために警報器4を作動させる処理と、自車1のブレーキ装置5を作動させて自車1の制動(減速)を行なう処理とを上記接触対策処理として実行する。
【0038】
補足すると、警報器4としては、例えばブザー音や音声による聴覚的な警報器、あるいは、運転者の視野領域での表示点滅などによる視覚的な警報器、あるいは、運転者用シートの振動もしくは運転者用シートベルトの張力変化による体感的な警報器、あるいは、これらを組合わせた警報器が使用される。また、接触対策処理として、ブレーキ装置5を作動させる代わりに、自車1の変速機の変速比を低速用変速比側に変化させることで、自車1の制動を行なうようにしてもよい。あるいは、走行用動力源として電動モータを備えたハイブリッド車両もしくは電動車両では、該電動モータの回生運転によって、自車1の制動を行なうようにしてもよい。さらに、接触対策処理として、警報器4の作動と、ブレーキ装置5の作動などによる自車1の制動とのうちのいずれか一方だけを行なうようにしてもよい。
【0039】
次に、前記走行形態判断手段7および接触可能性判断手段8のより具体的な処理を含めて、前記コントローラ3の全体的な処理を詳説する。
【0040】
自車1の走行中に、コントローラ3は、図2のフローチャートに示す処理を所定の演算処理周期で逐次実行する。
【0041】
コントローラ3は、まず、自車1の車速、ヨーレートなどの運動状態を含む自車状態を図示しない種々のセンサの出力などから検出する(STEP1)。この自車状態には、車速やヨーレートのほか、自車1のウィンカー、ステアリングハンドルの操舵角、アクセルペダル、ブレーキペダルなどの自車1の操縦機器の操作状態の検出データや、GPSもしくは慣性航法システムによる自車1の位置情報、ナビゲーションシステムによる自車1の周辺の道路情報が含まれていてもよい。
【0042】
次いで、コントローラ3は、レーダ装置2の出力を基に、前記物体情報取得手段6によって、前記監視領域Aに存在する個々の物体に関する物体情報を取得する(STEP2)。すなわち、レーダ装置2により検出された個々の物体の自車1に対する相対位置(もしくは該物体と自車1との距離)、相対速度などの相対運動情報と、該物体のサイズ、形状、種類に関する情報とが取得される。
【0043】
次いで、コントローラ3は、レーダ装置2により検出された(監視領域Aに存在する)個々の物体について、該物体が自車1に接触するまでの予測時間である接触時間Tを接触可能性判断手段8により算出する(STEP3)。この場合、接触時間Tの算出は例えば次のように行なわれる。すなわち、接触可能性判断手段8は、自車1の現在の運動状態としての車速およびヨーレートの検出値と該自車1のサイズ(車幅など)とを基に、自車1の所定時間後までの進路領域(自車1の通過領域)を予測すると共に、検出された個々の物体の自車1に対する現在の相対位置および相対速度と該物体のサイズとを基に、該物体1の所定時間後までの進路領域(該物体の通過領域)を予測する。そして、自車1の進路領域と、物体の進路領域とが将来の同時刻において交わる(それらの進路領域の重なりを生じる)場合には、その交わりを生じる時刻と、現在時刻との差を該物体についての接触時間Tとして算出する。
【0044】
また、自車1の進路領域と、物体の進路領域とが同時刻において交わりを生じない場合(例えば物体の相対速度のベクトルが自車1から遠ざかる向きのベクトルである場合や、該相対速度の大きさが0である場合など)には、該物体に関する接触時間Tは、後述する閾値Taiよりも必ず大きくなるようにあらかじめ定められた所定値に設定される。
【0045】
なお、物体の現在の相対速度のベクトルの向きが自車1に進行方向とほぼ一致し、且つ、該ベクトルの向きが自車1に近づく向きである場合には、該物体および自車1の進路領域を予測することなく、該物体と自車1との距離を該物体の相対速度の大きさで除算することにより、該物体についての接触時間Tを算出するようにしてもよい。また、自車1に対する物体の現在の相対速度のベクトルが、自車1から遠ざかる向きのベクトルである場合、あるいは、該相対速度の大きさが0である場合にも、自車1および物体の進路領域を予測することなく、該物体についての接触時間Tを上記所定値に設定するようにしてもよい。さらに、自車1の進路領域を予測する場合には、自車1の現在の車速およびヨーレートに加えて該車速およびヨーレートの過去履歴や、自車1のアクセルペダルやブレーキペダルの操作状態を考慮したり、ナビゲーションシステムに登録された目標経路を考慮してもよい。また、物体の進路領域を予測する場合においても、該物体の現在の相対位置および相対速度だけでなく、該相対位置および相対速度の過去履歴を考慮するようにしてもよい。
【0046】
次いで、コントローラ3は、レーダ装置2により検出された物体のうちの対向車についての物体情報を基に、自車1に対する対向車線の位置を認識する処理を走行形態判断手段7の対向車線認識手段10により実行する(STEP4)。この処理では、対向車線認識手段10は、レーダ装置2により検出された物体のうちに対向車が存在する場合に、その各対向車の相対位置および相対速度とサイズとを基に、前記STEP3で説明した場合と同様の手法で該対向車の進路領域を予測する。なお、レーダ装置2により検出された物体が対向車であるか否かは、例えば、該物体が一般的な車両相当のサイズを有すること、該物体の相対速度のベクトルの向きが自車1の進行方向とほぼ逆向きであること、並びに、該物体の相対速度の大きさが自車1の車速よりも大きいこと、という条件が満たされるか否かによって判断される。
【0047】
そして、対向車線認識手段10は、レーダ装置2により検出された各対向車について上記の如く予測した進路領域を合成することによって、自車1に対する対向車線の位置を認識する。このようにして、走行形態判断手段7は、逐次、対向車線の位置を認識する。この場合、例えば、図4(a)の点描を付した領域Bが対向車線の領域として認識される。ここで、図4(a)は、二車線道路(二車線の対面通行道路)の既定の走行車線を自車1が走行している状況を平面視で示している。ただし、図4(a)は、対面通行道路での車両の既定の走行車線が、自車1の進行方向前方に向かって左側の車線である場合について例示している。このことは、図4(b),(c)、並びに、図5および図6に示す例についても同様である。
【0048】
補足すると、自車1に撮像カメラが搭載されている場合には、その撮像画像に捕らえられる白線などのレーンマーカを基に、自車1に対する対向車線の領域を認識するようにしてもよい。
【0049】
次いで、コントローラ3は、走行形態判断手段7によって、自車1の現在の走行形態が、一時的に対向車線にはみ出した走行形態であるか否かを判断する(STEP5)。
【0050】
この判断は、より具体的には、図3のフローチャートで示すように実行される。すなわち、まず、走行形態判断手段7の追い越し判断手段12によって、自車1が前走車を追い越し中であるか否かが判断される(STEP51)。
【0051】
この判断処理は、例えば次のように実行される。すなわち、追い越し判断手段12は、レーダ装置2によって、自車1の進行方向前方に前走車が検出されている状況において、自車1が対向車線に近づく向きに移動していることと、自車1に対する該前走車の相対速度のベクトルが対向車線側と反対側に向かう横方向(自車1の車幅方向または自車1の進行方向に直交する水平方向)の速度成分を有していることと、該相対速度のベクトルの、自車1の進行方向での速度成分が該前走車を自車1に近づける向きで所定値以上の大きさを有していることとが検出された場合に、自車1が該前走車の追い越しを開始したと判断する。
【0052】
この場合、自車1の進行方向前方でレーダ装置2により検出された物体が前走車であるか否かは、例えば、該物体が一般的な車両相当のサイズを有すること、該物体の相対速度のベクトルの向きが自車1の進行方向とほぼ平行(逆向きを含む)であるか、もしくは、該相対速度の大きさがほぼ0であること、該相対速度のベクトルが自車1に近づく向きのベクトルである場合にはその相対速度の大きさが自車1の車速よりも小さいこと、という条件が満たされるか否かによって判断される。また、自車1が対向車線に近づく向きに移動しているか否かは、例えば、前記STEP4において対向車線認識手段10によって認識された対向車線と該自車1との横方向の距離が減少しているか否かによって判断される。
【0053】
なお、自車1に撮像カメラが搭載されている場合には、その撮像画像に捕らえられる物体の外形状などを考慮して自車1の進行方向前方の物体が前走車であるか否かを判断するようにしてもよい。さらに、ウィンカーが対向車線側に操作された場合に、自車1が対向車線に近づく向きに移動していると判断するようにしてもよい。また、自車1の進行方向前方に前走車が検出されている状況において、ウィンカーが対向車線側に操作され、且つ、その直前から直後にかけてのステアリングハンドルの操舵角が対向車線側に所定量以下の変化量で変化した場合に、前走車の追い越しが開始されたと判断するようにしてもよい。また、ナビゲーションシステムによって、自車1の走行中の道路が右左折不能な道路であることが認識されている場合には、自車1の進行方向前方に前走車が検出されている状況において、ウィンカーが対向車線側に操作された場合に、前走車の追い越しが開始されたと判断するようにしてもよい。
【0054】
そして、追い越し判断手段12は、上記のように自車1が前走車の追い越しを開始したと判断した時点から、所定時間が経過するまでの期間で前走車の追い越し中であると判断する。なお、この場合、上記所定時間は、追い越しの開始直前もしくは直後の前走車の相対速度や、自車1の車速、自車1のアクセルペダルの操作状態などに応じて設定される。また、自車1に搭載した撮像カメラの撮像画像によって、自車1の走行車線を認識するようにした場合には、自車1が追い越しの開始直前に走行していた元の車線に近づいていくことが認識される時点までにおいて、自車1が追い越し中であると判断するようにしてもよい。
【0055】
上記のように追い越し判断手段12による判断を行なった後、その判断結果が肯定的である場合(追い越し中である場合)には、走行形態判断手段7は、車線判断手段11によって、自車1が対向車線を走行中であるか否かを判断する(STEP53)。この判断処理は、次のように行なわれる。すなわち、車線判断手段11は、前記STEP3で説明した場合と同様の手法で自車1の進路領域を予測する。そして、車線判断手段11は、この予測した自車1の進路領域と、前記STEP4で対向車線認識手段10が認識した対向車線の領域との重なり度合いに基づいて、自車1が対向車線を走行中であるか否かを判断する。例えば、図5を参照して、対向車線認識手段10が認識した対向車線の領域が点描を付した領域Bである場合において、自車1の進行領域が斜線で示す領域Cであるとする。この場合、対向車線の領域Bと、自車1の進行領域Cとの、自車1の横方向での重なり幅dが所定値以上である場合に、自車1が対向車線を走行中であると判断される。また、該重なり幅dが、所定値よりも小さい場合(領域B,Cが重ならない場合を含む)には、自車1が対向車線を走行中でないと判断される。
【0056】
なお、対向車線の領域Bの横幅の中心線と自車1の進行領域Cの横幅の中心線との距離(自車1の横方向での距離)が所定値以下である場合に、自車1が対向車線を走行中であると判断するようにしてもよい。また、自車1に搭載した撮像カメラの撮像画像によって、自車1の走行車線を認識するようにした場合には、その撮像画像中のレーンマーカ(白線など)と自車1との位置関係を基に、自車1が対向車線を走行中であるか否かを判断するようにしてもよい。
【0057】
このSTEP53の判断結果が肯定的である場合には、走行形態判断手段7は、自車1が一時的に対向車線にはみ出した走行中であると判断する(STEP54)。また、STEP53の判断結果が否定的である場合には、走行形態判断手段7は、自車1が一時的に対向車線にはみ出した走行中でないと判断する(STEP55)。
【0058】
また、前記STEP51の判断結果が否定的である場合(自車1が前走車を追い越し中でない場合)には、走行形態判断手段7の迂回走行判断手段13によって、自車1が進行方向前方の駐停車車両などの静止物体を迂回する走行中であるか否かが判断される(STEP52)。
【0059】
この判断処理は、例えば次のように実行される。すなわち、迂回走行判断手段13は、レーダ装置2によって、自車1の進行方向前方に静止物体が検出されている状況において、自車1が対向車線に近づく向きに移動していることと、自車1に対する該静止物体の相対速度のベクトルが対向車線と反対側に向かう横方向(ほぼ車幅方向)の速度成分を有していることと、自車1の進行方向での該相対速度の速度成分が該静止物体を自車1に近づける向きで所定値以上の大きさを有していること(もしくは自車1の車速が所定値以上の車速であること)とが検出された場合に、自車1が該静止物体を迂回する走行を開始したと判断する。なお、静止物体は、駐停車車両に限らず、例えば、道路工事用の設置物なども含まれる。
【0060】
この場合、自車1の進行方向前方でレーダ装置2により検出された物体が静止物体であるか否かは、例えば、該物体の相対速度のベクトルの向きが自車1の進行方向と逆向きで、且つ、その相対速度の大きさが自車1の車速とほぼ等しいという条件が満たされるか否かによって判断される。また、自車1が対向車線に近づく向きに移動しているか否かは、前記STEP51の判断処理の場合と同様に判断される。
【0061】
なお、前記STEP51の判断処理と同様に、ウィンカーが対向車線側に操作された場合に、自車1が対向車線に近づく向きに移動していると判断するようにしてもよい。また、自車1の進行方向前方に静止物体が検出されている状況において、ウィンカーが対向車線側に操作され、且つ、その直前から直後にかけてのステアリングハンドルの操舵角が対向車線側に所定量以下の変化量で変化した場合に、該静止物体を迂回する走行が開始されたと判断するようにしてもよい。また、ナビゲーションシステムによって、自車1の走行中の道路が右左折不能な道路であることが認識されている場合には、自車1の進行方向前方に静止物体が検出されている状況において、ウィンカーが対向車線側に操作された場合に、該静止物体を迂回する走行が開始されたと判断するようにしてもよい。
【0062】
そして、迂回走行判断手段13は、上記のように自車1が静止物体を迂回する走行を開始したと判断した時点から、所定時間が経過するまでの期間を静止物体の迂回する走行中であると判断する。なお、この場合、上記所定時間は、迂回走行の開始直前もしくは直後の自車1の車速もしくは静止物体の相対速度や、自車1のアクセルペダルの操作状態などに応じて設定される。また、自車1に搭載した撮像カメラの撮像画像によって、自車1の走行車線を認識するようにした場合には、自車1が迂回走行の開始直前に走行していた元の車線に近づいていくことが認識される時点までにおいて、自車1が静止物体を迂回する走行中であると判断するようにしてもよい。
【0063】
上記のように迂回走行判断手段13による判断を行なった後、その判断結果が肯定的である場合(静止物体を迂回する走行中である場合)には、走行形態判断手段7は、車線判断手段11による前記STEP53の判断処理を実行する。そして、このSTEP53の判断結果に応じて、前記したように自車1が対向車線に一時的にはみ出した走行中であるか否かを判断する。
【0064】
以上説明した図3の処理(STEP5の判断処理)によって、走行形態判断手段7は、自車1が前走車を追い越し中であると判断した場合、または、自車1が進行方向前方の静止物体を迂回する走行中であると判断した場合において、自車1が対向車線を走行中であると判断した場合に、自車1が一時的に対向車線にはみ出した走行中であると判断する。そして、これ以外の場合には、走行形態判断手段7は、自車1が一時的に対向車線にはみ出した走行中でないと判断する。
【0065】
従って、例えば、図4(b),(c)に示すように、二車線の対面通行道路において、自車1が対向車線にはみ出して前走車を追い越す状況において、走行形態判断手段7は、自車1が対向車線に一時的にはみ出した走行中であると判断する。また、例えば、図6(a),(b)に示すように、二車線の対面通行道路において、自車1が進行方向前方の静止物体(図示例では駐停車車両)を、対向車線にはみ出して迂回する状況において、走行形態判断手段7は、自車1が対向車線に一時的にはみ出した走行中であると判断する。
【0066】
図2の説明に戻って、STEP5の判断結果は、接触可能性判断手段8に与えられる。そして、接触可能性判断手段8は、STEP5の判断結果に応じて、STEP6または7の処理を実行した後、STEP8の処理を実行することによって、レーダ装置2により検出された各物体と自車1との接触の可能性を判断する。
【0067】
本実施形態では、接触可能性判断手段8は、前記STEP3で算出した接触時間Tを所定の閾値Taiと比較することによって物体と自車1との接触の可能性を判断する。
【0068】
この場合、接触可能性判断手段8は、STEP5の判断結果に応じて、STEP6,7にて上記閾値Taiを設定する。
【0069】
すなわち、STEP5の判断結果が肯定的である場合(走行形態判断手段7によって、自車1が一時的に対向車線にはみ出した走行中であると判断された場合)には、接触可能性判断手段8は、STEP6において、閾値Taiを第1所定値TLに設定する。また、STEP5の判断結果が否定的である場合(走行形態判断手段7によって、自車1が一時的に対向車線にはみ出した走行中でないと判断された場合)には、接触可能性判断手段8は、STEP7において、閾値Taiを第2所定値THに設定する。ここで、第1所定値TLは、第2所定値THよりも小さい値である。
【0070】
このSTEP6,7の処理によって、物体と自車1との接触の可能性を判断するための判断条件が変更される(本実施形態では閾値Taiが変更される)こととなる。
【0071】
次いで、接触可能性判断手段8は、STEP8において、レーダ装置2により検出された各物体について、該物体に関する接触時間Tが閾値Tai以下であるか否かを判断する。
【0072】
そして、コントローラ3は、レーダ装置2により検出されたいずれかの物体についてSTEP8の判断結果が肯定的となる場合には、該物体と自車1との接触の可能性が有るとして、前記接触対策処理手段9の処理を実行する(STEP9)。これにより、前記警報器4が作動して、運転者に警報が発せられると共に、ブレーキ装置5が作動して、自車1の制動(減速)が行なわれる。
【0073】
また、コントローラ3は、レーダ装置2により検出された物体のいずれについても、STEP8の判断結果が否定的となる場合には、該物体と自車1との接触の可能性が無いとして、前記接触対策処理手段9の処理を実行することなく、今回の演算処理周期での図2の処理を終了する。
【0074】
この場合、STEP5の判断結果が肯定的となる場合にSTEP6で設定される閾値Tai(=TL)は、STEP5の判断結果が否定的となる場合にSTEP7で設定される閾値Tai(=TH)よりも小さい。そして、レーダ装置2により検出されたある物体についての接触時間TがT≦TLとなる場合、すなわち、該接触時間Tが十分に短くて、運転者自身による自車1と物体との接触の回避操作(ステアリング操作など)が間に合わない可能性が高い場合には、STEP5の判断結果によらずに、STEP8の判断結果が肯定的になって、接触対策処理手段9の処理が実行される。
【0075】
一方、TL<T≦THとなる状況では、自車1が前走車の追い越しや、進行方向前方の静止物体の迂回のために、一時的に対向車線にはみ出した走行中でない場合(STEP5の判断結果が否定的となる場合)には、STEP8の判断結果が肯定的となって、接触対策処理手段9の処理が実行される。
【0076】
他方、TL<T≦THとなる状況で、自車1が一時的に対向車線にはみ出した走行中である場合(STEP5の判断結果が肯定的になる場合)には、接触対策処理手段9の処理が実行されない。
【0077】
すなわち、TL<T≦THとなる状況は、接触時間Tが十分に大きくはないものの、運転者自身の意図によって、自車1が前走車の追い越しや、進行方向前方の静止物体の迂回のために、一時的に対向車線にはみ出した走行中である場合には、該接触時間T内での運転者自身による自車1と物体との接触の回避操作(ステアリング操作など)が可能な状況である。そこで、TL<T≦THとなる状況では、自車1が前走車の追い越しや、進行方向前方の静止物体の迂回のために、一時的に対向車線にはみ出した走行中である場合には、そうでない場合と異なり、接触対策処理手段9の処理を実行しないようにしている。従って、STEP5の判断結果が肯定的となる場合には、該判断結果が否定的となる場合よりも、STEP8の判断結果が肯定的となるのが抑制され、判断接触対策処理手段9の処理が実行され難くなる。
【0078】
このため、運転者自身の判断によって、前走車の追い越しや、進行方向前方の静止物体を迂回しようとする場合に、その追い越し途中や、迂回走行の途中で接触対策対策処理手段9の処理が実行されて、警報が発せられたり、自車1のブレーキ装置5が作動するような事態を回避することができる。例えば、図4(c)に示すように、自車1が対向車線を走行しながら前走車を追い越している途中で、対向車が走行してきても、その対向車に対する前記接触時間Tが前記第1閾値TL以下にならない限り、接触対策処理手段9の処理は実行されない。また、図6(b)に示すように、自車1が静止物体(図示例では駐停車車両)を迂回するために対向車線にはみ出して走行している途中で、対向車が走行してきても、その対向車に対する前記接触時間Tが前記第1閾値TL以下にならない限り、接触対策処理手段9の処理は実行されない。
【0079】
従って、自車1が前走車を追い越す場合や、進行方向前方の静止物体を迂回する場合に、必要以上に早期に接触対策処理手段9の処理が実行されて、運転者に煩わしさを及ぼすのを防止することができる。
【0080】
なお、以上説明した実施形態では、図3に示したフローチャートの処理によって、自車1が一時的に対向車線にはみ出した走行中であるか否かを判断するようにしたが、例えばナビゲーションシステムによって、自車1が走行中の道路が、二車線の対面通行道路であることが認識できる場合には、ウィンカーが対向車線側に操作され、且つ、その直前から直後にかけてのステアリングハンドルの操舵角が対向車線側に所定量以下の変化量で変化した場合に、自車1が追い越し中であるか、静止物体を迂回する走行中であるか否かを判断するすることなく、自車1が一時的に対向車線にはみ出した走行中であると判断するようにしてもよい。
【0081】
また、前記実施形態では、接触時間Tと閾値Taiとの比較によって、物体と自車1の接触の可能性を判断したが、例えば、自車1の進路領域と、物体の進路領域とが将来の同時刻において交わる場合に、該物体と自車1との距離が、該物体の相対速度にあらかじめ定めた所定時間を乗じてなる値以下となる場合に、該物体の自車1との接触の可能性が有ると判断するようにしてもよい。
【0082】
また、TL<T≦THとなる状況では、前記STEP5の判断結果が否定的となる場合に、ブレーキ装置5を作動させずに、警報器4だけを作動させるようにしてもよい。また、前記STEP5の判断結果が否定的となる場合に、T≦TLとなる状況と、TL<T≦THとなる状況とで、ブレーキ装置5による自車1の制動力を異ならせる(後者の状況よりも、前者の状況の方が制動力を大きくする)ようにしてもよい。
【0083】
また、図2のフローチャートの処理は、適宜実行順序を変更するようにしてもよい。例えばSTEP1,2の処理の実行順序を入れ替えたり、STEP4の処理をSTEP8の処理の直前に行なうようにしてもよい。また、図3のフローチャートの処理にあっては、STEP53の判断処理をSTEP51,52の処理の前に実行したり、STEP52の判断処理をSTEP51の判断処理の前に実行するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の一実施形態の装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】図1の装置に備えたコントローラの処理を示すフローチャート。
【図3】図2のSTEP5の処理の詳細を示すフローチャート。
【図4】図4(a)〜(c)は本実施形態の装置の作動を説明するための図。
【図5】実施形態の装置の作動を説明するための図。
【図6】図6(a),(b)は実施形態の装置の作動を説明するための図。
【符号の説明】
【0085】
1…車両(自車)、2…レーダ装置(物体検出手段)、6…物体情報取得手段、7…走行形態判断手段、8…接触可能性判断手段、9…接触対策処理手段、11…車線判断手段、12…追い越し判断手段、13…迂回走行判断手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも自車の進行方向前方の領域を含む周辺領域に存在する物体を検出する物体検出手段と、該物体検出手段により検出された物体の自車に対する相対運動情報を含む物体情報を該物体検出手段の出力に基づいて取得する物体情報取得手段と、少なくとも該物体情報取得手段により取得された物体情報に基づいて前記検出された物体と自車との接触の可能性が有るか否かを判断する接触可能性判断手段と、該接触可能性判断手段により接触の可能性が有ると判断された場合に、所定の接触対策処理を実行する接触対策処理手段とを備えた車両の走行支援装置において、
自車の走行形態が一時的に対向車線にはみ出した走行形態であるか否かを判断する走行形態判断手段を備え、
前記接触可能性判断手段は、該走行形態判断手段の判断結果が肯定的である場合に、該走行形態判断手段の判断結果が否定的である場合よりも、自車の進行方向前方の領域で前記物体検出手段により検出される物体と自車との接触可能性が有るか否かの判断結果が肯定的な判断結果となるのを抑制するように、該接触可能性が有るか否かを判断するための判断条件を該走行形態判断手段の判断結果に応じて変更する手段を備えることを特徴とする車両の走行支援装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両の走行支援装置において、
前記接触可能性判断手段は、前記物体情報取得手段により取得された物体情報に基づいて、前記検出された物体と自車とが接触するまでの予測時間である接触時間を逐次予測する手段と、該接触時間が所定の閾値以下であるか否かを前記判断条件とし、該接触時間が該所定の閾値以下になった場合に前記接触の可能性が有ると判断する手段と、前記走行形態判断手段の判断結果が肯定的である場合に、該走行形態判断手段の判断結果が否定的である場合よりも前記所定の閾値を小さくするように該走行形態判断手段の判断結果に応じて該所定の閾値を変更することにより前記判断条件を変更する手段とを備えることを特徴とする車両の走行支援装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両の走行支援装置において、
自車の走行中の走行車線が対向車線であるか否かを判断する車線判断手段と、
自車が前走車の追い越し中であるか否かを判断する追い越し判断手段とを備え、
前記走行形態判断手段は、少なくとも前記車線判断手段により自車の走行車線が対向車線であると判断され、且つ、前記追い越し判断手段により自車が前走車の追い越し中である判断された場合に、自車の走行形態が一時的に対向車線にはみ出した走行形態であると判断することを特徴とする車両の走行支援装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の車両の走行支援装置において、
自車の走行中の走行車線が対向車線であるか否かを判断する車線判断手段と、
自車が進行方向前方の静止物体を迂回する走行中であるか否かを判断する迂回走行判断手段とを備え、
前記走行形態判断手段は、少なくとも前記車線判断手段により自車の走行車線が対向車線であると判断され、且つ、前記迂回走行判断手段により自車が静止物体を迂回する走行中である判断された場合に、自車の走行形態が一時的に対向車線にはみ出した走行形態であると判断することを特徴とする車両の走行支援装置。
【請求項5】
請求項3記載の車両の走行支援装置において、前記追い越し判断手段は、前記物体検出手段により前記物体としての前記前走車が自車の進行方向前方に検出されている状況で、自車が対向車線に近づく向きに移動していることと、自車に対する該前走車の相対速度が対向車線と反対側に向かう横方向の速度成分を有していることと、自車の進行方向での該相対速度の速度成分が該前走車を自車に近づける向きで所定値以上の大きさを有していることとが検出された場合に、自車が該前走車の追い越しを開始したと判断することを特徴とする車両の走行支援装置。
【請求項6】
請求項4記載の車両の走行支援装置において、前記迂回走行判断手段は、前記物体検出手段により前記物体としての前記静止物体が自車の進行方向前方に検出されている状況で、自車が対向車線に近づく向きに移動していることと、自車に対する該静止物体の相対速度が対向車線と反対側に向かう横方向の速度成分を有していることと、自車の進行方向での該相対速度の速度成分が該静止物体を自車に近づける向きで所定値以上の大きさを有していることとが検出された場合に、自車が該静止物体を迂回する走行を開始したと判断することを特徴とする車両の走行支援装置。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1項に記載の車両の走行支援装置において、前記車線判断手段は、前記物体検出手段により前記物体として検出される対向車についての前記物体情報に基づいて該対向車の進路領域を推定する手段と、自車の運動状態に基づいて自車の進路領域を推定する手段とを備え、前記推定された対向車の進路領域と自車の進路領域との重なり度合いに基づいて自車の走行中の走行車線が対向車線であるか否かを判断することを特徴とする車両の走行支援装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の車両の走行支援装置において、前記接触予防処理は、自車の制動処理を少なくとも含むことを特徴とする車両の走行支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−137385(P2009−137385A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314563(P2007−314563)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】