説明

車両の車体構造

【課題】全長が短い3座シートの車両の車体構造を提供する。
【解決手段】車室の左右両側に配置された左右ドア8と、車幅方向左右両側で車両前後方向に延びるサイドシル6と、これらのサイドシルに両縁部が結合された車室フロア20と、車室フロア上に設けられ左右ドアのいずれか一方に隣接して配置された運転席62と、この運転席と車幅方向に並べて配置された2名分の同乗席64とを有する車両の車体構造であって、車室フロアは、運転席の下部で延びる運転席フロア80と、同乗席の下部で延びる同乗席フロア82、81と、を有し、この同乗席フロアは、運転席フロアより上方の位置で延びる上面部82を有し、この同乗席フロアの上面部の下部に、排気系部材34と、燃料タンク36及び/又はバッテリとが配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体構造に係り、特に、車幅方向に並ぶ3人分の座席とこれらの座席の後方の荷室とを有する車両の車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車業界においては、以前にも増して、燃費をより向上させることが要望されている。そのため、従来に比べさらに小型な車の必要性が高まってきている。
なお、前後のシートを3座づつ車幅方向に並べて乗員を乗せることが出来る車が以前から知られている(例えば特許文献1に記載の車両など)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−066959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、本発明者らは、上述した小型車両の要望に対し、使用目的を都市内での1〜3人での移動に特化した、つまり街乗り車(シティカー)について検討を行っている。さらに、このような街乗り車において、全長を例えば3m以下というように短くすることによって車体質量を大幅に軽減し、これによって燃費を向上させた車の実現性を検討している。
【0005】
そして、全長を短くするという制約内でいかに乗員を搭載するかを考えたとき、本発明者らは、3座のシートを車幅方向に並べ、その代わりに後席を無くせば、全長が短く且つ都市内移動に必要十分と考えられる最大3人乗車で数十分間の快適な移動が可能な車室内空間を有する街乗り用車両の実現性が高まるであろうことに着目した。
【0006】
一方、本発明者らは、全長をより確実に短くするために、車体の構造或いは各部のレイアウトを見直す必要に迫られていた。例えば、車幅方向に3座のシートを並べるために車両の横幅をむやみに大きくすることは、車重の増加や車両の取り回しの悪化につながってしまうことが問題となる。
【0007】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、全長が短い3座シートの車両の車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明によれば、車室の左右両側に配置された左右ドアと、車幅方向左右両側で車両前後方向に延びるサイドシルと、これらのサイドシルに両縁部が結合された車室フロアと、車室フロア上に設けられ左右ドアのいずれか一方に隣接して配置された運転席と、この運転席と車幅方向に並べて配置された2名分の同乗席とを有する車両の車体構造であって、車室フロアは、運転席の下部で延びる運転席フロアと、同乗席の下部で延びる同乗席フロアと、を有し、この同乗席フロアは、運転席フロアより上方の位置で延びる上面部を有し、この同乗席フロアの上面部の下部に、排気系部材と、燃料タンク及び/又はバッテリとが配置されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、運転席フロアが、同乗席フロアより下方の位置で延びるので、スライドレールが必須である運転席を確実に配置出来る空間があり、さらに、そのような席に着座した運転者がペダル操作を確実に行うことが出来る。さらに、同乗席フロアは、運転席フロアより上方の位置で延びる上面部を有し、この同乗席フロアの上面部の下部に、排気系部材と、燃料タンク及び/又はバッテリとが配置されているので、全長が短い3座シートの車両の車体構造を効果的に得ることが出来る。
【0009】
また、本発明において、好ましくは、同乗席フロアは、その車幅方向の断面において、上面部を上辺とする断面ハット状を有するようにサイドシル及び運転席フロアから上方に膨出する。
このように構成された本発明においては、同乗席フロアは、その車幅方向の断面において、上面部を上辺とする断面ハット状を有するようにサイドシル及び運転席フロアから上方に膨出するので、サイドシルや運転席フロアの高さを変更することなく、同乗席フロアの下部に大きな収容空間を得ることが出来る。
【0010】
また、本発明において、好ましくは、同乗席フロアは、運転席フロアより車幅方向の寸法が大きく、同乗席は、その幅方向に2人分並んで着座することが出来る座面幅を有する1つのシートとして設けられている。
このように構成された本発明においては、同乗席フロアは、運転席フロアより車幅方向の寸法が大きく、同乗席は、その幅方向に2人分並んで着座することが出来る座面幅を有するので、2名の同乗者が着座し易くなる。また、同乗者フロアの幅を大きくとることが出来、その分、同乗席フロアの下部に大きな収容空間を得ることが出来る。
【0011】
また、本発明において、好ましくは、同乗席フロアは、運転席フロアから上面部まで立ち上がると共に車両前後方向に延びる縦壁部を有し、燃料タンク及び/又はバッテリと縦壁部との間に車両前後方向に直線状に延びる空間が形成され、その空間に排気管が配置されている。
このように構成された本発明においては、運転席フロアから上面部まで立ち上がると共に車両前後方向に延びる縦壁部と、燃料タンク及び/又はバッテリとの間に車両前後方向に直線状に延びる空間が形成され、その空間に排気管が配置されている。このような場合、排気管を車体前後方向に直線状に延ばすことが出来、排気効率を向上させることが出来る。また、燃料タンクに、排気管をまたぐような鞍型部分を形成せずに済み、燃料タンクの容量を向上させることが出来る。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、全長が短い3座シートの車両の車体構造を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の車両の車体構造の一実施形態を示す平面図であり、図2は、本発明の車両の車体構造の一実施形態を示す側面図であり、図3は、本発明の一実施形態の主にフロア部の構造及びエンジンや排気管等のレイアウトを説明するために車体構造の一部を示す斜視図である。
図1及び図2に示すように、車両1は、車輪2を有し、図1に示すように、後輪側ではホイールハウス4が車室内に突出している。車両の左右両側には、前輪及び後輪の間で車体前後方向に延びるサイドシル6が形成されている。また、前後車輪間には、左右それぞれにサイドドア8が設けられている。
【0014】
図3に示すように、車両1は、ダッシュパネル10、ダッシュロワパネル12、サイドシル6、ダッシュロワパネル12の左右両側部から上方に延びるAピラー14、サイドシル6の後端部から上方に延びるBピラー16、Cピラー18、ホイールハウス4、フロア部20などで構成されている。フロア部20の構成については後述する。
【0015】
図1及び図2に示すように、車両の前方側には、フロントウインド22及びインストルメントパネル(以下、インパネと称する)24が設けられている。インパネ24の左側部分からは、ステアリングコラム26が延び、その先端部にステアリングホイール28が取り付けられている。
【0016】
図1及び図3に示すように、車両1のエンジンルームには、4気筒のエンジン29、トランスミッション30、デファレンシャル31が配置されている。そして、エンジン29の車体前後方向のすぐ後方には、エンジンのそれぞれの排気ポートから延びるエキゾーストパイプ32を介して触媒装置33が設けられ、この触媒装置32から排気管34が後方に向けて真っ直ぐ延びている。その排気管34は、車体の後縁部に近い位置で車幅方向に延びるサイレンサ35に接続されている。
また、フロア部20の下方には、燃料タンク36が設けられており、その燃料タンク36からは、車体斜め上方且つ車幅方向外方に向けてフィラーパイプ37が延びており、右側面から給油可能となっている。
【0017】
また、フロア部20の下方には、リアサスペンション40が配置されている。このリアサスペンション40を図4に示す。図4に示すように、リアサスペンション40は、トーションビーム式サスペンションとなっており、主に、車体に取り付けられるピボット部42、ピボット部42と車輪との間で延びるアーム部44、各アーム部の中間部同士を連結するように車幅方向に延びるトーションビームアクスル46、ショックアブソーバ48及び全体としてほぼ垂直方向に延びるコイルスプリング50で構成されている。
なお、図1及び図2に示すように、車体前後方向に延びる排気管34は、車幅方向に延びるトーションビームアクスル46との干渉を防ぐために、トーションビームアクスル46をまたぐように上方に山なりに延びて形成されている。
【0018】
ここで、図1及び図3により、車体前方側での車体フレームの構造を説明する。
先ず、図1に示すように、車両1の車体前方側には、No.1クロスメンバ52が設けられている。図1及び図3に示すように、このNo.1クロスメンバ52の左右両端部から後方に向けて車体前後方向に延びる一対のフロントサイドフレーム54が設けられている。図1に示すようにこれらのフロントサイドフレーム54の後端部は、それぞれ、連結部材56を介してサイドシル6に結合されている。また、フロントサイドフレーム54の後端部は、フロントサイドフレーム54から真っ直ぐ後方に延びるフロアサイドフレーム58の前端部に結合されている。
【0019】
フロアサイドフレーム58の後端部は、車幅方向に延びるNo.2クロスメンバ59に結合されている。なお、No.2クロスメンバ59は、上方に開口した断面ハット状の形状(図示せず)を有し、その上部の左右両側に形成されたフランジ部(図示せず)が、第2フロア76のキックアップ部78の下方部分に結合され且つ一体となったフレームとして構成されている。図3に示すように、エンジン29は、フロントサイドフレーム54に取り付けられたエンジンマウント60により支持されている。
【0020】
次に、図1及び図3により、フロア部20の構造を説明する。
次に、図3に示すように、フロア部20は、先ず、第1フロア70を有する。第1フロア70は、車体前後方向には、ダッシュロワパネル12の後縁部から、後述する第2フロア76のキックアップ部78の前縁部まで延び、車幅方向には各サイドシル6間で延びている。
【0021】
図1乃至図3に示すように、この第1フロア70には、車幅方向のほぼ中央位置において車体前後方向に延びるフロアトンネル72が形成されている。このフロアトンネル72は、上方に膨出して形成されており、その前縁部がダッシュロワパネル12に接続され、後縁部がキックアップ部78に接続されている。図1に示すように、排気管34は、このフロアトンネル72の内方(下部)を通って延びている。
【0022】
次に、フロア部20は、第2フロア76を有する。この第2フロア76は、主に、第1キックアップ部78、第1上面部80、第2キックアップ部81(81a、81b)及び第2上面部82で構成されている。
先ず、第1キックアップ部78は、第1フロア70から連続するように形成され、第1フロア70の後縁部から上方に立ち上がるように形成されている。第1キックアップ部78は、車幅方向には各サイドシル6間で延びている。
【0023】
次に、第2フロアの第1上面部80は、この第1キックアップ部78の上縁部から連続して後方に延び、ほぼ平らに形成されている。この第1上面部80の後縁部は、後述する第3フロア84のキックアップ部86の前縁部まで延びている。そして、第1上面部80は、車幅方向には、第1キックアップ部81の車体前後方向に延びる部分81bとサイドシル6との間で延びている。
【0024】
一方、第2フロアの第2上面部82は、第1上面部80から、さらに上方の位置でほぼ平らに延びるように形成されている。ここで、第2キックアップ部81は、上述した第1キックアップ部78から連続してさらに上方に立ち上がるキックアップ部分81a、及び、第1平面部80の車幅方向内方の縁部から連続して上方に立ち上がるキックアップ部分81bを有している。
【0025】
第2上面部82は、第2キックアップ部81の車幅方向に延びる部分81aの上縁部から連続して後方に延びると共に、第2キックアップ部81の車体前後方向に延びる部分81bの上縁部から車幅方向にサイドシル6まで延びている。そして、第2上面部82は、次に説明する第3フロア84と同じ高さに形成されている。即ち、第2フロアの第2上面部82と第3フロア84とは、平面視でL字状に延びる連続した平らな面で構成されている。
【0026】
なお、図5に示すように、第2平面部82の後方に、例えば、第3フロア84のキックアップ部86と連続して形成されたキックアップ部分86aを形成して、第2平面部82が第3フロア84より低くなるようにしても良い。この場合、その低くなった第2平面部82にシートを折りたたんで収容することにより、その折りたたんだシートと第3フロア84とにより、連続した平らな荷室を形成するようにしても良い。
【0027】
次に、フロア部20は、第3フロア84を有する。この第3フロア84は、主に、キックアップ部86及び上面部88で構成されている。キックアップ部86は、第2フロアの第1上面部80から連続して、その上面部80の後縁部から上方に立ち上がるように形成されている。また、この第3フロア上面部88は、このキックアップ部86の上縁部から連続して後方に延びると共に、上述したように第2フロア第2上面部82から連続して延びている。この上面部88は、車両の後縁部まで延びている。
【0028】
ここで、図1及び図2に示すように、車両1の後方には、車体前後方向に延びるリアサイドフレーム90が設けられており、キックアップ部86はこれらのリアサイドフレーム90の間で車幅方向に延びている。各リアサイドフレーム90は、本実施形態では、その前端部の車外側の側面部が各サイドシル6の後端部の車幅方向内方側の側面部と結合されている。
【0029】
また、リアサイドフレーム90は、上方に開口した断面ハット状の形状(図示せず)を有し、その上部の左右両側に形成されたフランジ部(図示せず)が、後方から順に第3フロア88、キックアップ部86及び第2フロア上面部80のそれぞれの下面部に結合され且つ一体となったフレームとして構成されている。上述したトーションビーム44のピボット部42は、図2に示すように、リアサイドフレーム90の下面部にブラケット43を介して固定されている。
【0030】
次に、図1乃至図3、図6及び図7により、フロア部20と、各座席や燃料タンク等の配置の関係について説明する。図6は、本発明の車両の構造の一実施形態を示す斜視図であり、図7は、図1のA−A線に沿って見た車体の構造を示す断面図である。
【0031】
先ず、図1及び図6に示すように、車両1には、車幅方向に隣接して並ぶ2つの座席(シート)62、64が設けられている。本実施形態において、車幅方向の左側の座席62は、ステアリングホイール28に対向して設けられた運転席となっている。その右隣には、2名の同乗者が着座可能な同乗者席64が設けられている。なお、ステアリング系を車幅方向右側に設け、この同乗者席66を左側に配置しても良い。なお、これらの座席62、64は、ホイールハウス4の前方でホイールハウス4と干渉しない位置に設けられている。
【0032】
図1及び図6に示すように、運転席62は、第2フロア76の第1上面部80に設けられ、同乗者席64は、第2フロア76の第2上面部82に設けられている。
ここで、図2に示す乗員モデルを見て分かるように、各座席62、64に着座した乗員(乗員モデルA、乗員モデルBで表す)は、第1フロア70に足を置くことになる。本実施形態では、同乗者席64に着座した乗員Bは、基本的には下面部(フロアトンネルより下方の平らな面部分)に足を置き、場合によってはフロアトンネル72に足を置くようになっている。運転席62に着座した乗員Aは、第1フロア70の下面部(フロアトンネルより下方の平らな面部分)に足を置き、ペダル類を操作する。これらのように、第1フロア70は足載置部として形成されている。
【0033】
次に、図1、図2及び図3に示すように、第2フロア76の第2平面部82の下部には、燃料タンク36が配置されており、第2フロア76の第2平面部82の下部空間を有効に利用している。なお、ハイブリット車の場合には、このような燃料タンクと共にバッテリを配置し、また、電気自動車の場合には、燃料タンクの代わりにバッテリを配置するようにしても良い。
【0034】
また、図7に示すように、第2フロア76の車幅方向の断面構造は、上述した第1平面部80から斜め上方に延びるキックアップ部(傾斜部/縦壁部)81bと、車幅方向左側のサイドシル6と、それらの間で延びる第1平面部80とにより、凹状に形成された運転席側部分を有する。そして、運転席は、スライドレール機構92を介して第1平面部80に取り付けられている。
【0035】
一方、第2フロア76の車幅方向の断面構造は、サイドシル6から斜め上方に延びる縦壁部81cと、第1平面部80から斜め上方に延びる縦壁部81bと、それらの上縁部の間で延びる第2平面部82とにより、ほぼ断面ハット状に形成された同乗席側部分を有する。なお、傾斜部81b、81cは、ほぼ垂直に立ち上がるようにしても良い。そして、同乗者席は、ブラケット94及びスライドレール機構96を介して、第2平面部82の車幅方向両側の側面(傾斜部/縦壁部)81b、81cに取り付けられている。
【0036】
そして、図7に示すように、燃料タンク36及び排気管34は、第2フロア76の第2平面部82の下部空間に配置されている。そして、運転席62と車幅方向に並ぶように配置されている。
ここで、燃料タンク36は、燃料タンク36とキックアップ部81bとの間に空間が形成されるような寸法及び形状となっている。そして、燃料タンク36と、キックアップ部81bとの間の空間に排気管34を通すようにしている。
【0037】
このように構成することにより、排気管34をエンジン29から後方に真っ直ぐ延びるようにすることが出来る。さらに、燃料タンク36の形状を、排気管34をまたぐように鞍型にする必要がなく、燃料タンク36の容量を効果的に確保することが出来る。
【0038】
次に、本発明の実施形態において、第3フロア84の上方の空間且つ各座席62、64の後方側の空間は、荷室空間となっている。一方、第3フロア84の下部には、上述したリアサスペンション40及びサイレンサ32が配置されており、第3フロア84の下部空間を有効に利用している。
【0039】
以上述べたような構成、例えば、車幅方向に並ぶ座席62、64を足もとフロア(第1フロア70)より高い第2フロア76に配置し、その第2フロア76の下方、特に、第2平面部82の下方に燃料タンク36(及び/又はバッテリ等)を配置しているので、車室空間及び車体下部の空間を有効に利用して、全長のより短い車両を得ることが出来る。この場合、例えば、第2フロア76を車体前後方向の中央部に寄せることによりヨーモーメントを低減することが出来る、などのメリットもある。
さらに、足もとフロア(第1フロア70)より高い第2フロア76に座席62、64を配置しているので、シート脚の必要高さを低減することが出来る。この場合、車両の軽量化にもつながる。
【0040】
次に、図1、図2、図6、図8乃至図10により、シートの変位状態について説明する。図8、図9及び図10は、それぞれ、図1、図2及び図6に対応する平面図、側面図及び斜視図であり、いずれも、同乗者席が図1、図2及び図6に示す第1位置に対して後方且つ上方の第2位置に変位した状態を示す図である。
本発明の実施形態においては、同乗者席64が、上述したスライドレール機構96により、斜め後方に変位するようになっている。ここでは先ず、図1、図2及び図6により、同乗者席64が、第1位置(前方位置、第1状態)にある場合について説明する。
【0041】
図1、図2及び図6に示すように、同乗者席64が第1位置にある場合、その同乗者席シート64のシートクッションの前縁部64aの車体前後方向の位置が、運転席シート62のシートクッションの前縁部62aと一致している。また、各シートクッションの前縁部62a、64aは、平面視で第2フロア76のキックアップ部78と同じ位置にある。
また、図2及び図6に示すように、第1位置では、同乗者席シートのシートクッションの座面64bの高さが、運転席シート62のシートクッションの座面62bよりも若干高くなっている。なお、同乗者席シートのシートクッションの座面64bの高さが、運転席シート62のシートクッションの座面62bの高さと同じでも良い。
【0042】
ここで、上述したように同乗者席には車幅方向に2名が着座することが出来るので、同乗者席64のシートクッションの座面64b及びシートバック64cのそれぞれの幅が、運転席シート62の座面62b及びシートバック62cの幅のほぼ2倍近い大きさとなっている。
このような同乗者席64を第1位置に配置することにより、荷室の容量を大きくかせぐことが出来る。また、そのような同乗者席に物を置くことも出来る。一方、例えば同乗者席64の幅を比較的狭くした場合には、第1位置において、同乗者席64を荷物置きに使用したり、小さな子供を乗せたりすることが可能である。
【0043】
なお、同乗者席64に大人2名が乗車することは寸法的に可能であるが、同乗者と運転者の太股や肩が互いに接触した状態での着座状態となる場合があり、短時間の都市内の移動であっても快適とはいえない。そこで、同乗者席64が第1位置にある場合には、同乗者席に大人1名が乗車し、その他、荷物や小さな子供を乗せるような使用シーンも想定される。
【0044】
次に、図8、図9及び図10により、同乗者席64が、第2位置(斜め後方の位置、第2状態)にある場合について説明する。
図8、図9及び図10に示すように、同乗者席64が第2位置にある場合、その同乗者席シート64のシートクッションの前縁部64aの車体前後方向の位置は、運転者席シートのシートクッションの前縁部62aよりも後方側になっている。
一方、図9及び図10に示すように、第2位置では、同乗者席シート64のシートクッションが第3フロア上面部88に載っている。この状態では、同乗者席シート64のシートクッションの座面64bの高さ位置が、運転席シート62のシートクッションの座面62bの高さ位置より若干高くなっている。
【0045】
なお、同乗者席シート64のシートクッションの座面64bの高さ位置が、運転席シート62のシートクッションの座面62bの高さ位置と同じとなるようにしても良い。或いは、同乗者席シート64が上下後方変位機構(図示せず)により、第2位置において、第1位置より比較的大きく上方の位置に変位するようにしても良い。この場合には、同乗者席シート64のシートクッションの座面64bの高さ位置が、運転席シート62のシートクッションの座面62bの高さ位置よりも確実に高くなるので、同乗者と運転者の肩部及び太股の干渉をより確実に防止することが出来る。
【0046】
図8、図9及び図10に示すように、同乗者席64は、斜め後方に変位可能であり、同乗者席64がホイールハウス4と干渉するのを防止することが出来る。即ち、同乗者席64が第2位置にある場合、正面視で、同乗者席シート64のシートクッション及びシートバックが、運転者席シートのシートクッション及びシートバックに一部重なるように、斜め後方に変位する。
【0047】
このように本発明の実施形態においては、同乗者席64が、平面視、側面視、正面視において、運転席62と位置が一致する第1状態をとることが出来る。また、同乗者席64が、左右座席62よりも側面視で後方にあり、平面視で斜め後方にあり、正面視でシートが一部重なる第2状態をとることも出来る。同乗者席64は、これらの第1状態及び第2状態の間で変位可能となっている。
ここで、図9に示すように、第2位置において同乗者席64に着座した乗員Bは、その足を第2フロア76の第2上面部82に置くようになっている。このように平らに形成された第2フロア上面部82を足載置部として有効に利用出来るようになっている。
【0048】
なお、同乗者席64を、その第2位置において、平面視で座席の前部が運転席とは離れるように車幅方向外側の斜め方向に指向するように斜め後方に移動すると共に平面視で若干回転するように構成しても良い。
一方、同乗者席64を固定式としても良い。この場合、スライドレール96を使用しない分、同乗席のシートクッションの厚みを厚くすることや、第2フロア82の位置を高めて燃料タンクの容量を大きくすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の車両の車体構造の一実施形態を示す平面図である。
【図2】本発明の車両の車体構造の一実施形態を示す側面図である。
【図3】本発明の一実施形態の主にフロア部の構造を説明するために車体構造の一部を示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態によるリアサスペンションを示す斜視図である。
【図5】本発明の変形例によるフロア部の構造を示す斜視図である。
【図6】本発明の車両の構造の一実施形態を示す斜視図である。
【図7】図1のA−A線に沿って見た車体の断面構造である。
【図8】図1に対応する平面図であり、同乗席が図1、図2及び図6に示す第1位置に対して斜め後方の第2位置に変位した状態を示す図である。
【図9】図2に対応する側面図であり、同乗席が図1、図2及び図6に示す第1位置に対して斜め後方の第2位置に変位した状態を示す図である。
【図10】図6に対応する斜視図であり、同乗席が図1、図2及び図6に示す第1位置に対して斜め後方の第2位置に変位した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1 車両
6 サイドシル
20 フロア部
34 排気管
36 燃料タンク
40 リアサスペンション
62 運転席
64 同乗席
70 第1フロア
72 フロアトンネル
76 第2フロア
78 第2フロアのキックアップ部
80 第2フロアの第1上面部
81、81a、81b 第2フロアの第2キックアップ部、傾斜部、縦壁部
82 第2フロアの第2上面部
84 第3フロア
86 キックアップ部
88 上面部
A 運転席に着座した乗員モデル
B 同乗者席に着座した乗員モデル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の左右両側に配置された左右ドアと、車幅方向左右両側で車両前後方向に延びるサイドシルと、これらのサイドシルに両縁部が結合された車室フロアと、車室フロア上に設けられ上記左右ドアのいずれか一方に隣接して配置された運転席と、この運転席と車幅方向に並べて配置された2名分の同乗席とを有する車両の車体構造であって、
上記車室フロアは、上記運転席の下部で延びる運転席フロアと、上記同乗席の下部で延びる同乗席フロアと、を有し、
この同乗席フロアは、上記運転席フロアより上方の位置で延びる上面部を有し、
この同乗席フロアの上面部の下部に、排気系部材と、燃料タンク及び/又はバッテリとが配置されていることを特徴とする車両の車体構造。
【請求項2】
上記同乗席フロアは、その車幅方向の断面において、上記上面部を上辺とする断面ハット状を有するように上記サイドシル及び上記運転席フロアから上方に膨出する請求項1に記載の車両の車体構造。
【請求項3】
上記同乗席フロアは、上記運転席フロアより車幅方向の寸法が大きく、上記同乗席は、その幅方向に2人分並んで着座することが出来る座面幅を有する1つのシートとして設けられている請求項1又は請求項2に記載の車両の車体構造。
【請求項4】
上記同乗席フロアは、上記運転席フロアから上記上面部まで立ち上がると共に車両前後方向に延びる縦壁部を有し、
上記燃料タンク及び/又はバッテリと上記縦壁部との間に車両前後方向に直線状に延びる空間が形成され、その空間に排気管が配置されている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−120342(P2008−120342A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−309291(P2006−309291)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】