説明

車両の障害物検知装置

【課題】車両が障害物と衝突しそうか否かを迅速に判定し且つ障害物検知装置による作動機器の誤作動を抑えつつ、車両が走行車線から逸脱した際の安全性を向上させる。
【解決手段】障害物を検知するレーダ装置1と、レーダ装置1から情報を受けて作動機器7,9,11を制御するコントロールユニット5とを備えた障害物検知装置である。障害物が走行車線内に位置しているか否かを判定する障害物位置判定部5cと、走行車線からの車両の逸脱を予知する逸脱予知部5fと、車両と障害物との衝突を予知する衝突予知判定を行う衝突予知判定部5dとをさらに備えている。衝突予知判定部5dは、障害物位置判定部5cにより障害物が走行車線内に位置していると判定されたときには衝突予知判定を行う一方、障害物が走行車線内に位置していないと判定された場合には、逸脱予知手段5fにより走行車線からの車両の逸脱が予知されたときにのみ衝突予知判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両前方の障害物を検知する障害物検知手段と、該障害物検知手段からの障害物検知情報を受けて該自車両の作動機器を制御する作動機器制御手段とを備えた車両の障害物検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーダ装置等を用いて自車両前方の障害物を検知するようにした障害物検知装置はよく知られている。例えば、特許文献1では、自車両と障害物(先行車、対向車、物標)との距離や自車両に対する障害物の方向角度や自車両の速度及び角速度等のレーダ装置による計測値に基づいて、自車両と障害物との間の横変位及び縦変位や自車両の旋回半径を計算し、これらの計算値に基づいて自車両と障害物との間の横間距離を計算し、該計算された横間距離と別途計算により推定された走行車線内における自車両の位置とに基づいて自車両と障害物との衝突を推定するようにしている。
【特許文献1】特開2001−14597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記特許文献1のように、走行車線外の障害物まで含めて衝突を判定しようとすれば、レーダ装置により検知された全ての障害物について上述のような計算を実行することになり、判定制御に多大な時間を費やすことになるので、警報装置やブレーキ等の機器を迅速に作動させることが困難となる。また、障害物検知装置では、自車両の速度や操舵角やヨーレート等に基づいて所定時間後の自車両の位置を推定し、自車両と障害物との衝突を予知するものが多いが、例えば、カーブに入る際には、舵角は略真っ直ぐであり且つヨーレートにも変化がないことから、自車両がカーブ内を真っ直ぐに進行すると判定され、衝突する可能性が低い走行車線外側の障害物に対し、作動機器(警報装置等)を誤作動させることがある。
【0004】
ここで、判定制御時間を短縮し、且つ障害物検知装置による作動機器の誤作動を抑えるため、走行車線外の障害物を衝突判定の対象から除くことが考えられるが、走行車線外の障害物を無条件に衝突判定の対象から除くと、乗員の居眠り運転や脇見運転により自車両が走行車線を逸脱した場合には、自車両と走行車線外の障害物との衝突を予知したり、回避したりすることができないおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、自車両前方の障害物を検知する障害物検知手段と、該障害物検知手段からの障害物検知情報を受けて該自車両の作動機器を制御する作動機器制御手段とを備えた車両の障害物検知装置において、自車両が該障害物と衝突しそうか否かを迅速に判定し且つ障害物検知装置による作動機器の誤作動を抑えるとともに、自車両が走行車線から逸脱したときの安全性を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、自車両前方の障害物を検知する障害物検知手段と、該障害物検知手段からの障害物検知情報を受けて該自車両の作動機器を制御する作動機器制御手段とを備えた車両の障害物検知装置であって、上記障害物検知手段により検知された障害物が上記自車両が走行している走行車線内に位置しているか否かを判定する障害物位置判定手段と、上記自車両が上記走行車線から逸脱しそうなことを予知する逸脱予知手段と、上記障害物検知情報に基づいて上記自車両が上記障害物と衝突しそうなことを予知する衝突予知判定を行う衝突予知判定手段とをさらに備えており、上記作動機器制御手段は、上記衝突予知判定手段により該自車両と該障害物との衝突が予知されたときに、上記作動機器を作動させるように構成されており、上記衝突予知判定手段は、上記障害物位置判定手段により上記障害物が上記走行車線内に位置していると判定されたときには、上記衝突予知判定を行う一方、上記障害物位置判定手段により上記障害物が上記走行車線内に位置していないと判定された場合には、上記逸脱予知手段により上記走行車線からの上記自車両の逸脱が予知されたときにのみ、上記衝突予知判定を行うように構成されていることを特徴とするものである。
【0007】
このように、作動機器制御手段は、衝突予知判定手段により自車両と障害物との衝突が予知されたときに、作動機器を作動させるように構成され、該衝突予知判定手段は、障害物位置判定手段により障害物が走行車線内に位置していると判定されたときには衝突予知判定を行う一方、障害物が走行車線内に位置していないと判定された場合には、逸脱予知手段により走行車線からの自車両の逸脱が予知されたときにのみ衝突予知判定を行うので、衝突の可能性が低い走行車線外の障害物に対する作動機器の誤作動を抑えることができるとともに、障害物検知手段によって検知される障害物全てについて無条件に衝突予知判定を行う訳ではないので、判定制御に多大な時間を費やすのを抑えることができる。
【0008】
さらに、衝突予知判定手段は、障害物位置判定手段により障害物が走行車線内に位置していないと判定された場合には、逸脱予知手段により走行車線からの自車両の逸脱が予知されたときにのみ、衝突予知判定を行うように構成されているので、乗員の居眠り運転や脇見運転により自車両が走行車線から逸脱した場合でも、自車両と走行車線外の障害物との衝突を予知したり、回避したりすることができる。
【0009】
よって、自車両が該障害物と衝突しそうか否かを迅速に判定し且つ障害物検知装置による作動機器の誤作動を抑えるとともに、自車両が走行車線から逸脱したときの安全性を向上させることができる。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、道路上における上記自車両前方の走行区分線を検知する区分線検知手段と、上記区分線検知手段により検知された走行区分線に基づいて、上記走行車線を認識する走行車線認識手段とをさらに備えていることを特徴とするものである。
【0011】
このように、走行車線認識手段は、区分線検知手段により検知された走行区分線に基づいて走行車線を認識するので、自車両が走行している走行車線を正確に認識することができる。これにより、逸脱予知手段によって自車両が走行車線から逸脱しそうなことを確実に予知することができる。したがって、自車両が走行車線から逸脱したときの安全性をより一層向上させることができる。
【0012】
第3の発明は、上記第1又は2の発明において、上記作動機器は、上記自車両が上記障害物と衝突しそうなことを該自車両の乗員に報知する警報手段であることを特徴とするものである。
【0013】
これにより、乗員が居眠り運転や脇見運転をしている場合にも、自車両が障害物と衝突しそうなことを車両の乗員に確実に伝えることができる。
【0014】
第4の発明は、上記第1又は2の発明において、上記作動機器は、上記自車両のブレーキを作動させるブレーキ作動手段であることを特徴とするものである。
【0015】
このように、自車両と障害物との衝突が予知されたときには、自車両のブレーキを作動させるので、自車両が障害物と衝突するのを抑制することができる。
【0016】
第5の発明は、上記第1又は2の発明において、上記作動機器は、上記自車両の乗員が着用しているシートベルトを巻き取って該シートベルトに所定張力を付与することで該乗員を拘束するシートベルトプリテンショナであることを特徴とするものである。
【0017】
このように、自車両と障害物との衝突が予知されたときには、自車両の乗員が着用しているシートベルトを巻き取って該シートベルトに所定張力を付与することにより、該乗員を拘束するので、乗員の安全性を確実に向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、衝突判定手段は、障害物位置判定手段により障害物が走行車線内に位置していると判定されたときには衝突予知判定を行う一方、障害物位置判定手段により障害物が走行車線内に位置していないと判定された場合には、逸脱予知手段により走行車線からの自車両の逸脱が予知されたときにのみ、衝突予知判定を行うように構成されているので、自車両が該障害物と衝突しそうか否かを迅速に判定し且つ障害物検知装置による作動機器の誤作動を抑えるとともに、乗員の居眠り運転や脇見運転により自車両が走行車線から逸脱したときの安全性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る障害物検知装置を搭載した車両W(自車両に相当し、本実施形態では自動車である)を示す。同図において、符号1はこの車両Wの前端部に設けられている、車両Wの前方に存在する障害物を検知するレーダ装置であり、符号3は車両Wの前方を撮像するCCDカメラである。
【0021】
上記レーダ装置(障害物検知手段)1は、ミリ波レーダ装置であって、図2に示すように、ミリ波を前方に向けて略水平方向に所定角度範囲を走査しながら発信する発信部11と、そのミリ波が車両Wの前方の障害物に当たって反射してきた反射波を受信する受信部21と、この受信部21で受信したデータに基づいて障害物の検知処理を行う処理部31とを有してユニット化されたものである。
【0022】
レーダ装置1の処理部31は、受信部21で受信したデータに対してフィルタ処理やFFT処理等のデータ処理を行って、障害物の検知を行うデータ処理部31aと、このデータ処理部31aより、上記処理されたデータを入力し、かつ、後述するコントロールユニット5より車両Wの車速や舵角や旋回半径等を入力して、これら入力情報に基づいて、上記検知された障害物の属性(例えば車両Wとの距離、車両Wに対する角度位置、及び車両Wとの相対速度)の決定と、上記検知された障害物が静止物体であるか否かの判定とを行う位置推定部31bとを有している。
【0023】
上記CCDカメラ3は、車両Wのフロントガラス(図示せず)の中央上端部に取り付けられていて、車両W前方の障害物のみならず、走行車線を区画する線や、中央線、車道と歩道との境界線等の走行区分線も撮像するようになっている。
【0024】
上記車両Wには、上記レーダ装置1の処理部31からの障害物検知情報を受けて車両Wの作動機器を制御するコントロールユニット5が設けられている。上記作動機器は、本実施形態では、警報装置7、ブレーキ作動装置9及びシートベルトプリテンショナ13である。
【0025】
また、上記車両Wには、図2に示すように、車両Wの車速を検出する車速センサ15と、車両Wのステアリングホイールの操舵角を検出する舵角センサ17と、車両Wと障害物との衝突を検出するGセンサ19と、車両Wに生じるヨーレートを検出するヨーレートセンサ49とが設けられており、これら各センサ15,17,19,49からの検出情報が上記コントロールユニット5に入力されるようになっている。
【0026】
上記警報装置7は、各種の警報を乗員に対し音声によって報知するものであり、また、上記ブレーキ作動装置9は、車両Wのブレーキを作動させて各車輪23に制動力を付与するものである。そして、シートベルトプリテンショナ13は、車両Wのシート25に着座している乗員が着用しているシートベルト27を巻き取って該シートベルト27に所定張力を付与することで、該乗員を拘束するものである。
【0027】
ここで、車両Wに搭載されているシートベルト装置について説明する。このシートベルト装置は、図1に示すように、上記シートベルト27を巻き取るリトラクタ部29と、このリトラクタ部29から引き出されたシートベルト27の先端部が取り付けられたラップアンカー部33と、シートベルト27の長さ方向中間部に配設されたタング35が着脱可能に係合するバックル部37とを有する3点式に構成されている。上記バックル部37は、シート25の車幅方向内側で車体に固定されている一方、リトラクタ部29及びラップアンカー部33は、シート25を挟んでバックル部37とは反対側である車幅方向外側で車体に固定されている。上記リトラクタ部29から引き出されたシートベルト27は、シート25の車幅方向外側の上方位置に設けられたスリップガイド39により、その引き出し方向が上向きから下向きに変換されて、その先端部が上記ラップアンカー部33に取り付けられている。上記タング35は、上記スリップガイド39とラップアンカー部33との間でシートベルト27に対して摺動可能に設けられており、このタング35が上記バックル部37に係合されることで、シートベルト27の着用状態となる。
【0028】
上記シートベルト装置のリトラクタ部29内に、上記シートベルトプリテンショナ13が設けられている。本実施形態では、シートベルトプリテンショナ13は、図2に示すように、電動モータ等により上記シートベルト27を巻き取る第1プリテンショナ機構13aと、インフレータで発生するガスにより上記シートベルト27を巻き取る第2プリテンショナ機構13bとからなっており、後述するように、上記レーダ装置1の処理部31からの障害物検知情報に基づいて、上記コントロールユニット5により車両Wが障害物と衝突しそうなことが予知されたときには、第1プリテンショナ機構13aを作動させることで、シートベルト27に所定張力を付与する一方、コントロールユニット5がGセンサ19により車両Wの障害物への衝突を検出したときには、第2プリテンショナ機構13bを作動させることで、上記第1プリテンショナ機構13aを作動させたときよりも大きな張力をシートベルト27に付与するようになっている。
【0029】
次に、上記レーダ装置1により静止物体である障害物が検知されたときの障害物検知装置による衝突判定制御について説明する。例えば、図3に示すように、車両Wが走行している走行車線45の外側に物標(障害物に相当し、本実施形態では標識柱である)47が存在すると、レーダ装置1の発信部11から発信されたミリ波が物標47に当たって反射し、この反射波を受信部21が受信すると、処理部31がこの受信データに基づいて物標47の検知処理を行うことになる。そして、処理部31内のデータ処理部31aによる処理データと、コントロールユニット5からの車両Wの車速や舵角等に基づいて、位置推定部31bが物標47の属性を決定するとともに該物標47が静止物体であると判定し、これらの情報をコントロールユニット5内の障害物位置判定部5cに出力する。
【0030】
一方、上記CCDカメラ3により撮像された画像データは、図2に示すように、コントロールユニット5内の区分線検知部5aに入力される。この区分線検知部(区分線検知手段)5aは、該画像データに基づいて画像処理を行い、道路上における車両W前方に設けられた白線等の走行区分線を検知するように構成されている。図3の例では、車両Wの左側に設けられた白線41及び車両Wの右側に設けられた中央線43が検知されることになる。
【0031】
上記区分線検知部5aにおける区分線検知結果は、コントロールユニット5内の走行車線認識部5bに入力される。この走行車線認識部(走行車線認識手段)5bは、区分線検知部5aにより検知された走行区分線に基づいて、具体的には、検知された車両W左右両側の2本の走行区分線内を車両Wの走行車線として認識するように構成されている。図3の例では、走行車線認識部5bは、区分線検知部5aにより車両W前方に白線41及び中央線43が検知されると、該検知された左右両側の走行区分線41,43内を車両Wの走行車線45として認識する。
【0032】
上記走行車線認識部5bにより認識された走行車線45の情報は、コントロールユニット5内の逸脱予知部5fに入力される。この逸脱予知部(逸脱予知手段)5fは、車両Wが認識された走行車線45から逸脱しそうなことを予知(検知)するように構成されている。具体的には、逸脱予知部5fは、走行車線45の情報並びに車速センサ15、舵角センサ17及びヨーレートセンサ49からの各入力情報に基づいて、車両Wの走行車線45に対する道路幅方向の位置を予測し、車両Wが走行車線45(白線41)から逸脱しそうなことを予知するようになっている。
【0033】
一方、走行車線認識部5bにより認識された走行車線45の情報は、上記レーダ装置1の処理部31からの障害物検知情報及びCCDカメラ3により撮像された画像データとともに、コントロールユニット5内の障害物位置判定部5cにも入力される。障害物位置判定部(障害物位置判定手段)5cは、レーダ装置1により検知された物標47の属性(車両Wとの距離や車両Wに対する角度位置)に基づいて画像データ上で物標47を特定し、該物標47が車両Wが走行している走行車線45内に位置しているか否かを判定するようになっている。そして、障害物位置判定部5cにおける判定結果は、コントロールユニット5内の衝突予知判定部5dに入力される。
【0034】
この衝突予知判定部(衝突予知判定手段)5dは、上記レーダ装置1の処理部31からの障害物検知情報に基づいて車両Wが物標47と衝突しそうなことを予知(検知)する衝突予知判定を行うように構成されている。具体的には、衝突予知判定部5dは、車両Wと物標47との距離、物標47の車両Wに対する角度位置、及び物標47の車両Wに対する相対速度といった障害物検知情報や、舵角センサ17やヨーレートセンサ49から得られる車両Wの舵角や旋回半径等に基づいて車両Wが物標47と衝突しそうか否かを判定するようになっている。
【0035】
ところで、このような衝突予知判定を、レーダ装置1によって検知される障害物全てについて行うと、判定制御に多大な時間を費やすことになり、警報装置7、ブレーキ作動装置9及び第1プリテンショナ機構13aを迅速に作動させることが困難になるとともに、例えば、図3(a)に示すように、乗員がカーブを曲がることを意図しているにも拘わらず、カーブに入る際には舵角は略真っ直ぐであり且つヨーレートにも変化がないことから、図3(b)に示すように、カーブ内を真っ直ぐに進行すると判定され、走行車線45の外側に存在する物標47に対して車両Wとの衝突が検知されるおそれがある。
【0036】
ここで、判定制御時間を短縮し、且つ障害物検知装置による警報装置7、ブレーキ作動装置9及び第1プリテンショナ機構13aの誤作動を抑えるため、走行車線45外の物標47を衝突判定の対象から除くことが考えられるが、走行車線45外の物標47を無条件に衝突予知判定の対象から除くと、乗員の居眠り運転や脇見運転により車両Wが走行車線45を逸脱した場合には、車両Wと走行車線45外の物標47との衝突を予知したり、回避したりすることができないおそれがある。このため、本実施形態に係る走行制御装置では、レーダ装置1によって物標47が検知されても、衝突予知判定部5dによる衝突予知判定を無条件に行うのではなく、以下の条件が満たされときに該衝突予知判定を行うように構成されている。
【0037】
すなわち、衝突予知判定部5dは、障害物位置判定部5cにより物標47が走行車線45内に位置していると判定されたときには、衝突予知判定を行う一方、障害物位置判定部5cにより物標47が走行車線45内に位置していないと判定された場合には、逸脱予知部5fにより走行車線45からの車両Wの逸脱が予知されたときにのみ、衝突予知判定を行うように構成されている。換言すれば、衝突予知判定部5dは、障害物位置判定部5cにより物標47が走行車線45外に位置していると判定された場合には、その物標47を衝突予知判定の対象から除外する一方、逸脱予知部5fにより走行車線45からの車両Wの逸脱が予知されたときには、障害物位置判定部5cにより物標47が走行車線45外に位置していると判定されても、走行車線45外の物標47を衝突予知判定の対象とするようになっている。
【0038】
例えば、図4(a)に示すように、車両W前方に走行車線45内の物標53と走行車線45外の物標47とが存在する場合には、衝突予知判定部5dは、該走行車線45外の物標47を衝突予知判定の対象から除外し、走行車線45内の物標53に対してのみ衝突予知判定を実行する。そして、衝突予知判定部5dによる判定結果がコントロールユニット5内の作動機器制御部5eに入力される。この作動機器制御部(作動機器制御手段)5eは、衝突予知判定部5dにより車両Wと物標53との衝突が予知されたときに、上記作動機器を作動させるように構成されている。具体的には、上記警報装置7を作動させて、車両Wが物標53と衝突しそうなことを乗員に対し音声(第1警報音)によって報知し、上記ブレーキ作動装置9によりブレーキを作動させて車両Wを停止させるとともに、上記第1プリテンショナ機構13aを作動させてシートベルト27に所定張力を付与するようになっている。さらに、作動機器制御部5eは、Gセンサ19により車両Wの物標53への衝突が検出されたときには、第2プリテンショナ機構13bを作動させて更に大きな張力をシートベルト27に付与するようになっている。
【0039】
一方、例えば、図4(b)に示すように、車両W前方に走行車線45外の物標47が存在する場合には、衝突予知判定部5dは、該走行車線45外の物標47を衝突予知判定の対象から除外するが、逸脱予知部5fにより走行車線45からの車両Wの逸脱が予知された(逸脱の可能性が高い)ときには走行車線45外の物標47を衝突予知判定の対象として復帰させ、走行車線45外の物標47について車両Wとの衝突予知判定を実行する。
【0040】
より詳しくは、逸脱予知部5fにより車両Wの逸脱が予知されると、作動機器制御部5eが警報装置7を作動させて、車両Wが走行車線認識部5bにより認識された走行車線45から逸脱しそうなことを乗員に対し音声(第2警報音)によって報知し、第2警報音を発しているにも拘わらず、乗員による逸脱を回避するためのステアリングホイール操作やブレーキ操作がない場合には、衝突予知判定部5dが走行車線45外の物標47について車両Wとの衝突予知判定を実行するようになっている。
【0041】
そして、作動機器制御部5eは、衝突予知判定部5dにより車両Wと物標47との衝突が予知されたときには、走行車線45内の物標53に対する場合と同様に、警報装置7、ブレーキ作動装置9及び第1プリテンショナ機構13aを作動させ、Gセンサ19により車両Wの物標47への衝突が検出されたときには、第2プリテンショナ機構13bを作動させるようになっている。
【0042】
−障害物検知装置の処理動作−
ここで、障害物検知装置の処理動作について、図5のフローチャートに基づいて説明する。
【0043】
先ず、最初のステップS1では、レーダ装置1が車両W前方の物標47を検知しているか否かを判定し、このステップS1の判定がNOであるときは、リターンしてステップS1の動作を繰り返し行う。一方、ステップS1の判定がYESであるときは、ステップS2に進む。
【0044】
次のステップS2では、CCDカメラ3により撮像された画像データを用いてレーダ装置1により検知された物標47,53が走行車線45内に位置しているか否かを判定する。このステップS2の判定がYESであるとき、すなわち、物標53が走行車線45内に位置しているときは、ステップS3に進む。そして、ステップS3では、車両Wと物標53とが衝突しそうか否かを判定し、このステップS3の判定がNOであるときは、リターンする。一方、ステップS3の判定がYESであるとき、すなわち、車両Wと物標53との衝突が予知されたときには、ステップS4に進む。
【0045】
次のステップS4では、警報装置7を作動させて車両Wが物標53と衝突しそうなことを乗員に第1音声により伝えるとともに、ブレーキ作動装置9を作動させることで、各車輪23のブレーキを作動させる。さらに、第1プリテンショナ機構13aを作動させることで、シートベルト27に所定張力を付与し、しかる後にステップS5に進む。
【0046】
そして、次のステップS5で、Gセンサ19からの情報に基づいて車両Wと物標47との衝突があったか否かを判定し、このステップS5の判定がNOであるときには、そのままリターンする一方、ステップS5の判定がYESであるときには、ステップS6に進んで、第2プリテンショナ機構13bを作動させることで、シートベルト27に更に大きな張力を付与し、しかる後にリターンする。
【0047】
一方、上記ステップ2の判定がNOであるときは、ステップS7に進んで、車両Wが走行車線45から逸脱する可能性が高いか否かを判定(逸脱しそうなことを予知)する。このステップS7の判定がNOであるときには、車両Wと物標47との衝突予知判定を行うことなく、そのままリターンする一方、ステップS7の判定がYESであるときには、ステップS8に進んで、警報装置7を作動させて乗員に逸脱が予知されたことを第2音声により伝え、しかる後にステップS9に進む。
【0048】
次のステップS9では、乗員によるステアリングホイール操作やブレーキ操作等の逸脱回避操作が行われたか否かを判定し、このステップS9の判定がYESであるときには、そのままリターンする。一方、ステップS9の判定がNOであるとき、すなわち、車両Wが走行車線45から逸脱したときには、ステップS3に戻って、車両Wがレーダ装置1により検知された物標47と衝突しそうか否かを判定する。
【0049】
−効果−
本実施形態によれば、作動機器制御部5eは、衝突予知判定部5dにより車両Wと物標47,53との衝突が予知されたときに、警報装置7、ブレーキ作動装置9及び第1プリテンショナ機構13aを作動させるように構成され、該衝突予知判定部5dは、障害物位置判定部5cにより物標53が走行車線45内に位置していると判定されたときには衝突予知判定を行うので、衝突の可能性が低い走行車線45外の物標47に対する警報装置7、ブレーキ作動装置9及び第1プリテンショナ機構13aの誤作動を抑えることができるとともに、レーダ装置1によって検知される物標47,53全てについて無条件に衝突予知判定を行う訳ではないので、判定制御に多大な時間を費やすのを抑えることができる。
【0050】
さらに、衝突予知判定部5dは、障害物位置判定部5cにより物標47が走行車線45内に位置していないと判定された場合には、逸脱予知部5fにより走行車線45からの車両Wの逸脱が予知されたときにのみ、衝突予知判定を行うように構成されているので、乗員の居眠り運転や脇見運転により車両Wが走行車線45から逸脱した場合でも、車両Wと走行車線45外の物標47との衝突を予知したり、回避したりすることができる。
【0051】
よって、車両Wが物標47,53と衝突しそうか否かを迅速に判定し且つ障害物検知装置による警報装置7、ブレーキ作動装置9及び第1プリテンショナ機構13aの誤作動を抑えるとともに、車両Wが走行車線45から逸脱したときの安全性を向上させることができる。
【0052】
また、走行車線認識部5bは、区分線検知部5aにより検知された走行区分線41,43に基づいて走行車線45を認識するので、車両Wが走行している走行車線45を正確に認識することができる。これにより、逸脱予知部5fによって車両Wが走行車線45から逸脱しそうなことを確実に予知することができる。したがって、車両Wが走行車線45から逸脱したときの安全性をより一層向上させることができる。
【0053】
さらに、警報装置7により、車両Wが物標47,53と衝突しそうなことを車両Wの乗員に音声で報知するので、乗員が居眠り運転や脇見運転をしている場合にも、車両Wが物標47,53と衝突しそうなことを車両Wの乗員に確実に伝えることができる。
【0054】
また、車両Wと物標47,53との衝突が予知されたときには、車両Wのブレーキを作動させるので、車両Wが物標47,53と衝突するのを抑制することができる。
【0055】
さらに、車両Wと物標47,53との衝突が予知されたときには、車両Wの乗員が着用しているシートベルト27を巻き取って該シートベルト27に所定張力を付与することにより、乗員を拘束するので、乗員の安全性を確実に向上させることができる。
【0056】
−その他の実施形態−
上記実施形態では、レーダ装置1をミリ波レーダ装置としたが、どのような種類のレーダ装置であってもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、障害物を物標(標識柱)47としたが、これに限らず、例えば、ガードレールや街路樹であってもよい。
【0058】
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0059】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上説明したように、本発明は、自車両前方の障害物を障害物検知手段を備えた車両の障害物検知装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態に係る障害物検知装置を搭載した車両前側の概略構成図である。
【図2】障害物検知装置の構成を示すブロック図である。
【図3】カーブにおける車両と障害物との衝突予知判定状況を説明する平面図である。
【図4】車両と障害物との衝突予知判定状況を説明する平面図であり、同図(a)は、走行車線内の障害物に対する衝突予知判定状況を説明する図であり、同図(b)は、走行車線外の障害物に対する衝突予知判定状況を説明する図である。
【図5】障害物検知装置の処理動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
1 レーダ装置(障害物検知手段)
5 コントロールユニット
5a 区分線検知部(区分線検知手段)
5b 走行車線認識部(走行車線認識手段)
5c 障害物位置判定部(障害物位置判定手段)
5d 衝突予知判定部(衝突予知判定手段)
5e 作動機器制御部(作動機器制御手段)
5f 逸脱予知部(逸脱予知手段)
7 警報装置(警報手段)(作動機器)
9 ブレーキ作動装置(ブレーキ作動手段)(作動機器)
13a 第1プリテンショナ機構(シートベルトプリテンショナ)(作動機器)
27 シートベルト
41 白線(走行区分線)
43 中央線(走行区分線)
45 走行車線
47 走行車線外の物標(障害物)
53 走行車線内の物標(障害物)
W 車両(自車両)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両前方の障害物を検知する障害物検知手段と、該障害物検知手段からの障害物検知情報を受けて該自車両の作動機器を制御する作動機器制御手段とを備えた車両の障害物検知装置であって、
上記障害物検知手段により検知された障害物が上記自車両が走行している走行車線内に位置しているか否かを判定する障害物位置判定手段と、
上記自車両が上記走行車線から逸脱しそうなことを予知する逸脱予知手段と、
上記障害物検知情報に基づいて上記自車両が上記障害物と衝突しそうなことを予知する衝突予知判定を行う衝突予知判定手段とをさらに備えており、
上記作動機器制御手段は、上記衝突予知判定手段により該自車両と該障害物との衝突が予知されたときに、上記作動機器を作動させるように構成されており、
上記衝突予知判定手段は、上記障害物位置判定手段により上記障害物が上記走行車線内に位置していると判定されたときには、上記衝突予知判定を行う一方、上記障害物位置判定手段により上記障害物が上記走行車線内に位置していないと判定された場合には、上記逸脱予知手段により上記走行車線からの上記自車両の逸脱が予知されたときにのみ、上記衝突予知判定を行うように構成されていることを特徴とする車両の障害物検知装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両の障害物検知装置において、
道路上における上記自車両前方の走行区分線を検知する区分線検知手段と、
上記区分線検知手段により検知された走行区分線に基づいて、上記走行車線を認識する走行車線認識手段とをさらに備えていることを特徴とする車両の障害物検知装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両の障害物検知装置において、
上記作動機器は、上記自車両が上記障害物と衝突しそうなことを該自車両の乗員に報知する警報手段であることを特徴とする車両の障害物検知装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載の車両の障害物検知装置において、
上記作動機器は、上記自車両のブレーキを作動させるブレーキ作動手段であることを特徴とする車両の障害物検知装置。
【請求項5】
請求項1又は2記載の車両の障害物検知装置において、
上記作動機器は、上記自車両の乗員が着用しているシートベルトを巻き取って該シートベルトに所定張力を付与することで該乗員を拘束するシートベルトプリテンショナであることを特徴とする車両の障害物検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−217728(P2009−217728A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63088(P2008−63088)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】