車両の駆動制御装置
【課題】回転電機の出力特性の切替えに関連する車両のショックが抑制される車両の駆動制御装置を提供する。
【解決手段】電子制御装置による電動機出力特性切替制御において、駆動輪に動力伝達可能に連結された第2電動機M2を動力源として備える車両において、第2電動機M2の出力特性の切替えが、その第2電動機M2から駆動輪へ伝達されるトルクが所定値以下のトルク低下状態で実行されることから、第2電動機M2の出力トルク変化が発生したとしてもそのトルク変化自体が小さく、第2電動機M2の出力特性の切替えが行われても、それに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【解決手段】電子制御装置による電動機出力特性切替制御において、駆動輪に動力伝達可能に連結された第2電動機M2を動力源として備える車両において、第2電動機M2の出力特性の切替えが、その第2電動機M2から駆動輪へ伝達されるトルクが所定値以下のトルク低下状態で実行されることから、第2電動機M2の出力トルク変化が発生したとしてもそのトルク変化自体が小さく、第2電動機M2の出力特性の切替えが行われても、それに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動輪に動力伝達可能に連結された回転電機を動力源として備える車両の駆動制御装置に係り、特に、回転電機の出力特性の切替制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
駆動輪に動力伝達可能に連結された回転電機を動力源として備える車両の駆動制御装置が知られている。たとえば、電気自動車、シリーズハイブリッド車両、パラレルハイブリッド車両などがそれである。そして、そのような車両では、たとえば高トルク且つ高速回転にしようとすると、回転電機が大型化するという欠点があった。このため、小型の回転電機を用い、種々の走行モードに応じて幅広い範囲の回転速度で作動させることが望まれる。このため、回転電機の捲線の結線を切り替えることで、その出力特性を切り替えるようにした電動車両が記載されている。たとえば、特許文献1および特許文献2に記載された電動車両がその一例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−225588号公報
【特許文献2】特開2010−206926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のように出力特性が切り替えられる回転電機を備えた車両では、出力特性の切替えによって回転電機の出力トルクが急激に変化し、車両のショックを発生させることがある。このため、特許文献1では、車両の加速走行中或いは減速走行中以外の場合に上記回転電機の出力特性を切り替えることが提案されている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1では、車両の加速走行中或いは減速走行中以外の定常走行の場合に上記回転電機の出力特性が切り替えられるので、回転電機の出力トルクが急激に変化することにより未だ車両のショックが発生するという不都合があった。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、回転電機の出力特性の切替えに関連する車両のショックが抑制される車両の駆動制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための、第1発明の要旨とするところは、駆動輪に動力伝達可能に連結された回転電機を動力源として備える車両の駆動制御装置であって、前記回転電機の出力特性の切替えを、該回転電機から前記駆動輪へ伝達されるトルクが所定値以下の低下状態で実行することにある。
【0008】
また、第2発明の要旨とするところは、第1発明において、前記回転電機と前記駆動輪との間の動力伝達経路に設けられた自動変速部と、該自動変速部を前進走行状態および後進走行状態のいずれかへ切り替える為に操作されるシフト操作体とを備え、そのシフト操作体の操作によって前記自動変速部が前進走行状態および後進走行状態の一方から他方へ切り替えられるときに、前記回転電機の出力特性の切替えを実行することにある。
【0009】
また、第3発明の要旨とするところは、第1発明において、前記車両は、エンジンと、該エンジンの出力を発電機と前記駆動輪へ動力を伝達するための動力伝達部材とに分配する差動歯車装置とを備え、前記回転電機は該発電機において回生された電力によって前記駆動輪を駆動するものであり、その発電機の回転が零となるメカニカルポイント付近において、前記回転電機の出力特性の切替えを実行することにある。
【0010】
また、第4発明の要旨とするところは、第1発明において、前記回転電機の回生と力行との間の切替えに同期して、前記回転電機の出力特性の切替えを実行することにある。
【0011】
また、第5発明の要旨とするところは、第1発明において、前記車両は、エンジンと、該エンジンの出力を発電機と前記駆動輪へ動力を伝達するための動力伝達部材とに分配する差動歯車装置とを備え、前記回転電機は該発電機において回生された電力によって前記駆動輪を駆動するものであり、その車両の走行中に、前記回転電機の出力特性の切替要求の発生に応答して、前記回転電機の出力トルクを低下させた状態で前記回転電機の出力特性の切替えを実行し、該回転電機の出力トルクを低下させた期間において前記車両の駆動力を維持するように前記エンジンからの直達トルクを増大させることにある。
【0012】
また、第6発明の要旨とするところは、第1発明において、前記回転電機の出力特性の切替要求の発生を判断し、その回転電機から前記駆動輪までの動力伝達経路のトルク容量が該判断時よりも低下したときに前記回転電機の出力特性の切替えを実行することにある。
【0013】
また、第7発明の要旨とするところは、第6発明において、複数の摩擦係合装置のうちのいずれかの係合状態の組合せに応じて複数の変速段のうちのいずれか1が達成される自動変速部を、前記回転電機と前記駆動輪との間の動力伝達経路に備え、その自動変速部の変速途中において前記回転電機の出力特性の切替えを実行することにある。
【0014】
また、第8発明の要旨とするところは、第6発明において、前記自動変速部の変速レンジを予め定められた複数の変速レンジから選択するために手動操作されるシフト操作体が備えられ、そのシフト操作体の操作による前記変速レンジの切替え時に前記回転電機の出力特性の切替えを実行することにある。
【発明の効果】
【0015】
第1発明の車両の駆動制御装置によれば、駆動輪に動力伝達可能に連結された回転電機を動力源として備える車両の駆動制御装置において、前記回転電機の出力特性の切替えが、その回転電機から前記駆動輪へ伝達されるトルクが所定値以下のトルク低下状態で実行されることから、回転電機の出力トルク変化が発生したとしてもそのトルク変化自体が小さく、回転電機の出力特性の切替えが行われても、それに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【0016】
また、第2発明の車両の駆動制御装置によれば、前記回転電機と前記駆動輪との間の動力伝達経路に設けられた自動変速部と、該自動変速部を前進走行状態および後進走行状態のいずれかへ切り替えるために操作されるシフト操作体とを備え、そのシフト操作体の操作によって前記自動変速部が前進走行状態および後進走行状態の一方から他方へ切り替えられるときに、前記回転電機の出力特性の切替えが実行されることから、回転電機の出力トルクが零付近で回転電機の出力特性の切替えが実行されるので、回転電機の出力トルク変化が発生したとしてもそのトルク変化自体が小さく、回転電機の出力特性の切替えに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【0017】
また、第3発明の車両の駆動制御装置によれば、前記車両は、エンジンと、該エンジンの出力を発電機と前記駆動輪へ動力を伝達するための動力伝達部材とに分配する差動歯車装置とを備え、前記回転電機は該発電機において回生された電力によって前記駆動輪を駆動するものであり、その発電機の回転が零となるメカニカルポイント付近において前記回転電機の出力特性の切替えが実行されることから、回転電機の出力トルクが発電機の回転が零となるメカニカルポイントに関連して零付近とされたときに回転電機の出力特性の切替えが実行されるので、回転電機の出力トルク変化が発生したとしててもそのトルク変化自体が小さく、回転電機の出力特性の切替えに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【0018】
また、第4発明の車両の駆動制御装置によれば、前記回転電機の回生と力行との間の切替えに同期して、その回転電機の出力特性の切替えが実行されることから、その回転電機の回生と力行との間でその出力トルクが零付近となる状態で回転電機の出力特性の切替えが実行されるので、回転電機の出力特性の切替えに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【0019】
また、第5発明の車両の駆動制御装置によれば、前記車両は、エンジンと、該エンジンの出力を発電機と前記駆動輪へ動力を伝達するための動力伝達部材とに分配する差動歯車装置とを備え、前記回転電機は該発電機において回生された電力によって前記駆動輪を駆動するものであり、その車両の走行中に、前記回転電機の出力特性の切替要求の発生に応答して、前記回転電機の出力トルクを低下させた状態で前記回転電機の出力特性の切替えを実行し、該回転電機の出力トルクを低下させた期間において前記車両の駆動力を維持するように前記エンジンからの直達トルクが増大させられるので、車両の走行中での回転電機の出力特性の切替えに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【0020】
また、第6発明の車両の駆動制御装置によれば、前記回転電機の出力特性の切替要求の発生を判断し、その回転電機から前記駆動輪までの動力伝達経路のトルク容量がその判断時よりも低下したときに前記回転電機の出力特性の切替えが実行されることから、トルク変化が伝達され難いので、回転電機の出力特性の切替えが行われても、それに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【0021】
また、第7発明の車両の駆動制御装置によれば、複数の摩擦係合装置のうちのいずれかの係合状態の組合せに応じて複数の変速段のうちのいずれか1が達成される自動変速機を、前記回転電機と前記駆動輪との間の動力伝達経路に備え、その自動変速機の変速途中において前記回転電機の出力特性の切替えが実行されることから、変速途中の自動変速部はトルク伝達容量が低下してトルク変化が伝達され難いので、回転電機の出力特性の切替えが行われても、それに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【0022】
また、第8発明の車両の駆動制御装置によれば、前記自動変速部の変速レンジを予め定められた複数の変速レンジから選択するために手動操作されるシフト操作体が備えられ、そのシフト操作体の操作による前記変速レンジの切替え時に前記回転電機の出力特性の切替えが実行されることから、変速レンジの切替え途中の自動変速部はトルク伝達容量が低下してトルク変化が伝達され難いので、回転電機の出力特性の切替えが行われても、それに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明が適用されたハイブリッド車両の動力伝達装置の一部を構成する変速機構を説明する骨子図である。
【図2】図1の車両用動力伝達装置の変速作動に用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組合せを説明する作動図表である。
【図3】図1の車両用動力伝達装置における各ギヤ段の相対的回転速度を説明する共線図である。
【図4】シフトレバーを備えた複数種類のシフトポジションを選択するために操作されるシフト操作装置の一例である。
【図5】図1のインバータの構成と第2電動機とを説明する回路図である。
【図6】図5の第2電動機と切替スイッチとを詳しく説明する回路図である。
【図7】図5および図6に示す切替スイッチによって切り替えられる第2電動機の2種類の出力特性を実線および破線で示す図である。
【図8】図1の電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図9】図1の差動部において、第1電動機のメカニカルポイントを説明する図である。
【図10】図1の電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートである。
【図11】本発明の他の実施例における電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図12】図11の実施例における電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートである。
【図13】図11の実施例における電子制御装置の制御作動を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明が適用されたハイブリッド車両の動力伝達装置の一部を構成する変速機構10を説明する骨子図である。図1において、変速機構10は車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース12(以下、ケース12という)内において共通の軸中心線上に配設された入力回転部材としての入力軸14と、この入力軸14に直接或いは図示しない脈動吸収ダンパー(振動減衰装置)などを介して間接的に連結された無段変速部としての差動部11と、その差動部11から駆動輪34(図8参照)への動力伝達経路で伝達部材18を介して直列に連結されている動力伝達部としての自動変速部20と、この自動変速部20に連結されている出力回転部材としての出力軸22とを直列に備えている。この変速機構10は、例えば車両において縦置きされるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパーを介して直接的に連結された走行用の動力源として例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン(動力源)8と一対の駆動輪34(図8参照)との間に設けられて、エンジン8からの動力を動力伝達経路の一部を構成する差動装置(終減速機)32(図8参照)および一対の車軸等を順次介して一対の駆動輪34へ伝達する。
【0026】
差動部11は、第1電動機M1と、入力軸14に連結されたエンジン8の出力を機械的に分配する機械的機構であってエンジン8の出力を第1電動機M1および伝達部材18に分配する差動機構としての動力分配機構16と、伝達部材18と一体的に回転するように作動的に連結されている第2電動機M2とを備えている。本実施例の第1電動機M1および第2電動機M2は発電機能をも有する所謂モータジェネレータであるが、第1電動機M1は反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも備え、第2電動機M2は走行用の駆動源として駆動力を出力するためのモータ機能を少なくとも備えている。
【0027】
動力分配機構16は、差動歯車装置として機能するたとえばシングルピニオン型の遊星歯車装置24を主体として構成されている。この遊星歯車装置24は、差動サンギヤS0、差動遊星歯車P0、その差動遊星歯車P0を自転および公転可能に支持する差動キャリヤCA0、差動遊星歯車P0を介して差動サンギヤS0と噛み合う差動リングギヤR0を回転要素として備えている。なお、差動サンギヤS0の歯数をZS0、差動リングギヤR0の歯数をZR0とすると、上記ギヤ比ρ0はZS0/ZR0である。
【0028】
この動力分配機構16においては、差動キャリヤCA0は入力軸14すなわちエンジン8に連結されて第1回転要素RE1を構成し、差動サンギヤS0は第1電動機M1に連結されて第2回転要素RE2を構成し、差動リングギヤR0は伝達部材18に連結されて第3回転要素RE3を構成している。このように構成された動力分配機構16は、遊星歯車装置24の3要素である差動サンギヤS0、差動キャリヤCA0、差動リングギヤR0がそれぞれ相互に相対回転可能とされて差動作用が作動可能すなわち差動作用が働く差動状態とされることから、エンジン8の出力が第1電動機M1と伝達部材18に分配されると共に、分配されたエンジン8の出力の一部で第1電動機M1から発生させられた電気エネルギで蓄電されたり第2電動機M2が回転駆動されるので、差動部11(動力分配機構16)は電気的な無段変速装置として機能させられて例えば差動部11は所謂無段変速状態とされて、エンジン8の所定回転に拘わらず伝達部材18の回転が連続的に変化させられる。すなわち、差動部11はその変速比γ0(入力軸14の回転速度NIN/伝達部材18の回転速度N18)が最小値γ0min から最大値γ0max まで連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する。
【0029】
自動変速部20は、エンジン8と駆動輪34との間の動力伝達経路の一部を構成しており、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置26、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置28を備え、有段式の自動変速部20として機能する遊星歯車式の多段変速機である。第1遊星歯車装置26は、第1サンギヤS1、第1遊星歯車P1、その第1遊星歯車P1を自転および公転可能に支持する第1キャリヤCA1、第1遊星歯車P1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を備えている。第2遊星歯車装置28は、第2サンギヤS2、第2遊星歯車P2、その第2遊星歯車P2を自転および公転可能に支持する第2キャリヤCA2、第2遊星歯車P2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を備えている。
【0030】
自動変速部20では、第1サンギヤS1は第3クラッチC3を介して伝達部材18に連結されると共に第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第1キャリヤCA1と第2リングギヤR2とが一体的に連結されて第2クラッチC2を介して伝達部材18に連結されると共に第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第1リングギヤR1と第2キャリヤCA2とが一体的に連結されて出力軸22に連結され、第2サンギヤS2が第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。さらに第1キャリヤCA1と第2リングギヤR2とは一方向クラッチF1を介して非回転部材であるケース12に連結されてエンジン8と同方向の回転が許容され逆方向の回転が禁止されている。これにより、第1キャリヤCA1および第2リングギヤR2は、逆回転不能な回転部材として機能する。
【0031】
また、この自動変速部20は、解放側係合装置の解放と係合側係合装置の係合とによりクラッチツウクラッチ変速が実行されて複数のギヤ段(変速段)が選択的に成立させられることにより、略等比的に変化する変速比γ(=伝達部材18の回転速度N18/出力軸22の回転速度NOUT)が各ギヤ段毎に得られる。例えば、図2の係合作動表に示されるように、第1クラッチC1の係合および一方向クラッチF1により第1速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合により第2速ギヤ速段が成立させられ、第1クラッチC1および第2クラッチC2の係合により第3速ギヤ段が成立させられ、第2クラッチC2および第1ブレーキB1の係合により第4速ギヤ段が成立させられ、第3クラッチC3および第2ブレーキB2の係合により後進ギヤ段が成立させられる。また、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、第1ブレーキB1、および第2ブレーキB2の解放によりニュートラル「N」状態とされる。また、第1速ギヤ段のエンジンブレーキの際には、第2ブレーキB2が係合させられる。
【0032】
このように、自動変速部20内の動力伝達経路は、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、第1ブレーキB1、および第2ブレーキB2のうちの一対の係合状態の組合せにより、その動力伝達経路の動力伝達を可能とする動力伝達可能状態と、動力伝達を遮断する動力伝達遮断状態との間で切り替えられる。つまり、第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段および後進ギヤ段の何れかが成立させられることで上記動力伝達経路が動力伝達可能状態とされ、何れのギヤ段も成立させられないことで例えばニュートラル「N」状態が成立させられることで上記動力伝達経路が動力伝達遮断状態とされる。
【0033】
前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、第1ブレーキB1、および第2ブレーキB2(以下、特に区別しない場合はクラッチC、ブレーキBと表す)は、従来の車両用自動変速機においてよく用いられている係合要素としての油圧式摩擦係合装置である。たとえば、互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型により構成される。また、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2は、回転するドラムの外周面に巻き付けられた1本または2本のバンドの一端が油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成され得る。
【0034】
以上のように構成された変速機構10において、差動部11が無段変速機として機能し、且つ差動部11に直列の自動変速部20が有段変速機として機能することにより、自動変速部20の少なくとも1つの変速段Mに対して自動変速部20に入力される回転速度(以下、自動変速部20の入力回転速度)すなわち伝達部材18の回転速度(以下、伝達部材回転速度N18)が無段的に変化させられてその変速段Mにおいて無段的な変速比幅が得られる。したがって、変速機構10の総合変速比γT(=入力軸14の回転速度NIN/出力軸22の回転速度NOUT)が無段階に得られ、変速機構10において無段変速機が構成される。この変速機構10の総合変速比γTは、差動部11の変速比γ0と自動変速部20の変速比γとに基づいて形成される変速機構10全体としてのトータル変速比γTである。
【0035】
例えば、図2の係合作動表に示される自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段や後進ギヤ段の各ギヤ段に対し伝達部材回転速度N18が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって、変速機構10全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られる。
【0036】
図3は、差動部11と自動変速部20とから構成される変速機構10において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。この図3の共線図は、各遊星歯車装置24、26、28のギヤ比ρの関係を示す横軸と、相対的回転速度を示す縦軸とから成る二次元座標であり、3本の横線のうちの下側の横線X1が回転速度零を示し、上側の横線X2が回転速度「1.0」すなわち入力軸14に連結されたエンジン8の回転速度NEを示し、X3が差動部11から自動変速部20に入力される後述する第3回転要素RE3の回転速度を示している。
【0037】
また、差動部11を構成する動力分配機構16の3つの要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第2回転要素RE2に対応する差動サンギヤS0、第1回転要素RE1に対応する差動キャリヤCA0、第3回転要素RE3に対応する差動リングギヤR0の相対回転速度を示すものであり、それらの間隔は遊星歯車装置24のギヤ比ρ0に応じて定められている。さらに、自動変速部20の4本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7は、左から順に、第4回転要素RE4に対応する第2サンギヤS2を、第5回転要素RE5に対応する相互に連結された第1リングギヤR1および第2キャリヤCA2を、第6回転要素RE6に対応する相互に連結された第1キャリヤCA1および第2リングギヤR2を、第7回転要素RE7に対応する第1サンギヤS1をそれぞれ表し、それらの間隔は第1、第2遊星歯車装置26、28のギヤ比ρ1、ρ2に応じてそれぞれ定められている。共線図の縦軸間の関係においてサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔とされるとキャリヤとリングギヤとの間が遊星歯車装置のギヤ比ρに対応する間隔とされる。すなわち、差動部11では縦線Y1とY2との縦線間が「1」に対応する間隔に設定され、縦線Y2とY3との間隔はギヤ比ρ0に対応する間隔に設定される。また、自動変速部20では各第1、第2遊星歯車装置26、28毎にそのサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔に設定され、キャリヤとリングギヤとの間がギヤ比ρに対応する間隔に設定される。
【0038】
図4は複数種類のシフトポジションPSHを人為的操作により切り替える切替装置としてのシフト操作装置50の一例を示す図である。このシフト操作装置50は、例えば運転席の横に配設され、複数種類のシフトポジションPSHを選択するために操作されるシフトレバー52を備えている。
【0039】
そのシフトレバー52は、変速機構10内つまり自動変速部20内の動力伝達経路が遮断されたニュートラル状態すなわち中立状態とし且つ自動変速部20の出力軸22を回転不能に固定する(すなわちロックする)ための駐車ポジション「P(パーキング)」、後進走行のための後進走行ポジション「R(リバース)」、変速機構10内の動力伝達経路が遮断された中立状態とするための中立ポジション「N(ニュートラル)」、自動変速モードを成立させて差動部11の無段的な変速比幅と自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段の範囲で自動変速制御される各ギヤ段とで得られる変速機構10の変速可能なトータル変速比γTの変化範囲内で自動変速制御を実行させる前進自動変速走行ポジション「D(ドライブ)」、または手動変速走行モード(手動モード)を成立させて自動変速部20における高速側の変速段を制限する所謂変速レンジを設定するための前進手動変速走行ポジション「M(マニュアル)」へ手動操作されるように設けられている。また、この「M」ポジションにおいては、変速レンジを切り替えることにより減速度を設定することが可能であることから、このシフト操作装置50は減速度操作装置として機能させられる。上記シフトレバー52の各シフトポジションPSHへの手動操作に連動して図2の係合作動表に示す後進ギヤ段「R」、ニュートラル「N」、前進ギヤ段「D」における各変速段等が成立するように、例えば電気制御により変速機構10の動力伝達状態を切り替える所謂シフトバイワイヤシステムによって油圧制御回路70内のマニアルバルブが電気的アクチュエータにより切り替えられる。
【0040】
図1に戻って、電子制御装置100は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン8、第1電動機M1、第2電動機M2に関するハイブリッド駆動制御、自動変速部20の変速制御等の駆動制御、第2電動機M2の捲線切替制御すなわち特性切替制御などを実行する。
【0041】
電子制御装置100には、各センサやスイッチなどから、エンジン水温TEMPWを表す信号、シフトレバー52(図4参照)のシフトポジションPSHを表す信号、エンジン8の回転速度であるエンジン回転速度NEを表す信号、Mモード(手動変速走行モード)を指令する信号、車速センサ80によって検出される出力軸22の回転速度(以下、出力軸回転速度)NOUTに対応する車速Vを表す信号、フットブレーキ操作を表す信号、運転者の出力要求量に対応するアクセルペダル82の操作量であるアクセル開度Accを表す信号、車両の前後加速度Gを表す信号、レゾルバ等からなる回転速度センサ84によって検出される第1電動機M1の回転速度NM1(以下、第1電動機回転速度NM1という)を表す信号、レゾルバ等からなる回転速度センサ86によって検出される第2電動機M2の回転速度NM2(以下、第2電動機回転速度NM2という)を表す信号、蓄電装置(バッテリ)90(図8参照)の充電容量(充電状態)SOCを表す信号などが、それぞれ供給される。
【0042】
電子制御装置100は、運転者の要求出力を低燃費で実現するための走行モード、たとえば発進、軽負荷走行、定常走行、加速走行、減速、制動走行などのいずれかを決定し、その走行モードを実現するために、エンジンを制御するエンジン用電子制御装置58へエンジン8の作動或いは出力を指令する信号を出力し、電動機M1およびM2の作動を指令する指令信号をインバータ88へ出力する。エンジン用電子制御装置58は、例えばエンジン8の吸気管60に備えられた電子スロットル弁62のスロットル弁開度θTHを操作するスロットルアクチュエータ64への駆動信号や燃料噴射装置66による吸気管60或いはエンジン8の筒内への燃料供給量を制御する燃料供給量信号や点火装置68によるエンジン8の点火時期を指令する点火信号を出力し、エンジン8の作動或いは出力を制御する。インバータ88は、電子制御装置100からの指令に従って電動機M1の発電電力を電動機M2に供給し、電動機M1或いは電動機M2を力行させるための電力をバッテリ90から供給し或いはそれらからの発電電力をバッテリ90に蓄電する。また、電子制御装置100は、自動変速部20の変速段を指令する変速指令信号を変速用電子制御装置92へ出力する。変速用電子制御装置92は、指令された変速段を達成するための自動変速部20の油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを制御する信号などを油圧制御回路70に出力する。また、電子制御装置100は、車輪ブレーキを用いて車両を減速させるための信号をブレーキ用電子制御装置94へ出力する。ブレーキ用電子制御装置94は、ブレーキペダル96の操作量に応じた制動力を得るための制動信号を出力して車輪制動装置98を作動させる他、制動時の車両挙動を安定化させるために車輪制動装置98内のABSアクチュエータを作動させるためのABS作動信号を出力するとともに、上記電子制御装置100からの指令にしたがってその指令に応じた制動力が得られるようにブレーキペダル96の操作量に拘わらず車輪制動装置98を作動させる。
【0043】
図5は、上記インバータ88の構成と、第1電動機M1および第2電動機M2と、第2電動機M2の捲線切替を行う切替スイッチ102と、インバータ駆動制御回路104とを示している。インバータ88は、第1電動機M1を制御するためのジェネレータ用ブリッジ回路88aと第2電動機M2を制御するためのモータ用ブリッジ回路88bと、平滑コンデンサ88cとを備えている。ジェネレータ用ブリッジ回路88aとモータ用ブリッジ回路88bとは相互に同様に構成されているので、図5では、モータ用ブリッジ回路88bが詳しく示されている。モータ用ブリッジ回路88bは、バッテリ90および平滑コンデンサ88cの正極同士および負極同士をそれぞれ接続する正極ラインPLおよび負極ラインNL間で、直列接続された一対のスイッチング素子SEが3列並列接続されて構成され、それら一対のスイッチング素子SE間が、上記切替スイッチ102を介して、交流同期モータである第1電動機M1および第2電動機M2の3端子U、V、Wにそれぞれ接続されている。なお、上記スイッチング素子SEは、たとえば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ( IGBT)、パワーMOSFETなどから構成されており、保護ダイオードDがそれぞれ並列に接続されている。電子制御装置100は、上記スイッチング素子SEのオンオフ作動タイミングを制御するインバータ駆動制御回路104を介して上記インバータ88を制御し、第1電動機M1および第2電動機M2の駆動および回生を制御する。
【0044】
図6に詳しく示すように、第2電動機M2はスター( Y)結線されたU相のコイル、V相のコイル、W相のコイルを備え、それらU相のコイル、V相のコイル、W相のコイルは、直列接続された第1捲線L1および第2捲線L2からそれぞれ構成されている。このため、第2電動機M2には、それら第1捲線L1および第2捲線L2の両方にモータ用ブリッジ回路88bからの交流駆動電流Iを供給するための3端子U1、V1、W1と、第1捲線L1にモータ用ブリッジ回路88bからの交流駆動電流Iを供給するための3端子U2、V2、W2とが設けられている。
【0045】
切替スイッチ102は、電子制御装置100からの切替指令信号SSに従って、モータ用ブリッジ回路88bからの交流駆動電流Iを、第2電動機M2の3端子U1、V1、W1へ供給する状態と3端子U2、V2、W2へ供給する状態とのいずれかへ切り替えられる。切替スイッチ102が、図6に示すように、モータ用ブリッジ回路88bからの交流駆動電流Iを第2電動機M2の3端子U1、V1、W1へ供給して第1捲線L1および第2捲線L2に流す状態とされると、図7の実線に示す高トルク特性が得られる。反対に、切替スイッチ102が、モータ用ブリッジ回路88bからの交流駆動電流Iを第2電動機M2の3端子U2、V2、W2へ供給して第1捲線L1のみに流す状態とされると、図7の破線に示す高回転特性が得られる。
【0046】
図8は、電子制御装置100による制御機能の一部である電動機出力特性切替制御機能を説明する機能ブロック線図である。図8において、電動機出力特性切替制御部110は、電動機出力特性切替要求判定手段112、電動機出力低下判定手段114、動力伝達容量低下判定手段116、電動機出力特性切替手段118を備えている。電動機出力特性切替要求判定手段112は、車両の停止中、又は第2電動機M2の駆動による車両の走行中、たとえばモータ走行、エンジンおよびモータ走行、減速或いは惰行走行中において、高回転特性と高トルク特性と切り替えるためにたとえば図7に示すように予め設定された切替回転数N0を第2電動機M2の回転速度NM2が通過したか否かに基づいて、第2電動機M2の特性として高回転特性と高トルク特性とのいずれか一方への出力特性切替要求が出されているか否かを判定する。
【0047】
電動機出力低下判定手段114は、第2電動機M2の特性切替要求が出された状態において、その第2電動機M2の出力が零付近の所定の低下状態となったか否かを判定する。たとえば、第2電動機M2の出力トルクTM2の変動が車両ショックとして違和感のない大きさとなる零に近い値に予め設定されたトルク低下状態判定値よりも実際の第2電動機M2の出力トルクTM2が低下した状態となったか否かを判定する。また、たとえば、シフトレバー52によってDポジションとRポジションとの間の切替操作が行われたか否かに基づいて第2電動機M2の出力低下状態を判定する。シフトレバー52によってDポジションとRポジションとの間の切替操作が行われると、電子制御装置100から第2電動機M2の出力トルクを0Nmとする指令が出されるからである。また、電動機出力低下判定手段114は、第1電動機M1が図9に示すメカニカルポイント付近に至ったか否かに基づいて第2電動機M2の出力低下状態を判定する。図9は、図3のうちの差動部11における回転要素の回転を説明する共線図において、第1電動機M1の回転が0rpmとなったときを示している。エンジン走行中の差動部11において、エンジン8の出力を後段の自動変速部20へ出力するに際しては、そのエンジン8から機械的に伝達される直達トルクに加えて、第1電動機M1から第2電動機M2へ至る電気パスを介しても動力が伝達されるので、この電気パスにおいて第1電動機M1の回転が零となって回生が無くなると、第2電動機M2の出力トルクも零状態となるので、第2電動機M2の出力低下状態が判定される。また、電動機出力低下判定手段114は、第2電動機M2が車両を駆動する力行状態と減速走行中の車両からの駆動力を受けて発電する回生状態との間の切替えが発生したか否かに基づいて第2電動機M2の出力低下状態を判定する。力行状態と回生状態との間の切替え時には第2電動機M2はその出力トルクTM2の零状態を通過するので、そのタイミングを判定することで、第2電動機M2の出力低下状態が判定される。
【0048】
動力伝達容量低下判定手段116は、第2電動機M2の出力特性切替要求が出された状態において、その第2電動機M2から駆動輪34までの動力伝達経路の動力伝達容量がその出力特性切替要求の発生が判定されたときよりも低下状態となったか否かを判定する。シフトレバー52によってDポジションからMポジションへの操作によりマニアルレンジへのレンジの変更操作は自動変速部20における変速を伴うものであるため、自動変速部20における動力伝達容量が低下する。このことから、動力伝達容量低下判定手段116は、たとえばマニアルレンジへのレンジの変更操作の有無に基づいて、第2電動機M2から駆動輪34までの動力伝達経路の動力伝達容量がその出力特性切替要求の発生が判定されたときよりも低下状態となったか否かを判定する。また、自動変速部20における自動変速は、解放側の摩擦係合装置の解放と係合輪の摩擦係合装置の係合とにより実行され、その解放と係合との間では自動変速部20における動力伝達容量が低下することから、第2電動機M2の出力トルク変動が駆動輪34側へ伝達され難い状態となる。このことから、動力伝達容量低下判定手段116は、たとえば自動変速部20における変速中であるか否かを変速制御手段120からの信号に基づいて判定し、第2電動機M2から駆動輪34までの動力伝達経路の動力伝達容量がその出力特性切替要求の発生が判定されたときよりも低下状態となったか否かを判定する。変速制御手段120は、変速用電子制御装置92内に備えられ、電子制御装置100から指令された変速段を達成するための自動変速部20の油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを制御する信号などを油圧制御回路70に出力する。
【0049】
電動機出力特性切替手段118は、上記電動機出力低下判定手段114により第2電動機M2の出力が低下状態となったと判定されたとき、または、上記動力伝達容量低下判定手段116により第2電動機M2から駆動輪34までの動力伝達経路の動力伝達容量がその出力特性切替要求の発生が判定されたときよりも低下状態となったと判定されたとき、第2電動機M2の出力特性切替要求に従って切替スイッチ102を切り替えることにより、第2電動機M2の出力特性の切替えを実行する。
【0050】
図10は、電子制御装置100の制御作動の要部すなわち第2電動機M2の出力特性の切替制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実施される。
【0051】
先ず、電動機出力特性切替要求判定手段112に対応するステップS1(以下、ステップを省略する)では、第2電動機M2の出力特性を高回転特性と高トルク特性とのいずれかへ切り替えるために、たとえば図7に示すように予め設定された切替回転数N0を第2電動機M2の回転速度NM2が通過したか否かに基づいて、第2電動機M2の特性として高回転特性と高トルク特性とのいずれか一方への出力特性切替要求が出されているか否かが判定される。このS1の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定された場合は、電動機出力低下判定手段114に対応するS2において、第2電動機M2の出力トルクTM2が零付近の所定の低下状態となったか否かが判定される。このS2の判断が肯定された場合は電動機出力特性切替手段118に対応するS4が実行されるが、S2の判断が肯定された場合は、動力伝達容量低下判定手段116に対応するS3において、第2電動機M2から駆動輪34までの動力伝達経路の動力伝達容量がその出力特性切替要求の発生が判定されたときよりも低下状態となったか否かが判定される。このS3の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定された場合はS4が実行される。電動機出力特性切替手段118に対応するS4では、第2電動機M2の出力特性切替要求に従って切替スイッチ102を切り替えることにより、第2電動機M2の出力特性の切替えが実行される。
【0052】
上述のように、本実施例の電子制御装置100による電動機出力特性切替制御によれば、駆動輪34に動力伝達可能に連結された第2電動機M2を動力源として備える車両において、第2電動機M2の出力特性の切替えが、その第2電動機M2から駆動輪34へ伝達されるトルクが所定値以下のトルク低下状態で実行されることから、第2電動機M2の出力トルク変化が発生したとしてもそのトルク変化自体が小さく、第2電動機M2の出力特性の切替えが行われても、それに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【0053】
また、本実施例の電子制御装置100による電動機出力特性切替制御によれば、第2電動機M2と駆動輪34との間の動力伝達経路に設けられた自動変速部20と、その自動変速部20を前進走行状態および後進走行状態のいずれかへ切り替えるために操作されるシフトレバー52とを備え、そのシフトレバー52の操作によって自動変速部20が前進走行状態および後進走行状態の一方から他方へ切り替えられるときに、第2電動機M2の出力特性の切替えが実行されることから、第2電動機M2の出力トルクTM2が零付近で第2電動機M2の出力特性の切替えが実行されるので、第2電動機M2の出力トルク変化が発生したとしてもそのトルク変化自体が小さく、第2電動機M2の出力特性の切替えに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【0054】
また、本実施例の電子制御装置100による電動機出力特性切替制御によれば、前記車両は、エンジン8と、そのエンジン8の出力を第1電動機M1(発電機)と動力伝達部材18とに分配する差動歯車装置として機能する遊星歯車装置24とを備え、第2電動機M2はその第1電動機M1において回生された電力によって駆動輪34を駆動するものであり、その第1電動機M1の回転が零となるメカニカルポイント付近において第2電動機M2の出力特性の切替えが実行されることから、第2電動機M2の出力トルクTM2が第1電動機M1の回転が零となるメカニカルポイントに関連して零付近とされたときに第2電動機M2の出力特性の切替えが実行されるので、第2電動機M2の出力トルク変化が発生したとしてもそのトルク変化自体が小さく、第2電動機M2の出力特性の切替えに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【0055】
また、本実施例の電子制御装置100による電動機出力特性切替制御によれば、第2電動機M2の回生と力行との間の切替わりに同期して、その第2電動機M2の出力特性の切替えが実行されることから、その第2電動機M2の回生と力行との間でその出力トルクが零付近となる状態で第2電動機M2の出力特性の切替えが実行されるので、第2電動機M2の出力特性の切替えに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【0056】
また、本実施例の電子制御装置100による電動機出力特性切替制御によれば、第2電動機M2の出力特性の切替要求の発生を判断し、その第2電動機M2から駆動輪34までの動力伝達経路のトルク容量がその判断時よりも低下したときに第2電動機M2の出力特性の切替えが実行されることから、トルク変化が伝達され難いので、第2電動機M2の出力特性の切替えが行われても、それに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【0057】
また、本実施例の電子制御装置100による電動機出力特性切替制御によれば、複数の摩擦係合装置のうちのいずれかの係合状態の組合せに応じて複数の変速段のうちのいずれか1が達成される自動変速部20を、第2電動機M2と駆動輪34との間の動力伝達経路に備え、その自動変速部20の変速途中において第2電動機M2の出力特性の切替えが実行されることから、変速途中の自動変速部20はトルク伝達容量が低下してトルク変化が伝達され難いので、第2電動機M2の出力特性の切替えが行われても、それに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【0058】
また、本実施例の電子制御装置100による電動機出力特性切替制御によれば、自動変速部20の変速レンジを予め定められた複数の変速レンジから選択するために手動操作されるシフトレバー52が備えられ、そのシフトレバー52の操作による変速レンジの切替え時に第2電動機M2の出力特性の切替えが実行されることから、変速レンジの切替え途中の自動変速部20はトルク伝達容量が低下してトルク変化が伝達され難いので、第2電動機M2の出力特性の切替えが行われても、それに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【実施例2】
【0059】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
図11は、本発明の他の実施例である電子制御装置100による電動機出力特性切替制御機能を説明する機能ブロック線図である。前述の実施例では、第2電動機M2の特性切替要求が出された状態において、第2電動機M2の出力が零付近の所定の低下状態となったとき、或いは、第2電動機M2から駆動輪34までの動力伝達経路の動力伝達容量がその出力特性切替要求の発生が判定されたときよりも低下状態となったときに、第2電動機M2の特性切替が実行されていたが、本実施例では、第2電動機M2の特性切替要求が出されると、積極的に第2電動機M2の出力が零付近の所定の低下状態として第2電動機M2の特性切替を実行する点で、相違している。
【0061】
図11において、電動機出力特性切替制御部130は、電動機出力特性切替要求判定手段112、電動機駆動中判定手段132、駆動トルク制御手段134、電動機出力トルク低下手段136、電動機回生中判定手段138、制動トルク制御手段140、電動機出力特性切替手段118を備えている。電動機出力特性切替要求判定手段112により第2電動機M2の特性として高回転特性と高トルク特性とのいずれか一方への出力特性切替要求が出されていると判定されると、電動機駆動中判定手段132は第2電動機M2の駆動中すなわち正トルク出力中であるか否かをたとえば第2電動機M2へ交流駆動電流Iが供給されているか否かに基づいて判定し、電動機回生中判定手段138は第2電動機M2の回生中であるか否かをたとえば第2電動機M2から回生電流が出力されているか否かに基づいて判定する。
【0062】
電動機駆動中判定手段132により第2電動機M2の駆動中であると判定されると、駆動トルク制御手段134は、第2電動機M2の駆動トルクが零に低下させられても車両の駆動力或いは車速が維持されるように、エンジン8からの直達トルクをその第2電動機M2の駆動トルクの低下分を補うようにして増量させると同時に、電動機出力トルク低下手段136は第2電動機M2の駆動トルクが零に低下させる。このような第2電動機M2の駆動トルクが零に低下させられた状態で、電動機出力特性切替手段118は、第2電動機M2の出力特性切替要求に従って切替スイッチ102を切り替えることにより、第2電動機M2の出力特性の切替えを実行する。そして、電動機出力特性切替手段118による第2電動機M2の出力特性の切替えが完了すると、上記駆動トルク制御手段134はエンジン8の直達トルクを電動機出力特性切替制御開始前の元の値へ復帰させると同時に、電動機出力トルク低下手段136は第2電動機M2の駆動トルクを零から電動機出力特性切替制御開始前の元の値に復帰させる。
【0063】
電動機回生中判定手段138により第2電動機M2の回生中であると判定されると、制動トルク制御手段140は、第2電動機M2の回生トルクが零に低下させられても車両の減速度が維持されるように、車輪制動装置98により車輪の制動トルクをその第2電動機M2の回生トルクの低下分を補うようにして増量させると同時に、電動機出力トルク低下手段136は第2電動機M2の回生トルクを零に低下させる。このような第2電動機M2の駆動トルクが零に低下させられた状態で、電動機出力特性切替手段118は、第2電動機M2の出力特性切替要求に従って切替スイッチ102を切り替えることにより、第2電動機M2の出力特性の切替えを実行する。そして、電動機出力特性切替手段118による第2電動機M2の出力特性の切替えが完了すると、上記制動トルク制御手段140は車輪制動装置98により車輪の制動トルクを零へ復帰させると同時に、電動機出力トルク低下手段136は第2電動機M2の回生トルクを零から電動機出力特性切替制御開始前の元の値に復帰させる。
【0064】
図12は、本実施例の電子制御装置100の制御作動の要部すなわち第2電動機M2の出力特性の切替制御作動を説明するフローチャートであり、図13はその制御作動のうち、第2電動機M2の駆動中であるときの切替制御作動を説明するタイムチャートである。図12は、電動機出力特性切替要求判定手段112によって第2電動機M2の特性として高回転特性と高トルク特性とのいずれか一方への出力特性切替要求が出されていると判定されると開始される。
【0065】
図12において、電動機駆動中判定手段132に対応するステップS11では、第2電動機M2の駆動中であるか否かがたとえば第2電動機M2へ交流駆動電流Iが供給されているが否かに基づいて判定される。このS11の判断が肯定される場合はS13以下が実行されるが、否定される場合は電動機回生中判定手段138に対応するS12において、第2電動機M2の回生中であるか否かがたとえば第2電動機M2から回生電流が出力されているか否かに基づいて判定される。このS12の判断が否定される場合は、第2電動機M2が駆動でもなく回生でもない状態であるので、電動機出力特性切替手段118に対応するS22において、第2電動機M2の出力特性切替要求に従って切替スイッチ102が切り替えられることにより、第2電動機M2の出力特性の切替えが実行される。
【0066】
上記S11において第2電動機M2の駆動中であると判断された場合には、S13において充電禁止状態であるか否かがバッテリ90の充電残量SOCが所定値を超えるか否かに基づいて判断される。このS13の判断が否定される場合は上記S22が実行されるが、肯定される場合は、駆動トルク制御手段134に対応するS14において、第2電動機M2の駆動トルクが零に低下させられても車両の駆動力或いは車速が維持されるように、エンジン8からの直達トルクがその第2電動機M2の駆動トルクの低下分を補うようにして増量させられる。同時に、電動機出力トルク低下手段136に対応するS15では、第2電動機M2の駆動トルクが零に低下させられる。図13のt1時点乃至t2時点はこの状態を示している。続いて、電動機出力特性切替手段118に対応するS16では、そのような第2電動機M2の駆動トルクが零に低下させられた状態で、第2電動機M2の出力特性切替要求に従って切替スイッチ102を切り替えることにより第2電動機M2の捲線切替が実行されて、第2電動機M2の出力特性の切替えが実行される。そして、図13のt3時点に示すようにS16による第2電動機M2の出力特性の切替えが完了すると、上記駆動トルク制御手段134および電動機出力トルク低下手段136に対応するS17において、エンジン8の直達トルクが電動機出力特性切替制御開始前の元の値へ復帰させられると同時に、第2電動機M2の駆動トルクが零から電動機出力特性切替制御開始前の元の値に復帰させられる。図13のt4時点はこの状態を示している。
【0067】
上記S12において第2電動機M2の回生中であると判断された場合には、制動トルク制御手段140に対応するS18において、第2電動機M2の回生トルクが零に低下させられても回生走行中の車両の減速度が維持されるように、車輪制動装置98による車輪の制動直達トルクがその第2電動機M2の回生トルクの低下分を補うようにして増量させられる。同時に、電動機出力トルク低下手段136に対応するS19では、第2電動機M2の回生トルクが零に低下させられる。続いて、電動機出力特性切替手段118に対応するS20では、そのような第2電動機M2の回生トルクが零に低下させられた状態で、第2電動機M2の出力特性切替要求に従って切替スイッチ102を切り替えることにより第2電動機M2の捲線切替が実行されて、第2電動機M2の出力特性の切替えが実行される。そして、S20による第2電動機M2の出力特性の切替えが完了すると、上記駆動トルク制御手段134および電動機出力トルク低下手段136に対応するS21において、エンジン8の直達トルクが電動機出力特性切替制御開始前の元の値へ復帰させられると同時に、第2電動機M2の回生トルクが零から電動機出力特性切替制御開始前の元の値に復帰させられる。
【0068】
上述のように、本実施例の電子制御装置100による電動機出力特性切替制御によれば、本実施例の電子制御装置100による電動機出力特性切替制御によれば、前記車両は、エンジン8と、そのエンジン8の出力を第1電動機M1(発電機)と駆動輪34へ動力を伝達するための動力伝達部材18とに分配する差動歯車装置として機能する遊星歯車装置24とを備え、第2電動機M2はその第1電動機M1において回生された電力によって駆動輪34を駆動するものであり、その車両の走行中に、第2電動機M2の出力特性の切替要求の発生に応答して、その第2電動機M2の出力トルクを積極的に低下させた状態で第2電動機M2の出力特性の切替えを実行し、その第2電動機M2の出力トルクを低下させた期間において車両の駆動力を維持するようにエンジン8からの直達トルクが増大させられるので、車両の走行中での第2電動機M2の出力特性の切替えに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【0069】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0070】
例えば、前述の実施例では、変速機構10の前段に設けられた差動部11は、2つの電動機すなわち第1電動機M1および第2電動機M2を備えるハイブリッド車両であったが、1つの電動機を備えるハイブリッド車両であってもよいし、エンジン8および差動部11に代えて1つの電動機を備える電気自動車であってもよい。
【0071】
また、前述の実施例の第2電動機M2は、交流同期モータであって、直列接続された第1捲線L1および第2捲線L2からそれぞれ構成されたU相のコイル、V相のコイル、およびW相のコイルを備え、交流駆動電流Iが第1捲線L1および第2捲線L2へ供給される状態と第1捲線L1のみに供給される状態とが切替られることで出力特性が変更されていたが、U相のコイル、V相のコイル、およびW相のコイルがΔ( デルタ)結線とY( ワイ) 結線とに接続状態が切り替えられることで出力特性が変更されるものであってもよい。
【0072】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0073】
8:エンジン(動力源)
18:伝達部材
20:自動変速部
24:遊星歯車装置( 差動歯車装置)
34:駆動輪
52:シフトレバー(シフト操作体)
102:切替スイッチ
100:電子制御装置(駆動制御装置)
M2:第2電動機(回転電機)
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動輪に動力伝達可能に連結された回転電機を動力源として備える車両の駆動制御装置に係り、特に、回転電機の出力特性の切替制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
駆動輪に動力伝達可能に連結された回転電機を動力源として備える車両の駆動制御装置が知られている。たとえば、電気自動車、シリーズハイブリッド車両、パラレルハイブリッド車両などがそれである。そして、そのような車両では、たとえば高トルク且つ高速回転にしようとすると、回転電機が大型化するという欠点があった。このため、小型の回転電機を用い、種々の走行モードに応じて幅広い範囲の回転速度で作動させることが望まれる。このため、回転電機の捲線の結線を切り替えることで、その出力特性を切り替えるようにした電動車両が記載されている。たとえば、特許文献1および特許文献2に記載された電動車両がその一例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−225588号公報
【特許文献2】特開2010−206926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のように出力特性が切り替えられる回転電機を備えた車両では、出力特性の切替えによって回転電機の出力トルクが急激に変化し、車両のショックを発生させることがある。このため、特許文献1では、車両の加速走行中或いは減速走行中以外の場合に上記回転電機の出力特性を切り替えることが提案されている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1では、車両の加速走行中或いは減速走行中以外の定常走行の場合に上記回転電機の出力特性が切り替えられるので、回転電機の出力トルクが急激に変化することにより未だ車両のショックが発生するという不都合があった。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、回転電機の出力特性の切替えに関連する車両のショックが抑制される車両の駆動制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための、第1発明の要旨とするところは、駆動輪に動力伝達可能に連結された回転電機を動力源として備える車両の駆動制御装置であって、前記回転電機の出力特性の切替えを、該回転電機から前記駆動輪へ伝達されるトルクが所定値以下の低下状態で実行することにある。
【0008】
また、第2発明の要旨とするところは、第1発明において、前記回転電機と前記駆動輪との間の動力伝達経路に設けられた自動変速部と、該自動変速部を前進走行状態および後進走行状態のいずれかへ切り替える為に操作されるシフト操作体とを備え、そのシフト操作体の操作によって前記自動変速部が前進走行状態および後進走行状態の一方から他方へ切り替えられるときに、前記回転電機の出力特性の切替えを実行することにある。
【0009】
また、第3発明の要旨とするところは、第1発明において、前記車両は、エンジンと、該エンジンの出力を発電機と前記駆動輪へ動力を伝達するための動力伝達部材とに分配する差動歯車装置とを備え、前記回転電機は該発電機において回生された電力によって前記駆動輪を駆動するものであり、その発電機の回転が零となるメカニカルポイント付近において、前記回転電機の出力特性の切替えを実行することにある。
【0010】
また、第4発明の要旨とするところは、第1発明において、前記回転電機の回生と力行との間の切替えに同期して、前記回転電機の出力特性の切替えを実行することにある。
【0011】
また、第5発明の要旨とするところは、第1発明において、前記車両は、エンジンと、該エンジンの出力を発電機と前記駆動輪へ動力を伝達するための動力伝達部材とに分配する差動歯車装置とを備え、前記回転電機は該発電機において回生された電力によって前記駆動輪を駆動するものであり、その車両の走行中に、前記回転電機の出力特性の切替要求の発生に応答して、前記回転電機の出力トルクを低下させた状態で前記回転電機の出力特性の切替えを実行し、該回転電機の出力トルクを低下させた期間において前記車両の駆動力を維持するように前記エンジンからの直達トルクを増大させることにある。
【0012】
また、第6発明の要旨とするところは、第1発明において、前記回転電機の出力特性の切替要求の発生を判断し、その回転電機から前記駆動輪までの動力伝達経路のトルク容量が該判断時よりも低下したときに前記回転電機の出力特性の切替えを実行することにある。
【0013】
また、第7発明の要旨とするところは、第6発明において、複数の摩擦係合装置のうちのいずれかの係合状態の組合せに応じて複数の変速段のうちのいずれか1が達成される自動変速部を、前記回転電機と前記駆動輪との間の動力伝達経路に備え、その自動変速部の変速途中において前記回転電機の出力特性の切替えを実行することにある。
【0014】
また、第8発明の要旨とするところは、第6発明において、前記自動変速部の変速レンジを予め定められた複数の変速レンジから選択するために手動操作されるシフト操作体が備えられ、そのシフト操作体の操作による前記変速レンジの切替え時に前記回転電機の出力特性の切替えを実行することにある。
【発明の効果】
【0015】
第1発明の車両の駆動制御装置によれば、駆動輪に動力伝達可能に連結された回転電機を動力源として備える車両の駆動制御装置において、前記回転電機の出力特性の切替えが、その回転電機から前記駆動輪へ伝達されるトルクが所定値以下のトルク低下状態で実行されることから、回転電機の出力トルク変化が発生したとしてもそのトルク変化自体が小さく、回転電機の出力特性の切替えが行われても、それに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【0016】
また、第2発明の車両の駆動制御装置によれば、前記回転電機と前記駆動輪との間の動力伝達経路に設けられた自動変速部と、該自動変速部を前進走行状態および後進走行状態のいずれかへ切り替えるために操作されるシフト操作体とを備え、そのシフト操作体の操作によって前記自動変速部が前進走行状態および後進走行状態の一方から他方へ切り替えられるときに、前記回転電機の出力特性の切替えが実行されることから、回転電機の出力トルクが零付近で回転電機の出力特性の切替えが実行されるので、回転電機の出力トルク変化が発生したとしてもそのトルク変化自体が小さく、回転電機の出力特性の切替えに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【0017】
また、第3発明の車両の駆動制御装置によれば、前記車両は、エンジンと、該エンジンの出力を発電機と前記駆動輪へ動力を伝達するための動力伝達部材とに分配する差動歯車装置とを備え、前記回転電機は該発電機において回生された電力によって前記駆動輪を駆動するものであり、その発電機の回転が零となるメカニカルポイント付近において前記回転電機の出力特性の切替えが実行されることから、回転電機の出力トルクが発電機の回転が零となるメカニカルポイントに関連して零付近とされたときに回転電機の出力特性の切替えが実行されるので、回転電機の出力トルク変化が発生したとしててもそのトルク変化自体が小さく、回転電機の出力特性の切替えに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【0018】
また、第4発明の車両の駆動制御装置によれば、前記回転電機の回生と力行との間の切替えに同期して、その回転電機の出力特性の切替えが実行されることから、その回転電機の回生と力行との間でその出力トルクが零付近となる状態で回転電機の出力特性の切替えが実行されるので、回転電機の出力特性の切替えに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【0019】
また、第5発明の車両の駆動制御装置によれば、前記車両は、エンジンと、該エンジンの出力を発電機と前記駆動輪へ動力を伝達するための動力伝達部材とに分配する差動歯車装置とを備え、前記回転電機は該発電機において回生された電力によって前記駆動輪を駆動するものであり、その車両の走行中に、前記回転電機の出力特性の切替要求の発生に応答して、前記回転電機の出力トルクを低下させた状態で前記回転電機の出力特性の切替えを実行し、該回転電機の出力トルクを低下させた期間において前記車両の駆動力を維持するように前記エンジンからの直達トルクが増大させられるので、車両の走行中での回転電機の出力特性の切替えに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【0020】
また、第6発明の車両の駆動制御装置によれば、前記回転電機の出力特性の切替要求の発生を判断し、その回転電機から前記駆動輪までの動力伝達経路のトルク容量がその判断時よりも低下したときに前記回転電機の出力特性の切替えが実行されることから、トルク変化が伝達され難いので、回転電機の出力特性の切替えが行われても、それに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【0021】
また、第7発明の車両の駆動制御装置によれば、複数の摩擦係合装置のうちのいずれかの係合状態の組合せに応じて複数の変速段のうちのいずれか1が達成される自動変速機を、前記回転電機と前記駆動輪との間の動力伝達経路に備え、その自動変速機の変速途中において前記回転電機の出力特性の切替えが実行されることから、変速途中の自動変速部はトルク伝達容量が低下してトルク変化が伝達され難いので、回転電機の出力特性の切替えが行われても、それに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【0022】
また、第8発明の車両の駆動制御装置によれば、前記自動変速部の変速レンジを予め定められた複数の変速レンジから選択するために手動操作されるシフト操作体が備えられ、そのシフト操作体の操作による前記変速レンジの切替え時に前記回転電機の出力特性の切替えが実行されることから、変速レンジの切替え途中の自動変速部はトルク伝達容量が低下してトルク変化が伝達され難いので、回転電機の出力特性の切替えが行われても、それに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明が適用されたハイブリッド車両の動力伝達装置の一部を構成する変速機構を説明する骨子図である。
【図2】図1の車両用動力伝達装置の変速作動に用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組合せを説明する作動図表である。
【図3】図1の車両用動力伝達装置における各ギヤ段の相対的回転速度を説明する共線図である。
【図4】シフトレバーを備えた複数種類のシフトポジションを選択するために操作されるシフト操作装置の一例である。
【図5】図1のインバータの構成と第2電動機とを説明する回路図である。
【図6】図5の第2電動機と切替スイッチとを詳しく説明する回路図である。
【図7】図5および図6に示す切替スイッチによって切り替えられる第2電動機の2種類の出力特性を実線および破線で示す図である。
【図8】図1の電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図9】図1の差動部において、第1電動機のメカニカルポイントを説明する図である。
【図10】図1の電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートである。
【図11】本発明の他の実施例における電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図12】図11の実施例における電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートである。
【図13】図11の実施例における電子制御装置の制御作動を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明が適用されたハイブリッド車両の動力伝達装置の一部を構成する変速機構10を説明する骨子図である。図1において、変速機構10は車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース12(以下、ケース12という)内において共通の軸中心線上に配設された入力回転部材としての入力軸14と、この入力軸14に直接或いは図示しない脈動吸収ダンパー(振動減衰装置)などを介して間接的に連結された無段変速部としての差動部11と、その差動部11から駆動輪34(図8参照)への動力伝達経路で伝達部材18を介して直列に連結されている動力伝達部としての自動変速部20と、この自動変速部20に連結されている出力回転部材としての出力軸22とを直列に備えている。この変速機構10は、例えば車両において縦置きされるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパーを介して直接的に連結された走行用の動力源として例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン(動力源)8と一対の駆動輪34(図8参照)との間に設けられて、エンジン8からの動力を動力伝達経路の一部を構成する差動装置(終減速機)32(図8参照)および一対の車軸等を順次介して一対の駆動輪34へ伝達する。
【0026】
差動部11は、第1電動機M1と、入力軸14に連結されたエンジン8の出力を機械的に分配する機械的機構であってエンジン8の出力を第1電動機M1および伝達部材18に分配する差動機構としての動力分配機構16と、伝達部材18と一体的に回転するように作動的に連結されている第2電動機M2とを備えている。本実施例の第1電動機M1および第2電動機M2は発電機能をも有する所謂モータジェネレータであるが、第1電動機M1は反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも備え、第2電動機M2は走行用の駆動源として駆動力を出力するためのモータ機能を少なくとも備えている。
【0027】
動力分配機構16は、差動歯車装置として機能するたとえばシングルピニオン型の遊星歯車装置24を主体として構成されている。この遊星歯車装置24は、差動サンギヤS0、差動遊星歯車P0、その差動遊星歯車P0を自転および公転可能に支持する差動キャリヤCA0、差動遊星歯車P0を介して差動サンギヤS0と噛み合う差動リングギヤR0を回転要素として備えている。なお、差動サンギヤS0の歯数をZS0、差動リングギヤR0の歯数をZR0とすると、上記ギヤ比ρ0はZS0/ZR0である。
【0028】
この動力分配機構16においては、差動キャリヤCA0は入力軸14すなわちエンジン8に連結されて第1回転要素RE1を構成し、差動サンギヤS0は第1電動機M1に連結されて第2回転要素RE2を構成し、差動リングギヤR0は伝達部材18に連結されて第3回転要素RE3を構成している。このように構成された動力分配機構16は、遊星歯車装置24の3要素である差動サンギヤS0、差動キャリヤCA0、差動リングギヤR0がそれぞれ相互に相対回転可能とされて差動作用が作動可能すなわち差動作用が働く差動状態とされることから、エンジン8の出力が第1電動機M1と伝達部材18に分配されると共に、分配されたエンジン8の出力の一部で第1電動機M1から発生させられた電気エネルギで蓄電されたり第2電動機M2が回転駆動されるので、差動部11(動力分配機構16)は電気的な無段変速装置として機能させられて例えば差動部11は所謂無段変速状態とされて、エンジン8の所定回転に拘わらず伝達部材18の回転が連続的に変化させられる。すなわち、差動部11はその変速比γ0(入力軸14の回転速度NIN/伝達部材18の回転速度N18)が最小値γ0min から最大値γ0max まで連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する。
【0029】
自動変速部20は、エンジン8と駆動輪34との間の動力伝達経路の一部を構成しており、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置26、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置28を備え、有段式の自動変速部20として機能する遊星歯車式の多段変速機である。第1遊星歯車装置26は、第1サンギヤS1、第1遊星歯車P1、その第1遊星歯車P1を自転および公転可能に支持する第1キャリヤCA1、第1遊星歯車P1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を備えている。第2遊星歯車装置28は、第2サンギヤS2、第2遊星歯車P2、その第2遊星歯車P2を自転および公転可能に支持する第2キャリヤCA2、第2遊星歯車P2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を備えている。
【0030】
自動変速部20では、第1サンギヤS1は第3クラッチC3を介して伝達部材18に連結されると共に第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第1キャリヤCA1と第2リングギヤR2とが一体的に連結されて第2クラッチC2を介して伝達部材18に連結されると共に第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第1リングギヤR1と第2キャリヤCA2とが一体的に連結されて出力軸22に連結され、第2サンギヤS2が第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。さらに第1キャリヤCA1と第2リングギヤR2とは一方向クラッチF1を介して非回転部材であるケース12に連結されてエンジン8と同方向の回転が許容され逆方向の回転が禁止されている。これにより、第1キャリヤCA1および第2リングギヤR2は、逆回転不能な回転部材として機能する。
【0031】
また、この自動変速部20は、解放側係合装置の解放と係合側係合装置の係合とによりクラッチツウクラッチ変速が実行されて複数のギヤ段(変速段)が選択的に成立させられることにより、略等比的に変化する変速比γ(=伝達部材18の回転速度N18/出力軸22の回転速度NOUT)が各ギヤ段毎に得られる。例えば、図2の係合作動表に示されるように、第1クラッチC1の係合および一方向クラッチF1により第1速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合により第2速ギヤ速段が成立させられ、第1クラッチC1および第2クラッチC2の係合により第3速ギヤ段が成立させられ、第2クラッチC2および第1ブレーキB1の係合により第4速ギヤ段が成立させられ、第3クラッチC3および第2ブレーキB2の係合により後進ギヤ段が成立させられる。また、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、第1ブレーキB1、および第2ブレーキB2の解放によりニュートラル「N」状態とされる。また、第1速ギヤ段のエンジンブレーキの際には、第2ブレーキB2が係合させられる。
【0032】
このように、自動変速部20内の動力伝達経路は、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、第1ブレーキB1、および第2ブレーキB2のうちの一対の係合状態の組合せにより、その動力伝達経路の動力伝達を可能とする動力伝達可能状態と、動力伝達を遮断する動力伝達遮断状態との間で切り替えられる。つまり、第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段および後進ギヤ段の何れかが成立させられることで上記動力伝達経路が動力伝達可能状態とされ、何れのギヤ段も成立させられないことで例えばニュートラル「N」状態が成立させられることで上記動力伝達経路が動力伝達遮断状態とされる。
【0033】
前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、第1ブレーキB1、および第2ブレーキB2(以下、特に区別しない場合はクラッチC、ブレーキBと表す)は、従来の車両用自動変速機においてよく用いられている係合要素としての油圧式摩擦係合装置である。たとえば、互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型により構成される。また、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2は、回転するドラムの外周面に巻き付けられた1本または2本のバンドの一端が油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成され得る。
【0034】
以上のように構成された変速機構10において、差動部11が無段変速機として機能し、且つ差動部11に直列の自動変速部20が有段変速機として機能することにより、自動変速部20の少なくとも1つの変速段Mに対して自動変速部20に入力される回転速度(以下、自動変速部20の入力回転速度)すなわち伝達部材18の回転速度(以下、伝達部材回転速度N18)が無段的に変化させられてその変速段Mにおいて無段的な変速比幅が得られる。したがって、変速機構10の総合変速比γT(=入力軸14の回転速度NIN/出力軸22の回転速度NOUT)が無段階に得られ、変速機構10において無段変速機が構成される。この変速機構10の総合変速比γTは、差動部11の変速比γ0と自動変速部20の変速比γとに基づいて形成される変速機構10全体としてのトータル変速比γTである。
【0035】
例えば、図2の係合作動表に示される自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段や後進ギヤ段の各ギヤ段に対し伝達部材回転速度N18が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって、変速機構10全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られる。
【0036】
図3は、差動部11と自動変速部20とから構成される変速機構10において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。この図3の共線図は、各遊星歯車装置24、26、28のギヤ比ρの関係を示す横軸と、相対的回転速度を示す縦軸とから成る二次元座標であり、3本の横線のうちの下側の横線X1が回転速度零を示し、上側の横線X2が回転速度「1.0」すなわち入力軸14に連結されたエンジン8の回転速度NEを示し、X3が差動部11から自動変速部20に入力される後述する第3回転要素RE3の回転速度を示している。
【0037】
また、差動部11を構成する動力分配機構16の3つの要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第2回転要素RE2に対応する差動サンギヤS0、第1回転要素RE1に対応する差動キャリヤCA0、第3回転要素RE3に対応する差動リングギヤR0の相対回転速度を示すものであり、それらの間隔は遊星歯車装置24のギヤ比ρ0に応じて定められている。さらに、自動変速部20の4本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7は、左から順に、第4回転要素RE4に対応する第2サンギヤS2を、第5回転要素RE5に対応する相互に連結された第1リングギヤR1および第2キャリヤCA2を、第6回転要素RE6に対応する相互に連結された第1キャリヤCA1および第2リングギヤR2を、第7回転要素RE7に対応する第1サンギヤS1をそれぞれ表し、それらの間隔は第1、第2遊星歯車装置26、28のギヤ比ρ1、ρ2に応じてそれぞれ定められている。共線図の縦軸間の関係においてサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔とされるとキャリヤとリングギヤとの間が遊星歯車装置のギヤ比ρに対応する間隔とされる。すなわち、差動部11では縦線Y1とY2との縦線間が「1」に対応する間隔に設定され、縦線Y2とY3との間隔はギヤ比ρ0に対応する間隔に設定される。また、自動変速部20では各第1、第2遊星歯車装置26、28毎にそのサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔に設定され、キャリヤとリングギヤとの間がギヤ比ρに対応する間隔に設定される。
【0038】
図4は複数種類のシフトポジションPSHを人為的操作により切り替える切替装置としてのシフト操作装置50の一例を示す図である。このシフト操作装置50は、例えば運転席の横に配設され、複数種類のシフトポジションPSHを選択するために操作されるシフトレバー52を備えている。
【0039】
そのシフトレバー52は、変速機構10内つまり自動変速部20内の動力伝達経路が遮断されたニュートラル状態すなわち中立状態とし且つ自動変速部20の出力軸22を回転不能に固定する(すなわちロックする)ための駐車ポジション「P(パーキング)」、後進走行のための後進走行ポジション「R(リバース)」、変速機構10内の動力伝達経路が遮断された中立状態とするための中立ポジション「N(ニュートラル)」、自動変速モードを成立させて差動部11の無段的な変速比幅と自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段の範囲で自動変速制御される各ギヤ段とで得られる変速機構10の変速可能なトータル変速比γTの変化範囲内で自動変速制御を実行させる前進自動変速走行ポジション「D(ドライブ)」、または手動変速走行モード(手動モード)を成立させて自動変速部20における高速側の変速段を制限する所謂変速レンジを設定するための前進手動変速走行ポジション「M(マニュアル)」へ手動操作されるように設けられている。また、この「M」ポジションにおいては、変速レンジを切り替えることにより減速度を設定することが可能であることから、このシフト操作装置50は減速度操作装置として機能させられる。上記シフトレバー52の各シフトポジションPSHへの手動操作に連動して図2の係合作動表に示す後進ギヤ段「R」、ニュートラル「N」、前進ギヤ段「D」における各変速段等が成立するように、例えば電気制御により変速機構10の動力伝達状態を切り替える所謂シフトバイワイヤシステムによって油圧制御回路70内のマニアルバルブが電気的アクチュエータにより切り替えられる。
【0040】
図1に戻って、電子制御装置100は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン8、第1電動機M1、第2電動機M2に関するハイブリッド駆動制御、自動変速部20の変速制御等の駆動制御、第2電動機M2の捲線切替制御すなわち特性切替制御などを実行する。
【0041】
電子制御装置100には、各センサやスイッチなどから、エンジン水温TEMPWを表す信号、シフトレバー52(図4参照)のシフトポジションPSHを表す信号、エンジン8の回転速度であるエンジン回転速度NEを表す信号、Mモード(手動変速走行モード)を指令する信号、車速センサ80によって検出される出力軸22の回転速度(以下、出力軸回転速度)NOUTに対応する車速Vを表す信号、フットブレーキ操作を表す信号、運転者の出力要求量に対応するアクセルペダル82の操作量であるアクセル開度Accを表す信号、車両の前後加速度Gを表す信号、レゾルバ等からなる回転速度センサ84によって検出される第1電動機M1の回転速度NM1(以下、第1電動機回転速度NM1という)を表す信号、レゾルバ等からなる回転速度センサ86によって検出される第2電動機M2の回転速度NM2(以下、第2電動機回転速度NM2という)を表す信号、蓄電装置(バッテリ)90(図8参照)の充電容量(充電状態)SOCを表す信号などが、それぞれ供給される。
【0042】
電子制御装置100は、運転者の要求出力を低燃費で実現するための走行モード、たとえば発進、軽負荷走行、定常走行、加速走行、減速、制動走行などのいずれかを決定し、その走行モードを実現するために、エンジンを制御するエンジン用電子制御装置58へエンジン8の作動或いは出力を指令する信号を出力し、電動機M1およびM2の作動を指令する指令信号をインバータ88へ出力する。エンジン用電子制御装置58は、例えばエンジン8の吸気管60に備えられた電子スロットル弁62のスロットル弁開度θTHを操作するスロットルアクチュエータ64への駆動信号や燃料噴射装置66による吸気管60或いはエンジン8の筒内への燃料供給量を制御する燃料供給量信号や点火装置68によるエンジン8の点火時期を指令する点火信号を出力し、エンジン8の作動或いは出力を制御する。インバータ88は、電子制御装置100からの指令に従って電動機M1の発電電力を電動機M2に供給し、電動機M1或いは電動機M2を力行させるための電力をバッテリ90から供給し或いはそれらからの発電電力をバッテリ90に蓄電する。また、電子制御装置100は、自動変速部20の変速段を指令する変速指令信号を変速用電子制御装置92へ出力する。変速用電子制御装置92は、指令された変速段を達成するための自動変速部20の油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを制御する信号などを油圧制御回路70に出力する。また、電子制御装置100は、車輪ブレーキを用いて車両を減速させるための信号をブレーキ用電子制御装置94へ出力する。ブレーキ用電子制御装置94は、ブレーキペダル96の操作量に応じた制動力を得るための制動信号を出力して車輪制動装置98を作動させる他、制動時の車両挙動を安定化させるために車輪制動装置98内のABSアクチュエータを作動させるためのABS作動信号を出力するとともに、上記電子制御装置100からの指令にしたがってその指令に応じた制動力が得られるようにブレーキペダル96の操作量に拘わらず車輪制動装置98を作動させる。
【0043】
図5は、上記インバータ88の構成と、第1電動機M1および第2電動機M2と、第2電動機M2の捲線切替を行う切替スイッチ102と、インバータ駆動制御回路104とを示している。インバータ88は、第1電動機M1を制御するためのジェネレータ用ブリッジ回路88aと第2電動機M2を制御するためのモータ用ブリッジ回路88bと、平滑コンデンサ88cとを備えている。ジェネレータ用ブリッジ回路88aとモータ用ブリッジ回路88bとは相互に同様に構成されているので、図5では、モータ用ブリッジ回路88bが詳しく示されている。モータ用ブリッジ回路88bは、バッテリ90および平滑コンデンサ88cの正極同士および負極同士をそれぞれ接続する正極ラインPLおよび負極ラインNL間で、直列接続された一対のスイッチング素子SEが3列並列接続されて構成され、それら一対のスイッチング素子SE間が、上記切替スイッチ102を介して、交流同期モータである第1電動機M1および第2電動機M2の3端子U、V、Wにそれぞれ接続されている。なお、上記スイッチング素子SEは、たとえば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ( IGBT)、パワーMOSFETなどから構成されており、保護ダイオードDがそれぞれ並列に接続されている。電子制御装置100は、上記スイッチング素子SEのオンオフ作動タイミングを制御するインバータ駆動制御回路104を介して上記インバータ88を制御し、第1電動機M1および第2電動機M2の駆動および回生を制御する。
【0044】
図6に詳しく示すように、第2電動機M2はスター( Y)結線されたU相のコイル、V相のコイル、W相のコイルを備え、それらU相のコイル、V相のコイル、W相のコイルは、直列接続された第1捲線L1および第2捲線L2からそれぞれ構成されている。このため、第2電動機M2には、それら第1捲線L1および第2捲線L2の両方にモータ用ブリッジ回路88bからの交流駆動電流Iを供給するための3端子U1、V1、W1と、第1捲線L1にモータ用ブリッジ回路88bからの交流駆動電流Iを供給するための3端子U2、V2、W2とが設けられている。
【0045】
切替スイッチ102は、電子制御装置100からの切替指令信号SSに従って、モータ用ブリッジ回路88bからの交流駆動電流Iを、第2電動機M2の3端子U1、V1、W1へ供給する状態と3端子U2、V2、W2へ供給する状態とのいずれかへ切り替えられる。切替スイッチ102が、図6に示すように、モータ用ブリッジ回路88bからの交流駆動電流Iを第2電動機M2の3端子U1、V1、W1へ供給して第1捲線L1および第2捲線L2に流す状態とされると、図7の実線に示す高トルク特性が得られる。反対に、切替スイッチ102が、モータ用ブリッジ回路88bからの交流駆動電流Iを第2電動機M2の3端子U2、V2、W2へ供給して第1捲線L1のみに流す状態とされると、図7の破線に示す高回転特性が得られる。
【0046】
図8は、電子制御装置100による制御機能の一部である電動機出力特性切替制御機能を説明する機能ブロック線図である。図8において、電動機出力特性切替制御部110は、電動機出力特性切替要求判定手段112、電動機出力低下判定手段114、動力伝達容量低下判定手段116、電動機出力特性切替手段118を備えている。電動機出力特性切替要求判定手段112は、車両の停止中、又は第2電動機M2の駆動による車両の走行中、たとえばモータ走行、エンジンおよびモータ走行、減速或いは惰行走行中において、高回転特性と高トルク特性と切り替えるためにたとえば図7に示すように予め設定された切替回転数N0を第2電動機M2の回転速度NM2が通過したか否かに基づいて、第2電動機M2の特性として高回転特性と高トルク特性とのいずれか一方への出力特性切替要求が出されているか否かを判定する。
【0047】
電動機出力低下判定手段114は、第2電動機M2の特性切替要求が出された状態において、その第2電動機M2の出力が零付近の所定の低下状態となったか否かを判定する。たとえば、第2電動機M2の出力トルクTM2の変動が車両ショックとして違和感のない大きさとなる零に近い値に予め設定されたトルク低下状態判定値よりも実際の第2電動機M2の出力トルクTM2が低下した状態となったか否かを判定する。また、たとえば、シフトレバー52によってDポジションとRポジションとの間の切替操作が行われたか否かに基づいて第2電動機M2の出力低下状態を判定する。シフトレバー52によってDポジションとRポジションとの間の切替操作が行われると、電子制御装置100から第2電動機M2の出力トルクを0Nmとする指令が出されるからである。また、電動機出力低下判定手段114は、第1電動機M1が図9に示すメカニカルポイント付近に至ったか否かに基づいて第2電動機M2の出力低下状態を判定する。図9は、図3のうちの差動部11における回転要素の回転を説明する共線図において、第1電動機M1の回転が0rpmとなったときを示している。エンジン走行中の差動部11において、エンジン8の出力を後段の自動変速部20へ出力するに際しては、そのエンジン8から機械的に伝達される直達トルクに加えて、第1電動機M1から第2電動機M2へ至る電気パスを介しても動力が伝達されるので、この電気パスにおいて第1電動機M1の回転が零となって回生が無くなると、第2電動機M2の出力トルクも零状態となるので、第2電動機M2の出力低下状態が判定される。また、電動機出力低下判定手段114は、第2電動機M2が車両を駆動する力行状態と減速走行中の車両からの駆動力を受けて発電する回生状態との間の切替えが発生したか否かに基づいて第2電動機M2の出力低下状態を判定する。力行状態と回生状態との間の切替え時には第2電動機M2はその出力トルクTM2の零状態を通過するので、そのタイミングを判定することで、第2電動機M2の出力低下状態が判定される。
【0048】
動力伝達容量低下判定手段116は、第2電動機M2の出力特性切替要求が出された状態において、その第2電動機M2から駆動輪34までの動力伝達経路の動力伝達容量がその出力特性切替要求の発生が判定されたときよりも低下状態となったか否かを判定する。シフトレバー52によってDポジションからMポジションへの操作によりマニアルレンジへのレンジの変更操作は自動変速部20における変速を伴うものであるため、自動変速部20における動力伝達容量が低下する。このことから、動力伝達容量低下判定手段116は、たとえばマニアルレンジへのレンジの変更操作の有無に基づいて、第2電動機M2から駆動輪34までの動力伝達経路の動力伝達容量がその出力特性切替要求の発生が判定されたときよりも低下状態となったか否かを判定する。また、自動変速部20における自動変速は、解放側の摩擦係合装置の解放と係合輪の摩擦係合装置の係合とにより実行され、その解放と係合との間では自動変速部20における動力伝達容量が低下することから、第2電動機M2の出力トルク変動が駆動輪34側へ伝達され難い状態となる。このことから、動力伝達容量低下判定手段116は、たとえば自動変速部20における変速中であるか否かを変速制御手段120からの信号に基づいて判定し、第2電動機M2から駆動輪34までの動力伝達経路の動力伝達容量がその出力特性切替要求の発生が判定されたときよりも低下状態となったか否かを判定する。変速制御手段120は、変速用電子制御装置92内に備えられ、電子制御装置100から指令された変速段を達成するための自動変速部20の油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを制御する信号などを油圧制御回路70に出力する。
【0049】
電動機出力特性切替手段118は、上記電動機出力低下判定手段114により第2電動機M2の出力が低下状態となったと判定されたとき、または、上記動力伝達容量低下判定手段116により第2電動機M2から駆動輪34までの動力伝達経路の動力伝達容量がその出力特性切替要求の発生が判定されたときよりも低下状態となったと判定されたとき、第2電動機M2の出力特性切替要求に従って切替スイッチ102を切り替えることにより、第2電動機M2の出力特性の切替えを実行する。
【0050】
図10は、電子制御装置100の制御作動の要部すなわち第2電動機M2の出力特性の切替制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実施される。
【0051】
先ず、電動機出力特性切替要求判定手段112に対応するステップS1(以下、ステップを省略する)では、第2電動機M2の出力特性を高回転特性と高トルク特性とのいずれかへ切り替えるために、たとえば図7に示すように予め設定された切替回転数N0を第2電動機M2の回転速度NM2が通過したか否かに基づいて、第2電動機M2の特性として高回転特性と高トルク特性とのいずれか一方への出力特性切替要求が出されているか否かが判定される。このS1の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定された場合は、電動機出力低下判定手段114に対応するS2において、第2電動機M2の出力トルクTM2が零付近の所定の低下状態となったか否かが判定される。このS2の判断が肯定された場合は電動機出力特性切替手段118に対応するS4が実行されるが、S2の判断が肯定された場合は、動力伝達容量低下判定手段116に対応するS3において、第2電動機M2から駆動輪34までの動力伝達経路の動力伝達容量がその出力特性切替要求の発生が判定されたときよりも低下状態となったか否かが判定される。このS3の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定された場合はS4が実行される。電動機出力特性切替手段118に対応するS4では、第2電動機M2の出力特性切替要求に従って切替スイッチ102を切り替えることにより、第2電動機M2の出力特性の切替えが実行される。
【0052】
上述のように、本実施例の電子制御装置100による電動機出力特性切替制御によれば、駆動輪34に動力伝達可能に連結された第2電動機M2を動力源として備える車両において、第2電動機M2の出力特性の切替えが、その第2電動機M2から駆動輪34へ伝達されるトルクが所定値以下のトルク低下状態で実行されることから、第2電動機M2の出力トルク変化が発生したとしてもそのトルク変化自体が小さく、第2電動機M2の出力特性の切替えが行われても、それに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【0053】
また、本実施例の電子制御装置100による電動機出力特性切替制御によれば、第2電動機M2と駆動輪34との間の動力伝達経路に設けられた自動変速部20と、その自動変速部20を前進走行状態および後進走行状態のいずれかへ切り替えるために操作されるシフトレバー52とを備え、そのシフトレバー52の操作によって自動変速部20が前進走行状態および後進走行状態の一方から他方へ切り替えられるときに、第2電動機M2の出力特性の切替えが実行されることから、第2電動機M2の出力トルクTM2が零付近で第2電動機M2の出力特性の切替えが実行されるので、第2電動機M2の出力トルク変化が発生したとしてもそのトルク変化自体が小さく、第2電動機M2の出力特性の切替えに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【0054】
また、本実施例の電子制御装置100による電動機出力特性切替制御によれば、前記車両は、エンジン8と、そのエンジン8の出力を第1電動機M1(発電機)と動力伝達部材18とに分配する差動歯車装置として機能する遊星歯車装置24とを備え、第2電動機M2はその第1電動機M1において回生された電力によって駆動輪34を駆動するものであり、その第1電動機M1の回転が零となるメカニカルポイント付近において第2電動機M2の出力特性の切替えが実行されることから、第2電動機M2の出力トルクTM2が第1電動機M1の回転が零となるメカニカルポイントに関連して零付近とされたときに第2電動機M2の出力特性の切替えが実行されるので、第2電動機M2の出力トルク変化が発生したとしてもそのトルク変化自体が小さく、第2電動機M2の出力特性の切替えに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【0055】
また、本実施例の電子制御装置100による電動機出力特性切替制御によれば、第2電動機M2の回生と力行との間の切替わりに同期して、その第2電動機M2の出力特性の切替えが実行されることから、その第2電動機M2の回生と力行との間でその出力トルクが零付近となる状態で第2電動機M2の出力特性の切替えが実行されるので、第2電動機M2の出力特性の切替えに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【0056】
また、本実施例の電子制御装置100による電動機出力特性切替制御によれば、第2電動機M2の出力特性の切替要求の発生を判断し、その第2電動機M2から駆動輪34までの動力伝達経路のトルク容量がその判断時よりも低下したときに第2電動機M2の出力特性の切替えが実行されることから、トルク変化が伝達され難いので、第2電動機M2の出力特性の切替えが行われても、それに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【0057】
また、本実施例の電子制御装置100による電動機出力特性切替制御によれば、複数の摩擦係合装置のうちのいずれかの係合状態の組合せに応じて複数の変速段のうちのいずれか1が達成される自動変速部20を、第2電動機M2と駆動輪34との間の動力伝達経路に備え、その自動変速部20の変速途中において第2電動機M2の出力特性の切替えが実行されることから、変速途中の自動変速部20はトルク伝達容量が低下してトルク変化が伝達され難いので、第2電動機M2の出力特性の切替えが行われても、それに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【0058】
また、本実施例の電子制御装置100による電動機出力特性切替制御によれば、自動変速部20の変速レンジを予め定められた複数の変速レンジから選択するために手動操作されるシフトレバー52が備えられ、そのシフトレバー52の操作による変速レンジの切替え時に第2電動機M2の出力特性の切替えが実行されることから、変速レンジの切替え途中の自動変速部20はトルク伝達容量が低下してトルク変化が伝達され難いので、第2電動機M2の出力特性の切替えが行われても、それに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【実施例2】
【0059】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
図11は、本発明の他の実施例である電子制御装置100による電動機出力特性切替制御機能を説明する機能ブロック線図である。前述の実施例では、第2電動機M2の特性切替要求が出された状態において、第2電動機M2の出力が零付近の所定の低下状態となったとき、或いは、第2電動機M2から駆動輪34までの動力伝達経路の動力伝達容量がその出力特性切替要求の発生が判定されたときよりも低下状態となったときに、第2電動機M2の特性切替が実行されていたが、本実施例では、第2電動機M2の特性切替要求が出されると、積極的に第2電動機M2の出力が零付近の所定の低下状態として第2電動機M2の特性切替を実行する点で、相違している。
【0061】
図11において、電動機出力特性切替制御部130は、電動機出力特性切替要求判定手段112、電動機駆動中判定手段132、駆動トルク制御手段134、電動機出力トルク低下手段136、電動機回生中判定手段138、制動トルク制御手段140、電動機出力特性切替手段118を備えている。電動機出力特性切替要求判定手段112により第2電動機M2の特性として高回転特性と高トルク特性とのいずれか一方への出力特性切替要求が出されていると判定されると、電動機駆動中判定手段132は第2電動機M2の駆動中すなわち正トルク出力中であるか否かをたとえば第2電動機M2へ交流駆動電流Iが供給されているか否かに基づいて判定し、電動機回生中判定手段138は第2電動機M2の回生中であるか否かをたとえば第2電動機M2から回生電流が出力されているか否かに基づいて判定する。
【0062】
電動機駆動中判定手段132により第2電動機M2の駆動中であると判定されると、駆動トルク制御手段134は、第2電動機M2の駆動トルクが零に低下させられても車両の駆動力或いは車速が維持されるように、エンジン8からの直達トルクをその第2電動機M2の駆動トルクの低下分を補うようにして増量させると同時に、電動機出力トルク低下手段136は第2電動機M2の駆動トルクが零に低下させる。このような第2電動機M2の駆動トルクが零に低下させられた状態で、電動機出力特性切替手段118は、第2電動機M2の出力特性切替要求に従って切替スイッチ102を切り替えることにより、第2電動機M2の出力特性の切替えを実行する。そして、電動機出力特性切替手段118による第2電動機M2の出力特性の切替えが完了すると、上記駆動トルク制御手段134はエンジン8の直達トルクを電動機出力特性切替制御開始前の元の値へ復帰させると同時に、電動機出力トルク低下手段136は第2電動機M2の駆動トルクを零から電動機出力特性切替制御開始前の元の値に復帰させる。
【0063】
電動機回生中判定手段138により第2電動機M2の回生中であると判定されると、制動トルク制御手段140は、第2電動機M2の回生トルクが零に低下させられても車両の減速度が維持されるように、車輪制動装置98により車輪の制動トルクをその第2電動機M2の回生トルクの低下分を補うようにして増量させると同時に、電動機出力トルク低下手段136は第2電動機M2の回生トルクを零に低下させる。このような第2電動機M2の駆動トルクが零に低下させられた状態で、電動機出力特性切替手段118は、第2電動機M2の出力特性切替要求に従って切替スイッチ102を切り替えることにより、第2電動機M2の出力特性の切替えを実行する。そして、電動機出力特性切替手段118による第2電動機M2の出力特性の切替えが完了すると、上記制動トルク制御手段140は車輪制動装置98により車輪の制動トルクを零へ復帰させると同時に、電動機出力トルク低下手段136は第2電動機M2の回生トルクを零から電動機出力特性切替制御開始前の元の値に復帰させる。
【0064】
図12は、本実施例の電子制御装置100の制御作動の要部すなわち第2電動機M2の出力特性の切替制御作動を説明するフローチャートであり、図13はその制御作動のうち、第2電動機M2の駆動中であるときの切替制御作動を説明するタイムチャートである。図12は、電動機出力特性切替要求判定手段112によって第2電動機M2の特性として高回転特性と高トルク特性とのいずれか一方への出力特性切替要求が出されていると判定されると開始される。
【0065】
図12において、電動機駆動中判定手段132に対応するステップS11では、第2電動機M2の駆動中であるか否かがたとえば第2電動機M2へ交流駆動電流Iが供給されているが否かに基づいて判定される。このS11の判断が肯定される場合はS13以下が実行されるが、否定される場合は電動機回生中判定手段138に対応するS12において、第2電動機M2の回生中であるか否かがたとえば第2電動機M2から回生電流が出力されているか否かに基づいて判定される。このS12の判断が否定される場合は、第2電動機M2が駆動でもなく回生でもない状態であるので、電動機出力特性切替手段118に対応するS22において、第2電動機M2の出力特性切替要求に従って切替スイッチ102が切り替えられることにより、第2電動機M2の出力特性の切替えが実行される。
【0066】
上記S11において第2電動機M2の駆動中であると判断された場合には、S13において充電禁止状態であるか否かがバッテリ90の充電残量SOCが所定値を超えるか否かに基づいて判断される。このS13の判断が否定される場合は上記S22が実行されるが、肯定される場合は、駆動トルク制御手段134に対応するS14において、第2電動機M2の駆動トルクが零に低下させられても車両の駆動力或いは車速が維持されるように、エンジン8からの直達トルクがその第2電動機M2の駆動トルクの低下分を補うようにして増量させられる。同時に、電動機出力トルク低下手段136に対応するS15では、第2電動機M2の駆動トルクが零に低下させられる。図13のt1時点乃至t2時点はこの状態を示している。続いて、電動機出力特性切替手段118に対応するS16では、そのような第2電動機M2の駆動トルクが零に低下させられた状態で、第2電動機M2の出力特性切替要求に従って切替スイッチ102を切り替えることにより第2電動機M2の捲線切替が実行されて、第2電動機M2の出力特性の切替えが実行される。そして、図13のt3時点に示すようにS16による第2電動機M2の出力特性の切替えが完了すると、上記駆動トルク制御手段134および電動機出力トルク低下手段136に対応するS17において、エンジン8の直達トルクが電動機出力特性切替制御開始前の元の値へ復帰させられると同時に、第2電動機M2の駆動トルクが零から電動機出力特性切替制御開始前の元の値に復帰させられる。図13のt4時点はこの状態を示している。
【0067】
上記S12において第2電動機M2の回生中であると判断された場合には、制動トルク制御手段140に対応するS18において、第2電動機M2の回生トルクが零に低下させられても回生走行中の車両の減速度が維持されるように、車輪制動装置98による車輪の制動直達トルクがその第2電動機M2の回生トルクの低下分を補うようにして増量させられる。同時に、電動機出力トルク低下手段136に対応するS19では、第2電動機M2の回生トルクが零に低下させられる。続いて、電動機出力特性切替手段118に対応するS20では、そのような第2電動機M2の回生トルクが零に低下させられた状態で、第2電動機M2の出力特性切替要求に従って切替スイッチ102を切り替えることにより第2電動機M2の捲線切替が実行されて、第2電動機M2の出力特性の切替えが実行される。そして、S20による第2電動機M2の出力特性の切替えが完了すると、上記駆動トルク制御手段134および電動機出力トルク低下手段136に対応するS21において、エンジン8の直達トルクが電動機出力特性切替制御開始前の元の値へ復帰させられると同時に、第2電動機M2の回生トルクが零から電動機出力特性切替制御開始前の元の値に復帰させられる。
【0068】
上述のように、本実施例の電子制御装置100による電動機出力特性切替制御によれば、本実施例の電子制御装置100による電動機出力特性切替制御によれば、前記車両は、エンジン8と、そのエンジン8の出力を第1電動機M1(発電機)と駆動輪34へ動力を伝達するための動力伝達部材18とに分配する差動歯車装置として機能する遊星歯車装置24とを備え、第2電動機M2はその第1電動機M1において回生された電力によって駆動輪34を駆動するものであり、その車両の走行中に、第2電動機M2の出力特性の切替要求の発生に応答して、その第2電動機M2の出力トルクを積極的に低下させた状態で第2電動機M2の出力特性の切替えを実行し、その第2電動機M2の出力トルクを低下させた期間において車両の駆動力を維持するようにエンジン8からの直達トルクが増大させられるので、車両の走行中での第2電動機M2の出力特性の切替えに関連する車両のショックが好適に抑制される。
【0069】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0070】
例えば、前述の実施例では、変速機構10の前段に設けられた差動部11は、2つの電動機すなわち第1電動機M1および第2電動機M2を備えるハイブリッド車両であったが、1つの電動機を備えるハイブリッド車両であってもよいし、エンジン8および差動部11に代えて1つの電動機を備える電気自動車であってもよい。
【0071】
また、前述の実施例の第2電動機M2は、交流同期モータであって、直列接続された第1捲線L1および第2捲線L2からそれぞれ構成されたU相のコイル、V相のコイル、およびW相のコイルを備え、交流駆動電流Iが第1捲線L1および第2捲線L2へ供給される状態と第1捲線L1のみに供給される状態とが切替られることで出力特性が変更されていたが、U相のコイル、V相のコイル、およびW相のコイルがΔ( デルタ)結線とY( ワイ) 結線とに接続状態が切り替えられることで出力特性が変更されるものであってもよい。
【0072】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0073】
8:エンジン(動力源)
18:伝達部材
20:自動変速部
24:遊星歯車装置( 差動歯車装置)
34:駆動輪
52:シフトレバー(シフト操作体)
102:切替スイッチ
100:電子制御装置(駆動制御装置)
M2:第2電動機(回転電機)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪に動力伝達可能に連結された回転電機を動力源として備える車両の駆動制御装置であって、
前記回転電機の出力特性の切替えを、該回転電機から前記駆動輪へ伝達されるトルクが所定値以下のトルク低下状態で実行することを特徴とする車両の駆動制御装置。
【請求項2】
前記回転電機と前記駆動輪との間の動力伝達経路に設けられた自動変速部と、該自動変速部を前進走行状態および後進走行状態のいずれかへ切り替えるために操作されるシフト操作体とを備え、
該シフト操作体の操作によって前記自動変速部が前進走行状態および後進走行状態の一方から他方へ切り替えられるときに、前記回転電機の出力特性の切替えを実行することを特徴とする請求項1の車両の駆動制御装置。
【請求項3】
前記車両は、エンジンと、該エンジンの出力を発電機と前記駆動輪へ動力を伝達するための動力伝達部材とに分配する差動歯車装置とを備え、前記回転電機は該発電機において回生された電力によって前記駆動輪を駆動するものであり、
該発電機の回転が零となるメカニカルポイント付近において、前記回転電機の出力特性の切替えを実行することを特徴とする請求項1の車両の駆動制御装置。
【請求項4】
前記回転電機の回生と力行との間の切替わりに同期して、前記回転電機の出力特性の切替えを実行することを特徴とする請求項1の車両の駆動制御装置。
【請求項5】
前記車両は、エンジンと、該エンジンの出力を発電機と前記駆動輪へ動力を伝達するための動力伝達部材とに分配する差動歯車装置とを備え、前記回転電機は該発電機において回生された電力によって前記駆動輪を駆動するものであり、
該車両の走行中に、前記回転電機の出力特性の切替要求の発生に応答して、前記回転電機の出力トルクを低下させた状態で前記回転電機の出力特性の切替えを実行し、該回転電機の出力トルクを低下させた期間において前記車両の駆動力を維持するように前記エンジンからの直達トルクを増大させることを特徴とする請求項1の車両の駆動制御装置。
【請求項6】
前記回転電機の出力特性の切替要求の発生を判断し、該回転電機から前記駆動輪までの動力伝達経路のトルク容量が該判断時よりも低下したときに該回転電機の出力特性の切替えを実行することを特徴とする請求項1の車両の駆動制御装置。
【請求項7】
複数の摩擦係合装置のうちのいずれかの係合状態の組合せに応じて複数の変速段のうちのいずれか1が達成される自動変速部を、前記回転電機と前記駆動輪との間の動力伝達経路に備え、
該自動変速部の変速途中において前記回転電機の出力特性の切替えを実行することを特徴とする請求項6の車両の駆動制御装置。
【請求項8】
前記自動変速部の変速レンジを予め定められた複数の変速レンジから選択するために手動操作されるシフト操作体が備えられ、
該シフト操作体の操作による前記変速レンジの切替え時に前記回転電機の出力特性の切替えを実行することを特徴とする請求項7の車両の駆動制御装置。
【請求項1】
駆動輪に動力伝達可能に連結された回転電機を動力源として備える車両の駆動制御装置であって、
前記回転電機の出力特性の切替えを、該回転電機から前記駆動輪へ伝達されるトルクが所定値以下のトルク低下状態で実行することを特徴とする車両の駆動制御装置。
【請求項2】
前記回転電機と前記駆動輪との間の動力伝達経路に設けられた自動変速部と、該自動変速部を前進走行状態および後進走行状態のいずれかへ切り替えるために操作されるシフト操作体とを備え、
該シフト操作体の操作によって前記自動変速部が前進走行状態および後進走行状態の一方から他方へ切り替えられるときに、前記回転電機の出力特性の切替えを実行することを特徴とする請求項1の車両の駆動制御装置。
【請求項3】
前記車両は、エンジンと、該エンジンの出力を発電機と前記駆動輪へ動力を伝達するための動力伝達部材とに分配する差動歯車装置とを備え、前記回転電機は該発電機において回生された電力によって前記駆動輪を駆動するものであり、
該発電機の回転が零となるメカニカルポイント付近において、前記回転電機の出力特性の切替えを実行することを特徴とする請求項1の車両の駆動制御装置。
【請求項4】
前記回転電機の回生と力行との間の切替わりに同期して、前記回転電機の出力特性の切替えを実行することを特徴とする請求項1の車両の駆動制御装置。
【請求項5】
前記車両は、エンジンと、該エンジンの出力を発電機と前記駆動輪へ動力を伝達するための動力伝達部材とに分配する差動歯車装置とを備え、前記回転電機は該発電機において回生された電力によって前記駆動輪を駆動するものであり、
該車両の走行中に、前記回転電機の出力特性の切替要求の発生に応答して、前記回転電機の出力トルクを低下させた状態で前記回転電機の出力特性の切替えを実行し、該回転電機の出力トルクを低下させた期間において前記車両の駆動力を維持するように前記エンジンからの直達トルクを増大させることを特徴とする請求項1の車両の駆動制御装置。
【請求項6】
前記回転電機の出力特性の切替要求の発生を判断し、該回転電機から前記駆動輪までの動力伝達経路のトルク容量が該判断時よりも低下したときに該回転電機の出力特性の切替えを実行することを特徴とする請求項1の車両の駆動制御装置。
【請求項7】
複数の摩擦係合装置のうちのいずれかの係合状態の組合せに応じて複数の変速段のうちのいずれか1が達成される自動変速部を、前記回転電機と前記駆動輪との間の動力伝達経路に備え、
該自動変速部の変速途中において前記回転電機の出力特性の切替えを実行することを特徴とする請求項6の車両の駆動制御装置。
【請求項8】
前記自動変速部の変速レンジを予め定められた複数の変速レンジから選択するために手動操作されるシフト操作体が備えられ、
該シフト操作体の操作による前記変速レンジの切替え時に前記回転電機の出力特性の切替えを実行することを特徴とする請求項7の車両の駆動制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−170302(P2012−170302A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31332(P2011−31332)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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