説明

車両側部構造

【課題】頭部保護エアバッグ袋体による乗員の頭部の拘束タイミングを適正化することを目的とする。
【解決手段】頭部保護エアバッグ装置10における頭部保護エアバッグ袋体16が展開する際に、該頭部保護エアバッグ袋体16の展開可能領域を車両外側に拡大させる突起部材12(領域拡大手段)が設けられている。サイドアが変形して、頭部保護エアバッグ袋体16が車両側部と乗員24との間にカーテン状に展開する際に、突起部材12(領域拡大手段)がドアガラス22に干渉する。これにより、ドアガラス22が、突起部材12との干渉点を起点として砕かれて除去されることで、頭部保護エアバッグ袋体の展開可能領域が車両外側に拡大する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の側面衝突時に、サイドエアバッグをドアから乗員の方向へ向けて、少なくとも該乗員の腰部が位置する領域まで展開させ、該乗員を車体側壁から遠ざける方向へ押し退けるようにしたサイドエアバッグ装置が開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−220918号公報
【特許文献2】特開2005−96557号公報
【特許文献3】特開2001−163054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、側面衝突時等に乗員の頭部を保護する手段として、車両側部と乗員の頭部との間に頭部保護エアバッグ袋体をカーテン状に展開可能なカーテンシールドエアバッグ装置が一般に供されている。この頭部保護エアバッグ袋体による乗員の頭部の拘束は、適切なタイミングで行われることが望ましい。
【0004】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の従来例では、側面衝突時等における乗員の頭部に対する保護については特に考慮されておらず、該頭部保護のためのカーテンシールドエアバッグ装置についても何ら記載されていない。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、頭部保護エアバッグ袋体による乗員の頭部の拘束タイミングを適正化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、ルーフサイドレールに沿って折畳み状態で配設された頭部保護エアバッグ袋体が、インフレータからのガスの供給を受けて車両側部と乗員との間にカーテン状に展開可能に構成された頭部保護エアバッグ装置と、前記頭部保護エアバッグ袋体が展開する際に、該頭部保護エアバッグ袋体の展開可能領域を車両外側に拡大させる領域拡大手段と、を有することを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の車両側部構造では、頭部保護エアバッグ装置における頭部保護エアバッグ袋体が、インフレータからのガスの供給を受けて車両側部と乗員との間にカーテン状に展開する。このとき、領域拡大手段により、頭部保護エアバッグ袋体の展開可能領域が車両外側に拡大する。これにより、頭部保護エアバッグ袋体による乗員の頭部の拘束タイミングを適正化することができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両側部構造において、前記領域拡大手段として、サイドドアのうち、ドアガラスの開度にかかわらず該ドアガラスとドア厚さ方向に重なる位置に、該ドアガラスの車両内側から該ドアガラスに向かって配設され、前記サイドドアが変形して前記頭部保護エアバッグ袋体が展開する際に、前記ドアガラスと干渉して該ドアガラスを除去可能な突起部材を有することを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の車両側部構造では、サイドアが変形して頭部保護エアバッグ袋体が展開する際に、ドアガラスの開度にかかわらず、領域拡大手段としての突起部材が該ドアガラスと干渉する。これにより、該ドアガラスが、突起部材との干渉点を起点として砕かれて除去されることで、頭部保護エアバッグ袋体の展開可能領域が車両外側に拡大する。このように、請求項2に記載の車両側部構造では、突起部材によりドアガラスを除去することで、頭部保護エアバッグ袋体による乗員の頭部の拘束タイミングを適正化することができる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載の車両側部構造において、前記突起部材は、前記サイドドアの車両内側部材であるドアインナパネルのうち、ベルトライン部に設けられ、前記突起部材と前記ドアガラスとの間を通って前記サイドドア内を車両下方へ延び、前記突起部材とドア厚さ方向に対向する位置に該突起部材に対応した貫通孔が形成されたレバー部材が設けられ、前記サイドドアの変形に伴い前記レバー部材が車両内側に押されることで、前記突起部材が前記貫通孔からドア厚さ方向外側に突出して前記ドアガラスと干渉することを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の車両側部構造では、通常時においては、ドアガラスと突起部材との間にレバー部材が介在しており、該ドアガラスと突起部材との干渉が抑制される。またサイドドアの変形に伴いレバー部材が車両内側に押されると、該レバー部材に設けられた貫通孔から突起部材がドア厚さ方向外側に突出し、ドアガラスと干渉する。これによりドアガラスが砕かれて除去されることで、頭部保護エアバッグ袋体の展開可能領域が車両外側に拡大する。このように、請求項3に記載の車両側部構造では、通常時におけるドアガラスと突起部材との干渉を抑制しつつ、頭部保護エアバッグ袋体の展開時には突起部材によりドアガラスを除去することができる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1に記載の車両側部構造において、前記領域拡大手段として、サイドドアの上部を構成しドアガラスを保持可能に構成された枠状のドアフレームを車両外側に押出し可能なドアフレーム押出し機構を有することを特徴としている。
【0013】
請求項4に記載の車両側部構造では、頭部保護エアバッグ袋体が車両側部と乗員との間にカーテン状に展開する際に、ドアフレームがドアフレーム押出し機構により車両外側に押し出される。これにより、頭部保護エアバッグ袋体の展開可能領域を車両外側に拡大させて、該頭部保護エアバッグ袋体による乗員の頭部の拘束タイミングを適正化することができる。
【0014】
請求項5の発明は、請求項4に記載の車両側部構造において、前記ドアフレーム押出し機構として、前記サイドドアに対応する車両側部のドア開口部に折畳み状態で配設されたエアバッグ袋体を有し、該エアバッグ袋体が前記頭部保護エアバッグ装置と連動して前記インフレータからのガスの供給を受けて前記ドアフレームと前記車両側部との間で膨張展開することで、該ドアフレームを車両外側に押出し可能なエアバッグ装置を有することを特徴としている。
【0015】
請求項5に記載の車両側部構造では、サイドドアに対応する車両側部のドア開口部に折畳み状態で配設されたエアバッグ袋体が、頭部保護エアバッグ装置と連動して、該頭部保護エアバッグ装置のインフレータからのガスの供給を受けてドアフレームと車両側部との間で膨張展開することで、該ドアフレームが車両外側に押し出される。これにより、頭部保護エアバッグ袋体の展開可能領域を車両外側に拡大させて、頭部保護エアバッグ袋体による乗員の頭部の拘束タイミングを適正化することができる。
【0016】
請求項6の発明は、請求項5に記載の車両側部構造において、前記エアバッグ袋体による前記ドアフレームの押出し方向が車両外側となるように、該押出し方向を保持可能な押出し方向保持手段を有することを特徴としている。
【0017】
請求項6に記載の車両側部構造では、サイドドアに対応する車両側部のドア開口部に折畳み状態で配設されたエアバッグ袋体が展開する際に、押出し方向保持手段により、該エアバッグ袋体によるドアフレームの押出し方向が車両外側となるように保持される。このため、ドアフレームを車両外側に安定的に押し出して、頭部保護エアバッグ袋体の展開可能領域を車両外側に拡大させることができる。
【0018】
請求項7の発明は、請求項6に記載の車両側部構造において、前記押出し方向保持手段として、前記エアバッグ袋体側に配設され前記ドアフレームに向けて配設されたピンと、該ピンに対応して前記ドアフレームに設けられ前記エアバッグ袋体の展開時に該ピンが差し込まれる差込み部とを有することを特徴としている。
【0019】
請求項7に記載の車両側部構造では、押出し方向保持手段として、ピン及び差込み部を有しており、サイドドアに対応する車両側部のドア開口部に折畳み状態で配設されたエアバッグ袋体が展開した際に、エアバッグ袋体側のピンが、ドアフレームに設けられた差込み部に差し込まれる。ピンと差込み部とが係合することで、ドアフレームの押出し方向が車両外側となるように保持される。このため、ドアフレームを車両外側に安定的に押し出して、頭部保護エアバッグ袋体の展開可能領域を車両外側に拡大させることができる。
【0020】
請求項8の発明は、請求項6に記載の車両側部構造において、前記押出し方向保持手段として、前記エアバッグ袋体を覆うと共に、該エアバッグ袋体の展開時に車両外側へ伸長可能なケースを有することを特徴としている。
【0021】
請求項8に記載の車両側部構造では、サイドドアに対応する車両側部のドア開口部に折畳み状態で配設されるエアバッグ袋体が、押出し方向保持手段としてのケースで覆われているので、通常時における見栄えが良好である。また、このケースは、エアバッグ袋体が展開した際には車両外側へ伸長する。これにより、エアバッグ袋体の展開によるドアフレームの押出し方向が車両外側となるように保持される。このため、ドアフレームを車両外側に安定的に押し出して、頭部保護エアバッグ袋体の展開可能領域を車両外側に拡大させることができる。
【0022】
請求項9の発明は、請求項8に記載の車両側部構造において、前記ケースには、前記エアバッグ袋体の展開時に該ケースが車両外側に伸長するように案内するガイド手段が設けられていることを特徴としている。
【0023】
請求項9に記載の車両側部構造では、エアバッグ袋体を覆うケースにガイド手段が設けられており、エアバッグ袋体の展開時には、該ケースは、該ガイド手段により案内されて車両外側に伸長する。これにより、エアバッグ袋体の展開によるドアフレームの押出し方向が、車両外側となるように保持される。このため、ドアフレームを車両外側により安定的に押し出して、頭部保護エアバッグ袋体の展開可能領域を車両外側に拡大させることができる。
【0024】
請求項10の発明は、請求項4に記載の車両側部構造において、前記ドアフレーム押出し機構として、前記ドアフレームの下端部から、前記サイドドア内を車両下方に延び、前記サイドドアの変形時に該サイドドアのベルトライン部を支点として車両内側に回転変位することで前記ドアフレームの上部を車両外側に押出し可能なドアフレーム延長部材を有することを特徴としている。
【0025】
請求項10に記載の車両側部構造では、サイドドアの変形時に、ドアフレーム押出し機構としてのドアフレーム延長部材が、該サイドドアのベルトライン部を支点として車両内側に回転変位する。ドアフレーム延長部材は、ドアフレームの下端部に設けられているので、該ドアフレーム延長部材が車両内側に回転変位すると、ドアフレームの上部は逆に車両外側に回転変位する。即ち、ドアフレームの上部が車両外側に押し出される。これにより、頭部保護エアバッグ袋体の展開可能領域を車両外側に拡大させて、該頭部保護エアバッグ袋体による乗員の頭部の拘束タイミングを適正化することができる。
【0026】
請求項11の発明は、請求項10に記載の車両側部構造において、前記ドアフレーム延長部材は、前記サイドドアに設けられたインパクトビームに連結されていることを特徴としている。
【0027】
請求項11に記載の車両側部構造では、ドアフレーム延長部材が、サイドドアに設けられたインパクトビームに連結されているので、サイドドアの変形時に該インパクトビームに入力された荷重を効率的にドアフレーム延長部材に伝達することができる。このため、ドアフレームの上部を、より効率的に車両外側に押し出して、頭部保護エアバッグ袋体の展開可能領域を車両外側に拡大させることができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の車両側部構造によれば、頭部保護エアバッグ袋体による乗員の頭部の拘束タイミングを適正化することができる、という優れた効果が得られる。
【0029】
請求項2に記載の車両側部構造によれば、突起部材によりドアガラスを除去することで、頭部保護エアバッグ袋体による乗員の頭部の拘束タイミングを適正化することができる、という優れた効果が得られる。
【0030】
請求項3に記載の車両側部構造によれば、通常時におけるドアガラスと突起部材との干渉を抑制しつつ、頭部保護エアバッグ袋体の展開時には突起部材によりドアガラスを除去することができる、という優れた効果が得られる。
【0031】
請求項4に記載の車両側部構造によれば、頭部保護エアバッグ袋体の展開可能領域を車両外側に拡大させて、該頭部保護エアバッグ袋体による乗員の頭部の拘束タイミングを適正化することができる、という優れた効果が得られる。
【0032】
請求項5に記載の車両側部構造によれば、サイドドアに対応する車両側部のドア開口部に設けられたエアバッグ装置により、頭部保護エアバッグ袋体の展開可能領域を車両外側に拡大させて、頭部保護エアバッグ袋体による乗員の頭部の拘束タイミングを適正化することができる、という優れた効果が得られる。
【0033】
請求項6に記載の車両側部構造によれば、安定的にドアフレームを押し出して、頭部保護エアバッグ袋体の展開可能領域を車両外側に拡大させることができる、という優れた効果が得られる。
【0034】
請求項7に記載の車両側部構造によれば、ドアフレームを車両外側に安定的に押し出して、頭部保護エアバッグ袋体の展開可能領域を車両外側に拡大させることができる、という優れた効果が得られる。
【0035】
請求項8に記載の車両側部構造によれば、ドアフレームを車両外側に安定的に押し出して、頭部保護エアバッグ袋体の展開可能領域を車両外側に拡大させることができる、という優れた効果が得られる。
【0036】
請求項9に記載の車両側部構造によれば、ドアフレームを車両外側により安定的に押し出して、頭部保護エアバッグ袋体の展開可能領域を車両外側に拡大させることができる、という優れた効果が得られる。
【0037】
請求項10に記載の車両側部構造によれば、ができる、という優れた効果が得られる。
【0038】
請求項11に記載の車両側部構造によれば、ドアフレームの上部を、より効率的に車両外側に押し出して、頭部保護エアバッグ袋体の展開可能領域を車両外側に拡大させることができる、という優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0040】
[第1実施形態]
図1において、本実施の形態に係る車両側部構造S1は、頭部保護エアバッグ装置10と、領域拡大手段の一例たる突起部材12とを有している。
【0041】
頭部保護エアバッグ装置10は、ルーフサイドレール14に沿って折畳み状態で配設された頭部保護エアバッグ袋体16が、インフレータ18からのガスの供給を受けて車両側部の一例たるサイドドア20と、車両用シート23に着座した乗員24との間にカーテン状に展開可能に構成されている。
【0042】
ここで、ルーフサイドレール14は、車両上部の車幅方向両側において車両前後方向に夫々延設された車両の骨格部材であり、インナパネル26とアウタパネル28とを接合して構成されている。具体的には、ルーフサイドレール14は、インナパネル26とアウタパネル28とを、例えば車幅方向内側の接合部30及び車幅方向外側の接合部32(図4も参照)において接合して構成されている。インナパネル26とアウタパネル28との間には、リインフォースメント34が挟み込まれて、接合部30,32において共に接合されている。
【0043】
両側のルーフサイドレール14の間には、外装部材であるルーフパネル36が配設されている。このルーフパネル36の車両下側には、補強部材であるルーフリインフォースメント38が配設されている。ルーフパネル36及びルーフリインフォースメント38の車幅方向端部は、ルーフサイドレール14における車幅方向内側の接合部30において、共に接合されている。この接合部30は、所謂モヒカン溝部に位置している。ルーフリインフォースメント38及びルーフサイドレール14は、内装材であるルーフヘッドライニング40により車室内側から覆われている。
【0044】
ルーフサイドレール14における車幅方向外側の接合部32は、車両側部のドア開口部42に位置しており、サイドドア20の閉止時に、該サイドドア20のドアフレーム44と近接する。このため、接合部32には、ドアフレーム44との間の水密性を確保するためのウェザーストリップ46が配設されている。このウェザーストリップ46には、通常時において、ルーフヘッドライニング40の車幅方向外側の端末部が係止されている。この係止状態は、頭部保護エアバッグ袋体16の膨張圧がルーフヘッドライニング40に作用することで解除されるようになっている。頭部保護エアバッグ袋体16は、ルーフヘッドライニング40の端末部がウェザーストリップ46から離脱することで車両下方へ膨出し、車両側部の一例たるサイドドア20と乗員24との間にカーテン状に展開するようになっている。
【0045】
頭部保護エアバッグ袋体16は、例えば最も車両前方側のピラー(図示せず)から最も車両後方側のピラー(図示せず)までの間にわたり、ルーフサイドレール14に沿って折畳み状態で配設されている。この頭部保護エアバッグ袋体16に対して膨張用のガスを供給するインフレータ18は、例えばルーフサイドレール14のインナパネル26に固定されている。このインフレータ18は、図示しないエアバッグECUからの作動電流を受けて作動するように構成され、エアバッグECUは、例えば側突センサやロールオーバセンサ(何れも図示せず)からの信号に基づいて側面衝突やロールオーバを判定した際に、インフレータ18に対して作動電流を流すように構成されている。
【0046】
インフレータ18としては、ガス発生剤封入タイプのものを用いてもよいし、高圧ガス封入タイプのものを用いてもよい。インフレータ18の構成例について簡単に説明すると、前者のタイプの場合には、周面に複数のガス噴出口が形成された有底円筒形のハウジングと、このハウジング内に配設され燃焼することによりガスを発生するガス発生剤と、このガス発生剤の燃焼後の砕片を除去するフィルタと、ハウジングの開口側の端部に装着されてガス発生剤を燃焼させる電気着火式の点火装置と、を含んで構成されている。
【0047】
一方、後者のタイプの場合には、有底円筒形のハウジングと、このハウジング内に配設された圧力隔壁と、この圧力隔壁及びハウジングによって隔成された室内に封入されたアルゴン・ヘリウム等の混合ガスと、圧力隔壁の近傍に移動可能に配置され移動することにより圧力隔壁を破断させる移動部材と、ハウジングの開口側の端部に装着されて移動部材を移動させる電気着火式の点火装置と、を含んで構成されている。
【0048】
なお、いずれのタイプのインフレータを用いたとしても、点火装置は側突センサやロールオーバセンサからの信号に基づいて作動させられる。
【0049】
次に、図1,図2において、突起部材12は、頭部保護エアバッグ袋体16が展開する際に、該頭部保護エアバッグ袋体16の展開可能領域を車両外側に拡大させる領域拡大手段の一例である。この突起部材12は、サイドドア20のうち、ドアガラス22の開度にかかわらず該ドアガラス22とドア厚さ方向に重なる位置に、該ドアガラス22の車両内側から該ドアガラス22に向かって配設され、サイドドア20が変形して頭部保護エアバッグ袋体16が展開する際に、ドアガラス22と干渉して該ドアガラス22を除去可能に構成されている。
【0050】
具体的には、突起部材12は、例えばボルトであり、先端12Aを先細りのテーパ状に加工して構成されており、サイドドア20の車両内側部材であるドアインナパネル48のうち、ベルトライン部48Aに設けられている。図2に示されるように、ベルトライン部48Aは、例えば車両内側に凸となる断面台形状に形成され、ドアインナパネル48の上部を車両前後方向に延びている。
【0051】
突起部材12は、ベルトライン部48Aに、例えば溶接により固定されているが、固定手段は溶接には限られず、例えばベルトライン部48Aの外側面にナット(図示せず)を溶接しておき、該ベルトライン部48Aの内側面側から突起部材12を差し込んで、該ナットに対して締結固定するようにしてもよい。
【0052】
ここで、サイドドア20の構成について簡単に説明する。サイドドア20は、車両外側に位置するドアアウタパネル50と、車両内側に位置するドアインナパネル48とを接合して構成されている。ドアインナパネル48の車幅方向内側面は、例えばアームレスト52を有するドアトリム54により覆われている。
【0053】
図1,図4において、サイドドア20の上部には、ドアガラス22を保持可能に構成された枠状のドアフレーム44が設けられている。このドアフレーム44の上縁には、サイドドア20の閉止時にドアフレーム44と車両側部のドア開口部42との間の水密性を確保するためのウェザーストリップ56が配設されている。ドアガラス22は、このドアフレーム44により案内されて、サイドドア20におけるドアインナパネル48とドアアウタパネル50との間を、車両上下方向に出入り可能に構成されている。なお、ドアガラス22には、強化ガラスが用いられる。
【0054】
図2において、サイドドア20内には、突起部材12とドアガラス22との間を通ってサイドドア20内を車両下方へ延び、突起部材12とドア厚さ方向に対向する位置に該突起部材12に対応した貫通孔58Aが形成されたレバー部材58が設けられている。レバー部材58の上端58Bは、例えばドアインナパネル48の上縁48Bに接合されている。貫通孔58Aは、例えば突起部材12の外径よりも大径の円形に形成されている。
【0055】
突起部材12のうち、貫通孔58Aと上端58Bとの間には、例えば車両内側に凸となる断面台形のヒンジ部58Cが設けられている。レバー部材58は、サイドドア20の変形に伴い車両内側に押されることで、このヒンジ部58Cを中心として回動するようになっており、これによって突起部材12が貫通孔58Aからドア厚さ方向外側に突出し、ドアガラス22と干渉するように構成されている。断面台形に屈曲形成されたヒンジ部58Cを設けたのは、レバー部材58が全体的に平板状となっている場合と比較して、レバー部材58が車両内側に押された際に、貫通孔58Aの上側を中心として安定的に回動するようにするためである。
【0056】
突起部材12が固定されているベルトライン部48Aは、ドア厚さ方向内側に凸となる断面台形状に形成されているが、突起部材12は、ドアインナパネル48の一般部48Gの外側面よりも、レバー部材58の一般部58Gの厚さ以上、ドア厚さ方向外側に延びている。これは、図3に示されるように、レバー部材58が車両内側に押されて、該レバー部材58の一般部58Gがドアインナパネル48の一般部48Gと当接したときに、突起部材12の先端12Aが貫通孔58Aからドア厚さ方向外側に突出するようにするためである。なお、通常時においては、レバー部材58の一般部58Gは、ドアインナパネル48の一般部48Gから離間した状態にあり、突起部材12の先端12Aがレバー部材58の貫通孔58Aからドア厚さ方向外側に突出することはない。
【0057】
図1に示されるように、閉止状態におけるサイドドア20の車両下側には、ロッカ60が配設されている。このロッカ60は、車両側部の下部において車両前後方向に延びる骨格部材であり、例えば車幅方向外側のロッカアウタパネル62と車幅方向内側のロッカインナパネル64とを接合して閉断面に構成されている。
【0058】
なお、貫通孔58Aの形状は円形には限られず、例えば多角形であってもよい。また貫通孔58Aの直径は、突起部材12の外径よりも大径である必要はなく、サイドドア20の変形に伴いレバー部材58が車両内側に押された際に、突起部材12が貫通孔58Aからドア厚さ方向外側に突出できる構成となっていればよい。従って、例えば貫通孔58Aを突起部材12の外径よりも小径としておくと共に、該貫通孔58Aの縁部を脆弱に構成しておき、レバー部材58が車両内側に押されて突起部材12が貫通孔58Aに差し込まれる際に、該突起部材12が貫通孔58Aの縁部を押し広げる構成であってもよい。
【0059】
更に、図示の例では、レバー部材58の下端58Dが、ドアフレーム44を除くサイドドア20の高さの略中央部に位置しているが、これに限られず、該下端58Dは、より車両下方に位置していてもよい。側突荷重F(図3)を効率的にレバー部材58に伝達する観点から、レバー部材58の下端58Dは、サイドドア20に設けられたインパクトビーム(図示せず)の車両内側に配置されることが望ましい。
【0060】
また突起部材12の先端12Aは、ドアガラス22を効率的に砕くことができるように、なるべく鋭利であることが望ましい。この突起部材12は、ボルトには限られず、例えばピンであってもよい。突起部材12の本数は、1本には限られず、1つのサイドドア20に複数本の突起部材12を設けてもよい。
【0061】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図3において、本実施形態に係る車両側部構造S1では、例えば側面衝突によりサイドドア20に側突荷重Fが入力され、該側突荷重Fによりサイドドア20が車両内側に変形すると、突起部材12によりドアガラス22が砕かれて除去される。具体的には、側突荷重Fによりドアアウタパネル50が車両内側に変形すると、該ドアアウタパネル50からレバー部材58へ側突荷重Fが伝達される。レバー部材58は、該側突荷重Fによりヒンジ部58Cを中心として回動し、車両内側に押されて行く。これにより、レバー部材58の貫通孔58Aに、突起部材12が相対的に差し込まれることとなり、結果として該突起部材12が貫通孔58Aからドア厚さ方向外側(車幅方向外側)に突出した状態となる。
【0062】
またこのとき、ドアアウタパネル50の変形に伴ってドアガラス22が車両内側に押し込まれ、突起部材12と干渉する。ドアガラス22には強化ガラスが用いられているので、突起部材12との干渉点に応力が集中的に作用し、該干渉点に破壊が生じると、その破壊がドアガラス22の全体に瞬間的に伝播する。この結果、ドアガラス22は、突起部材12との干渉点を起点として砕かれて、図4に示されるように、ドアフレーム44の枠内から除去されることとなる。
【0063】
一方、図4において、本実施形態に係る車両側部構造S1では、例えば側面衝突又はロールオーバが図示しない側突センサやロールオーバセンサにより検知されると、エアバッグECUからインフレータ18に作動電流が流される。インフレータ18は、該作動電流を受けて作動して、多量のガスを噴出する。インフレータ18から噴出したガスが頭部保護エアバッグ袋体16へと供給されることで、該頭部保護エアバッグ袋体16が膨張展開し始める。
【0064】
すると、ルーフヘッドライニング40の端末部が、該頭部保護エアバッグ袋体16の膨張圧によりウェザーストリップ46から外れて車室内側へ開く。頭部保護エアバッグ袋体16は、該頭部保護エアバッグ袋体16により押し広げられたルーフヘッドライニング40とウェザーストリップ46との間の隙間から車両下方へ膨出し、車両側部と乗員24との間にカーテン状に展開する。
【0065】
このとき、上述したように、サイドドア20におけるドアガラス22は、突起部材12により砕かれてドアフレーム44の枠内から除去されているので、頭部保護エアバッグ袋体16の展開可能領域は、車両外側へと拡大している。このため、乗員24の例えば頭部24Hが頭部保護エアバッグ袋体16に当接した際、即ち頭部保護エアバッグ袋体16による乗員24の頭部24Hの拘束初期においては、該頭部保護エアバッグ袋体16は車両外側へ変位することができる。これにより、頭部保護エアバッグ袋体16から乗員24の頭部24Hへの荷重が立ち上がるタイミングを遅らせて、頭部保護エアバッグ袋体16による乗員24の頭部24Hの拘束タイミングを適正化することができる。
【0066】
なお、頭部保護エアバッグ袋体16は、例えば非伸長性のストラップ(図示せず)により、例えば最も車両前方側のピラー(図示せず)と最も車両後方側のピラーと夫々連結されており、ある程度まで頭部保護エアバッグ袋体16が車両外側へ変位すると、ストラップの張力が高まるので、それ以上の頭部保護エアバッグ袋体16の変位は抑制される。これにより、頭部保護エアバッグ袋体16から乗員24の頭部24Hへの荷重が立ち上がる。
【0067】
[第2実施形態]
図5において、本実施の形態に係る車両側部構造S2は、頭部保護エアバッグ袋体16が展開する際に、該頭部保護エアバッグ袋体16の展開可能領域を車両外側に拡大させる領域拡大手段として、ドアフレーム押出し機構70を有している。図6において、このドアフレーム押出し機構70として、エアバッグ装置72が設けられている。
【0068】
エアバッグ装置72は、サイドドア20に対応する車両側部のドア開口部42に折畳み状態で配設されたエアバッグ袋体74を有し、該エアバッグ袋体74が頭部保護エアバッグ装置10と連動してインフレータ18からのガスの供給を受けて、ドアフレーム44と車両側部の一例たるルーフサイドレール14のアウタパネル28との間で膨張展開することで、該ドアフレーム44を車両外側に押出し可能に構成されている。
【0069】
エアバッグ装置72は、エアバッグ袋体74によるドアフレーム44の押出し方向が車両外側となるように、該押出し方向を保持可能な押出し方向保持手段として、ピン76と、差込み部78と、ケース80とを有している。
【0070】
ピン76は、エアバッグ袋体74側に配設され、ドアフレーム44に向けて配設されている。具体的には、図7に示されるように、ピン76は、エアバッグ袋体74の膨張展開時における膨張圧を受ける例えば長方形の荷重受け板82の車両外側面に、車両前後方向に直列に例えば3本立設されている。ピン76及び荷重受け板82は、例えば合成樹脂の一体成形品として構成されている。図11(A)に示されるように、荷重受け板82は、ケース80のうち、例えば後述する小ケース84内に収納されている。
【0071】
図6,図11(A)において、差込み部78は、ピン76に対応してドアフレーム44に設けられ、エアバッグ袋体74の展開時に該ピン76が差し込まれる部位である。具体的には、差込み部78は、ドアフレーム44の車幅方向内側の縦壁部44Aに設けられた貫通孔として構成されている。図9に示されるように、この差込み部78は、例えば各ピン76の軸線上に、該ピン76の数に対応して3箇所設けられている。またピン76を差込み部78に円滑に差し込むことができるように、該差込み部78の直径は、ピン76の外径よりも大きく設定されている。
【0072】
図6,図7,図11(A),図11(B)において、ケース80は、エアバッグ袋体74を覆うと共に、該エアバッグ袋体74の展開時に車両外側へ伸長可能に構成されている。このケース80は、例えば小ケース84と、該ドアインナパネル48に被せられる中ケース86と、該中ケース86に被せられる大ケース88とで構成される入れ子構造となっている。各ケースは、例えば合成樹脂の成形品である。
【0073】
小ケース84は、ドア開口部42に位置するルーフサイドレール14のアウタパネル28に、車両前後方向が長手方向となるように固定されている。補足すると、小ケース84は、ケース80とドアフレーム44の縦壁部44Aとの間にサイドドア20の閉止時のオーバーストローク分を考慮した隙間を設けて、ルーフサイドレール14のアウタパネル28に固定されている。この小ケース84は、ルーフサイドレール14のアウタパネル28に固定される横壁部84Sと、該横壁部84Sの上縁及び下縁から夫々車両外側へ延びる上壁部84U及び下壁部84D(図11(B)参照)と、横壁部84Sの前縁及び後縁から夫々車両外側へ延びる前壁部84F及び後壁部84Rとを有する箱状に構成され、車両外側に開口している。小ケース84については、車両前後方向寸法が車両上下方向寸法よりも大きく設定されている。これにより、車両前後方向が小ケース84の長手方向となっている。
【0074】
図11(A)に示されるように、通常時において、小ケース84内には、エアバッグ袋体74が折畳み収納され、かつ該エアバッグ袋体74の車両外側に荷重受け板82が配置されている。図7において、小ケース84の車両内側の下側角部には、エアバッグ袋体74に接続されたガス供給管92の取回しのための面取り部84Aが形成されている。この面取り部84Aには、ガス供給管92を通すための貫通孔84Bが形成されている。なお、中ケース86及び大ケース88の車両内側の下側角部も、面取り部84Aに対応して夫々面取りされている。
【0075】
中ケース86は、例えば小ケース84を車両上下方向及び車両前後方向から囲むことができるように構成されている。具体的には、図7に示されるように、中ケース86は、小ケース84よりも一回り大きく構成されており、上壁部86Uと、下壁部86Dと、前壁部86Fと、後壁部86Rとを有する筒状に構成され、車幅方向の両側に開口している。図11(A)に示されるように、中ケース86の車幅方向寸法は、小ケース84と同等となっている。
【0076】
大ケース88は、例えば中ケース86を車両上下方向、車両前後方向及び車幅方向外側から囲むことができるように構成されている。具体的には、図7に示されるように、大ケース88は、中ケース86よりも一回り大きく構成されており、上壁部88Uと、下壁部88Dと、前壁部88Fと、後壁部88Rと、各壁部の車両外側端縁を連結する横壁部88Sとを有する箱状に構成され、車両内側に開口している。図11(A)に示されるように、大ケース88の車幅方向寸法は、横壁部88Sの厚みと、ピン76を考慮して、中ケース86よりもわずかに大きく設定されている。
【0077】
図6,図7,図11(A)に示されるように、大ケース88の横壁部88Sのうち、各ピン76に対応する部位には、薄肉部88Tが設けられている。図11(B)に示されるように、この薄肉部88Tは、エアバッグ袋体74の膨張圧により荷重受け板82が車両外側に押圧された際に、各ピン76により突き破られるようになっている。これにより、各ピン76は、横壁部88Sの車両外側に突出して、ドアフレーム44の差込み部78に差し込まれるようになっている。
【0078】
ケース80は、中ケース86が小ケース84に沿ってスライドし、大ケース88が中ケース86に沿ってスライドすることで伸長できるようになっている。ケース80には、該ケース80が車両外側に伸長するように案内するガイド手段が設けられている。図7において、このガイド手段は、例えば小ケース84、中ケース86及び大ケース88に設けられたガイド溝や、該ガイド溝により案内されるガイド突起である。
【0079】
ここで、これらのガイド溝及びガイド突起について詳しく説明する。小ケース84においては、上壁部84Uの車両前後方向中央部に、例えば車幅方向に延びるガイド溝84Cが設けられている。このガイド溝84Cは、上壁部84Uの車両外側端部に至る直前で終端しており、その終端部はストッパ部84Eとなっている。また上壁部84Uにおいて、ガイド溝84Cの車両前後方向両側には、車幅方向に延び、上壁部84Uの車幅方向両端部に開口するガイド溝84Gが夫々設けられている。
【0080】
一方、下壁部84Dの車両前後方向中央部には、ガイド溝84Cと同様に車幅方向に延び、下壁部84Dの車幅方向両端部に開口するガイド溝84Hが設けられている。また下壁部84Dにおいて、ガイド溝84Hの車両前後方向両側には、車幅方向に延びるガイド溝84Jが夫々設けられている。図12(A)に示されるように、このガイド溝84Jは、下壁部84Dの車両外側端部に至る直前で終端しており、その終端部はストッパ部84Kとなっている。
【0081】
次に、中ケース86においては、上壁部86Uの下面の車両前後方向中央部に、小ケース84のガイド溝84Cに入り込み、該ガイド溝84Cに案内される爪状のガイド突起86Cが設けられている。また上壁部86Uの下面のうち、ガイド突起86Cの車両前後方向両側には、小ケース84のガイド溝84Gに入り込み、該ガイド溝84Gに案内されるガイド突起86Gが夫々設けられている。
【0082】
一方、下壁部86Dの上面の車両前後方向中央部には、小ケース84のガイド溝84Hに入り込み、該ガイド溝84Hに案内されるガイド突起86Hが設けられている。また下壁部86Dの上面のうち、ガイド突起86Hの車両前後方向両側には、小ケース84のガイド溝84Jに入り込み、該ガイド溝84Jに案内される爪状のガイド突起86Jが夫々設けられている。
【0083】
中ケース86のガイド突起86Gは、断面U字形に形成されており、上面側がガイド溝86Aとして構成されている。図12(A)に示されるように、このガイド溝86Aは、上壁部86Uの車両外側端部に至る直前で終端しており、その終端部はストッパ部86Eとなっている。また中ケース86のガイド突起86Hも、断面U字形に形成されており、下面側がガイド溝86Bとして構成されている。図11(A)に示されるように、このガイド溝86Bは、下壁部86Dの車両外側端部に至る直前で終端しており、その終端部はストッパ部86Kとなっている。
【0084】
次に、大ケース88における上壁部88Uの下面には、中ケース86の2本のガイド溝86Aに夫々入り込み、該ガイド溝86Aに案内される爪状のガイド突起88Aが設けられている。また大ケース88における下壁部88Dの上面の車両前後方向中央部には、中ケース86のガイド溝86Bに入り込み、該ガイド溝86Bに案内される爪状のガイド突起88Bが設けられている。
【0085】
図11(B)に示されるように、エアバッグ袋体74の膨張圧によりケース80が伸長して行くと、中ケース86のガイド突起86Cが小ケース84のストッパ部84Eに当接し、大ケース88のガイド突起88Bが中ケース86のストッパ部86Kに当接するようになっている。また図12(B)に示されるように、同じくエアバッグ袋体74の膨張圧によりケース80が伸長して行くと、中ケース86のガイド突起86Jが小ケース84のストッパ部84Kに当接し、大ケース88のガイド突起88Aが中ケース86のストッパ部86Eに当接するようになっている。これにより、エアバッグ袋体74の膨張展開時に、小ケース84、中ケース86及び大ケース88が互いに離脱することを抑制している。
【0086】
次に、図6,図8から図10において、インフレータ18からエアバッグ袋体74へガスを供給するためのガス供給管92の配管について説明する。ガス供給管92は、インフレータ18と頭部保護エアバッグ袋体16とを接続するガス供給管90から分岐されている。図6に示されるように、インフレータ18はルーフサイドレール14の車両内側に配設され、エアバッグ袋体74はルーフサイドレール14の車両外側に配設されているので、ガス供給管92をルーフサイドレール14の車両内側から車両外側へと導く必要がある。
【0087】
図8,図10(A)に示されるように、本実施形態では、ルーフサイドレール14の車幅方向外側の接合部32の一部に切欠き94を設けると共に、該切欠き94に防水のため、例えばゴム製のグロメット96を嵌め込んでいる。図10(B)に示されるように、グロメット96には貫通孔96Aが設けられており、ガス供給管92は、グロメット96における該貫通孔96Aに通されている。これにより、ガス供給管92は、ルーフサイドレール14の車両内側から車両外側へと導かれている。図6に示されるように、ウェザーストリップ46は、このグロメット96を挟み込んだ状態で接合部32に取り付けられている。なお、グロメット96の形状は、図示の例には限られない。
【0088】
図5に示されるように、サイドドア20において、ドアインナパネル48のベルトライン部48Aは、ベルトラインリインフォースメント98により補強されている。他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0089】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図6において、本実施形態に係る車両側部構造S2では、車両側部のドア開口部42に、ドアフレーム押出し機構70としてのエアバッグ装置72が設けられている。このエアバッグ装置72では、エアバッグ袋体74が収納された伸縮可能な入れ子構造のケース80のうち、大ケース88が最も車両外側に位置しているので、通常時に小ケース84や中ケース86が露出することなく、見栄えが良好である。
【0090】
次に、頭部保護エアバッグ装置10が作動した際の作用について説明する。図5において、本実施形態に係る車両側部構造S2では、例えば側面衝突によりサイドドア20に側突荷重(図示せず)が入力され、該側突荷重によりサイドドア20が車両内側に変形すると、頭部保護エアバッグ装置10が作動すると共に、該頭部保護エアバッグ装置10の作動と連動して、エアバッグ装置72が作動する。頭部保護エアバッグ装置10の作動については、第1実施形態と同様である。
【0091】
頭部保護エアバッグ装置10の作動時にインフレータ18から噴出したガスは、ガス供給管90を通じて頭部保護エアバッグ袋体16へ供給されると共に、該ガス供給管90から分岐したガス供給管92を通じてエアバッグ袋体74へも供給される。これにより、エアバッグ袋体74が、ドアフレーム44と車両側部のドア開口部42との間で膨張展開することで、該ドアフレーム44の上部が車両外側に押し出される。具体的には、エアバッグ袋体74がケース80内で膨張展開して、該ケース80が車両外側に伸長することで、ドアフレーム44の上部が車両外側に押し出される。
【0092】
ケース80の伸長について更に詳しく説明すると、ケース80は、小ケース84、中ケース86及び大ケース88とで構成される入れ子構造となっており、小ケース84が、ドア開口部42に位置するルーフサイドレール14のアウタパネル28に固定されているので、エアバッグ袋体74の膨張展開に伴い、中ケース86及び大ケース88が車両外側へスライドすることで、ケース80が伸長する。ケース80の各部には、ガイド手段として、上記したようなガイド溝及びガイド突起が設けられているので、ケース80の伸長方向は、これらのガイド溝やガイド突起により車両外側となるように案内される。
【0093】
このとき、中ケース86は、図11(B)に示されるように、ガイド突起86Cが小ケース84のストッパ部84Eに当接し、また図12(B)に示されるように、ガイド突起86Jが小ケース84のストッパ部84Kに当接する位置まで、該小ケース84に対して車両外側へスライドすることができる。また大ケース88は、図12(B)に示されるように、ガイド突起88Aが中ケース86のストッパ部86Eに当接し、図11(B)に示されるように、ガイド突起88Bが中ケース86のストッパ部86Kに当接するまで、該中ケース86に対して車両外側へスライドすることができる。
【0094】
エアバッグ袋体74の膨張展開によりケース80が伸長しても、小ケース84、中ケース86及び大ケース88が互いに離脱することはなく、エアバッグ袋体74の展開範囲は、ケース80内に限定されている。このため、ドアフレーム44に対する押圧力が、車両上下方向や車両前後方向に逃げることがなく、エアバッグ袋体74によるドアフレーム44の押出し方向が車両外側となるように保持される。これにより、効率的にドアフレーム44を押圧することができる。
【0095】
またこのとき、図11(B),図12(B)に示されるように、小ケース84内に収納されていた荷重受け板82が、エアバッグ袋体74の膨張圧により車両外側に押圧され、該荷重受け板82の車両外側面に配設された3本のピン76(図7,図9も参照)が、大ケース88の横壁部88Sに設けられた薄肉部88Tを突き破る。これにより、各ピン76が、横壁部88Sの車両外側に突出して、ドアフレーム44の差込み部78に差し込まれることとなる。ピン76が差込み部78に差し込まれて、該差込み部78と係合することで、大ケース88とドアフレーム44との間での車両上下方向及び車両前後方向の相対運動が抑制される。これにより、エアバッグ袋体74によるドアフレーム44の押出し方向が車両外側となるように保持される。
【0096】
このように、図14において、本実施形態に係る車両側部構造S2では、頭部保護エアバッグ袋体16が車両側部と乗員24の24Hとの間にカーテン状に展開する際に、エアバッグ装置72及び各種の押出し方向保持手段により、ドアフレーム44と該ドアフレーム44に保持されているドアガラス22とを車両外側に安定的に押し出して、頭部保護エアバッグ袋体16の展開可能領域を車両外側に拡大させることができる。
【0097】
これにより、乗員24の例えば頭部24Hが頭部保護エアバッグ袋体16に当接した際、即ち頭部保護エアバッグ袋体16による乗員24の頭部24Hの拘束初期においては、該頭部保護エアバッグ袋体16は、ドアフレーム44及びドアガラス22が押し出された分、車両外側へ変位することができる。これにより、頭部保護エアバッグ袋体16から乗員24の頭部24Hへの荷重が立ち上がるタイミングを遅らせて、頭部保護エアバッグ袋体16による乗員24の頭部24Hの拘束タイミングを適正化することができる。
【0098】
また頭部保護エアバッグ袋体16とエアバッグ袋体74とでインフレータ18を共用しているので、該インフレータ18についてのコストや質量の増加を抑制することができる。
【0099】
(第2実施形態の変形例)
図11(A)に示されるように、上記したケース80では、小ケース84の上壁部84U及び下壁部84D、中ケース86の上壁部86U及び下壁部86D、並びに大ケース88の上壁部88U及び下壁部88Dにおいて、各々の一般部が平面状に形成されていたが、該一般部の形状は平面には限られない。図15(A)に示されるように、例えば各一般部が車幅方向断面において車両上方に凸となるように湾曲していてもよい。
【0100】
エアバッグ袋体74によりドアフレーム44を車両外側に押圧した際には、該ドアフレーム44がドアインナパネル48やドアアウタパネル50との結合部(図示せず)を中心として回動することで、縦壁部44Aが傾斜して行く場合があり得る。しかしながら、このような場合でも、図15(B)に示されるように、上壁部及び下壁部における各一般部が湾曲していれば、ケース80が略円弧上に伸長して、大ケース88の横壁部88Sが、傾斜して行く縦壁部44Aに追従できるからである。これにより、ドアフレーム44をより効率的に車両外側に押し出すことが可能となる。
【0101】
なお、上記したケース80では、大ケース88が最も車両外側に位置しているものとしたが、これに限られず、図16に示されるように、小ケース84が最も車両外側に位置するようにしてもよい。この場合、小ケース84の横壁部84Sがエアバッグ袋体74、荷重受け板82及びピン76の車両外側に位置し、該横壁部84Sのうちピン76に対応する部位に、薄肉部84Tが形成される。大ケース88は、ドア開口部42に位置するルーフサイドレール14のアウタパネル28に固定される。ガイド突起やガイド溝については、図12(A)に示される構成と、車幅方向において逆の配置となる。
【0102】
この例では、エアバッグ袋体74の膨張展開時には、中ケース86が大ケース88に対して車両外側へスライドすると共に、小ケース84が中ケース86に対して車両外側へスライドする。そして、小ケース84の横壁部84Sがドアフレーム44の縦壁部44Aに当接することで、該ドアフレーム44を車両外側に押し出すことができる。
【0103】
またこのとき、ピン76は、小ケース84の薄肉部84Tを突き破って、横壁部84Sの車両外側に突出し、ドアフレーム44の差込み部78に差し込まれる。ピン76が差込み部78に差し込まれて、該差込み部78と係合することで、小ケース84とドアフレーム44との間での車両上下方向及び車両前後方向の相対運動が抑制される。これにより、ドアフレーム44を車両外側に安定的に押し出すことができる。
【0104】
なお本実施形態では、ケース80を、小ケース84、中ケース86及び大ケース88からなる入れ子構造としたが、入れ子にするケースの数は3個には限られない。
【0105】
[第3実施形態]
図17において、本実施の形態に係る車両側部構造S3は、ドアフレーム押出し機構70として、ドアフレーム44の下端部から、サイドドア20内を車両下方に延び、サイドドア20の変形時に該サイドドア20のベルトライン部102を支点として車両内側に回転変位することでドアフレーム44の上部を車両外側に押出し可能なドアフレーム延長部材100を有している。
【0106】
ここで、図17,図18において、サイドドア20の内部構造について、第1実施形態と異なる点について説明する。図18は、車両内側から見たサイドドア20の内部構造を示す正面図である。サイドドア20のベルトライン部102には、ドアアウタパネル50を補強するベルトラインリインフォースメント104が、車両前後方向に延設されている。図18に示されるように、このベルトラインリインフォースメント104には、例えば断面ハット形に構成された支点部材110が固定されている。ドアフレーム44は、この支点部材110とベルトラインリインフォースメント104との間に通されている。
【0107】
サイドドア20内における車両上下方向の例えば略中央部には、ドアアウタパネル50を補強するためのドアアウタリインフォースメント106が、車両前後方向に延設されている。更に、サイドドア20内におけるドアアウタリインフォースメント106の車両下方には、インパクトビーム108が車両前後方向に延設されている。このインパクトビーム108は、ドアアウタパネル50に近接するようにして、ドアインナパネル48に固定されている。
【0108】
ドアフレーム延長部材100は、上端においてドアフレーム44に連結され、下端100Aにおいてインパクトビーム108に連結されている。なおドアフレーム延長部材100をドアフレーム44と一体的に構成してもよい。
【0109】
他の部分については、第1実施形態又は第2実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0110】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図19(A),図19(B)において、本実施形態に係る車両側部構造S3では、例えば側面衝突により相手車両112からサイドドア20に側突荷重Fが入力され、該側突荷重Fによりサイドドア20が車両内側に変形すると、インパクトビーム108が車両内側に押し込まれることで、ドアフレーム延長部材100の下端100Aに側突荷重Fが伝達される。
【0111】
すると、ドアフレーム押出し機構としてのドアフレーム延長部材100が、該サイドドア20のベルトライン部102に設けられた支点部材110を支点として車両内側に回転変位する。ドアフレーム延長部材100は、ドアフレーム44の下端部に設けられているので、該ドアフレーム延長部材100が車両内側に回転変位すると、ドアフレーム44の上部は逆に車両外側に矢印A方向に回転変位する。即ち、ドアフレーム44の上部が車両外側に押し出される。
【0112】
本実施形態では、ドアフレーム延長部材100が、サイドドア20に設けられたインパクトビーム108に連結されているので、サイドドア20の変形時に該インパクトビーム108に入力された側突荷重Fを効率的にドアフレーム延長部材100に伝達することができる。このため、ドアフレーム44の上部を、より効率的に車両外側に押し出すことができる。ドアフレーム44が車両外側に押し出されると、該ドアフレーム44に保持されているドアガラス22も車両外側に押し出される。
【0113】
一方、図20に示されるように、側面衝突時には、第1実施形態と同様にして頭部保護エアバッグ装置10も作動し、頭部保護エアバッグ袋体16が車両側部と乗員24の24Hとの間にカーテン状に展開する。このとき、上記したように、ドアフレーム44の上部及びドアガラス22は、車両外側に押し出されており、頭部保護エアバッグ袋体16の展開可能領域が車両外側に拡大している。
【0114】
これにより、乗員24の例えば頭部24Hが頭部保護エアバッグ袋体16に当接した際、即ち頭部保護エアバッグ袋体16による乗員24の頭部24Hの拘束初期においては、該頭部保護エアバッグ袋体16は、ドアフレーム44及びドアガラス22が押し出された分、車両外側へ変位することができる。これにより、頭部保護エアバッグ袋体16から乗員24の頭部24Hへの荷重が立ち上がるタイミングを遅らせて、頭部保護エアバッグ袋体16による乗員24の頭部24Hの拘束タイミングを適正化することができる。
【0115】
(第3実施形態の変形例)
ベルトライン部102の構成は、次のようにすることも可能である。図21,図22(A),図22(B)に示される例では、サイドドア20内におけるベルトラインリインフォースメント104に沿って、例えば丸パイプ状の支持部材114が配設されている。一方、ドアフレーム延長部材100の上端の車両外側には、軸受116が取り付けられている。ドアフレーム延長部材100は、該軸受116を介して、支持部材114に組み付けられており、該支持部材114の軸方向を回転軸として回動可能に構成されている。
【0116】
図22(A),図22(B)に示されるように、この例では、例えば相手車両112からの側突荷重Fによりサイドドア20が車両内側に変形し、インパクトビーム108からドアフレーム延長部材100の下端100Aに側突荷重Fが伝達されると、該ドアフレーム延長部材100が、支持部材114の軸方向を回転軸として、車両内側に回転変位する。これに伴い、ドアフレーム44の上部が、逆に車両外側に矢印A方向に回転変位する。即ち、ドアフレーム44の上部が車両外側に押し出される。この例のように、ベルトライン部102に支持部材114と軸受116からなる回転支持部を設けることで、ドアフレーム44をより円滑に車両外側に押し出すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】図1から図4は、第1実施形態に係り、図1は、車両側部構造を示す断面図である。
【図2】サイドドアの内部構造を示す拡大断面図である。
【図3】側面衝突時に突起部材とドアガラスが干渉して、該ドアガラスが砕かれている状態を示す拡大断面図である。
【図4】ドアガラスが砕かれてドアフレームの枠内から除去されることで、頭部保護エアバッグ袋体の膨張可能領域が車両外側に拡大し、この結果、頭部保護エアバッグ袋体により乗員の頭部が適切なタイミングで拘束されている状態を示す断面図である。
【図5】図5から図16は、第2実施形態に係り、図5は、車両側部構造を示す断面図である。
【図6】頭部保護エアバッグ装置と、ドア押出し機構としてのエアバッグ装置とを示す拡大断面図である。
【図7】ケース及びエアバッグ袋体の分解斜視図である。
【図8】車両内側から見た、頭部保護エアバッグ装置と、ドア押出し機構としてのエアバッグ装置とを示す正面図である。
【図9】車両上側から見た、頭部保護エアバッグ装置と、ドア押出し機構としてのエアバッグ装置とを示す平面図である。
【図10】(A)車両外側の接合部の切欠きに設けられたグロメットと、該グロメットに通されたガス供給管を示す拡大正面図である。(B)図10(A)における10B−10B矢視断面図である。
【図11】(A)図7における11A−11A矢視に相当する断面位置において、通常時におけるエアバッグ装置を示す拡大断面図である。(B)エアバッグ袋体が展開してケースが伸張し、ドアフレームを車両外側に押し出している状態を示す拡大断面図である。
【図12】(A)図7における12A−12A矢視に相当する断面位置において、通常時におけるエアバッグ装置を示す拡大断面図である。(B)エアバッグ袋体が展開してケースが伸張し、ドアフレームを車両外側に押し出している状態を示す拡大断面図である。
【図13】ドア押出し機構としてのエアバッグ装置によりドアフレームが車両外側に押し出されると共に、頭部保護エアバッグ袋体が膨張展開している状態を示す拡大断面図である。
【図14】エアバッグ装置によりドアフレームが車両外側に押し出されることで、頭部保護エアバッグ袋体の膨張可能領域が車両外側に拡大し、この結果、頭部保護エアバッグ袋体により乗員の頭部が適切なタイミングで拘束されている状態を示す断面図である。
【図15】(A)ケースの変形例について、図7における11A−11A矢視に相当する断面位置の構成を示す拡大断面図である。(B)エアバッグ袋体が展開してケースが伸張し、大ケースの横壁部が、傾斜して行く縦壁部に追従しながらドアフレームを車両外側に押し出している状態を示す拡大断面図である。
【図16】小ケースが最も車両外側に配置された変形例を示す拡大断面図である。
【図17】図17から図22は、第3実施形態に係り、図17は、車両側部構造を示す断面図である。
【図18】車両内側から見たサイドドアの内部構造を示す正面図である。
【図19】(A)側面衝突時にドアフレーム延長部材が車両内側に回転変位して、ドアフレームの上部が車両外側に押し出されている状態を示す、図18における19A−19A矢視断面図である。(B)側面衝突時にドアフレーム延長部材が車両内側に回転変位して、ドアフレームの上部が車両外側に押し出されている状態を示す、図18における19B−19B矢視断面図である。
【図20】ドアフレームが車両外側に押し出されることで、頭部保護エアバッグ袋体の膨張可能領域が車両外側に拡大し、この結果、頭部保護エアバッグ袋体により乗員の頭部が適切なタイミングで拘束されている状態を示す断面図である。
【図21】第3実施形態の変形例において、車両内側から見たサイドドアの内部構造を示す正面図である。
【図22】(A)側面衝突時にドアフレーム延長部材が車両内側に回転変位して、ドアフレームの上部が車両外側に押し出されている状態を示す、図21における22A−22A矢視断面図である。(B)側面衝突時にドアフレーム延長部材が車両内側に回転変位して、ドアフレームの上部が車両外側に押し出されている状態を示す、図21における22B−22B矢視断面図である。
【符号の説明】
【0118】
10 頭部保護エアバッグ装置
12 突起部材(領域拡大手段)
14 ルーフサイドレール
16 頭部保護エアバッグ袋体
18 インフレータ
20 サイドドア
22 ドアガラス
24 乗員
24H 頭部
42 ドア開口部
44 ドアフレーム
48 ドアインナパネル
48A ベルトライン部
58 レバー部材
58A 貫通孔
70 ドアフレーム押出し機構(領域拡大手段)
72 エアバッグ装置(ドアフレーム押出し機構)
76 ピン(押出し方向保持手段)
78 差込み部(押出し方向保持手段)
80 ケース(押出し方向保持手段)
84C ガイド溝(ガイド手段)
84G ガイド溝(ガイド手段)
84H ガイド溝(ガイド手段)
84J ガイド溝(ガイド手段)
86A ガイド溝(ガイド手段)
86B ガイド溝(ガイド手段)
86C ガイド突起(ガイド手段)
86G ガイド突起(ガイド手段)
86H ガイド突起(ガイド手段)
86J ガイド突起(ガイド手段)
88A ガイド突起(ガイド手段)
88B ガイド突起(ガイド手段)
100 ドアフレーム延長部材(ドアフレーム押出し機構)
102 ベルトライン部
108 インパクトビーム
110 支点部材
S1 車両側部構造
S2 車両側部構造
S3 車両側部構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフサイドレールに沿って折畳み状態で配設された頭部保護エアバッグ袋体が、インフレータからのガスの供給を受けて車両側部と乗員との間にカーテン状に展開可能に構成された頭部保護エアバッグ装置と、
前記頭部保護エアバッグ袋体が展開する際に、該頭部保護エアバッグ袋体の展開可能領域を車両外側に拡大させる領域拡大手段と、
を有することを特徴とする車両側部構造。
【請求項2】
前記領域拡大手段として、
サイドドアのうち、ドアガラスの開度にかかわらず該ドアガラスとドア厚さ方向に重なる位置に、該ドアガラスの車両内側から該ドアガラスに向かって配設され、前記サイドドアが変形して前記頭部保護エアバッグ袋体が展開する際に、前記ドアガラスと干渉して該ドアガラスを除去可能な突起部材を有することを特徴とする請求項1に記載の車両側部構造。
【請求項3】
前記突起部材は、前記サイドドアの車両内側部材であるドアインナパネルのうち、ベルトライン部に設けられ、
前記突起部材と前記ドアガラスとの間を通って前記サイドドア内を車両下方へ延び、前記突起部材とドア厚さ方向に対向する位置に該突起部材に対応した貫通孔が形成されたレバー部材が設けられ、
前記サイドドアの変形に伴い前記レバー部材が車両内側に押されることで、前記突起部材が前記貫通孔からドア厚さ方向外側に突出して前記ドアガラスと干渉することを特徴とする請求項2に記載の車両側部構造。
【請求項4】
前記領域拡大手段として、
サイドドアの上部を構成しドアガラスを保持可能に構成された枠状のドアフレームを車両外側に押出し可能なドアフレーム押出し機構を有することを特徴とする請求項1に記載の車両側部構造。
【請求項5】
前記ドアフレーム押出し機構として、
前記サイドドアに対応する車両側部のドア開口部に折畳み状態で配設されたエアバッグ袋体を有し、該エアバッグ袋体が前記頭部保護エアバッグ装置と連動して前記インフレータからのガスの供給を受けて前記ドアフレームと前記車両側部との間で膨張展開することで、該ドアフレームを車両外側に押出し可能なエアバッグ装置を有することを特徴とする請求項4に記載の車両側部構造。
【請求項6】
前記エアバッグ袋体による前記ドアフレームの押出し方向が車両外側となるように、該押出し方向を保持可能な押出し方向保持手段を有することを特徴とする請求項5に記載の車両側部構造。
【請求項7】
前記押出し方向保持手段として、
前記エアバッグ袋体側に配設され前記ドアフレームに向けて配設されたピンと、該ピンに対応して前記ドアフレームに設けられ前記エアバッグ袋体の展開時に該ピンが差し込まれる差込み部とを有することを特徴とする請求項6に記載の車両側部構造。
【請求項8】
前記押出し方向保持手段として、
前記エアバッグ袋体を覆うと共に、該エアバッグ袋体の展開時に車両外側へ伸長可能なケースを有することを特徴とする請求項6に記載の車両側部構造。
【請求項9】
前記ケースには、前記エアバッグ袋体の展開時に該ケースが車両外側に伸長するように案内するガイド手段が設けられていることを特徴とする請求項8に記載の車両側部構造。
【請求項10】
前記ドアフレーム押出し機構として、
前記ドアフレームの下端部から、前記サイドドア内を車両下方に延び、前記サイドドアの変形時に該サイドドアのベルトライン部を支点として車両内側に回転変位することで前記ドアフレームの上部を車両外側に押出し可能なドアフレーム延長部材を有することを特徴とする請求項4に記載の車両側部構造。
【請求項11】
前記ドアフレーム延長部材は、前記サイドドアに設けられたインパクトビームに連結されていることを特徴とする請求項10に記載の車両側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2009−166547(P2009−166547A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4419(P2008−4419)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】