説明

車両制御装置

【課題】エネルギーの利用効率を向上できる車両制御装置を提供すること。
【解決手段】車両100の運動エネルギーを作動流体の圧力に変換して蓄圧すること、および蓄圧された作動流体の圧力を車両の動力に変換して出力することが可能な変換装置32と、車両の運動エネルギーを電力に変換して蓄電すること、および蓄電された電力を車両の動力に変換して出力することが可能なモータジェネレータ4と、を備え、車両が長時間停止すると予測される所定状況において、変換装置による力行をモータジェネレータによる力行よりも優先すること、あるいは変換装置による回生よりもモータジェネレータによる回生を優先することの少なくともいずれか一方を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の運動エネルギーを圧力に変換して蓄圧することが提案されている。特許文献1には、車両の回生ブレーキ時に駆動軸の回転によりコンプレッサを回生駆動して、燃料ガスをバッファタンクに蓄圧する燃料電池車両の制御装置の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−235160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の運動エネルギーを圧力に変換して蓄圧することが可能な車両において、エネルギーの利用効率を向上できることが望まれている。例えば、蓄圧したエネルギーの損失を抑制できることが望まれている。
【0005】
本発明の目的は、車両の運動エネルギーを圧力に変換して蓄圧することが可能な車両においてエネルギーの利用効率を向上できる車両制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両制御装置は、車両の運動エネルギーを作動流体の圧力に変換して蓄圧すること、および前記蓄圧された作動流体の圧力を前記車両の動力に変換して出力することが可能な変換装置と、前記車両の運動エネルギーを電力に変換して蓄電すること、および前記蓄電された電力を前記車両の動力に変換して出力することが可能なモータジェネレータと、を備え、前記車両が長時間停止すると予測される所定状況において、前記変換装置による力行を前記モータジェネレータによる力行よりも優先すること、あるいは前記変換装置による回生よりも前記モータジェネレータによる回生を優先することの少なくともいずれか一方を実行することを特徴とする。
【0007】
上記車両制御装置において、前記所定状況は、前記車両が目的地に接近した状況、予め定められた駐車時刻に近づいた状況、あるいは現在までの走行距離が予め定められた走行距離に近づいた状況の少なくともいずれか一つを含むことが好ましい。
【0008】
上記車両制御装置において、前記所定状況とは、前記車両が長時間停止するまでの走行距離が所定距離以下であると予測される状況、あるいは前記車両が長時間停止するまでの所要時間が所定時間以下であると予測される状況の少なくともいずれか一方を含むことが好ましい。
【0009】
上記車両制御装置において、前記車両の現在位置から前記車両が長時間停止すると予測される位置までの距離が短い場合、前記距離が長い場合よりも、前記変換装置による力行を前記モータジェネレータによる力行よりも優先する度合い、あるいは前記変換装置による回生よりも前記モータジェネレータによる回生を優先する度合いの少なくともいずれか一方を高めることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる車両制御装置は、車両の運動エネルギーを作動流体の圧力に変換して蓄圧すること、および蓄圧された作動流体の圧力を車両の動力に変換して出力することが可能な変換装置と、モータジェネレータと、を備え、車両が長時間停止すると予測される所定状況において、変換装置による力行をモータジェネレータによる力行よりも優先すること、あるいは変換装置による回生よりもモータジェネレータによる回生を優先することの少なくともいずれか一方を実行する。本発明にかかる車両制御装置によれば、エネルギーの利用効率を向上できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施形態の回生手段の選定フローを示すフローチャートである。
【図2】図2は、実施形態の力行手段の選定フローを示すフローチャートである。
【図3】図3は、実施形態に係るハイブリッド車両の概略構成を示す図である。
【図4】図4は、力行/回生についての判定パターンを示す図である。
【図5】図5は、第1変形例に係るハイブリッド車両の概略構成を示す図である。
【図6】図6は、第2変形例に係るハイブリッド車両の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態にかかる車両制御装置につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0013】
(実施形態)
図1から図6を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、車両制御装置に関する。図1は、実施形態における回生手段の選定フローを示すフローチャート、図2は、実施形態における力行手段の選定フローを示すフローチャート、図3は、実施形態に係るハイブリッド車両の概略構成を示す図である。
【0014】
本実施形態のハイブリッドシステムは、例えば、大型車両に搭載される。ハイブリッド車両100は、油圧式の力行/回生装置(油圧ポンプモータ32)と、電気式の力行/回生装置(M/G4)とを備えている。大型車両では、電気式の動力源のみで必要な出力を得ようとすると、高コストとなりやすい。このため、本実施形態では、電気式のライトなハイブリッドシステムと、油圧エネルギーによりHV走行可能なシステムとを組み合わせている。M/G4および油圧ポンプモータ32をそれぞれ高効率となる領域で動作させることで、総合的なエネルギー利用効率の向上を図る。
【0015】
具体的には、加速域では油圧エネルギーを使い油圧走行もしくはアシスト走行し、軽負荷域では電気エネルギーによりEV走行もしくはアシスト走行することで燃費を向上させる。
【0016】
回生時に油圧ポンプモータ32によって運動エネルギーから変換された油圧エネルギーは、アキュームレータ31に蓄圧される。ここで、アキュームレータ31に蓄圧したままでハイブリッド車両100を長時間停止させておくと、蓄圧した油圧の漏れによりエネルギー効率が低下する可能性がある。本実施形態の車両制御装置1−1は、目的地の近くでは電気による回生を優先し、油圧エネルギーは力行で使い切るように回生制御および走行制御を行う。これにより、長時間停止するときの油圧漏れによるロスを抑制してエネルギー利用効率の向上を図ることができる。
【0017】
図3に示すように、ハイブリッド車両100のハイブリッドシステム100Aは、エンジン1、トランスミッション(T/M)2、油圧システム3、モータジェネレータ(M/G)4、バッテリー5、インバータ6およびECU30を備えている。また、本実施形態の車両制御装置1−1は、油圧システム3、M/G4およびECU30を備える。
【0018】
エンジン1は、ハイブリッド車両100の動力源である。エンジン1は、燃料の燃焼エネルギーを出力軸の回転運動に変換して出力する。エンジン1の出力軸は、第一クラッチC1を介してT/M2の入力軸2aと接続されている。T/M2は、例えば、自動変速機であり、エンジン1から第一クラッチC1を介して入力される動力を変速して出力軸2bに出力する。T/M2の出力軸2bは、第一ギアG1に接続されている。第一ギアG1は、駆動輪7と接続されている。すなわち、T/M2の出力軸2bおよび第一ギアG1は、駆動輪7の回転と連動して回転する。
【0019】
油圧システム3は、入力される動力を圧力に変換して蓄えることができると共に、蓄えた圧力を動力に変換して出力することができる。油圧システム3は、アキュームレータ31、油圧ポンプモータ32およびリザーブタンク33を有する。
【0020】
アキュームレータ31は、作動流体を加圧状態で蓄える蓄圧装置である。本実施形態の油圧システム3における作動流体としては、例えば作動油を用いることができる。アキュームレータ31は、高圧の作動油を蓄えることが可能な蓄圧容器であり、高圧油路34を介して油圧ポンプモータ32と接続されている。油圧ポンプモータ32は、低圧油路35を介してリザーブタンク33と接続されている。リザーブタンク33は、作動油を貯留する貯留タンクである。油圧ポンプモータ32の回転軸32aは、第三クラッチC3を介して第三ギアG3と接続されている。
【0021】
油圧ポンプモータ32は、油圧ポンプとしての機能を有すると共に、油圧モータとしての機能も有している変換装置である。具体的には、油圧ポンプモータ32は、油圧ポンプとして機能する場合、第三クラッチC3を介して回転軸32aに入力される動力によって駆動されることにより、低圧油路35を介してリザーブタンク33の作動油を吸引し、吸引した作動油を加圧して高圧油路34に吐出する。高圧油路34に吐出された作動油は、アキュームレータ31に蓄圧される。油圧ポンプモータ32は、ハイブリッド車両100の走行時に駆動輪7から伝達される動力を圧力に変換して出力することができる。つまり、油圧ポンプモータ32は、ハイブリッド車両100の運動エネルギーを作動流体の圧力に変換して出力する圧力回生装置としての機能を有する。
【0022】
また、油圧ポンプモータ32は、油圧モータとして機能する場合、アキュームレータ31に蓄圧された油圧によって駆動されることにより、圧力エネルギーを動力に変換して回転軸32aに出力する。第三クラッチC3が係合状態であると、油圧ポンプモータ32が出力する動力は、第三クラッチC3、第三ギアG3および第一ギアG1を介して駆動輪7に伝達されてハイブリッド車両100を走行させることができる。つまり、油圧ポンプモータ32は、アキュームレータ31に蓄えられた圧力をハイブリッド車両100の走行用の動力に変換して駆動輪7に対して出力することができる。油圧ポンプモータ32を駆動した作動油は、低圧油路35を介してリザーブタンク33に流入する。
【0023】
油圧ポンプモータ32は、油圧モータとして出力する動力の大きさ、および油圧ポンプとして機能するときの負荷の大きさを可変に制御することができる。油圧ポンプモータ32は、例えば、斜板ポンプや斜軸ポンプ等の可変容量式のポンプモータとすることができる。油圧ポンプモータ32は、例えば、容量0から最大容量まで無段階にポンプ容量/モータ容量を制御できるものとすることができる。油圧ポンプモータ32は、ポンプ容量を増減させることによってポンプ負荷、すなわち負荷トルクを増減させることができる。また、油圧ポンプモータ32は、モータ容量を増減させることによって回転軸32aに出力する動力、すなわち出力トルクを増減させることができる。
【0024】
M/G4は、電力の供給により駆動する電動機としての機能(力行機能)と、機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機としての機能(回生機能)とを兼ね備えている。M/G4としては、例えば、交流同期型のモータジェネレータを用いることができる。M/G4は、インバータ6を介してバッテリー5と接続されている。バッテリー5は、充放電可能な蓄電装置である。インバータ6は、直流電流と交流電流との変換を行う電力変換装置である。また、インバータ6は、M/G4の出力トルクおよび発電量を制御することができる。
【0025】
M/G4の回転軸4aは、第二クラッチC2を介して第二ギアG2と接続されている。M/G4は、電動機として機能する場合、バッテリー5からインバータ6を介して供給される電力を動力に変換して回転軸4aに出力する。第二クラッチC2が係合状態であると、M/G4が出力する動力は、第二ギアG2および第一ギアG1を介して駆動輪7に対して出力される。つまり、M/G4は、バッテリー5に蓄えられた電力をハイブリッド車両100の走行用の動力に変換して駆動輪7に対して出力することができる。
【0026】
また、M/G4は、発電機として機能する場合、第二クラッチC2を介して回転軸4aに入力される動力によって駆動されて発電する。例えば、M/G4は、ハイブリッド車両100の走行時に駆動輪7から第二クラッチC2を介して回転軸4aに入力される動力により駆動されて発電することができる。つまり、M/G4は、ハイブリッド車両100の運動エネルギーを電力に変換して出力する電力回生装置として機能することができる。M/G4によって発電された電力は、例えばバッテリー5に充電される。
【0027】
第一ギアG1と第二ギアG2とは常時噛み合っており、相互に動力を伝達することができる。また、第一ギアG1と第三ギアG3とは常時噛み合っており、相互に動力を伝達することができる。従って、第二ギアG2と第三ギアG3とは第一ギアG1を介して相互に動力を伝達することができる。
【0028】
ECU30は、コンピュータを有する電子制御ユニットである。ECU30は、ハイブリッド車両100の走行制御を行う走行制御装置としての機能を有している。また、本実施形態のECU30は、回生制御を行う回生制御装置としての機能を有している。ECU30には、エンジン1、T/M2、アキュームレータ31、油圧ポンプモータ32、バッテリー5、インバータ6および各クラッチC1,C2,C3が接続されている。エンジン1、T/M2、油圧ポンプモータ32、インバータ6および各クラッチC1,C2,C3は、ECU30によって制御される。
【0029】
バッテリー5には、バッテリー5の充放電状態や電圧等を検出するセンサが接続されている。ECU30は、このセンサによる検出結果に基づいて、バッテリー5の充電状態SOCを取得することができる。充電状態SOCは、バッテリー5の充電量を示すものである。アキュームレータ31には、アキュームレータ31内の圧力を検出する圧力センサが設けられている。ECU30は、圧力センサによる検出結果に基づいて、アキュームレータ31内の油圧を取得することができる。
【0030】
各クラッチC1,C2,C3は、それぞれ開放状態と係合状態とに切替え可能である。各クラッチC1,C2,C3は、油圧等によって開放状態と係合状態とを切替えるアクチュエータをそれぞれ有している。これらのアクチュエータがECU30から出力される指令に応じて作動することにより、各クラッチC1,C2,C3の状態が制御される。なお、各クラッチC1,C2,C3は、完全係合状態のみならず、半係合状態に制御することも可能であり、更に、半係合状態における動力の伝達度合いを制御することも可能である。
【0031】
ナビゲーション装置40は、自車両を所定の目的地に誘導することを基本的な機能としている。ナビゲーション装置40は、位置検出部、地図データベース、演算部等を有する公知のナビゲーションシステムとすることができる。ナビゲーション装置40は、入力された目的地に基づいて、目的地までの経路の検索や経路中の走行案内等を実行することができる。ナビゲーション装置40は、ECU30と接続されており、ECU30と双方向の通信を行うことができる。
【0032】
ECU30は、エンジン1、油圧システム3、M/G4の少なくともいずれか1つが出力する動力によってハイブリッド車両100を走行させることができる。例えば、ECU30は、少なくともエンジン1の動力によってハイブリッド車両100を走行させるエンジン走行を実行することができる。エンジン1が出力する動力を駆動輪7に出力する場合、第一クラッチC1を係合状態とする。また、ECU30は、エンジン走行において、シフトポジションや走行状態に応じてT/M2の変速比を制御する。
【0033】
エンジン走行において、ECU30は、油圧システム3あるいはM/G4の少なくともいずれか一方が出力する動力を駆動輪7に伝達してハイブリッド車両100を走行させることができる。ECU30は、例えば、ハイブリッド車両100の加速時等にエンジン1のトルクが不足する場合に、油圧システム3あるいはM/G4の少なくとも一方にエンジン1をアシストさせる。
【0034】
例えば、油圧システム3によって動力を出力させる場合、ECU30は、第三クラッチC3を係合状態とすると共に、アキュームレータ31に蓄圧された油圧によって油圧ポンプモータ32を駆動する。アキュームレータ31内の加圧された作動油は、油圧ポンプモータ32に供給され、油圧ポンプモータ32を駆動して回転軸32aを回転させる。つまり、油圧ポンプモータ32において、油圧エネルギーが回転軸32aの回転動作に変換される。回転軸32aに出力された動力は、第三クラッチC3、第三ギアG3、第一ギアG1を介して駆動輪7に伝達される。
【0035】
ECU30は、M/G4によって動力を出力させる場合、第二クラッチC2を係合状態とすると共に、バッテリー5に充電された電力によってM/G4を駆動する。M/G4が出力する動力は、第二クラッチC2、第二ギアG2および第一ギアG1を介して駆動輪7に伝達される。ECU30は、油圧システム3およびM/G4にそれぞれ動力を出力させてエンジン1をアシストさせることもできる。
【0036】
また、油圧システム3およびM/G4は、それぞれエンジン1の動力によらずに単独でハイブリッド車両100を走行させることが可能である。例えば、ECU30は、エンジン1の動力によらずに油圧システム3が出力する動力によってハイブリッド車両100を走行させる油圧走行を実行することができる。また、ECU30は、エンジン1の動力によらずにM/G4が出力する動力によってハイブリッド車両100を走行させるEV走行を実行することができる。また、ECU30は、エンジン1の動力によらずに油圧システム3およびM/G4が出力する動力によってハイブリッド車両100を走行させることも可能である。
【0037】
ECU30は、車速およびアクセル開度などの条件に基づいて、駆動輪7に伝達するべき要求トルクあるいは要求駆動力を算出し、その算出結果に基づいて、エンジン1、T/M2、油圧システム3、インバータ6およびクラッチC1,C2,C3を制御する。要求トルクや要求駆動力は、ハイブリッド車両100の走行負荷に対応する。
【0038】
油圧システム3は、大きなパワーを出力する場合に有利である。これは、油圧式はバッテリーを使用する電気式と比較して高いパワー密度を確保可能であることによる。バッテリー5は、エネルギー密度は高いがパワー密度は低いという特性を有する。一方、油圧式は、バッテリーと比較してパワー密度が高いという特性を有する。
【0039】
大きなパワーを得ようとする場合、ハイブリッドシステム100Aの大型化につながるが、油圧式は、電気式と比較してシステムの大型化を抑制しつつパワーアップを図ることが可能である。このため、油圧システム3は、例えば、大型車両に搭載される場合のハイブリッドシステム100Aのコンパクト化において有利である。
【0040】
ECU30は、軽負荷でトルクの小さな領域は基本的にM/G4の動力でハイブリッド車両100を走行させる。このとき、ECU30は、エンジン1を停止し、かつ第一クラッチC1および第三クラッチC3を開放状態としてEV走行モードとする。
【0041】
また、発進などの大きなトルクが必要な領域は油圧エネルギーでハイブリッド車両100を走行させる。このとき、ECU30は、エンジン1を停止し、かつ第一クラッチC1および第二クラッチC2を開放状態とし、油圧走行モードとする。なお、ECU30は、エンジン1を停止させることに代えて、第二クラッチC2のみを開放状態としてエンジン1を油圧エネルギーでアシストさせてハイブリッド車両100を走行させることもできる。
【0042】
また、ECU30は、ハイブリッド車両100の減速時に回生制御を行うことができる。回生制御は、例えば、ハイブリッド車両100において制動要求が検出されている場合になされる。本実施形態のハイブリッド車両100は、油圧システム3およびM/G4のそれぞれによって回生を行うことができる。例えば、ECU30は、M/G4に回生発電を行わせる場合、第二クラッチC2を係合状態とし、かつM/G4に発電を行わせる。また、ECU30は、油圧システム3に回生を行わせる場合、第三クラッチC3を係合状態とし、かつ油圧ポンプモータ32を油圧ポンプとして作動させる。
【0043】
図4は、力行/回生についての判定パターンを示す図である。ECU30は、油圧システム3の蓄圧状態やバッテリー5の充電状態に基づいて、力行/回生を実施するか否か、実施する場合にどの手段で実施するかを判定する。
【0044】
ECU30は、アキュームレータ31の蓄圧状態を示す油圧SOCに基づいて、油圧システム3による力行/回生が可能であるか否かを判定する。ここで、油圧SOCは、アキュームレータ31の油圧そのものであっても、アキュームレータ31において許容される油圧の最大値に対する実際に蓄圧された圧力の割合であってもよい。ECU30は、アキュームレータ31の油圧SOCが低圧側の閾値A以上である場合、油圧システム3による力行が可能と判定し、油圧SOCが閾値A未満であれば油圧システム3による力行は不可と判定する。また、ECU30は、油圧SOCが高圧側の閾値B未満である場合、油圧システム3による回生が可能と判定し、油圧SOCが閾値B以上であれば油圧システム3による回生は不可と判定する。
【0045】
ECU30は、バッテリー5の充電状態を示す充電SOCに基づいて、M/G4による力行/回生が可能であるか否かを判定する。充電SOCは、バッテリー5の充電量そのものであっても、バッテリー5において許容される充電量の最大値に対する実際の充電量の割合であってもよい。ECU30は、充電SOCが低充電側の閾値C以上である場合、M/G4による力行が可能と判定し、充電SOCが閾値C未満であればM/G4による力行は不可と判定する。また、ECU30は、充電SOCが高充電側の閾値D未満であればM/G4による回生が可能と判定し、充電SOCが閾値D以上であればM/G4による回生は不可と判定する。
【0046】
従って、図4に示すように、力行に関しては、油圧による力行および電気による力行がそれぞれ可能なパターン1、電気による力行のみ可能なパターン2、油圧による力行のみ可能なパターン3、油圧による力行および電気による力行のいずれも不可であるパターン4の4つのパターンが存在する。
【0047】
また、回生に関しては、油圧による回生および電気による回生がそれぞれ可能なパターン5、電気による回生のみ可能なパターン6、油圧による回生のみ可能なパターン7、油圧による回生および電気による回生のいずれも不可であるパターン8の4つのパターンが存在する。
【0048】
回生時は、ECU30は、油圧を優先して回生を実施する。油圧での回生時は、第一クラッチC1および第二クラッチC2を開放状態とし、油圧ポンプモータ32を油圧ポンプとして作動させてアキュームレータ31に油圧を蓄圧する。油圧を優先して回生を行うことで、発進時等の大きなトルクが要求される場面に備えてアキュームレータ31に蓄圧しておくことができる。
【0049】
ECU30は、アキュームレータ31の油圧が所定の圧力以上になると、第二クラッチC2を係合状態とし第三クラッチC3を開放状態として電気側で回生を実施する。ECU30は、油圧および電気のいずれのエネルギーも一杯となると、第一クラッチC1のみを係合状態とし、エンジンブレーキとブレーキ装置による機械的なブレーキで車両の運動エネルギーを消費する。なお、回生時には補機負荷などに応じてエンジン1を停止したまま回生したり、エンジン1を運転させたまま回生をしたりするなど、回生の態様を状況によって切替えてもよい。
【0050】
上記のように、走行中に油圧ポンプモータ32による回生を行ってアキュームレータ31に油圧を蓄圧しておくことで、油圧によるアシストや油圧走行が可能となり、走行性能を向上できる。しかしながら、アキュームレータ31に蓄圧したままでハイブリッド車両100が長時間停止すると、蓄圧したエネルギーが減少してしまうという問題がある。長時間アキュームレータ31に蓄圧したままにしておくと、油圧漏れによりアキュームレータ31の油圧が低下してしまい、蓄圧したエネルギーが有効利用されなくなってしまう。
【0051】
本実施形態の車両制御装置1−1は、ハイブリッド車両100が長時間停止すると予測される状況において、油圧ポンプモータ32による力行をM/G4による力行よりも優先すること、あるいは油圧ポンプモータ32による回生よりもM/G4による回生を優先することの少なくともいずれか一方を実行する。これにより、アキュームレータ31に蓄圧される油圧エネルギーの増加を抑制し、蓄圧された油圧エネルギーの減少を促進することができる。その結果、長時間の停止が開始される前にアキュームレータ31の圧力を低下させることができる。よって、長時間停止するときの油圧エネルギーのロスを抑制し、ハイブリッド車両100におけるエネルギー利用効率を向上させることができる。
【0052】
図1および図2を参照して、本実施形態の制御について説明する。ECU30は、ハイブリッド車両100の走行時に、図1に示す選定フローに基づいて回生手段を選定する。図1のフローは、例えば、回生要求がある場合に、所定の間隔で繰り返し実行される。
【0053】
(回生手段の選定)
まず、ステップS1では、ECU30により、目的地の近くであるか否かが判定される。ECU30は、ナビゲーション装置40において設定されている目的地と、ナビゲーション装置40から取得した現在位置とに基づいてステップS1の判定を行う。一例として、ECU30は、ナビゲーション装置40によって設定された現在位置から目的地までの案内経路の長さに基づいてステップS1の判定を行うことができる。現在位置が目的地に近い場合、すなわち、ナビゲーション装置40の案内によって目的地に接近した状況は、ハイブリッド車両100が長時間停止すると予測される状況である。
【0054】
なお、現在位置から目的地までの予測所要時間に基づいてステップS1の判定がなされてもよい。ステップS1の判定の結果、目的地の近くであると判定された場合(ステップS1−Y)にはステップS2に進み、そうでない場合(ステップS1−N)にはステップS4に進む。
【0055】
ステップS2では、ECU30により、充電SOCが閾値D未満であるか否かが判定される。その判定の結果、充電SOCが閾値D未満であると判定された場合(ステップS2−Y)にはステップS3に進み、そうでない場合(ステップS2−N)にはステップS6に進む。
【0056】
ステップS3では、ECU30により、電気で回生すると決定される。ECU30は、M/G4による回生を油圧ポンプモータ32による回生よりも優先すると決定する。ここで、M/G4による回生を優先するとは、例えば、現在位置が目的地の近くでない場合よりもM/G4による回生量を増加することである。例えば、油圧ポンプモータ32およびM/G4のそれぞれが回生を行うときの合計回生量におけるM/G4による回生量の割合を可変として、現在位置が目的地の近くである場合は目的地の近くでない場合よりもM/G4による回生割合を高めるようにしてもよい。
【0057】
また、現在位置が目的地に近いほどM/G4による回生割合を高めるようにしてもよい。言い換えると、現在位置からハイブリッド車両100が長時間停止すると予測される位置までの距離が短い場合、当該距離が長い場合よりも油圧ポンプモータ32による回生よりもM/G4による回生を優先する度合いを高めることができる。なお、M/G4による回生を優先する場合、油圧ポンプモータ32による回生を禁止してもよい。ステップS3が実行されると、本フローは終了する。
【0058】
ステップS4では、ECU30により、油圧SOCが閾値B以上であるか否かが判定される。その判定の結果、油圧SOCが閾値B以上であると判定された場合(ステップS4−Y)にはステップS5に進み、そうでない場合(ステップS4−N)にはステップS7に進む。
【0059】
ステップS5では、ECU30により、充電SOCが閾値D以上であるか否かが判定される。その判定の結果、充電SOCが閾値D以上であると判定された場合(ステップS5−Y)にはステップS6に進み、そうでない場合(ステップS5−N)にはステップS8に進む。
【0060】
ステップS6では、ECU30により、回生しないと決定される。ECU30は、油圧システム3およびM/G4のいずれによる回生も行わないと決定する。ステップS6が実行されると、本フローは終了する。
【0061】
ステップS7では、ECU30により、油圧で回生すると決定される。ECU30は、油圧による回生を優先すると決定する。ここで、油圧による回生を優先するとは、例えば、油圧ポンプモータ32による回生が可能な場合に、M/G4による回生が可能か否かにかかわらず、油圧ポンプモータ32による回生を実行することである。ステップS7が実行されると、本フローは終了する。
【0062】
ステップS8では、ECU30により、電気で回生すると決定される。ECU30は、電気による回生を優先すると決定する。ステップS8が実行されると、本フローは終了する。
【0063】
ECU30は、回生手段の選定フローに基づいて回生手段を決定すると、決定された回生手段によって回生を実行する。
【0064】
(力行手段の選定)
ECU30は、ハイブリッド車両100の走行時に、図2に示す選定フローに基づいて力行手段を選定する。図2のフローは、例えば、加速要求がある場合に所定の間隔で繰り返し実行される。
【0065】
まず、ステップS11では、ECU30により、目的地の近くであるか否かが判定される。ECU30は、ステップS1と同様にしてステップS11の判定を行うことができる。ステップS11の判定の結果、目的地の近くであると判定された場合(ステップS11−Y)にはステップS12に進み、そうでない場合(ステップS11−N)にはステップS14に進む。
【0066】
ステップS12では、ECU30により、油圧SOCが閾値A以上であるか否かが判定される。その判定の結果、油圧SOCが閾値A以上であると判定された場合(ステップS12−Y)にはステップS13に進み、そうでない場合(ステップS12−N)にはステップS16に進む。
【0067】
ステップS13では、ECU30により、油圧で力行すると決定される。ECU30は、油圧による力行を電気による力行よりも優先すると決定する。ここで、油圧による力行を電気による力行よりも優先するとは、例えば、現在位置が目的地の近くでない場合よりも油圧ポンプモータ32による力行の優先度合いを高めることである。例えば、油圧ポンプモータ32およびM/G4にそれぞれ動力を出力させて走行するときに、現在位置が目的地の近くである場合は目的地の近くでない場合よりも油圧ポンプモータ32の出力トルクの割合を高めるようにしてもよい。
【0068】
また、現在位置が目的地に近いほど油圧ポンプモータ32の出力トルクの割合を高めるようにしてもよい。言い換えると、現在位置からハイブリッド車両100が長時間停止すると予測される位置までの距離が短い場合、当該距離が長い場合よりも油圧ポンプモータ32による力行をM/G4による力行よりも優先する度合いを高めることができる。なお、油圧による力行を電気による力行よりも優先する場合、M/G4による力行を禁止してもよい。ステップS13が実行されると、本フローは終了する。
【0069】
ステップS14では、ECU30により、油圧SOCが閾値A未満であるか否かが判定される。その判定の結果、油圧SOCが閾値A未満であると判定された場合(ステップS14−Y)にはステップS15に進み、そうでない場合(ステップS14−N)にはステップS17に進む。
【0070】
ステップS15では、ECU30により、充電SOCが閾値C未満であるか否かが判定される。その判定の結果、充電SOCが閾値C未満であると判定された場合(ステップS15−Y)にはステップS16に進み、そうでない場合(ステップS15−N)にはステップS18に進む。
【0071】
ステップS16では、ECU30により、力行しないと決定される。ECU30は、油圧システム3による力行およびM/G4による力行のいずれも行わないと決定する。ステップS16が実行されると、本フローは終了する。
【0072】
ステップS17では、ECU30により、油圧で力行すると決定される。ECU30は、油圧による力行を優先すると決定する。ステップS17が実行されると、本フローは終了する。
【0073】
ステップS18では、ECU30により、電気で力行すると決定される。ECU30は、電気による力行を優先すると決定する。ここで、電気による力行を優先するとは、例えば、M/G4による力行が可能な場合に、油圧ポンプモータ32による力行が可能か否かにかかわらず、M/G4による力行を実行することである。ステップS18が実行されると、本フローは終了する。
【0074】
以上説明したように、本実施形態の車両制御装置1−1は、ハイブリッド車両100が長時間停止すると予測される状況(S11−Y)において、油圧システム3による力行をM/G4による力行よりも優先する(S13)こと、あるいは長時間停止すると予測される状況(S1−Y)において油圧システム3による回生よりもM/G4による回生を優先する(S3)ことの少なくともいずれか一方を実行する。よって、本実施形態の車両制御装置1−1によれば、ハイブリッド車両100におけるエネルギー利用効率を向上させることができる。
【0075】
なお、本実施形態では、ハイブリッド車両100が長時間停止すると予測される状況を「所定状況」と記載する。所定状況は、ハイブリッド車両100が駐車すると予測される状況や、ハイブリッド車両100が継続的に停止すると予測される状況、ハイブリッド車両100においてイグニッションがOFFされるなど、ハイブリッドシステム100Aが停止すると予測される状況を含むものであってもよい。
【0076】
また、本実施形態では、油圧システム3による力行をM/G4による力行よりも優先すること、あるいは油圧システム3による回生よりもM/G4による回生を優先することの少なくともいずれか一方を行う車両制御を「所定制御」と記載する。所定制御は、アキュームレータ31に対する蓄圧を抑制する制御であり、また、アキュームレータ31に蓄圧された油圧エネルギーの消費を促進する制御でもある。
【0077】
本実施形態では、現在位置が、ナビゲーション装置40において設定された目的地の近くである場合に、所定状況にあると判定されたが、これに代えて、現在位置が予め定められた登録地点の近くである場合に、所定状況にあると判定されてもよい。例えば、自家用車であれば自宅や職場等に到着すると長時間停止する可能性が高い。よって、自宅や職場等の長時間停止する可能性が高い登録地点にハイブリッド車両100が接近している場合に、所定状況にあると判定することが可能である。また、過去に長時間停止した地点を予め学習しておき、当該地点に接近している場合に所定状況にあると判定してもよい。
【0078】
また、バス、トラック等の輸送車両や営業車両は、営業所や駐車場等の特定の箇所において長時間停止する可能性が高い。よって、ハイブリッド車両100が営業所等に接近している場合に、所定状況にあると判定することが可能である。営業所等の長時間停止する箇所は、予め登録された箇所であっても、過去に反復して長時間停止した箇所として学習された箇所であってもよい。
【0079】
なお、ハイブリッド車両100が長時間停止すると予測される所定状況は、上記のものには限定されない。例えば、所定状況は、時刻や、ハイブリッド車両100の走行時間、走行距離等に基づくものであってもよい。
【0080】
例えば、バス、トラック等の輸送車両や営業車両は、予め定められた時間帯に走行し、所定の時刻に営業所等に戻り、その後に長時間停止するものがある。こうした車両では、予め定められた駐車時刻や運行終了時刻(以下、「駐車時刻等」と記載する。)となれば長時間の停止が開始されると予測できる。したがって、現在時刻が駐車時刻等に近づいている状況は、所定状況に含まれる。
【0081】
ECU30は、例えば、予め登録された駐車時刻等に基づいて、当該駐車時刻等に近づいた場合に所定制御を行うことができる。また、ECU30は、ハイブリッド車両100が走行する時間帯や駐車時刻等を学習し、一定の時刻に長時間の停止を開始する車両であれば、その学習結果に基づいて所定制御を行うようにしてもよい。
【0082】
また、バス、トラック等の輸送車両や営業車両は、予め定められたルート上の所定距離を走行して営業所等に戻り、その後に長時間停止するものがある。こうした車両では、走行開始してから現在までの走行距離が所定距離に近づいている状況は、所定状況に含まれる。
【0083】
また、予め定められたルートを走行する車両では、走行開始してからの経過時間に基づいて、所定状況を判定することも可能である。例えば、走行開始してから定められたルートを経由して目的地に到着するまでに時間T1を要する場合、走行開始してからの経過時間が時間T1に近づいている状況は、所定状況に含まれる。
【0084】
なお、上記の条件を組み合わせて所定状況が定められてもよい。例えば、所定状況は、現在位置が営業所等の近くであり、かつ予め定められた駐車時刻に近づいている状況とされてもよい。複数の条件を組み合わせたものが所定状況とされることで、ハイブリッド車両100が長時間停止するか否かの予測精度が向上する。
【0085】
また、所定状況は、現在位置から目的地や営業所、自宅、職場等までの走行距離に基づいて定められてもよい。例えば、所定状況は、現在位置から目的地等までの走行距離が所定距離以下である状況とされてもよい。このようにすれば、ハイブリッド車両100が目的地等に到着して長時間停止するまでの走行距離が所定距離以下であると予測される状況に限り所定制御を行うことができる。所定距離は、一定値とされても可変とされてもよい。
【0086】
所定距離は、例えば、目的地等に到着する前に消費すべき油圧エネルギーに基づいて定めることができる。例えば、単位距離あたりに消費することができる油圧エネルギーと、消費すべき油圧エネルギーとに基づいて所定距離を決定することが可能である。なお、消費すべき油圧エネルギーとは、油圧エネルギーの目標消費量である。例えば、長時間ハイブリッド車両100を停止しておくときのアキュームレータ31における許容圧力と、現在のアキュームレータ31の油圧との差圧に基づいて、目的地等に到着するまでに消費すべき油圧エネルギーを算出することができる。
【0087】
目的地等までのルートが、反復的に通行するルートである場合、学習制御によって所定距離を補正するようにしてもよい。目的地等に到着するまでに過不足なくアキュームレータ31の油圧エネルギーを消費できるようにすれば、目的地等に到着する前に油圧が不足して力行の効率が低下することや、油圧エネルギーを消費しきれずに目的地等に到着してしまうことによるエネルギーの利用効率低下を抑制することができる。
【0088】
また、所定状況は、現在位置から目的地や営業所、自宅、職場等までの所要時間に基づいて定められてもよい。例えば、所定状況は、現在位置から目的地等までの所要時間が所定時間以下である状況とされてもよい。このようにすれば、ハイブリッド車両100が目的地等に到着して長時間停止するまでの所要時間が所定時間以下であると予測される状況に限り所定制御を行うことができる。所定時間は、一定値とされても可変とされてもよい。
【0089】
所定時間は、例えば、所定距離と同様にして消費すべき油圧エネルギーに基づいて定めることができる。目的地等までのルートが、反復的に通行するルートである場合、学習制御によって所定時間を補正するようにしてもよい。
【0090】
本実施形態の車両制御装置1−1は、システムOFFとされたときにアキュームレータ31の油圧を解放するハイブリッドシステム100Aにおいて特に有効である。走行中に蓄圧した油圧がシステムOFFによって解放されるハイブリッド車両100の場合、長時間停止する前に所定制御がなされて停止時のアキュームレータ31の油圧が低減されることで、エネルギーのロスが効果的に抑制される。
【0091】
本実施形態では、ハイブリッド車両100がエンジン1を備えているが、これに限定されるものではなく、ハイブリッド車両100はエンジン1を備えていなくてもよい。また、油圧システム3は、図示したものには限定されない。油圧システム3は、蓄圧された作動流体の圧力を動力に変換して出力すること、および入力される動力を作動流体の圧力に変換して蓄圧することができるものであればよい。
【0092】
(実施形態の第1変形例)
実施形態の第1変形例について説明する。上記実施形態の車両制御装置1−1の適用対象は、図3に示すハイブリッド車両100には限定されない。車両制御装置1−1は、例えば、図5に示すハイブリッド車両110に適用されてもよい。図5は、本変形例に係るハイブリッド車両の概略構成を示す図である。
【0093】
ハイブリッド車両110のハイブリッドシステム110Aにおいて、上記実施形態のハイブリッドシステム100Aと異なる点は、第一クラッチC1がT/M2と第一ギアG1との間に設けられている点である。このようにT/M2の後に第一クラッチC1を設けることで、M/G4や油圧システム3でHV走行するときのエンジンフリクションやT/M2のロスを低減することができる。例えば、油圧走行時やEV走行時に第一クラッチC1を開放状態とすることで、上記ロスを低減することができる。
【0094】
(実施形態の第2変形例)
車両制御装置1−1は、図6に示すハイブリッド車両120に適用されてもよい。図6は、本変形例に係るハイブリッド車両の概略構成を示す図である。ハイブリッド車両120のハイブリッドシステム120Aにおいて、上記実施形態のハイブリッドシステム100Aと異なる点は、THS(Toyota Hybrid System)8を備える点である。上記実施形態のハイブリッドシステム100Aと異なり、本変形例のハイブリッドシステム120Aでは、M/GがTHS8内に設けられている。
【0095】
本変形例のハイブリッドシステム120Aは、THS8と1モータの油圧システム3が並列に配置されている。THS8は、図示しないM/Gおよび遊星歯車機構等の動力分割機構を有している。エンジン1が出力する動力は、動力分割機構においてM/Gと出力軸8bとに分割可能となっている。また、THS8のM/Gは、駆動輪7に動力を出力する電動機として機能すること、およびエンジン1や駆動輪7から伝達される動力によって駆動されて発電する発電機として機能することが可能である。
【0096】
こうしたハイブリッドシステム120Aにおいても、ハイブリッド車両120が長時間停止すると予測される所定状況において、所定制御を行うことで、ハイブリッド車両120におけるエネルギーの利用効率を向上させることができる。
【0097】
上記の実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
以上のように、本発明にかかる車両制御装置は、車両の運動エネルギーを圧力に変換して蓄圧することが可能な車両においてエネルギーの利用効率を向上するのに適している。
【符号の説明】
【0099】
1−1 車両制御装置
1 エンジン
3 油圧システム
31 アキュームレータ
32 油圧ポンプモータ
4 M/G(モータジェネレータ)
5 バッテリー
6 インバータ
7 駆動輪
30 ECU
100 ハイブリッド車両
100A ハイブリッドシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運動エネルギーを作動流体の圧力に変換して蓄圧すること、および前記蓄圧された作動流体の圧力を前記車両の動力に変換して出力することが可能な変換装置と、
前記車両の運動エネルギーを電力に変換して蓄電すること、および前記蓄電された電力を前記車両の動力に変換して出力することが可能なモータジェネレータと、
を備え、
前記車両が長時間停止すると予測される所定状況において、前記変換装置による力行を前記モータジェネレータによる力行よりも優先すること、あるいは前記変換装置による回生よりも前記モータジェネレータによる回生を優先することの少なくともいずれか一方を実行する
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記所定状況は、前記車両が目的地に接近した状況、予め定められた駐車時刻に近づいた状況、あるいは現在までの走行距離が予め定められた走行距離に近づいた状況の少なくともいずれか一つを含む
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記所定状況は、前記車両が長時間停止するまでの走行距離が所定距離以下であると予測される状況、あるいは前記車両が長時間停止するまでの所要時間が所定時間以下であると予測される状況の少なくともいずれか一方を含む
請求項1または2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記車両の現在位置から前記車両が長時間停止すると予測される位置までの距離が短い場合、前記距離が長い場合よりも、前記変換装置による力行を前記モータジェネレータによる力行よりも優先する度合い、あるいは前記変換装置による回生よりも前記モータジェネレータによる回生を優先する度合いの少なくともいずれか一方を高める
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−106630(P2012−106630A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257297(P2010−257297)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】