説明

車両周辺監視装置、車両、車両周辺監視用プログラム、車両周辺監視方法

【課題】対象物の画像部分の輪郭線を精度良く抽出して、対象部の種別を判断することができる車両周辺監視装置、車両、車両周辺監視用プログラム、及び車両周辺監視方法を提供する。
【解決手段】赤外線カメラ2の撮像画像から、実空間上の対象物の画像部分を抽出する対象物画像抽出手段20と、対象物画像抽出手段20により抽出された第1の画像部分に対して、該第1の画像部分を含む所定サイズの領域を注目領域として設定する注目領域設定手段21と、前記注目領域に前記第1の画像部分以外の第2の画像部分が含まれるときに、第2の画像部分を除外する画像部分除外手段22と、前記第2の画像部分が除外された後の注目領域に対して、輪郭線抽出を行なう輪郭線抽出手段23と、輪郭線抽出手段23により抽出された輪郭線に基いて、前記第1の画像部分に対応する実空間上の対象物の種別を判断する対象物種別識別手段24とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたカメラによる車両周辺の撮像画像から、車両周辺に所在する対象物を検出して車両周辺を監視する車両周辺監視装置、車両、車両周辺監視用プログラム、及び車両周辺監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に搭載されたカメラによる車両周辺の撮像画像から、車両周辺の対象物を検出し、実空間における該対象物と車両との相対位置と相対速度を算出して、所定時間内における車両と対象物との接触可能性を判断する車両周辺監視装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、対象物の種別(人、車両、大型動物等)を識別するために、カメラにより撮像された多値画像を2値化した2値画像中の画像部分について、輪郭線抽出を行なってその形状を認識する処理が行われている。
【0004】
そして、ノイズによる輪郭線抽出の精度の低下を防止するために、カメラの撮像画像に含まれる対象物の画像部分について、該画像部分を縮小したサンプル画像を作成し、該サンプル画像をもとのサイズに拡大した画像の位置を初期位置として、スネークスアルゴリズムによる輪郭線抽出を行なう手法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
この手法によれば、対象物の画像部分に対して、ノイズの画像部分が小さいときには、ノイズによる拘束を回避して対象物の画像部分の輪郭線を抽出することができる。しかし、ノイズの画像部分の大きさが対象物の画像部分と同じ位であるときには、サンプル画像を作成するときにノイズが除去されず、ノイズの画像部分を含めて輪郭線が抽出されてしまう。
【0006】
また、カメラの撮像画像を、画像の色やテクスチャに基いて領域分割すると共に、撮像画像の動きベクトルに基いて領域分割し、各領域を統合した領域の輪郭線を初期位置といて、スネークスアルゴリズムによる輪郭線抽出を行なう手法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
この手法によれば、動いている対象物と背景を分離して、該対象物の輪郭線を抽出することができる。しかし、例えば、静止した二人の歩行者が並んでいて速度差がなく、二人の歩行者の画像部分が統合されたときには、二人の歩行者を囲んだ形の輪郭線が抽出されてしまう。
【0008】
そして、このように、対処物の画像部分以外の画像部分を含む領域についての輪郭線が抽出されたときには、この輪郭線に基いて対象物の種別を精度良く識別することができないという不都合がある。
【特許文献1】特開2001−6069号公報
【特許文献2】特開平6−139355号公報
【特許文献3】特開2001−266158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記背景を鑑みてなされたものであり、対象物の画像部分の輪郭線を精度良く抽出して、対象部の種別を識別することができる車両周辺監視装置、車両、車両周辺監視用プログラム、及び車両周辺監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、本発明の画像周辺監視装置は、車両に搭載されて該車両の周辺を撮像するカメラによる撮像画像に基いて、車両周辺を監視する車両周辺監視装置に関する。
【0011】
そして、前記カメラの撮像画像から、実空間上の対象物の画像部分を抽出する対象物画像抽出手段と、前記対象物画像抽出手段により抽出された第1の画像部分に対して、該第1の画像部分を含む所定サイズの領域を注目領域として設定する注目領域設定手段と、前記注目領域に、前記第1の画像部分以外の第2の画像部分が含まれるときに、前記注目領域から該第2の画像部分を除外する画像部分除外手段と、前記画像部分除外手段により前記第2の画像部分が除外された後の前記注目領域に対して、エッジ点抽出による輪郭線抽出を行なう輪郭線抽出手段と、前記輪郭線抽出手段により抽出された輪郭線に基いて、前記第1の画像部分に対応する実空間上の対象物の種別を判断する対象物種別識別手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の車両は、周辺を撮像するカメラを備え、該カメラによる撮像画像に基いて車両周辺を監視する機能を有する車両に関する。
【0013】
そして、前記カメラの撮像画像から、実空間上の対象物の画像部分を抽出する対象物画像抽出手段と、前記対象物画像抽出手段により抽出された第1の画像部分に対して、該第1の画像部分を含む所定サイズの領域を注目領域として設定する注目領域設定手段と、前記注目領域に、前記第1の画像部分以外の第2の画像部分が含まれるときに、前記注目領域から該第2の画像部分を除外する画像部分除外手段と、前記画像部分除外手段により前記第2の画像部分が除外された後の前記注目領域に対して、エッジ点抽出による輪郭線抽出を行なう輪郭線抽出手段と、前記輪郭線抽出手段により抽出された輪郭線に基いて、前記第1の画像部分に対応する実空間上の対象物の種別を判断する対象物種別識別手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
かかる本発明の車両周辺監視装置及び本発明の車両によれば、前記注目領域設定手段により、前記第1の画像部分を含む所定サイズの領域が、前記注目領域として設定される。そして、前記注目領域に前記第1の画像部分以外の第2の画像部分が含まれるときには、前記画像部分除去手段により該第2の画像部分が除外される。このようにして、前記第1の画像部分以外の前記第2の画像部分が除去された前記注目領域に対して、前記輪郭線抽出手段により輪郭線抽出が行なわれる。
【0015】
この場合、前記注目領域に所在する前記第1の画像部分について、前記第2の画像部分が存在することによる影響を排除して、その輪郭線を精度良く抽出することができる。そして、このようにして抽出された輪郭線に基いて、前記対象物種別識別手段により、前記第1の画像部分に対応する実空間上の対象物の種別を精度良く識別することができる。
【0016】
また、前記カメラと対象物との距離を検出する距離検出手段を備え、前記注目領域設定手段は、前記距離検出手段により検出された前記カメラとの距離が所定範囲にある対象物の画像部分を、前記第1の画像部分として、前記注目領域を設定することが好ましい。
【0017】
この場合には、前記カメラとの距離が前記所定範囲内であって監視する必要がある対処物に限定して前記注目領域を設定し、効率良く前記画像部分除外手段による前記第2の画像部分の除外と、前記輪郭線抽出手段による輪郭線抽出と、前記対象物種別識別手段による対象物の種別の識別とを行なうことができる。
【0018】
また、前記画像部分除去手段は、前記第2の画像部分の輝度を所定の2値化閾値以下に変換して、該2値化閾値による前記注目領域の2値化処理を行うことにより、前記第2の画像部分を除去した前記注目領域の2値画像を生成し、前記輪郭線抽出手段は、前記第2の画像部分が除去された後の前記注目領域の2値画像に対して、エッジ点抽出による輪郭線抽出処理を行うことが好ましい。
【0019】
この場合には、前記注目領域の2値化処理に伴って、前記注目領域から前記第2の画像部分を容易に除外することができる。
【0020】
次に、本発明の車両周辺監視用プログラムは、車両に搭載されて該車両の周囲を撮像するカメラによる撮像画像のデータにアクセスする手段を有するコンピュータに、該撮像画像に基いて該車両の周辺を監視する機能を実現するプログラムに関する。
【0021】
そして、該コンピュータを、前記カメラの撮像画像から、実空間上の対象物の画像部分を抽出する対象物画像抽出手段と、前記対象物画像抽出手段により抽出された第1の画像部分に対して、該第1の画像部分を含む所定サイズの領域を注目領域として設定する注目領域設定手段と、前記注目領域に、前記第1の画像部分以外の第2の画像部分が含まれるときに、前記注目領域から該第2の画像部分を除外する画像部分除外手段と、前記画像部分除外手段により前記第2の画像部分が除外された後の前記注目領域に対して、エッジ点抽出による輪郭線抽出を行なう輪郭線抽出手段と、前記輪郭線抽出手段により抽出された輪郭線に基いて、前記第1の画像部分に対応する実空間上の対象物の種別を判断する対象物種別識別手段として機能させることを特徴とする。
【0022】
かかる本発明の車両周辺監視用プログラムを前記コンピュータに実行させることによって、前記本発明の車両周辺監視装置及び前記車両における、前記対象物画像抽出手段と、前記注目領域設定手段と、前記画像部分除外手段と、前記輪郭線抽出手段と、前記対象物種別識別手段とを構成することができる。
【0023】
次に、本発明の車両周辺監視方法は、車両に搭載されて該車両の周囲を撮像するカメラによる撮像画像のデータにアクセスする手段を有するコンピュータにより、該撮像画像に基いて該車両の周辺を監視する方法に関する。
【0024】
そして、前記コンピュータが、前記カメラの撮像画像から、実空間上の対象物の画像部分を抽出する対象物画像抽出ステップと、前記コンピュータが、前記対象物画像抽出手段により抽出された第1の画像部分に対して、該第1の画像部分を含む所定サイズの領域を注目領域として設定する注目領域設定ステップと、前記コンピュータが、前記注目領域に、前記第1の画像部分以外の第2の画像部分が含まれるときに、前記注目領域から該第2の画像部分を除外する画像部分除外ステップと、前記コンピュータが、前記画像部分除外手段により前記第2の画像部分が除外された後の前記注目領域に対して、エッジ点抽出による輪郭線抽出を行なう輪郭線抽出ステップと、前記コンピュータが、前記輪郭線抽出手段により抽出された輪郭線に基いて、前記第1の画像部分に対応する実空間上の対象物の種別を判断する対象物種別識別ステップとを含むことを特徴とする。
【0025】
かかる本発明の車両周辺監視方法によれば、前記注目領域設定ステップにより、前記第1の画像部分を含む所定サイズの領域が、前記注目領域として設定される。そして、前記注目領域に前記第1の画像部分以外の第2の画像部分が含まれるときには、前記画像部分除去ステップにより該第2の画像部分が除外される。このようにして、前記第1の画像部分以外の前記第2の画像部分が除去された前記注目領域に対して、前記輪郭線抽出ステップにより輪郭線抽出が行なわれる。
【0026】
この場合、前記注目領域に所在する前記第1の画像部分について、前記第2の画像部分が存在することによる影響を排除して、その輪郭線を精度良く抽出することができる。そして、このようにして抽出された輪郭線に基いて、前記対象物種別識別ステップにより、前記第1の画像部分に対応する実空間上の対象物の種別を精度良く識別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の実施の形態について、図1〜図5を参照して説明する。図1は本発明の車両周辺監視装置の構成図であり、本発明の車両周辺監視装置は、画像処理ユニット1と、遠赤外線を検出可能な赤外線カメラ(本発明のカメラに相当する)2と、車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサ3と、車両の走行速度を検出する車速センサ4と、音声により警報を行うためのスピーカ6と、対象物を運転者に視認させる表示を行うためのヘッドアップディスプレイ(以下、HUDという)7と、赤外線カメラ2と対象物との距離を検出するミリ波レーダ装置8とを備えている。
【0028】
図2を参照して、赤外線カメラ2は、車両10の前部に配置されている。また、赤外線カメラ2は、ミリ波レーダ装置8の付近に、路面からの高さを等しくして固定されている。なお、赤外線カメラ2は、撮像物の温度が高いほど出力レベルが高くなる(輝度が大きくなる)特性を有している。また、表示装置7は、車両10のフロントウィンドウの運転者側の前方位置に画面7aが表示されるように設けられている。
【0029】
また、ミリ波レーダ装置8は、ミリ波のビームを車両10の前方に送信し、このミリ波の反射波(車両10の前方に存在する物体で反射したミリ波)を受信する。ミリ波レーダ装置8のビームの走査範囲は、赤外線カメラ2の撮像範囲(視野角の範囲)を含むように設定されている。
【0030】
ミリ波レーダ装置8は、受信した反射波のうちの所定強度以上の反射波に基いて、ビームの送信方向に存在する対象物を検出する。また、ミリ波レーダ装置8は、送信波と受信波との時間差に基いて、ミリ波を反射した対象物と赤外線カメラ2との距離を検出する。
【0031】
図1を参照して、画像処理ユニット1は、マイクロコンピュータ(図示しない、本発明のコンピュータに相当する)等により構成された電子ユニットであり、赤外線カメラ2から出力されるアナログの映像信号をデジタルデータに変換して画像メモリ(図示しない)に取り込み、インターフェース回路(図示しない、本発明の撮像画像にアクセスする手段に相当する)を介して、該画像メモリに取り込んだ車両前方の画像に対して該マイクロコンピュータにより各種演算処理を行う機能を有している。
【0032】
そして、該マイクロコンピュータに、本発明の車両周辺監視用プログラムを実行させることによって、該マイクロコンピュータが、赤外線カメラ2の撮像画像から対象物の画像部分を抽出する対象物画像抽出手段20、撮像画像に含まれる画像部分に対応した実空間上の位置と赤外線カメラ2との距離(実空間距離)を検出する距離検出手段25、対象物画像抽出手段20により抽出された画像部分(第1の画像部分)を含む該画像部分の周辺領域を注目領域として設定する注目領域設定手段21、該注目領域に存在する第1の画像部分以外の画像部分(第2の画像部分)を除外する画像部分除外手段22、他の画像部分が除外された後の注目領域に対して輪郭線抽出を行う輪郭線抽出手段23、及び輪郭線抽出手段23により抽出された輪郭線に基いて、第1の画像部分に対応する実空間上の対象物の種別を識別する対象物種別識別手段24として機能する。
【0033】
また、該マイクロコンピュータにより、本発明の車両周辺監視方法の各ステップが実行される。
【0034】
画像処理ユニット1は、赤外線カメラ2から出力される車両周辺の赤外線画像のアナログ信号を入力し、該アナログ信号をA/D(アナログ/デジタル)変換によりデジタル化した多値(グレースケール)画像を画像メモリ(図示しない)に格納する。
【0035】
そして、画像処理ユニット1は、右画像に含まれる画像部分に対応する実空間上の対象物の種別を識別する処理を行う。以下、図3に示したフローチャートに従って、この処理について説明する。
【0036】
図3のSTEP1は距離検出手段25による処理であり、距離検出手段25は、ミリ波レーダ装置8から出力される走査箇所の測距データに基いて、車両周辺の対象物と赤外線カメラ2との距離Zを検出する。
【0037】
また、STEP2〜STEP3は対象物画像抽出手段20による処理である。対象物画像抽出手段20は、STEP2で赤外線カメラ2による赤外線画像を入力して画像メモリに取り込み、STEP3で、赤外線カメラ2との距離が所定範囲以内である対象物の画像部分を抽出する。なお、対象物画像抽出手段20により対象物の画像部分を抽出する処理は、本発明の車両周辺監視方法における対象物抽出ステップに相当する。
【0038】
続くSTEP4は注目領域設定手段4による処理である。注目領域設定手段4は、STEP3で抽出された画像部分の中から選択された第1の画像部分を含む画像領域を、注目領域として設定する。本実施の形態では、対象物の種別が歩行者であるか否かを識別するので、注目領域設定手段21は、歩行者を識別対象とする注目領域を設定する。なお、注目領域設定手段21により注目領域を設定する処理は、本発明の車両周辺監視方法における注目領域設定ステップに相当する。
【0039】
具体的には、注目領域設定手段22は、歩行者の身長の想定値(例えば170cm)よりも若干高く設定した基準値GHと、歩行者の幅の想定値(例えば60cm)よりも若干広く設定した基準値GWと、第1の画像部分に対応する実空間上の対象物と赤外線カメラ2との距離Zとに基いて、以下の式(1),式(2)により、注目領域の高さghと幅gwとを算出する。
【0040】
【数1】

【0041】
【数2】

【0042】
但し、f:赤外線カメラ2の焦点距離、p:赤外線カメラ2の撮像素子の画素間隔、GH:歩行者の身長を想定した基準値、GW:歩行者の幅を想定した基準値、Z:赤外線カメラ2と対象物との距離。
【0043】
ここで、図4(a)は、赤外線カメラ2の撮像画像を2値化した2値画像30について、対象物の画像部分31,32,33,34が抽出され、第1の画像部分として画像部分31が選択されて、第1の画像部分31の注目領域31aが設定された例を示したものである。
【0044】
図4(a)の注目領域31aには、第1の画像部分31の他に、他の画像部分(第2の画像部分)32の一部が含まれている。そして、このように、注目領域31aに、第1の画像部分31の他に第2の画像部分32が含まれていると、注目領域31aに対してエッジ抽出による輪郭線抽出を行なったときに、第2の画像部分32の影響を受けて第1の画像部分31の輪郭線を精度良く抽出することができない。
【0045】
例えば、図5(a)は、歩行者の第1の画像部分50が抽出されて、第1の画像部分50に対する注目領域50aが設定されたときに、注目領域50aに第2の画像部分51が含まれていた場合を示している。この場合には、注目領域50aに対してエッジ点抽出によるスネークスアルゴリズム等による輪郭線抽出を行なったときに、第2の画像部分51を含んだ形についての輪郭線50bが抽出されてしまう。
【0046】
そして、このようにして抽出された輪郭線50bは、歩行者の画像部分50の形状を反映しないものとなる。そのため、輪郭線50bに基いて対象物の種別を識別したときには、画像部分50に対応する実空間上の対象物が、歩行者ではないと誤って識別されてしまう。
【0047】
そこで、画像部分除外手段22は、図5(a)に示したように、注目領域50aに、第1の画像部分50以外の第2の画像部分51が含まれているときには、第2の画像部分51を除外する処理を行う。
【0048】
図5(b)は、第2の画像部分51を除外した後の注目領域60に対して、輪郭線抽出を行なった場合を示したものである。図5(b)では、第2の画像部分51を除外されているため、歩行者の画像部分50の形状を反映した輪郭線60bが抽出されている。そして、画像部分50の形状を反映した輪郭線60bを精度良く抽出することができ、輪郭線60bの形状に基いて、画像部分50に対応する実空間所の対象物が歩行者であると精度良く識別することができる。
【0049】
STEP5で、画像部分除外手段22は、撮像画像中の各画像部分にIDを付するラベリングを行なう。そして、STEP6で、画像部分除外手段22は、注目領域を設定した第1の画像部分のID以外のIDが付された第2の画像部分が注目領域に含まれる場合は、多値画像におけるこの第2の画像部分の輝度を低輝度(2値化閾値よりも低い輝度)に変換した上で、該多値画像の2値化を行う。これにより、注目領域における第2の画像部分が0(黒)となって、注目領域から第2の画像部分が除外される。
【0050】
ここで、図4(b)は、図4(a)の2値画像30の原画像(多値画像)に対して、注目領域31aに含まれる第2の画像部分32の輝度を2値化閾値よりも低い輝度に変換した上で、該2値化閾値による2値化処理を行って生成された2値画像40を示している。図4(b)の2値画像40においては、第2の画像部分32が除外されて、注目領域31aに第1の画像部分31のみが存在する状態となっている。
【0051】
なお、対象物種別識別手段24により注目領域から第2の画像部分を除外する処理は、本発明の車両周辺監視方法における画像部分除外ステップに相当する。
【0052】
続くSTEP7は輪郭線抽出手段23による処理である。輪郭線抽出手段23は、STEP7で第2の画像部分が除外された後の注目領域に対して、エッジ点抽出によるスネークスアルゴリズム等の輪郭線抽出処理をおこう。これにより、図5(a),図5(b)を参照して上述したように、第1の画像部分の形状を反映した輪郭線が抽出される。
【0053】
なお、輪郭線抽出手段23により注目領域に対する輪郭線を抽出する処理は、本発明の車両周辺監視方法における輪郭線抽出ステップに相当する。
【0054】
続くSTEP8は対象物種別識別手段24による処理である。対象物種別識別手段24は、STEP7で抽出された輪郭線が、予め設定した歩行者の特徴形状(高さ、幅、縦横比等)を有するか否かを判定することにより、第1の画像部分に対応する実空間上の対象物が歩行者であるか否かを識別する。
【0055】
なお、対象物種別識別手段24により第1の画像部分に対応する実空間上の対象物の種別が歩行者であるか否かを識別する処理は、本発明の車両周辺監視方法における対象物種別識別ステップに相当する。
【0056】
次のSTEP9で、他の注目領域があるか否かが判断され、他の注目領域があるときには、STEP6にもどって、他の注目領域についてSTEP6〜STEP8による第2の画像部分の除外→注目領域に対する輪郭線抽出→歩行者識別という一連の処理が実行される。
【0057】
そして、画像処理ユニット1は、対象物種別識別手段24により、第1の画像部分に対応する実空間上の対象物が歩行者であると識別されたときには、スピーカ6からの音声出力及びHUD7への表示により、運転者に対する注意喚起を行なう。
【0058】
なお、本実施の形態では、注目領域設定手段22により、監視する対象物(歩行者)の大きさの想定値(身長の想定値に基くGH、幅の想定値に基くGW)と、対象物と赤外線カメラ2との距離Zとに基いて、注目領域を設定したが、対象物の大きさの想定値のみによって注目領域を設定するようにしてもよい。
【0059】
また、本実施の形態では、ミリ波レーダ装置8を用いて対象物と赤外線カメラ2との距離を算出したが、レーザーレーダ等の他の種類の測距装置を用いてもよい。或いは、本実施の形態では1台の赤外線カメラを用いる場合について説明したが、2台の赤外線カメラを用いて、2台の赤外線カメラによる同一の対象物の画像部分の水平方向のずれ(視差)に基いて、実空間における対象物と赤外線カメラとの距離を検出するようにしてもよい。この場合には、車速センサ4により検出される車速VCAR及びヨーレートセンサ3により検出されるヨーレートYRを読み込んで、ヨーレートYRを時間積分することにより車両10の回頭角を算出し、回頭角補正により実空間(図2のX,Y,Zの座標値)の補正を行なってもよい。
【0060】
また、1台のカメラによる異なる時点の撮像画像中の同一対象物の画像部分のサイズの変化から、対象物とカメラとの距離を検出するようにしてもよい。
【0061】
また、本実施の形態においては、車両前方を撮像する構成を示したが、車両の後方や側方等、他の方向を撮像して車両の周辺を監視する構成としてもよい。
【0062】
また、本実施の形態においては、本発明のカメラとして赤外線カメラ2を用いたが、可視画像を撮像する可視カメラを用いてもよい。
【0063】
また、本実施の形態では、対象物が歩行者であることを識別したが、対象物が鹿等の大型動物や、人口構造物であることを識別する場合についても、本発明の適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の車両周辺監視装置の構成図。
【図2】図1に示した車両周辺監視装置の車両への取り付け態様の説明図。
【図3】図1に示した画像処理ユニットにおける対象物種別の識別処理のフローチャート。
【図4】注目領域の設定及び注目領域から第2の画像部分を除外する処理の説明図。
【図5】注目領域における輪郭線抽出の説明図。
【符号の説明】
【0065】
1…画像処理ユニット、2…赤外線カメラ(カメラ)、3…ヨーレートセンサ、4…車速センサ、6…スピーカ、7…HUD、8…ミリ波レーダ装置、20…対象物画像抽出装置、21…注目領域設定手段、22…画像部分除外手段、23…輪郭線抽出手段、24…対象物種別識別手段、25…距離検出手段、31…第1の画像部分、31a…注目領域、32…第2の画像部分、50…第1の画像部分、50a…注目領域、50b…第1の画像部分及び第2の画像部分の輪郭線、51…第2の画像部分、60…注目領域、60b…第1の画像部分の輪郭線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されて該車両の周辺を撮像するカメラによる撮像画像に基いて、車両周辺を監視する車両周辺監視装置において、
前記カメラの撮像画像から、実空間上の対象物の画像部分を抽出する対象物画像抽出手段と、
前記対象物画像抽出手段により抽出された第1の画像部分に対して、該第1の画像部分を含む所定サイズの領域を注目領域として設定する注目領域設定手段と、
前記注目領域に、前記第1の画像部分以外の第2の画像部分が含まれるときに、前記注目領域から該第2の画像部分を除外する画像部分除外手段と、
前記画像部分除外手段により前記第2の画像部分が除外された後の前記注目領域に対して、輪郭線抽出を行なう輪郭線抽出手段と、
前記輪郭線抽出手段により抽出された輪郭線に基いて、前記第1の画像部分に対応する実空間上の対象物の種別を判断する対象物種別識別手段とを備えたことを特徴とする車両周辺監視装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両周辺監視装置において、
前記カメラと対象物との距離を検出する距離検出手段を備え、
前記注目領域設定手段は、前記距離検出手段により検出された前記カメラとの距離が所定範囲にある対象物の画像部分を、前記第1の画像部分として、前記注目領域を設定することを特徴とする車両周辺監視装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の車両周辺監視装置において、
前記画像部分除去手段は、前記第2の画像部分の輝度を所定の2値化閾値以下に変換して、該2値化閾値による前記注目領域の2値化処理を行うことにより、前記第2の画像部分を除去した前記注目領域の2値画像を生成し、
前記輪郭線抽出手段は、前記第2の画像部分が除去された後の前記注目領域の2値画像に対して、エッジ点抽出による輪郭線抽出処理を行うことを特徴とする車両周辺監視装置。
【請求項4】
周辺を撮像するカメラを備え、該カメラによる撮像画像に基いて車両周辺を監視する機能を有する車両において、
前記カメラの撮像画像から、実空間上の対象物の画像部分を抽出する対象物画像抽出手段と、
前記対象物画像抽出手段により抽出された第1の画像部分に対して、該第1の画像部分を含む所定サイズの領域を注目領域として設定する注目領域設定手段と、
前記注目領域に、前記第1の画像部分以外の第2の画像部分が含まれるときに、前記注目領域から該第2の画像部分を除外する画像部分除外手段と、
前記画像部分除外手段により前記第2の画像部分が除外された後の前記注目領域に対して、輪郭線抽出を行なう輪郭線抽出手段と、
前記輪郭線抽出手段により抽出された輪郭線に基いて、前記第1の画像部分に対応する実空間上の対象物の種別を判断する対象物種別識別手段とを備えたことを特徴とする車両。
【請求項5】
車両に搭載されて該車両の周囲を撮像するカメラによる撮像画像のデータにアクセスする手段を有するコンピュータに、該撮像画像に基いて該車両の周辺を監視する機能を実現するプログラムであって、該コンピュータを、
前記カメラの撮像画像から、実空間上の対象物の画像部分を抽出する対象物画像抽出手段と、
前記対象物画像抽出手段により抽出された第1の画像部分に対して、該第1の画像部分を含む所定サイズの領域を注目領域として設定する注目領域設定手段と、
前記注目領域に、前記第1の画像部分以外の第2の画像部分が含まれるときに、前記注目領域から該第2の画像部分を除外する画像部分除外手段と、
前記画像部分除外手段により前記第2の画像部分が除外された後の前記注目領域に対して、輪郭線抽出を行なう輪郭線抽出手段と、
前記輪郭線抽出手段により抽出された輪郭線に基いて、前記第1の画像部分に対応する実空間上の対象物の種別を判断する対象物種別識別手段として機能させることを特徴とする車両周辺監視用プログラム。
【請求項6】
車両に搭載されて該車両の周囲を撮像するカメラによる撮像画像のデータにアクセスする手段を有するコンピュータにより、該撮像画像に基いて該車両の周辺を監視する方法であって、
前記コンピュータが、前記カメラの撮像画像から、実空間上の対象物の画像部分を抽出する対象物画像抽出ステップと、
前記コンピュータが、前記対象物画像抽出手段により抽出された第1の画像部分に対して、該第1の画像部分を含む所定サイズの領域を注目領域として設定する注目領域設定ステップと、
前記コンピュータが、前記注目領域に、前記第1の画像部分以外の第2の画像部分が含まれるときに、前記注目領域から該第2の画像部分を除外する画像部分除外ステップと、
前記コンピュータが、前記画像部分除外手段により前記第2の画像部分が除外された後の前記注目領域に対して、輪郭線抽出を行なう輪郭線抽出ステップと、
前記コンピュータが、前記輪郭線抽出手段により抽出された輪郭線に基いて、前記第1の画像部分に対応する実空間上の対象物の種別を判断する対象物種別識別ステップとを含むことを特徴とする車両周辺監視方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−193390(P2009−193390A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33989(P2008−33989)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】