説明

車両用クラッチ装置

【課題】フライホイールを必要とせずに、内燃機関の自立運転時に生じる振動及びノイズを低減すること。
【解決手段】クラッチ装置20は、摩擦材21と、プレート22と、係合機構と、第2クラッチ装置とを備える。摩擦材21は、内燃機関11と連結される。プレート22は、トルクコンバータ13と連結される。係合機構は、摩擦材21とプレート22とを係合させる。第2クラッチ装置は、トルクコンバータ13と車輪との間に設けられて、内燃機関11の自立運転時に、トルクコンバータ13と車輪との間における回転力の伝達を遮断する。そして、係合機構は、内燃機関11の自立運転時に、摩擦材21とプレート22とを係合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用クラッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両(HV:Hybrid Vehicle)は、作動原理が異なる二つ以上の動力源として内燃機関とモータとを備えるものがある。そして、ハイブリッド車両は、状況によって2つの駆動源のうちのどちらか一方、または両方を用いて走行する。このようなハイブリッド車両は、例えば、特許文献1に開示されている技術のように、内燃機関と電動機との間にクラッチ装置を備えるものがある。前記クラッチ装置は、例えば、第1回転部材と、第2回転部材と、油圧室と、ピストンとを有する。クラッチ装置は、油圧室に作動油が導かれ、ピストンがストロークすることにより、第1回転部材と第2回転部材とを係合させる。これにより、クラッチ装置は、車輪側の回転力、すなわち、電動機が発生する回転力と、車輪から伝わる回転力とのうち少なくとも一方を内燃機関に伝達できる。
【0003】
ここで、ハイブリッド車両に備えられる内燃機関は、例えば、排気ガスを浄化するための触媒の温度を迅速に上昇させるため、暖気運転がなされる場合がある。暖気運転時、前記内燃機関は、自立運転(アイドリング)する。ここでは、前記自立運転を、車輪に回転力が伝わらない状態での内燃機関の運転とする。この自立運転時に生じる振動及びノイズを低減するために、例えば、特許文献1に開示されている技術は、内燃機関の出力軸に設けられるフライホイールを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−001165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フライホイールは、内燃機関が発生する機関回転力で回転する回転部材の中でも、比較的質量が大きい。また、特許文献1に開示されている技術は、フライホイールが取り付けられるためのスペースが確保される必要がある。これにより、特許文献1に開示されている技術は、機関回転力を伝達するための動力伝達機構の質量が増加したり、前記動力伝達機構が大型化するおそれがあったりする。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、フライホイールを必要とせずに、内燃機関の自立運転時に生じる振動及びノイズを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る車両用クラッチ装置は、車両に搭載される内燃機関と連結され、前記内燃機関が発生する機関回転力が伝達される第1回転部材と、前記機関回転力を流体により伝達する流体伝達装置を介して前記車両の車輪と連結される第2回転部材と、前記第1回転部材と前記第2回転部材との少なくとも一方に回転軸方向の推力を与えて、前記第1回転部材と前記第2回転部材とを係合させる係合機構と、前記流体伝達装置と前記車輪との間に設けられて、前記車両が停止しているときの前記内燃機関の自立運転時に、前記流体伝達装置と前記車輪との間における回転力の伝達を遮断する回転力遮断装置と、を備え、前記係合機構は、前記内燃機関の自立運転時に、前記第1回転部材と前記第2回転部材とを係合させることを特徴とする。
【0008】
本発明の好ましい態様としては、前記第2回転部材は、前記流体伝達装置との間にモータジェネレータが介在されることが望ましい。
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る車両用クラッチ装置は、車両に搭載される内燃機関と連結され、前記内燃機関が発生する機関回転力が伝達される第1回転部材と、モータジェネレータを介して前記車両の車輪と連結される第2回転部材と、前記第1回転部材と前記第2回転部材との少なくとも一方に回転軸方向の推力を与えて、前記第1回転部材と前記第2回転部材とを係合させる係合機構と、前記モータジェネレータと前記車輪との間に設けられて、前記車両が停止しているときの前記内燃機関の自立運転時に、前記モータジェネレータと前記車輪との間における回転力の伝達を遮断する回転力遮断装置と、を備え、前記係合機構は、前記内燃機関の自立運転時に、前記第1回転部材と前記第2回転部材とを係合させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、フライホイールを必要とせずに、内燃機関の自立運転時に生じる振動及びノイズを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、ハイブリッド車両の構成を模式的に示す説明図である。
【図2】図2は、クランクシャフトの回転軸を含む面におけるクラッチ装置及びクラッチ装置の周辺の構成要素を示す断面図である。
【図3】図3は、制御装置が有する機能を示すブロック図である。
【図4】図4は、制御装置が実行する一連の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る車両用クラッチ装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0013】
(実施形態)
図1は、ハイブリッド車両の構成を模式的に示す説明図である。以下、車両用クラッチ装置を備える車両としてハイブリッド車両10の構成を説明する。なお、車両はハイブリッド車両に限定されない。図1に示す本実施形態のハイブリッド車両10は、内燃機関11と、クラッチ装置20と、モータジェネレータとしての電動機12と、トルクコンバータ13と、前後進切換機構14と、変速装置15と、減速装置16と、差動装置17と、ドライブシャフト18と、車輪19と、制御装置40とを含む。内燃機関11は、導かれる燃料に点火して機関回転力出力軸11aを回転させるものである。内燃機関11は、レシプロ式でもよいし、ロータリー式でもよい。
【0014】
電動機12は、電気が供給されることでロータ12aを回転させるものである。なお、ロータ12aは、回転力を出力するのみではなく、例えば内燃機関11が発生する機関回転力や、後述する車輪19からの車輪回転力が入力される場合もある。クラッチ装置20は、機関回転力出力軸11aとロータ12aとを連結可能にするものである。クラッチ装置20は、機関回転力出力軸11aとロータ12aとの間で回転力を伝達する場合(クラッチ装置の係合)と、機関回転力出力軸11aとロータ12aと間での回転力の伝達を遮断する場合(クラッチ装置の開放)とがある。クラッチ装置20のより詳細な説明は後述する。
【0015】
流体伝達装置としてのトルクコンバータ13は、機関回転力出力軸11aから伝えられた機関回転力(トルク)や、ロータ12aから伝えられたモータ回転力(トルク)を増幅して前後進切換機構14に伝える。前後進切換機構14は、トルクコンバータ13から入力された回転力(機関回転力とモータ回転力とのうち少なくとも一方を含む回転力)の回転方向を切り替えできる。変速装置15は、前後進切換機構14から入力された回転力の回転速度を調節する。減速装置16は、変速装置15から入力された回転力を減速する。差動装置17は、ハイブリッド車両10が旋回中に、各車輪19の回転速度差を低減する。ドライブシャフト18は、差動装置17から入力された回転力を車輪19へ伝える。制御装置40については後述する。
【0016】
上記構成により、例えば、電動機12が発生するモータ回転力は、トルクコンバータ13と、前後進切換機構14と、変速装置15と、減速装置16と、差動装置17と、ドライブシャフト18とを順に介して車輪19に伝えられる。また、ハイブリッド車両10は、クラッチ装置20が係合すると、電動機12が発生するモータ回転力や、車輪19からの車輪回転力がクラッチ装置20を介して機関回転力出力軸11aに入力される。これにより、内燃機関11の機関回転力出力軸11aが回転して内燃機関11が始動する。内燃機関11が始動すると、内燃機関11が発生する機関回転力は、クラッチ装置20と、トルクコンバータ13と、前後進切換機構14と、変速装置15と、減速装置16と、差動装置17と、ドライブシャフト18とを順に介して車輪19に伝えられる。
【0017】
ハイブリッド車両10は、内燃機関11が発生する機関回転力のみによって走行する場合、ロータ12aが空転して内燃機関11が発生する機関回転力をトルクコンバータ13へ伝える。以上により、ハイブリッド車両10は、車輪19が回転して走行可能となる。また、ハイブリッド車両10は、制動時に回生制動(回生ブレーキ)により、電動機12が発電できる。この場合、車輪19の車輪回転力は、差動装置17と、減速装置16と、変速装置15と、前後進切換機構14と、トルクコンバータ13とを介して電動機12に入力される。この車輪回転力によって、電動機12は発電できる。また、車輪回転力が電力に変換されることにより、ハイブリッド車両10は、制動できる。
【0018】
図2は、クランクシャフトの回転軸を含む面におけるクラッチ装置及びクラッチ装置の周辺の構成要素を示す断面図である。クラッチ装置20は、図3に示す第1クラッチ装置20aと、図1に示す回転力遮断装置としての第2クラッチ装置20bとを含む。第1クラッチ装置20aは、図2に示す第1回転部材としての摩擦材21と、第2回転部材としてのプレート22と、第1係合機構とを含む。さらに、第1係合機構は、スナップリング23と、ピストン24と、油圧室25と、リターンスプリング26とを含む。摩擦材21及びプレート22は、それぞれ回転軸Zrを中心に回転できる。本実施形態では、摩擦材21及びプレート22は、回転軸Zr方向に交互に、それぞれ複数設けられる。摩擦材21及びプレート22は、それぞれ回転軸Zr方向に移動できるように設けられる。
【0019】
機関回転力出力軸11aからの機関回転力は、図2に右肩上がりの斜線で示す回転部材群28を介して摩擦材21に伝えられる。すなわち、摩擦材21は、内燃機関11に連結される。また、摩擦材21が回転軸Zrを中心に回転すると、摩擦材21の回転力は回転部材群28を介して機関回転力出力軸11aに伝えられる。ロータ12aからのモータ回転力は、図2に右肩下がりの斜線で示す回転部材群29を介してプレート22に伝えられる。また、プレート22が回転軸Zrを中心に回転すると、プレート22の回転力(車輪回転力)は回転部材群29を介してロータ12aに伝えられる。すなわち、プレート22は、電動機12を介して車輪19と連結される。
【0020】
スナップリング23は、回転軸Zr方向に移動しないように、回転部材群29のドラム29aに設けられる。スナップリング23は、プレート22と接触して、プレート22及び摩擦材21の回転軸Zr方向の移動を規制する。ピストン24は、スナップリング23との間に複数の摩擦材21及び複数のプレート22を回転軸Zr方向で挟むように設けられる。ピストン24は、回転軸Zr方向に移動できるように設けられて、プレート22を回転軸Zr方向に押し付ける。以下、ピストン24がプレート22に与える回転軸Zr方向に押し付ける力を推力という。
【0021】
油圧室25は、ピストン24とドラム29aとで囲まれた空間である。油圧室25は、オイルパン25cからオイルポンプ25bによって吸引された作動油が油路25aを介して導かれる。油圧室25に作動油が充填され、さらに油圧室25に作動油が導かれると、作動油はその圧力でピストン24をスナップリング23側に押し付ける。すなわち、油圧室25は、ピストン24を介して摩擦材21及びプレート22に推力を与える。リターンスプリング26は、推力とは反対方向の力をピストン24に与える。推力とは反対方向の力とは、ピストン24がスナップリング23から離れる方向の力である。以下、リターンスプリング26がピストン24に与える力を離反力という。
【0022】
油圧室25がピストン24に与える推力が、リターンスプリング26がピストン24に与える離反力よりも大きくなると、摩擦材21及びプレート22は、推力によって回転軸Zr方向に移動する。これにより、第1クラッチ装置20aは、摩擦材21とプレート22との間の隙間が小さくなる。そして、離反力よりも大きい推力が摩擦材21及びプレート22に与えられると、第1クラッチ装置20aは、摩擦材21とプレート22とが互いに接触する。この状態で、油圧室25が離反力と等しい推力を摩擦材21及びプレート22に与えると、摩擦材21及びプレート22は、互いに接触した状態が維持される。
【0023】
さらに、離反力よりも大きい推力が摩擦材21及びプレート22に与えられると、第1クラッチ装置20aは、摩擦材21とプレート22との間に摩擦力が生じる。第1クラッチ装置20aは、この摩擦力が係合力となる。この係合力により、第1クラッチ装置20aは、摩擦材21とプレート22とが係合する。ここでいう係合には、2つの状態が含まれる。1つは、摩擦材21とプレート22とが相対的に回転し、すなわち、摩擦材21とプレート22とがスリップし、かつ、摩擦材21とプレート22との間で回転力が伝達されている状態、いわゆる半係合である。もう1つは、摩擦材21とプレート22とが相対的に回転せず、すなわち、摩擦材21とプレート22とがスリップせず、かつ、摩擦材21とプレート22との間で回転力が伝達されている状態である。
【0024】
図1に示す第2クラッチ装置20bは、電動機12と車輪19との間に設けられる。本実施形態では、第2クラッチ装置20bは、トルクコンバータ13と、変速装置15の入力側回転部材15aとの間に設けられる。なお、第2クラッチ装置20bは、変速装置15のケーシングの内部に設けられることもある。また、変速装置15に含まれるクラッチ装置が、本実施形態の第2クラッチ装置20bとして機能してもよい。
【0025】
第2クラッチ装置20bは、第1回転部材31と、第2回転部材32と、第2係合機構33とを含む。第1回転部材31は、トルクコンバータ13と連結される(本実施形態では前後進切換機構14を介してトルクコンバータ13と連結される)。第2回転部材32は、入力側回転部材15aと連結される。第2係合機構33は、第1回転部材31と第2回転部材32とを係合させたり、第1回転部材31と第2回転部材32との係合を解除したりする。第2クラッチ装置20bの作動原理は、第1クラッチ装置20aと同様であるため、説明を省略する。
【0026】
第1回転部材31と第2回転部材32とが係合する場合、内燃機関11が発生する機関回転力や、電動機12が発生するモータ回転力は、車輪19に伝達される。一方、第1回転部材31と第2回転部材32との係合が解除されている場合、内燃機関11が発生する機関回転力や、電動機12が発生するモータ回転力は、車輪19に伝達されない。すなわち、第1回転部材31と、第2回転部材32との係合が解除されている場合、ハイブリッド車両10は停止状態となる。このように、第2クラッチ装置20bは、トルクコンバータ13と車輪19との間の回転力の伝達を遮断できる。
【0027】
ここで、回転力遮断装置は第2クラッチ装置20bに限定されない。回転力遮断装置は、例えば、ハイブリッド車両10が備えるパーキングギヤ機構であってもよい。前記パーキングギヤ機構は、後述のシフトレンジ変更装置Sがパーキングである場合に、トルクコンバータ13(流体伝達装置)や電動機12と車輪19との間における回転力の伝達を遮断する。すなわち、回転力遮断装置は、車両が停止しているときの内燃機関11の自立運転時に、車輪19から路面への回転力を遮断し、車両を走行させないものであればよい。
【0028】
制御装置40は、図1に示すように、内燃機関11と、電動機12と、第1クラッチ装置20aと、第2クラッチ装置20bとの各作動を制御する。本実施形態の制御装置40は、ECU(Electronic Control Unit)に含まれる。ECUは、内燃機関11と、電動機12と、第1クラッチ装置20aと、第2クラッチ装置20bとの他に、図1に示すトルクコンバータ13や、変速装置15などのハイブリッド車両10に含まれる各装置の作動を制御する。なお、制御装置40は、ECUとは別個に設けられてもよい。制御装置40は、具体的には、内燃機関11が有する各部の作動を制御する。また、制御装置40は、電動機12の作動を制御する。また、制御装置40は、図2に示すオイルポンプ25bから吐出されて油圧室25に導かれる作動油の圧力や流量を調節する。すなわち、制御装置40は、図2に示す油圧室25に導く作動油の液量や、油圧室25に導く作動油の流速を調節し、摩擦材21とプレート22との係合力を調節する。また、制御装置40は、第2係合機構33による第1回転部材31と第2回転部材32との係合力を調節する。
【0029】
制御装置40は、図1に示すように、シフトレンジセンサS1から信号を取得する。シフトレンジセンサS1は、ハイブリッド車両10に備えられるシフトレンジ変更装置Sのシフトレンジを検出し、前記シフトレンジに対応した信号を出力する。シフトレンジ変更装置Sは、ハイブリッド車両10の車室に設けられて、運転者によって操作される。シフトレンジには、少なくとも、パーキングレンジ、または、ニュートラルレンジが含まれる。パーキングレンジ及びニュートラルレンジは、機関回転力とモータ回転力とのいずれも車輪19へ伝達されない状態を実現するためのレンジである。すなわち、シフトレンジ変更装置Sがパーキングレンジ、または、ニュートラルレンジである場合、ハイブリッド車両10は、機関回転力やモータ回転力によって走行しない。制御装置40は、シフトレンジセンサS1から信号を取得することで、シフトレンジ変更装置Sの現在のシフトレンジを取得する。
【0030】
図3は、制御装置が有する機能を示すブロック図である。制御装置40は、入出力部41と、記憶部42と、処理部43とを含む。入出力部41は、内燃機関11(具体的には、燃料を噴射するインジェクターや、点火プラグ)と、電動機12と、オイルポンプ25b(具体的にはオイルポンプ25bから吐出される作動油の圧力を調節する油圧回路)と、第2係合機構33と、シフトレンジセンサS1とが電気的に接続される。記憶部42は、処理部43が一連の手順を実行するために必要な情報を記憶する。前記情報は、例えば、一連の手順が記されたコンピュータプログラムや、処理部43が前記コンピュータプログラムを実行する際に用いる所定の閾値や、マップなどである。
【0031】
処理部43は、情報取得部44と、演算部45と、作動制御部46とを含む。情報取得部44は、入出力部41を介してシフトレンジセンサS1から信号を取得する。すなわち、情報取得部44は、シフトレンジSpを取得する。また、情報取得部44は、記憶部42から情報を取得する。演算部45は、コンピュータプログラムに含まれる手順に従って演算をしたり、複数の手順の中から次に実行する手順を選択したりする。作動制御部46は、内燃機関11の各部の作動を制御するための信号と、電動機12の作動を制御するための信号と、オイルポンプ25bから吐出された油圧を調節するための信号と、第2係合機構33の作動を制御するための信号とを生成する。そして、作動制御部46は、入出力部41を介して各装置へ制御用の信号を送信する。次に、制御装置40が実行する一連の手順を説明する。
【0032】
図4は、制御装置が実行する一連の手順を示すフローチャートである。ステップST01で、情報取得部44は、シフトレンジセンサS1から現在のシフトレンジSpを取得する。次に、ステップST02で、演算部45は、現在のシフトレンジSpがパーキングレンジ、または、ニュートラルレンジであるか否かを判定する。現在のシフトレンジSpがパーキングレンジと、ニュートラルレンジとのいずれでもないと演算部45が判定すると(ステップST02、No)、制御装置40は、一連の手順の実行を終了する。現在のシフトレンジSpがパーキングレンジ、または、ニュートラルレンジであると演算部45が判定すると(ステップST02、Yes)、制御装置40は、ステップST03へ進む。
【0033】
ステップST03で、演算部45は、内燃機関11を自立運転させるか否かを判定する。以下、ハイブリッド車両10が停止した状態で内燃機関11が稼動することを単に内燃機関11の自立運転という。例えば、記憶部42は、内燃機関11を自立運転させるか否かの情報(フラグ)を有する。演算部45は、この情報(フラグ)に基づいて、内燃機関11を自立運転させるか否かを判定する。記憶部42は、例えば、内燃機関11の暖機が必要な場合や、ハイブリッド車両10が備える触媒の暖機が必要な場合、内燃機関11を自立運転させる必要がある旨の情報を記憶する。内燃機関11を自立運転させないと演算部45が判定すると(ステップST03、No)、制御装置40は、一連の手順の実行を終了する。内燃機関11を自立運転させると演算部45が判定すると(ステップST03、Yes)、制御装置40は、ステップST04へ進む。
【0034】
次に、ステップST04で、作動制御部46は、第1クラッチ装置20aを係合させる。ここでの係合には、摩擦材21とプレート22との半係合と、摩擦材21とプレート22との完全な係合が含まれる。また、ステップST04で、作動制御部46は、回転力遮断装置を作動させる。作動制御部46は、本実施形態では、第2クラッチ装置20bの係合を解除する。すなわち、作動制御部46は、第1回転部材31と第2回転部材32とを係合させず、トルクコンバータ13と車輪19との間における回転力の伝達を遮断させる。なお、回転力遮断装置がパーキングギヤ機構である場合、作動制御部46は、パーキングギヤ機構をロックする。
【0035】
次に、ステップST05で、作動制御部46は、内燃機関11を始動する。具体的には、作動制御部46は、電動機12を始動する。この時、第1クラッチ装置20aの摩擦材21とプレート22とは係合している。よって、電動機12が始動すると、モータ駆動力が第1クラッチ装置20aを介して内燃機関11へ伝達される。これにより、内燃機関11の機関回転力出力軸11aがモータ駆動力によって回転する。そして、作動制御部46は、内燃機関11のインジェクターに燃料を噴射させると共に、内燃機関11の点火装置により燃料に点火する。これにより、内燃機関11は始動する。この時、電動機12は、例えば、第1クラッチ装置20aを介して入力される機関回転力によって空転する。なお、この時、第2クラッチ装置20bの第1回転部材31と第2回転部材32とが係合していないため、車輪19は駆動されない。すなわち、ハイブリッド車両10は、アイドリング状態となる。
【0036】
以上の一連の手順を制御装置40が実行することにより、ハイブリッド車両10は、内燃機関11の自立運転時に、機関回転力出力軸11aと共にロータ12aとトルクコンバータ13の回転部材とが回転することになる。これにより、ハイブリッド車両10は、ロータ12aとトルクコンバータ13の回転部材との質量が機関回転力出力軸11aに加わるため、機関回転力出力軸11aのイナーシャが増加する。よって、クラッチ装置20は、内燃機関11の自立運転時に生じる振動及びノイズを低減できる。すなわち、クラッチ装置20は、ロータ12aとトルクコンバータ13の回転部材とにフライホイールと同様の機能を実現させることができる。これにより、ハイブリッド車両10は、フライホイールを必要としない。結果として、クラッチ装置20は、ハイブリッド車両10が備える動力伝達機構が大型化するおそれを低減でき、かつ、前記動力伝達機構の質量を低減できる。
【0037】
ここで、制御装置40は、内燃機関11の自立運転時に第1クラッチ装置20aの摩擦材21とプレート22とを係合させることで、ロータ12a及びトルクコンバータ13の回転部材とを機関回転力で回転させている。しかしながら、制御装置40は、内燃機関11の自立運転時に第1クラッチ装置20aの摩擦材21とプレート22とを係合させることで、ロータ12aのみを回転させてもよい。この場合、クラッチ装置20は、例えば、第2クラッチ装置20bが電動機12とトルクコンバータ13との間に設けられる。この場合であっても、クラッチ装置20は、ロータ12aにフライホイールと同様の機能を実現させることができる。
【0038】
また、制御装置40は、車両が電動機12を備えない場合、内燃機関11の自立運転時に第1クラッチ装置20aの摩擦材21とプレート22とを係合させることで、トルクコンバータ13の回転部材のみを回転させてもよい。この場合であっても、クラッチ装置20は、トルクコンバータ13の回転部材にフライホイールと同様の機能を実現させることができる。このように、クラッチ装置20は、内燃機関11の自立運転時に、ロータ12aとトルクコンバータ13の回転部材との少なくとも一方を回転させることで、フライホイールを必要とせずに、内燃機関の自立運転時に生じる振動及びノイズを低減できる。
【0039】
本実施形態では、モータジェネレータを電動機12として説明したが、モータジェネレータは、発電機であってもよい。なお、電動機は発電能力よりも回転力の出力に優れたものであり、発電機は回転力の出力よりも発電能力に優れたものであるが、動作の原理は同様である。この場合、第1クラッチ装置20aのプレート22は、発電機を介して車輪と連結されることになる。この場合であっても、クラッチ装置20は、モータジェネレータが電動機12である場合と同様の効果を奏する。
【0040】
また、本実施形態では、流体伝達装置をトルクコンバータ13として説明したが、流体伝達装置は、例えば、フルードカップリングであってもよい。フルードカップリングは、流体を介して、回転力(トルク)を増幅させずに伝達するものである。この場合であっても、クラッチ装置20は、フルードカップリングの回転部材にフライホイールと同様の機能を実現させることができる。よって、この場合であっても、クラッチ装置20は、流体伝達装置がトルクコンバータ13である場合と同様の効果を奏する。
【0041】
また、本実施形態では、内燃機関11の自立運転時に、電動機12が第1クラッチ装置20aを介して入力される機関回転力によって空転するとして説明したが、電動機12は、例えば、第1クラッチ装置20aを介して入力される機関回転力によって発電してもよい。これにより、ハイブリッド車両10は、内燃機関11の自立運転時に電池を充電できる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のように、本発明に係る車両用クラッチ装置は、フライホイールを必要とせずに、内燃機関の自立運転時に生じる振動及びノイズを低減する技術に有用である。
【符号の説明】
【0043】
10 ハイブリッド車両
11 内燃機関
11a 機関回転力出力軸
12 電動機(モータジェネレータ)
12a ロータ
13 トルクコンバータ(流体伝達装置)
14 前後進切換機構
15 変速装置
15a 入力側回転部材
16 減速装置
17 差動装置
18 ドライブシャフト
19 車輪
20 クラッチ装置
20a 第1クラッチ装置
20b 第2クラッチ装置(回転力遮断装置)
21 摩擦材(第1回転部材)
22 プレート(第2回転部材)
23 スナップリング(係合機構)
24 ピストン(係合機構)
25 油圧室(係合機構)
25a 油路
25b オイルポンプ
25c オイルパン
26 リターンスプリング(係合機構)
28、29 回転部材群
29a ドラム
31 第1回転部材
32 第2回転部材
33 第2係合機構
40 制御装置
41 入出力部
42 記憶部
43 処理部
44 情報取得部
45 演算部
46 作動制御部
S シフトレンジ変更装置
S1 シフトレンジセンサ
Sp シフトレンジ
Zr 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される内燃機関と連結され、前記内燃機関が発生する機関回転力が伝達される第1回転部材と、
前記機関回転力を流体により伝達する流体伝達装置を介して前記車両の車輪と連結される第2回転部材と、
前記第1回転部材と前記第2回転部材との少なくとも一方に回転軸方向の推力を与えて、前記第1回転部材と前記第2回転部材とを係合させる係合機構と、
前記流体伝達装置と前記車輪との間に設けられて、前記車両が停止しているときの前記内燃機関の自立運転時に、前記流体伝達装置と前記車輪との間における回転力の伝達を遮断する回転力遮断装置と、
を備え、
前記係合機構は、
前記内燃機関の自立運転時に、前記第1回転部材と前記第2回転部材とを係合させることを特徴とする車両用クラッチ装置。
【請求項2】
前記第2回転部材は、前記流体伝達装置との間にモータジェネレータが介在されることを特徴とする請求項1に記載の車両用クラッチ装置。
【請求項3】
車両に搭載される内燃機関と連結され、前記内燃機関が発生する機関回転力が伝達される第1回転部材と、
モータジェネレータを介して前記車両の車輪と連結される第2回転部材と、
前記第1回転部材と前記第2回転部材との少なくとも一方に回転軸方向の推力を与えて、前記第1回転部材と前記第2回転部材とを係合させる係合機構と、
前記モータジェネレータと前記車輪との間に設けられて、前記車両が停止しているときの前記内燃機関の自立運転時に、前記モータジェネレータと前記車輪との間における回転力の伝達を遮断する回転力遮断装置と、
を備え、
前記係合機構は、
前記内燃機関の自立運転時に、前記第1回転部材と前記第2回転部材とを係合させることを特徴とする車両用クラッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−218914(P2011−218914A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88667(P2010−88667)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】