説明

車両用周辺監視装置

【課題】車両の衝突の回避又は軽減を図るために、車両の前側方の物体を監視する車両用周辺監視装置を提供することを課題とする。
【解決手段】
左前方監視レーダ110は、車両の左前方に検知範囲を有し、右前方監視レーダ120は、車両の右前方に検知範囲を有する。左前方監視レーダ110の検知範囲の中心軸と車両中心軸とのなす第1の角度は、右前方監視レーダ120の検知範囲の中心軸と車両中心軸とのなす第2の角度よりも大きく設定されている。これは左側通行の道路環境用の設定である。PSC・ECU130は、監視部131と設定部132を有する。監視部131は、左前方監視レーダ110と右前方監視レーダ120から受ける検知信号に基づき車両前側部の物体を監視する。設定部132は、車両の仕向国の交通環境に応じて、左前方監視レーダ110と右前方監視レーダ120の検知範囲と車両中心軸との関係を切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車の前側方の物体を監視する車両用周辺監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、衝突の回避又は軽減のために、自車の周辺を監視する周辺監視装置であって、遠距離用と近距離用のレーダ装置を使用し、自車の走行状況に基づいて、遠距離用又は近距離用のレーダ装置の駆動を選択して自車の周辺を監視する周辺監視装置が知られている。この遠距離用のレーダ装置は自車の前方監視用に用いられ、近距離用のレーダ装置は前側方における監視用に用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−165752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来の周辺監視用装置では、検知エリアを前側方にまで拡げたことによって広域で物体を検知できるようになる一方、不要な物体までもが検知されることがあった。これにより、検知精度が低下する場合があった。また、前側方の監視のために近距離用のレーダ装置を用いているが、前側方から走行してくる他車両を検知するために走行環境(左側通行の環境又は右側通行の環境)に合わせて検知範囲を設定するようなことは行われていなかった。
【0004】
本発明は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、車両の衝突の回避又は軽減を図るために、車両の前側方の物体を監視する車両用周辺監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一局面の車両用周辺監視装置は、車両中心軸の一方の側の車両前側方に第1検知範囲を有する第1物体検知手段と、前記車両中心軸の他方の側の車両前側方に第2検知範囲を有する第2物体検知手段と、前記第1物体検知手段及び前記第2物体検知手段の物体検知信号に基づき、車両の前側方における物体を監視する監視手段とを備え、前記第1検知範囲の中心軸と車両中心軸とのなす第1の角度が、前記第2検知範囲の中心軸と車両中心軸とのなす第2の角度よりも大きい。これにより、車両の左前方と右前方の検知範囲を非対称に設定できる。
【0006】
また、自車両の交差点への接近を検知すると交差点検知信号を出力する交差点検知手段をさらに備え、前記監視手段は、前記交差点検知信号を受信すると、車両の前側方における物体を監視するようにしてもよい。これにより、交差点の付近において車両の前側方を監視できる。
【0007】
また、前記第1検知範囲及び前記第2検知範囲のうち、自車両の走行車線と交差する道路内で自車両に近い側を通行する車両が到来する側にある検知範囲の方が、他方の側にある検知範囲よりも大きく設定されるようにしてもよい。これにより、自車両に近い側の通行車両を検知できる範囲が拡がる。
【0008】
また、交差点への接近に従い、前記第1検知範囲又は前記第2検知範囲の少なくとも一方が拡大されるようにしてもよい。これにより、交差点に近いほど、交差する道路の通行車両を検知できる範囲が拡がる。
【0009】
また、交差点への接近に従い、前記第1物体検知手段又は前記第2物体検知手段の少なくとも一方が物体を検知する周期が短縮されるようにしてもよい。これにより、交差点に近いほど、交差する道路の通行車両を頻繁に検知できる。
【0010】
また、交差点への接近に従い、前記第1物体検知手段又は前記第2物体検知手段の少なくとも一方の出力が増大されるようにしてもよい。これにより、交差点に近いほど、反射波の強度が増大し、交差する道路の通行車両を検知できる精度が向上する。
【0011】
また、前記第1検知範囲は、前記第1物体検知手段が物体を検知可能な範囲のうちの一部であるとともに、前記第2検知範囲は、前記第2物体検知手段が物体を検知可能な範囲のうちの一部であり、前記監視手段は、前記第1検知範囲及び第2検知範囲内における物体の存在を監視するようにしてもよい。これにより、検知範囲を狭めて物体を検知することができる。
【0012】
また、前記第1物体検知手段は、前記物体を検知可能な範囲内に、前記第1検知範囲とは別に、当該第1検知範囲よりも物体判定のための閾値が低い第1副検知範囲を有するとともに、前記第2物体検知手段は、前記物体を検知可能な範囲内に、前記第2検知範囲とは別に、当該第2検知範囲よりも物体判定のための閾値が低い第2副検知範囲を有するようにしてもよい。これにより、検知する範囲に優先順位をつけることができる。
【0013】
また、前記第1検知範囲及び前記第2検知範囲を車両中心軸のいずれかの側に設定する設定手段をさらに備えてもよい。これにより、第1検知範囲及び前記第2検知範囲を選択的に設定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車両の衝突の回避又は軽減を図るために、車両の前側方の物体を高精度で監視できる車両用周辺監視装置を提供できるという特有の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の車両用周辺監視装置を適用した実施の形態について説明する。ここで、「交差点」という語は任意の数の道路が任意の角度で交わる点をいうものとして用いる。
【0016】
図1は、本実施の形態の車両用周辺監視装置の構成を示す図である。図1において、車両用周辺監視装置100は、左前方監視レーダ110(第1物体検知手段)、右前方監視レーダ120(第2物体検知手段)及びプリクラッシュセーフティECU130(以下、PCS・ECU130と略す)を備える。このPCS・ECU130は、監視部131及び設定部132を有する。なお、本実施の形態の車両用周辺監視装置は、さらに前方監視レーダを備えることにより、PCS・ECU130が正面衝突や斜め前方からの斜突を防止するプリクラッシュ制御、又は、車間制御用のECUによる車間制御(レーダクルーズ制御)を行うように構成することもできるが、ここでは、前側方のみを監視する車両用周辺監視装置として説明する。
【0017】
左前方監視レーダ110及び右前方監視レーダ120は、交差点等における出会い頭衝突を防止するために用いられるレーダセンサであり、例えばフロントグリル付近、若しくは、フロントバンパ内部に車両左前方及び右前方を監視するようにそれぞれ配設される。
【0018】
左前方監視レーダ110及び右前方監視レーダ120は、それぞれ、図示しない受信アンテナ、送信アンテナ、受信機、送信機及び信号処理部を含む。送信機は、送信アンテナを介して車両前側方の所定範囲に向けて送信波を放射する。受信機は、送信波が前側方物体によって反射して生成される反射波を受信アンテナを介して受信する。信号処理部は、反射波のドップラー周波数(周波数シフト)を用いて前方物体の相対速度を算出し、反射波の遅れ時間を用いて前側方物体の相対距離を算出し、さらに、複数の受信アンテナ間での受信波の位相差に基づいて前側方物体の方位を算出する。このようにして、前側方物体(典型的には、他車両)の自車からの距離、前側方物体の自車に対する相対的な方向や速度を表す情報が前側方物体情報として生成される。この前側方物体情報は、PCS・ECU130内の監視部131から要求があった後に、所定周期毎に所定時間にわたって監視部131に送信される。
【0019】
このような左前方監視レーダ110及び右前方監視レーダ120としては、電波(例えば、ミリ波)又は光波(例えば、レーザ波)を送信波として放射する電子スキャン方式のレーダセンサを用いることができる。左前方監視レーダ110及び右前方監視レーダ120の走査方式は、前側方物体の方位(前側方物体の自車に対する相対的な方向)が計測可能な態様であれば、電子スキャン方式以外にも、機械的に送信アンテナないし受信アンテナを可動させるメカニカルスキャン方式であってもよい。なお、本実施の形態では、ミリ波を送信波として放射する電子スキャン方式のレーダセンサ用いる。
【0020】
図2は、左前方監視レーダ110及び右前方監視レーダ120の検知範囲を概略的に示す図である。この図2には、車両200の平面視で、左前方監視レーダ110の検知範囲110a(第1検知範囲)と、右前方監視レーダ120の検知範囲120a(第2検知範囲)とを示す。この左前方監視レーダ110は、検知範囲110bでも物体を検知可能であり、右前方監視レーダ120は、検知範囲120bでも物体を検知可能であるが、ここでは、検知精度を向上させるために、検知範囲110b及び120bを用いずに、左前方監視レーダ110及び右前方監視レーダ120の検知範囲の一部である検知範囲110a及び120aのみを用いて交差点付近における前側方物体の検知を行う場合について説明する。なお、検知範囲110b及び120bは、具体的には、左前方監視レーダ110及び右前方監視レーダ120が物体を検知しても前側方物体情報を出力しない出力制限範囲である。
【0021】
左前方監視レーダ110及び右前方監視レーダ120の検知範囲110a及び120aは、比較的車両近傍付近までしか延在せず、例えば数十メートルの近距離であればよい。この点において、レーダクルーズ制御等で利用する関係上、比較的遠方まで延在する前方監視レーダの検知範囲とは異なる。
【0022】
また、図2に示す例では、左側通行の走行環境用に設定すべく、車両200の前後方向の中心軸(以下、車両中心軸と略す)200aと検知範囲110aの中心軸110bとの角度をα、車両中心軸200aと検知範囲120aの中心軸120bとの間の角度をβとした場合に、角度αが角度βよりも大きくなるように(α>βが成立するように)左前方監視レーダ110及び右前方監視レーダ120を設定する。このように設定する理由は左側通行の交通環境において交差点で右側から到来する車両の検知精度を向上させるためであるが、図5を用いて後述する。また、交差点で右側から到来する車両の検知範囲を拡げるために、検知範囲110aの範囲を規定する角度(以下、検知角度と称す)γよりも検知範囲120aの検知角度δの方が大きくなるように設定する。このとき、検知範囲120aを拡げることによって検知精度が低下しないように、角度δを最適化する必要がある。
【0023】
次に、PCS・ECU130、監視部131及び設定部132について説明する。
【0024】
PCS・ECU130は、図示しないバスを介して互いに接続されたCPU、ROM及びRAM等からなるマイクロコンピュータを中心として構成される。
【0025】
PCS・ECU130の監視部131には、左前方監視レーダ110、右前方監視レーダ120、設定部132及びナビゲーションシステム140が接続される。また、設定部132には、車両のボデーの仕様を表す情報(例えば、左側通行用又は右側通行用のいずれのボデーであるかを表す情報を含む情報、以下、ボデー情報と称す)を統括するボデーECU150が接続される。これらは、適切な無線若しくは有線の通信路を介して通信可能に接続される。
【0026】
監視部131には、信号機のない一時停止線のある交差点への接近(すなわち、優先道路への接近)を表す交差点検知信号がナビゲーション装置140から送られるとともに、前側方物体情報が左前方監視レーダ110及び右前方監視レーダ120から送られる。この交差点検知信号は、例えば、ナビゲーション装置140によって信号機のない一時停止線のある交差点が検知される度に監視部131に送られるように設定すればよい。このナビゲーション装置140は、地図情報を有し、GPS(Global Positioning System)を用いて交差点への自車両の接近を検出できる装置であればよく、本実施の形態では、交差点検知手段として用いられる。また、交差点検知信号をナビゲーション装置140が発信するタイミングは、例えば、信号機のない一時停止線のある交差点から所定距離(例えば、数十メートル)手前に自車両が到達した時点に設定すればよく、この所定の距離を車速に応じて長くとるようにしてもよい。
【0027】
また、設定部132には、ボデーECU150からボデー情報が送られる。ボデー情報が送られた設定部132は、ボデー情報に基づいて左前方監視レーダ110及び右前方監視レーダ120の検知範囲を設定する。具体的な処理内容については後述する。
【0028】
次に、図3を用いて本実施の形態の車両用周辺監視装置のPCS・ECU130の監視部131による監視処理について説明する。
【0029】
本実施の形態の車両用周辺監視装置が起動されると、監視部131は、交差点検知信号を受信したかを判定する(ステップS1)。上述したように、この交差点検知信号は、信号機のない一時停止線のある交差点への自車両の接近を検知したナビゲーション装置140から監視部131に送られるものである。
【0030】
監視部131は、左前方監視レーダ110及び右前方監視レーダ120に電波を放射させる(ステップS2)。これにより、左前方監視レーダ110及び右前方監視レーダ120では、それぞれ上述の原理に基づき、自車から前側方物体への距離、自車に対する前側方物体の相対的な方向や速度を表す情報が前側方物体情報として生成される。
【0031】
次いで、監視部131は、前側方物体情報を受信したか否かを判定する(ステップS3)。前側方物体情報は、リクエストを受けた左前方監視レーダ110及び右前方監視レーダ120から監視部131に所定周期毎に送られる。
【0032】
監視部131は、前側方物体情報に含まれる自車両と前側方物体との距離、相対速度及び相対方位について、距離が所定値以下であるか(条件1)、相対速度が所定以上であるか(条件2)、相対方位が所定の方位以内であるか(条件3)の3つの条件の論理積が成立するか否かにより、前側方物体との接近の度合いが衝突危険性のあるものであるか否かを判定する(ステップS4)。
【0033】
次いで、監視部131は、自車両と前側方物体との衝突危険性のあると判定する場合は、警報信号を出力する(ステップS5)。この警報信号は、側突又は斜突防止用のプリクラッシュセーフティシステムに用いることができる警報信号である。
【0034】
監視部131は、警報信号を出力すると、処理手順をステップS3にリターンさせる。同様に、ステップS3で前側方物体情報を受信していないと判定した場合、及び、ステップS4で前側方物体との距離が所定値より長いと判定した場合においても、監視部131は処理手順をステップS3にリターンさせる。以上のような手順で、監視部131は、交差点検知信号を受信した後に前側方物体情報の内容を所定の周期で繰り返し検証する。
【0035】
次に、PSC・ECU130の設定部132による設定処理について説明する。
【0036】
図4は、設定部132による設定処理の処理手順を表す図である。この設定部132による処理は、例えば車両の工場出荷時等に行われるものであるが、車両の走行環境(左側通行の環境又は右側通行の環境)の変化に応じて適宜設定できるように構成してもよい。図4に示す処理手順は、設定部132が起動されている間は繰り返し行われる。
【0037】
設定部132は、起動されると、左前方監視レーダ110及び右前方監視レーダ120のレーダモード情報を取得する(ステップS11)。レーダモードは、レーダ装置(左前方監視レーダ110及び右前方監視レーダ120)のモードである。このレーダモードには、物体を検知する検知モードと、レーダ装置の検知範囲を調整するための設定モードとが含まれる。レーダモード情報は、レーダモードが検知モードと設定モードのどちらであるかを表す情報である。
【0038】
次いで、設定部132は、レーダモード情報に基づき、レーダ装置(左前方監視レーダ110及び右前方監視レーダ120)が設定モードであるか否かを判定する(ステップS12)。
【0039】
設定部132は、レーダモード情報が設定モードである場合は、ボデーECU150から車両のボデー情報を取得する(ステップS13)。
【0040】
次いで、設定部132は、左側通行用のボデーであるかどうかを判定する(ステップS14)。
【0041】
左側通行用のボデーである場合は、設定部132は、先ず左前方監視レーダ110の検知範囲を設定し(ステップS15)、次いで、右前方監視レーダ120の検知範囲を設定する。このステップS15及びS16において、設定部132は、左前方監視レーダ110の検知範囲を図2に示すように、車両中心軸200aと検知範囲110aの中心軸110bとの間の角度αが、車両中心軸200aと検知範囲120aの中心軸120bとの間の角度βよりも大きくなるように(α>βが成立するように)、かつ、検知範囲110aの角度γよりも検知範囲120aの角度δの方が大きくなるように左前方監視レーダ110及び右前方監視レーダ120を設定する。このように設定する理由は図5を用いて後述する。なお、検知範囲110b及び120bは、出力制限範囲である。
【0042】
一方、右側通行用のボデーである場合は、設定部132は、ステップS17及びS18において、左前方監視レーダ110の検知範囲を、車両中心軸200aと検知範囲110aの中心軸110bとの間の角度αよりも、車両中心軸200aと検知範囲120aの中心軸120bとの間の角度βの方が大きくなるように(α<βが成立するように)、かつ、検知範囲110aの角度γの方が検知範囲120aの角度δよりも大きくなるように左前方監視レーダ110及び右前方監視レーダ120を設定する。この状態は特に図示しないが、図2に示す左側通行用車両の検知範囲110a、110b、120a及び120bを車両中心軸200aに対して左右対称とした状態になる。
【0043】
なお、ステップS12において、設定モードではないと判定した場合は、処理手順はステップS11にリターンする。
【0044】
以上のようにして、車両の走行環境(左側通行の環境又は右側通行の環境)に合わせて、左前方監視レーダ110及び右前方監視レーダ120の検知範囲を設定することができる。
【0045】
図5は、本実施の形態の車両用周辺監視装置を搭載した車両の走行状況を平面視で示す図である。図5(a)は、車両200が信号機のない一時停止線のある交差点(すなわち、優先道路との交差点)より所定距離手前に到達して左前方監視用レーダ110及び右前方監視レーダ120が監視部131によって駆動された状態を示す。図5(b)は、車両200が交差点に差し掛かった状態を示す。ここでは、図2及び図5を用いて説明する。
【0046】
以上で説明したように、本実施の形態の車両用周辺監視装置によれば、車両中心軸200aと検知範囲110aの中心軸110bとの間の角度αが、車両中心軸200aと検知範囲120aの中心軸120bとの間の角度βよりも大きくなるように(α>βが成立するように)、左前方監視レーダ110及び右前方監視レーダ120が設定されている(図2参照)。
【0047】
このように左側通行の環境において、車両中心軸200aよりも右側にある角度βが車両中心軸200aよりも左側にある角度αよりも小さくなるように設定するのは、図5(a)に示すように、左側通行の走行環境における信号機のない一時停止線のある交差点500では、右側から到来する車両501との出会い頭での衝突は交差点500内の手前側で発生する可能性が高い。このため、車両中心軸200aよりも右側では、交差点500により近い場所を走行する車両を検知する必要があるからである。このような構成により、図5(a)に示すように自車両200が交差点よりも手前にいるときに、自車両200に近い側の車線内で交差500点に近い位置を走行する車両(右側から到来する車両)501を監視することができる。
【0048】
また、車両中心軸200aよりも左側にある角度αが車両中心軸200aよりも右側にある角度βよりも大きくなるように設定するのは、左側通行の走行環境における信号機のない一時停止線のある交差点500では、左側から到来する車両502との衝突の可能性は、特に自車両200が右折又は直進するために交差点内に進入したときに、交差点500内の奥側で発生する可能性が高いため、車両中心軸200aよりも左側では、右側から到来する車両501よりも交差点500までの距離が長い位置を走行する車両502を検知しておく必要があるからである。このような構成により、図5(b)に示すように交差点500に差し掛かっているときには、右側から到来し、交差点内にいる車両501を検知できるとともに、左から到来し、これから交差点に進入する車両502を監視することができる。すなわち、自車両200が交差点を右折又は直進するときに、左から到来する車両502を早い段階から検知することができる。
【0049】
以上より、上述のような検知範囲110a及び120aにより、右左折時において衝突の危険性ある車両を効果的に監視することができる。また、図5には2本の道路が交差する交差点を示すが、例えば脇道から信号機のない停止線のあるT字路に進入して左折又は右折するときにおいても、左右から到来する車両を効率よく検知することができる。
【0050】
また、以上では、左前方監視レーダ110及び右前方監視レーダ120の検知範囲の一部である検知範囲110a及び120aのみを用いて交差点付近における前側方物体の検知を行うので、不要な物体の検出を抑え、検知精度を向上させることができる。
【0051】
また、以上では、(左から到来する車両を検知するための)検知範囲110aの検知角度γよりも(右側から到来する車両を検知するための)検知範囲120aの検知角度δの方が(検知精度が落ちない程度に)大きくなるように左前方監視レーダ110及び右前方監視レーダ120を設定するので、自車両200により近い車両501をよりよく監視できる。
【0052】
なお、以上では、図5は左側通行の交通環境における交差点での周辺監視の様子を示したが、右側通行の交通環境における周辺監視は、図6に示す通り、図5を左右対称とした状態になる。右側通行の交通環境においても同様に周辺監視を行うことができる様子が分かる。
【0053】
以上、本実施の形態の車両用周辺監視装置によれば、交差点において自車と交差する車両の検知精度を向上させた車両用周辺監視装置を提供することができる。
【0054】
なお、以上では、交差点付近での前側方物体の検知精度を向上させるために、左前方監視レーダ110及び右前方監視レーダ120が、それぞれが物体を検知可能な範囲の一部のみを用いる場合について説明したが、検知範囲110b及び120bを用いるように構成することもできる。この場合、検知範囲110bを検知範囲110aにおける物体の判定閾値よりも低い判定閾値を有する副検知範囲(第1副検知範囲)として用いるとともに、検知範囲120bを検知範囲120aにおける物体の判定閾値よりも低い判定閾値を有する副検知範囲(第2副検知範囲)として用いることもできる。このように判定閾値に差を設ければ、車両の左前方及び右前方における物体の判定に優先順位を持たせることができる。このような検知範囲の拡大は、監視部131が交差点検知信号を受信してから、自車両が交差点に接近するに従って(交差点の内部に進入するに従って)実施されるようにしてもよい。
【0055】
また、上述のように、自車両の交差点への接近に従って(交差点の内部に進入するに従って)、左前方監視レーダ110及び右前方監視レーダ120の検知範囲を拡大することに代えて、又は、これに加えて、自車両の交差点への接近に従って(交差点の内部に進入するに従って)、左前方監視レーダ110又は右前方監視レーダ120が物体を検知する周期を徐々に短くするように設定してもよい。検知するための周期を短くすることにより、検知処理の頻度があがり、検知精度を向上させることができる。なお、このような制御は、左前方監視レーダ110又は右前方監視レーダ120のどちらか一方が物体を検知するための周期を他方が物体を検知するための周期よりも短くすることによって実施されてもよい。これにより、優先的に監視する側の検知精度を向上させることができる。
【0056】
また、検知のための周期を短くすることに代えて、又は、これに加えて、自車両の交差点への接近に従って(交差点の内部に進入するに従って)、左前方監視レーダ110又は右前方監視レーダ120の出力を徐々に増大させるように設定してもよい。出力の増大によって反射波の強度が増大するため、検知精度の向上を図ることができる。
【0057】
なお、以上では、交差点への接近を検知するための交差点検知手段としてナビゲーション装置140を用いる形態について説明したが、交差点への接近を検知できる装置であれば、例えば、交差点毎に路車間通信を行うような装置で構成することもできる。
【0058】
また、以上では、車両中心軸200aと検知範囲110aの中心軸110bとの間の角度αが、車両中心軸200aと検知範囲120aの中心軸120bとの間の角度βよりも大きくなるように(α>βが成立するように)左前方監視レーダ110及び右前方監視レーダ120を設定する場合について説明したが、監視レーダの特性や車両の構造等に応じて、上述の説明とは左右が逆になるように(すなわち、α<βが成立するように)構成してもよい。
【0059】
また、検知範囲110aの検知角度γと検知範囲120aの検知角度δも任意に設定することができる。
【0060】
以上、本発明の例示的な実施の形態の車両用周辺監視装置について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の車両用周辺監視装置は、プリクラッシュセーフシステムに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施の形態の車両用周辺監視装置の構成を示す図である。
【図2】左前方監視レーダ及び右前方監視レーダの検知範囲を概略的に示す図である。
【図3】PCS・ECUの監視部による監視処理の処理手順を表す図である。
【図4】PCS・ECUの設定部による設定処理の処理手順を表す図である。
【図5】本実施の形態の車両用周辺監視装置を搭載した車両の走行状況を平面視で示す図である。
【図6】本実施の形態の車両用周辺監視装置を搭載した車両の走行状況を平面視で示す図である。
【符号の説明】
【0063】
100…車両用周辺監視装置
110…左前方監視レーダ
110a、110b、120a、120b…検知範囲
120…右前方監視レーダ
130…PCS・ECU
131…監視部
132…設定部
140…ナビゲーション装置
150…ボデーECU
200…車両
200a…車両中心軸
500…交差点
501、502…車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両中心軸の一方の側の車両前側方に第1検知範囲を有する第1物体検知手段と、
前記車両中心軸の他方の側の車両前側方に第2検知範囲を有する第2物体検知手段と、
前記第1物体検知手段及び前記第2物体検知手段の物体検知信号に基づき、車両の前側方における物体を監視する監視手段と
を備え、
前記第1検知範囲の中心軸と車両中心軸とのなす第1の角度が、前記第2検知範囲の中心軸と車両中心軸とのなす第2の角度よりも大きいことを特徴とする車両用周辺監視装置。
【請求項2】
自車両の交差点への接近を検知すると交差点検知信号を出力する交差点検知手段をさらに備え、
前記監視手段は、前記交差点検知信号を受信すると、車両の前側方における物体を監視することを特徴とする請求項1に記載の車両用周辺監視装置。
【請求項3】
前記第1検知範囲及び前記第2検知範囲のうち、自車両の走行車線と交差する道路内で自車両に近い側を通行する車両が到来する側にある検知範囲の方が、他方の側にある検知範囲よりも大きく設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用周辺監視装置。
【請求項4】
交差点への接近に従い、前記第1検知範囲又は前記第2検知範囲の少なくとも一方が拡大されることを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれかの項に記載の車両用周辺監視装置。
【請求項5】
交差点への接近に従い、前記第1物体検知手段又は前記第2物体検知手段の少なくとも一方が物体を検知する周期が短縮されることを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれかの項に記載の車両用周辺監視装置。
【請求項6】
交差点への接近に従い、前記第1物体検知手段又は前記第2物体検知手段の少なくとも一方の出力が増大されることを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれかの項に記載の車両用周辺監視装置。
【請求項7】
前記第1検知範囲は、前記第1物体検知手段が物体を検知可能な範囲のうちの一部であるとともに、前記第2検知範囲は、前記第2物体検知手段が物体を検知可能な範囲のうちの一部であり、
前記監視手段は、前記第1検知範囲及び第2検知範囲内における物体の存在を監視することを特徴とする請求項1乃至6のうちのいずれかの項に記載の車両用周辺監視装置。
【請求項8】
前記第1物体検知手段は、前記物体を検知可能な範囲内に、前記第1検知範囲とは別に、当該第1検知範囲よりも物体判定のための閾値が低い第1副検知範囲を有するとともに、
前記第2物体検知手段は、前記物体を検知可能な範囲内に、前記第2検知範囲とは別に、当該第2検知範囲よりも物体判定のための閾値が低い第2副検知範囲を有することを特徴とする請求項7に記載の車両用周辺監視装置。
【請求項9】
前記第1検知範囲及び前記第2検知範囲を車両中心軸のいずれかの側に設定する設定手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至8のうちのいずれかの項に記載の車両用周辺監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−152389(P2008−152389A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337502(P2006−337502)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】