説明

車両用変速機の油圧制御装置

【課題】サブポンプや制御弁等に異常が生じても、サブポンプの吐出油圧の供給回路中のオイルを十分に排出できる車両用変速機の油圧制御装置を提供する。
【解決手段】機械式のメインポンプ21と、特定の作動圧通路部分31dにオイル供給する電動式のサブポンプ42と、メインポンプ21から通路部分31dへの油圧に応動し、通路部分31dより下流側にオイルを流出させながら油圧制御するセカンダリレギュレータバルブ32と、サブポンプ42から通路部分31dに供給される油圧に応動し、その油圧が低圧側の設定圧力に達したときに通路部分31dより下流側へのオイル流出を許容する一方、逆方向への流れを規制するリリーフバルブ39とを含み、通路部分31dの油圧が高圧側の設定圧力に達したとき、セカンダリレギュレータバルブ32が、サブポンプ42から通路部分31dに供給されるオイルを通路部分31dより下流側に流出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用変速機の油圧制御装置に関し、特に、潤滑、冷却および作動用の流体(ATF:オートマチックトランスミッションフルード)となるオイルを機械式のメインポンプと電動式のサブポンプとによって供給できるように構成された車両用変速機の油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、自動車の有段または無段の自動変速機のような車両用変速機の油圧制御装置において、油圧源(流体圧供給源)として機械式のメインポンプと電動式のサブポンプとを備えたものがある。例えば、アイドリングストップ(一時停車時のエンジンの自動停止および再始動により無用なアイドリングを減らす意)の制御を実行する車両においては、エンジンからの動力によって機械的に駆動されるオイルポンプだけではエンジン停止中の油圧低下と再始動時の低いポンプ回転数とによって再発進時における発進クラッチの油圧を確保することが困難であるため、エンジン停止後の再発進時はサブポンプによって最低限の油圧を確保している。また、始動時の機械式ポンプの吐出量不足を電動ポンプで補うことにより、摩擦係合要素への供給油圧を確保することもできる。
【0003】
従来、この種の車両用変速機の油圧制御装置としては、例えば発進クラッチの直前に電動オイルポンプを接続し、その接続部より上流の油圧制御ユニットから発進クラッチに至る油路にチェックバルブを含むフェイルセーフ回路を設けて、通常時は油圧制御ユニットからの油圧を発進クラッチに供給し、エンジン停止時は前記チェックバルブにより油圧制御ユニット側への逆流を阻止しつつ電動オイルポンプからの油圧を発進クラッチに供給するようにしたものが知られている。この装置では、油圧制御ユニットから発進クラッチへの油圧供給ライン上に配置された電磁開閉弁が閉弁状態でロックした場合に、前記チェックバルブを通して油圧制御ユニットから発進クラッチに油圧が供給されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、車両発進時に締結する複数の油圧式摩擦係合要素のうち電動ポンプからの油圧を供給する摩擦係合要素を運転者の指令操作入力に応じて選択するようにしたものや、省エネルギーの観点から電動オイルポンプの容量を抑えるべく、電動オイルポンプからの油圧を発進クラッチとロックアップクラッチとに制御バルブを介さずに直接に供給するようにしたものが知られている(例えば、特許文献2、3参照)。
【0005】
さらに、メインポンプ側の油圧供給ラインを第1設定圧に制限することができる一方のリリーフバルブと、この一方のリリーフバルブより低ばね荷重でサブポンプ側の油圧供給ラインを第1設定圧より低い第2設定圧に制限することができる他方のリリーフバルブとに対して、メインポンプからの吐出圧をパイロット圧として供給するとともに、両リリーフバルブの開弁を制限する方向の操作圧を電磁比例リリーフバルブで制御し、余剰オイルが多くなるエンジンの高回転時に両リリーフバルブを共に開弁させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2002−168330号公報
【特許文献2】特開2006−348997号公報
【特許文献3】特開2008−69838号公報
【特許文献4】特開平10−132042号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述のような従来の車両用変速機の油圧制御装置にあっては、サブポンプが駆動状態(例えば回転数制御範囲内の最高回転数で運転される駆動状態)で停止困難な異常や故障(制御系や電気系統を含む)が生じると、特にメインポンプからの吐出油圧が高くなるまで、サブポンプの吐出油圧が供給される回路からオイルを十分に排出できず、高負荷状態でサブポンプが運転されるために無駄な電力消費量が多くなるという問題があった。
【0007】
また、サブポンプからの油圧がマニュアルバルブを介さずに発進クラッチに供給される場合、その発進クラッチの係合油圧を制御する制御弁が供給圧をドレーンできない状態で故障したときには、通常のサブポンプ供給圧を確保しつつ潤滑系統等へのオイル流出を許容するチェックバルブだけで多量の過剰オイルを排出させることになり、やはり、サブポンプの吐出油圧が供給される回路からオイルを十分に排出できないために、高負荷状態でサブポンプが運転されることになっていた。
【0008】
そこで、本発明は、サブポンプや制御弁等に異常が生じても、サブポンプの吐出油圧が供給される回路中のオイルを十分に排出でき、無駄な電力消費を抑えることができる信頼性の高い車両用変速機の油圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る車両用変速機の油圧制御装置は、上記目的達成のため、(1)車両用変速機が駆動源からの動力を入力するときに該入力に応じた吐出量で車両用変速機内のオイルパンから該車両用変速機内のオイル供給経路にオイルを吐出する機械式のメインポンプと、前記オイル供給経路の特定の作動圧通路部分に逆流を阻止しつつオイルを供給することができる電動式のサブポンプと、前記特定の作動圧通路部分に供給される供給油圧に応動して前記特定の作動圧通路部分より下流側に前記オイルを流出させて前記特定の作動圧通路部分の油圧を制限する油圧制限手段と、を備えた車両用変速機の油圧制御装置において、前記油圧制限手段が、前記メインポンプから前記特定の作動圧通路部分に供給される第1供給油圧に応動し、前記特定の作動圧通路部分より下流側に前記オイルを流出させながら前記特定の作動圧通路部分の油圧を制御する作動圧制御バルブと、前記サブポンプから前記特定の作動圧通路部分に供給される第2供給油圧に応動し、該第2供給油圧が予め設定された低圧側の設定圧力に達したときに前記特定の作動圧通路部分より下流側への前記オイルの流出を許容する一方、該流出方向と逆の方向への流れを規制するリリーフ機能付の方向制御バルブと、を含み、前記特定の作動圧通路部分の油圧が前記低圧側の設定圧力より高い高圧側の設定圧力に達したとき、前記作動圧制御バルブが、前記サブポンプから前記特定の作動圧通路部分に供給されるオイルを前記特定の作動圧通路部分より下流側に流出させることを特徴とする。
【0010】
この構成により、特定の作動圧通路部分の油圧が低圧側の設定圧力に達すると、リリーフ機能付の方向制御バルブからオイルが排出され、それによっても特定の作動圧通路部分の油圧が低圧側の設定圧力より高い高圧側の設定圧力に達した場合には、サブポンプから特定の作動圧通路部分に供給されるオイルが作動圧制御バルブによって特定の作動圧通路部分より下流側に排出される。したがって、サブポンプや制御弁等に異常が生じても、サブポンプの吐出油圧が供給される回路中のオイルを十分に排出でき、無駄な電力消費を抑えることができることになる。
【0011】
上記(1)に記載の構成を有する車両用変速機の油圧制御装置においては、(2)前記低圧側の設定圧力が、前記車両用変速機に設けられる発進クラッチが係合する係合圧力以下に設定されているのが好ましい。
【0012】
この構成により、サブポンプや制御弁等に異常が生じても、発進クラッチが係合する係合圧力に達することが防止される。
【0013】
また、上記(1)、(2)に記載の構成を有する車両用変速機の油圧制御装置においては、(3)前記作動圧制御バルブが、前記特定の作動圧通路部分の油圧を低減させる方向の前記弁体の変位量が予め設定された変位量を超えるときに、前記サブポンプから前記特定の作動圧通路部分に供給されるオイルを前記特定の作動圧通路部分より下流側に流出させるフェイルセーフ用ポートを開放するのがよい。
【0014】
この構成により、作動圧制御バルブが特定の作動圧通路部分のオイルを減圧のために排出するのに加えて、サブポンプから特定の作動圧通路部分に供給されるオイルが特定の作動圧通路部分より下流側に排出されることになり、サブポンプの吐出油圧が供給される回路中のオイルを十分に排出させることができる。
【0015】
上記(2)に記載の構成を有する車両用変速機の油圧制御装置においては、(4)前記発進クラッチに対して、前記メインポンプの機械的入力が停止されてから予め設定された設定時間が経過したときに、前記サブポンプからの油圧を供給する発進制御手段を備えているのが好ましい。
【0016】
この構成により、アイドリングストップ後の再発進時のようにメインポンプが低回転となる場合における油圧の応答遅れを解消でき、変速ショックを軽減できることになる。しかも、電動のサブポンプで発進クラッチに直接的に油圧を供給するようにすれば、サブポンプを小容量で軽量なものにすることができる。
【0017】
上記(1)〜(4)に記載の車両用変速機の油圧制御装置は、(5)前記オイル供給経路のうち前記特定の作動圧通路部分の上流側に位置し、第1の入力信号に応じて前記メインポンプから供給されるオイルの前記特定の作動圧通路部分への流出量を変化させて前記特定の作動圧通路部分より上流側に変速制御の元圧となるライン圧を生成するとともに該ライン圧を前記第1の入力信号に応じて制御するライン圧制御バルブを備え、前記作動圧制御バルブが、前記ライン圧制御バルブから前記特定の作動圧通路部分に流出したオイルの前記下流側への流出量を第2の入力信号に応じて変化させるのが望ましい。
【0018】
この構成により、ライン圧制御バルブから排出される余剰のオイルの油圧を基に作動圧制御バルブにより特定の作動圧通路部分の油圧が制御されることになり、ライン圧を元圧とする変速制御が優先的に実行されるとともに、その余剰のオイルの油圧を利用して変速機内の他の流体機器、例えばトルクコンバータやロックアップクラッチ等の作動圧を確保することができる。
【0019】
また、上記(1)〜(5)に記載の車両用変速機の油圧制御装置においては、(6)前記特定の作動圧通路部分が、前記車両用変速機の入力部に設けられた流体伝動装置に第1チェックバルブを介して前記オイルを供給するよう形成されるとともに、前記サブポンプが、前記特定の作動圧通路部分のうち前記第1チェックバルブより下流側に第2チェックバルブを介して前記オイルを供給するようになっていても好ましい。
【0020】
この構成により、アイドリングストップ後の再発進時のようにメインポンプが低回転となる場合に、発進に必要な流体伝動装置の作動圧をも確実に供給できる。
【0021】
上記(6)に記載の構成を有する場合車両用変速機の油圧制御装置においては、(7)前記特定の作動圧通路部分が、前記第1チェックバルブより上流側で、前記流体伝動装置の作動を制御する伝動制御用の油圧アクチュエータを作動させるセカンダリ圧回路に接続されているのがよい。
【0022】
この場合、より好ましくは、前記流体伝動装置がトルクコンバータで構成され、前記伝動制御用の油圧アクチュエータが前記トルクコンバータをロックアップ状態と非ロックアップ状態とに切り替えることができるロックアップクラッチで構成されているのがよい。
【0023】
上記(1)〜(7)に記載の車両用変速機の油圧制御装置においては、(8)前記作動圧制御バルブが、前記特定の作動圧通路部分の油圧を軸方向一方側の推力として受圧するスプールと、該スプールの軸方向変位によって相互の連通状態が変化する複数のポートを有するバルブボディとで構成されていることを特徴とする。
【0024】
この構成により、特定の作動圧通路部分の油圧を調圧する作動圧制御バルブの弁体の変位量が予め設定された変位量を超えるときに、サブポンプの吐出油圧が供給される回路を既存のレギュレータバルブの弁体の変位を利用して確実に下流側に接続して、サブポンプの負荷を低減させることができる。
【0025】
上記(1)〜(8)に記載の車両用変速機の油圧制御装置においては、(9)供給されるオイルを一時的に収容するよう前記車両用変速機内に設けられ、該収容したオイルを徐々に流下させるオイル収容手段を備え、前記作動圧制御バルブが、前記サブポンプから前記特定の作動圧通路部分に供給されるオイルを前記特定の作動圧通路部分より下流側に流出させるとき、前記作動圧制御バルブから流出するオイルが前記オイル収容手段に供給されるようにしてもよい。
【0026】
この構成により、車両用変速機内の底部側に貯留されていたオイルの一部がオイル収容手段側に収容され、オイルパン側に貯留されるオイルの量が減少することで、車両用変速機の高入力回転時における大物歯車部品等によるオイルの攪拌抵抗を抑え、トルク損失を抑えることができる。なお、ここにいうオイル収容手段は、例えば変速機ケース内に設けられ大物歯車部品等によりかき上げられるオイルを一時的に貯留するキャッチタンクで構成され得る。
【0027】
なお、前記変速制御の元圧となるライン圧は、前記オイル供給通路の前記特定の作動圧通路部分より上流側で、前記車両用変速機の変速制御用の油圧アクチュエータを作動させるライン圧回路に供給されるのがよい。
【0028】
また、前記第1の入力信号および前記第2の入力信号は、それぞれ前記駆動源の駆動負荷に応じたライン圧および作動圧を生成するよう、前記駆動源の駆動負荷に応じて変化する油圧信号として生成されるのが好ましい。
【0029】
さらに、その油圧信号を生成する手段は、例えばライン圧を信号圧用の油圧に調圧するモジュレータバルブと、モジュレータバルブにより調圧された油圧を元圧として駆動源の駆動負荷に応じた第1制御信号圧(油圧信号)を生成し出力する第1のリニアソレノイドバルブと、モジュレータバルブにより調圧された油圧を元圧として駆動源の駆動負荷に応じた第2制御信号圧(油圧信号)を生成し出力する第2のリニアソレノイドバルブとによって構成することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、特定の作動圧通路部分の油圧が低圧側の設定圧力に達すると、リリーフ機能付の方向制御バルブからオイルが排出され、それによっても特定の作動圧通路部分の油圧が低圧側の設定圧力より高い高圧側の設定圧力に達したときには、サブポンプから特定の作動圧通路部分に供給されるオイルが作動圧制御バルブによって特定の作動圧通路部分より下流側に排出されるようにしているので、サブポンプや制御弁等に異常が生じても、サブポンプの吐出油圧が供給される回路中のオイルを十分に排出でき、無駄な電力消費を抑えることができる信頼性の高い車両用変速機の油圧制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用変速機の油圧制御装置の概略の油圧回路図であり、図2は、一実施形態の車両用変速機の油圧制御装置を搭載した車両の概略構成図、図3は、一実施形態の車両用変速機の油圧制御装置を搭載した車両の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【0033】
まず、構成について説明する。
【0034】
図1に示すように、本実施形態の車両用変速機の油圧制御装置は、図2にスケルトンで示すような車両1(全体構成は図示していない)に動力源としてのエンジン11と共に搭載された自動無段変速機12(車両用変速機)に、その変速動作を制御する油圧制御装置20として装備されており、図示しないバルブボディ内に後述する複数のバルブを収納するとともに、図3に示すコントロールユニット80によって電子制御されるようになっている。なお、詳細は後述するが、自動無段変速機12は、油圧制御装置20により潤滑・作動油としてのオイルが供給されるトルクコンバータ14(流体伝動装置)、前後進切換歯車機構15およびベルト式の無段変速機構16を含んで構成されている。
【0035】
図1および図2において、メインポンプ21は、エンジン11からの動力により例えばトルクコンバータ14の入力部となるシェルカバー14sと一体的に駆動される歯車ポンプ(詳細を図示しない機械式ポンプ)で構成されており、自動無段変速機12がエンジン11からの動力を入力するときに、その入力に応じた吐出量で自動無段変速機12内のオイルパン22からストレーナ23を通して潤滑・作動油となるオイルを汲み上げ、図1に概略を示す油圧制御回路ならびに図示しない各油圧作動部、摺動部および冷却部等を経て再度オイルパン22に流下するまでのオイル供給経路FPの一部であるライン圧供給通路24に吐出するようになっている。
【0036】
このライン圧供給通路24は、プライマリプーリ51およびセカンダリプーリ52の油圧アクチュエータ51c、52cのような変速制御に直接に関わる油圧作動部で構成されるライン圧回路50と、ライン圧制御バルブであるプライマリレギュレータバルブ25の供給圧ポート25aと、マニュアルバルブ26の入口ポート26aとにそれぞれ接続されており、さらにオリフィス27aを介してプライマリレギュレータバルブ25の一端側のフィードバック圧ポート25bに接続されている。
【0037】
プライマリレギュレータバルブ25は、オイル供給経路FPのうちセカンダリ圧通路31の上流側に位置しており、他端側の信号圧ポート25cに供給される第1制御信号圧Psv1(第1の入力信号)に応じて、セカンダリ圧通路31より上流側のライン圧供給通路24に変速制御の元圧となるライン圧PLを生成するとともに、そのライン圧PLを第1制御信号圧Psv1に応じて調圧・制御するようになっている。
【0038】
このプライマリレギュレータバルブ25は、バルブボディの一部であるバルブ収納部25hと、バルブ収納部25h内に摺動可能に保持されたスプール25sと、このスプール25sを図1中上方側に付勢するようバルブ収納部25hとスプール25sの間に所定の予圧を持って収納された圧縮コイルばね25kとを有している。
【0039】
ここで、スプール25sは、図1中の上端側の第1ランド部25eでフィードバック圧ポート25bに供給されるフィードバック圧を受圧することにより、図1中で下向きの推力を生じる。また、バルブ収納部25hには、圧縮コイルばね25kが収納された信号圧室25dが形成されており、この信号圧室25dには信号油圧生成手段である公知の第1リニアソレノイドバルブ29(図3参照)からの第1制御信号圧Psv1がオリフィス27bを通して導入されるようになっている。したがって、バルブ収納部25hと共に信号圧室25dを画成するスプール25sは、圧縮コイルばね25kからの図1中の上向きの付勢力と、スプール25s(第3ランド部)の横断面積相当の受圧面に作用する信号圧室25d内の油圧力とを上向きの推力として受ける。
【0040】
プライマリレギュレータバルブ25においては、例えばフィードバック圧ポート25bに供給されるライン圧PLが低いためにスプール25sが図1中に示された位置(エンジン11の高回転時の位置)より同図中の上方側に位置しているときには、バルブ収納部25hに形成された供給圧ポート25aと排出ポート25fとの間が遮断される。また、フィードバック圧ポート25bに供給されるライン圧PLが高いためにスプール25sが図1中に示すように圧縮コイルばね25kを圧縮しながら同図中の下方側に変位したときには、供給圧ポート25aおよび排出ポート25fの間をその変位量に応じた開度で連通させる。したがって、第1リニアソレノイドバルブ29からの第1制御信号圧Psv1を変化させることで、ライン圧PLを制御することができるようになっている。
【0041】
なお、ここでは詳述しないが、第1リニアソレノイドバルブ29からの第1制御信号圧Psv1は、ライン圧PLを図示しないモジュレータバルブによって信号油圧の元圧レベルに調整した後、第1リニアソレノイドバルブ29により車両1に要求される走行負荷(エンジン1の駆動負荷)に応じて調圧させる。また、第1リニアソレノイドバルブ29は、詳細を図示しないが、例えば供給電流が最小値となるときに出力する信号油圧が最大となり、供給電流が最大値のときに出力する信号油圧が最小となる常開型の電磁比例バルブとして構成されている。
【0042】
第1リニアソレノイドバルブ29の出力圧に応じてプライマリレギュレータバルブ25により制御されるライン圧PLは、セカンダリ圧通路31より上流側で自動無段変速機12の変速制御用の油圧アクチュエータを作動させるライン圧回路50に変速制御の元圧として供給される。ここにいう変速制御用の油圧アクチュエータとは、例えば図2に示すプライマリプーリ51の油圧アクチュエータ51cとセカンダリプーリ52の油圧アクチュエータ52cである。ライン圧PLは、マニュアルバルブ26がその入口ポート26aを前進圧ポート26dに接続するようにD(ドライブ)レンジに操作されたときには、このマニュアルバルブ26およびチェックバルブ41を通して発進クラッチC1にも供給される。なお、プライマリプーリ51およびセカンダリプーリ52の油圧アクチュエータ51c、52cや発進クラッチC1については後述する。また、マニュアルバルブ26がR(リバース)レンジに操作されると、マニュアルバルブ26の入口ポート26aは後進圧ポート26rに接続されるようになっている。
【0043】
一方、プライマリレギュレータバルブ25からライン圧制御の余剰分のオイルが排出されるセカンダリ圧通路31には、調圧機能を有するセカンダリレギュレータバルブ32の入口ポート32aと、セカンダリ圧通路31に接続するセカンダリ圧回路30とが、それぞれ接続されている。また、セカンダリ圧通路31は、オリフィス33aを介してフィードバック圧ポート32bに接続されるとともに、第1チェックバルブ37を介してトルクコンバータ14(流体伝動装置)の内部の油室に接続可能な作動圧通路部分31d(特定の作動圧通路部分)を有している。したがって、セカンダリレギュレータバルブ32は、メインポンプ21側のプライマリレギュレータバルブ25からセカンダリ圧通路31、特にトルクコンバータ14側への作動圧通路部分31dに供給される第1供給油圧に応動し、作動圧通路部分31dより下流側にオイルを流出させて作動圧通路部分31dの油圧を制限する油圧制限手段として機能する。
【0044】
セカンダリ圧回路30は、例えば、セカンダリ圧通路31の第1チェックバルブ37より上流側でトルクコンバータ14のロックアップ状態と非ロックアップ状態(スリップ率の異なる複数の状態でもよい)とを切り換えるロックアップクラッチ14d(図2参照;伝動制御用の油圧アクチュエータ)を作動させ、トルクコンバータ14の作動を制御するようになっている。
【0045】
セカンダリレギュレータバルブ32は、前記バルブボディの一部を構成するバルブ収納部32hと、バルブ収納部32h内に摺動可能に保持されたスプール32sと、このスプール32sを図1中上方側に付勢するようバルブ収納部32hとスプール32sの間に予め設定された予圧を持って収納された圧縮コイルばね32kとを有しており、バルブ収納部32h(バルブボディ)には、スプール32sの軸方向変位によって相互の連通状態が変化する複数のポート32a、32f、32g、32j、32tが形成されている。
【0046】
ここで、スプール32sは、図1中上端側の第1ランド部32e(説明の便宜上、図中の上から順にランド番号を付けて呼ぶ)でオリフィス33aを通してフィードバック圧ポート32bに供給されるセカンダリ圧のフィードバック圧を受圧することにより、スプール32sには図1中で下向きの推力が生じる。また、バルブ収納部32hには、圧縮コイルばね32kが収納された信号圧室32dが形成されており、この信号圧室32dには信号油圧生成手段である公知の第2リニアソレノイドバルブ34(図3参照)からの第2制御信号圧Psv2(第2の入力信号)がオリフィス33bを通して信号圧ポート32cから導入されるようになっている。したがって、バルブ収納部32hと共に信号圧室32dを画成するスプール32sは、圧縮コイルばね32kからの図1中の上向きの付勢力と、スプール32s(第5ランド部)の横断面積相当の受圧面に作用する信号圧室32d内の油圧力とを上向きの推力として受ける。
【0047】
セカンダリレギュレータバルブ32においては、スプール32sが例えば図1中に示すように圧縮コイルばね32kを圧縮しながら下降しているときには、バルブ収納部32hに形成された入口ポート32aと出口ポート32f、32gとの間をその下降量、すなわち圧縮コイルばね32kにより復帰させられる復帰位置からの変位量に応じた開度で連通させる。また、スプール32sは、例えばフィードバック圧ポート32bに供給されるセカンダリ圧が低いために圧縮コイルばね32kの付勢力により同図中の上方側、すなわち復帰位置側に変位するときには、復帰位置からの下降量が一定量未満になると入口ポート32aと出口ポート32f、32gとの間を遮断するようになっている。
【0048】
このように入口ポート32aと出口ポート32f、32gとの間を開閉するセカンダリレギュレータバルブ32は、そのスプール32sの変位により、オイル供給経路FPのうち入口ポート32aに接続するセカンダリ圧通路31から出口ポート32f、32gに接続する下流側通路部分35、36へのオイルの流出量(排出量)を変化させることで、セカンダリ圧通路31の油圧を調圧・制御できる作動圧制御バルブとなっている。
【0049】
なお、第2リニアソレノイドバルブ34からの第2制御信号圧Psv2は、第1制御信号圧Psv1の場合と同様に、ライン圧PLを図示しないモジュレータバルブによって信号油圧の元圧レベルに調整した後、第2リニアソレノイドバルブ34により車両1に要求される走行負荷(スロットル開度に対応するエンジン1の負荷)に応じて調圧させる。また、第2リニアソレノイドバルブ34は、第1リニアソレノイドバルブ29と同様に、例えば供給電流が最小値となるときに出力する信号油圧が最大となり、供給電流が最大値のときに出力する信号油圧が最小となる常開型の電磁比例バルブとして構成されている。
【0050】
一方、油圧制御装置20には、機械式のメインポンプ21とは別に電動式のサブポンプ42が併設されている。
【0051】
このサブポンプ42は、後述するコントロールユニット80により駆動制御される電動モータ42mを有し、自動無段変速機12がエンジン11からの動力を入力するか否かにかかわらず、自動無段変速機12内のオイルパン22からストレーナ23を通して潤滑・作動油となるオイルを汲み上げ、ポンプ圧供給路43および第2チェックバルブ38を介して、オイル供給経路FPのセカンダリ圧通路31のうち第1チェックバルブ37より下流側のトルクコンバータ14側への作動圧通路部分31d(特定の作動圧通路部分)に必要な作動圧のオイルをその逆流を阻止しつつ供給できるようになっている。
【0052】
また、サブポンプ42の吐出ポートに接続するポンプ圧供給路43は、チェックバルブ44および発進クラッチ制御弁45を通して発進クラッチC1にもサブポンプ42の吐出圧を供給できるようになっており、メインポンプ21がエンジン11からの動力に基づく機械的入力により作動するときにはライン圧PLに基づくドライブレンジ(Dレンジ)圧によって発進クラッチC1が作動するが、メインポンプ21への機械的入力が停止されるときには、サブポンプ42からの油圧によって発進クラッチC1を係合圧供給時に迅速に係合可能な半係合状態にすることができるようになっている。なお、発進クラッチ制御弁45は、例えばポンプ圧供給路43に接続する入口ポート45pを発進クラッチC1内の油室(詳細図示せず)に接続する出口ポート45cに連通させる供給状態と、両ポート45c、45pをドレーンポート45dに接続する排出状態と、両ポート45c、45pをドレーンポート45dに接続する連通路部分が絞られる中間の状態とをとり得る公知のものである。
【0053】
サブポンプ42の吐出ポートに接続するポンプ圧供給路43は、リリーフバルブ39を介してセカンダリレギュレータバルブ32より下流側の下流側通路部分35に接続可能になっており、このセカンダリレギュレータバルブ32より下流側の下流側通路部分35は、オリフィス48を介して自動無段変速機12の内部の図示しない潤滑通路部分49に接続されている。
【0054】
リリーフバルブ39は、サブポンプ42からトルクコンバータ14側への作動圧通路部分31dに供給されるポンプ圧供給路43内の油圧(以下、第2供給油圧という)に応動し、その第2供給油圧がトルクコンバータ14側への供給圧として予め設定された低圧側の設定圧力に達したときに、作動圧通路部分31dより下流側の下流側通路部分35へのオイルの流出を許容する一方で、その流出方向と逆の方向への流れを規制するリリーフ機能付の方向制御バルブとなっており、本実施形態では、ばね付のチェックバルブと同等のものである。ただし、このリリーフ機能付の方向制御バルブは、そのリリーフおよび逆止の機能を果たす部分を有する他のバルブによって構成されてもよい。
【0055】
このリリーフバルブ39は、ポンプ圧供給路43の油圧がリリーフバルブ39の設定圧(低圧側の設定圧力)となるまでは、サブポンプ42の吐出油圧を第2チェックバルブ38を介してトルクコンバータ14側の作動圧通路部分31dに供給させる。また、ポンプ圧供給路43の油圧がリリーフバルブ39の設定圧を超えるとき、ポンプ圧供給路43からのオイルがリリーフバルブ39を介して下流側通路部分35に導入され、オリフィス48を通して潤滑通路部分49側に供給されるようになっている。なお、ここにいう潤滑通路部分49は、公知のオイルクーラが接続される場合にはそのオイルクーラを含むものであってもよい。
【0056】
サブポンプ42の吐出ポートに接続するポンプ圧供給路43は、セカンダリレギュレータバルブ32の入口側のフェイルセーフ用ポート32jにも接続されており、この入口側のフェイルセーフ用ポート32jは、セカンダリレギュレータバルブ32のスプール32sの変位に応じて出口側のフェイルセーフ用ポート32tとの連通・遮断を切り替えられるようになっている。
【0057】
セカンダリレギュレータバルブ32の出口側のフェイルセーフ用ポート32tは、作動圧通路部分31dより下流側、例えば供給されるオイルを一時的に収容するよう自動無段変速機12の内部に変速機ケース12c(図2参照;詳細図示せず)と一体に設けられたオイルキャッチタンク46(オイル収容手段)内に接続されている。
【0058】
このオイルキャッチタンク46は、収容したオイルを少量ずつ徐々に流下させる流下穴46aを有しており、流下穴46aから流下したオイルは自動無段変速機12の内部の図示しない潤滑通路部分49の一部に供給されるようになっている。
【0059】
セカンダリレギュレータバルブ32は、スプール32sの変位量が図1中に示す位置まで下降するほどセカンダリ圧通路31の油圧が上昇したとき、すなわち、フェイルセーフ用ポート32jが開き始める位置までスプール32sが下降したときに、入口側および出口側のフェイルセーフ用ポート32j、32tを互いに連通させるとともに、サブポンプ42から作動圧通路部分31dに供給されるオイルであるポンプ圧供給路43からのオイルを入口側のフェイルセーフ用ポート32jに導入し、そのオイルを出口側のフェイルセーフ用ポート32tからオイルキャッチタンク46側への通路47に排出するようになっている。すなわち、セカンダリレギュレータバルブ32は、セカンダリ圧通路31の油圧がリリーフバルブ39の設定圧力(低圧側の設定圧力)を十分に上回る高圧側の設定圧力に達したとき、入口ポート32aと出口ポート32f、32gを互いに連通させた状態で、さらに入口側および出口側のフェイルセーフ用ポート32j、32tを互いに連通させ、セカンダリ圧通路31から下流側通路部分35、36への余剰オイルの排出のみならず、サブポンプ42からポンプ圧供給路43を通して供給される不必要なオイルをも下流側に排出することができるようになっている。
【0060】
ここで、セカンダリ圧通路31の油圧がリリーフバルブ39の設定圧力(低圧側の設定圧力)を十分に上回る高圧側の設定圧力に達したときとは、例えばメインポンプ21の十分な吐出量がある状態で何らかの理由によってサブポンプ42が制御範囲内の高回転域で停止できない状態に陥り、あるいはエンジン1の高回転によりメインポンプ21の吐出量が予め設定された吐出量を超えることで、セカンダリ圧通路31のトルクコンバータ14側への作動圧通路部分31dの油圧がサブポンプ42からのオイルの補充を必要としない程度に高まったときである。
【0061】
また、リリーフバルブ39の設定圧である前記低圧側の設定圧力は、自動無段変速機12に設けられる発進クラッチC1が係合する係合圧力以下に設定されており、例えばサブポンプ42が制御範囲内の高回転域で停止できない状態に陥ったとしても、発進クラッチC1の係合を解くことができるようにしている。
【0062】
一方、図2に示すように、本実施形態の車両1においては、エンジン11の回転出力を変速可能な自動無段変速機12が、トルクコンバータ14、前後進切換歯車機構15、ベルト式の無段変速機構16および油圧制御装置20を含んで構成され、無段変速機構16の出力軸16bが減速歯車機構17および差動歯車装置18を介して車輪19L、19R(走行出力部)側に動力を伝達する動力伝達経路が設定されている。
【0063】
エンジン11は、例えば火花点火式の多気筒内燃機関で、車両1に横置きされている。
【0064】
図2において、トルクコンバータ14は、図示しないドライブプレートおよびシェルカバー14sを介してエンジン11の出力軸11aに連結されたポンプインペラ14aと、このポンプインペラ14aに対向するとともに前後進切換歯車機構15の入力軸15aに連結されたタービンランナ14bと、ポンプインペラ14aおよびタービンランナ14bの間に位置するステータ14cと、シェルカバー14s内に収容されたオイル(図示していない)とを含んで構成されている。そして、エンジン11の出力軸11aにより駆動される入力側のポンプインペラ14aの回転によってオイルの流れが生じるとき、タービンランナ14bがその流れの慣性力を受け、タービン軸14eを介して前後進切換歯車機構15の入力軸15aを回転させるようになっている。また、ステータ14cによりタービンランナ14bからポンプインペラ14aに戻るオイルの流れを整流させることで、ステータ14cの反力によるトルク増幅作用を生じさせるようになっている。
【0065】
トルクコンバータ14には、また、入力側のポンプインペラ14aおよびシェルカバー14sと出力側のタービンランナ14bとを選択的に相互に拘束可能なロックアップクラッチ14dが設けられており、油圧作動式の摩擦係合要素であるロックアップクラッチ14dを併用することでトルク伝達効率を高めることができるようになっている。
【0066】
前後進切換歯車機構15は、ダブルピニオン型の遊星歯車機構で構成され、入力軸15aに一体に連結されたサンギヤ15sと、後進用ブレーキB1を介して変速機ケース12cに支持されるインターナルのリングギヤ15rと、これらサンギヤ15sおよびリングギヤ15rの間で一方がサンギヤ15sに、他方がリングギヤ15rに噛合するピニオン15p1、15p2と、ピニオン15p1、15p2をそれぞれ自転および公転可能に支持するとともに無段変速機構16の入力軸16aに一体に連結されたキャリア15cと、キャリア15cと入力軸15aとを選択的に連結する前進用クラッチである発進クラッチC1と、インターナルのリングギヤ15rを選択的に変速機ケース12cに固定連結するブレーキ係合状態およびリングギヤ15rを変速機ケース12cに回転可能に支持させるブレーキ解放状態に切替え可能な前記後進用ブレーキB1とを備えている。
【0067】
この前後進切換歯車機構15は、発進クラッチC1を係合状態とし、後進用ブレーキB1を解放状態とすることで、入力軸15aと無段変速機構16の入力軸16aとを直結させる前進方向の回転動力伝達を行うことができ、一方、発進クラッチC1を解放状態とし、後進用ブレーキB1を係合状態とすることで、サンギヤ15sの回転方向に対しキャリア15cを逆方向にゆっくり公転させて無段変速機構16の入力軸16aに逆方向の減速回転を入力させる後進方向の回転動力伝達を行うことができる。
【0068】
無段変速機構16は、入力軸16aに連結された入力側可変シーブ(sheave)であるプライマリプーリ51と、出力軸16bに連結された出力側可変シーブであるセカンダリプーリ52と、両プーリ51、52の間に巻き掛けられた動力伝達用のベルト53とを含んで構成されている。
【0069】
プライマリプーリ51は、入力軸16aに固定された固定回転部材51aと、この固定回転部材51aとの間に略V字形の溝を形成するよう入力軸16aに軸方向変位可能に支持された可動回転部材51bと、可動回転部材51bの背面側に油圧を作用させて可動回転部材51bを軸方向変位させることによりプライマリプーリ51の有効径を変化させる公知の油圧アクチュエータ51cと、を有している。また、セカンダリプーリ52も、出力軸16bに固定された固定回転部材52aと、この固定回転部材52aとの間に略V字形の溝を形成するよう出力軸16bに軸方向変位可能に支持された可動回転部材52bと、可動回転部材52bの背面側に油圧を作用させて可動回転部材52bを軸方向変位させることによりセカンダリプーリ52の有効径を変化させる公知の油圧アクチュエータ52cと、を有している。
【0070】
プライマリプーリ51の油圧アクチュエータ51cとセカンダリプーリ52の油圧アクチュエータ52cとは、それぞれ油圧制御装置20によって制御され、変速比、すなわちプライマリプーリ51の有効径に対するセカンダリプーリ52の有効径の比が連続的に可変制御され、無段変速がなされ得るようになっている。また、ベルト53に対しプライマリプーリ51およびセカンダリプーリ52によって滑りの生じない適度の挟圧力を加えることができるように、両プーリ51、52の油圧アクチュエータ51c、52cの作動油圧がそれぞれ油圧制御装置20によって制御される。
【0071】
油圧制御装置20は、無段変速機構16における変速比およびベルト挟圧力を制御する機能を有しているとともに、前後進切換歯車機構15に付設された発進クラッチC1や後進用ブレーキB1を操作することで前後進の切替え制御を行う機能を併有している。
【0072】
図3に示すように、上述のプライマリレギュレータバルブ25およびセカンダリレギュレータバルブ32への第1、第2制御信号圧Psv1、Psv2を生成する第1リニアソレノイドバルブ29および第2リニアソレノイドバルブ34と、サブポンプ42と、発進クラッチ制御弁45は、それぞれエンジンコントロールコンピュータ(図3中ではECC)81とトランスミッションコントロールコンピュータ(図3中ではTCC)82を一体に構成したコントロールユニット80によって制御されるようになっている。
【0073】
また、エンジン11には、ウォータージャケット内の冷却水温Twを検出する冷却水温センサ60と、図示しないアクセルペダルの踏込み位置に相当するアクセル開度Accを検出するアクセル開度センサ61と、スロットルバルブの開度θthを検出するスロットル開度センサ62とが装着されている。エンジン11の出力軸11aまたはトルクコンバータ14の入力側には、ポンプインペラ14aの回転速度に相当するエンジン11の出力回転数、すなわちエンジン回転数NEを検出するエンジン回転数センサ63が設けられており、トルクコンバータ14の出力側にはタービンランナ14bの回転速度Ntを検出するタービン回転速度センサ64が設けられている。また、自動無段変速機12には内部のオイルの温度(油温)Tcvtを検出するCVT油温センサ65が設けられている。無段変速機構16の入力軸回転速度Ninは入力軸回転速度センサ66によって検出され、図示しないフットブレーキの踏込み量Bonはフットブレーキスイッチ67によって検出される。さらに、シフトレバー68の操作位置Pshはシフトレバー位置センサ69によって検出され、車速Vは車速センサ70により検出される。そして、これらセンサ群60〜70の検出情報は、図3に示すように、それぞれコントロールユニット80に取り込まれるようになっている。
【0074】
コントロールユニット80は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、バックアップメモリ、A/Dコンバータ、通信IC(Integrated Circuit)および定電圧電源回路等を含んで構成されており、ROM内に予め格納された制御プログラムに従って、上述のセンサ群60〜70からのセンサ情報に基づき、エンジン11内のスロットルアクチュエータ11c、燃料噴射装置11dおよび点火装置11e等を制御するとともに、図外の他の車載ECU(電子制御回路)からの信号等も取り込みながらエンジン11および自動無段変速機12の電子制御を実行するようになっている。
【0075】
また、コントロールユニット80は、ROM内に予め格納された制御プログラムに従って、車室内に設けられたシフトレバー68の操作位置Psh、車速V、スロットル開度θth等に応じて、エンジン発生トルク等に応じた無段変速機構16の変速に最適なライン圧PLと必要なセカンダリ圧とが得られるように、油圧制御装置20内の第1リニアソレノイドバルブ29および第2リニアソレノイドバルブ34への供給電流制御によって両リニアソレノイドバルブ29、34から出力される第1、第2制御信号圧Psv1、Psv2をそれぞれ制御する機能を有している。
【0076】
さらに、コントロールユニット80は、ROM内に予め格納された制御プログラムに従って、公知のアイドリングストップ(停車時エンジン停止)制御手段の機能、すなわち車両1の一時停止時におけるエンジン11の自動停止および再始動と自動無段変速機12の再発進時の制御とを実行する発進制御手段の機能を有している。そして、この発進制御手段としてのコントロールユニット80は、マニュアルバルブ26を通過したDレンジ圧により係合する発進クラッチC1に対して、エンジン11の停止によりメインポンプ21への機械的入力が停止されてから予め設定された設定時間が経過したときに、サブポンプ42からの油圧を供給させるようになっている。これにより、コントロールユニット80は、車両1のアイドリングストップ後の再発進に先立って、発進クラッチC1の作動油圧を予め所要の圧力に高めておき、再発進時に発進クラッチC1の係合状態への切替えを即座に実行できるようになっている。
【0077】
次に、作用について説明する。
【0078】
上述のように構成された本実施形態の車両用変速機の油圧制御装置においては、エンジン11の運転中には、シフトレバー操作位置Pshや車速V、スロットル開度θth等に応じて、油圧制御装置20内の第1リニアソレノイドバルブ29および第2リニアソレノイドバルブ34への供給電流制御によって両リニアソレノイドバルブ29、34から出力される第1、第2制御信号圧Psv1、Psv2が制御され、エンジン11の発生トルク等に応じたライン圧PLと無段変速機構16の変速に最適な制御圧(可変シーブ圧)とが確保されることによって、好ましい無段変速が実行される。また、車両1の一時停止時にエンジン11を自動停止させて無駄なアイドリングを減らし、再発進時にエンジン11を再起動させるアイドリングストップ制御が実行される。
【0079】
このような制御が実行される中、何らかの理由により、コントロールユニット80、サブポンプ42のモータ42m、あるいは、発進クラッチ制御弁45に異常が生じたと仮定する。
【0080】
例えば、サブポンプ42のモータ42mをON/OFF制御することができなくなると、OFF状態であれば、アイドリングストップ時の再発進時にショックを生じ易い程度で済むが、ON状態、特にサブポンプ42の制御回転数範囲内の高回転域でON/OFF制御できなくなると、サブポンプ42が常時高速回転する状態となり、無駄に高負荷で運転されることになり、問題となる。また、そのような故障状態において、発進クラッチ制御弁45が切替え制御できなくなると、ポンプ圧供給路43の油圧がさらに高くなってしまい、問題がある。
【0081】
これに対し、本実施形態の車両用変速機の油圧制御装置では、トルクコンバータ14側への作動圧通路部分31dの油圧が低圧側の設定圧力に達すると、サブポンプ42からのオイルがリリーフバルブ39を通して下流側に排出され、その排出によってもまだトルクコンバータ14側への作動圧通路部分31dの油圧が低圧側の設定圧力より高い高圧側の設定圧力に達してしまったような場合には、サブポンプ42からトルクコンバータ14側への作動圧通路部分31dに供給されるオイルがセカンダリレギュレータバルブ32のフェイルセーフ用ポート32j、32tを通してトルクコンバータ14側への作動圧通路部分31dより下流側に排出される。したがって、仮にサブポンプ42が高速駆動状態で停止困難な状態に陥ったとしても、サブポンプ42の吐出油圧が供給される回路中のオイルを十分に排出でき、無駄な電力消費を抑えることができることになる。
【0082】
また、リリーフバルブ39の設定圧である前記低圧側の設定圧力が、自動無段変速機12に設けられる発進クラッチC1が係合する係合圧力以下に設定されているので、サブポンプ42が高速駆動状態で停止困難な状態に陥ったとしても、発進クラッチC1が係合状態となる圧力に達することが防止される。
【0083】
さらに、セカンダリレギュレータバルブ32が、トルクコンバータ14側への作動圧通路部分31dの油圧を低減させる方向のスプール32sの変位量が予め設定された変位量を超えるときに、サブポンプ42からトルクコンバータ14側への作動圧通路部分31dに供給されるオイルをトルクコンバータ14側への作動圧通路部分31dより下流側に流出させるフェイルセーフ用ポート32j、32tを開放するので、セカンダリレギュレータバルブ32がトルクコンバータ14側への作動圧通路部分31dのオイルを減圧のために排出するのに加えて、サブポンプ42からトルクコンバータ14側への作動圧通路部分31dに供給されるオイルがトルクコンバータ14側への作動圧通路部分31dより下流側に排出されることになり、サブポンプ42の吐出油圧が供給される回路中のオイルを十分に排出させることができる。
【0084】
加えて、発進クラッチC1に対して、メインポンプ21の機械的入力が停止されてから予め設定された設定時間が経過したときに、サブポンプ42からの油圧を供給する発進制御手段を備えているので、アイドリングストップ後の再発進時のようにメインポンプ21が低回転となる場合における油圧の応答遅れを解消でき、変速ショックを軽減できることになる。しかも、電動のサブポンプ42で発進クラッチC1に直接的に油圧を供給するようにするので、サブポンプ42を小容量で軽量なものにすることができる。
【0085】
また、オイル供給経路FPのうちトルクコンバータ14側への作動圧通路部分31dより上流側にライン圧制御バルブ25が配置され、セカンダリレギュレータバルブ32がライン圧制御バルブ25からトルクコンバータ14側への作動圧通路部分31dに流出したオイルの下流側通路部分35、36への流出量を第2制御信号圧Psv2に応じて変化させるので、ライン圧制御バルブ25から排出される余剰のオイルの油圧を基にセカンダリレギュレータバルブ32により作動圧通路部分31dの油圧が制御されることになり、ライン圧を元圧とする変速制御が優先的に実行されるとともに、その余剰圧を利用して変速機内の他の流体機器、例えばトルクコンバータ14やロックアップクラッチ14d等の作動圧を確保することができる。
【0086】
さらに、セカンダリ圧通路31がトルクコンバータ14にオイルを供給するよう形成されるとともに、サブポンプ42からトルクコンバータ14側への作動圧通路部分31dにもオイルを供給するようにしているので、アイドリングストップ後の再発進時のようにメインポンプ21が低回転となる場合に、発進に必要なトルクコンバータ14の作動圧をも確実に供給できる。
【0087】
また、トルクコンバータ14側への作動圧通路部分31dが、第1チェックバルブ37より上流側で、トルクコンバータ14の作動を制御する伝動制御用のロックアップクラッチ14dを作動させるセカンダリ圧回路30に接続されているので、アイドリングストップを行う車両1においてはアイドリングストップ時にドライブトレーンに制動作用を持たせることができ、内燃機関と電動走行モータを持つハイブリッドエンジンを搭載する場合には再発進時にその電動走行モータの駆動力を伝達ロス無く変速機構に入力できる。
【0088】
その他、本実施形態においては、トルクコンバータ14側への作動圧通路部分31dの油圧が上昇したとき、サブポンプ42の吐出油圧が供給される回路を既存のレギュレータバルブ32のスプール32sの変位を利用して確実に下流側に接続して、サブポンプ42の負荷を低減させることができ、セカンダリレギュレータバルブ32から流出するオイルをオイルキャッチタンク46に供給するので、オイルパン22側に貯留されるオイルの量が減少することになり、自動無段変速機12の高入力回転時における大物歯車部品等によるオイルの攪拌抵抗を抑え、トルク損失を抑えることができる。
【0089】
ここで、図4〜図6と図1を用いて、セカンダリレギュレータバルブ32のスプール32sの変位とその状態下での作用について、より具体的に説明する。
【0090】
図4は本実施形態に係る車両用変速機の油圧制御装置の概略の油圧回路図であってエンジン停止時の2つのレギュレータバルブの状態を示す図であり、図5は本実施形態に係る車両用変速機の油圧制御装置の概略の油圧回路図であってエンジン低回転時または変速時の2つのレギュレータバルブの状態を示す図、図6は本実施形態に係る車両用変速機の油圧制御装置の概略の油圧回路図であってエンジンの通常運転時の2つのレギュレータバルブの状態を示す図である。
【0091】
エンジン11の停止時には、メインポンプ21は駆動されず、図4に示すように、プライマリレギュレータバルブ25およびセカンダリレギュレータバルブ32は、それぞれのスプール25s、32sが図中の最上の位置、すなわち復帰位置に停止した非作動状態にある。
【0092】
今、アイドリングストップによるエンジン11の自動停止後の停止時間が設定時間を超えたとすると、サブポンプ42が駆動され始め、サブポンプ42から発進クラッチC1とセカンダリ圧通路31の作動圧通路部分31dとにそれぞれ油圧が供給される。したがって、アイドリングストップ後の再発進に先立って発進クラッチC1の作動油圧が所要の圧力に高められ、再発進時に発進クラッチC1の係合油圧を即座に確保するに足る油圧が確保されることで、油圧の応答遅れによる変速ショックが抑制される。
【0093】
次に、エンジン11の低回転時あるいは変速時には、メインポンプ21が駆動されるが、その回転数[rpm]は低い。したがって、図5に示すように、プライマリレギュレータバルブ25のスプール25sはライン圧を制御しつつ変位する作動状態となるが、その変位量は供給圧ポート25aを排出ポート25fに連通させる程度に達せず、セカンダリレギュレータバルブ32のスプール32sが復帰位置に停止した非作動状態にある。
【0094】
このとき、コントロールユニット80は、メインポンプ21のオイルの吐出量を補うようにサブポンプ42を作動させるようにしてもよく、そのようにすれば、メインポンプ21の吐出容量を抑え、小型化を図ることが可能になる。
【0095】
次に、エンジン11の通常運転時には、メインポンプ21が駆動され、その回転数[rpm]もある程度高くなることから、図6に示すように、プライマリレギュレータバルブ25のスプール25sがライン圧を制御しつつ変位する作動状態となるとともに、セカンダリレギュレータバルブ32のスプール32sも余剰のオイルを下流側通路部分35、36に排出しつつセカンダリ圧を調圧・制御する作動状態となる。
【0096】
このとき、コントロールユニット80は、オイルの温度や運転状態に応じて潤滑量を増減させるといった制御をサブポンプ42の作動の有無により実行するようにしてもよく、そのようにすれば、自動無段変速機12の作動状態を安定化させるとともに、その耐久性を高めることができる。
【0097】
一方、何らかの理由により、エンジン11の所定回転数以上の運転中に、サブポンプ42がその制御回転数範囲内の高回転域で回転する状態でON/OFF制御できなくなったとすると、余剰のオイルの排出量が多くなる。
【0098】
このとき、発進クラッチ制御弁45は制御されず、内部の弁体を復帰させた状態となって、チェックバルブ44を介してサブポンプ42側から供給圧ポート45pに供給されるオイルをドレーンポート45dから排出させる状態となり、発進クラッチC1にはポンプ圧供給路43の上昇した油圧を導入することはない。また、ポンプ圧供給路43の油圧はリリーフバルブ39の設定圧である低圧側の設定圧力付近に抑制される。
【0099】
仮に、発進クラッチ制御弁45が異物を噛み込み、供給圧ポート45pに供給されるオイルをドレーンポート45dから排出させることができない状態になったとすると、リリーフバルブ39からの排出量が増えるが、徐々にポンプ圧供給路43およびトルクコンバータ14側の作動圧通路部分31dの油圧が上昇し、セカンダリ圧通路31の油圧が高圧側の設定圧力に達し得る状態となる。
【0100】
セカンダリ圧通路31の油圧が高圧側の設定圧力に達すると、図1に示すように、セカンダリ圧通路31の油圧を低減させるセカンダリレギュレータバルブ32のスプール32sの変位量が設定変位量を超え、セカンダリレギュレータバルブ32の入口側および出口側のフェイルセーフ用ポート32j、32tが連通して、サブポンプ42側からのポンプ圧供給路43のオイルを下流側に排出させる状態となり、セカンダリ圧通路31の油圧が制限される。
【0101】
このように、本実施形態の車両用変速機の油圧制御装置においては、トルクコンバータ14側への作動圧通路部分31dの油圧が低圧側の設定圧力に達すると、リリーフバルブ39からオイルが排出され、それによってもトルクコンバータ14側への作動圧通路部分31dの油圧が低圧側の設定圧力より高い高圧側の設定圧力に達したときには、サブポンプ42からトルクコンバータ14側への作動圧通路部分31dに供給されるオイルがセカンダリレギュレータバルブ32によって作動圧通路部分31dより下流側に排出されるようになっているので、サブポンプ42が高速駆動状態で停止困難な状態に陥ったとしても、サブポンプ42の吐出油圧が供給される回路中のオイルを十分に排出でき、無駄な電力消費を抑えることができる信頼性の高い自動無段変速機12の油圧制御装置を提供することができる。
【0102】
なお、上述の実施形態に係る車両用変速機の油圧制御装置においては、車両用変速機として自動無段変速機を例示し、そのライン圧回路にプライマリ、セカンダリの両シーブを作動させる油圧アクチュエータを接続するものとし、セカンダリ圧回路にロックアップクラッチを接続するものとしたが、ライン圧回路には主として油圧供給を優先すべき変速制御用の油圧作動部が接続され、その余剰油で生成可能な作動油圧を使用できる油圧作動部が接続され、セカンダリレギュレータバルブより下流側の下流側通路部分に潤滑・冷却系のオイル通路に接続されるというものであればよく、例えば専ら無段変速機の伝達トルクを左右するように構成されたセカンダリシーブにセカンダリ圧を供給することも考えられる。また、上述の実施形態では、無段変速機としたが、本発明は、多段(有段)変速機の油圧制御装置としてもよいことはいうまでもなく、その場合、例えばライン圧回路に複数の変速制御用の油圧式のクラッチやブレーキ(摩擦係合装置)が接続され、セカンダリ圧回路に例えばロックアップクラッチが接続される。さらに、上述の実施形態では、作動圧制御バルブがスプールバルブで構成されるものとしたが、弁体の変位で複数のポートの連通状態を変化させる他の方式のバルブであってもよく、直線変位のみならず、弁体が回動変位するものでもよい。また、作動圧制御バルブに入力する制御信号を液圧信号である第2制御信号圧としたが、弁体を電磁力で付勢するための電気信号であってもよい。
【0103】
以上説明したように、本発明に係る車両用変速機の油圧制御装置は、特定の作動圧通路部分の油圧が低圧側の設定圧力に達すると、リリーフ機能付の方向制御バルブからオイルが排出され、それによっても特定の作動圧通路部分の油圧が低圧側の設定圧力より高い高圧側の設定圧力に達したときには、サブポンプから特定の作動圧通路部分に供給されるオイルが作動圧制御バルブによって特定の作動圧通路部分より下流側に排出されるようにしているので、サブポンプや制御弁等に異常が生じても、サブポンプの吐出油圧が供給される回路中のオイルを十分に排出できるフェイルセーフ機能を持たせて、無駄な電力消費を抑えることができる信頼性の高い車両用変速機の油圧制御装置を提供することができるという効果を奏するものであり、車両用変速機の油圧制御装置、特に、潤滑、冷却および作動用の流体となるオイルを機械式のメインポンプと電動式のサブポンプとによって供給できるように構成された車両用変速機の油圧制御装置全般に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用変速機の油圧制御装置の概略の油圧回路図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る車両用変速機の油圧制御装置を搭載した車両の概略構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る車両用変速機の油圧制御装置を搭載した車両の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る車両用変速機の油圧制御装置の概略の油圧回路図であってエンジン停止時の2つのレギュレータバルブの状態を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る車両用変速機の油圧制御装置の概略の油圧回路図であってエンジン低回転時または変速時の2つのレギュレータバルブの状態を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る車両用変速機の油圧制御装置の概略の油圧回路図であってエンジンの通常運転時の2つのレギュレータバルブの状態を示す図である。
【符号の説明】
【0105】
11 エンジン(動力源)
12 自動無段変速機(車両用変速機)
14 トルクコンバータ(流体伝動装置)
14d ロックアップクラッチ(伝動制御用の油圧アクチュエータ)
20 油圧制御装置
21 メインポンプ(機械式ポンプ)
22 オイルパン
24 ライン圧供給通路(オイル供給経路)
25 プライマリレギュレータバルブ(ライン圧制御バルブ)
25s スプール
30 セカンダリ圧回路
31 セカンダリ圧通路(特定の作動圧通路部分、オイル供給経路)
31d 作動圧通路部分(セカンダリ圧通路のうち第1チェックバルブより下流側、特定の作動圧通路部分)
32 セカンダリレギュレータバルブ(作動圧制御バルブ、油圧制限手段)
32h バルブ収納部(バルブボディ)
32j、32t フェイルセーフ用ポート
32s スプール(弁体)
35、36 下流側通路部分(オイル供給経路)
37 第1チェックバルブ
38 第2チェックバルブ
39 リリーフバルブ(リリーフ機能付の方向制御弁、油圧制限手段)
42 サブポンプ(電動式ポンプ)
46 オイルキャッチタンク(オイル収容手段)
50 ライン圧回路
51 プライマリプーリ
51c、52c 油圧アクチュエータ(変速制御用の油圧アクチュエータ)
52 セカンダリプーリ
80 コントロールユニット(発進制御手段、アイドリングストップ制御手段)
C1 発進クラッチ
FP オイル供給経路
Psv1 第1制御信号圧(第1の入力信号)
Psv2 第2制御信号圧(第2の入力信号)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用変速機が駆動源からの動力を入力するときに該入力に応じた吐出量で車両用変速機内のオイルパンから該車両用変速機内のオイル供給経路にオイルを吐出する機械式のメインポンプと、
前記オイル供給経路の特定の作動圧通路部分に逆流を阻止しつつオイルを供給することができる電動式のサブポンプと、
前記特定の作動圧通路部分に供給される供給油圧に応動して前記特定の作動圧通路部分より下流側に前記オイルを流出させて前記特定の作動圧通路部分の油圧を制限する油圧制限手段と、を備えた車両用変速機の油圧制御装置において、
前記油圧制限手段が、
前記メインポンプから前記特定の作動圧通路部分に供給される第1供給油圧に応動し、前記特定の作動圧通路部分より下流側に前記オイルを流出させながら前記特定の作動圧通路部分の油圧を制御する作動圧制御バルブと、
前記サブポンプから前記特定の作動圧通路部分に供給される第2供給油圧に応動し、該第2供給油圧が予め設定された低圧側の設定圧力に達したときに前記特定の作動圧通路部分より下流側への前記オイルの流出を許容する一方、該流出方向と逆の方向への流れを規制するリリーフ機能付の方向制御バルブと、を含み、
前記特定の作動圧通路部分の油圧が前記低圧側の設定圧力より高い高圧側の設定圧力に達したとき、前記作動圧制御バルブが、前記サブポンプから前記特定の作動圧通路部分に供給されるオイルを前記特定の作動圧通路部分より下流側に流出させることを特徴とする車両用変速機の油圧制御装置。
【請求項2】
前記低圧側の設定圧力が、前記車両用変速機に設けられる発進クラッチが係合する係合圧力以下に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用変速機の油圧制御装置。
【請求項3】
前記作動圧制御バルブが、前記特定の作動圧通路部分の油圧を低減させる方向の前記弁体の変位量が予め設定された変位量を超えるときに、前記サブポンプから前記特定の作動圧通路部分に供給されるオイルを前記特定の作動圧通路部分より下流側に流出させるフェイルセーフ用ポートを開放することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用変速機の油圧制御装置。
【請求項4】
前記発進クラッチに対して、前記メインポンプの機械的入力が停止されてから予め設定された設定時間が経過したときに、前記サブポンプからの油圧を供給する発進制御手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載の車両用変速機の油圧制御装置。
【請求項5】
前記オイル供給経路のうち前記特定の作動圧通路部分の上流側に位置し、第1の入力信号に応じて前記メインポンプから供給されるオイルの前記特定の作動圧通路部分への流出量を変化させて前記特定の作動圧通路部分より上流側に変速制御の元圧となるライン圧を生成するとともに該ライン圧を前記第1の入力信号に応じて制御するライン圧制御バルブを備え、
前記作動圧制御バルブが、前記ライン圧制御バルブから前記特定の作動圧通路部分に流出したオイルの前記下流側への流出量を第2の入力信号に応じて変化させることを特徴とする請求項1ないし請求項4のうちいずれか1の請求項に記載の車両用変速機の油圧制御装置。
【請求項6】
前記特定の作動圧通路部分が、前記車両用変速機の入力部に設けられた流体伝動装置に第1チェックバルブを介して前記オイルを供給するよう形成されるとともに、
前記サブポンプが、前記特定の作動圧通路部分のうち前記第1チェックバルブより下流側に第2チェックバルブを介して前記オイルを供給することを特徴とする請求項1ないし請求項5のうちいずれか1の請求項に記載の車両用変速機の油圧制御装置。
【請求項7】
前記特定の作動圧通路部分が、前記第1チェックバルブより上流側で、前記流体伝動装置の作動を制御する伝動制御用の油圧アクチュエータを作動させるセカンダリ圧回路に接続されていることを特徴とする請求項6に記載の車両用変速機の油圧制御装置。
【請求項8】
前記作動圧制御バルブが、前記特定の作動圧通路部分の油圧を軸方向一方側の推力として受圧するスプールと、該スプールの軸方向変位によって相互の連通状態が変化する複数のポートを有するバルブボディとで構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のうちいずれか1の請求項に記載の車両用変速機の油圧制御装置。
【請求項9】
供給されるオイルを一時的に収容するよう前記車両用変速機内に設けられ、該収容したオイルを徐々に流下させるオイル収容手段を備え、
前記作動圧制御バルブが、前記サブポンプから前記特定の作動圧通路部分に供給されるオイルを前記特定の作動圧通路部分より下流側に流出させるとき、前記作動圧制御バルブから流出するオイルが前記オイル収容手段に供給されることを特徴とする請求項1ないし請求項8のうちいずれか1の請求項に記載の車両用変速機の油圧制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−101427(P2010−101427A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273445(P2008−273445)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】