説明

車両用情報提供装置

【課題】 利用者に対する聴覚情報提供手段の音響特性を良好にすることが可能な車両用情報提供装置を提供する。
【解決手段】 利用者に所定情報を報知する車両用情報提供装置であって、利用者に車両の各種状態に応じた聴覚情報を提供する聴覚情報提供手段220と、聴覚情報提供手段220を制御する制御手段202を有する回路基板301と、回路基板301の背後に配設されるカバー部材311とを備え、聴覚情報提供手段220は、回路基板301の背面に配設されたスピーカ223と、このスピーカ223から発せられる音を回路基板301側に導くようにカバー部材311に一体形成された導音部224とを備えてなり、導音部224における第2の周壁部312bの内壁面に吸音部材320を配設してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばスピーカやブザーのごとき吹鳴手段を少なくとも備えた聴覚情報提供手段を用いて利用者に各種情報を提供する車両用情報提供装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の聴覚情報提供手段を備えた車両用情報提供装置にあっては、例えば車両用計器内に搭載された指針式表示部からなる表示手段の背後に位置する回路基板の裏面に聴覚情報提供手段である警報用のブザー(吹鳴手段)を取り付け、ドライバー(利用者)がシートベルトを装着していない場合には前記ブザーを鳴らし、前記ブザーの警報(吹鳴)音は前記回路基板の背後を覆うカバーに設けた複数のスリット(孔)を通って前記車両用計器の背後へ伝えられ、その後、前記車両用計器を収納するインストルメントパネル(以下、インパネと言う)の内部で反射を繰り返して前記利用者側に伝わるようになっていた。具体的には、前記警報音は前記車両用計器と前記インパネとの隙間から漏れた音あるいは前記インパネ内部に設けられた別の隙間を通り前記利用者の足下等から漏れた音として前記利用者に伝わる構成であった(例えば下記特許文献1参照)。
【特許文献1】実用新案登録第3094073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用情報提供装置の場合、カバーのスリットを通って車両用計器の背後へ伝えられるブザー音(警報音)は、前記車両用計器と前記インパネの隙間で反射を繰り返すため、前記車両用計器と前記インパネの形状に応じて前記ブザー音の干渉、及び伝わり方が変わっていた。この結果、前記車両用計器から同じブザー音を発しても、前記利用者には車種により異なる音圧、音質として聞こえていた。また、前記利用者には、元来、前記ブザーが持っている音に対して劣化(変質)した音(前記警報音)が必然的に伝わることから、前記警報音の音圧が不足してしまう、もしくは前記警報音の音質が悪化してしまうという問題があり、車両用情報提供装置における聴覚情報提供手段の更なる改良の余地が残されていた。
そこで本発明は、前述の課題に対して対処するため、利用者に対する聴覚情報提供手段の音響特性を良好にすることが可能な車両用情報提供装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、利用者に所定情報を報知する車両用情報提供装置であって、前記利用者に車両の各種状態に応じた聴覚情報を提供する聴覚情報提供手段と、前記聴覚情報提供手段を制御する制御手段を有する回路基板と、前記回路基板の背後に配設されるカバー部材とを備え、前記聴覚情報提供手段は、少なくとも前記回路基板の背面に配設された吹鳴手段と、前記吹鳴手段から発せられる音を前記回路基板側に導くように前記カバー部材に一体形成された導音部とを備えてなり、前記導音部における内壁面の所定箇所に吸音部材を配設してなることを特徴とする。
【0005】
また本発明は、利用者に所定情報を報知する車両用情報提供装置であって、前記利用者に車両の各種状態に応じた聴覚情報を提供する聴覚情報提供手段と、前記聴覚情報提供手段を制御する制御手段を有する回路基板と、前記回路基板の背後に配設されるカバー部材とを備え、前記聴覚情報提供手段は、少なくとも前記回路基板の背面に配設された吹鳴手段と、前記吹鳴手段から発せられる音を前記回路基板側に導くように前記カバー部材に一体形成された導音部とを備えてなり、前記導音部における内壁面の所定箇所に曲面部を形成してなることを特徴とする。
【0006】
また本発明は、利用者に所定情報を報知する車両用情報提供装置であって、前記利用者に車両の各種状態に応じた聴覚情報を提供する聴覚情報提供手段と、前記聴覚情報提供手段を制御する制御手段を有する回路基板と、前記回路基板の背後に配設されるカバー部材とを備え、前記聴覚情報提供手段は、少なくとも前記回路基板の背面に配設された吹鳴手段と、前記吹鳴手段から発せられる音を前記回路基板側に導くように前記カバー部材に一体形成された導音部とを備えてなり、前記導音部の底壁部に孔部を形成してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、初期の目的を達成でき、利用者に対する聴覚情報提供手段の音響特性を良好にすることが可能な車両用情報提供装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(第1実施形態)以下、添付図面に基づいて本発明の第1実施形態を説明する。
【0009】
図1は、本実施形態における車両用情報提供装置の一例の概観図を示すもので、車両用情報提供装置100は、第1,第2の表示手段D1,D2を備えた車両用メータからなる。第1の表示手段(表示部)D1は、TFT等の液晶表示パネルや有機ELパネル等からなり、図1中、車両用情報提供装置100の中央下方に配設され、車速を含む各種情報の表示を行うものである。
【0010】
また第2の表示手段D2は、後述する指針と指標板とを備えた指針式表示部からなり、図1中、車両用情報提供装置100の左方に配設された回転計からなる第1の指針式表示部101と、図1中、車両用情報提供装置100の右方に配設された燃料計からなる第2の指針式表示部102と、温度計からなる第3の指針式表示部103とから構成される。また本実施形態の場合、各第2の表示手段D2における前記指標板の表面は、第1の表示手段D1の表示面と略同一面となるように設定されている。
【0011】
図2は、図1の車両用情報提供装置100のブロック図である。その構成としては、車両情報の入出力を行う車両情報端子210及び多重通信入出力端子211と、車両インターフェース(車両I/F)手段201と、車両用情報提供装置100の制御を行う制御手段202と、処理プログラムを格納するROM等からなる記憶手段203と、表示部D1の表示制御及び各指針式表示部101,102,103の駆動制御を行う駆動手段204と、前記各種情報を聴覚情報として報知する聴覚情報提供手段220とを有している。
【0012】
また、聴覚情報提供手段220の構成としては、音/音声を再生する音/音声合成手段221と、この音/音声合成手段221からの出力信号(音/音声出力信号)を増幅するアンプ222と、このアンプ222からの増幅信号を出力する例えば略円形のスピーカ(吹鳴手段)223と、このスピーカ223から発せられる音を後述する間隙を通じて車両内部である車室(車両を運転する利用者)に導く導音部224とを有している。
【0013】
スピーカ223は、本実施形態の場合、後述するセンターポールが挿入される貫通孔部を有するトッププレートと中央部に突出形成されたセンターポールを有するバックプレートと前記センターポールを取り巻くように前記両プレート間に狭持されたリング状マグネットとを備えた磁気回路と、前記センターポールと前記トッププレートとの間に形成される磁気空隙内に配設されるボイスコイルと、このボイスコイルの先端に連結されるコーン型の振動板と、前記磁気回路と前記振動板を所定の位置に支持するフレームとから主に構成され、前記ボイスコイルに電流を流すと前記ボイスコイルに力が作用し、前記ボイスコイルの動きに連動して前記振動板が振動することによって音を発する、所謂、動電型スピーカ(コーンスピーカ)からなり、車両用情報提供装置100における第3の指針式表示部103の下方に配設される(図1参照)。
【0014】
図3は、図1中、A−A線に沿った車両用情報提供装置100(第3の指針式表示部103)の断面図を示しており、以下、第3の指針式表示部103の構成について詳細説明を行う。なお、第1,第2の指針式表示部101,102の構成は、第3の指針式表示部103の構成と略同一であるため、その詳細な説明は省略する。
【0015】
第3の指針式表示部103は、回路基板301と、この回路基板301に導通装着され回転軸302が前方に延びる駆動装置303と、回転軸302にて回転駆動される指針304と、この指針304の背後に位置して回路基板301上に配設される指標板305と、この指標板305を照明する光源306と、指標板305を保持するケース体307と、指針304や指標板305を露出させるための見返し部材308と、この見返し部材308の前方側に配置される透視パネル309と、この透視パネル309の外縁部を隠蔽するバイザー310と、回路基板301の背面側を覆うカバー部材311とから構成される。
【0016】
回路基板301は、例えばガラスエポキシ系基材に配線パターン(図示せず)を施した硬質回路基板からなり、聴覚情報提供手段220を制御する制御手段202と、駆動装置303を駆動・制御する駆動手段204と、音/音声合成手段221と、アンプ222と、スピーカ223と、光源306と、抵抗、コンデンサ等の各種回路部品(図示せず)とが前記配線パターンに導通接続されている。また、回路基板301は、その背面に実装されたスピーカ223に対応して開口形成された略円形の孔部301aを備えている。
【0017】
駆動装置303は、可動磁石式計器またはステッピングモータからなり、回転軸302が回路基板301を貫通するように、その主要部がカバー部材311側となる回路基板301の背後に装着され、且つ半田付け等の適宜導通手段により前記配線パターン(駆動手段204)に電気接続される。
【0018】
指針304は、合成樹脂からなり、指標板305の後述する指標部を指示するように線状に延びる指示部304aと、この指示部304aの回転中心部を覆うカバー(指針キャップ)304bとを備えている。
【0019】
指標板305は、PC等の合成樹脂からなり、略薄板状に形成され、その表面には指示部304aの指示する目盛,数字等からなる指標部305aが形成されている。この場合、指標部305aは指針304の回転軌道に沿って円弧状に配列されている。
【0020】
光源306は、例えば白色光を発するチップ型発光ダイオードからなり、カバー部材311とは反対側となる回路基板301の前面に実装され、指標部305aを白色に発光させる発光体である。
【0021】
ケース体307は、例えば白色の合成樹脂からなり、回路基板301と指標板305との間に位置しており、指標板305を保持する保持部材としての機能、光源306からの照明光を前方側に反射する反射部材としての機能等を有している。
【0022】
なお、307aは、ケース体307に設けた例えば円筒カップ型の凹部307bと回路基板301とによって囲まれた密閉空間であり、この密閉空間307aは、回路基板301の孔部301aに連通しており、孔部301aに隣接して配設されるスピーカ223のエンクロージャーとして作用する。
【0023】
このエンクロージャーである密閉空間307aは、スピーカ223の背面(回路基板301の孔部301a)から放射される音の振動空間として利用されることになるが、本実施形態では、密閉空間307aを取り巻く凹部307bと回路基板301とが当接(密着)して密閉空間307aを構成することから、スピーカ223の前面(つまり、孔部301aとは反対側の導音部224側)から出る音が、スピーカ223の前記背面から回り込む音によって打ち消されないようになっている。ここで、前記回り込む音とは、スピーカ223の前記背面から出る音が、孔部301a、密閉空間307a並びに凹部307bと回路基板301との当接面を介して密閉空間307a外部に漏れ出る音のことを指す。
【0024】
また、ケース体307における外周部の適宜箇所には、爪部等からなる複数の係合部(図示せず)が設けられ、前記各係合部がカバー部材311の後述する複数の係止部に各々係止されることで、回路基板301を狭持するようにケース体307とカバー部材311とが嵌合固定されるようになっている。
【0025】
見返し部材308は、例えば黒色の合成樹脂からなり、指標板305の前方に配設され、指針304と指標板305を前記利用者(運転者)にそれぞれ露出する開口窓部308aを備えている。
【0026】
透視パネル309は、透光性合成樹脂からなり、略凹面状に形成され、見返し部材308の開口窓部308aを覆うように見返し部材308によって支持(保持)されており、指針304と指標板305を前記利用者に対して視認(透視)可能に構成されている。
【0027】
バイザー310は、例えば黒色の合成樹脂からなり、略筒状に形成され、透視パネル309の一部である透視パネル309外縁部のみを隠蔽するように透視パネル309の前方に配設されている。
【0028】
カバー部材311は、例えば白色の合成樹脂からなり、回路基板301側が開口する略箱形形状に形成され、駆動装置303を収納する収納部材としての機能、図示しない放熱孔を通じて光源306から発せられる熱等を車両用情報提供装置100外部に逃がすための放熱部材としての機能等を有している。
【0029】
かかるカバー部材311には、図3中、B部を拡大した図である図4,正面図である図5に詳しく示すようにスピーカ223に対応する部分に、周壁部312と底壁部(底部)313と底壁部313とは反対側が開口する開口部314とを有する枠体からなり、スピーカ223の前面から出る音を前記利用者側に導く導音部224が一体形成されている。
【0030】
この導音部224の周壁部312は、スピーカ223を取り巻く略「C」字状の第1の周壁部312aと、この略「C」字状の第1の周壁部312aの途切れた部分を繋ぐように、図5中、第1の周壁部312aの下方に延在する略「コ」字状からなる第2の周壁部312bとを備え、この場合、各周壁部312a、312bの高さ寸法は、略同一に設定され、また第2の周壁部312bは、カバー部材311の周囲(外部)にはみ出る構成となっている。
【0031】
そして、両周壁部312a、312bにて囲まれる領域により開口部314が構成され、以下、第1の周壁部312aに対応する開口部314の領域を第1の開口部314a、第2の周壁部312bに対応する開口部314の領域を第2の開口部314bとする。なお、315は、導音部224において、底壁部313よりも一段高い位置に形成された平坦部であり、この平坦部315は、第1の周壁部312a(第1の開口部314a)に対応する底壁部313箇所を取り巻く略馬蹄形状の水平面からなる。
【0032】
従って、カバー部材311を正面から見ると、底壁部313と平坦部315とが開口部314全体を臨むように構成され、このことは、底壁部313と平坦部315とを合わせた領域が、各開口部314a,314bからなる開口部314領域に相当することを意味している。
【0033】
この際、図4に示すように略馬蹄形状の平坦部315が、略円形のスピーカ223の一部となるスピーカ223の前面側外縁部と当接するように構成されていることによって、スピーカ223の前面から出る音が、スピーカ223と第1の周壁部312aとの隙間で干渉を生じることがないようになっている。
【0034】
また、図4中、316は、平坦部315と底壁部313と間を繋ぐための立壁部であり、この立壁部316は、第1の周壁部312aや第2の周壁部312bと略平行に沿って延びる壁部からなる。そして、この場合、スピーカ223から発せられる音は、立壁部316と底壁部313との境界部分及びその近傍(つまり図4中、領域J1)にて音の向きが第2の周壁部312b側に変化する。また、この第2の周壁部312b側に音の向きが変わった音は、さらに底壁部313と第2の周壁部312bとの境界部分及びその近傍(つまり図4中、領域J2)にて音の向きが開口部314側(第2の開口部314b側)に変化する。
【0035】
なお、カバー部材311において、導音部224を除く外周部の適宜箇所には、ケース体307の前記各係合部に対応する複数の係止部(図示せず)がそれぞれ形成されている。従って、ケース体307の前記各係合部をカバー部材311の前記各係止部に係止させることで、導音部224を有するカバー部材311が、回路基板301の背後を覆うようにケース体307に装着されることになるが、この際、本実施形態では、カバー部材311のうち導音部224の一部である第2の周壁部312bのみが、回路基板301の周囲(外部)にはみ出る構成となるため、この第2の周壁部312bに対応する第2の開口部314bが、回路基板301によって覆い隠されない状態となる。
【0036】
これにより、第2の開口部314bは、導音部224内に収納されるスピーカ223から発せられる音(音波)を回路基板301の前方側へと導くための開口窓からなる。つまり、スピーカ223の前面から出る前記音波は、導音部224内部及び第2の開口部314bを通り、回路基板301の前方側となる車両用情報提供装置100外部に導かれるようになっている。
【0037】
また本実施形態では、図4に示すように第2の周壁部312bの内壁面に沿うように、クッション材等からなる吸音部材320が、両面テープ等の所定の固定手段を用いて固定(配設)される構成となっている。
【0038】
ここで、図6(a)は、第2の周壁部312bの前記内壁面に吸音部材320が固定されていない状態での、スピーカ223吹鳴時における前記音波の音圧ー周波数特性を示している。このように第2の周壁部312bに吸音部材320が固定されていない場合には、音圧レベルが、ある所定の周波数F1において、波形の鋭い突出部分となるピークW1を有するとともに、所定の周波数F1とは異なる他の周波数F2において、波形の鋭い落ち込み部分となるディップW2を有するという現象が生じる。
【0039】
つまり、スピーカ223から発せられる前記音波は、導音部224の内部を通過し、第2の開口部314bから外部に放射される。この際、導音部224の内部において、特に第2の周壁部312bと底壁部313との境界部分及びその近傍にて音の向きが変化する箇所(つまり前述した領域J2)と、第2の開口部314bとで、音響インピーダンスが大きく変化することに起因して、前記音波の一部は、反射して導音部224内部に戻ってくる。これにより特定の周波数(例えば前述した周波数F1、F2)において、導音部224内部を通り第2の開口部314b側に向かう前記音波と、これとは逆に第2の開口部314bから導音部224内部に戻ってくる前記音波の一部との干渉に伴い定在波が発生する。
【0040】
そして、この定在波が発生する前記特定の周波数では、前記音波と前記音波の一部とが強め合うように干渉することで、前記特定の周波数のうち所定の周波数F1にて前述したピークW1が生じるとともに、前記音波と前記音波の一部とが弱め合うように干渉することで、前記特定の周波数のうち他の周波数F2にて前述したディップW2が生じることになる。従って、第2の周壁部312bに吸音部材320が配設されていない状態では、前記音波の音圧ー周波数特性が、ピークW1やディップW2のある乱れた特性となってしまう。
【0041】
そこで、本実施形態では、前記音波の音圧ー周波数特性ができるだけ乱れのない略平坦(略フラット)な特性を有するように、第2の周壁部312bの内壁面に吸音部材320を配設する構成とした。図6(b)は、第2の周壁部312bの前記内壁面に吸音部材320を配設した状態での音圧ー周波数特性を示す。
【0042】
かかる図6(b)に示す音圧ー周波数特性によれば、所定の周波数F1にて生じるピークW3が、図6(a)の吸音部材320を前記内壁面に配設しないときのピークW1に比べて大幅に低減され、且つ、他の周波数F2にて生じるピークW4が、図6(a)の吸音部材320を前記内壁面に配設しないときのピークW2に比べて大幅に低減されていることが理解できる。
【0043】
つまり、このことは第2の周壁部312bの前記内壁面に配設される吸音部材320が導音部224内部に生じる前記定在波を吸収する機能を有し、これにより前記定在波が抑制されるため、本実施形態によればピークW1の突出量やディップW2の落ち込み量が大幅に低減されたピークW3、ディップW4を有する音圧ー周波数特性を得ることができることを意味してなる。
【0044】
従って、例えば前記内壁面に吸音部材320を配設した状態にて、スピーカ223から所定の周波数F1を有する前記音波が発せられると、かかる所定の周波数F1を有する前記音波は、ピークW3の突出量が僅かであるから、第2の開口部314bから音質の良好な状態で放射され、その後、後述するように前記利用者の眼前に直接、伝達される。また、当然、スピーカ223から他の周波数F2を有する前記音波が発せられると、かかる他の周波数F2を有する前記音波は、ディップW4の落ち込み量が僅かであるから、第2の開口部314bから音質の良好な状態で放射される。
【0045】
以上の各部により、車両用情報提供装置100(第3の指針式表示部103)が構成され、さらに、この車両用情報提供装置100の下方には、バイザー310や見返し部材308に沿うようにコラムカバー400が配設される(図3参照)。
【0046】
このコラムカバー400とバイザー310(見返し部材308)との間には、第2の開口部314を通過するスピーカ223の音を前記利用者側に導くための微小なクリアランスからなる間隙401が形成されているため、結局、スピーカ223の前面から出る音は、導音部224内部及び第2の開口部314bを通過し、その後、間隙401を通過して前記利用者の眼前に直接、伝達されることになる。
【0047】
この際、前記利用者の眼前に到達する音(音波)は、前記定在波が吸音部材320によって吸収されることで、音圧ー周波数特性の乱れが抑制される。このため、周波数の値に関係なく音質の良好な音となる。なお、本実施形態における車両用情報提供装置100は、図2に示すように多重通信ライン230を介して走行制御装置231と操作手段232とに接続されている。
【0048】
次に、車両用情報提供装置100の動作について説明する。制御手段202は、車両情報の入出力を行う車両情報端子210及び多重通信入出力端子211から、走行制御(オートクルーズ、レーンキープ)に関する車両状態、アラーム情報、及びオートクルーズ、レーンキープの操作に関する情報を入手し、この情報に基づいてオートクルーズ、レーンキープに関する車両状態報知、アラーム出力、及びオートクルーズ、レーンキープの操作に関するガイダンス、アンサーバックを、聴覚情報提供手段220のスピーカ223を介して効果音と音声(と表示部D1の画像)で行う。
【0049】
ここで、前記アラーム情報を例に挙げて制御手段202の入力時の動作について説明する。制御手段202は、車両情報の入出力を行う車両情報端子210及び多重通信入出力端子211から車両に関する情報を入手し、この情報に基づいて警告の発生条件があるか否か判定する。ここで警告の発生条件を検出すると警告情報を聴覚情報提供手段220で効果音と音声とで報知するとともに、前記警告情報に関係する表示形態を表示部D1によって表示する。
【0050】
図7は、その具体例を示すものであり、制御手段202は、シートベルトが未着用(未装着)であることを示す検出信号が車両情報端子210または多重通信入出力端子211を介して入力されると、効果音「ポーン」の後、音声にて「シートベルトを着用してください」を出力するように聴覚情報提供手段220を制御する。
【0051】
従って、聴覚情報提供手段220におけるスピーカ223から出る前記効果音及び前記音声は、導音部224内部、第2の開口部314b、並びに間隙401を通って、前記利用者の眼前に向けて発せられることで、前記利用者は、
前記効果音及び前記音声を容易に認識することができる。なお、ここでは表示部D1を介して視覚情報も併用している。また、例えば前記効果音及び前記音声が、所定の周波数F1を有する音波からなる場合であっても、前記効果音及び前記音声は、ピークW3の突出量が微量であるから音質の良好な音として前記利用者の眼前に直接、伝達されることになる。
【0052】
以上のように本実施形態では、前記利用者に所定情報を報知する車両用情報提供装置100であって、前記利用者に車両の各種状態に応じた聴覚情報を提供する聴覚情報提供手段220と、聴覚情報提供手段220を制御する制御手段202を有する回路基板301と、回路基板301の背後に配設されるカバー部材311とを備え、聴覚情報提供手段220は、回路基板301の背面に配設されたスピーカ223と、このスピーカ223から発せられる音を回路基板301側に導くようにカバー部材311に一体形成された導音部224とを備えてなり、導音部224における第2の周壁部312の内壁面に吸音部材320を配設してなるものである。
【0053】
従って、吸音部材320によって導音部224内部に生じる前記定在波が吸収されるため、音圧ー周波数特性の乱れの原因となっていたピークやディップを大幅に低減することができ、これにより周波数の値に関係なく音質の良好な音を前記利用者の眼前に直接、伝達することが可能となる。つまり、スピーカ223から発せられる音は、その周波数の値に関係なく、導音部224の内部並びに開口部314を通過して、音質の良好な音として車両用情報提供装置100の前方(前記利用者)に、直接、伝達される構成となるため、音響特性の良好な車両用情報提供装置を提供することができる。
【0054】
また本実施形態では、第2の周壁部312bの前記内壁面にクッション材からなる吸音部材320が配設されてなる例について説明したが、吸音部材320は、前記定在波を吸収し、所定の周波数F1におけるピークの突出量や他の周波数F2におけるディップの落ち込み量が大幅に低減される音圧ー周波数特性となるようであれば、クッション材以外のあらゆる材料(材質)のものを適用することが可能であり、また吸音部材320の形状(例えば第2の周壁部312bの板厚方向に沿った断面形状)もあらゆる形状を採用することが可能であることは言うまでもない。
【0055】
また本実施形態では、導音部224における第2の周壁部312bの前記内壁面に吸音部材320が固定(配設)されている例について説明したが、吸音部材320は、所定の周波数F1におけるピークの突出量や他の周波数F2におけるディップの落ち込み量が大幅に低減される音圧ー周波数特性となるようであれば、導音部224(つまり第2の周壁部312b、底壁部313、立壁部316)における内壁面のあらゆる位置に吸音部材320を配設することが可能であり、例えば図8に示すように第2の周壁部312bの内壁面とスピーカ223と向かい合う底壁部313箇所とに吸音部材320を配設してもよい。ここで、底壁部313箇所に配設される吸音部材320は、前述した領域J1にて音の向きが第2の周壁部312b側に変わることに起因した、音響インピーダンスの変化を軽減するものである。
【0056】
ここで、前述したあらゆる位置とは、例えば第2の周壁部312bの内壁面、底壁部313の内壁面、立壁部316の内壁面のうち少なくとも1つの内壁面の所定位置、隣接する第2の周壁部312bの内壁面と底壁部313の内壁面とを跨ぐような位置、隣接する底壁部313の内壁面と立壁部316の内壁面とを跨ぐような位置、隣接する三者(第2の周壁部312b、底壁部313、立壁部316)の内壁面を跨ぐような位置を意味してなる。
【0057】
(第2実施形態)次に、本発明の第2の実施形態を図9に基づいて説明するが、前述の第1実施形態と同一もしくは相当個所には同一の符号を用いてその詳細な説明は省略する。この第2実施形態においては、前記第1実施形態にて採用した吸音部材320を廃止するとともに、第2の周壁部312bを立壁形状ではなくを所定の曲率を有するような湾曲壁330とした構成となっている。
【0058】
この場合、湾曲壁330は、第2の周壁部312bの先端側(つまり開口部314)から底壁部313側に向かうに従って、スピーカ223側に延びる湾曲形状にて形成されてなる。また、湾曲壁330は、その内壁面が前記曲率を有する内周曲面部(曲面部)R1からなるとともに、その外壁面が前記曲率を有する外周曲面部R2からなる。つまり、本第2実施形態の場合、導音部224における内壁面の所定箇所である湾曲壁330の内壁面に曲面部R1が形成された構成となっている。
【0059】
ところで、本発明者は、導音部224(第2の周壁部312b)に開口部314から底壁部313に向かうに従ってスピーカ223側に湾曲する曲面部R1を有する湾曲壁330を形成した構成に関して、音圧ー周波数特性の解析を行った結果、前記第1実施形態と同様に図6(b)に示すようなピークやディップの低減された音圧ー周波数特性が得られることがわかった。換言すれば、本第2実施形態のように湾曲壁330の内壁面を前記曲率を有する曲面部R1とした構成であっても、音圧ー周波数特性の乱れの原因となっていたピークやディップを大幅に低減することができ、これにより周波数の値に関係なく音質の良好な音を前記利用者の眼前に直接、伝達することが可能となる。
【0060】
また本第2実施形態では、導音部224の一部である第2の周壁部312を湾曲壁330とした例について説明したが、例えば図10に示すように湾曲壁330に加えて立壁部316と底壁部313との境界部分及びその近傍にも所定の曲率を有する他の湾曲壁340を形成してもよい。
【0061】
また本第2実施形態では、湾曲壁330の内壁面を曲面部R1、湾曲壁330の外壁面を外周曲面部R2とした例について説明したが、外周曲面部R2の形状は、あらゆる形状を適用することが可能である。なお、前述した他の湾曲壁340の外周曲面部についても、あらゆる形状を適用することが可能である。
【0062】
(第3実施形態)次に、本発明の第3の実施形態を図11、図12に基づいて説明するが、前述の第1、第2実施形態と同一もしくは相当個所には同一の符号を用いてその詳細な説明は省略する。この第3実施形態が、前記第1実施形態と異なる点は、第2の周壁部312bの前記内壁面に固定された吸音部材320を廃止し、スピーカ223と向かい合う導音部224の底壁部313箇所にスリット群(孔部)350を形成した点である。
【0063】
かかるスリット群350は、図12に示すように互いに平行状態をなす複数個(本例では4個)のスリットからなり、スリット群350を構成する個々のスリットは、カバー部材311を正視したときに横方向に形成されてなる。
【0064】
本発明者は、上述したようにスピーカ223と向かい合う底壁部313箇所にスリット群350を形成した構成に関して、音圧ー周波数特性の解析を行った結果、前記第1実施形態と同様に図6(b)に示すようなピークやディップの低減された音圧ー周波数特性が得られることがわかった。換言すれば、本第3実施形態のように導音部224の底壁部313にスリット群350を形成した構成であっても、音圧ー周波数特性の乱れの原因となっていたピークやディップを大幅に低減することができ、これにより周波数の値に関係なく音質の良好な音を前記利用者の眼前に直接、伝達することが可能となる。
【0065】
なお、スピーカ223から発せられる音がスリット群350を通過する割合は、開口部314を通過する割合と比べて、小さいことを本発明者は実験結果として得ている。
【0066】
また本第3実施形態では、孔部350が、スピーカ223と向かい合う底壁部313箇所に形成されたスリット群からなる例について説明したが、例えば孔部350を、スリット群ではなく、スピーカ223と向かい合う底壁部313箇所に密集するように開口形成された複数個の貫通孔としてもよい。
【0067】
また本第3実施形態では、導音部224において、底壁部313に孔部350を形成した場合について説明したが、例えば孔部350に加えて第2の周壁部312bの前記内壁面に吸音部材320を配設した構成(つまり第1実施形態と第3実施形態とを組み合わせた構成)としてもよいし、孔部350に加えて第2の周壁部312bを所定の曲率を有する湾曲壁330とした構成(つまり第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせた構成)としてもよいことは言うまでもない。
【0068】
なお前記各実施形態では、スピーカ223と導音部224を用いて、スピーカ223から発せられる音が導音部224内部、第2の開口部314b、間隙401を通過して前記利用者に伝達される場合について説明したが、例えばスピーカの代わりにブザーを採用し、ブザーと導音部を用いて、ブザーから発せられる音を前記利用者に伝えるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、聴覚情報提供手段を利用した車両用情報提供装置に関し、車両情報を提供する車両用計器のみならず、車両に搭載されるマルチディスプレイ装置等の車両用情報提供装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1実施形態による車両用情報提供装置の概観図である。
【図2】同実施形態による車両用情報提供装置のブロック図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】図3中、B部を拡大して示す要部断面図である。
【図5】同実施形態によるカバー部材の要部正面図である。
【図6】(a)は第2の周壁部に吸音部材が配設されていない状態での音波の音圧ー周波数特性を示す図であり、(b)は第2の周壁部に吸音部材が配設された状態での音波の音圧ー周波数特性を示す図である。
【図7】同実施形態による警告情報の一例を示す図である。
【図8】同実施形態の変形例を示す図である。
【図9】本発明の第2実施形態による車両用情報提供装置の要部断面図である。
【図10】同第2実施形態の変形例を示す図である。
【図11】本発明の第3実施形態による車両用情報提供装置の要部断面図である。
【図12】同第3実施形態によるカバー部材の要部正面図である。
【符号の説明】
【0071】
100 車両用情報提供装置
202 制御手段
220 聴覚情報提供手段
223 スピーカ(吹鳴手段)
224 導音部
301 回路基板
311 カバー部材
312 周壁部
312a 第1の周壁部
312b 第2の周壁部
313 底壁部(底部)
314 開口部
314a 第1の開口部
314b 第2の開口部
320 吸音部材
330 湾曲壁
350 孔部(スリット群)
R1 内周曲面部(曲面部)
R2 外周曲面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者に所定情報を報知する車両用情報提供装置であって、
前記利用者に車両の各種状態に応じた聴覚情報を提供する聴覚情報提供手段と、前記聴覚情報提供手段を制御する制御手段を有する回路基板と、前記回路基板の背後に配設されるカバー部材とを備え、
前記聴覚情報提供手段は、少なくとも前記回路基板の背面に配設された吹鳴手段と、前記吹鳴手段から発せられる音を前記回路基板側に導くように前記カバー部材に一体形成された導音部とを備えてなり、
前記導音部における内壁面の所定箇所に吸音部材を配設してなることを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項2】
利用者に所定情報を報知する車両用情報提供装置であって、
前記利用者に車両の各種状態に応じた聴覚情報を提供する聴覚情報提供手段と、前記聴覚情報提供手段を制御する制御手段を有する回路基板と、前記回路基板の背後に配設されるカバー部材とを備え、
前記聴覚情報提供手段は、少なくとも前記回路基板の背面に配設された吹鳴手段と、前記吹鳴手段から発せられる音を前記回路基板側に導くように前記カバー部材に一体形成された導音部とを備えてなり、
前記導音部における内壁面の所定箇所に曲面部を形成してなることを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項3】
利用者に所定情報を報知する車両用情報提供装置であって、
前記利用者に車両の各種状態に応じた聴覚情報を提供する聴覚情報提供手段と、前記聴覚情報提供手段を制御する制御手段を有する回路基板と、前記回路基板の背後に配設されるカバー部材とを備え、
前記聴覚情報提供手段は、少なくとも前記回路基板の背面に配設された吹鳴手段と、前記吹鳴手段から発せられる音を前記回路基板側に導くように前記カバー部材に一体形成された導音部とを備えてなり、
前記導音部の底壁部に孔部を形成してなることを特徴とする車両用情報提供装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−260910(P2009−260910A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230402(P2008−230402)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】