車両用温度調整システム
【課題】電気自動車に搭載された各種機器の適切な温度調整を実現する。
【解決手段】車両用温度調整システム10の制御装置100は、バッテリ暖機モード時に、冷却水循環回路12を、加熱装置131で加熱した冷却水がバッテリ11に流入する第1循環回路13に切替え、ヒートポンプサイクル30の室外熱交換器34に付着した霜を取り除く除霜運転モード時に、加熱装置131で加熱した冷却水が有する熱を室外熱交換器34に放熱する放熱器141に流入する第2循環回路14に切替える。これにより、バッテリ暖機モード時には、加熱装置131にて加熱された冷却水が有する熱量によってバッテリ11を暖機することができ、除霜運転モード時には、車室内空間の暖房を停止することなく、加熱装置131にて加熱された冷却水が有する熱を放熱器141から室外熱交換器34に放熱することで、室外熱交換器34に付着した霜を取り除くことができる。
【解決手段】車両用温度調整システム10の制御装置100は、バッテリ暖機モード時に、冷却水循環回路12を、加熱装置131で加熱した冷却水がバッテリ11に流入する第1循環回路13に切替え、ヒートポンプサイクル30の室外熱交換器34に付着した霜を取り除く除霜運転モード時に、加熱装置131で加熱した冷却水が有する熱を室外熱交換器34に放熱する放熱器141に流入する第2循環回路14に切替える。これにより、バッテリ暖機モード時には、加熱装置131にて加熱された冷却水が有する熱量によってバッテリ11を暖機することができ、除霜運転モード時には、車室内空間の暖房を停止することなく、加熱装置131にて加熱された冷却水が有する熱を放熱器141から室外熱交換器34に放熱することで、室外熱交換器34に付着した霜を取り除くことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された各種機器の温度を調整するための車両用温度調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、燃料電池ユニットを搭載した車両に適用される車両用暖房装置が開示されている。特許文献1に記載の車両用暖房装置では、燃料電池ユニットの低温始動時に、燃料電池ユニットを早期に予加熱することを目的としている。
【0003】
具体的には、特許文献1に記載の車両用暖房装置は、燃料電池ユニット、冷却水を加熱する加熱手段および冷却水の熱で車室内に送風する送風空気を加熱するヒータコアを環状に接続してなる冷却水循環回路を備え、冷却水の温度が設定温度よりも低い場合には、加熱手段にて冷却水を加熱し、加熱された冷却水の熱を、ヒータコアで利用することなく、燃料電池ユニットの予加熱用の熱源として利用する構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−127734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、車両用の駆動源として大容量のバッテリから電力が供給されることで駆動する走行用モータを利用する電気自動車(ハイブリッド車両、燃料電池車両を含む。)が増加している。
【0006】
この電気自動車では、内燃機関(エンジン)で駆動する従来の車両に比較して、車両の廃熱が少ないので、温度調整が必要となるバッテリや車室内空間を暖房装置の各種機器それぞれに対して、電気ヒータ等の専用の加熱装置を設けることが必要となる。
【0007】
例えば、走行用モータに電力を供給するバッテリは、低温環境下においてバッテリの充放電性能が低下することから、低温環境下におけるバッテリの暖機のための加熱装置を別途設ける必要がある。
【0008】
また、電気自動車における車室内の空調装置に、車室内の冷暖房運転が可能なヒートポンプサイクルを採用する場合、低温環境下において暖房運転を行うと、外気から吸熱して冷媒を蒸発させる室外熱交換器に着霜が生じることがある。この場合、室外熱交換器に高温冷媒を流すことで室外熱交換器に付着した霜を除去することが考えられるが、車室内の暖房を停止することになる。このため、車室内の暖房を継続しつつ、室外熱交換器に付着した霜を除去するためには、室外熱交換器を加熱する加熱装置等を別途設ける必要がある。
【0009】
しかし、温度調整が必要となる各種機器それぞれに対して、加熱装置を設けると車載する機器が増加し、車両コスト等の大幅な増大を招くことから現実的に採用することが困難である。
【0010】
このように、電気自動車では、車両に搭載された各種機器の温度を調整する際の熱源を充分に確保することができず、電気自動車に搭載された各種機器の適切な温度調整を実現することができないという課題がある。
【0011】
本発明は上記点に鑑みて、電気自動車に搭載された各種機器の適切な温度調整を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、車室内を暖房する暖房運転時に外気から吸熱して冷媒を蒸発させる蒸発器として機能すると共に車室内を冷房する冷房運転時に外気に冷媒の熱を放熱する放熱器として機能する室外熱交換器(34)を含んで構成されるヒートポンプサイクル(30)と、車両走行用駆動源としての走行用モータに電力を供給するバッテリ(11)と、を備える電気自動車に適用され、少なくともバッテリ(11)および室外熱交換器(34)の温度を調整する車両温度調整装置であって、バッテリ(11)、およびバッテリ(11)の温度を調整するための温度調整流体を加熱する加熱手段(131)に接続され、温度調整流体が循環する第1流体循環回路(13)と、バッテリ(11)、加熱手段(131)、および温度調整流体の熱を室外熱交換器(34)に放熱可能な放熱器(141)に接続され、温度調整流体が循環する第2流体循環回路(14)と、第1流体循環回路(13)および第2流体循環回路(14)に温度調整流体を循環させる流体循環手段(15)と、第1流体循環回路(13)と第2流体循環回路(14)とを切替える循環回路切替手段(16)と、少なくとも加熱手段(131)、循環回路切替手段(16)、および流体循環手段(15)の作動を制御する制御手段(100)と、を備え、制御手段(100)は、バッテリ(11)を暖機するバッテリ暖機モード時には、加熱手段(131)にて温度調整流体を加熱し、循環回路切替手段(16)にて第1流体循環回路(13)に切替えると共に、流体循環手段(15)にて加熱手段(131)で加熱された温度調整流体をバッテリ(11)に流入させ、室外熱交換器(34)に付着した霜を取り除く除霜運転モード時には、加熱手段にて温度調整流体を加熱し、循環回路切替手段(16)にて第2流体循環回路(14)に切替えると共に、流体循環手段(15)にて加熱手段で加熱された温度調整流体を放熱器(141)に流入させて、温度調整流体の熱を室外熱交換器(34)に放熱することを特徴とする。
【0013】
これによると、バッテリ暖機モード時には、加熱手段(131)にて加熱された温度調整流体によって、バッテリ(11)を暖機することができる。また、除霜運転モード時には、車室内空間の暖房を停止することなく、加熱手段(131)にて加熱された温度調整流体の熱を放熱器(141)から放熱して、当該放熱器(141)における放熱によって、室外熱交換器(34)に付着した霜を取り除くことができる。つまり、温度調整が必要となる各種機器それぞれに対して専用の加熱手段を設けることなく、バッテリ(11)の暖機およびヒートポンプサイクル30の室外熱交換器(34)の除霜を行うことができる。従って、電気自動車に搭載された各種機器の適切な温度調整を実現することができる。
【0014】
ここで、バッテリ(11)は、その温度(バッテリ温度)が高温となる状態で充放電を行うと劣化が進行するので、バッテリ(11)が必要以上に高温とならないように冷却する必要がある。
【0015】
そこで、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の車両用温度調整システムにおいて、制御手段(100)は、バッテリ(11)を冷却するバッテリ冷却モード時には、循環回路切替手段(16)にて第2流体循環回路(14)に切替えると共に、流体循環手段(15)にて放熱器(141)で放熱された温度調整流体をバッテリ(11)に流入させることを特徴とする。
【0016】
これによると、放熱器(141)で放熱(冷却)された温度調整流体をバッテリ(11)に流入させることで、バッテリ(11)が必要以上に高温とならないように冷却することができる。
【0017】
また、電気自動車では、車両走行時に走行用モータや走行用モータの駆動を制御するインバータ等の電気機器(142)が発熱する。これら電気機器(142)は、高温となりすぎると、車両走行に悪影響を及ぼす虞があるので、必要以上に高温とならないように温度調整(冷却)する必要がある。
【0018】
そこで、請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の車両用温度調整システムにおいて、第2流体循環回路(14)には、車両に搭載されて温度調整が必要となる電気機器(142)、およびバッテリ(11)を迂回して、電気機器(142)に温度調整流体を流入させる第1バイパス回路(18)、第2流体循環回路(14)における第1バイパス回路(18)側に流れる温度調整流体の流量を調整する流量調整手段(18c)が接続されており、制御手段(100)は、バッテリ冷却モード時には、循環回路切替手段(16)にて第2流体循環回路(14)に切替え、流量調整手段(18c)にて第2流体循環回路(14)における第1バイパス回路(18)側に流れる温度調整流体の流量を減少させると共に、流体循環手段(15)にて放熱器(141)で放熱された温度調整流体をバッテリ(11)に流入させ、電気機器(142)を冷却する電気機器冷却モード時には、循環回路切替手段(16)にて第2流体循環回路(14)に切替え、流量調整手段(18c)にて第2流体循環回路(14)における第1バイパス回路(18)側に流れる温度調整流体の流量を増大させると共に、流体循環手段(15)によって放熱器(131)で放熱された温度調整流体を電気機器(142)に流入させることを特徴とする。
【0019】
これによると、バッテリ冷却モード時には、放熱器(141)にて放熱(冷却)された温度調整流体がバッテリ(11)側に優先的に流れるので、バッテリ(11)を充分に冷却することができる。また、電気機器冷却モード時には、放熱器(141)にて放熱(冷却)された温度調整流体が第1バイパス回路(18)を介して電気機器(142)に流れるので、電気機器(142)を充分に冷却することができる。従って、電気自動車に搭載された電気機器(142)の適切な温度調整を実現することができる。
【0020】
また、請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の車両用温度調整システムにおいて、第2流体循環回路(14)には、ヒートポンプサイクル(30)における室外熱交換器(34)よりも冷媒流れ上流側又は下流側の冷媒と温度調整流体とを熱交換させて冷媒を加熱する加熱用熱交換器(143)が接続されており、制御手段(100)は、暖房運転時において、加熱用熱交換器(143)に流入する温度調整流体の温度が、加熱用熱交換器(143)に流入する冷媒の温度に比べて高い場合には、循環回路切替手段(16)にて第2流体循環回路(14)に切替え、流体循環手段(15)にて温度調整流体を加熱用熱交換器(143)に流入させることを特徴とする。
【0021】
これによると、加熱用熱交換器(143)に流入する冷媒よりも加熱用熱交換器(143)に流入する温度調整流体の温度が高い場合には、温度調整流体の熱(廃熱)を利用して室外熱交換器(34)に流入する冷媒又は流出した冷媒を加熱することができる。このため、ヒートポンプサイクル(30)における外部からの吸熱量が増大するので、ヒートポンプサイクル(30)における暖房運転時の暖房能力の向上を図ることが可能となる。
【0022】
また、請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の車両用温度調整システムにおいて、第2流体循環回路(14)には、加熱用熱交換器(143)を迂回する第2バイパス回路(21)、および第2流体循環回路(14)における温度調整流体の流れを加熱用熱交換器(143)側と第2バイパス回路(21)側とに切替える第2バイパス回路切替手段(21a)が接続されており、制御手段(100)は、暖房運転時において、加熱用熱交換器(143)に流入する温度調整流体の温度が加熱用熱交換器(143)に流入する冷媒の温度に比べて高い場合には、第2バイパス回路切替手段(21a)にて第2流体循環回路(14)における温度調整流体の流れを加熱用熱交換器(143)側に切替え、暖房運転時において、加熱用熱交換器(143)に流入する温度調整流体の温度が、加熱用熱交換器(143)に流入する冷媒の温度に比べて低い場合には、第2バイパス回路切替手段(21a)にて第2流体循環回路(14)における温度調整流体の流れを第2バイパス回路(21)側に切替えることを特徴とする。
【0023】
これによると、加熱用熱交換器(143)に流入する温度調整流体の温度が加熱用熱交換器(143)に流入する冷媒の温度よりも低い場合には、温度調整流体が加熱用熱交換器(143)を迂回して第2バイパス回路(21)側に流れるので、加熱用熱交換器(143)にて冷媒が冷却されてしまうといった不具合を抑制することができる。
【0024】
また、請求項6に記載の発明の如く、請求項4に記載の車両用温度調整システムにおいて、制御手段(100)は、冷房運転時には、第2バイパス回路切替手段(21a)にて第2流体循環回路(14)における温度調整流体の流れを第2バイパス回路(21)側に切替えるようにしてもよい。
【0025】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態に係る車両用温度調整システムの概略構成図である。
【図2】第1実施形態に係るヒートポンプサイクルの冷房運転モード時および暖房運転モード時の冷媒流路を説明する説明図である。
【図3】第1実施形態に係る制御装置が実行する制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】第1実施形態に係る制御装置が実行するバッテリ暖機処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】第1実施形態に係る制御装置が実行する除霜処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態に係る車両用温度調整システムのバッテリ暖機モード時および除霜運転モード時における冷却水の流路を説明する説明図である。
【図7】第2実施形態に係る車両用温度調整システムの概略構成図である。
【図8】第2実施形態に係る制御装置が実行する制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】第2実施形態に係る制御装置が実行するバッテリ冷却処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】第2実施形態に係る制御装置が実行する電気機器冷却処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】第2実施形態に係る車両用温度調整システムのバッテリ暖機モード時および電気機器冷却モード時における冷却水の流路を説明する説明図である。
【図12】第3実施形態に係る車両用温度調整システムの概略構成図である。
【図13】第3実施形態に係る制御装置が実行する制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】第3実施形態に係る制御装置が実行する冷媒加熱処理の流れを示すフローチャートである。
【図15】第3実施形態に係る車両用温度調整システムの冷媒加熱モード時における冷却水の流路を説明する説明図である。
【図16】第4実施形態に係る車両用温度調整システムの概略構成図である。
【図17】第4実施形態に係るヒートポンプサイクルの冷房運転モード時および暖房運転モード時の冷媒流路を説明する説明図である。
【図18】第5実施形態に係る車両用温度調整システムの概略構成図である。
【図19】第5実施形態に係る制御装置が実行するバッテリ冷却処理の流れを示すフローチャートである。
【図20】第5実施形態に係る制御装置が実行する電気機器冷却処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0028】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図6に基づいて説明する。図1は、本実施形態の車両用温度調整システム10の概略構成図である。
【0029】
本実施形態では、本発明の車両用温度調整システム10を、車両走行用駆動源である内燃機関(エンジン)EGおよび走行用モータ(電動モータ)から車両走行用の駆動力を得る、いわゆるハイブリッド自動車に適用している。本実施形態のハイブリッド自動車は、走行用モータに電力を供給するバッテリ11、車室内空間に送風する送風空気を冷却あるいは加熱する機能を果たすヒートポンプサイクル(冷凍サイクル)30等を備えている。
【0030】
バッテリ11は、充電可能な二次電池であり、例えば多数のリチウムイオン電池やニッケル水素電池等を電気的に直列接続して、車両において要求される所定の高電圧を発生するものである。本実施形態のバッテリ11は、車両後方のトランクルーム付近に搭載されている。なお、バッテリ11の搭載位置は、車両後方のトランクルーム付近に限定されず、例えば、車両床下、車両の後部座席の下等のスペースに搭載してもよい。
【0031】
ここで、本実施形態のバッテリ11は、低温環境下においてバッテリ温度が著しく低下すると、バッテリ出力の低下を招くと共に充電時の充電効率の悪化を招いてしまう。このため、本実施形態では、バッテリ温度が低下した場合に、車両用温度調整システム10によって、バッテリ11を暖機するバッテリ暖機運転を実行するようにしている。なお、車両用温度調整システム10によるバッテリ11の暖機については後述する。
【0032】
次に、ヒートポンプサイクル30について説明すると、本実施形態のヒートポンプサイクル30は、車室内を暖房する暖房運転モード、および車室内を冷房する冷房運転モードの冷媒回路を切替え可能に構成されている。
【0033】
本実施形態のヒートポンプサイクル30は、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を越えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。さらに、この冷媒には、圧縮機31を潤滑するための冷凍機油が混入されており、この冷凍機油は冷媒と共にサイクルを循環している。
【0034】
圧縮機31は、エンジンルーム内に配置されて、ヒートポンプサイクル30において、冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。より具体的には、本実施形態では、圧縮機31として、ハウジング31a内に1つの圧縮機構31bを収容し、当該圧縮機構31bを電動モータ(図示略)にて駆動する一段昇圧式の電動圧縮機を採用している。
【0035】
圧縮機31の圧縮機構31bとしては、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用することができる。また、電動モータは、後述する空調用制御装置100aから出力される制御信号によって回転数が制御されるもので、交流モータ、直流モータのいずれを採用してもよい。そして、この回転数制御によって圧縮機31の冷媒吐出能力が変更される。従って、電動モータは、圧縮機31の吐出能力変更手段を構成している。
【0036】
圧縮機31のハウジング31aには、低圧冷媒を吸入する吸入ポート31d、および高圧冷媒を吐出する吐出ポート31eが設けられている。そして、吸入ポート31dおよび吐出ポート31eがハウジング31aの内部で圧縮機構31bに接続されている。具体的には、吸入ポート31dは、圧縮機構31bの吸入口に接続され、吐出ポート31eは圧縮機構31bの吐出口に接続されている。従って、圧縮機構31bでは、吸入ポート31dから吸入された低圧冷媒を吸入して圧縮し、吐出ポート31eから吐出する。
【0037】
圧縮機31の吐出側には、第1利用側熱交換器としての室内凝縮器32の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器32は、車室内空間を空調するための室内空調ユニット50のケーシング51内に配置されて、その内部を流通する冷媒と後述する室内蒸発器38にて冷却された送風空気(冷風)とを熱交換させることで冷風を再加熱する暖房用熱交換器である。なお、室内空調ユニット50の詳細については後述する。
【0038】
室内凝縮器32の冷媒出口側には、第1減圧手段としての第1電気式膨張弁33が接続されている。第1電気式膨張弁33は、室内凝縮器32から流出した高圧冷媒の流れを減圧膨張させる可変絞り機構である。
【0039】
具体的には、第1電気式膨張弁33は、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、当該弁体の絞り開度を変化させるステッピングモータからなる電動アクチュエータとを有して構成されている。なお、第1電気式膨張弁33は、後述する空調用制御装置100aから出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0040】
第1電気式膨張弁33は、その絞り開度を全開することで、室内凝縮器32から流出した高圧冷媒を減圧することなく後述する室外熱交換器34の入口側へ流入させることができる。
【0041】
第1電気式膨張弁33の冷媒出口側には、冷媒と外気とを熱交換させる室外熱交換器34が接続されている。この室外熱交換器34は、エンジンルーム内に配置されて、ヒートポンプサイクル30の暖房運転モード時(暖房運転時)には、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる蒸発器として機能し、冷房運転モード時(冷房運転時)には、高圧冷媒を放熱させる放熱器として機能する熱交換器である。
【0042】
ここで、室外熱交換器34は、低温環境下において暖房運転が行われると、室外熱交換器34の表面に着霜が生ずることがある。このため、本実施形態では、車両用温度調整システム10によって、室外熱交換器34に付着した霜を取り除く除霜運転を実行するようにしている。なお、車両用温度調整システム10による除霜運転については後述する。
【0043】
室外熱交換器34の冷媒出口側には、室外熱交換器34から流出した冷媒の流れを分岐する第1三方継手35が接続されている。第1三方継手35は、3つの流入出口を有し、この3つの流入出口のうち1つを冷媒流入口とし、2つを冷媒流出口としてものである。このような三方継手は、各種配管を接合して構成してもよいし、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けて構成してもよい。
【0044】
第1三方継手35の一方の冷媒流出口は、第2電気式膨張弁36を介して後述する室内蒸発器38の冷媒入口側に接続され、他方の冷媒流出口は、開閉弁37を介して第2三方継手39の冷媒入口側に接続されている。第2三方継手39の基本構成は、第1三方継手35と同様である。第2三方継手39では、第1三方継手35に対して3つの流入出口のうち2つを冷媒流入口とし、1つを冷媒流出口としている。
【0045】
第2電気式膨張弁36は、第1三方継手35の一方の冷媒流出口から流出した冷媒を減圧膨張させる可変絞り機構である。具体的には、第2電気式膨張弁36は、第1電気式膨張弁33と同様の基本構成を有して構成されており、後述する空調用制御装置100aから出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0046】
また、本実施形態の第2電気式膨張弁36は、その絞り開度を全閉として、第1三方継手35の一方の冷媒流出口から室内蒸発器38の冷媒入口側に至る冷媒配管における冷媒の流れを遮断することができる。これにより、第2電気式膨張弁36は、ヒートポンプサイクル30における冷媒流路を切替えることができる。
【0047】
開閉弁37は、第1三方継手35の他方の冷媒流出口から第2三方継手39の一方の冷媒流入口に至る冷媒配管を開閉するもので、後述する空調用制御装置100aから出力される制御信号によって、その作動が制御される。この開閉弁37は、開閉状態によって、ヒートポンプサイクル30の冷媒流路を切替えることができる。
【0048】
ここで、ヒートポンプサイクル30の暖房運転モード時には、第2電気式膨張弁36の絞り開度が全閉状態となるように制御されると共に、開閉弁37が開状態となるように制御される。一方、ヒートポンプサイクル30の冷房運転モード時には、第2電気式膨張弁36の絞り開度が可変制御されると共に、開閉弁37が閉状態となるように制御される。
【0049】
従って、本実施形態の第2電気式膨張弁36および開閉弁37は、冷房運転モードの冷媒流路と暖房運転モードの冷媒流路を切替える冷媒流路切替手段としての機能を備えている。
【0050】
第2電気式膨張弁36の冷媒出口側には、第2利用側熱交換器としての室内蒸発器38の冷媒入口側が接続されている。この室内蒸発器38は、室内空調ユニット50のケーシング51内における、室内凝縮器32の送風空気流れ上流側に配置され、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する冷房用熱交換器である。
【0051】
室内蒸発器38の冷媒出口側には、第2三方継手39の他方の冷媒流入口に接続されている。つまり、第2三方継手39の2つの冷媒流入口のうち、一方の冷媒流入口には、開閉弁37の冷媒出口側に接続され、他方の冷媒流入口には、室内蒸発器38の冷媒出口側に接続されている。そして、第2三方継手39の冷媒流出口には、圧縮機31の吸入ポート31d、つまり圧縮機構31bの吸入側が接続されている。
【0052】
次に、室内空調ユニット50について説明する。室内空調ユニット50は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング51内に送風機52、前述の室内凝縮器32、室内蒸発器38等を収容したものである。
【0053】
ケーシング51は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング51内の送風空気流れ最上流側には、車室内空気(内気)と外気とを切替導入する内外気切替装置(図示略)が配置されている。
【0054】
内外気切替装置には、ケーシング51内に内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口が形成されている。さらに、内外気切替装置の内部には、内気導入口および外気導入口の開口面積を連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドアが配置されている。
【0055】
内外気切替装置の空気流れ下流側には、内外気切替装置を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機52が配置されている。この送風機52は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調用制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
【0056】
送風機52の空気流れ下流側には、室内蒸発器38および室内凝縮器32が、送風空気の流れに対して、この順に配置されている。換言すると、室内蒸発器38は、室内凝縮器32に対して、送風空気の流れ方向上流側に配置されている。
【0057】
さらに、室内蒸発器38の空気流れ下流側であって、かつ、室内凝縮器32の空気流れ上流側および下流側には、室内蒸発器38にて冷却された冷風のうち、室内凝縮器32にて再加熱される風量の割合を調整するエアミックスドア53が配置されている。また、室内凝縮器32の空気流れ下流側には、室内凝縮器32を通過して加熱された温風と室内凝縮器32を迂回して加熱されていない冷風と混合させる混合空間54が設けられている。
【0058】
また、ケーシング51の空気流れ最下流部には、混合空間54にて混合された空調風を、冷却対象空間である車室内へ吹き出す吹出口が配置されている。具体的に、この吹出口としては、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口(いずれも図示略)が設けられている。
【0059】
従って、エアミックスドア53が室内凝縮器32を通過させる風量の割合を調整することによって、混合空間54にて混合された空調風の温度が調整され、各吹出口から吹き出される空調風の温度が調整される。つまり、エアミックスドア53は、車室内へ送風される空調風の温度を調整する温度調整手段を構成している。なお、エアミックスドア53は、空調用制御装置から出力される制御信号によって作動が制御される図示しないサーボモータによって駆動される。
【0060】
さらに、フェイス吹出口、フット吹出口、およびデフロスタ吹出口の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口の開口面積を調整するフェイスドア、フット吹出口の開口面積を調整するフットドア、デフロスタ吹出口の開口面積を調整するデフロスタドア(いずれも図示略)が配置されている。
【0061】
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、吹出口モードを切替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、空調用制御装置から出力される制御信号によって作動が制御される図示しないサーボモータによって駆動される。
【0062】
次に、本実施形態の車両用温度調整システム10について説明する。本実施形態の車両用温度調整システム10は、車両に搭載された各種機器のうち、バッテリ11およびヒートポンプサイクル30の室外熱交換器34の温度を調整可能に構成されている。
【0063】
車両用温度調整システム10は、バッテリ11の温度を調整するための温度調整流体としての冷却水が循環する冷却水循環回路12を備えている。本実施形態の車両用温度調整システムは、バッテリ11を暖機するバッテリ暖機モード時の冷却水の流路とヒートポンプサイクル30の室外熱交換器34に付着した霜を取り除く除霜運転モード時の冷却水の流路とを切替え可能に構成されている。
【0064】
冷却水循環回路12は、バッテリ11、および冷却水を加熱する加熱装置131が接続された第1循環回路(第1流体循環回路)13と、バッテリ11、加熱装置131、および冷却水の熱を放熱する放熱器141が接続された第2循環回路(第2流体循環回路)14といった2つの循環回路で構成されている。
【0065】
加熱装置131は、冷却水を加熱する加熱手段を構成するもので、ガソリン、軽油、灯油等の燃料を燃焼させ、当該燃料の燃焼により生ずる熱量にて冷却水を加熱する燃焼式ヒータや、通電により発熱する電気ヒータ等を採用することができる。なお、加熱装置131は、後述する温度調整用制御装置100bから出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0066】
放熱器141は、第2循環回路を流れる冷却水と送風ファン141aから送風される外気とを熱交換させて、冷却水の熱を放熱する熱交換器である。本実施形態の放熱器141は、放熱器141を通過して昇温した外気が、ヒートポンプサイクル30の室外熱交換器34に流れるように、エンジンルーム内における室外熱交換器34の空気流れ上流側に配置されている。つまり、放熱器141は、放熱する冷却水の熱を、外気を介して室外熱交換器34に対して放熱可能に構成されている。
【0067】
また、冷却水循環回路12には、第1循環回路13および第2循環回路14それぞれに冷却水を循環させる流体循環手段として機能する循環ポンプ15が設けられている。循環ポンプ15は、回転を正転・逆転可能な電動式のポンプで構成され、正転・逆転の切替えによって冷却水の循環方向を変更可能に構成されている。この循環ポンプ15は、後述する温度調整用制御装置100bから出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0068】
さらに、冷却水循環回路12には、第1循環回路13および第2循環回路14を切替える循環回路切替手段として機能する回路切替弁16が設けられている。回路切替弁16は、後述する温度調整用制御装置100bから出力される制御電圧によって、その作動が制御される電気式三方弁で構成されている。
【0069】
具体的には、回路切替弁16は、冷却水循環回路12を流れる冷却水の流路を、バッテリ暖機モード時に第1循環回路13に切替え、除霜運転モード時に第2循環回路13に切替える。
【0070】
次に、本実施形態の電気制御部について説明する。本実施形態では、制御手段として空調用制御装置(ECU)100aおよび温度調整用制御装置(ECU)100bを備えている。
【0071】
空調用制御装置100aおよび温度調整用制御装置100bそれぞれは、CPU、ROm、およびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。
【0072】
空調用制御装置100aは、ROM等の記憶手段に記憶された空調制御プログラムに基づいて、各種演算処理を行い、出力側に接続された各種空調制御機器(例えば、圧縮機31、送風機52等)の作動を制御する。
【0073】
空調用制御装置100aの入力側には、センサ群(図示略)として、車室内温度を検出する内気センサ、外気温を検出する外気センサ、室内蒸発器38から吹き出された送風空気の吹出空気温度(蒸発器温度)を検出する蒸発器温度センサ、室外熱交換器34を通過する冷媒の圧力を検出する圧力センサ等が接続されている。
【0074】
さらに、空調用制御装置100aの入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル(図示略)が接続され、この操作パネルに設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。この操作パネルに設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、ヒートポンプサイクル30の作動スイッチ、車室内温度を設定する温度設定スイッチ、冷房運転モードと暖房運転モードとを切替える選択スイッチ等が設けられている。
【0075】
一方、温度調整用制御装置100bには、ROM等の記憶手段に記憶された温度調整制御プログラムに基づいて、各種演算処理を行い、出力側に接続された各種温度調整機器(例えば、加熱装置131、循環ポンプ15、回路切替弁16等)の作動を制御する。温度調整用制御装置100bの入力側には、センサ群として、バッテリ11の温度を検出するバッテリ温度センサ17等が接続されている。
【0076】
本実施形態の温度調整用制御装置100bは、空調用制御装置100aに接続されており、これら各制御装置相互間にて信号を入出力できるようになっている。なお、以下では、温度調整用制御装置100bおよび空調用制御装置100aを単に制御装置100と総称する。
【0077】
次に、上記構成に係る本実施形態のヒートポンプサイクル30、および車両用温度調整システムの作動について説明する。
【0078】
まず、ヒートポンプサイクル30の冷房運転モードおよび暖房運転モードについて図2に基づいて説明する。図2は、本実施形態の冷房運転モード時(図2(a)参照)、および暖房運転モード時(図2(b)参照)の冷媒流路を説明する説明図である。
【0079】
まず、冷房運転モードについて説明すると、冷房運転モードは、イグニッションスイッチIG(図示略)が投入(オン)され、操作パネルの作動スイッチが投入(オン)された状態で、選択スイッチにて冷房運転モードが選択されると開始する。冷房運転モードが開始されると、制御装置100は、第1電気式膨張弁33を全開状態、開閉弁37を閉状態に制御し、圧縮機31を駆動する。これにより、ヒートポンプサイクル30の冷媒が図2(a)の矢印で示すように流れる。
【0080】
この際、圧縮機31の吐出ポート31eから吐出された高圧冷媒が室内凝縮器32に流入して放熱する。これにより、送風機52から送風されて室内蒸発器38にて冷却された冷風のうち室内凝縮器32を通過する冷風が加熱される。
【0081】
室内凝縮器32から流出した高圧冷媒は、第1電気式膨張弁33が全開状態となっているので、第1電気式膨張弁33にて減圧されることなく、室外熱交換器34に流入する。そして、室外熱交換器34に流入した冷媒は、外気と熱交換してさらに冷却される。
【0082】
室外熱交換器34から流出した高圧冷媒は、開閉弁37が閉状態となっているので、第2電気式膨張弁36に流入し、第2電気式膨張弁36にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第2電気式膨張弁36にて減圧膨張された低圧冷媒は、室内蒸発器38に流入して送風機52から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、送風機52から送風された送風空気が冷却される。そして、室内蒸発器38から流出した冷媒は、圧縮機31の吸入ポート31dから吸入されて再び圧縮される。
【0083】
このように、冷房運転モード時には、室内蒸発器38にて送風空気を冷却すると共に、エアミックスドア53の開度を調整することにより、室内蒸発器38にて冷却された冷風を室内凝縮器32で再加熱して、乗員の所望の温度となった空調風を車室に吹き出すことができる。
【0084】
次に、暖房運転モードについて説明すると、暖房運転モードは、イグニッションスイッチIG(図示略)が投入(オン)されて、操作パネルの作動スイッチが投入(オン)された状態で、選択スイッチにて暖房運転モードが選択されると開始する。暖房運転モードが開始されると、空調用制御装置100aは、開閉弁37を開状態、第2電気式膨張弁36を全閉状態に制御し、圧縮機31を駆動する。これにより、ヒートポンプサイクル30の冷媒が図2(b)の矢印で示すように流れる。
【0085】
この際、圧縮機31の吐出ポート31eから吐出された高圧冷媒が室内凝縮器32に流入して放熱する。これにより、送風機52から送風されて室内蒸発器38を通過した送風空気が加熱される。
【0086】
室内凝縮器32から流出した高圧冷媒は、第1電気式膨張弁33に流入し、第1電気式膨張弁33にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第1電気式膨張弁33にて減圧膨張された低圧冷媒は、室外熱交換器34に流入する。そして、室外熱交換器34に流入した冷媒は、外気から吸熱して蒸発する。
【0087】
室外熱交換器34から流出した冷媒は、第2電気式膨張弁36が全閉状態となっているので、開閉弁37を介して、圧縮機31の吸入ポート31dから吸入されて再び圧縮される。
【0088】
このように、暖房運転モード時には、室内凝縮器32にて圧縮機31から吐出された高圧冷媒が有する熱量を送風機52から送風された送風空気に放熱させて、加熱された送風空気を車室内に吹き出すことができる。
【0089】
ここで、ヒートポンプサイクル30の暖房運転モード時には、第2電気式膨張弁36の絞り開度が全閉状態となるように制御されると共に、開閉弁37が開状態となるように制御される。一方、ヒートポンプサイクル30の冷房運転モード時には、第2電気式膨張弁36の絞り開度が可変制御されると共に、開閉弁37が閉状態となるように制御される。
【0090】
従って、本実施形態の第2電気式膨張弁36および開閉弁37は、冷房運転モードの冷媒流路と暖房運転モードの冷媒流路を切替える冷媒流路切替手段としての機能を備えている。
【0091】
次に、車両用温度調整システムの作動について図3〜図6に基づいて説明する。図3は、本実施形態の制御装置100が実行する制御処理を示すフローチャートであり、図4および図5は、本実施形態の制御装置100が実行する制御処理の要部を示すフローチャートである。また、図6は、本実施形態のバッテリ暖機モード時(図6(a)参照)および除霜運転モード時(図6(b)参照)の冷却水の流れを説明する説明図である。
【0092】
図3に示す制御ルーチンは、車両のイグニッションスイッチIG(図示略)が投入(オン)されて、制御装置100にバッテリ11から電源供給されると開始する。なお、図3に示す制御ルーチンは、イグニッションスイッチIG(図示略)が投入(オン)された後、オフされるまでの間、所定の制御周期毎に実行されるように構成されている。
【0093】
まず、制御装置100に接続されたバッテリ温度センサ17や空調用制御装置100aから出力される信号を読み込む(S10)。
【0094】
そして、S10にて読み込んだバッテリ温度センサ17に基づいて、バッテリ11の暖機が必要あるか否かを判定する(S20)。具体的には、バッテリ温度センサ17にて検出したバッテリ温度が予め設定された第1基準温度(例えば、−5℃)以下であるか否かを判定する。
【0095】
この結果、バッテリ温度が第1基準温度以下と判定された場合(S20:YES)には、バッテリ11の暖機が必要であると判断できるのでS30に移行して、バッテリ暖機処理を行う。換言すれば、バッテリ温度が第1基準温度以下の場合には、バッテリ暖機モードに移行する。なお、S30におけるバッテリ暖機処理は、バッテリ11が第1基準温度以上に昇温するまで継続される。
【0096】
具体的には、S30の処理では、図4に示すように、回路切替弁16にて冷却水循環回路12における冷却水の循環回路を第1循環回路13に切替えると共に(S31)、加熱装置131をオンして冷却水を加熱する(S32)。そして、循環ポンプ15を駆動して第1循環回路13内に冷却水を循環させる(S33)。
【0097】
ここで、循環ポンプ15は、図6(a)の矢印で示すように、冷却水が第1循環回路13内を加熱装置131→バッテリ11の順に流れるように駆動される。これにより、加熱装置131にて加熱された冷却水がバッテリ11に流入することで、冷却水の熱がバッテリ11に放熱されて、バッテリ11が昇温する。つまり、加熱装置131にて加熱された冷却水を熱源として、バッテリ11を加熱することで、バッテリ11の暖機を行うことができる。
【0098】
一方、S20の判定処理の結果、バッテリ温度が第1基準温度より高いと判定された場合(S20:NO)には、S40に移行して、室外熱交換器34に着霜が生じているか否かを判定する。具体的には、外気センサにて検出された外気温が所定温度(例えば、0℃)以下、かつ、圧力センサにて検出された室外熱交換器34を通過する冷媒の圧力が予め設定された基準圧力以上低下しているか否かを判定する。つまり、外気温が所定温度以下、かつ、室外熱交換器34を通過する冷媒の圧力が急激に低下した場合に、室外熱交換器34に着霜が生じていると判定する。
【0099】
S40の判定処理の結果、室外熱交換器34に着霜が生じていると判定された場合(S40:YES)には、S50に移行して、室外熱交換器34に付着した霜を取り除く除霜処理を行う。換言すれば、室外熱交換器34に着霜が生じていると判定された場合には、除霜運転モードに移行する。なお、S50における除霜処理は、室外熱交換器34に付着した霜が除去されるまで継続される。
【0100】
具体的には、S50の処理では、図5に示すように、回路切替弁16にて冷却水循環回路12における冷却水の循環回路を第2循環回路14に切替えると共に(S51)、加熱装置131をオンして冷却水を加熱する(S52)。そして、循環ポンプ15を駆動して第2循環回路14内に冷却水を循環させる(S53)。
【0101】
ここで、循環ポンプ15は、図6(b)の矢印で示すように、冷却水が第2循環回路14内を放熱器141→バッテリ11→加熱装置131の順に流れるように駆動される。なお、除霜運転モード時には、送風ファン141aが駆動されて、放熱器141に外気が送風される。
【0102】
これにより、加熱装置131にて加熱された冷却水の熱が放熱器141にて送風ファン141aから送風された外気に放熱される。この際、放熱器141を通過して昇温した外気は、室外熱交換器34へと流れ、室外熱交換器34が間接的に加熱される。つまり、加熱装置131にて加熱された冷却水を熱源として、放熱器141にて昇温した外気によって、室外熱交換器34を加熱することができる。この結果、室外熱交換器34の除霜を行うことができる。なお、室外熱交換器34の除霜は、車両用温度調整システム10の放熱器141から放熱された熱を利用して行っているので、ヒートポンプサイクル30の作動を停止させる必要はない。
【0103】
S40の判定処理の結果、室外熱交換器34に着霜が生じていないと判定された場合(S40:NO)には、加熱装置131をオフして、冷却水の加熱を停止すると共に(S60)、循環ポンプ15をオフして、冷却水循環回路12内の冷却水の流れが停止させる。
【0104】
以上説明した本実施形態の車両用温度調整システム10では、バッテリ暖機モード時に、加熱装置131にて加熱された冷却水によって、バッテリ11を暖機することができると共に、除霜運転モード時に、車室内空間の暖房を停止することなく、加熱装置131にて加熱された冷却水の熱を放熱器141で放熱して、当該放熱器141における放熱によって、室外熱交換器34に付着した霜を取り除くことができる。つまり、車室内に搭載された機器のうち、温度調整が必要となるバッテリ11および車室内空間を暖房する機器それぞれに対して専用の加熱手段を設けることなく、バッテリ11の暖機およびヒートポンプサイクル30の室外熱交換器34の除霜を行うことができる。
【0105】
従って、本実施形態の車両用温度調整システム10では、電気自動車に搭載された各種機器の適切な温度調整を実現することができる。
【0106】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図7〜図11に基づいて説明する。図7は、本実施形態に係る車両用温度調整システム10の概略構成図である。
【0107】
本実施形態では、主に、車両用温度調整システム10にて、バッテリ11の暖機、室外熱交換器の除霜に加えて、バッテリ11の冷却、および車両に搭載された電気機器142の冷却を行う点が第1実施形態と相違している。なお、本実施形態では、第1実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0108】
なお、バッテリ11は、充電時や走行用モータへ電力を供給する放電時に発熱を生じて高温となることがあり、バッテリ11の温度が著しく上昇すると、性能低下や劣化を生じてしまうため、適宜冷却する必要がある。
【0109】
本実施形態の車両用温度調整システム10では、図7に示すように、冷却水循環回路12の第2循環回路14に、車両に搭載され温度調整が必要となる電気機器142が接続されている。具体的には、電気機器142は、回路切替弁16と放熱器141との間に接続されている。この電気機器142としては、車両の走行時に発熱し易い走行用モータや、走行用モータの駆動を制御するインバータ等を例示することができる。なお、電気機器142は、電気機器142の温度を検出する電気機器温度センサ142aが設けられており、当該電気機器温度センサ142aの検出信号は、制御装置100(温度調整用制御装置100b)に入力されるようになっている。
【0110】
また、冷却水循環回路12には、バッテリ11を迂回して、電気機器142へと冷却水を流入させる第1バイパス回路18が接続されている。この第1バイパス回路18は、冷却水循環回路12におけるバッテリ11および加熱装置131の間と、回路切替弁16および電気機器142の間とを接続する回路である。
【0111】
第1バイパス回路18と冷却水循環回路12におけるバッテリ11および加熱装置131の間との接続部には、第3三方継手18aが配置されている。また、第1バイパス回路18と冷却水循環回路12における回路切替弁16および電気機器142の間との接続部には、第4三方継手18bが配置されている。なお、第3三方継手18aおよび第4三方継手18bそれぞれの基本構成は、第1三方継手35と同様である。
【0112】
また、第1バイパス回路18には、第2循環回路14における第1バイパス回路18側への冷却水の流入量を調整する流量調整手段として流量調整弁18cが設けられている。この流量調整弁18cは、第1バイパス回路18における通路開度を調整可能に構成されており、制御装置100から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0113】
例えば、流量調整弁18cにて、第1バイパス回路18における通路開度を小さくすることで、第2循環回路14における第1バイパス回路18側に流れる冷却水の流量が減少する。一方、流量調整弁18cにて、第1バイパス回路18における通路開度を大きくすることで、第2循環回路14における第1バイパス回路18側に流れる冷却水の流量が増大する。
【0114】
なお、流量調整弁18cは、第1バイパス回路18を全閉可能に構成されている。従って、流量調整弁18cにて、第1バイパス回路18を全閉した場合には、第2循環回路14における第1バイパス回路18側に冷却水が流れない。
【0115】
次に、本実施形態の車両用温度調整システム10の作動について図8〜図11に基づいて説明する。図8は、本実施形態の制御装置100が実行する制御処理を示すフローチャートであり、図9および図10は、本実施形態の制御装置100が実行する制御処理の要部を示すフローチャートである。また、図11は、本実施形態のバッテリ冷却モード時(図11(a)参照)および電気機器冷却モード時(図11(b)参照)の冷却水の流れを説明する説明図である。
【0116】
本実施形態では、S40の判定処理の結果、室外熱交換器34に着霜が生じていないと判定された場合(S40:NO)には、加熱装置131をオフして、冷却水の加熱を停止する(S60)。
【0117】
次に、バッテリ11の冷却が必要であるか否かを判定する(S80)。具体的には、バッテリ温度センサ17にて検出したバッテリ温度が予め設定された第2基準温度(例えば、40℃)以上であるか否かを判定する。
【0118】
この結果、バッテリ温度が第2基準温度以上と判定された場合(S80:YES)には、バッテリ11の冷却が必要であると判断できるので、S90に移行して、バッテリ冷却処理を行う。換言すれば、バッテリ温度が第2基準温度以上の場合には、バッテリ冷却モードに移行する。なお、S90におけるバッテリ冷却処理は、バッテリ11が第2基準温度以下に低下するまで継続される。
【0119】
具体的には、S90の処理では、図9に示すように、回路切替弁16にて冷却水循環回路12における冷却水の循環回路を第2循環回路14に切替えると共に(S91)、流量調整弁18cにて第1バイパス回路18を閉鎖する(S32)。そして、循環ポンプ15を駆動して第2循環回路14内に冷却水を循環させる(S93)。
【0120】
ここで、循環ポンプ15は、図11(a)の矢印で示すように、冷却水が第2循環回路14内を加熱装置131→バッテリ11→電気機器142→放熱器141の順に流れるように駆動される。これにより、放熱器141にて冷却された冷却水がバッテリ11に流入することで、バッテリ11が冷却されて、バッテリ11の温度が低下する。その後、バッテリ11にて若干昇温した冷却水が、電気機器142に流入することで、電気機器142が冷却される。なお、通常、車両の走行時には、バッテリ11よりも電気機器142の方が高温となるので、電気機器142に流入させる冷却水がバッテリ11にて昇温したとしても、電気機器142の冷却を行うことができる。
【0121】
一方、S80の判定処理の結果、バッテリ温度が第2基準温度より低いと判定された場合(S80:NO)には、S100に移行して、電気機器142の冷却が必要であるか否かを判定する。具体的には、電気機器温度センサ142aで検出した電気機器142の温度が、予め設定された第3基準温度(例えば、100℃)以上であるか否かを判定する。なお、第3基準温度は、第2基準温度よりも高い温度に設定されている。
【0122】
この結果、電気機器142の温度が第3基準温度以上と判定された場合(S100:YES)には、電気機器142を充分に冷却する必要があると判断できるので、S110に移行して、電気機器冷却処理を行う。換言すれば、電気機器142の温度が第3基準温度以上の場合には、電気機冷却モードに移行する。なお、S110における電気機器冷却処理は、電気機器142が第3基準温度以下に低下するまで継続される。
【0123】
具体的には、S110の処理では、図10に示すように、回路切替弁16にて冷却水循環回路12における冷却水の循環回路を第2循環回路14に切替えると共に(S111)、第1バイパス回路18を開放して、第2循環回路14内の冷却水を、バッテリ11を迂回して電気機器142に流入させる(S112)。そして、循環ポンプ15を駆動して第2循環回路14内に冷却水を循環させる(S113)。
【0124】
ここで、循環ポンプ15は、図11(b)の矢印で示すように、バッテリ冷却処理時にバッテリ11側に流入させた冷却水の一部が、第2循環回路14におけるバイパス回路18側に流れるように駆動する。
【0125】
これにより、放熱器141にて外気にて冷却された冷却水の一部がバッテリ11を迂回して、電気機器142に流入することで、電気機器142の冷却が促進されて、バッテリ冷却処理時に比べて、電気機器142の温度が充分に低下する。つまり、電気機器冷却処理では、電気機器142を優先して冷却することができる。
【0126】
以上説明した本実施形態では、バッテリ冷却モード時には、放熱器141にて放熱(冷却)された冷却水がバッテリ11に優先的に流れるので、バッテリ11を充分に冷却することができる。また、電気機器冷却モード時には、放熱器141にて放熱(冷却)された冷却水の一部がバッテリ11を迂回して電気機器142に流れるので、電気機器142を充分に冷却することができる。従って、電気自動車に搭載された電気機器142の適切な温度調整を実現することができる。
【0127】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図12〜図15に基づいて説明する。図12は、本実施形態に係る車両用温度調整システム10の概略構成図である。
【0128】
本実施形態では、主に、ヒートポンプサイクル30の室外熱交換器34から流出した冷媒と冷却水循環回路12を循環する冷却水とを熱交換させる水−冷媒熱交換器143を備えている点が第2実施形態と相違している。なお、本実施形態では、第2実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0129】
本実施形態の車両用温度調整システム10では、図12に示すように、冷却水循環回路12の第2循環回路14に、水−冷媒熱交換器143が接続されている。具体的には、水−冷媒熱交換器143は、冷却水が流通する冷却水側流路143aおよび冷媒が流通する冷媒側流路143bを有し、冷却水側流路143aを流れる冷却水と冷媒側流路143bを流れる冷媒とを熱交換させて、冷却水の有する熱量によって冷媒を加熱する加熱用熱交換器である。なお、水−冷媒熱交換器143は、冷却水循環回路12の第2循環回路14を流れる冷却水の余剰熱(廃熱)を回収して冷媒を加熱する廃熱回収用熱交換器として捉えることもできる。
【0130】
水−冷媒熱交換器143の冷却水側流路143aは、第2循環回路14における電気機器142と放熱器141との間に接続されている。一方、水−冷媒熱交換器143の冷媒側流路143bは、その冷媒入口がヒートポンプサイクル30における室外熱交換器34の冷媒出口側に接続されると共に、その冷媒出口が第1三方継手35の冷媒流入口側に接続されている。
【0131】
水−冷媒熱交換器143の具体的構成としては、冷却水側流路143aを形成する外側管の内側に冷媒側流路143bを形成する内側管を配置する二重管方式の熱交換器構成を採用することができる。勿論、冷媒側流路143bを外側管とし、冷却水側流路143aを内側管としてもよい。さらに、冷媒側流路143bを構成する冷媒配管と、冷却水側流路143aを構成する冷媒配管と隣接配置して熱交換させる構成としてもよい。
【0132】
その他にも、水−冷媒熱交換器143の具体的構成として、冷媒側流路143bとして冷媒を流通させる蛇行状のチューブあるいは複数本のチューブを採用し、隣り合うチューブ間に冷却水側流路143aを形成し、さらに、冷媒と冷却水との間の熱交換を促進するコルゲートフィンやプレートフィンを設ける熱交換器構成を採用してもよい。
【0133】
なお、本実施形態の水−冷媒熱交換器143の冷却水側流路143aにおける冷却水の流れ方向および冷媒側流路143bにおける冷媒の流れ方向は、互いに対向する方向としている。このため、冷却水側流路14aを流通する冷却水と冷媒側流路14bを流通する冷媒との温度差を確保して熱交換効率を向上させることができる。
【0134】
また、水−冷媒熱交換器143の冷却水側流路143aには、電気機器142側の流入出口付近の冷却水温度を検出する冷却水温度センサ20が設けられている。冷却水温度センサ20は、制御装置100(温度調整用制御装置100b)に接続され、冷却水温度センサ20の検出信号が制御装置100に入力されるようになっている。
【0135】
さらに、水−冷媒熱交換器143の冷媒側流路143bには、冷媒側流路143bの冷媒入口側の冷媒温度を検出する冷媒温度センサ40が設けられている。冷媒温度センサ40は、制御装置100(空調用制御装置100a)に接続され、冷却水温度センサ20の検出信号が制御装置100に入力されるようになっている。
【0136】
次に、本実施形態の車両用温度調整システム10の作動について図13〜図15に基づいて説明する。図13は、本実施形態の制御装置100が実行する制御処理を示すフローチャートであり、図14は、本実施形態の温度調整用制御装置100bが実行する制御処理の要部を示すフローチャートである。また、図15は、本実施形態の冷媒加熱モード時における冷却水の流れを説明する説明図である。
【0137】
本実施形態では、S100の判定処理の結果、電気機器142の温度が第3基準温度よりも低いと判定された場合(S100:NO)には、ヒートポンプサイクル30の運転モードが暖房運転モード、かつ、水−冷媒熱交換器143の冷却水温度が冷媒温度以上であるか否かを判定する(S120)。
【0138】
ここで、暖房運転モードであるか否かの判定は、操作パネルの選択スイッチにて暖房運転モードが選択されているか否かによって判定することができる。また、水−冷媒熱交換器143の冷却水温度が冷媒温度以上であるか否かの判定は、冷却水温度センサ20の検出信号および冷媒温度センサ40の検出信号に基づいて判定することができる。
【0139】
S120の判定処理の結果、暖房運転モード、かつ、水−冷媒熱交換器143の冷却水温度が冷媒温度以上であると判定された場合(S120:YES)には、S130に移行して冷媒加熱処理を行う。換言すれば、暖房運転モード、かつ、水−冷媒熱交換器143の冷却水温度が冷媒温度以上であると判定された場合には、冷媒加熱モードに移行する。なお、S130における冷媒加熱処理は、ヒートポンプサイクル30の運転モードの冷房運転モードへの切替え、又は、水−冷媒熱交換器143の冷却水温度が冷媒温度より低下すると終了する。
【0140】
具体的には、S130の処理では、図14に示すように、回路切替弁16にて冷却水循環回路12における冷却水の循環回路を第2循環回路14に切替えると共に(S131)、第1バイパス回路18を閉鎖する(S132)。そして、循環ポンプ15を駆動して第2循環回路14内に冷却水を循環させる(S133)。
【0141】
ここで、循環ポンプ15は、図15の矢印で示すように、冷却水が第2循環回路14内を加熱装置131→バッテリ11→電気機器142→水−冷媒熱交換器143→放熱器141の順に流れるように駆動される。
【0142】
これにより、バッテリ11および電気機器142にて昇温した冷却水が、水−冷媒熱交換器143の冷却水側流路143aに流入することで、冷却水が有する熱量によって、冷媒側流路143bを流れる冷媒が加熱されて昇温する。なお、バッテリ11の温度が低い場合には、第1バイパス回路18を開放して、バッテリ11を迂回して電気機器142に流入する冷却水の流量を増加させるようにしてもよい。
【0143】
これにより、水−冷媒熱交換器143にて昇温された冷媒は、開閉弁37を介して圧縮機31の冷媒吸入側に流入する。圧縮機31には、水−冷媒熱交換器143にて昇温した冷媒が吸入され、圧縮機31から吐出される高圧冷媒の温度が上昇するので、室内凝縮器32での冷媒の放熱量を増大させることができ、暖房運転モード時の暖房能力を向上させることができる。
【0144】
一方、S120の判定処理の結果、冷房運転モード、又は、水−冷媒熱交換器143の冷却水温度が冷媒温度より低いと判定された場合(S120:NO)には、S70に移行して循環ポンプ15をオフする。
【0145】
以上説明した本実施形態では、室外熱交換器34から流出した冷媒よりも冷却水の温度が高い場合には、冷却水が有する熱量(廃熱)を利用してヒートポンプサイクル30における室外熱交換器34から流出した冷媒を加熱することができる。これにより、暖房運転モード時に、圧縮機31に吸入される冷媒の温度が上昇し、室内凝縮器32での冷媒の放熱量を増大させることができるので、ヒートポンプサイクル30の暖房運転モード時における暖房能力の向上を図ることが可能となる。
【0146】
さらに、本実施形態では、冷房運転モード時に、車両用温度調整システム10の冷媒加熱処理を行わない。このため、当該冷媒加熱処理によって、水−冷媒熱交換器143にて冷媒が加熱されないので、水−冷媒熱交換器143にて加熱された冷媒が室内蒸発器38に流入して、室内蒸発器38にて冷媒が送風空気から吸熱する吸熱量(冷凍能力)が低下してしまうことを回避することができる。
【0147】
なお、本実施形態では、ヒートポンプサイクル30における室外熱交換器34の冷媒流れ下流側に水−冷媒熱交換器143の冷媒側流路143bの入口側を接続する構成とし、冷却水が有する熱量(廃熱)を利用して室外熱交換器34から流出した冷媒を加熱するようにしているが、これに限定されない。
【0148】
例えば、ヒートポンプサイクル30における室外熱交換器34の冷媒流れ上流側、つまり、第1電気式膨張弁33と室外熱交換器34との間に水−冷媒熱交換器143を接続し、冷却水が有する熱量(廃熱)を利用して、室外熱交換器34よりも冷媒流れ上流側の冷媒(第1電気式膨張弁33から流出した冷媒)を加熱するようにしてもよい。
【0149】
これによっても、暖房運転モード時に、圧縮機31に吸入される冷媒の温度が上昇し、室内凝縮器32での冷媒の放熱量を増大させることができるので、ヒートポンプサイクル30の暖房運転モード時における暖房能力の向上を図ることが可能となる。
【0150】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図16、図17に基づいて説明する。図16は、本実施形態に係る車両用温度調整システム10の概略構成図である。
【0151】
本実施形態では、主に、ヒートポンプサイクル30の圧縮機31として低圧冷媒を吸入する吸入ポート31dと中間圧冷媒を吸入する中間圧ポート31fを有する、いわゆる二段昇圧式の圧縮機を採用している点が第3実施形態と相違している。なお、本実施形態では、第3実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0152】
本実施形態のヒートポンプサイクル30について説明すると、図16に示すように、本実施形態では、圧縮機31として、固定容量型の低段側圧縮機構31bおよび高段側圧縮機構31cがハウジング31aに収容され、低段側圧縮機構31bおよび高段側圧縮機構31cそれぞれを共通の電動モータにて駆動する二段圧縮式の電動圧縮機を採用している。なお、低段側圧縮機構31bおよび高段側圧縮機構31cとしては、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用することができる。
【0153】
圧縮機31のハウジング31aには、吸入ポート31d、吐出ポート31e、および中間圧冷媒を流入させる中間圧ポート31fが設けられている。これら各ポート31d〜31fが、ハウジング31a内部で各圧縮機構31b、31cに接続されている。
【0154】
具体的には、吸入ポート31dは、低段側圧縮機構31bの吸入口に接続され、中間圧ポート31fは、低段側圧縮機構31bの吐出口と高段側圧縮機構31cの吸入口に連通するように接続され、吐出ポート31eは、高段側圧縮機構31cの吐出口に接続されている。
【0155】
従って、低段側圧縮機構31bは、吸入ポート31dから吸入された低圧冷媒を吸入して圧縮し、さらに高段側圧縮機構31cは、低段側圧縮機構31bから吐出された冷媒と中間圧ポート31fから吸入された冷媒とを混合した中間圧冷媒を吸入して圧縮し、吐出ポート31eから吐出する。
【0156】
圧縮機31の吐出側に接続された室内凝縮器32の冷媒出口側には、室内凝縮器32から流出した高圧冷媒の減圧膨張させる第3減圧手段としての第3電気式膨張弁41が接続されている。第3電気式膨張弁41は、室内凝縮器32から流出した高圧冷媒を中間圧冷媒となるまで減圧膨張させる可変絞り機構である。
【0157】
第3電気式膨張弁41の冷媒出口側には、水−冷媒熱交換器143の冷媒側流路143bの入口側が接続されている。水−冷媒熱交換器143の冷媒側流路143bの冷媒出口側には、気液分離器42の冷媒入口側が接続されている。
【0158】
気液分離器42は、水−冷媒熱交換器143から流出した中間圧冷媒の気液を分離するもので、気液分離器42の気相冷媒出口は、圧縮機31の中間圧ポート31fに接続され、液相冷媒出口は、第1電気式膨張弁33の冷媒入口側に接続されている。
【0159】
なお、気液分離器42の気相冷媒出口から圧縮機31の中間圧ポート31fに至る冷媒配管には、気液分離器42の気相冷媒出口から圧縮機31の中間圧ポート31fへ中間圧冷媒が流れることを許容し、その逆の流れを禁止する逆止弁が配置されている。これにより、圧縮機31側から気液分離器42へと冷媒が逆流することを防止している。
【0160】
気液分離器42の液相冷媒出口には、第1電気式膨張弁33の冷媒入口側に接続されている。なお、ヒートポンプサイクル30における第1電気式膨張弁33よりも冷媒流れ下流側の構成は、第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0161】
次に、本実施形態のヒートポンプサイクル30の冷房運転モードおよび暖房運転モードについて図17に基づいて説明する。図17は、本実施形態の冷房運転モード時(図17(a)参照)、および暖房運転モード時(図17(b)参照)の冷媒流路を説明する説明図である。
【0162】
まず、冷房運転モードについて説明する。冷房運転モードが開始されると、第1電気式膨張弁33を全開状態、開閉弁37を閉状態に制御し、圧縮機31を駆動する。これにより、ヒートポンプサイクル30内の冷媒が、図17(a)の矢印で示すように流れる。
【0163】
この際、圧縮機31の吐出ポート31eから吐出された高圧冷媒が室内凝縮器32に流入して放熱する。これにより、送風機52から送風されて室内蒸発器38にて冷却された冷風のうち室内凝縮器32を通過する冷風が加熱される。
【0164】
室内凝縮器32から流出した高圧冷媒は、第3電気式膨張弁41に流入し、第3電気式膨張弁41にて中間圧冷媒となるまで減圧膨張された後、水−冷媒熱交換器143に流入する。なお、冷房運転モード時には、車両用温度調整システム10による冷媒加熱処理が行われないので、冷媒加熱処理によって、水−冷媒熱交換器143にて冷却水と冷媒との熱交換が行われない。
【0165】
水−冷媒熱交換器143から流出した中間圧冷媒は、気液分離器42にて気液分離される。気液分離器42にて分離された気相冷媒は、圧縮機31の中間圧ポート31fから圧縮機31の内部へと流入し、圧縮機31の内部で低段側圧縮機構31bから吐出された冷媒と合流して高段側圧縮機構31cへと吸入される。
【0166】
一方、気液分離器42にて分離された液相冷媒は、第1電気式膨張弁33が全開状態となっているので、第1電気式膨張弁33にて減圧されることなく、室外熱交換器34に流入する。そして、室外熱交換器34に流入した冷媒は、外気と熱交換してさらに冷却される。
【0167】
室外熱交換器34から流出した高圧冷媒は、開閉弁37が閉状態となっているので、第2電気式膨張弁36にて低圧冷媒となるまで減圧膨張された後、室内蒸発器38に流入して送風機52から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。そして、室内蒸発器38から流出した冷媒は、圧縮機31の吸入ポート31dから吸入されて再び圧縮される。
【0168】
このように、本実施形態では、冷房運転モード時に、室内蒸発器38にて送風空気を冷却すると共に、エアミックスドア53の開度を調整することにより、室内蒸発器38にて冷却された冷風を室内凝縮器32で再加熱して、乗員の所望の温度となった空調風を車室に吹き出すことができる。
【0169】
次に、暖房運転モードについて説明する。暖房運転モードが開始されると、開閉弁37を開状態、第2電気式膨張弁36を全閉状態に制御し、圧縮機31を駆動する。これにより、ヒートポンプサイクル30内の冷媒が、図17(b)の矢印で示すように流れる。
【0170】
この際、圧縮機31の吐出ポート31eから吐出された高圧冷媒が室内凝縮器32に流入して放熱する。これにより、送風機52から送風された送風空気が室内凝縮器32を通過する際に加熱される。
【0171】
室内凝縮器32から流出した高圧冷媒は、第3電気式膨張弁41にて中間圧冷媒となるまで減圧膨張されて水−冷媒熱交換器143に流入する。暖房運転モード時において、冷却水温度が冷媒温度よりも高温となる場合には、車両用温度調整システム10による冷媒加熱処理が行われるので、当該冷媒加熱処理によって、水−冷媒熱交換器143にて冷媒が加熱される。
【0172】
水−冷媒熱交換器143から流出した中間圧冷媒は、気液分離器42にて気液分離される。気液分離器42にて分離された気相冷媒は、圧縮機31の中間圧ポート31fから圧縮機31の内部へと流入し、圧縮機31の内部で低段側圧縮機構31bから吐出された冷媒と合流して高段側圧縮機構31cへと吸入される。
【0173】
一方、気液分離器42にて分離された液相冷媒は、第1電気式膨張弁33にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第1電気式膨張弁33にて減圧膨張された低圧冷媒は、室外熱交換器34に流入し、室外熱交換器34にて外気から吸熱して蒸発する。
【0174】
室外熱交換器34から流出した冷媒は、第2電気式膨張弁36が全閉状態となっているので、開閉弁37を介して、圧縮機31の吸入ポート31dから吸入されて再び圧縮される。
【0175】
このように、本実施形態では、暖房運転モード時に、室内凝縮器32にて圧縮機31から吐出された高圧冷媒が有する熱量を送風機52から送風された送風空気に放熱させて、加熱された送風空気を車室内に吹き出すことができる。
【0176】
さらに、本実施形態では、暖房運転モード時に、水−冷媒熱交換器143にて加熱された冷媒の気液を分離して、分離された液相冷媒を室外熱交換器34にて蒸発させることで外気から吸熱させ、分離された気相冷媒については、中間圧ポート31fから圧縮機31の高段側圧縮機構31cに吸入させている。
【0177】
従って、低外気温時の如く、冷媒が室外熱交換器34にて外気から充分に吸熱できない運転条件であっても、水−冷媒熱交換器143にて加熱された冷媒によって送風空気を充分に加熱することができる。
【0178】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図18〜図20に基づいて説明する。図18は、本実施形態に係る車両用温度調整システム10の概略構成図である。
【0179】
本実施形態では、主に、車両用温度調整システム10における冷却水循環回路12の第2循環回路14に、水−冷媒熱交換器143を迂回する第2バイパス回路21が設けられている点が第3実施形態と相違している。なお、本実施形態では、第3実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0180】
本実施形態の車両用温度調整システム10は、図18に示すように、第2循環回路14に水−冷媒熱交換器143を迂回する第2バイパス回路21が設けられている。この第2バイパス回路21は、第2循環回路14における電気機器142および水−冷媒熱交換器143の間と、水−冷媒熱交換器143および放熱器141の間とを接続する回路である。
【0181】
第2バイパス回路21と電気機器142および水−冷媒熱交換器143の間との接続部には、バイパス回路切替弁21aが配置されている。バイパス回路切替弁21aは、第2循環回路14における冷却水の流れを、水−冷媒熱交換器143側と、第2バイパス回路21側とに切替える第2バイパス回路切替手段として機能する。バイパス回路切替弁21aは、制御装置100(温度調整用制御装置100b)から出力される制御電圧によって、その作動が制御される電気式三方弁で構成されている。
【0182】
また、第2バイパス回路21と冷却水循環回路12における水−冷媒熱交換器143および放熱器141の間との接続部には、第5三方継手21bが配置されている。なお、第5三方継手21bの基本構成は、第1三方継手35と同様である。
【0183】
次に、本実施形態の車両用温度調整システム10の作動について図19、図20に基づいて説明する。図19、図20は、本実施形態の制御装置100が実行する制御処理の要部を示すフローチャートである。
【0184】
本実施形態では、図19に示すように、バッテリ冷却処理(S90)における、S92の処理で第1バイパス回路18を閉鎖した後、ヒートポンプサイクル30の運転モードが暖房運転モード、かつ、水−冷媒熱交換器143の冷却水温度が冷媒温度以上であるか否かを判定する(S94)。
【0185】
この結果、暖房運転モード、かつ、水−冷媒熱交換器143の冷却水温度が冷媒温度以上であると判定された場合(S94:YES)には、S95に移行して、バイパス回路切替弁21aにて、第2バイパス回路21側を閉鎖して第2循環回路14における冷却水の流れを、水−冷媒熱交換器143側に切替える。
【0186】
これにより、バッテリ11および電気機器142にて昇温された冷却水が水−冷媒熱交換器143側に流入するので、冷却水が有する熱量によって冷媒を充分に加熱することができる。
【0187】
一方、冷房運転モード、又は、水−冷媒熱交換器143の冷却水温度が冷媒温度よりも低いと判定された場合(S94:NO)には、S96に移行して、バイパス回路切替弁21aにて、第2バイパス回路21側を開放して第2循環回路14における冷却水の流れを、第2バイパス回路21側に切替える。この際、バイパス回路切替弁21aにて第2循環回路14における水−冷媒熱交換器143側は閉鎖され、冷却水は水−冷媒熱交換器143に流入しない。
【0188】
これにより、バッテリ11および電気機器142にて昇温された冷却水は、第2バイパス回路21側に流入するので、水−冷媒熱交換器143では、冷却水と冷媒とが熱交換しない。従って、冷房運転モード時には、バッテリ冷却処理によって、水−冷媒熱交換器143にて冷媒が加熱されないので、水−冷媒熱交換器143にて加熱された冷媒が室内蒸発器38に流入して、室内蒸発器38にて冷媒が送風空気から吸熱する吸熱量(冷凍能力)が低下してしまうことを回避することができる。
【0189】
また、図20に示すように、電気機器冷却処理(S110)における、S112の処理で第1バイパス回路18を閉鎖した後、ヒートポンプサイクル30の運転モードが暖房運転モード、かつ、水−冷媒熱交換器143の冷却水温度が冷媒温度以上であるか否かを判定する(S114)。
【0190】
この結果、暖房運転モード、かつ、水−冷媒熱交換器143の冷却水温度が冷媒温度以上であると判定された場合(S114:YES)には、S115に移行して、バイパス回路切替弁21aにて、第2バイパス回路21側を閉鎖して第2循環回路14における冷却水の流れを、水−冷媒熱交換器143側に切替える。
【0191】
これにより、バッテリ11および電気機器142にて昇温された冷却水が水−冷媒熱交換器143側に流入するので、冷却水が有する熱量によって冷媒を充分に加熱することができる。
【0192】
一方、暖房運転モード、又は、水−冷媒熱交換器143の冷却水温度が冷媒温度よりも低いと判定された場合(S114:NO)には、S116に移行して、バイパス回路切替弁21aにて、第2バイパス回路21側を開放して第2循環回路14における冷却水の流れを、第2バイパス回路21側に切替える。この際、バイパス回路切替弁21aにて第2循環回路14における水−冷媒熱交換器143側は閉鎖され、冷却水は水−冷媒熱交換器143に流入しない。
【0193】
これにより、バッテリ11および電気機器142にて昇温された冷却水は、第2バイパス回路21側に流入するので、水−冷媒熱交換器143では、冷却水と冷媒とが熱交換しない。従って、冷房運転モード時には、電気機器冷却処理によって、水−冷媒熱交換器143にて冷媒が加熱されないので、水−冷媒熱交換器143にて加熱された冷媒が室内蒸発器38に流入して、室内蒸発器38にて冷媒が送風空気から吸熱する吸熱量(冷凍能力)が低下してしまうことを回避することができる。
【0194】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。例えば、以下のように種々変形可能である。
【0195】
(1)上述の各実施形態では、電気式三方弁にて構成された回路切替弁16によって冷却水循環回路12における冷却水の流れを第1循環回路13および第2循環回路14に切替える循環回路切替手段を構成した例を説明したが、循環回路切替手段の構成はこれに限定されない。例えば、回路切替弁16を廃止して、第1循環回路13および第2循環回路14それぞれに開閉弁を配置し、各開閉弁を循環回路切替手段として採用してもよい。
【0196】
また、電気式三方弁にてバイパス回路切替弁21aによって、冷却水循環回路12の第2循環回路14を流れる冷却水の流路を水−冷媒熱交換器143側と第2バイパス回路21側とに切替える第2バイパス回路切替手段を構成した例を説明したが、第2バイパス回路切替手段の構成はこれに限定されない。例えば、バイパス回路切替弁21aを廃止して、第2循環回路14における水−冷媒熱交換器143側および第2バイパス回路21側それぞれに開閉弁を配置し、各開閉弁を循環回路切替手段として採用してもよい。
【0197】
(2)上述の各実施形態では、循環ポンプ15として、回転を正転・逆転可能な電動式のポンプで構成した例を説明したが、例えば、循環ポンプ15として逆回転ができない電動式のポンプで構成すると共に、冷却水循環回路12に当該循環ポンプ15の冷却水の流出口側および流入口側を切替える回路切替機構を設け、当該回路切替機構によって、冷却水循環回路12における冷却水の流れを逆転可能に構成してもよい。
【0198】
(3)上述の各実施形態では、制御手段を、空調用制御装置100aおよび温度調整用制御装置100bといった2つの制御装置にて構成しているが、これに限らず、車室内の空調制御および車両の温度調整制御を実行する1つの制御装置にて構成してもよい。
【0199】
(4)上述の各実施形態では、制御装置100にて電気機器142を冷却する電気機器冷却処理を実行しているが、制御装置100にて電気機器142を暖機する電気機器暖機処理を実行してもよい。この電気機器暖機処理では、加熱装置131にて冷却水を加熱し、加熱された冷却水を第2循環回路14における電気機器142に流入させることで、冷却水が有する熱量によって電気機器142の暖機を行うことができる。また、電気機器暖機処理では、送風ファン141aの回転数を低下させて、放熱器141での放熱量を低減するようにしてもよい。
【0200】
(5)上述の各実施形態では、冷媒加熱処理において、水−冷媒熱交換器143にて冷却水が有する熱量によって室外熱交換器34の下流側の冷媒を加熱するようにしているが、冷却水が有する熱量が不足している場合には、加熱装置131にて加熱した冷却水を水−冷媒熱交換器143に流入させるようにしてもよい。
【0201】
(6)上述の各実施形態では、上述の各実施形態では、第2電気式膨張弁36および開閉弁37によって冷媒流路切替手段を構成した例を説明したが、冷媒流路切替手段の構成はこれに限定されない。
【0202】
例えば、開閉弁37を廃止して、暖房運転モード時に室外熱交換器34の出口側と圧縮機31の冷媒吸入側とを接続する冷媒流路に切替え、冷房運転モード時に室外熱交換器34の出口側と第2電気式膨張弁36の冷媒入口側とを接続する冷媒流路に切替える電気式三方弁を冷媒流路切替手段として採用してもよい。
【0203】
また、第2減圧手段として、全閉機能を有する第2電気式膨張弁36を採用することで、第2電気式膨張弁36を冷媒流路切替手段としての機能を備える例を説明したが、全閉機能を有さない第2電気式膨張弁36を採用し、当該第2電気式膨張弁36の冷媒流れ上流側又は下流側に開閉弁を配置する構成としてもよい。
【0204】
(7)上述の各実施形態では、上述の各実施形態では、電気自動車のうちハイブリッド車両に適用した例を説明したが、これに限らず、車両走行用駆動源としての内燃機関を備えず、走行用モータから駆動力を得る電気自動車(燃料電池車両等)に適用してもよい。
【0205】
(8)上述の各実施形態では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用した例を説明したが、冷媒の種類はこれに限定されない。二酸化炭素等の自然冷媒や炭化水素系冷媒等を採用してもよい。さらに、ヒートポンプサイクル30が圧縮機31から吐出された冷媒が冷媒の臨界圧力以上となる超臨界冷凍サイクルを構成していてもよい。
【符号の説明】
【0206】
10 車両用温度調整システム
11 バッテリ
13 第1循環回路(第1流体循環回路)
131 加熱装置(加熱手段)
14 第2循環回路(第2流体循環回路)
141 放熱器
142 電気機器
143 水−冷媒熱交換器(加熱用熱交換器)
15 循環ポンプ(流体循環手段)
16 回路切替弁(循環回路切替手段)
18 第1バイパス回路
18c 流量調整弁(流量調整手段)
21 第2バイパス回路
21a バイパス回路切替弁(第2バイパス回路切替手段)
30 ヒートポンプサイクル
34 室外熱交換器
100 制御装置(制御手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された各種機器の温度を調整するための車両用温度調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、燃料電池ユニットを搭載した車両に適用される車両用暖房装置が開示されている。特許文献1に記載の車両用暖房装置では、燃料電池ユニットの低温始動時に、燃料電池ユニットを早期に予加熱することを目的としている。
【0003】
具体的には、特許文献1に記載の車両用暖房装置は、燃料電池ユニット、冷却水を加熱する加熱手段および冷却水の熱で車室内に送風する送風空気を加熱するヒータコアを環状に接続してなる冷却水循環回路を備え、冷却水の温度が設定温度よりも低い場合には、加熱手段にて冷却水を加熱し、加熱された冷却水の熱を、ヒータコアで利用することなく、燃料電池ユニットの予加熱用の熱源として利用する構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−127734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、車両用の駆動源として大容量のバッテリから電力が供給されることで駆動する走行用モータを利用する電気自動車(ハイブリッド車両、燃料電池車両を含む。)が増加している。
【0006】
この電気自動車では、内燃機関(エンジン)で駆動する従来の車両に比較して、車両の廃熱が少ないので、温度調整が必要となるバッテリや車室内空間を暖房装置の各種機器それぞれに対して、電気ヒータ等の専用の加熱装置を設けることが必要となる。
【0007】
例えば、走行用モータに電力を供給するバッテリは、低温環境下においてバッテリの充放電性能が低下することから、低温環境下におけるバッテリの暖機のための加熱装置を別途設ける必要がある。
【0008】
また、電気自動車における車室内の空調装置に、車室内の冷暖房運転が可能なヒートポンプサイクルを採用する場合、低温環境下において暖房運転を行うと、外気から吸熱して冷媒を蒸発させる室外熱交換器に着霜が生じることがある。この場合、室外熱交換器に高温冷媒を流すことで室外熱交換器に付着した霜を除去することが考えられるが、車室内の暖房を停止することになる。このため、車室内の暖房を継続しつつ、室外熱交換器に付着した霜を除去するためには、室外熱交換器を加熱する加熱装置等を別途設ける必要がある。
【0009】
しかし、温度調整が必要となる各種機器それぞれに対して、加熱装置を設けると車載する機器が増加し、車両コスト等の大幅な増大を招くことから現実的に採用することが困難である。
【0010】
このように、電気自動車では、車両に搭載された各種機器の温度を調整する際の熱源を充分に確保することができず、電気自動車に搭載された各種機器の適切な温度調整を実現することができないという課題がある。
【0011】
本発明は上記点に鑑みて、電気自動車に搭載された各種機器の適切な温度調整を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、車室内を暖房する暖房運転時に外気から吸熱して冷媒を蒸発させる蒸発器として機能すると共に車室内を冷房する冷房運転時に外気に冷媒の熱を放熱する放熱器として機能する室外熱交換器(34)を含んで構成されるヒートポンプサイクル(30)と、車両走行用駆動源としての走行用モータに電力を供給するバッテリ(11)と、を備える電気自動車に適用され、少なくともバッテリ(11)および室外熱交換器(34)の温度を調整する車両温度調整装置であって、バッテリ(11)、およびバッテリ(11)の温度を調整するための温度調整流体を加熱する加熱手段(131)に接続され、温度調整流体が循環する第1流体循環回路(13)と、バッテリ(11)、加熱手段(131)、および温度調整流体の熱を室外熱交換器(34)に放熱可能な放熱器(141)に接続され、温度調整流体が循環する第2流体循環回路(14)と、第1流体循環回路(13)および第2流体循環回路(14)に温度調整流体を循環させる流体循環手段(15)と、第1流体循環回路(13)と第2流体循環回路(14)とを切替える循環回路切替手段(16)と、少なくとも加熱手段(131)、循環回路切替手段(16)、および流体循環手段(15)の作動を制御する制御手段(100)と、を備え、制御手段(100)は、バッテリ(11)を暖機するバッテリ暖機モード時には、加熱手段(131)にて温度調整流体を加熱し、循環回路切替手段(16)にて第1流体循環回路(13)に切替えると共に、流体循環手段(15)にて加熱手段(131)で加熱された温度調整流体をバッテリ(11)に流入させ、室外熱交換器(34)に付着した霜を取り除く除霜運転モード時には、加熱手段にて温度調整流体を加熱し、循環回路切替手段(16)にて第2流体循環回路(14)に切替えると共に、流体循環手段(15)にて加熱手段で加熱された温度調整流体を放熱器(141)に流入させて、温度調整流体の熱を室外熱交換器(34)に放熱することを特徴とする。
【0013】
これによると、バッテリ暖機モード時には、加熱手段(131)にて加熱された温度調整流体によって、バッテリ(11)を暖機することができる。また、除霜運転モード時には、車室内空間の暖房を停止することなく、加熱手段(131)にて加熱された温度調整流体の熱を放熱器(141)から放熱して、当該放熱器(141)における放熱によって、室外熱交換器(34)に付着した霜を取り除くことができる。つまり、温度調整が必要となる各種機器それぞれに対して専用の加熱手段を設けることなく、バッテリ(11)の暖機およびヒートポンプサイクル30の室外熱交換器(34)の除霜を行うことができる。従って、電気自動車に搭載された各種機器の適切な温度調整を実現することができる。
【0014】
ここで、バッテリ(11)は、その温度(バッテリ温度)が高温となる状態で充放電を行うと劣化が進行するので、バッテリ(11)が必要以上に高温とならないように冷却する必要がある。
【0015】
そこで、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の車両用温度調整システムにおいて、制御手段(100)は、バッテリ(11)を冷却するバッテリ冷却モード時には、循環回路切替手段(16)にて第2流体循環回路(14)に切替えると共に、流体循環手段(15)にて放熱器(141)で放熱された温度調整流体をバッテリ(11)に流入させることを特徴とする。
【0016】
これによると、放熱器(141)で放熱(冷却)された温度調整流体をバッテリ(11)に流入させることで、バッテリ(11)が必要以上に高温とならないように冷却することができる。
【0017】
また、電気自動車では、車両走行時に走行用モータや走行用モータの駆動を制御するインバータ等の電気機器(142)が発熱する。これら電気機器(142)は、高温となりすぎると、車両走行に悪影響を及ぼす虞があるので、必要以上に高温とならないように温度調整(冷却)する必要がある。
【0018】
そこで、請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の車両用温度調整システムにおいて、第2流体循環回路(14)には、車両に搭載されて温度調整が必要となる電気機器(142)、およびバッテリ(11)を迂回して、電気機器(142)に温度調整流体を流入させる第1バイパス回路(18)、第2流体循環回路(14)における第1バイパス回路(18)側に流れる温度調整流体の流量を調整する流量調整手段(18c)が接続されており、制御手段(100)は、バッテリ冷却モード時には、循環回路切替手段(16)にて第2流体循環回路(14)に切替え、流量調整手段(18c)にて第2流体循環回路(14)における第1バイパス回路(18)側に流れる温度調整流体の流量を減少させると共に、流体循環手段(15)にて放熱器(141)で放熱された温度調整流体をバッテリ(11)に流入させ、電気機器(142)を冷却する電気機器冷却モード時には、循環回路切替手段(16)にて第2流体循環回路(14)に切替え、流量調整手段(18c)にて第2流体循環回路(14)における第1バイパス回路(18)側に流れる温度調整流体の流量を増大させると共に、流体循環手段(15)によって放熱器(131)で放熱された温度調整流体を電気機器(142)に流入させることを特徴とする。
【0019】
これによると、バッテリ冷却モード時には、放熱器(141)にて放熱(冷却)された温度調整流体がバッテリ(11)側に優先的に流れるので、バッテリ(11)を充分に冷却することができる。また、電気機器冷却モード時には、放熱器(141)にて放熱(冷却)された温度調整流体が第1バイパス回路(18)を介して電気機器(142)に流れるので、電気機器(142)を充分に冷却することができる。従って、電気自動車に搭載された電気機器(142)の適切な温度調整を実現することができる。
【0020】
また、請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の車両用温度調整システムにおいて、第2流体循環回路(14)には、ヒートポンプサイクル(30)における室外熱交換器(34)よりも冷媒流れ上流側又は下流側の冷媒と温度調整流体とを熱交換させて冷媒を加熱する加熱用熱交換器(143)が接続されており、制御手段(100)は、暖房運転時において、加熱用熱交換器(143)に流入する温度調整流体の温度が、加熱用熱交換器(143)に流入する冷媒の温度に比べて高い場合には、循環回路切替手段(16)にて第2流体循環回路(14)に切替え、流体循環手段(15)にて温度調整流体を加熱用熱交換器(143)に流入させることを特徴とする。
【0021】
これによると、加熱用熱交換器(143)に流入する冷媒よりも加熱用熱交換器(143)に流入する温度調整流体の温度が高い場合には、温度調整流体の熱(廃熱)を利用して室外熱交換器(34)に流入する冷媒又は流出した冷媒を加熱することができる。このため、ヒートポンプサイクル(30)における外部からの吸熱量が増大するので、ヒートポンプサイクル(30)における暖房運転時の暖房能力の向上を図ることが可能となる。
【0022】
また、請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の車両用温度調整システムにおいて、第2流体循環回路(14)には、加熱用熱交換器(143)を迂回する第2バイパス回路(21)、および第2流体循環回路(14)における温度調整流体の流れを加熱用熱交換器(143)側と第2バイパス回路(21)側とに切替える第2バイパス回路切替手段(21a)が接続されており、制御手段(100)は、暖房運転時において、加熱用熱交換器(143)に流入する温度調整流体の温度が加熱用熱交換器(143)に流入する冷媒の温度に比べて高い場合には、第2バイパス回路切替手段(21a)にて第2流体循環回路(14)における温度調整流体の流れを加熱用熱交換器(143)側に切替え、暖房運転時において、加熱用熱交換器(143)に流入する温度調整流体の温度が、加熱用熱交換器(143)に流入する冷媒の温度に比べて低い場合には、第2バイパス回路切替手段(21a)にて第2流体循環回路(14)における温度調整流体の流れを第2バイパス回路(21)側に切替えることを特徴とする。
【0023】
これによると、加熱用熱交換器(143)に流入する温度調整流体の温度が加熱用熱交換器(143)に流入する冷媒の温度よりも低い場合には、温度調整流体が加熱用熱交換器(143)を迂回して第2バイパス回路(21)側に流れるので、加熱用熱交換器(143)にて冷媒が冷却されてしまうといった不具合を抑制することができる。
【0024】
また、請求項6に記載の発明の如く、請求項4に記載の車両用温度調整システムにおいて、制御手段(100)は、冷房運転時には、第2バイパス回路切替手段(21a)にて第2流体循環回路(14)における温度調整流体の流れを第2バイパス回路(21)側に切替えるようにしてもよい。
【0025】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態に係る車両用温度調整システムの概略構成図である。
【図2】第1実施形態に係るヒートポンプサイクルの冷房運転モード時および暖房運転モード時の冷媒流路を説明する説明図である。
【図3】第1実施形態に係る制御装置が実行する制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】第1実施形態に係る制御装置が実行するバッテリ暖機処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】第1実施形態に係る制御装置が実行する除霜処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態に係る車両用温度調整システムのバッテリ暖機モード時および除霜運転モード時における冷却水の流路を説明する説明図である。
【図7】第2実施形態に係る車両用温度調整システムの概略構成図である。
【図8】第2実施形態に係る制御装置が実行する制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】第2実施形態に係る制御装置が実行するバッテリ冷却処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】第2実施形態に係る制御装置が実行する電気機器冷却処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】第2実施形態に係る車両用温度調整システムのバッテリ暖機モード時および電気機器冷却モード時における冷却水の流路を説明する説明図である。
【図12】第3実施形態に係る車両用温度調整システムの概略構成図である。
【図13】第3実施形態に係る制御装置が実行する制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】第3実施形態に係る制御装置が実行する冷媒加熱処理の流れを示すフローチャートである。
【図15】第3実施形態に係る車両用温度調整システムの冷媒加熱モード時における冷却水の流路を説明する説明図である。
【図16】第4実施形態に係る車両用温度調整システムの概略構成図である。
【図17】第4実施形態に係るヒートポンプサイクルの冷房運転モード時および暖房運転モード時の冷媒流路を説明する説明図である。
【図18】第5実施形態に係る車両用温度調整システムの概略構成図である。
【図19】第5実施形態に係る制御装置が実行するバッテリ冷却処理の流れを示すフローチャートである。
【図20】第5実施形態に係る制御装置が実行する電気機器冷却処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0028】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図6に基づいて説明する。図1は、本実施形態の車両用温度調整システム10の概略構成図である。
【0029】
本実施形態では、本発明の車両用温度調整システム10を、車両走行用駆動源である内燃機関(エンジン)EGおよび走行用モータ(電動モータ)から車両走行用の駆動力を得る、いわゆるハイブリッド自動車に適用している。本実施形態のハイブリッド自動車は、走行用モータに電力を供給するバッテリ11、車室内空間に送風する送風空気を冷却あるいは加熱する機能を果たすヒートポンプサイクル(冷凍サイクル)30等を備えている。
【0030】
バッテリ11は、充電可能な二次電池であり、例えば多数のリチウムイオン電池やニッケル水素電池等を電気的に直列接続して、車両において要求される所定の高電圧を発生するものである。本実施形態のバッテリ11は、車両後方のトランクルーム付近に搭載されている。なお、バッテリ11の搭載位置は、車両後方のトランクルーム付近に限定されず、例えば、車両床下、車両の後部座席の下等のスペースに搭載してもよい。
【0031】
ここで、本実施形態のバッテリ11は、低温環境下においてバッテリ温度が著しく低下すると、バッテリ出力の低下を招くと共に充電時の充電効率の悪化を招いてしまう。このため、本実施形態では、バッテリ温度が低下した場合に、車両用温度調整システム10によって、バッテリ11を暖機するバッテリ暖機運転を実行するようにしている。なお、車両用温度調整システム10によるバッテリ11の暖機については後述する。
【0032】
次に、ヒートポンプサイクル30について説明すると、本実施形態のヒートポンプサイクル30は、車室内を暖房する暖房運転モード、および車室内を冷房する冷房運転モードの冷媒回路を切替え可能に構成されている。
【0033】
本実施形態のヒートポンプサイクル30は、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を越えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。さらに、この冷媒には、圧縮機31を潤滑するための冷凍機油が混入されており、この冷凍機油は冷媒と共にサイクルを循環している。
【0034】
圧縮機31は、エンジンルーム内に配置されて、ヒートポンプサイクル30において、冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。より具体的には、本実施形態では、圧縮機31として、ハウジング31a内に1つの圧縮機構31bを収容し、当該圧縮機構31bを電動モータ(図示略)にて駆動する一段昇圧式の電動圧縮機を採用している。
【0035】
圧縮機31の圧縮機構31bとしては、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用することができる。また、電動モータは、後述する空調用制御装置100aから出力される制御信号によって回転数が制御されるもので、交流モータ、直流モータのいずれを採用してもよい。そして、この回転数制御によって圧縮機31の冷媒吐出能力が変更される。従って、電動モータは、圧縮機31の吐出能力変更手段を構成している。
【0036】
圧縮機31のハウジング31aには、低圧冷媒を吸入する吸入ポート31d、および高圧冷媒を吐出する吐出ポート31eが設けられている。そして、吸入ポート31dおよび吐出ポート31eがハウジング31aの内部で圧縮機構31bに接続されている。具体的には、吸入ポート31dは、圧縮機構31bの吸入口に接続され、吐出ポート31eは圧縮機構31bの吐出口に接続されている。従って、圧縮機構31bでは、吸入ポート31dから吸入された低圧冷媒を吸入して圧縮し、吐出ポート31eから吐出する。
【0037】
圧縮機31の吐出側には、第1利用側熱交換器としての室内凝縮器32の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器32は、車室内空間を空調するための室内空調ユニット50のケーシング51内に配置されて、その内部を流通する冷媒と後述する室内蒸発器38にて冷却された送風空気(冷風)とを熱交換させることで冷風を再加熱する暖房用熱交換器である。なお、室内空調ユニット50の詳細については後述する。
【0038】
室内凝縮器32の冷媒出口側には、第1減圧手段としての第1電気式膨張弁33が接続されている。第1電気式膨張弁33は、室内凝縮器32から流出した高圧冷媒の流れを減圧膨張させる可変絞り機構である。
【0039】
具体的には、第1電気式膨張弁33は、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、当該弁体の絞り開度を変化させるステッピングモータからなる電動アクチュエータとを有して構成されている。なお、第1電気式膨張弁33は、後述する空調用制御装置100aから出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0040】
第1電気式膨張弁33は、その絞り開度を全開することで、室内凝縮器32から流出した高圧冷媒を減圧することなく後述する室外熱交換器34の入口側へ流入させることができる。
【0041】
第1電気式膨張弁33の冷媒出口側には、冷媒と外気とを熱交換させる室外熱交換器34が接続されている。この室外熱交換器34は、エンジンルーム内に配置されて、ヒートポンプサイクル30の暖房運転モード時(暖房運転時)には、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる蒸発器として機能し、冷房運転モード時(冷房運転時)には、高圧冷媒を放熱させる放熱器として機能する熱交換器である。
【0042】
ここで、室外熱交換器34は、低温環境下において暖房運転が行われると、室外熱交換器34の表面に着霜が生ずることがある。このため、本実施形態では、車両用温度調整システム10によって、室外熱交換器34に付着した霜を取り除く除霜運転を実行するようにしている。なお、車両用温度調整システム10による除霜運転については後述する。
【0043】
室外熱交換器34の冷媒出口側には、室外熱交換器34から流出した冷媒の流れを分岐する第1三方継手35が接続されている。第1三方継手35は、3つの流入出口を有し、この3つの流入出口のうち1つを冷媒流入口とし、2つを冷媒流出口としてものである。このような三方継手は、各種配管を接合して構成してもよいし、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けて構成してもよい。
【0044】
第1三方継手35の一方の冷媒流出口は、第2電気式膨張弁36を介して後述する室内蒸発器38の冷媒入口側に接続され、他方の冷媒流出口は、開閉弁37を介して第2三方継手39の冷媒入口側に接続されている。第2三方継手39の基本構成は、第1三方継手35と同様である。第2三方継手39では、第1三方継手35に対して3つの流入出口のうち2つを冷媒流入口とし、1つを冷媒流出口としている。
【0045】
第2電気式膨張弁36は、第1三方継手35の一方の冷媒流出口から流出した冷媒を減圧膨張させる可変絞り機構である。具体的には、第2電気式膨張弁36は、第1電気式膨張弁33と同様の基本構成を有して構成されており、後述する空調用制御装置100aから出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0046】
また、本実施形態の第2電気式膨張弁36は、その絞り開度を全閉として、第1三方継手35の一方の冷媒流出口から室内蒸発器38の冷媒入口側に至る冷媒配管における冷媒の流れを遮断することができる。これにより、第2電気式膨張弁36は、ヒートポンプサイクル30における冷媒流路を切替えることができる。
【0047】
開閉弁37は、第1三方継手35の他方の冷媒流出口から第2三方継手39の一方の冷媒流入口に至る冷媒配管を開閉するもので、後述する空調用制御装置100aから出力される制御信号によって、その作動が制御される。この開閉弁37は、開閉状態によって、ヒートポンプサイクル30の冷媒流路を切替えることができる。
【0048】
ここで、ヒートポンプサイクル30の暖房運転モード時には、第2電気式膨張弁36の絞り開度が全閉状態となるように制御されると共に、開閉弁37が開状態となるように制御される。一方、ヒートポンプサイクル30の冷房運転モード時には、第2電気式膨張弁36の絞り開度が可変制御されると共に、開閉弁37が閉状態となるように制御される。
【0049】
従って、本実施形態の第2電気式膨張弁36および開閉弁37は、冷房運転モードの冷媒流路と暖房運転モードの冷媒流路を切替える冷媒流路切替手段としての機能を備えている。
【0050】
第2電気式膨張弁36の冷媒出口側には、第2利用側熱交換器としての室内蒸発器38の冷媒入口側が接続されている。この室内蒸発器38は、室内空調ユニット50のケーシング51内における、室内凝縮器32の送風空気流れ上流側に配置され、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する冷房用熱交換器である。
【0051】
室内蒸発器38の冷媒出口側には、第2三方継手39の他方の冷媒流入口に接続されている。つまり、第2三方継手39の2つの冷媒流入口のうち、一方の冷媒流入口には、開閉弁37の冷媒出口側に接続され、他方の冷媒流入口には、室内蒸発器38の冷媒出口側に接続されている。そして、第2三方継手39の冷媒流出口には、圧縮機31の吸入ポート31d、つまり圧縮機構31bの吸入側が接続されている。
【0052】
次に、室内空調ユニット50について説明する。室内空調ユニット50は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング51内に送風機52、前述の室内凝縮器32、室内蒸発器38等を収容したものである。
【0053】
ケーシング51は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング51内の送風空気流れ最上流側には、車室内空気(内気)と外気とを切替導入する内外気切替装置(図示略)が配置されている。
【0054】
内外気切替装置には、ケーシング51内に内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口が形成されている。さらに、内外気切替装置の内部には、内気導入口および外気導入口の開口面積を連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドアが配置されている。
【0055】
内外気切替装置の空気流れ下流側には、内外気切替装置を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機52が配置されている。この送風機52は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調用制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
【0056】
送風機52の空気流れ下流側には、室内蒸発器38および室内凝縮器32が、送風空気の流れに対して、この順に配置されている。換言すると、室内蒸発器38は、室内凝縮器32に対して、送風空気の流れ方向上流側に配置されている。
【0057】
さらに、室内蒸発器38の空気流れ下流側であって、かつ、室内凝縮器32の空気流れ上流側および下流側には、室内蒸発器38にて冷却された冷風のうち、室内凝縮器32にて再加熱される風量の割合を調整するエアミックスドア53が配置されている。また、室内凝縮器32の空気流れ下流側には、室内凝縮器32を通過して加熱された温風と室内凝縮器32を迂回して加熱されていない冷風と混合させる混合空間54が設けられている。
【0058】
また、ケーシング51の空気流れ最下流部には、混合空間54にて混合された空調風を、冷却対象空間である車室内へ吹き出す吹出口が配置されている。具体的に、この吹出口としては、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口(いずれも図示略)が設けられている。
【0059】
従って、エアミックスドア53が室内凝縮器32を通過させる風量の割合を調整することによって、混合空間54にて混合された空調風の温度が調整され、各吹出口から吹き出される空調風の温度が調整される。つまり、エアミックスドア53は、車室内へ送風される空調風の温度を調整する温度調整手段を構成している。なお、エアミックスドア53は、空調用制御装置から出力される制御信号によって作動が制御される図示しないサーボモータによって駆動される。
【0060】
さらに、フェイス吹出口、フット吹出口、およびデフロスタ吹出口の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口の開口面積を調整するフェイスドア、フット吹出口の開口面積を調整するフットドア、デフロスタ吹出口の開口面積を調整するデフロスタドア(いずれも図示略)が配置されている。
【0061】
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、吹出口モードを切替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、空調用制御装置から出力される制御信号によって作動が制御される図示しないサーボモータによって駆動される。
【0062】
次に、本実施形態の車両用温度調整システム10について説明する。本実施形態の車両用温度調整システム10は、車両に搭載された各種機器のうち、バッテリ11およびヒートポンプサイクル30の室外熱交換器34の温度を調整可能に構成されている。
【0063】
車両用温度調整システム10は、バッテリ11の温度を調整するための温度調整流体としての冷却水が循環する冷却水循環回路12を備えている。本実施形態の車両用温度調整システムは、バッテリ11を暖機するバッテリ暖機モード時の冷却水の流路とヒートポンプサイクル30の室外熱交換器34に付着した霜を取り除く除霜運転モード時の冷却水の流路とを切替え可能に構成されている。
【0064】
冷却水循環回路12は、バッテリ11、および冷却水を加熱する加熱装置131が接続された第1循環回路(第1流体循環回路)13と、バッテリ11、加熱装置131、および冷却水の熱を放熱する放熱器141が接続された第2循環回路(第2流体循環回路)14といった2つの循環回路で構成されている。
【0065】
加熱装置131は、冷却水を加熱する加熱手段を構成するもので、ガソリン、軽油、灯油等の燃料を燃焼させ、当該燃料の燃焼により生ずる熱量にて冷却水を加熱する燃焼式ヒータや、通電により発熱する電気ヒータ等を採用することができる。なお、加熱装置131は、後述する温度調整用制御装置100bから出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0066】
放熱器141は、第2循環回路を流れる冷却水と送風ファン141aから送風される外気とを熱交換させて、冷却水の熱を放熱する熱交換器である。本実施形態の放熱器141は、放熱器141を通過して昇温した外気が、ヒートポンプサイクル30の室外熱交換器34に流れるように、エンジンルーム内における室外熱交換器34の空気流れ上流側に配置されている。つまり、放熱器141は、放熱する冷却水の熱を、外気を介して室外熱交換器34に対して放熱可能に構成されている。
【0067】
また、冷却水循環回路12には、第1循環回路13および第2循環回路14それぞれに冷却水を循環させる流体循環手段として機能する循環ポンプ15が設けられている。循環ポンプ15は、回転を正転・逆転可能な電動式のポンプで構成され、正転・逆転の切替えによって冷却水の循環方向を変更可能に構成されている。この循環ポンプ15は、後述する温度調整用制御装置100bから出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0068】
さらに、冷却水循環回路12には、第1循環回路13および第2循環回路14を切替える循環回路切替手段として機能する回路切替弁16が設けられている。回路切替弁16は、後述する温度調整用制御装置100bから出力される制御電圧によって、その作動が制御される電気式三方弁で構成されている。
【0069】
具体的には、回路切替弁16は、冷却水循環回路12を流れる冷却水の流路を、バッテリ暖機モード時に第1循環回路13に切替え、除霜運転モード時に第2循環回路13に切替える。
【0070】
次に、本実施形態の電気制御部について説明する。本実施形態では、制御手段として空調用制御装置(ECU)100aおよび温度調整用制御装置(ECU)100bを備えている。
【0071】
空調用制御装置100aおよび温度調整用制御装置100bそれぞれは、CPU、ROm、およびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。
【0072】
空調用制御装置100aは、ROM等の記憶手段に記憶された空調制御プログラムに基づいて、各種演算処理を行い、出力側に接続された各種空調制御機器(例えば、圧縮機31、送風機52等)の作動を制御する。
【0073】
空調用制御装置100aの入力側には、センサ群(図示略)として、車室内温度を検出する内気センサ、外気温を検出する外気センサ、室内蒸発器38から吹き出された送風空気の吹出空気温度(蒸発器温度)を検出する蒸発器温度センサ、室外熱交換器34を通過する冷媒の圧力を検出する圧力センサ等が接続されている。
【0074】
さらに、空調用制御装置100aの入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル(図示略)が接続され、この操作パネルに設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。この操作パネルに設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、ヒートポンプサイクル30の作動スイッチ、車室内温度を設定する温度設定スイッチ、冷房運転モードと暖房運転モードとを切替える選択スイッチ等が設けられている。
【0075】
一方、温度調整用制御装置100bには、ROM等の記憶手段に記憶された温度調整制御プログラムに基づいて、各種演算処理を行い、出力側に接続された各種温度調整機器(例えば、加熱装置131、循環ポンプ15、回路切替弁16等)の作動を制御する。温度調整用制御装置100bの入力側には、センサ群として、バッテリ11の温度を検出するバッテリ温度センサ17等が接続されている。
【0076】
本実施形態の温度調整用制御装置100bは、空調用制御装置100aに接続されており、これら各制御装置相互間にて信号を入出力できるようになっている。なお、以下では、温度調整用制御装置100bおよび空調用制御装置100aを単に制御装置100と総称する。
【0077】
次に、上記構成に係る本実施形態のヒートポンプサイクル30、および車両用温度調整システムの作動について説明する。
【0078】
まず、ヒートポンプサイクル30の冷房運転モードおよび暖房運転モードについて図2に基づいて説明する。図2は、本実施形態の冷房運転モード時(図2(a)参照)、および暖房運転モード時(図2(b)参照)の冷媒流路を説明する説明図である。
【0079】
まず、冷房運転モードについて説明すると、冷房運転モードは、イグニッションスイッチIG(図示略)が投入(オン)され、操作パネルの作動スイッチが投入(オン)された状態で、選択スイッチにて冷房運転モードが選択されると開始する。冷房運転モードが開始されると、制御装置100は、第1電気式膨張弁33を全開状態、開閉弁37を閉状態に制御し、圧縮機31を駆動する。これにより、ヒートポンプサイクル30の冷媒が図2(a)の矢印で示すように流れる。
【0080】
この際、圧縮機31の吐出ポート31eから吐出された高圧冷媒が室内凝縮器32に流入して放熱する。これにより、送風機52から送風されて室内蒸発器38にて冷却された冷風のうち室内凝縮器32を通過する冷風が加熱される。
【0081】
室内凝縮器32から流出した高圧冷媒は、第1電気式膨張弁33が全開状態となっているので、第1電気式膨張弁33にて減圧されることなく、室外熱交換器34に流入する。そして、室外熱交換器34に流入した冷媒は、外気と熱交換してさらに冷却される。
【0082】
室外熱交換器34から流出した高圧冷媒は、開閉弁37が閉状態となっているので、第2電気式膨張弁36に流入し、第2電気式膨張弁36にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第2電気式膨張弁36にて減圧膨張された低圧冷媒は、室内蒸発器38に流入して送風機52から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、送風機52から送風された送風空気が冷却される。そして、室内蒸発器38から流出した冷媒は、圧縮機31の吸入ポート31dから吸入されて再び圧縮される。
【0083】
このように、冷房運転モード時には、室内蒸発器38にて送風空気を冷却すると共に、エアミックスドア53の開度を調整することにより、室内蒸発器38にて冷却された冷風を室内凝縮器32で再加熱して、乗員の所望の温度となった空調風を車室に吹き出すことができる。
【0084】
次に、暖房運転モードについて説明すると、暖房運転モードは、イグニッションスイッチIG(図示略)が投入(オン)されて、操作パネルの作動スイッチが投入(オン)された状態で、選択スイッチにて暖房運転モードが選択されると開始する。暖房運転モードが開始されると、空調用制御装置100aは、開閉弁37を開状態、第2電気式膨張弁36を全閉状態に制御し、圧縮機31を駆動する。これにより、ヒートポンプサイクル30の冷媒が図2(b)の矢印で示すように流れる。
【0085】
この際、圧縮機31の吐出ポート31eから吐出された高圧冷媒が室内凝縮器32に流入して放熱する。これにより、送風機52から送風されて室内蒸発器38を通過した送風空気が加熱される。
【0086】
室内凝縮器32から流出した高圧冷媒は、第1電気式膨張弁33に流入し、第1電気式膨張弁33にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第1電気式膨張弁33にて減圧膨張された低圧冷媒は、室外熱交換器34に流入する。そして、室外熱交換器34に流入した冷媒は、外気から吸熱して蒸発する。
【0087】
室外熱交換器34から流出した冷媒は、第2電気式膨張弁36が全閉状態となっているので、開閉弁37を介して、圧縮機31の吸入ポート31dから吸入されて再び圧縮される。
【0088】
このように、暖房運転モード時には、室内凝縮器32にて圧縮機31から吐出された高圧冷媒が有する熱量を送風機52から送風された送風空気に放熱させて、加熱された送風空気を車室内に吹き出すことができる。
【0089】
ここで、ヒートポンプサイクル30の暖房運転モード時には、第2電気式膨張弁36の絞り開度が全閉状態となるように制御されると共に、開閉弁37が開状態となるように制御される。一方、ヒートポンプサイクル30の冷房運転モード時には、第2電気式膨張弁36の絞り開度が可変制御されると共に、開閉弁37が閉状態となるように制御される。
【0090】
従って、本実施形態の第2電気式膨張弁36および開閉弁37は、冷房運転モードの冷媒流路と暖房運転モードの冷媒流路を切替える冷媒流路切替手段としての機能を備えている。
【0091】
次に、車両用温度調整システムの作動について図3〜図6に基づいて説明する。図3は、本実施形態の制御装置100が実行する制御処理を示すフローチャートであり、図4および図5は、本実施形態の制御装置100が実行する制御処理の要部を示すフローチャートである。また、図6は、本実施形態のバッテリ暖機モード時(図6(a)参照)および除霜運転モード時(図6(b)参照)の冷却水の流れを説明する説明図である。
【0092】
図3に示す制御ルーチンは、車両のイグニッションスイッチIG(図示略)が投入(オン)されて、制御装置100にバッテリ11から電源供給されると開始する。なお、図3に示す制御ルーチンは、イグニッションスイッチIG(図示略)が投入(オン)された後、オフされるまでの間、所定の制御周期毎に実行されるように構成されている。
【0093】
まず、制御装置100に接続されたバッテリ温度センサ17や空調用制御装置100aから出力される信号を読み込む(S10)。
【0094】
そして、S10にて読み込んだバッテリ温度センサ17に基づいて、バッテリ11の暖機が必要あるか否かを判定する(S20)。具体的には、バッテリ温度センサ17にて検出したバッテリ温度が予め設定された第1基準温度(例えば、−5℃)以下であるか否かを判定する。
【0095】
この結果、バッテリ温度が第1基準温度以下と判定された場合(S20:YES)には、バッテリ11の暖機が必要であると判断できるのでS30に移行して、バッテリ暖機処理を行う。換言すれば、バッテリ温度が第1基準温度以下の場合には、バッテリ暖機モードに移行する。なお、S30におけるバッテリ暖機処理は、バッテリ11が第1基準温度以上に昇温するまで継続される。
【0096】
具体的には、S30の処理では、図4に示すように、回路切替弁16にて冷却水循環回路12における冷却水の循環回路を第1循環回路13に切替えると共に(S31)、加熱装置131をオンして冷却水を加熱する(S32)。そして、循環ポンプ15を駆動して第1循環回路13内に冷却水を循環させる(S33)。
【0097】
ここで、循環ポンプ15は、図6(a)の矢印で示すように、冷却水が第1循環回路13内を加熱装置131→バッテリ11の順に流れるように駆動される。これにより、加熱装置131にて加熱された冷却水がバッテリ11に流入することで、冷却水の熱がバッテリ11に放熱されて、バッテリ11が昇温する。つまり、加熱装置131にて加熱された冷却水を熱源として、バッテリ11を加熱することで、バッテリ11の暖機を行うことができる。
【0098】
一方、S20の判定処理の結果、バッテリ温度が第1基準温度より高いと判定された場合(S20:NO)には、S40に移行して、室外熱交換器34に着霜が生じているか否かを判定する。具体的には、外気センサにて検出された外気温が所定温度(例えば、0℃)以下、かつ、圧力センサにて検出された室外熱交換器34を通過する冷媒の圧力が予め設定された基準圧力以上低下しているか否かを判定する。つまり、外気温が所定温度以下、かつ、室外熱交換器34を通過する冷媒の圧力が急激に低下した場合に、室外熱交換器34に着霜が生じていると判定する。
【0099】
S40の判定処理の結果、室外熱交換器34に着霜が生じていると判定された場合(S40:YES)には、S50に移行して、室外熱交換器34に付着した霜を取り除く除霜処理を行う。換言すれば、室外熱交換器34に着霜が生じていると判定された場合には、除霜運転モードに移行する。なお、S50における除霜処理は、室外熱交換器34に付着した霜が除去されるまで継続される。
【0100】
具体的には、S50の処理では、図5に示すように、回路切替弁16にて冷却水循環回路12における冷却水の循環回路を第2循環回路14に切替えると共に(S51)、加熱装置131をオンして冷却水を加熱する(S52)。そして、循環ポンプ15を駆動して第2循環回路14内に冷却水を循環させる(S53)。
【0101】
ここで、循環ポンプ15は、図6(b)の矢印で示すように、冷却水が第2循環回路14内を放熱器141→バッテリ11→加熱装置131の順に流れるように駆動される。なお、除霜運転モード時には、送風ファン141aが駆動されて、放熱器141に外気が送風される。
【0102】
これにより、加熱装置131にて加熱された冷却水の熱が放熱器141にて送風ファン141aから送風された外気に放熱される。この際、放熱器141を通過して昇温した外気は、室外熱交換器34へと流れ、室外熱交換器34が間接的に加熱される。つまり、加熱装置131にて加熱された冷却水を熱源として、放熱器141にて昇温した外気によって、室外熱交換器34を加熱することができる。この結果、室外熱交換器34の除霜を行うことができる。なお、室外熱交換器34の除霜は、車両用温度調整システム10の放熱器141から放熱された熱を利用して行っているので、ヒートポンプサイクル30の作動を停止させる必要はない。
【0103】
S40の判定処理の結果、室外熱交換器34に着霜が生じていないと判定された場合(S40:NO)には、加熱装置131をオフして、冷却水の加熱を停止すると共に(S60)、循環ポンプ15をオフして、冷却水循環回路12内の冷却水の流れが停止させる。
【0104】
以上説明した本実施形態の車両用温度調整システム10では、バッテリ暖機モード時に、加熱装置131にて加熱された冷却水によって、バッテリ11を暖機することができると共に、除霜運転モード時に、車室内空間の暖房を停止することなく、加熱装置131にて加熱された冷却水の熱を放熱器141で放熱して、当該放熱器141における放熱によって、室外熱交換器34に付着した霜を取り除くことができる。つまり、車室内に搭載された機器のうち、温度調整が必要となるバッテリ11および車室内空間を暖房する機器それぞれに対して専用の加熱手段を設けることなく、バッテリ11の暖機およびヒートポンプサイクル30の室外熱交換器34の除霜を行うことができる。
【0105】
従って、本実施形態の車両用温度調整システム10では、電気自動車に搭載された各種機器の適切な温度調整を実現することができる。
【0106】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図7〜図11に基づいて説明する。図7は、本実施形態に係る車両用温度調整システム10の概略構成図である。
【0107】
本実施形態では、主に、車両用温度調整システム10にて、バッテリ11の暖機、室外熱交換器の除霜に加えて、バッテリ11の冷却、および車両に搭載された電気機器142の冷却を行う点が第1実施形態と相違している。なお、本実施形態では、第1実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0108】
なお、バッテリ11は、充電時や走行用モータへ電力を供給する放電時に発熱を生じて高温となることがあり、バッテリ11の温度が著しく上昇すると、性能低下や劣化を生じてしまうため、適宜冷却する必要がある。
【0109】
本実施形態の車両用温度調整システム10では、図7に示すように、冷却水循環回路12の第2循環回路14に、車両に搭載され温度調整が必要となる電気機器142が接続されている。具体的には、電気機器142は、回路切替弁16と放熱器141との間に接続されている。この電気機器142としては、車両の走行時に発熱し易い走行用モータや、走行用モータの駆動を制御するインバータ等を例示することができる。なお、電気機器142は、電気機器142の温度を検出する電気機器温度センサ142aが設けられており、当該電気機器温度センサ142aの検出信号は、制御装置100(温度調整用制御装置100b)に入力されるようになっている。
【0110】
また、冷却水循環回路12には、バッテリ11を迂回して、電気機器142へと冷却水を流入させる第1バイパス回路18が接続されている。この第1バイパス回路18は、冷却水循環回路12におけるバッテリ11および加熱装置131の間と、回路切替弁16および電気機器142の間とを接続する回路である。
【0111】
第1バイパス回路18と冷却水循環回路12におけるバッテリ11および加熱装置131の間との接続部には、第3三方継手18aが配置されている。また、第1バイパス回路18と冷却水循環回路12における回路切替弁16および電気機器142の間との接続部には、第4三方継手18bが配置されている。なお、第3三方継手18aおよび第4三方継手18bそれぞれの基本構成は、第1三方継手35と同様である。
【0112】
また、第1バイパス回路18には、第2循環回路14における第1バイパス回路18側への冷却水の流入量を調整する流量調整手段として流量調整弁18cが設けられている。この流量調整弁18cは、第1バイパス回路18における通路開度を調整可能に構成されており、制御装置100から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0113】
例えば、流量調整弁18cにて、第1バイパス回路18における通路開度を小さくすることで、第2循環回路14における第1バイパス回路18側に流れる冷却水の流量が減少する。一方、流量調整弁18cにて、第1バイパス回路18における通路開度を大きくすることで、第2循環回路14における第1バイパス回路18側に流れる冷却水の流量が増大する。
【0114】
なお、流量調整弁18cは、第1バイパス回路18を全閉可能に構成されている。従って、流量調整弁18cにて、第1バイパス回路18を全閉した場合には、第2循環回路14における第1バイパス回路18側に冷却水が流れない。
【0115】
次に、本実施形態の車両用温度調整システム10の作動について図8〜図11に基づいて説明する。図8は、本実施形態の制御装置100が実行する制御処理を示すフローチャートであり、図9および図10は、本実施形態の制御装置100が実行する制御処理の要部を示すフローチャートである。また、図11は、本実施形態のバッテリ冷却モード時(図11(a)参照)および電気機器冷却モード時(図11(b)参照)の冷却水の流れを説明する説明図である。
【0116】
本実施形態では、S40の判定処理の結果、室外熱交換器34に着霜が生じていないと判定された場合(S40:NO)には、加熱装置131をオフして、冷却水の加熱を停止する(S60)。
【0117】
次に、バッテリ11の冷却が必要であるか否かを判定する(S80)。具体的には、バッテリ温度センサ17にて検出したバッテリ温度が予め設定された第2基準温度(例えば、40℃)以上であるか否かを判定する。
【0118】
この結果、バッテリ温度が第2基準温度以上と判定された場合(S80:YES)には、バッテリ11の冷却が必要であると判断できるので、S90に移行して、バッテリ冷却処理を行う。換言すれば、バッテリ温度が第2基準温度以上の場合には、バッテリ冷却モードに移行する。なお、S90におけるバッテリ冷却処理は、バッテリ11が第2基準温度以下に低下するまで継続される。
【0119】
具体的には、S90の処理では、図9に示すように、回路切替弁16にて冷却水循環回路12における冷却水の循環回路を第2循環回路14に切替えると共に(S91)、流量調整弁18cにて第1バイパス回路18を閉鎖する(S32)。そして、循環ポンプ15を駆動して第2循環回路14内に冷却水を循環させる(S93)。
【0120】
ここで、循環ポンプ15は、図11(a)の矢印で示すように、冷却水が第2循環回路14内を加熱装置131→バッテリ11→電気機器142→放熱器141の順に流れるように駆動される。これにより、放熱器141にて冷却された冷却水がバッテリ11に流入することで、バッテリ11が冷却されて、バッテリ11の温度が低下する。その後、バッテリ11にて若干昇温した冷却水が、電気機器142に流入することで、電気機器142が冷却される。なお、通常、車両の走行時には、バッテリ11よりも電気機器142の方が高温となるので、電気機器142に流入させる冷却水がバッテリ11にて昇温したとしても、電気機器142の冷却を行うことができる。
【0121】
一方、S80の判定処理の結果、バッテリ温度が第2基準温度より低いと判定された場合(S80:NO)には、S100に移行して、電気機器142の冷却が必要であるか否かを判定する。具体的には、電気機器温度センサ142aで検出した電気機器142の温度が、予め設定された第3基準温度(例えば、100℃)以上であるか否かを判定する。なお、第3基準温度は、第2基準温度よりも高い温度に設定されている。
【0122】
この結果、電気機器142の温度が第3基準温度以上と判定された場合(S100:YES)には、電気機器142を充分に冷却する必要があると判断できるので、S110に移行して、電気機器冷却処理を行う。換言すれば、電気機器142の温度が第3基準温度以上の場合には、電気機冷却モードに移行する。なお、S110における電気機器冷却処理は、電気機器142が第3基準温度以下に低下するまで継続される。
【0123】
具体的には、S110の処理では、図10に示すように、回路切替弁16にて冷却水循環回路12における冷却水の循環回路を第2循環回路14に切替えると共に(S111)、第1バイパス回路18を開放して、第2循環回路14内の冷却水を、バッテリ11を迂回して電気機器142に流入させる(S112)。そして、循環ポンプ15を駆動して第2循環回路14内に冷却水を循環させる(S113)。
【0124】
ここで、循環ポンプ15は、図11(b)の矢印で示すように、バッテリ冷却処理時にバッテリ11側に流入させた冷却水の一部が、第2循環回路14におけるバイパス回路18側に流れるように駆動する。
【0125】
これにより、放熱器141にて外気にて冷却された冷却水の一部がバッテリ11を迂回して、電気機器142に流入することで、電気機器142の冷却が促進されて、バッテリ冷却処理時に比べて、電気機器142の温度が充分に低下する。つまり、電気機器冷却処理では、電気機器142を優先して冷却することができる。
【0126】
以上説明した本実施形態では、バッテリ冷却モード時には、放熱器141にて放熱(冷却)された冷却水がバッテリ11に優先的に流れるので、バッテリ11を充分に冷却することができる。また、電気機器冷却モード時には、放熱器141にて放熱(冷却)された冷却水の一部がバッテリ11を迂回して電気機器142に流れるので、電気機器142を充分に冷却することができる。従って、電気自動車に搭載された電気機器142の適切な温度調整を実現することができる。
【0127】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図12〜図15に基づいて説明する。図12は、本実施形態に係る車両用温度調整システム10の概略構成図である。
【0128】
本実施形態では、主に、ヒートポンプサイクル30の室外熱交換器34から流出した冷媒と冷却水循環回路12を循環する冷却水とを熱交換させる水−冷媒熱交換器143を備えている点が第2実施形態と相違している。なお、本実施形態では、第2実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0129】
本実施形態の車両用温度調整システム10では、図12に示すように、冷却水循環回路12の第2循環回路14に、水−冷媒熱交換器143が接続されている。具体的には、水−冷媒熱交換器143は、冷却水が流通する冷却水側流路143aおよび冷媒が流通する冷媒側流路143bを有し、冷却水側流路143aを流れる冷却水と冷媒側流路143bを流れる冷媒とを熱交換させて、冷却水の有する熱量によって冷媒を加熱する加熱用熱交換器である。なお、水−冷媒熱交換器143は、冷却水循環回路12の第2循環回路14を流れる冷却水の余剰熱(廃熱)を回収して冷媒を加熱する廃熱回収用熱交換器として捉えることもできる。
【0130】
水−冷媒熱交換器143の冷却水側流路143aは、第2循環回路14における電気機器142と放熱器141との間に接続されている。一方、水−冷媒熱交換器143の冷媒側流路143bは、その冷媒入口がヒートポンプサイクル30における室外熱交換器34の冷媒出口側に接続されると共に、その冷媒出口が第1三方継手35の冷媒流入口側に接続されている。
【0131】
水−冷媒熱交換器143の具体的構成としては、冷却水側流路143aを形成する外側管の内側に冷媒側流路143bを形成する内側管を配置する二重管方式の熱交換器構成を採用することができる。勿論、冷媒側流路143bを外側管とし、冷却水側流路143aを内側管としてもよい。さらに、冷媒側流路143bを構成する冷媒配管と、冷却水側流路143aを構成する冷媒配管と隣接配置して熱交換させる構成としてもよい。
【0132】
その他にも、水−冷媒熱交換器143の具体的構成として、冷媒側流路143bとして冷媒を流通させる蛇行状のチューブあるいは複数本のチューブを採用し、隣り合うチューブ間に冷却水側流路143aを形成し、さらに、冷媒と冷却水との間の熱交換を促進するコルゲートフィンやプレートフィンを設ける熱交換器構成を採用してもよい。
【0133】
なお、本実施形態の水−冷媒熱交換器143の冷却水側流路143aにおける冷却水の流れ方向および冷媒側流路143bにおける冷媒の流れ方向は、互いに対向する方向としている。このため、冷却水側流路14aを流通する冷却水と冷媒側流路14bを流通する冷媒との温度差を確保して熱交換効率を向上させることができる。
【0134】
また、水−冷媒熱交換器143の冷却水側流路143aには、電気機器142側の流入出口付近の冷却水温度を検出する冷却水温度センサ20が設けられている。冷却水温度センサ20は、制御装置100(温度調整用制御装置100b)に接続され、冷却水温度センサ20の検出信号が制御装置100に入力されるようになっている。
【0135】
さらに、水−冷媒熱交換器143の冷媒側流路143bには、冷媒側流路143bの冷媒入口側の冷媒温度を検出する冷媒温度センサ40が設けられている。冷媒温度センサ40は、制御装置100(空調用制御装置100a)に接続され、冷却水温度センサ20の検出信号が制御装置100に入力されるようになっている。
【0136】
次に、本実施形態の車両用温度調整システム10の作動について図13〜図15に基づいて説明する。図13は、本実施形態の制御装置100が実行する制御処理を示すフローチャートであり、図14は、本実施形態の温度調整用制御装置100bが実行する制御処理の要部を示すフローチャートである。また、図15は、本実施形態の冷媒加熱モード時における冷却水の流れを説明する説明図である。
【0137】
本実施形態では、S100の判定処理の結果、電気機器142の温度が第3基準温度よりも低いと判定された場合(S100:NO)には、ヒートポンプサイクル30の運転モードが暖房運転モード、かつ、水−冷媒熱交換器143の冷却水温度が冷媒温度以上であるか否かを判定する(S120)。
【0138】
ここで、暖房運転モードであるか否かの判定は、操作パネルの選択スイッチにて暖房運転モードが選択されているか否かによって判定することができる。また、水−冷媒熱交換器143の冷却水温度が冷媒温度以上であるか否かの判定は、冷却水温度センサ20の検出信号および冷媒温度センサ40の検出信号に基づいて判定することができる。
【0139】
S120の判定処理の結果、暖房運転モード、かつ、水−冷媒熱交換器143の冷却水温度が冷媒温度以上であると判定された場合(S120:YES)には、S130に移行して冷媒加熱処理を行う。換言すれば、暖房運転モード、かつ、水−冷媒熱交換器143の冷却水温度が冷媒温度以上であると判定された場合には、冷媒加熱モードに移行する。なお、S130における冷媒加熱処理は、ヒートポンプサイクル30の運転モードの冷房運転モードへの切替え、又は、水−冷媒熱交換器143の冷却水温度が冷媒温度より低下すると終了する。
【0140】
具体的には、S130の処理では、図14に示すように、回路切替弁16にて冷却水循環回路12における冷却水の循環回路を第2循環回路14に切替えると共に(S131)、第1バイパス回路18を閉鎖する(S132)。そして、循環ポンプ15を駆動して第2循環回路14内に冷却水を循環させる(S133)。
【0141】
ここで、循環ポンプ15は、図15の矢印で示すように、冷却水が第2循環回路14内を加熱装置131→バッテリ11→電気機器142→水−冷媒熱交換器143→放熱器141の順に流れるように駆動される。
【0142】
これにより、バッテリ11および電気機器142にて昇温した冷却水が、水−冷媒熱交換器143の冷却水側流路143aに流入することで、冷却水が有する熱量によって、冷媒側流路143bを流れる冷媒が加熱されて昇温する。なお、バッテリ11の温度が低い場合には、第1バイパス回路18を開放して、バッテリ11を迂回して電気機器142に流入する冷却水の流量を増加させるようにしてもよい。
【0143】
これにより、水−冷媒熱交換器143にて昇温された冷媒は、開閉弁37を介して圧縮機31の冷媒吸入側に流入する。圧縮機31には、水−冷媒熱交換器143にて昇温した冷媒が吸入され、圧縮機31から吐出される高圧冷媒の温度が上昇するので、室内凝縮器32での冷媒の放熱量を増大させることができ、暖房運転モード時の暖房能力を向上させることができる。
【0144】
一方、S120の判定処理の結果、冷房運転モード、又は、水−冷媒熱交換器143の冷却水温度が冷媒温度より低いと判定された場合(S120:NO)には、S70に移行して循環ポンプ15をオフする。
【0145】
以上説明した本実施形態では、室外熱交換器34から流出した冷媒よりも冷却水の温度が高い場合には、冷却水が有する熱量(廃熱)を利用してヒートポンプサイクル30における室外熱交換器34から流出した冷媒を加熱することができる。これにより、暖房運転モード時に、圧縮機31に吸入される冷媒の温度が上昇し、室内凝縮器32での冷媒の放熱量を増大させることができるので、ヒートポンプサイクル30の暖房運転モード時における暖房能力の向上を図ることが可能となる。
【0146】
さらに、本実施形態では、冷房運転モード時に、車両用温度調整システム10の冷媒加熱処理を行わない。このため、当該冷媒加熱処理によって、水−冷媒熱交換器143にて冷媒が加熱されないので、水−冷媒熱交換器143にて加熱された冷媒が室内蒸発器38に流入して、室内蒸発器38にて冷媒が送風空気から吸熱する吸熱量(冷凍能力)が低下してしまうことを回避することができる。
【0147】
なお、本実施形態では、ヒートポンプサイクル30における室外熱交換器34の冷媒流れ下流側に水−冷媒熱交換器143の冷媒側流路143bの入口側を接続する構成とし、冷却水が有する熱量(廃熱)を利用して室外熱交換器34から流出した冷媒を加熱するようにしているが、これに限定されない。
【0148】
例えば、ヒートポンプサイクル30における室外熱交換器34の冷媒流れ上流側、つまり、第1電気式膨張弁33と室外熱交換器34との間に水−冷媒熱交換器143を接続し、冷却水が有する熱量(廃熱)を利用して、室外熱交換器34よりも冷媒流れ上流側の冷媒(第1電気式膨張弁33から流出した冷媒)を加熱するようにしてもよい。
【0149】
これによっても、暖房運転モード時に、圧縮機31に吸入される冷媒の温度が上昇し、室内凝縮器32での冷媒の放熱量を増大させることができるので、ヒートポンプサイクル30の暖房運転モード時における暖房能力の向上を図ることが可能となる。
【0150】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図16、図17に基づいて説明する。図16は、本実施形態に係る車両用温度調整システム10の概略構成図である。
【0151】
本実施形態では、主に、ヒートポンプサイクル30の圧縮機31として低圧冷媒を吸入する吸入ポート31dと中間圧冷媒を吸入する中間圧ポート31fを有する、いわゆる二段昇圧式の圧縮機を採用している点が第3実施形態と相違している。なお、本実施形態では、第3実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0152】
本実施形態のヒートポンプサイクル30について説明すると、図16に示すように、本実施形態では、圧縮機31として、固定容量型の低段側圧縮機構31bおよび高段側圧縮機構31cがハウジング31aに収容され、低段側圧縮機構31bおよび高段側圧縮機構31cそれぞれを共通の電動モータにて駆動する二段圧縮式の電動圧縮機を採用している。なお、低段側圧縮機構31bおよび高段側圧縮機構31cとしては、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用することができる。
【0153】
圧縮機31のハウジング31aには、吸入ポート31d、吐出ポート31e、および中間圧冷媒を流入させる中間圧ポート31fが設けられている。これら各ポート31d〜31fが、ハウジング31a内部で各圧縮機構31b、31cに接続されている。
【0154】
具体的には、吸入ポート31dは、低段側圧縮機構31bの吸入口に接続され、中間圧ポート31fは、低段側圧縮機構31bの吐出口と高段側圧縮機構31cの吸入口に連通するように接続され、吐出ポート31eは、高段側圧縮機構31cの吐出口に接続されている。
【0155】
従って、低段側圧縮機構31bは、吸入ポート31dから吸入された低圧冷媒を吸入して圧縮し、さらに高段側圧縮機構31cは、低段側圧縮機構31bから吐出された冷媒と中間圧ポート31fから吸入された冷媒とを混合した中間圧冷媒を吸入して圧縮し、吐出ポート31eから吐出する。
【0156】
圧縮機31の吐出側に接続された室内凝縮器32の冷媒出口側には、室内凝縮器32から流出した高圧冷媒の減圧膨張させる第3減圧手段としての第3電気式膨張弁41が接続されている。第3電気式膨張弁41は、室内凝縮器32から流出した高圧冷媒を中間圧冷媒となるまで減圧膨張させる可変絞り機構である。
【0157】
第3電気式膨張弁41の冷媒出口側には、水−冷媒熱交換器143の冷媒側流路143bの入口側が接続されている。水−冷媒熱交換器143の冷媒側流路143bの冷媒出口側には、気液分離器42の冷媒入口側が接続されている。
【0158】
気液分離器42は、水−冷媒熱交換器143から流出した中間圧冷媒の気液を分離するもので、気液分離器42の気相冷媒出口は、圧縮機31の中間圧ポート31fに接続され、液相冷媒出口は、第1電気式膨張弁33の冷媒入口側に接続されている。
【0159】
なお、気液分離器42の気相冷媒出口から圧縮機31の中間圧ポート31fに至る冷媒配管には、気液分離器42の気相冷媒出口から圧縮機31の中間圧ポート31fへ中間圧冷媒が流れることを許容し、その逆の流れを禁止する逆止弁が配置されている。これにより、圧縮機31側から気液分離器42へと冷媒が逆流することを防止している。
【0160】
気液分離器42の液相冷媒出口には、第1電気式膨張弁33の冷媒入口側に接続されている。なお、ヒートポンプサイクル30における第1電気式膨張弁33よりも冷媒流れ下流側の構成は、第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0161】
次に、本実施形態のヒートポンプサイクル30の冷房運転モードおよび暖房運転モードについて図17に基づいて説明する。図17は、本実施形態の冷房運転モード時(図17(a)参照)、および暖房運転モード時(図17(b)参照)の冷媒流路を説明する説明図である。
【0162】
まず、冷房運転モードについて説明する。冷房運転モードが開始されると、第1電気式膨張弁33を全開状態、開閉弁37を閉状態に制御し、圧縮機31を駆動する。これにより、ヒートポンプサイクル30内の冷媒が、図17(a)の矢印で示すように流れる。
【0163】
この際、圧縮機31の吐出ポート31eから吐出された高圧冷媒が室内凝縮器32に流入して放熱する。これにより、送風機52から送風されて室内蒸発器38にて冷却された冷風のうち室内凝縮器32を通過する冷風が加熱される。
【0164】
室内凝縮器32から流出した高圧冷媒は、第3電気式膨張弁41に流入し、第3電気式膨張弁41にて中間圧冷媒となるまで減圧膨張された後、水−冷媒熱交換器143に流入する。なお、冷房運転モード時には、車両用温度調整システム10による冷媒加熱処理が行われないので、冷媒加熱処理によって、水−冷媒熱交換器143にて冷却水と冷媒との熱交換が行われない。
【0165】
水−冷媒熱交換器143から流出した中間圧冷媒は、気液分離器42にて気液分離される。気液分離器42にて分離された気相冷媒は、圧縮機31の中間圧ポート31fから圧縮機31の内部へと流入し、圧縮機31の内部で低段側圧縮機構31bから吐出された冷媒と合流して高段側圧縮機構31cへと吸入される。
【0166】
一方、気液分離器42にて分離された液相冷媒は、第1電気式膨張弁33が全開状態となっているので、第1電気式膨張弁33にて減圧されることなく、室外熱交換器34に流入する。そして、室外熱交換器34に流入した冷媒は、外気と熱交換してさらに冷却される。
【0167】
室外熱交換器34から流出した高圧冷媒は、開閉弁37が閉状態となっているので、第2電気式膨張弁36にて低圧冷媒となるまで減圧膨張された後、室内蒸発器38に流入して送風機52から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。そして、室内蒸発器38から流出した冷媒は、圧縮機31の吸入ポート31dから吸入されて再び圧縮される。
【0168】
このように、本実施形態では、冷房運転モード時に、室内蒸発器38にて送風空気を冷却すると共に、エアミックスドア53の開度を調整することにより、室内蒸発器38にて冷却された冷風を室内凝縮器32で再加熱して、乗員の所望の温度となった空調風を車室に吹き出すことができる。
【0169】
次に、暖房運転モードについて説明する。暖房運転モードが開始されると、開閉弁37を開状態、第2電気式膨張弁36を全閉状態に制御し、圧縮機31を駆動する。これにより、ヒートポンプサイクル30内の冷媒が、図17(b)の矢印で示すように流れる。
【0170】
この際、圧縮機31の吐出ポート31eから吐出された高圧冷媒が室内凝縮器32に流入して放熱する。これにより、送風機52から送風された送風空気が室内凝縮器32を通過する際に加熱される。
【0171】
室内凝縮器32から流出した高圧冷媒は、第3電気式膨張弁41にて中間圧冷媒となるまで減圧膨張されて水−冷媒熱交換器143に流入する。暖房運転モード時において、冷却水温度が冷媒温度よりも高温となる場合には、車両用温度調整システム10による冷媒加熱処理が行われるので、当該冷媒加熱処理によって、水−冷媒熱交換器143にて冷媒が加熱される。
【0172】
水−冷媒熱交換器143から流出した中間圧冷媒は、気液分離器42にて気液分離される。気液分離器42にて分離された気相冷媒は、圧縮機31の中間圧ポート31fから圧縮機31の内部へと流入し、圧縮機31の内部で低段側圧縮機構31bから吐出された冷媒と合流して高段側圧縮機構31cへと吸入される。
【0173】
一方、気液分離器42にて分離された液相冷媒は、第1電気式膨張弁33にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第1電気式膨張弁33にて減圧膨張された低圧冷媒は、室外熱交換器34に流入し、室外熱交換器34にて外気から吸熱して蒸発する。
【0174】
室外熱交換器34から流出した冷媒は、第2電気式膨張弁36が全閉状態となっているので、開閉弁37を介して、圧縮機31の吸入ポート31dから吸入されて再び圧縮される。
【0175】
このように、本実施形態では、暖房運転モード時に、室内凝縮器32にて圧縮機31から吐出された高圧冷媒が有する熱量を送風機52から送風された送風空気に放熱させて、加熱された送風空気を車室内に吹き出すことができる。
【0176】
さらに、本実施形態では、暖房運転モード時に、水−冷媒熱交換器143にて加熱された冷媒の気液を分離して、分離された液相冷媒を室外熱交換器34にて蒸発させることで外気から吸熱させ、分離された気相冷媒については、中間圧ポート31fから圧縮機31の高段側圧縮機構31cに吸入させている。
【0177】
従って、低外気温時の如く、冷媒が室外熱交換器34にて外気から充分に吸熱できない運転条件であっても、水−冷媒熱交換器143にて加熱された冷媒によって送風空気を充分に加熱することができる。
【0178】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図18〜図20に基づいて説明する。図18は、本実施形態に係る車両用温度調整システム10の概略構成図である。
【0179】
本実施形態では、主に、車両用温度調整システム10における冷却水循環回路12の第2循環回路14に、水−冷媒熱交換器143を迂回する第2バイパス回路21が設けられている点が第3実施形態と相違している。なお、本実施形態では、第3実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0180】
本実施形態の車両用温度調整システム10は、図18に示すように、第2循環回路14に水−冷媒熱交換器143を迂回する第2バイパス回路21が設けられている。この第2バイパス回路21は、第2循環回路14における電気機器142および水−冷媒熱交換器143の間と、水−冷媒熱交換器143および放熱器141の間とを接続する回路である。
【0181】
第2バイパス回路21と電気機器142および水−冷媒熱交換器143の間との接続部には、バイパス回路切替弁21aが配置されている。バイパス回路切替弁21aは、第2循環回路14における冷却水の流れを、水−冷媒熱交換器143側と、第2バイパス回路21側とに切替える第2バイパス回路切替手段として機能する。バイパス回路切替弁21aは、制御装置100(温度調整用制御装置100b)から出力される制御電圧によって、その作動が制御される電気式三方弁で構成されている。
【0182】
また、第2バイパス回路21と冷却水循環回路12における水−冷媒熱交換器143および放熱器141の間との接続部には、第5三方継手21bが配置されている。なお、第5三方継手21bの基本構成は、第1三方継手35と同様である。
【0183】
次に、本実施形態の車両用温度調整システム10の作動について図19、図20に基づいて説明する。図19、図20は、本実施形態の制御装置100が実行する制御処理の要部を示すフローチャートである。
【0184】
本実施形態では、図19に示すように、バッテリ冷却処理(S90)における、S92の処理で第1バイパス回路18を閉鎖した後、ヒートポンプサイクル30の運転モードが暖房運転モード、かつ、水−冷媒熱交換器143の冷却水温度が冷媒温度以上であるか否かを判定する(S94)。
【0185】
この結果、暖房運転モード、かつ、水−冷媒熱交換器143の冷却水温度が冷媒温度以上であると判定された場合(S94:YES)には、S95に移行して、バイパス回路切替弁21aにて、第2バイパス回路21側を閉鎖して第2循環回路14における冷却水の流れを、水−冷媒熱交換器143側に切替える。
【0186】
これにより、バッテリ11および電気機器142にて昇温された冷却水が水−冷媒熱交換器143側に流入するので、冷却水が有する熱量によって冷媒を充分に加熱することができる。
【0187】
一方、冷房運転モード、又は、水−冷媒熱交換器143の冷却水温度が冷媒温度よりも低いと判定された場合(S94:NO)には、S96に移行して、バイパス回路切替弁21aにて、第2バイパス回路21側を開放して第2循環回路14における冷却水の流れを、第2バイパス回路21側に切替える。この際、バイパス回路切替弁21aにて第2循環回路14における水−冷媒熱交換器143側は閉鎖され、冷却水は水−冷媒熱交換器143に流入しない。
【0188】
これにより、バッテリ11および電気機器142にて昇温された冷却水は、第2バイパス回路21側に流入するので、水−冷媒熱交換器143では、冷却水と冷媒とが熱交換しない。従って、冷房運転モード時には、バッテリ冷却処理によって、水−冷媒熱交換器143にて冷媒が加熱されないので、水−冷媒熱交換器143にて加熱された冷媒が室内蒸発器38に流入して、室内蒸発器38にて冷媒が送風空気から吸熱する吸熱量(冷凍能力)が低下してしまうことを回避することができる。
【0189】
また、図20に示すように、電気機器冷却処理(S110)における、S112の処理で第1バイパス回路18を閉鎖した後、ヒートポンプサイクル30の運転モードが暖房運転モード、かつ、水−冷媒熱交換器143の冷却水温度が冷媒温度以上であるか否かを判定する(S114)。
【0190】
この結果、暖房運転モード、かつ、水−冷媒熱交換器143の冷却水温度が冷媒温度以上であると判定された場合(S114:YES)には、S115に移行して、バイパス回路切替弁21aにて、第2バイパス回路21側を閉鎖して第2循環回路14における冷却水の流れを、水−冷媒熱交換器143側に切替える。
【0191】
これにより、バッテリ11および電気機器142にて昇温された冷却水が水−冷媒熱交換器143側に流入するので、冷却水が有する熱量によって冷媒を充分に加熱することができる。
【0192】
一方、暖房運転モード、又は、水−冷媒熱交換器143の冷却水温度が冷媒温度よりも低いと判定された場合(S114:NO)には、S116に移行して、バイパス回路切替弁21aにて、第2バイパス回路21側を開放して第2循環回路14における冷却水の流れを、第2バイパス回路21側に切替える。この際、バイパス回路切替弁21aにて第2循環回路14における水−冷媒熱交換器143側は閉鎖され、冷却水は水−冷媒熱交換器143に流入しない。
【0193】
これにより、バッテリ11および電気機器142にて昇温された冷却水は、第2バイパス回路21側に流入するので、水−冷媒熱交換器143では、冷却水と冷媒とが熱交換しない。従って、冷房運転モード時には、電気機器冷却処理によって、水−冷媒熱交換器143にて冷媒が加熱されないので、水−冷媒熱交換器143にて加熱された冷媒が室内蒸発器38に流入して、室内蒸発器38にて冷媒が送風空気から吸熱する吸熱量(冷凍能力)が低下してしまうことを回避することができる。
【0194】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。例えば、以下のように種々変形可能である。
【0195】
(1)上述の各実施形態では、電気式三方弁にて構成された回路切替弁16によって冷却水循環回路12における冷却水の流れを第1循環回路13および第2循環回路14に切替える循環回路切替手段を構成した例を説明したが、循環回路切替手段の構成はこれに限定されない。例えば、回路切替弁16を廃止して、第1循環回路13および第2循環回路14それぞれに開閉弁を配置し、各開閉弁を循環回路切替手段として採用してもよい。
【0196】
また、電気式三方弁にてバイパス回路切替弁21aによって、冷却水循環回路12の第2循環回路14を流れる冷却水の流路を水−冷媒熱交換器143側と第2バイパス回路21側とに切替える第2バイパス回路切替手段を構成した例を説明したが、第2バイパス回路切替手段の構成はこれに限定されない。例えば、バイパス回路切替弁21aを廃止して、第2循環回路14における水−冷媒熱交換器143側および第2バイパス回路21側それぞれに開閉弁を配置し、各開閉弁を循環回路切替手段として採用してもよい。
【0197】
(2)上述の各実施形態では、循環ポンプ15として、回転を正転・逆転可能な電動式のポンプで構成した例を説明したが、例えば、循環ポンプ15として逆回転ができない電動式のポンプで構成すると共に、冷却水循環回路12に当該循環ポンプ15の冷却水の流出口側および流入口側を切替える回路切替機構を設け、当該回路切替機構によって、冷却水循環回路12における冷却水の流れを逆転可能に構成してもよい。
【0198】
(3)上述の各実施形態では、制御手段を、空調用制御装置100aおよび温度調整用制御装置100bといった2つの制御装置にて構成しているが、これに限らず、車室内の空調制御および車両の温度調整制御を実行する1つの制御装置にて構成してもよい。
【0199】
(4)上述の各実施形態では、制御装置100にて電気機器142を冷却する電気機器冷却処理を実行しているが、制御装置100にて電気機器142を暖機する電気機器暖機処理を実行してもよい。この電気機器暖機処理では、加熱装置131にて冷却水を加熱し、加熱された冷却水を第2循環回路14における電気機器142に流入させることで、冷却水が有する熱量によって電気機器142の暖機を行うことができる。また、電気機器暖機処理では、送風ファン141aの回転数を低下させて、放熱器141での放熱量を低減するようにしてもよい。
【0200】
(5)上述の各実施形態では、冷媒加熱処理において、水−冷媒熱交換器143にて冷却水が有する熱量によって室外熱交換器34の下流側の冷媒を加熱するようにしているが、冷却水が有する熱量が不足している場合には、加熱装置131にて加熱した冷却水を水−冷媒熱交換器143に流入させるようにしてもよい。
【0201】
(6)上述の各実施形態では、上述の各実施形態では、第2電気式膨張弁36および開閉弁37によって冷媒流路切替手段を構成した例を説明したが、冷媒流路切替手段の構成はこれに限定されない。
【0202】
例えば、開閉弁37を廃止して、暖房運転モード時に室外熱交換器34の出口側と圧縮機31の冷媒吸入側とを接続する冷媒流路に切替え、冷房運転モード時に室外熱交換器34の出口側と第2電気式膨張弁36の冷媒入口側とを接続する冷媒流路に切替える電気式三方弁を冷媒流路切替手段として採用してもよい。
【0203】
また、第2減圧手段として、全閉機能を有する第2電気式膨張弁36を採用することで、第2電気式膨張弁36を冷媒流路切替手段としての機能を備える例を説明したが、全閉機能を有さない第2電気式膨張弁36を採用し、当該第2電気式膨張弁36の冷媒流れ上流側又は下流側に開閉弁を配置する構成としてもよい。
【0204】
(7)上述の各実施形態では、上述の各実施形態では、電気自動車のうちハイブリッド車両に適用した例を説明したが、これに限らず、車両走行用駆動源としての内燃機関を備えず、走行用モータから駆動力を得る電気自動車(燃料電池車両等)に適用してもよい。
【0205】
(8)上述の各実施形態では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用した例を説明したが、冷媒の種類はこれに限定されない。二酸化炭素等の自然冷媒や炭化水素系冷媒等を採用してもよい。さらに、ヒートポンプサイクル30が圧縮機31から吐出された冷媒が冷媒の臨界圧力以上となる超臨界冷凍サイクルを構成していてもよい。
【符号の説明】
【0206】
10 車両用温度調整システム
11 バッテリ
13 第1循環回路(第1流体循環回路)
131 加熱装置(加熱手段)
14 第2循環回路(第2流体循環回路)
141 放熱器
142 電気機器
143 水−冷媒熱交換器(加熱用熱交換器)
15 循環ポンプ(流体循環手段)
16 回路切替弁(循環回路切替手段)
18 第1バイパス回路
18c 流量調整弁(流量調整手段)
21 第2バイパス回路
21a バイパス回路切替弁(第2バイパス回路切替手段)
30 ヒートポンプサイクル
34 室外熱交換器
100 制御装置(制御手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内を暖房する暖房運転時に外気から吸熱して冷媒を蒸発させる蒸発器として機能すると共に前記車室内を冷房する冷房運転時に外気に冷媒の熱を放熱する放熱器として機能する室外熱交換器(34)を含んで構成されるヒートポンプサイクル(30)と、車両走行用駆動源としての走行用モータに電力を供給するバッテリ(11)と、を備える電気自動車に適用され、少なくとも前記バッテリ(11)および前記室外熱交換器(34)の温度を調整する車両用温度調整システムであって、
前記バッテリ(11)、および前記バッテリ(11)の温度を調整するための温度調整流体を加熱する加熱手段(131)に接続され、前記温度調整流体が循環する第1流体循環回路(13)と、
前記バッテリ(11)、前記加熱手段(131)、および前記温度調整流体の熱を前記室外熱交換器(34)に放熱可能な放熱器(141)に接続され、前記温度調整流体が循環する第2流体循環回路(14)と、
前記第1流体循環回路(13)および前記第2流体循環回路(14)に前記温度調整流体を循環させる流体循環手段(15)と、
前記第1流体循環回路(13)と前記第2流体循環回路(14)とを切替える循環回路切替手段(16)と、
少なくとも前記加熱手段(131)、前記循環回路切替手段(16)、および前記流体循環手段(15)の作動を制御する制御手段(100)と、を備え、
前記制御手段(100)は、
前記バッテリ(11)を暖機するバッテリ暖機モード時には、前記加熱手段(131)にて前記温度調整流体を加熱し、前記循環回路切替手段(16)にて前記第1流体循環回路(13)に切替えると共に、前記流体循環手段(15)にて前記加熱手段(131)で加熱された前記温度調整流体を前記バッテリ(11)に流入させ、
前記室外熱交換器(34)に付着した霜を取り除く除霜運転モード時には、前記加熱手段にて前記温度調整流体を加熱し、前記循環回路切替手段(16)にて前記第2流体循環回路(14)に切替えると共に、前記流体循環手段(15)にて前記加熱手段で加熱された前記温度調整流体を前記放熱器(141)に流入させて、前記温度調整流体の熱を前記室外熱交換器(34)に放熱することを特徴とする車両用温度調整システム。
【請求項2】
前記制御手段(100)は、前記バッテリ(11)を冷却するバッテリ冷却モード時には、前記循環回路切替手段(16)にて前記第2流体循環回路(14)に切替えると共に、前記流体循環手段(15)にて前記放熱器(141)で放熱された前記温度調整流体を前記バッテリ(11)に流入させることを特徴とする請求項1に記載の車両用温度調整システム。
【請求項3】
前記第2流体循環回路(14)には、車両に搭載されて温度調整が必要となる電気機器(142)、および前記バッテリ(11)を迂回して、前記電気機器(142)に前記温度調整流体を流入させる第1バイパス回路(18)、前記第2流体循環回路(14)における前記第1バイパス回路(18)側に流れる前記温度調整流体の流量を調整する流量調整手段(18c)が接続されており、
前記制御手段(100)は、
前記バッテリ冷却モード時には、前記循環回路切替手段(16)にて前記第2流体循環回路(14)に切替え、前記流量調整手段(18c)にて前記第2流体循環回路(14)における前記第1バイパス回路(18)側に流れる前記温度調整流体の流量を減少させると共に、前記流体循環手段(15)にて前記放熱器(141)で放熱された前記温度調整流体を前記バッテリ(11)に流入させ、
前記電気機器(142)を冷却する電気機器冷却モード時には、前記循環回路切替手段(16)にて前記第2流体循環回路(14)に切替え、前記流量調整手段(18c)にて前記第2流体循環回路(14)における前記第1バイパス回路(18)側に流れる前記温度調整流体の流量を増大させると共に、前記流体循環手段(15)にて前記放熱器(131)で放熱された前記温度調整流体を前記電気機器(142)に流入させることを特徴とする請求項2に記載の車両用温度調整システム。
【請求項4】
前記第2流体循環回路(14)には、前記ヒートポンプサイクル(30)における前記室外熱交換器(34)よりも冷媒流れ上流側又は下流側の冷媒と前記温度調整流体とを熱交換させて前記冷媒を加熱する加熱用熱交換器(143)が接続されており、
前記制御手段(100)は、前記暖房運転時において、前記加熱用熱交換器(143)に流入する前記温度調整流体の温度が、前記加熱用熱交換器(143)に流入する冷媒の温度に比べて高い場合には、前記循環回路切替手段(16)にて前記第2流体循環回路(14)に切替え、前記流体循環手段(15)にて前記温度調整流体を前記加熱用熱交換器(143)に流入させることを特徴とする請求項3に記載の車両用温度調整システム。
【請求項5】
前記第2流体循環回路(14)には、前記加熱用熱交換器(143)をバイパスする第2バイパス回路(21)、および前記第2流体循環回路(14)における前記温度調整流体の流れを前記加熱用熱交換器(143)側と前記第2バイパス回路(21)側とに切替える第2バイパス回路切替手段(21a)が接続されており、
前記制御手段(100)は、
前記暖房運転時において、前記加熱用熱交換器(143)に流入する前記温度調整流体の温度が、前記加熱用熱交換器(143)に流入する冷媒の温度に比べて高い場合には、前記第2バイパス回路切替手段(21a)にて前記第2流体循環回路(14)における前記温度調整流体の流れを前記加熱用熱交換器(143)側に切替え、
前記暖房運転時において、前記加熱用熱交換器(143)に流入する前記温度調整流体の温度が、前記加熱用熱交換器(143)に流入する冷媒の温度に比べて低い場合には、前記第2バイパス回路切替手段(21a)にて前記第2流体循環回路(14)における前記温度調整流体の流れを前記第2バイパス回路(21)側に切替えることを特徴とする請求項4に記載の車両用温度調整システム。
【請求項6】
前記制御手段(100)は、前記冷房運転時には、前記第2バイパス回路切替手段(21a)にて前記第2流体循環回路(14)における前記温度調整流体の流れを前記第2バイパス回路(21)側に切替えることを特徴とする請求項5に記載の車両用温度調整システム。
【請求項1】
車室内を暖房する暖房運転時に外気から吸熱して冷媒を蒸発させる蒸発器として機能すると共に前記車室内を冷房する冷房運転時に外気に冷媒の熱を放熱する放熱器として機能する室外熱交換器(34)を含んで構成されるヒートポンプサイクル(30)と、車両走行用駆動源としての走行用モータに電力を供給するバッテリ(11)と、を備える電気自動車に適用され、少なくとも前記バッテリ(11)および前記室外熱交換器(34)の温度を調整する車両用温度調整システムであって、
前記バッテリ(11)、および前記バッテリ(11)の温度を調整するための温度調整流体を加熱する加熱手段(131)に接続され、前記温度調整流体が循環する第1流体循環回路(13)と、
前記バッテリ(11)、前記加熱手段(131)、および前記温度調整流体の熱を前記室外熱交換器(34)に放熱可能な放熱器(141)に接続され、前記温度調整流体が循環する第2流体循環回路(14)と、
前記第1流体循環回路(13)および前記第2流体循環回路(14)に前記温度調整流体を循環させる流体循環手段(15)と、
前記第1流体循環回路(13)と前記第2流体循環回路(14)とを切替える循環回路切替手段(16)と、
少なくとも前記加熱手段(131)、前記循環回路切替手段(16)、および前記流体循環手段(15)の作動を制御する制御手段(100)と、を備え、
前記制御手段(100)は、
前記バッテリ(11)を暖機するバッテリ暖機モード時には、前記加熱手段(131)にて前記温度調整流体を加熱し、前記循環回路切替手段(16)にて前記第1流体循環回路(13)に切替えると共に、前記流体循環手段(15)にて前記加熱手段(131)で加熱された前記温度調整流体を前記バッテリ(11)に流入させ、
前記室外熱交換器(34)に付着した霜を取り除く除霜運転モード時には、前記加熱手段にて前記温度調整流体を加熱し、前記循環回路切替手段(16)にて前記第2流体循環回路(14)に切替えると共に、前記流体循環手段(15)にて前記加熱手段で加熱された前記温度調整流体を前記放熱器(141)に流入させて、前記温度調整流体の熱を前記室外熱交換器(34)に放熱することを特徴とする車両用温度調整システム。
【請求項2】
前記制御手段(100)は、前記バッテリ(11)を冷却するバッテリ冷却モード時には、前記循環回路切替手段(16)にて前記第2流体循環回路(14)に切替えると共に、前記流体循環手段(15)にて前記放熱器(141)で放熱された前記温度調整流体を前記バッテリ(11)に流入させることを特徴とする請求項1に記載の車両用温度調整システム。
【請求項3】
前記第2流体循環回路(14)には、車両に搭載されて温度調整が必要となる電気機器(142)、および前記バッテリ(11)を迂回して、前記電気機器(142)に前記温度調整流体を流入させる第1バイパス回路(18)、前記第2流体循環回路(14)における前記第1バイパス回路(18)側に流れる前記温度調整流体の流量を調整する流量調整手段(18c)が接続されており、
前記制御手段(100)は、
前記バッテリ冷却モード時には、前記循環回路切替手段(16)にて前記第2流体循環回路(14)に切替え、前記流量調整手段(18c)にて前記第2流体循環回路(14)における前記第1バイパス回路(18)側に流れる前記温度調整流体の流量を減少させると共に、前記流体循環手段(15)にて前記放熱器(141)で放熱された前記温度調整流体を前記バッテリ(11)に流入させ、
前記電気機器(142)を冷却する電気機器冷却モード時には、前記循環回路切替手段(16)にて前記第2流体循環回路(14)に切替え、前記流量調整手段(18c)にて前記第2流体循環回路(14)における前記第1バイパス回路(18)側に流れる前記温度調整流体の流量を増大させると共に、前記流体循環手段(15)にて前記放熱器(131)で放熱された前記温度調整流体を前記電気機器(142)に流入させることを特徴とする請求項2に記載の車両用温度調整システム。
【請求項4】
前記第2流体循環回路(14)には、前記ヒートポンプサイクル(30)における前記室外熱交換器(34)よりも冷媒流れ上流側又は下流側の冷媒と前記温度調整流体とを熱交換させて前記冷媒を加熱する加熱用熱交換器(143)が接続されており、
前記制御手段(100)は、前記暖房運転時において、前記加熱用熱交換器(143)に流入する前記温度調整流体の温度が、前記加熱用熱交換器(143)に流入する冷媒の温度に比べて高い場合には、前記循環回路切替手段(16)にて前記第2流体循環回路(14)に切替え、前記流体循環手段(15)にて前記温度調整流体を前記加熱用熱交換器(143)に流入させることを特徴とする請求項3に記載の車両用温度調整システム。
【請求項5】
前記第2流体循環回路(14)には、前記加熱用熱交換器(143)をバイパスする第2バイパス回路(21)、および前記第2流体循環回路(14)における前記温度調整流体の流れを前記加熱用熱交換器(143)側と前記第2バイパス回路(21)側とに切替える第2バイパス回路切替手段(21a)が接続されており、
前記制御手段(100)は、
前記暖房運転時において、前記加熱用熱交換器(143)に流入する前記温度調整流体の温度が、前記加熱用熱交換器(143)に流入する冷媒の温度に比べて高い場合には、前記第2バイパス回路切替手段(21a)にて前記第2流体循環回路(14)における前記温度調整流体の流れを前記加熱用熱交換器(143)側に切替え、
前記暖房運転時において、前記加熱用熱交換器(143)に流入する前記温度調整流体の温度が、前記加熱用熱交換器(143)に流入する冷媒の温度に比べて低い場合には、前記第2バイパス回路切替手段(21a)にて前記第2流体循環回路(14)における前記温度調整流体の流れを前記第2バイパス回路(21)側に切替えることを特徴とする請求項4に記載の車両用温度調整システム。
【請求項6】
前記制御手段(100)は、前記冷房運転時には、前記第2バイパス回路切替手段(21a)にて前記第2流体循環回路(14)における前記温度調整流体の流れを前記第2バイパス回路(21)側に切替えることを特徴とする請求項5に記載の車両用温度調整システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−17056(P2012−17056A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156696(P2010−156696)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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