説明

車両用物体検知装置および車両用走行制御装置

【課題】 霧、雪、雨等の悪環境下でも先行車等の目標物を的確に検知できるようにする。
【解決手段】 統合手段M6は、物体検知手段M3が検知した物体のうち、送信から受信までの時間が悪環境判定時間以上の受信波により検知された物体を各物体間の距離に基づいて目標物として統合し、不検知度判定手段M7は統合手段M6により統合された目標物の不検知度を判定し、システムフェイル判定手段M5は悪環境判定手段M4により霧、雪、雨等の悪環境と判定された場合でも、不検知度判定手段M7で判定した目標物の不検知度が判定閾値以下の場合には物体検知手段M3の出力を継続するので、悪環境下でも物体検知手段M3の出力を一律に中止することなく、ACCシステムM9の作動を継続してその機能を最大限に活かすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波を送受信することで検知エリアに存在する複数の物体までの距離をそれぞれ検知可能な物体検知手段と、霧、雪、雨等により物体検知手段の検知性能が低下する悪環境であることを判定する悪環境判定手段と、悪環境判定手段の判定結果に基づいて物体検知手段の出力を中止するシステムフェイル判定手段とを備える車両用物体検知装置と、その車両用物体検知装置を用いた車両用走行制御装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
一つの送信波に対して複数の反射波を受信可能であり、各反射波に対応する時間差(送信波の送信から反射波の受信までの時間差)に基づいて複数の物体の距離を検知する、いわゆるマルチエコー式のレーザーレーダー装置において、霧、雪、雨等の天候において空気中に浮遊する粒子により送信波が反射されることにより発生する反射波に対応する前記時間差の閾値を予め記憶しておき、実際に計測された時間差が前記閾値未満の場合には、つまり物体までの距離が所定値未満の場合には、検知された物体が霧、雪、雨等の粒子であると判定し、実際に計測された時間差が前記閾値以上の場合には、つまり物体までの距離が所定値以上の場合には、検知された物体が霧、雪、雨等の粒子以外の先行車等の障害物であると判定するものが、下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−122437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、かかるマルチエコー式のレーザーレーダー装置において、霧、雪、雨等の粒子と先行車等の障害物とを検知した場合であっても、自車に近い側に存在する霧、雪、雨等の粒子によって送信波が減衰するため、自車から遠い側に存在する先行車等の障害物の検知精度の信頼性が低いものとなり、その信頼性の低い検知データに基づいて衝突被害軽減制御や車間距離制御を実行することは好ましくない。
【0005】
またマルチエコー式のレーザーレーダー装置では、一つの送信波に対して複数の反射波を検知できるので悪環境下での検知ロバスト性は向上するものの、その反射波が霧、雪、雨等の粒子からの反射波であるのか、先行車等の障害物からの反射波であるのかを確実に識別することは困難であった。
【0006】
従って、上記特許文献1に記載されているように、最短の時間差で検知された物体が霧、雪、雨等の粒子であり、次に長い時間差で検知された物体が先行車等の障害物であると判定するだけでは、先行車等の障害物の検知データの信頼性を充分に確保できない可能性がある。
【0007】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、霧、雪、雨等の悪環境下でも先行車等の目標物を的確に検知できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、車両に搭載されてパルス状の電磁波を車体中心軸と直交する方向に向きを変えて送信することにより予め設定された検知エリアを走査する送信手段と、送信された電磁波が物体に反射された反射波を受信する受信手段と、1回の電磁波の送信に対して判定閾値以上となる受信レベルを有する受信信号を複数抽出可能であるとともに電磁波の送信から受信までの時間に基づいて前記検知エリアに存在する複数の物体までの距離をそれぞれ検知可能な物体検知手段と、送信された電磁波が霧、雪、雨等の粒子に反射されて受信されるまでの時間に基づいて予め悪環境判定時間を設定するとともに該悪環境判定時間未満となる距離からの反射波が所定数以上検知された場合に前記物体検知手段の検知性能が低下する悪環境であると判定する悪環境判定手段と、前記悪環境判定手段の判定結果に基づいて前記物体検知手段の出力を中止するシステムフェイル判定手段とを備える車両用物体検知装置において、電磁波の送信から受信までの時間が前記悪環境判定時間以上の受信波により検知された物体を、各物体間の距離に基づいて目標物として統合する統合手段と、前記統合手段により統合された目標物の不検知度を判定する不検知度判定手段とを備え、前記システムフェイル判定手段は、前記悪環境判定手段により悪環境と判定された場合でも、前記不検知度判定手段で判定した目標物の不検知度が判定閾値以下の場合には前記物体検知手段の出力を継続することを特徴とする車両用物体検知装置が提案される。
【0009】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記不検知度判定手段は、目標物の移動速度が所定範囲内の場合に不検知度が判定閾値以下であると判定することを特徴とする車両用物体検知装置が提案される。
【0010】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記不検知度判定手段は、目標物の大きさが所定値以上の場合に不検知度が判定閾値以下であると判定することを特徴とする車両用物体検知装置が提案される。
【0011】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記物体検知手段は所定時間毎に物体を検知し、前記不検知度判定手段は、目標物が所定回数以上連続して検知された場合に不検知度が判定閾値以下であると判定することを特徴とする車両用物体検知装置が提案される。
【0012】
また請求項5に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記物体検知手段は所定時間毎に物体を検知し、前記不検知度判定手段は、目標物が不検知になった場合に該目標物の検知データを補完する外挿処理が行われない場合に不検知度が判定閾値以下であると判定することを特徴とする車両用物体検知装置が提案される。
【0013】
また請求項6に記載された発明によれば、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の車両用物体検知装置を備えた車両用走行制御装置であって、前記悪環境判定手段が悪環境であると判定した場合には衝突被害軽減制御および目標物との車間距離制御を中止するが、悪環境と判定されていても前記不検知度判定手段が不検知度が判定閾値以下であると判定した場合には目標物との車間距離制御を継続することを特徴とする車両用走行制御装置が提案される。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の構成によれば、送信手段が送信した電磁波が物体に反射された反射波を受信手段が受信すると、物体検知手段が1回の電磁波の送信に対して判定閾値以上となる受信レベルを有する受信信号を複数抽出し、その電磁波の送信から受信までの時間に基づいて検知エリアに存在する複数の物体までの距離をそれぞれ検知する。悪環境判定手段は送信された電磁波が霧、雪、雨等の粒子に反射されて受信されるまでの時間に基づいて予め悪環境判定時間を設定するとともに該悪環境判定時間未満となる距離からの反射波が所定数以上検知された場合に前記物体検知手段の検知性能が低下する悪環境であると判定し、システムフェイル判定手段は悪環境判定手段の判定結果に基づいて物体検知手段の出力を中止する。
【0015】
このとき統合手段は送信から受信までの時間が悪環境判定時間以上の受信波により検知された物体を各物体間の距離に基づいて目標物として統合し、不検知度判定手段は統合手段により統合された目標物の不検知度を判定し、システムフェイル判定手段は悪環境判定手段により悪環境と判定された場合でも、不検知度判定手段で判定した目標物の不検知度が判定閾値以下の場合には物体検知手段の出力を継続するので、悪環境下でも物体検知手段の出力を一律に中止することなく、目標物をある程度検知可能な場合には物体検知手段の出力を継続することで、その機能を最大限に活かすことができる。
【0016】
また請求項2の構成によれば、目標物の移動速度が所定範囲内の場合に、不検知度判定手段は不検知度が判定閾値以下であると判定するので、不検知度の判定を精度良く行うことができる。
【0017】
また請求項3の構成によれば、目標物の大きさが所定値以上の場合に、不検知度判定手段は不検知度が判定閾値以下であると判定するので、不検知度の判定を精度良く行うことができる。
【0018】
また請求項4の構成によれば、物体検知手段が所定時間毎に目標物を所定回数以上連続して検知した場合に、不検知度判定手段は不検知度が判定閾値以下であると判定するので、不検知度の判定を精度良く行うことができる。
【0019】
また請求項5の構成によれば、物体検知手段により所定時間毎に検知されるはずの目標物が不検知になったときに目標物の検知データを補完する外挿処理が行われない場合に、不検知度判定手段は不検知度が判定閾値以下であると判定するので、不検知度の判定を精度良く行うことができる。
【0020】
また請求項6の構成によれば、悪環境判定手段が悪環境であると判定した場合には衝突被害軽減制御および目標物との車間距離制御を中止するので、物体検知手段の検知精度が低下する悪環境下で不確かなデータに基づいて不確かな制御が行われるのを防止することができる。但し、悪環境判定手段が悪環境であると判定した場合でも、不検知度判定手段が不検知度が判定閾値以下であると判定した場合には、つまり悪環境であっても物体検知手段の検知能力がある程度確保されている場合には目標物との車間距離制御を継続するので、安全性に関わる衝突被害軽減制御が低い精度で行われるのを防止しながら、快適性に関わる目標物との車間距離制御を最大限に継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】車両用物体検知装置を含む車両用走行制御装置の構成を示すブロック図。
【図2】送信手段による検知エリアの走査の説明図。
【図3】ファーストエコーおよびセカンドエコーによる物体検知の説明図。
【図4】悪環境検出ルーチンのフローチャート。
【図5】不検知環境検出ルーチンのフローチャート。
【図6】フェイル判定ルーチンのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図1〜図6に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
図1に示すように、レーザーレーダー装置は自車前方に向けて送信波を送信する送信手段M1と、送信波が物体に反射された反射波を受信する受信手段M2とを備える。車両用物体検知装置の電子制御ユニットUは、物体検知手段M3と、悪環境判定手段M4と、システムフェイル判定手段M5と、統合手段M6と、不検知度判定手段M7とを備えており、物体検知手段M3には送信手段M1および受信手段M2が接続され、システムフェイル判定手段M5には、安全系システムである衝突被害軽減システムM8および快適系システムであるアダプティブ・クルーズ・コントロールシステムM9が接続される。衝突被害軽減システムM8は、自車が先行車等の物体と衝突するのが避けられない場合に、自動制動やステアリング反力制御を行って衝突の被害を軽減する。アダプティブ・クルーズ・コントロール・システムM9は、先行車が存在しない場合には自車を設定車速で走行させ、先行車が存在する場合には先行車との間に設定車間距離が維持されるように自車を追従走行させる。
【0024】
図2に示すように、レーザーレーダー装置の送信手段M1は、自車の車体中心軸と直交する所定の検知エリアを送信波で走査することで、その検知エリアに存在する物体を検知する。
【0025】
図3に示すように、雨、雪あるいは霧のような悪環境時に、レーザーレーダー装置の送信手段M1が自車前方の検知エリアに送信波を送信すると、その送信波の一部が雨滴等の粒子に反射された反射波(ファーストエコー)が受信手段M2に受信されるとともに、前記送信波の他の一部が先行車に反射された反射波(セカンドエコー)が受信手段M2に受信される。
【0026】
雨滴等の粒子は非常に小さいため、レーザーレーダー装置は近距離(例えば、自車から5m以下の距離)に存在する雨滴等しか検知することができない。一方、衝突被害軽減システムM8やアダプティブ・クルーズ・コントロール・システムM9の制御対象となる先行車は、雨滴が検知される距離である5mよりも遠距離で検知される。従って、ファーストエコーで検知された物体は雨滴等であり、セカンドエコーで検知された物体は先行車である可能性が高くなる。尚、先行車の直後方にはスプラッシュ(水はね)が存在するが、スプラッシュの粒子も小さいため、通常の先行車の距離では検知されることはない。
【0027】
以上のことから、雨、雪、霧等の粒子を検知可能な距離(例えば、5m)を閾値とし、この閾値未満の距離で物体(雨、雪、霧等)を検知する度に悪環境度を1増加させるとともに検知しない度に悪環境度を1減少させ、最終的に悪環境度が所定の閾値以上になったときに、雨、雪、霧等の悪環境であると判定して、悪環境判定手段M4が悪環境フラグを「1」にセットする。
【0028】
統合手段M6は、前記閾値よりも遠方に検知された物体群のうち、相互に近距離に存在する物体群を一纏めにして目標物とする。そして前回サイクルで検知された目標物の位置および速度から今回サイクルにおける目標物の位置を予測し、今回サイクルの目標物の予測位置を中心とする所定範囲内に、今回サイクルで実際に検知された目標物の位置が入っていれば、前回サイクルで検知された目標物と今回サイクルで検知された目標物とが同一物であると判定する。
【0029】
前回サイクルで検知された目標物と今回サイクルで検知された目標物とが同一物であると判定されなかった場合には、直ちに前回サイクルで検知された目標物をロストした(非検知になった)と判定せず、前回サイクルで検知された目標物の位置および速度から今回サイクルにおける目標物の位置を予測し、その予測位置に目標物が引き続き検知されたと仮定する外挿処理を行う。そして前記外挿処理が所定回数(例えば、5回)連続して行われた場合に、最終的に目標物をロストしたと判定する。
【0030】
しかして、統合手段M6は悪環境下での前記目標物の走行状態や検知状態により先行車であるか否かを判定する。その判定の基準は以下のa)〜d)の何れかの条件が成立することである。
【0031】
a)目標物の前後方向速度が0km/h〜100km/hであり、かつ横方向速度が20km/h以下であること。
【0032】
b)目標物の前後方向(奥行き方向)寸法が20cm以上であり、かつ横方向(幅方向)寸法が50cm以上であること。
【0033】
c)目標物が10サイクル以上連続して同一物であると判定されていること。
【0034】
d)目標物の外挿処理が行われていないこと。
【0035】
不検知度判定手段M7は、前記a)〜d)の何れかの条件が成立する度に不検知度を1ずつ減少させるとともに成立しない度に不検知度を1ずつ増加させ、最終的に不検知度が所定の判定閾値以上になったときに、先行車を検知できないと判定して不検知フラグを「1」にセットする。
【0036】
システムフェイル判定手段M5は、悪環境判定手段M4が悪環境であると判定した場合(悪環境フラグ=「1」)には、物体検知手段M3の出力を中止することで安全系システムである衝突被害軽減システムM8および快適系システムであるアダプティブ・クルーズ・コントロールシステムM9の作動を中止するので、物体検知手段M3の検知精度が低下する悪環境下で不確かなデータに基づいて不確かな制御が行われるのを防止することができる。但し、悪環境と判定されていても不検知度判定手段M7が不検知度が判定閾値未満であると判定した場合、つまり悪環境であっても物体検知手段M3の検知能力がある程度確保されている場合には、安全性に関わる衝突被害軽減システムM8の作動だけを中止して快適性に関わるアダプティブ・クルーズ・コントロールシステムM9の作動を継続することで、アダプティブ・クルーズ・コントロールシステムM9の機能を最大限に活かすことができる。
【0037】
次に、上記作用を図4〜図6のフローチャートに基づいて更に説明する。
【0038】
図4のフローチャートのステップS1で閾値(例えば、5m)未満の近距離に存在する反射点の数を計数し、ステップS2で前記反射点の数が閾値以上であれば、ステップS3で悪環境度カウンタを1インクリメントし、前記ステップS2で前記反射点の数が閾値未満であれば、ステップS4で悪環境度カウンタを1デクリメントする。続くステップS4で悪環境度カウンタのカウント値が閾値以上になれば、ステップS5で悪環境フラグを「1」(悪環境)にセットし、前記ステップS4で悪環境度カウンタのカウント値が閾値未満であれば、ステップS6で悪環境フラグを「0」(非悪環境)にセットする。
【0039】
図5のフローチャートのステップS11で自車の前方に設定した検知エリアに存在する物体を検知し、ステップS12で前記物体の速度、大きさ、反射点の数により検知した物体が車両(先行車)であるか否かを判定し、先行車であると判定されれば、ステップS13で不検知度カウンタを1デクリメントし、前記ステップS12で先行車でないと判定されれば、ステップS14で不検知度カウンタを1インクリメントする。続くステップS15で不検知度カウンタのカウント値が閾値以上になれば、ステップS16で不検知フラグを「1」(先行車を不検知)にセットし、前記ステップS15で不検知度カウンタのカウント値が閾値未満であれば、ステップS17で不検知フラグを「0」(先行車を検知)にセットする。
【0040】
図6のフローチャートのステップS21で悪環境フラグが「1」であって悪環境であれば、ステップS22で安全系システム(衝突被害軽減システムM8)をフェイルに落として機能を停止する。続くステップS23で不検知フラグが「1」であって先行車を検知できなければ、ステップS24で快適系システム(アダプティブ・クルーズ・コントロール・システムM9)をフェイルに落として機能を停止し、前記ステップS23で不検知フラグが「0」であって先行車を検知できれば、ステップS25で快適系システムを継続して機能させる。
【0041】
以上のように、物体検知手段M3の検知結果に基づいて悪環境判定手段M4が霧、雪、雨のような悪環境を検知すると、システムフェイル判定手段M5はシステムがフェイルしたと判定し、信頼性の低い物体検知手段M3の検知結果に基づく車両制御が行われないように物体検知手段M3の出力を中止することで、衝突被害軽減システムM8およびアダプティブ・クルーズ・コントロール・システムM9の作動を中止する。
【0042】
しかしながら、悪環境判定手段M4により悪環境と判定された場合でも、不検知度判定手段M7で判定した先行車の不検知度が判定閾値以下の場合には、物体検知手段M3がある程度の信頼性で先行車を検知可能であると判定し、物体検知手段M3の出力を一律に中止することなく、先行車を検知可能な場合には物体検知手段M3の出力を継続することで、その機能を最大限に活かすことができる。この場合には、安全系システムである衝突被害軽減システムM8は危険防止のために作動を中止するが、快適系システムであるアダプティブ・クルーズ・コントロール・システムM9の作動を継続することで、比較的遠方の車両を制御対象とするアダプティブ・クルーズ・コントロール・システムM9の機能を最大限に発揮させて商品性を高めることができる。
【0043】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0044】
例えば、実施の形態ではレーダー装置の検知結果に基づいて衝突被害軽減制御および目標物との車間距離制御を行っておるが、その他の任意の制御であっても良い。
【符号の説明】
【0045】
M1 送信手段
M2 受信手段
M3 物体検知手段
M4 悪環境判定手段
M5 システムフェイル判定手段
M6 統合手段
M7 不検知度判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されてパルス状の電磁波を車体中心軸と直交する方向に向きを変えて送信することにより予め設定された検知エリアを走査する送信手段(M1)と、
送信された電磁波が物体に反射された反射波を受信する受信手段(M2)と、
1回の電磁波の送信に対して判定閾値以上となる受信レベルを有する受信信号を複数抽出可能であるとともに電磁波の送信から受信までの時間に基づいて前記検知エリアに存在する複数の物体までの距離をそれぞれ検知可能な物体検知手段(M3)と、
送信された電磁波が霧、雪、雨等の粒子に反射されて受信されるまでの時間に基づいて予め悪環境判定時間を設定するとともに該悪環境判定時間未満となる距離からの反射波が所定数以上検知された場合に前記物体検知手段(M3)の検知性能が低下する悪環境であると判定する悪環境判定手段(M4)と、
前記悪環境判定手段(M4)の判定結果に基づいて前記物体検知手段(M3)の出力を中止するシステムフェイル判定手段(M5)とを備える車両用物体検知装置において、
電磁波の送信から受信までの時間が前記悪環境判定時間以上の受信波により検知された物体を、各物体間の距離に基づいて目標物として統合する統合手段(M6)と、
前記統合手段(M6)により統合された目標物の不検知度を判定する不検知度判定手段(M7)とを備え、
前記システムフェイル判定手段(M5)は、前記悪環境判定手段(M4)により悪環境と判定された場合でも、前記不検知度判定手段(M7)で判定した目標物の不検知度が判定閾値以下の場合には前記物体検知手段(M3)の出力を継続することを特徴とする車両用物体検知装置。
【請求項2】
前記不検知度判定手段(M7)は、目標物の移動速度が所定範囲内の場合に不検知度が判定閾値以下であると判定することを特徴とする、請求項1に記載の車両用物体検知装置。
【請求項3】
前記不検知度判定手段(M7)は、目標物の大きさが所定値以上の場合に不検知度が判定閾値以下であると判定することを特徴とする、請求項1に記載の車両用物体検知装置。
【請求項4】
前記物体検知手段(M3)は所定時間毎に物体を検知し、
前記不検知度判定手段(M7)は、目標物が所定回数以上連続して検知された場合に不検知度が判定閾値以下であると判定することを特徴とする、請求項1に記載の車両用物体検知装置。
【請求項5】
前記物体検知手段(M3)は所定時間毎に物体を検知し、
前記不検知度判定手段(M7)は、目標物が不検知になった場合に該目標物の検知データを補完する外挿処理が行われない場合に不検知度が判定閾値以下であると判定することを特徴とする、請求項1に記載の車両用物体検知装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の車両用物体検知装置を備えた車両用走行制御装置であって、
前記悪環境判定手段(M4)が悪環境であると判定した場合には衝突被害軽減制御および目標物との車間距離制御を中止するが、悪環境と判定されていても前記不検知度判定手段(M7)が不検知度が判定閾値以下であると判定した場合には目標物との車間距離制御を継続することを特徴とする車両用走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−256198(P2010−256198A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107319(P2009−107319)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】