説明

車両用空調装置

【課題】本発明では、蓄冷材の蓄冷状態に応じて、コンプレッサの駆動を制御することにより燃費の低減が可能な車両用空調装置を提供する。
【解決手段】A/C−ECU(42)により、ENG−ECU(21)からの入力情報より蓄冷材(16)の蓄冷状態が所定の蓄冷状態以上であれば、コンプレッサ(11)の駆動を停止し、且つ空気通路切替えドア&モータ(17)を切り替えて蓄冷材(16)に空気を送風して冷却する蓄冷クーラを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置であって、蓄冷材の蓄冷状況に応じてコンプレッサを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用空調装置では、日射量の多い時季には、車室を構成する構造材が外側から常に加熱されている状態であり、車室内が所望の温度に達してもそれを維持するのに多くのエネルギを必要とされる。
そのため、車両用空調装置を構成しているコンプレッサの駆動エネルギが増え、コンプレッサを駆動しているエンジンの負荷が高くなり、燃費が悪化するという問題がある。
【0003】
このようなことから、車室内が安定して快適な温度を維持しているときの燃料がカットされるエンジンブレーキ時に蓄冷モードに入りコンプレッサの駆動力を増加し冷凍能力を増加させ、冷凍能力の増加分を蓄冷材に蓄冷し車室を構成する構造材を冷却させ、燃費を増加することなく蓄冷材に蓄冷することのできる車両用空調装置が開発されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−148860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の車両用空調装置では、車室内が安定して快適な温度を維持しているときのエンジンブレーキ時に蓄冷モードに入りコンプレッサの駆動力を増加し冷凍能力を増加させ、冷凍能力の増加分を蓄冷材に蓄冷するようにしている。
しかしながら、蓄冷材の蓄冷状態が十分である場合でも車室内が安定して快適な温度を維持した状態でエンジンブレーキ状態になると、常に冷凍能力を増加させ蓄冷材に蓄冷する蓄冷モードとなり、コンプレッサは常に作動していることになる。
【0006】
また、冷房空調が必要とされるときには常にコンプレッサが作動しており、燃費が増加し好ましいことではない。
本発明は、この様な問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、蓄冷材の蓄冷状態に応じて、コンプレッサの駆動を制御することにより燃費を低減しコンプレッサの耐久性の向上を図ることのできる車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1の車両用空調装置は、車両走行用の内燃機関の補機として作動するコンプレッサ、コンデンサ、膨張弁及びエバポレータからなる冷凍回路と、前記エバポレータに外気または内気を送るブロワと、外気または内気が前記エバポレータを通過して生じた冷気により蓄冷を行う蓄冷材とを有し、車室内の冷房能力を自由に可変できる車両用空調装置において、車両走行状態を検出する車両走行状態検出手段と、記蓄冷材の蓄冷状態を判定する蓄冷状態判定手段と、前記エバポレータを通過した外気または内気の流れの一部または全部を前記蓄冷材側へ切り替える空気通路切替部材と、前記コンプレッサの駆動と前記空気通路切替部材の切替作動とを制御する空調制御手段とを備え、該空調制御手段は、前記車両走行状態検出手段の検出結果より車両が走行状態にあるとき、前記蓄冷状態判定手段の判定結果より前記蓄冷材の蓄冷状態が所定の蓄冷状態未満であって前記走行状態が内燃機関に依らない無負荷走行状態にあると、前記コンプレッサの駆動力を増大させるとともに前記空気通路切替部材を切り替えて前記エバポレータを通過した空気の流れを前記蓄冷材側として前記蓄冷材に蓄冷を行う一方、車室内の冷房が必要であり、前記蓄冷状態判定手段の判定結果より前記蓄冷材の蓄冷状態が所定の蓄冷状態以上であると、前記コンプレッサの駆動を停止するとともに前記空気通路切替部材を切り替えて空気の流れを前記蓄冷材側として前記蓄冷材により冷房を行うことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2の車両用空調装置では、請求項1の発明において、前記空調制御手段は、前記車両走行状態検出手段の検出結果より車両が走行状態にあるとき、車室内の冷房が必要でなく、前記蓄冷状態判定手段の判定結果より前記蓄冷材の蓄冷状態が所定の蓄冷状態以上であると、前記走行状態が内燃機関に依らない無負荷走行状態であっても前記コンプレッサを作動させないことを特徴とする。
【0009】
また、請求項3の車両用空調装置では、請求項1又は2の発明において、車両前方に外気として走行風を導入することのできる走行風導入口を有し、前記空調制御手段は、さらに外気及び内気の導入切替と前記ブロワの作動を制御するものであって、車室内の冷房が必要であるとき、前記車両走行状態検出手段により検出される車速が所定の車速以上であると、前記走行風導入口から外気として走行風を導入するとともに前記ブロワを停止することを特徴とする。
【0010】
また、請求項4の車両用空調装置では、請求項1乃至3のいずれかの発明において、前記空調制御手段は、さらに車両の停止時間を計時するとともに内燃機関の運転と停止の切り替えを行うものであって、前記車両走行状態検出手段の検出結果より車両が所定時間以上に亘り停止して走行状態にないとき、車室内の冷房が必要であり、前記蓄冷材の蓄冷状態が所定の蓄冷状態以上であると、内燃機関を停止するとともに前記空気通路切替部材を切り替えて空気の流れを前記蓄冷材側として前記蓄冷材により冷房を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、蓄冷材の蓄冷状態を判定する蓄冷状態判定手段と、コンプレッサの駆動と空気通路切替部材の切替作動とを制御する空調制御手段を有し、空調制御手段は、車両が走行状態にあるとき、蓄冷材の蓄冷状態が所定の蓄冷状態未満であって走行状態が内燃機関に依らない無負荷走行状態にあると、コンプレッサの駆動力を増大させるとともにエバポレータを通過した空気の流れを蓄冷材側として蓄冷材に蓄冷を行う一方、車室内の冷房が必要であり、蓄冷材の蓄冷状態が所定の蓄冷状態以上であると、コンプレッサの駆動を停止するとともに空気の流れを蓄冷材側として蓄冷材により冷房を行うようにしている。
【0012】
これにより、車両が走行状態にあり、車室内の冷房が必要であるときには、蓄冷材の蓄冷状態が所定の蓄冷状態以上でコンプレッサの駆動を停止するようにでき、コンプレッサの駆動による内燃機関の負荷の上昇を抑制して燃費を低減しつつ車室内の冷房を継続できる。
【0013】
また、請求項2の発明によれば、車両が走行状態にあるとき、車室内の冷房が必要でなく、蓄冷材の蓄冷状態が所定の蓄冷状態以上であると、走行状態が内燃機関に依らない無負荷走行状態であってもコンプレッサの駆動を停止するようにしている。
これにより、車室内の冷房が必要でなく蓄冷材の蓄冷状態が所定の蓄冷状態以上であるときには、走行状態が内燃機関に依らない無負荷走行状態であっても蓄冷材に蓄冷を行わないようにでき、コンプレッサの無駄な駆動を抑制しコンプレッサの耐久性を向上させることができる。
【0014】
また、請求項3の発明によれば、所定の車速以上でブロワを停止し、走行風導入口より走行風を導入しているので、ブロワでの電力消費が無くなり、例えばオルタネータでの発電による内燃機関の負荷の上昇を抑制することができ、更に燃費を低減することができる。
また、請求項4の発明によれば、空調制御手段は、車両が所定時間以上に亘り停止して走行状態にないとき、車室内の冷房が必要であり、蓄冷材の蓄冷状態が所定の蓄冷状態以上であると、内燃機関を停止するとともに空気の流れを蓄冷材側として蓄冷材により冷房を行うようにしたので、車両の停止中は内燃機関自体を停止することで更に燃費を低減しつつ車室内の冷房を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施例に係る車両用空調装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る車両用空調装置の車両走行中における空調制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1実施例に係る車両用空調装置の冷房未使用時における空調制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1実施例に係る車両用空調装置の車両停止時の冷房使用における空調制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施例に係る車両用空調装置の概略構成図である。
【図6】本発明の第2実施例に係る車両用空調装置の車両停止時の冷房使用における空調制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
[第1実施例]
図1は、本発明の第1実施例に係る車両用空調装置の概略構成図である。
【0017】
以下、本発明の第1実施例の車両用空調装置の構成を説明する。
なお、図中白抜き矢印は空気の流れを、太実線は冷媒の流れをそれぞれ示す。
図1に示すように、車両用空調装置1は、コンプレッサ11、コンデンサ12、エキスパンションバルブ13、エバポレータ14、ブロワ15、蓄冷材16、空気通路切替えドア&モータ(空気通路切替部材)17、ENG−ECU(車両走行状態検出手段)21、アクセル開度センサ22、インマニ圧センサ23、車速センサ24、ナビゲーションシステム31、空調操作部41、A/C−ECU(空調制御手段、蓄冷状態判定手段)42、外気温センサ43から構成される。
【0018】
コンプレッサ11、コンデンサ12、エキスパンションバルブ13、エバポレータ14、ブロワ15は、冷媒を用いた蒸気圧縮冷凍サイクルである冷却機を構成し、外気である走行風を導入する走行風導入口18又は内気を導入する内気導入口19より導入される空気を冷却し車室内に送風するものである。
【0019】
蓄冷材15は、エバポレータ14の下流に配設され、エバポレータ14で冷却される空気より冷却エネルギを蓄え、または、走行風導入口18又は内気導入口19より導入される空気を冷却するものである。
空気通路切替えドア&モータ17は、エバポレータ14と蓄冷材15との間に配設され、走行風導入口18又は内気導入口19より導入される空気の一部または全部を蓄冷材15へ分配するものである。
【0020】
ENG−ECU21は、図示しないエンジンの総合的な制御を行うための制御装置であり、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)及び中央演算処理装置(CPU)等を含んで構成される。
ENG−ECU21の入力側には、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ22、インテークマニホールド内の圧力を検出するインマニ圧センサ23、車両の速度を検出する車速センサ24及び車両運行時に現在位置や周辺状況の案内を行なうナビゲーションシステム31が電気的に接続されており、これら各種センサ類からの検出情報が入力される。
【0021】
一方、ENG−ECU21の出力側には、エンジンの他、A/C−ECU42が電気的に接続されている。
これより、ENG−ECU21は、各種センサ類からの検出情報に基づいて図示しない車両及びエンジンの運転状況を演算し、出力信号をA/C−ECU42へ供給する。
【0022】
A/C−ECU42は、空調装置の総合的な制御を行うための制御装置であり、ENG−ECU21と同様に入出力装置、記憶装置、タイマ及びCPU等を含んで構成される。
空調操作部41は、空調のファン段数、温度、内外気モードを設定及び空調の電源をON・OFFするクーラスイッチを有するものである。
【0023】
A/C−ECU42の入力側には、ENG−ECU21、空調操作部41及び室外の温度を検出する外気温度センサ43が電気的に接続されており、外気温度センサ43からの検出情報、空調操作部41の設定情報、車両及びエンジンの運転状況が入力される。
一方、A/C−ECU42の出力側には、上記コンプレッサ11、ブロワ15、空気通路切替えドア&モータ17及びENG−ECU21が電気的に接続されている。
【0024】
これより、A/C−ECU42は、外気温度センサ43からの検出情報、空調操作部41の設定情報、車両及びエンジンの運転状況に基づいて空調装置の動作内容を演算し、出力信号をコンプレッサ11、ブロワ15及び空気通路切替えドア&モータ17、さらにはENG−ECU21へ供給し、出力信号に応じてコンプレッサ11の動作の切り替え、ブロワ15の動作及び空気通路切替えドア&モータ17の開度を制御し、或いはENG−ECU21を介してエンジンを操作する。
【0025】
以下、このように構成された本発明の第1実施例に係る車両用空調装置の作用及び効果について説明する。
図2は、A/C−ECU42の実行する本発明に係る車両用空調装置の車両走行中における空調制御の制御ルーチンを示すフローチャートであり、また、図3は、冷房未使用時における空調制御の制御ルーチンを示すフローチャートであり、また、図4は、車両停止時の冷房使用における空調制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0026】
図2に示すように、ステップS10では、空調操作部41のクーラスイッチがONかOFFかを判別する。判別結果が真(Yes)でクーラスイッチがONで冷房を必要としていれば、ステップS12に進む。判別結果が偽(No)でクーラスイッチがOFFで冷房が不要であれば、ステップS30からの冷房未使用時における空調制御に進む。
【0027】
ステップS12では、車両が走行をしているか否かを判別する。判別結果が真(Yes)で走行をしていれば、ステップS14に進み、判別結果が偽(No)で車両が停止状態であれば、ステップS40からの車両停止時の冷房使用における空調制御に進む。
【0028】
[車両走行中における空調制御]
ステップS14では、ENG−ECU21からの入力情報より車速が所定の車速以上か否かを判別する。判別結果が真(Yes)で車速が所定の車速以上であれば、ステップS22に進みブロワ15を停止し、ステップS16へ進む。判別結果が偽(No)で車速が所定の車速より低ければ、ステップS16に進む。
【0029】
ステップS16では、ENG−ECU21からの入力情報より蓄冷材16の蓄冷状態が所定の蓄冷状態以上(例えば、車速40km/hで4時間走行)か否かを判別する。判別結果が真(Yes)で蓄冷材16の蓄冷状態が所定の蓄冷状態以上であれば、コンプレッサ11の駆動を停止し、且つ空気通路切替えドア&モータ17を切り替えて蓄冷材16に空気を送風して冷却する蓄冷クーラを使用し、ステップS10へ戻る。判別結果が偽(No)で蓄冷状態が所定の蓄冷状態より少なければ、ステップS18に進む。
【0030】
ステップS18では、ENG−ECU21からの入力情報よりエンジンが無負荷運転状態(例えば減速時又は降坂時)であるか否かを判別する。判別結果が真(Yes)でエンジンが無負荷運転状態であれば、ステップS26に進み、コンプレッサ11の駆動力を増大しエンジンブレーキをかけつつ、空気通路切替えドア&モータ17を作動させ蓄冷材16にエバポレータ14で冷却された冷却空気を送風し、蓄冷材16に冷却エネルギを蓄冷し、ステップS10へ戻る。判別結果が偽(No)でエンジンが無負荷運転状態になければ、ステップS20に進みコンプレッサ11を通常駆動させ、ステップS10へ戻る。
【0031】
[冷房未使用時における空調制御]
図3に示すように、ステップS30では、外気温センサ43からの情報に基づき外気温度が所定の温度以下か否かを判別する。判別結果が真(Yes)で外気温が所定の温度以下であれば、ステップS32に進む。判別結果が偽(No)で外気温が所定の温度より高ければ、ステップS10へ戻る。
【0032】
ステップS32では、ENG−ECU21からの入力情報より蓄冷材16の蓄冷状態が所定の蓄冷状態以上か否かを判別する。判別結果が真(Yes)で蓄冷材16の蓄冷状態が所定の蓄冷状態以上であれば、コンプレッサ11を駆動させることなくステップS10へ戻る。判別結果が偽(No)で蓄冷状態が所定の蓄冷状態より少なければ、ステップS34に進む。
【0033】
ステップS34では、ENG−ECU21からの入力情報よりエンジンが無負荷運転状態であるか否かを判別する。判別結果が真(Yes)でエンジンが無負荷運転状態であれば、ステップS36に進み、コンプレッサ11の駆動力を増大しエンジンブレーキをかけつつ、空気通路切替えドア&モータ17を作動させ蓄冷材16にエバポレータ14で冷却された冷却空気を送風し、蓄冷材16に冷却エネルギを蓄冷し、ステップS10へ戻る。判別結果が偽(No)でエンジンが無負荷運転状態になければ、コンプレッサ11を駆動させることなく、ステップS10へ戻る。
【0034】
[車両停止時の冷房使用における空調制御]
図4に示すように、ステップS40では、ナビゲーションシステム31よりENG−ECU21を経由しナビ情報を受信し、ステップS42に進む。
ステップS42では、ナビ情報より信号停止時間が所定の停止時間以上か否かを判別する。判別結果が真(Yes)で信号停止時間が所定の信号停止時間以上であれば、ステップS44に進む。判別結果が偽(No)で信号停止時間が所定の信号停止時間より短ければ、ステップS48に進みコンプレッサ11を通常駆動させ、ステップS10へ戻る。
【0035】
ステップS44では、ENG−ECU21からの入力情報より蓄冷材16の蓄冷状態が所定の蓄冷状態以上か否かを判別する。判別結果が真(Yes)で蓄冷材16の蓄冷状態が所定の蓄冷状態以上であれば、ステップS46に進み、ENG−ECU21へアイドリングストップの信号を送信しアイドリングをストップし、且つ空気通路切替えドア&モータ17を切り替え蓄冷材16に空気を送風して空気を冷却し冷房する蓄冷クーラを使用し、ステップS10へ戻る。判別結果が偽(No)で蓄冷状態が所定の蓄冷状態より少なければ、ステップS48に進みコンプレッサ11を通常駆動させ、ステップS10へ戻る。
【0036】
このように、本発明の第1実施例に係る車両用空調装置によれば、車速に基づいてブロワ15を適宜停止させ、且つ蓄冷材16の蓄冷状態に基づいてコンプレッサ11を停止し蓄冷材16を用いた蓄冷クーラを使用するようにしている。
これにより、ブロワでの電力消費が無くなりオルタネータでの発電及びコンプレッサ11の駆動によるエンジンの負荷の上昇を抑制することができるので燃費を低減することができる。また、コンプレッサ11の無駄な駆動を抑制しコンプレッサの耐久性を向上させることができる。
【0037】
[第2実施例]
次に、第2実施例について説明する。
図5は、本発明の第2実施例に係る車両用空調装置の概略構成図である。
図5に示すように第2実施例では、上記第1実施例に対して、車両運行システム32を追加しており、以下に上記第1実施例と異なる点に付いて説明する。
【0038】
車両運行システム32は、荷待ち場所・時間及び休憩場所・時間等の運行情報を入力し、運行情報をENG−ECU21に出力するものである。
ENG−ECU21の入力側には、アクセル開度センサ22、インマニ圧センサ23、車速センサ24、ナビゲーションシステム31及び車両運行システム32が電気的に接続されており、これら各種センサ類からの検出情報が入力される。
【0039】
一方、ENG−ECU21の出力側には、第1実施例と同様にA/C−ECU42が電気的に接続され、ENG−ECU21は、各種センサ類からの検出情報に基づいて車両及びエンジンの運転状況を演算し、出力信号をA/C−ECU42へ供給する。
以下、このように構成された本発明の第2実施例に係る車両用空調装置の作用及び効果について説明する。
【0040】
図6は、第2実施例に係る車両停止時の冷房使用における空調制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
第2実施例では、上記第1実施例の車両停止時の冷房使用における空調制御をナビゲーションシステム31のナビ情報に加えて、車両運行システム32の運行情報による車両停止の判別を行っている点が相違しており、以下上記第1実施例と異なる点について説明する。
【0041】
[車両停止時の冷房使用における空調制御]
図6に示すように、ステップS40’では、ナビゲーションシステム31及び車両運行システム32よりENG−ECU21を経由しナビ情報及び運行情報を受信し、ステップS41に進む。
ステップS41では、ナビ情報及び運行情報より車両が信号による停止か否かを判別する。判別結果が真(Yes)で信号による停止状態であれば、ステップS42に進む。判別結果が偽(No)で信号による停止状態でなければステップS43に進む。
【0042】
ステップS42では、ナビ情報より信号停止時間が所定の停止時間以上か否かを判別する。判別結果が真(Yes)で信号停止時間が所定の信号停止時間以上であれば、ステップS44に進む。判別結果が偽(No)で信号停止時間が所定の信号停止時間より短ければ、ステップS48に進みコンプレッサ11を通常駆動させ、ステップS10へ戻る。
【0043】
ステップS43では、運行情報より荷待ち又は休憩時間等による停止か否かを判別する。判別結果が真(Yes)で荷待ち又は休憩時間等による停止であれば、ステップS44に進む。判別結果が偽(No)で荷待ち又は休憩時間等による停止でなければ、ステップS48に進みコンプレッサ11を通常駆動させ、ステップS10へ戻る。
【0044】
ステップS44では、ENG−ECU21からの入力情報より蓄冷材16の蓄冷状態が所定の蓄冷状態以上か否かを判別する。判別結果が真(Yes)で蓄冷材16の蓄冷状態が所定の蓄冷状態以上であれば、ステップS46に進み、ENG−ECU21へアイドリングストップ信号を送信しアイドリングをストップし、且つ空気通路切替えドア&モータ17を切り替え蓄冷材16に空気を送風して空気を冷却し冷房する蓄冷クーラを使用し、ステップS10へ戻る。判別結果が偽(No)で蓄冷状態が所定の蓄冷状態より少なければ、ステップS48に進みコンプレッサ11を通常駆動させ、ステップS10へ戻る。
【0045】
このように、本発明の第2実施例に係る車両用空調装置によれば、車両の運行情報に基づいてエンジンをアイドリングストップさせ、蓄冷材16の蓄冷状態に基づいてコンプレッサ11を停止させ蓄冷材16を用いた蓄冷クーラを使用するようにしている。
これにより、車両が一定時間以上停止する場合にエンジンを停止させコンプレッサ11の駆動を停止することができるので更に燃費を低減することができる。
【0046】
以上で発明の実施形態の説明を終えるが、本発明の形態は実施形態に限定されるものではない。
例えば、第1実施例及び第2実施例では、冷房未使用時における空調制御及び車両停止時の冷房使用における空調制御を行っているが、これら制御が無くてもよい。この場合であっても、蓄冷材16の蓄冷状態に基づいてコンプレッサ11を停止させ蓄冷材16を用いた蓄冷クーラを使用することができ、燃費を低減することができる。
【符号の説明】
【0047】
1、1’ 車両用空調装置
11 コンプレッサ
14 エバポレータ
15 ブロワ
16 蓄冷材
17 空気通路切替えドア&モータ(空気通路切替部材)
18 走行風導入口
21 ENG−ECU(車両走行状態検出部)
31 ナビゲーションシステム
32 車両運行システム
41 空調操作部
42 A/C−ECU(空調制御部、蓄冷状態判定部)
43 外気温センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両走行用の内燃機関の補機として作動するコンプレッサ、コンデンサ、膨張弁及びエバポレータからなる冷凍回路と、前記エバポレータに外気または内気を送るブロワと、外気または内気が前記エバポレータを通過して生じた冷気により蓄冷を行う蓄冷材とを有し、車室内の冷房能力を自由に可変できる車両用空調装置において、
車両走行状態を検出する車両走行状態検出手段と、
前記蓄冷材の蓄冷状態を判定する蓄冷状態判定手段と、
前記エバポレータを通過した外気または内気の流れの一部または全部を前記蓄冷材側へ切り替える空気通路切替部材と、
前記コンプレッサの駆動と前記空気通路切替部材の切替作動とを制御する空調制御手段とを備え、
該空調制御手段は、
前記車両走行状態検出手段の検出結果より車両が走行状態にあるとき、
前記蓄冷状態判定手段の判定結果より前記蓄冷材の蓄冷状態が所定の蓄冷状態未満であって前記走行状態が内燃機関に依らない無負荷走行状態にあると、前記コンプレッサの駆動力を増大させるとともに前記空気通路切替部材を切り替えて前記エバポレータを通過した空気の流れを前記蓄冷材側として前記蓄冷材に蓄冷を行う一方、
車室内の冷房が必要であり、前記蓄冷状態判定手段の判定結果より前記蓄冷材の蓄冷状態が所定の蓄冷状態以上であると、前記コンプレッサの駆動を停止するとともに前記空気通路切替部材を切り替えて空気の流れを前記蓄冷材側として前記蓄冷材により冷房を行うことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記空調制御手段は、
前記車両走行状態検出手段の検出結果より車両が走行状態にあるとき、
車室内の冷房が必要でなく、前記蓄冷状態判定手段の判定結果より前記蓄冷材の蓄冷状態が所定の蓄冷状態以上であると、前記走行状態が内燃機関に依らない無負荷走行状態であっても前記コンプレッサを作動させないことを特徴とする、請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
車両前方に外気として走行風を導入することのできる走行風導入口を有し、
前記空調制御手段は、
さらに外気及び内気の導入切替と前記ブロワの作動を制御するものであって、
車室内の冷房が必要であるとき、前記車両走行状態検出手段により検出される車速が所定の車速以上であると、前記走行風導入口から外気として走行風を導入するとともに前記ブロワを停止することを特徴とする、請求項1又は2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記空調制御手段は、
さらに車両の停止時間を計時するとともに内燃機関の運転と停止の切り替えを行うものであって、
前記車両走行状態検出手段の検出結果より車両が所定時間以上に亘り停止して走行状態にないとき、
車室内の冷房が必要であり、前記蓄冷材の蓄冷状態が所定の蓄冷状態以上であると、内燃機関を停止するとともに前記空気通路切替部材を切り替えて空気の流れを前記蓄冷材側として前記蓄冷材により冷房を行うことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−57120(P2011−57120A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210389(P2009−210389)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】