説明

車両用表示装置

【課題】 運転者にとって前記コンバイナに投影される表示像を容易に視認できる車両用表示装置を提供する。
【解決手段】 車両Aに搭載されるフロントガラスWに表示像Lを投影する表示器2を備え、フロントガラスWに投影される表示像Lを外界の景色と重ね合わせて表示する車両用ヘッドアップディスプレイ装置であって、前記外界の景色を撮像する撮像手段Cと、撮像手段Cによる撮像情報のうち表示像Lの背景に対応する部分あるいはその近傍部分の色に対してコントラストの高い色を表示像Lの表示色として設定し表示器2によって投影させる制御手段15と、を備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示手段に走路形状を表示する車両用表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用表示装置として種々の情報を表示像として投影して表示する車両用ヘッドアップディスプレイ装置が提案されており、例えば特許文献1に開示されている。かかる車両用ヘッドアップディスプレイ装置は、バックライトを備えた液晶表示素子から発せられる表示光を表示像として車両のフロントガラスあるいは専用に設けられるコンバイナと称される半透過板に投影し、虚像を表示するものである。上述した車両用ヘッドアップディスプレイ装置によれば、車速,エンジン回転数等の車両情報やナビゲーション情報等の各種情報を前記虚像として表示することが可能となり、運転者は、前記虚像を前記車両外の風景(以下、外界の景色と記する)に重畳させて視認できる。
【0003】
また、前述の車両用表示装置において、車両運転者の視点から見た前方の走路形状を表す走路形状表示を表示するものが知られている(特許文献2参照)。かかる車両用表示装置によれば、運転者は、天候条件、走路のカーブ、周辺車両および建物などの影響で、実際の前記走路形状を目視しにくい場合であっても、表示される前記走路形状表示から実際の前記走路形状を把握することができる。
【特許文献1】特開平11−310055号公報
【特許文献2】特開2000−211452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる車両用表示装置においては、運転者は、外界の景色に重畳されて虚像として表示される前記走路形状表示を認識し、その形状から実際の走路形状を把握するものである。しかしながら、外界の景色は、車両が走行する場所や天候,昼夜によって様々に変化するものであるため、虚像として表示される前記走路形状表示の表示色と同じような色の外界の景色が背景色となってしまうことがあるため、前記走路形状表示が運転者にとって視認し難くなり問題となっていた。
【0005】
そこで本発明の目的は、上記課題に着目してなされたものであり、運転者にとって前記コンバイナに投影される表示像を容易に視認できる車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用表示装置は、請求項1に記載したように、車両に搭載されるコンバイナに表示像を投影する表示手段を備え、前記コンバイナに投影される前記表示像を外界の景色と重ね合わせて表示する車両用表示装置であって、前記外界の景色を撮像する撮像手段と、前記撮像手段による撮像情報のうち前記表示像の背景に対応する部分あるいはその近傍部分の色に対してコントラストの高い色を前記表示像の表示色として設定し前記表示手段によって投影させる制御手段と、を備えてなることを特徴とする車両用表示装置。
【0007】
また、請求項2に記載したように、請求項1に記載の車両用表示装置において、前記車両の現在位置を検出する位置検出手段を設けてなり、前記制御手段は、前記位置検出手段により検出された前記車両の現在位置に基づいて地図情報記憶手段に格納された三次元情報からなる地図情報を読み出して前記車両の前方側の走路形状を前記表示像として投影させることを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項3に記載したように、請求項1に記載の車両用表示装置において、前記制御手段は、前記表示像の背景に対応する部分あるいはその近傍部分の色に対して、補色を前記表示像の表示色として設定してなることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項4に記載したように、請求項1に記載の車両用表示装置において、前記表示手段は、前記コンバイナに投影される前記表示像が前記車両の前方下部の走路と重ね合わせて表示するように設けられ、前記制御手段は、前記撮像手段による撮像情報のうち前記走路の色に対してコントラストの高い色を前記表示像の表示色として設定し前記表示手段によって投影させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、車両に搭載されるコンバイナに表示像を投影する表示手段を備え、前記コンバイナに投影される前記表示像を外界の景色と重ね合わせて表示する車両用表示装置に関するものであり、運転者にとってコンバイナに投影される表示像を容易に視認できる車両用表示装置を提供することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の車両用表示装置を車両用ヘッドアップディスプレイ装置に適用したものを例に挙げて、添付の図面に基づいて説明する。
【0012】
図1および図2において、1は表示ユニットであり、車両Aのダッシュボード内に配設される。表示ユニット1が投射する表示像Lは、コンバイナ処理されたフロントガラス(コンバイナ)Wにより運転者の視点Dの方向に反射され、虚像Vとして表示される。運転者は虚像Vを風景と重畳させて観察することができる。また、車両Aには、フロントガラスWを介して外界(車外)の景色を撮像する撮像手段Cが搭載されている。
【0013】
2は表示器(表示手段)であり、この表示器2はTFT型の液晶表示素子およびバックライト手段からなるものである。3は回路基板であり、この回路基板3に表示器2が搭載されている。4は反射鏡であり、この反射鏡4は表示器2が発した表示像Lをフロントガラス側Wに反射させる。反射鏡4の反射面4aは凹面になっており、表示器2からの表示像Lを拡大してフロントガラスWに投射することができる。5は保持部材であり、反射鏡4は保持部材5に両面粘着テープにより接着されており、運転者から表示像Lが視認し易い角度に調整可能に設けられる。なお、表示器2は、液晶表示素子を備える構成に限定されるものではなく、例えば有機EL表示パネルを備える構成であっても良い。
【0014】
6はハウジングであり、このハウジング6には、表示器2,回路基板3,反射鏡4等が収容される。ハウジング6には表示像Lが通過する透光性カバー7が配設されている。透光性カバー7は、アクリル等の透光性樹脂からなるものであり、湾曲形状になっている。ハウジング6には遮光壁6aが設けられており、太陽光等の外光が表示器2に入射し虚像Vが見えにくくなる現象(ウォッシュアウト)を防止している。
【0015】
図3は、車両用ヘッドアップディスプレイ装置の電気的な構成を示すブロック図である。車両用ヘッドアップディスプレイ装置は、車両Aに搭載され、速度センサ(車速検出手段)10と、GPS(Global Positioning System)装置11と、ジャイロセンサ12と、記憶媒体(地図情報記憶手段)13と、操作手段14と、撮像手段Cと、制御手段15と、表示駆動回路16と、表示器2と、から主に構成されている。
【0016】
速度センサ10は、車両Aの走行速度を検出するためのもので、車速に応じた信号を制御手段15に出力する。
【0017】
GPS装置11は、自車位置(車両Aの現在位置)を求めるための装置であり、GPS用受信アンテナや増幅回路を備え、前記受信アンテナで受信した人工衛星からの位置情報である送信電波を高周波信号として増幅してなる信号を制御手段15に出力する。
【0018】
ジャイロセンサ12は、車両Aの車体向き(進行方向)を検出するためのものであり、車両Aの方向変化に応じた信号を制御手段15へ出力する。ジャイロセンサ12からの信号は、GPS装置11が人工衛星からの送信電波を受信できない場合など、速度センサ10の速度信号とともに、自車位置を算出するために使用される。
【0019】
記憶媒体13は、CD−ROM、DVD−ROMあるいはハードディスク等によって構成され、地図データおよび走路形状を示すための三次元の座標情報(三次元情報)からなるデジタルマップデータ(地図情報)が記憶されており、前記デジタルマップデータは、制御手段15による後述する描画処理を行う際に使用される。なお、前記デジタルマップデータは、走路の形状を示す走路形状データ,前記走路の所定位置における高さを示す高さデータ,前記走路の左右の傾きを示す傾きデータ,前記走路の曲率を示す曲率データ等を有している。
【0020】
操作手段14は、選択キーや決定キー等の複数のスイッチを有するものであり、後述する走路形状画像(前記走路の各三次元の座標情報を描画処理したもの)の表示形態または表示設定を切り換えるものである。また、運転者は、前記表示設定として、前記走路形状画像の表示または非表示の選択、あるいは、前記走路形状画像を表示する際の各設定値等を、操作手段14を操作することによって、表示器2による表示内容を任意に設定することができる。
【0021】
撮像手段Cは、CCDやCMOS等の撮像素子を有するカメラを適用でき、車両Aの前方側を撮像可能に設けられており、所定時間毎の画像を撮像情報として制御手段15に出力するものである。この場合、撮像手段Cは、フロントガラスWと運転者との間で車両A内に設けられ、車両Aに搭載されるヘッドランプなどの光源に照らされる路面(走路)をフロントガラスWを介して撮像できるような向きに設置される。
【0022】
制御手段15は、マイクロコンピュータを適用でき、処理動作のプログラムが記憶されたROMと、演算値を一時的に記憶するRAMと、予め設定される各種設定値を記憶するEEPROMと、前記プログラムを実行するためのCPUと、速度センサ10、GPS装置11、ジャイロセンサ12、記憶媒体13、操作手段14、撮像手段Cや、後述する表示駆動回路16に対して電気的な接続関係をなすための入出力インターフェイス回路と、によって主に構成される。制御手段15は、各機構(10〜14)からの入力および前記プログラムに基づいて、後述する表示駆動回路16に制御信号を出力し、表示器2に所望の表示を促すものである。
【0023】
表示駆動回路16は、表示器2に表示用の信号を与えるための回路であり、ICまたはLSIにて構成される。表示駆動回路16は、制御手段15からの信号に基づいて所定の表示を行うように表示器2を駆動制御するものである。
【0024】
表示器2は、TFT型の液晶表示素子およびバックライト手段からなり、表示像Lを発するように表示駆動回路16に駆動制御される。表示器2は、表示駆動回路16によって、走路形状画像など所望の表示形態を表示像LとしてフロントガラスWに投影するものである。
【0025】
以上の構成によって、制御手段15は、速度センサ10、GPS装置11、ジャイロセンサ12から構成される位置検出手段17の信号に基づいて、車両位置座標および車両の向きを算出し、この車両の前方側(進行方向側)に対応する走路形状を、記憶媒体13に格納されたデジタルマップデータに基づいて、表示駆動回路16を介して、表示器2に投影表示させることができる。また、撮像手段Cによって、外界の景色(車両Aの前方側の景色)を撮像情報として得ることができる。
【0026】
次に、制御手段15による表示像Lの描画に関して、図4、5を用いて説明する。
【0027】
図4は、制御手段15による処理を示すものである。図5は、車両Aの前方側の走路形状を表示像Lとして、表示ユニット1にてフロントガラス面に投影して表示する表示画面の例を示すものである。
【0028】
制御手段15は、位置検出手段17からの信号や、撮像手段Cからの撮像情報をそれぞれ入力する(ステップS1)。この際、制御手段15は、撮像手段Cからの撮像情報において、運転者の視点Dから見える虚像Vの延長線上の外界の景色部分(表示像Lの背景部分B)の画像、あるいはその近傍部分の画像を抽出して読み取る。この場合、制御手段15は、表示像Lの背景部分となる走路の路面の画像を抽出して読み取る。
【0029】
制御手段15は、ステップS1にて入力した位置検出手段17からの信号に基づいて、車両位置座標および車両Aの進行方向を算出する(ステップS2)。この場合、制御手段15は、GPS装置11,速度センサ10,ジャイロセンサ12によって、車両位置座標を算出する。例えば、制御手段15は、GPS装置12を用いて、時間によって変化する車両Aの軌跡を求めることによって、車両Aの車両位置座標や進行方向を算出することができる。また、制御手段15は、速度センサ10やジャイロセンサ12からの信号に基づいて、車両Aの移動幅や車体向きから車両位置座標および進行方向を算出することができる。
【0030】
次に、制御手段15は、車両位置座標に応じて視点座標を設定し、車両Aの進行方向に基づいて表示方向を設定する(ステップS3)。この場合、視点座標は、車両位置座標よりも15メートル高い位置に設定され、表示方向は、車両Aの進行方向と同じ方向に設定される。
【0031】
次に、制御手段15は、記憶媒体13に格納されたデジタルマップデータにおいて、前記視点座標および表示方向に基づいて選択される三次元の座標情報を演算することによって走路形状を描画処理する(ステップS4)。この場合、視点座標から表示方向側に300メートル以内の三次元の座標情報について演算する。また、制御手段15は、ステップS1にて撮像情報から抽出された前記画像に対して、コントラストの高い色を走路形状の表示色として設定して描画処理する。例えば、制御手段15は、表示像Lの背景部分Bとなる走路の路面が黒色である場合、白色の走路形状を描画処理する。この場合、制御手段15は、ステップS1にて抽出された画像の色(平均した色味)の補色を走路形状の表示色として設定して、コントラストの高い表示像Lを得るようにしている。
【0032】
また、制御手段15は、前記描画処理された走路形状を走路形状画像として表示器2に表示させるように促す信号を表示駆動回路16に出力する(ステップS5)。
【0033】
上述の処理を繰り返すことによって、車両Aが走行する度に更新される外界の景色に対して、コントラストの高い表示像LをフロントガラスWに投影することができる。
【0034】
かかる車両用ヘッドアップディスプレイ装置は、車両Aに搭載されるフロントガラスWに表示像Lを投影する表示器2を備え、フロントガラスWに投影される表示像Lを外界の景色と重ね合わせて表示する車両用ヘッドアップディスプレイ装置であって、前記外界の景色を撮像する撮像手段Cと、撮像手段Cによる撮像情報のうち表示像Lの背景に対応する部分あるいはその近傍部分の色に対してコントラストの高い色を表示像Lの表示色として設定し表示器2によって投影させる制御手段15と、を備えてなる。したがって、背景部分Bとなる外界の景色が変化した場合であっても、これに応じた最適な表示色を設定しながら表示像Lを投影することができるため、運転者にとって表示像Lを容易に視認できる車両用ヘッドアップディスプレイ装置となる。
【0035】
また、上述の車両用ヘッドアップディスプレイ装置において、表示器2は、フロントガラスWに投影される表示像Lが車両Aの前方下部の走路と重ね合わせて表示するように設けられ、制御手段15は、撮像手段Cによる撮像情報のうち前記走路の色に対してコントラストの高い色を表示像Lの表示色として設定し表示器2によって投影させる。したがって、車両Aが走行した場合であっても色の変化が少ない走路を背景とすることができるため、この背景色によって設定される表示像Lの表示色も変化が少なくなるため、運転者にとって表示像Lを容易に視認できる車両用ヘッドアップディスプレイ装置となる。
【0036】
なお、本発明の実施の形態においては、表示器2からの表示像Lは、コンバイナとして兼用されるフロントガラスWに投影されるものであったが、本発明における投影部材は本実施の形態に限定されるものではなく、例えば、車両のダッシュボード上に専用に設けられるコンバイナに表示器からの表示像を投影させるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態である車両用ヘッドアップディスプレイ装置の表示手段の断面図。
【図2】同上実施の形態である車両用ヘッドアップディスプレイ装置の概略図。
【図3】同上車両用ヘッドアップディスプレイ装置のブロック図。
【図4】同上車両用ヘッドアップディスプレイ装置の処理手順を示す図。
【図5】同上車両用ヘッドアップディスプレイ装置の表示画像を示す図。
【符号の説明】
【0038】
2 表示器(表示手段)
10 速度センサ(車速検出手段)
13 記憶媒体(地図情報記憶手段)
15 制御手段
17 位置検出手段
A 車両
C 撮像手段
W フロントガラス(コンバイナ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるコンバイナに表示像を投影する表示手段を備え、前記コンバイナに投影される前記表示像を外界の景色と重ね合わせて表示する車両用表示装置であって、
前記外界の景色を撮像する撮像手段と、前記撮像手段による撮像情報のうち前記表示像の背景に対応する部分あるいはその近傍部分の色に対してコントラストの高い色を前記表示像の表示色として設定し前記表示手段によって投影させる制御手段と、を備えてなることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記車両の現在位置を検出する位置検出手段を設けてなり、前記制御手段は、前記位置検出手段により検出された前記車両の現在位置に基づいて地図情報記憶手段に格納された三次元情報からなる地図情報を読み出して前記車両の前方側の走路形状を前記表示像として投影させることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記表示像の背景に対応する部分あるいはその近傍部分の色に対して、補色を前記表示像の表示色として設定してなることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記表示手段は、前記コンバイナに投影される前記表示像が前記車両の前方下部の走路と重ね合わせて表示するように設けられ、前記制御手段は、前記撮像手段による撮像情報のうち前記走路の色に対してコントラストの高い色を前記表示像の表示色として設定し前記表示手段によって投影させることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−36166(P2006−36166A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−223450(P2004−223450)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】