説明

車両用表示装置

【課題】簡単な操作で学習燃費をリセットすることを可能にする車両用表示装置を提供する。
【解決手段】過去の燃料消費量および走行距離とから求めた学習燃費と、車両の燃料残存量とを用いて、現時点を基準とする航続可能距離を算出する車両用表示装置であって、学習燃費を予め定めた第2イニシャル燃費の値にリセットするリセットスイッチ手段7を有する。また、車両に搭載されたバッテリ13が、車両用表示装置に非接続の状態から接続状態に切り替わったときに、学習燃費を予め設定された第1イニシャル燃費の値にリセットする手段を有する。リセットスイッチ手段7やバッテリ13でリセットされたときには、第1または第2イニシャル燃費にリセットしてからの学習燃費を用いて、航続可能距離を算出して表示する表示装置6を有する。第1イニシャル燃費と第2イニシャル燃費は同じ値でもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料の残量から予想できる航続可能距離を算出して表示する車両用表示装置に関し、特に航続可能距離の算出に使用されている学習燃費を簡単な操作でイニシャル燃費にリセットする機能を持った車両用表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の燃費に対する社会的意識が向上しており、自動車メータに表示される車両情報にも燃費関係の情報が増える傾向にある。その一つに航続可能距離情報があり、航続可能距離は学習燃費(過去の消費燃費を元に算出)と現在の燃料残量を元に算出される仕組である。
【0003】
航続可能距離を算出する為に用いられる学習燃費は、車載電源となるバッテリを車両から切り離したOFF状態から、バッテリを車両に接続したON状態とした時は、過去のデータが無いため、イニシャル燃費(カタログ燃費を元に設定された燃費)に初期設定され、それ以降は、ドライバーが実際に走行した結果に基づく燃費をフィードバックして学習していく仕組を取っている。
【0004】
これにより、燃費の実績が蓄積されるに従い、運転初期のイニシャル値は、実際の燃費に近づくようになっている。但し、何らかの原因で学習燃費が異常になった場合、学習燃費を訂正する仕組はなく、バッテリを車両から外すしか現時点で方法は無い。
【0005】
航続可能距離の算出を行うものとして、特許文献1が知られている。特許文献1では、燃料タンク内の燃料残存量が燃料センサによって計測される。また、電子式燃料噴射装置における噴射弁の開閉パルスから燃料消費量が求められる。更に、走行距離センサで走行距離が計測される。
【0006】
そして、1リットルの燃料消費量毎に走行した走行距離を求めて、記憶している。演算回路は、残燃料と同等量の過去の燃料消費量に対応する走行距離を記憶装置から読みとり、この読み取った走行距離を現時点からの航続可能距離として表示装置に出力している。
【0007】
例えば、残燃料が12.5リットルであれば、過去12リットルの残燃料で走行したときの走行距離を記憶装置から読み出し、この読み取った走行距離を現時点からの航続可能距離として表示装置に出力している。従って、過去の走行距離データによって表示装置に出力される内容が変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭61−277019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、現在、学習燃費はバッテリを切らないとリセットせず、バッテリを切ってリセットさせると、時計調整から再設定が必要になる。このため、バッテリを切ってリセットするのは非常にわずらわしい。
【0010】
一方で、学習燃費が意図しない原因により異常な値になった場合、例えば車両を他人に貸した後とか、特殊な走行ルートで走行した後とかでは、学習燃費をリセットしたい場合が多い点に発明者は着目した。また、レンタカー会社が車両を顧客に貸し出す際、前回レンタルした運転者の学習燃費をリセットすることで、使用感のない状態で貸し出しが可能になる点にも発明者は着目した。
【0011】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点、および着眼点に着目して成されたものであり、その目的は、バッテリを切らなくても、簡単なボタン操作で学習燃費をリセットすることを可能にする車両用表示装置を提供することにある。
【0012】
従来技術として列挙された特許文献の記載内容は、この明細書に記載された技術的要素の説明として、参照によって導入ないし援用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記目的を達成するために、下記の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、車両における燃料消費量および車両の走行距離から求めた学習燃費と、車両の燃料タンク内の燃料残存量とを用いて、航続可能距離を算出して表示する車両用表示装置であって、算出された航続可能距離を表示する表示手段と、車両の乗員により操作されるリセットスイッチ手段と、車両のバッテリが、表示手段との接続を解除された状態から接続された状態に切り替えられたときに、予め設定された第1イニシャル燃費を最新の学習燃費に初期設定する第1初期設定手段と、リセットスイッチ手段が操作されたときに、予め設定された第2イニシャル燃費を最新の学習燃費に初期設定する第2初期設定手段と、最新の学習燃費を用いて、表示手段に表示する航続可能距離を算出する航続可能距離算出手段と、を備えたことを特徴としている。
【0014】
この発明によれば、車両からバッテリをはずして、また、バッテリを車両に接続するという面倒な作業をしなくても、リセットスイッチ手段の操作により、簡単に、それまでに学習してきた学習燃費を第2イニシャル燃費に切り替えることができる。従って、通常時は、それまでの学習成果を反映した最新の学習燃費を用いて航続可能距離を算出することができる。
【0015】
一方、車両の乗員の操作により、リセットスイッチ手段がリセット操作されたときには、予め定めた第2イニシャル燃費を用いて、航続可能距離を算出することができる。従って、学習燃費が意図しない原因により異常な値になった場合、例えば車両を他人に貸した後とか、特殊な走行ルートで走行した後とかにおいて、学習燃費を簡単に第2イニシャル燃費にリセットできるため、そのときの乗員に適合した正しい航続可能距離を表示することができる。また、レンタカー会社が車両を顧客に貸し出す際、前回レンタルした乗員の学習燃費をリセットすることで、使用感のない状態で貸し出しが可能になる。
【0016】
イニシャル燃費は第1イニシャル燃費と第2イニシャル燃費の少なくとも2種類存在するから、それぞれの場合に応じて、第1イニシャル燃費と第2イニシャル燃費とを同じ値、または、異なる値に設定することが可能になる。
【0017】
請求項2に記載の発明では、リセットスイッチ手段が操作されたときに、表示手段により、リセットスイッチ手段が操作されたことを表示することを特徴としている。
【0018】
この発明によれば、リセットスイッチ手段が操作されたときに、第2イニシャル燃費を最新の学習燃費に初期設定したことを示す表示が行われるから、乗員に学習燃費がリセットされたことを明確に知らせることができる。
【0019】
請求項3に記載の発明では、リセットスイッチ手段は、区間走行距離を表示するトリップメータに表示された区間走行距離をゼロにリセットするリセットスイッチで構成されていることを特徴としている。
【0020】
この発明によれば、表示された区間走行距離をゼロにリセットするたびに、予め定めた第2イニシャル燃費を最新の学習燃費に初期設定することができるので、例えば、燃料タンクが燃料で最大量満たされた状態後、同じ距離を走行した過去の区間と今回の区間との間で航続可能距離を比較することができる。また、レンタカー会社が車両を顧客に貸し出す際、前回レンタルした乗員の学習燃費と区間走行距離とを両方共リセットすることで、今まで以上に、使用感のない状態で貸し出しが可能になる。
【0021】
請求項4に記載の発明では、燃料タンクが燃料で最大量満たされているときにおける学習燃費を記憶する記憶手段を備え、第2初期設定手段により予め設定された第2イニシャル燃費を最新の学習燃費に初期設定するときの第2イニシャル燃費は、過去の燃料タンクが燃料で最大量満たされたときにおける学習燃費からなることを特徴としている。
【0022】
この発明によれば、リセットスイッチ手段がリセット操作されたときに、第2イニシャル燃費としての過去の燃料タンク最大燃料量時における学習燃費を、最新の学習燃費に初期設定してから、航続可能距離を算出するため、カタログ等に記載された車両の代表的な燃費に戻って航続可能距離を算出する場合と比較して、学習燃費が意図しない原因により異常な値になった場合の影響を排除しつつ、それまでの学習成果を反映して、航続可能距離を表示することができる。例えば、旅行に出る場合に燃料タンクを最大燃料量状態にすることが多いが、特殊な山道を長時間走行して学習燃費が極端に悪化した状態を元に戻したい場合に、前回の燃料タンクを最大燃料量にした状態時の学習燃費を、リセットスイッチ手段がリセット操作されたときの第2イニシャル燃費とすることにより、乗員の運転特性を反映した航続可能距離の表示が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態を示す車両用計器板の正面図である。
【図2】上記実施形態における車両用表示装置のブロック構成図である。
【図3】上記実施形態におけるメータ演算装置内で実行される航続可能距離表示のためのフローチャートである。
【図4】本発明の第2実施形態を示す車両用計器板の正面図である。
【図5】本発明の第2実施形態における車両用表示装置のブロック構成図である。
【図6】本発明の第3実施形態における記憶装置のメモリの状態を模式的に示した表である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。
【0025】
各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0026】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1乃至図3を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態を示す車両用計器板の正面図である。車両用計器板1はメータフード2内部の表示板3上に車速計4、エンジン回転計5等の計器が取り付けられている。6は、ドットマトリクスを使用して多種類情報のディジタル表示を行う液晶表示装置(LCD)から構成された表示装置(マルチディスプレイ)である。
【0027】
この表示装置6内には航続可能距離が400kmであることが表示されている。また、表示装置6内の表示画像のRの文字表示は、学習燃費がイニシャル燃費にリセットされたことを示しており、所定時間後に消えるものである。また、この表示装置6の画面をタッチすることにより、トリップメータやオドメータや時計表示に表示内容を切り替えることができるマルチディスプレイとなっている。7はリセットスイッチ手段をなす棒状の操作スイッチである。
【0028】
図2は、この第1実施形態における車両用表示装置のブロック構成図である。表示板3の裏側である車両進行方向側にはメータ用のマイクロコンピュータからなるメータ用演算装置10が搭載されている。
【0029】
このメータ用演算装置10には、リセットスイッチ手段7を構成する棒状の操作スイッチからの信号、燃料タンク11内の燃料残存量を示す信号、およびエンジン制御装置12からの走行距離を示す信号、バッテリ13からの信号等が接続されている。また、メータ用演算装置10から表示装置6に表示信号が供給されている。なお、トリップメータは、この実施形態では表示装置6の中に組み込まれている。
【0030】
図3は、メータ演算装置10内で実行される航続可能距離表示のためのフローチャートである。図3において、定期的なインターバルで制御が開始されると、ステップS10において、図2のバッテリ13からの電源電圧が無い状態から、バッテリ13からの電源電圧がある状態に切り替わったか否かが判断される。
【0031】
バッテリ13が車両からはずされた状態から、バッテリ13が車両に電気的に接続された状態に切り替わり、バッテリ13からの電源電圧が無い状態からバッテリ13からの電源電圧がある状態に切り替わっっていると、YESと判断され、ステップS11に進む。
【0032】
ステップS11では、第1イニシャル燃費を学習燃費をに初期設定する。なお、第1イニシャル燃費とは、この第1実施形態においては、車両のカタログ等に記載された代表的な燃費である。一方、ステップS10において、バッテリ13が車両からはずされた状態からバッテリ13が接続された状態に切り替わっていないとき、例えば、バッテリ13の接続状態に変化が無かったときはNOと判断され、ステップS12に進む。
【0033】
ステップS12においては、学習燃費を演算して更新するために、学習燃費を運転実績から演算する。この学習燃費の演算は、種々の方法を採用することができるが、例えば、次のようにして行う。
【0034】
図2の燃料タンク11内の、図示しない燃料センサにより燃料残存量を計測する。また、エンジン制御装置12からは、エンジンの燃料消費量を計測した情報が、メータ用演算装置10に入力される。この燃料消費量は、図示しない電子式燃料噴射装置における噴射弁の開閉パルスから求められる。また、エンジン制御装置12からは、走行距離を計測する走行距離センサからの情報がメータ用演算装置10に入力される。
【0035】
そして、燃料残存量が所定量、例えば1リットル減少する毎に、走行した距離を距離センサからの計測値により求め、メータ用演算装置10に接続された記憶装置15のメモリに順次記憶しておく。
【0036】
この燃料残存量が所定量減少する毎に求めた距離センサからの計測値が、学習燃費を表している。記憶装置15には、所定燃料消費量毎の走行距離データが、順序をもって記憶されている。また、この記憶された値は、次の満タン時における走行実績で更新される。この更新の時には、前回までの平均値を記憶してもよい。
【0037】
次に、図3のステップS13において、図1の棒状の操作スイッチからなるリセットスイッチ手段7からの信号があったか否か、つまり、リセットスイッチ手段7がONされたか否かを判定する。リセットスイッチ手段7がONされていない場合は、NOと判断されて、ステップS14に進み、最新の学習燃費で航続可能距離を算出し、この算出された値を図1の表示装置6で表示する。
【0038】
この最新の学習燃費での航続可能距離の算出は、次のようにして実行される。例えば、燃料残存量が12.5リットルであれば、小数点以下を切り捨てた燃料残存量12リットルのときの走行距離データを記憶装置15(図2)から読み出す。次に、この記憶装置15から読み出した最新の所定燃料消費量毎の走行距離データからなる学習燃費と、燃料残存量とから、航続可能距離を算出する。そして算出された航続可能距離が、表示装置6に表示される。
【0039】
ステップS13において、リセットスイッチ手段7がONされている場合は、ステップS15において、第2イニシャル燃費である、その車両の代表的な運転での、所定燃料消費量毎の走行距離データ(カタログ値等)を最新の学習燃費に初期設定した上で、ステップS14の航続可能距離が算出され、この算出された値が図2の表示装置6で表示される。
【0040】
このように、この第1実施形態では、第1イニシャル燃費と第2イニシャル燃費は同じ値としており、車両からバッテリ13をはずして、再び、バッテリ13を車両に接続するという面倒な作業をしなくても、リセットスイッチ手段7の操作により、簡単に、それまでに学習してきた学習燃費をイニシャル燃費に切り替えることができる。従って、通常時は、それまでに学習してきた学習燃費のうちの、最新の学習燃費を用いて、航続可能距離を算出することができる。
【0041】
一方、車両の乗員の操作により、リセットスイッチ手段7がリセット操作されたときには、予め定めたイニシャル燃費を用いて、航続可能距離を算出することができる。従って、学習燃費が意図しない原因により異常な値になった場合、例えば車両を他人に貸した後とか、特殊な走行ルート(山道等)で走行した後とかにおいて、学習燃費を簡単にイニシャル燃費にリセットできる。
【0042】
従って、そのときの乗員にあった正しい航続可能距離を表示することができる。また、レンタカー会社が車両を顧客に貸し出す際、前回レンタルした乗員の学習燃費をリセットすることで、使用感のない状態で貸し出しが可能になる。
【0043】
また、リセットスイッチ手段7が操作されたときに、イニシャル燃費にリセットしたことを示す表示が、図1のように、表示装置6の表示画面に、「R」の文字で表示される。この表示は所定時間継続するから、乗員は、学習燃費がリセットされたことを知ることができる。なお、第1イニシャル燃費と第2イニシャル燃費とを異なる値とすることもできる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以降の各実施形態においては、上述した第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成および特徴について説明する。図4は、本発明の第2実施形態を示す車両用計器板の正面図である。図5は、第2実施形態における車両用表示装置のブロック構成図である。
【0045】
この第2実施形態では、図4および図5のように、航続可能距離を表示する表示装置6に隣接して、区間走行距離を表示するトリップメータ14が配置されている。また、トリップメータ14の表示数値をゼロにリセットするトリップメータ用リセットスイッチ7aが航続可能距離を算出するためのリセットスイッチ手段と兼用されている。そして、図5のように、トリップメータ用リセットスイッチ7aの信号がメータ用演算装置10に入力されている。
【0046】
図4において、トリップメータ14の表示は、前回トリップメータ用リセットスイッチ7aをON操作したときからの走行距離である142kmを表示している。そして、トリップメータ用リセットスイッチ7aがON操作されると、トリップメータ14の142kmの表示は0kmにリセットされる。
【0047】
そして、このトリップメータ用リセットスイッチ7aがON操作されると、航続可能距離を表示するための図3で援用するフローチャートのステップS13におけるリセットスイッチがONされたものとして扱われ、学習燃費は、イニシャル燃費にリセットされる。そして、このイニシャル燃費を基にして航続可能距離が算出され、表示される。
【0048】
このように、第2実施形態においては、トリップメータ14の表示数値をゼロにリセットするトリップメータ用リセットスイッチ7aが、航続可能距離を算出するためのリセットスイッチ手段と兼用されているため、表示された区間走行距離をゼロにリセットするたびに、学習燃費を、予め定めたイニシャル燃費にリセットすることができる。
【0049】
従って、同じ距離を走行するたびに、前回の区間と今回の区間との間で、航続可能距離を比較し実感することができる。例えば、同じ目的地に定期的に行く乗員にとっては、燃料タンクに燃料を満タンにしてから、トリップメータを0kmに設定して出発すると、走行距離を所定量重ねる毎の、航続可能距離を前回の区間での航続可能距離のメモまたは記憶した値と比較することができる。
【0050】
また、レンタカー会社が車両を顧客に貸し出す際、前回レンタルした乗員の学習燃費と区間走行距離とを両方共同時にリセットすることで、リセットし忘れがなく、今まで以上に、使用感のない状態で貸し出しが可能になる。
【0051】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。上述した実施形態と異なる特徴部分を説明する。図6は、本発明の第3実施形態における記憶装置のメモリの状態を模式的に示した表である。
【0052】
例えば、燃料が50リットル入る燃料タンク11(図2)では、燃料タンクが最大燃料量で満たされた時(満タン時)から1リットル減少するまでの走行距離データが、第1メモリ領域M1の50のアドレスに、例えば11.6kmとして格納されている。また、この満タン時における走行距離データは、満タン時のときの走行距離データのみを格納した第2メモリ領域M2の1番目のアドレスにも格納されている。
【0053】
上記第1実施形態では、リセットスイッチ手段7をONしたときに、学習燃費を第2イニシャル燃費とし、この第2イニシャル燃費は、カタログ等に明記された代表的な値とした。しかし、この第3実施形態では、リセットスイッチ手段7をONしたときに、前回の満タン時の学習燃費の記憶値である第2メモリ領域M2の2番目のアドレスに格納された12.3を、第2イニシャル燃費として設定している。なお、所定時間の間にリセットスイッチ手段を2回ONしたときには、前々回の満タン時の学習燃費の記憶値である10.8を第2イニシャル燃費として設定している。
【0054】
これによれば、リセットスイッチ手段7がリセット操作されたときに、第2イニシャル燃費として、前回の燃料タンク満タン時における学習燃費を用いて、航続可能距離を算出することができる。
【0055】
このため、車両のカタログ等に記載された代表的な燃費に戻って、航続可能距離を算出する場合と比較して、学習燃費が意図しない原因により異常な値になった場合の影響を排除しつつ、それまでの学習成果をある程度考慮した学習燃費を用いて、航続可能距離を表示することができる。
【0056】
例えば、旅行に出る場合に満タン状態にすることが多いが、特殊な山道を長時間走行して学習燃費が極端に悪化した状態を元に戻したい場合に、前回の満タン時の学習燃費を、リセットスイッチ手段がリセット操作されたときのイニシャル燃費とすることにより、より同じ乗員の運転特性を反映した航続可能距離の表示が可能になる。また、乗員の数が同じ前々回の満タン時の学習燃費(第2メモリ領域M2の3番目のアドレスの10.8)を採用するといったことも可能になる。
【0057】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。例えば、上述の第1実施形態では、リセットスイッチ手段7は、機械的に位置を記憶するスイッチを使用したが、ONするたびに復帰する手動操作自動復帰型のスイッチを使用するときは、ONするたびに信号が反転するフリップフロップ回路で記憶されたスイッチ信号の値を利用して、リセットスイッチがONされたか否かを判断してもよい。
【0058】
また、リセットスイッチ手段として、表示装置6内のタッチスイッチを使用することもできる。また、リセットスイッチ手段となるタッチスイッチを、ダッシュボードの車両用計器板以外の場所に置かれたナビゲータ用ディスプレイにおいて計器設定モードの表示画像におけるタッチスイッチとして構成することもできる。
【0059】
また、第3実施形態では、第2イニシャル燃費をカタログ等に記載された代表的燃費とせずに、第2メモリ領域M2に記憶された燃費としたが、バッテリが非接続の状態から接続された時のイニシャル燃費は、カタログ等に記載された代表的な値としてもよい。すなわち、リセットスイッチ手段でリセットするときの第2イニシャル燃費と、バッテリの接続でリセットするときの第1イニシャル燃費とは、同じ値であっても異なる値であってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 車両用計器板
3 表示板
4 車速計
6 表示装置
7 リセットスイッチ手段を成すリセットスイッチ
10 メータ用演算装置
11 燃料タンク
12 エンジン制御装置
13 バッテリ
14 トリップメータ
15 記憶装置
7a トリップメータ用リセットスイッチ
M1 第1メモリ領域
M2 第2メモリ領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両における燃料消費量および前記車両の走行距離から求めた学習燃費と、前記車両の燃料タンク内の燃料残存量とを用いて、航続可能距離を算出して表示する車両用表示装置であって、
算出された前記航続可能距離を表示する表示手段と、
前記車両の乗員により操作されるリセットスイッチ手段と、
前記車両のバッテリが、前記表示手段との接続を解除された状態から接続された状態に切り替えられたときに、予め設定された第1イニシャル燃費を最新の前記学習燃費に初期設定する第1初期設定手段と、
前記リセットスイッチ手段が操作されたときに、予め設定された第2イニシャル燃費を前記最新の前記学習燃費に初期設定する第2初期設定手段と、
前記最新の前記学習燃費を用いて、前記表示手段に表示する前記航続可能距離を算出する航続可能距離算出手段と、を備えたことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記リセットスイッチ手段が操作されたときに、前記表示手段により、前記リセットスイッチ手段が操作されたことを表示することを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記リセットスイッチ手段は、区間走行距離を表示するトリップメータに表示された前記区間走行距離をゼロにリセットするリセットスイッチで構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記燃料タンクが燃料で最大量満たされているときにおける前記学習燃費を記憶する記憶手段を備え、
前記第2初期設定手段により予め設定された第2イニシャル燃費を前記最新の前記学習燃費に初期設定されたときの前記第2イニシャル燃費は、過去の前記燃料タンクが燃料で最大量満たされたときにおける学習燃費からなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−158269(P2012−158269A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20006(P2011−20006)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】