説明

車両異常配信装置

【課題】 車両異常の情報を効率よく配信する。
【解決手段】振動センサ141a,141bと、音響センサ142と、複数のカメラ140fo,140ro,140fi,140riと、装置本体100とを備える。装置本体100は、各センサのそれぞれの各種出力パターンの組合せと各種車両異常内容のうちのいずれかの内容とが関係付けられている異常パターンテーブル121と、車両異常内容毎の送信先及び一以上の送信情報種が記憶されている通信情報テーブル122と、異常パターンテーブル121を参照して各センサからの出力から異常内容を判定する異常内容判定部111と、通信情報テーブル122を参照して、異常内容に応じた送信先及び送信情報種を定め、無線通信装置128で、該当送信先へ該当送信情報を送信させる通信制御部112と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられ、当該車両の異常を外部に配信する車両異常配信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両異常配信装置としては、例えば、以下の特許文献1,2に記載されているものがある。
【0003】
特許文献1に記載の車両異常配信装置は、車両の外部に4台のカメラが設けられ、これらのカメラで撮像された映像をリアルタイムに無線で外部の映像蓄積装置へ送信するものである。この映像を必要とするユーザ、例えば、警察や保険会社は、この映像蓄積装置に蓄積された映像を取得し、この映像を車両異常の解析等に用いている。
【0004】
また、特許文献2に記載の車両異常配信装置は、車内を撮像するスチルカメラと、車内への人の侵入を検知する人体検知センサとを備え、人体検知センサで人の侵入が検知されると、スチルカメラで侵入者を撮像し、この静止画を記録媒体に格納する一方で、人の侵入を無線で特定の情報利用者(車両所有者)に通知する、というものである。
【0005】
【特許文献1】特開2005−269256号公報
【特許文献2】特開2001−338378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、いずれの従来技術でも、車両異常の種類に関係なく一律に、情報利用者に情報を送っているため、ある種の車両異常に関しては、ある情報利用者にとって情報の配信が不要である場合があり、効率よく情報を配信することができないという問題点がある。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、車両異常の情報を効率よく配信することができる車両異常配信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記問題点を解決するための車両異常配信装置に係る発明は、
無線通信手段を備え、車両異常を該無線通信手段で外部に配信する車両異常配信装置において、
車両環境を検知する性能の異なる複数のセンサと、
複数の前記センサのそれぞれの各種出力パターンの組合せと各種車両異常内容のうちのいずれかの内容とが関係付けられて記憶されている異常パターン記憶領域と、
複数の前記センサのそれぞれの出力パターンが、前記異常パターン記憶領域に記憶されているいずれかの出力パターンの組合せに対応するか否かを判断して、車両異常内容を定める異常内容判定手段と、
車両異常内容毎の送信先情報が記憶されている通信情報記憶領域と、
前記異常内容判定手段により車両異常内容が定められると、前記通信情報記憶領域を参照して送信先情報を取得し、前記無線通信手段により、該送信先情報が示す送信先へ該車両異常内容に関する情報を送信させる通信制御手段と、
を備えていることを特徴とする。
【0009】
また、前記問題点を解決するための他の車両異常配信装置に係る発明は、
無線通信手段を備え、車両異常を該無線通信手段で外部に配信する車両異常配信装置において、
車両状況を撮像するカメラと、
車両環境を検知する性能の異なる複数のセンサと、
複数の前記センサのそれぞれの各種出力パターンの組合せと各種車両異常内容のうちのいずれかの内容とが関係付けられて記憶されている異常パターン記憶領域と、
複数の前記センサのそれぞれの出力パターンが、前記異常パターン記憶領域に記憶されているいずれかの出力パターンの組合せに対応するか否かを判断して、車両異常内容を定める異常内容判定手段と、
車両異常内容毎の、前記カメラによる映像を送信情報種の一種とした、一以上の送信情報種、及び車両異常内容毎の送信先が記憶されている通信情報記憶領域と、
前記異常内容判定手段により車両異常内容が定められると、前記通信情報記憶領域を参照して送信先及び一以上の送信情報種を定め、送信先に応じた1以上の送信情報種の各情報を含む送信情報を合成して、前記無線通信手段により、該送信先へ該送信情報を送信させる通信制御手段と、
を備えていることを特徴とする。
【0010】
ここで、以上の車両異常配信装置は、
カメラと、該カメラで撮像された映像を記憶する映像記憶領域を備え、
前記通信制御手段は、前記異常内容判定手段により車両異常内容が定められると、前記映像記憶領域に記憶されている映像のうち、該車両異常内容が定められたときから予め定められた時間前の時点から、該車両異常内容が定められたときから予め定められた時間後の時点までの映像を、前記無線通信手段により、該車両異常内容に応じた前記送信先情報が示す送信先へ送信させる、ものであることが好ましい。
【0011】
以上の車両異常配信装置に係る発明によれば、車両異常の種類に応じて、送信先を変えているので、送信先である情報利用者は、無用な情報を受け取る必要がなくなる。つまり、本発明では、車両異常に関する情報を効率よく各情報利用者に効率よく配信することができる。
【0012】
さらに他の車両異常配信装置に係る発明は、
無線通信手段を備え、車両異常を該無線通信手段で外部に配信する車両異常配信装置において、
専ら車両外部の映像を撮像する第一の車外カメラと、
前記第一の外映像カメラが撮像する撮像範囲とは異なる車両外部を専ら撮像する第二の車外カメラと、
前記第一の車外カメラ又は前記第二の車外カメラの撮像範囲の少なくとも一部と、該第一の車外カメラ及び該第二の車外カメラの撮像範囲外の一部と、車両内部の映像を撮像する車内カメラと、
前記第一の車外カメラと前記第二の車外カメラと前記車外カメラとで撮像された映像を前記無線通信手段で外部に送信させる通信制御手段と、
を備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、車内カメラで、車外カメラの撮像範囲外を撮像することで、車内及び車外を撮像することができると共に、少ないカメラ台数で死角を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る車両異常配信装置の一実施形態について、図面を用いて説明する。
【0015】
本実施形態の車両異常配信装置1は、図1に示すように、車両200の状況を撮像する複数のカメラ140fo,140ro,140fi,140riと、二つの振動センサ141a,141bと、音響センサ142と、これらカメラによる映像データやセンサからの信号が入力する装置本体100と、モニタ等の入出力装置130と、これらに供給する電力を蓄えるソーラーバッテリ131と、を備えている。
【0016】
装置本体100には、車両200に設けられているGPSセンサ243からの信号も入力するようになっている。さらに、車両バッテリ231に蓄えられた電力も供給されるようになっている。
【0017】
複数のカメラ140fo,140ro,140fi,140riは、いずれも、撮像視野角が120°で、これらのうちの一台のカメラ140foが車両外前面に設けられ、これらのうちの他の一台のカメラ140roが車両外後面に設けられ、これらのうちのさらに他の一台のカメラ140fiが車両内後面に前方を向くように設けられ、これらのうちの残り一台のカメラ140riが車両内前面に後方を向くように設けられている。
【0018】
二つの振動センサ141a,141bうちの一の振動センサ141aは、振幅検知レンジが狭いものの、分解能が高い小振動用で、他の振動センサ141bは、振動検知レンジが広いものの、分解能が低い大振動用である。
【0019】
装置本体100は、各種演算処理を行うCPU110と、CPU110のワークエリア等になるRAM115と、CPU110が実行するプログラムや各種データが予め記憶されているROM116と、各センサからの信号が入力するセンサインタフェース117と、各カメラからの映像データが入力するカメラインタフェース118と、モニタ等の入出力装置130のインタフェース119と、各種データが記憶されるハードディスク装置等の記憶装置120と、外部と無線通信するための無線通信装置128と、ソーラーバッテリ131や車両バッテリ231からの電力を以上の各部へ配電する電源回路129と、を備えている。
【0020】
CPU110は、機能的に、車両異常の内容を判定する異常内容判定部111と、送信情報を合成して所定の送信先へ送信情報を無線通信装置128に無線送信させる通信制御部112と、入出力装置130の入出力を制御する入出力制御部113と、現日時を出力する時計部114と、を有している。これら各機能部は、いずれも、ROM116に記憶されているプログラムをCPU110が実行することで機能する。
【0021】
記憶装置120には、各センサ141a,141b,142のそれぞれの出力パターンの組合せと各種車両異常内容とのうちのいずれかの内容とが関係付けられている異常パターンテーブル121と、車両異常内容毎の送信先及び一以上の送信情報種等が格納される通信情報テーブル122と、各カメラ140fo,140ro,140fi,140riで撮像された映像が例えば3時間分格納される映像記憶領域123と、が設けられている。
【0022】
異常パターンテーブル121には、図2に示すように、各種車両異常内容として、車上あらし、コイン等による車体傷付け、パンクいたずら、対物/車両事故、対人事故等の項目が設定されており、各項目毎に、各センサ141a,141b,142のそれぞれの出力パターンの組合せが格納されている。例えば、車上あらしに関しては、大振幅用振動センサ141bからの出力が微小で、小振幅用振動センサ141aからの出力が不規則で継続的で、音響センサ142からの出力が、aカギ抉じ開け音、bガラス割れ音、プラスチック破損音、cネジ回し音のいずれか又はこれらの組合せ音、の組合せパターンとして格納されている。また、対物/車両事故に関しては、大振幅用振動センサ141bからの出力が急峻で大きな振幅で、音響センサ142からの出力が金属等の硬質物への衝突音、の組合せパターンとして格納されている。
【0023】
なお、例えば、車両あらしの場合、各振動センサ141a,141bからの出力に関しては、例えば、時間及び振幅をパラメータとして、車上あらしとして想定されえる各種振動パターンが格納され、音響センサ142からの出力に関しては、時間、振幅及び周波数をパラメータとして、カギ抉じ開け音等として想定される各種音響パターンが格納されている。
【0024】
通信情報テーブル122としては、図3に示すように、送信先情報テーブル122aと、所有者情報テーブル122bと、車両番号テーブル122cと、保険番号テーブル122dとがある。これらの各テーブル122a〜dのデータは、基本的に、ユーザによる初期設定処理で入力される。
【0025】
送信先情報テーブル122aには、各種異常内容が予め設定されている異常内容欄と、各送信先が入力される送信先欄と、どのような情報種を送信すべきかが入力される送信情報種欄とがある。異常内容欄には、前述した異常パターンテーブル121の各種車両異常内容が予め設定されている。送信先欄には、ユーザによる初期設定処理により、送信先名及びその通信アドレスが入力される。例えば、同図の例では、ユーザにより初期設定処理で、警察、保険会社、自宅のパーソナルコンピュータ、自携帯電話、配偶者や親等の近親者の携帯電話のそれぞれに関して、送信先名及びその通信アドレスが入力されている。送信情報種欄には、ユーザによる初期設定処理により、異常内容及び送信先毎に、各種送信情報種が入力される。
【0026】
送信情報種としては、a:異常内容を示す文字情報、b:映像、c:日時、d:車両の位置情報、e:車両番号、f:保険番号、g:所有者情報があり、これらの項目は予め設定されており、ユーザは、初期設定処理の際に、これらの項目のうちのいずれかを送信情報種欄に入力する。
【0027】
例えば、同図の例では、車両異常内容が「車上あらし」の場合、送信先が「警察」のときには、ユーザによる初期設定処理で、a:異常内容を示す文字情報、b:映像、c:日時、d:車両の位置情報、e:車両番号、g:所有者情報、つまりf:保険番号を除く全ての情報種が入力されている。また、送信先が「自宅パソコン」のときには、ユーザによる初期設定処理で、a:異常内容を示す文字情報、b:映像、c:日時、が入力され、送信先が「自携帯電話」のときには、ユーザによる初期設定処理で、a:異常内容を示す文字情報、c:日時、d:車両の位置情報、e:車両番号、f:保険番号、g:所有者情報が入力される。一方、送信先が「保険会社」や「近親者携帯電話」のときには、いずれの送信情報種も入力されない。これは、保険会社との間で、車上あらしの際に保険金がおりる契約を結んでいないときに、車上あらしを保険会社に通知しても意味がないからである。また、車上あらしに関しては、近親者に通知するほどの事態でもないからである。
【0028】
また、車両異常内容が「対人事故」の場合、全ての送信先に対して、ユーザによる初期設定処理で、何らかの送信情報種が入力される。例えば、同図に示す例では、送信先が「警察」のときには、ユーザによる初期設定処理で、a:異常内容を示す文字情報、b:映像、c:日時、d:車両の位置情報、e:車両番号、g:所有者情報、つまりf:保険番号を除く全ての情報種が入力されている。また、送信先が「保険会社」のときには、ユーザによる初期設定処理で、a:異常内容を示す文字情報、b:映像、c:日時、d:車両の位置情報、e:車両番号、f:保険番号、つまりg:所有者情報を除く全ての情報種が入力されている。
【0029】
所有者情報テーブル122bには、前述の情報種のうち、所有者情報gがユーザの初期設定処理により入力される。この所有者情報テーブル122bは、所有者氏名欄、所有者住所欄、第一連絡先欄、第二連絡先欄が予め設定されており、ユーザの初期設定処理により、各欄に情報が入力される。
【0030】
車両番号テーブル122cには、前述の情報種のうち、車両番号eがユーザの初期設定処理により入力され、保険番号テーブル122dには、前述の情報種のうち、保険番号fがユーザの初期設定により入力される。
【0031】
次に、図5に示すフローチャートに従って、本実施形態の車両異常配信装置1の動作について説明する。なお、ここでは、送信先情報テーブル122a、所有者情報テーブル122b、車両番号テーブル122c、及び保険番号テーブル122dに対するユーザよる初期設定処理は終了しているものとする。
【0032】
車両異常配信装置1の電源が投入されると、この車両異常配信装置1が設置されている車両200のイグニッションキーがONになっているか否かに関わらず、基本的に、常に動作している。そこで、本実施形態では、この車両異常配信装置1の動力電源を確保するために、ソーラーバッテリ131を備え、電源回路129は、ソーラーバッテリ131から電力が供給される限り、車両バッテリ231よりも優先的にこのソーラーバッテリ131から電力を受けるようにしている。なお、ソーラーバッテリ131から電力が得られなくなった場合には、車両用バッテリ231から電力を受けることになるが、車両200のエンジンが駆動していないとき、つまり車両用バッテリ231に電力が充電されないときに、この車両用バッテリ231から電力を受け続けることは好ましくないので、車両用バッテリ231の使用に際しては一定の制限、例えば、使用時間、このバッテリ231の電圧等に関する制限を設け、この制限を越える場合には、車両用バッテリ231からの電力を受けない、つまり、車両異常配信装置1の動作を停止することが好ましい。
【0033】
この車両異常配信装置1が起動している間、各カメラ140fo,140ro,140fi,140riで撮像された映像は、記憶装置120の映像記憶領域123に格納される。この映像記憶領域123は、容量が定められているため、この容量を超える場合には、古い映像データの上に、最新の映像データが上書きされる。この映像領域123に格納される映像には、時計部114から出力された日時データが書き込まれる。また、各センサ141a,141b,142,243もいずれも起動している。これらセンサで検出されたデータは、いずれも、RAM115に一時的に格納される。
【0034】
また、この車両異常配信装置1が起動している間、異常内容判定部111は、RAM115に一時的に格納された、振動センサ141a,141b及び音響センサ142からの出力のパターンが、異常パターンテーブル121に格納されているいずれのパターンに相当するかを常時判定する(S1)。ここで、例えば、音響センサ142からの出力が、異常パターンテーブル121に格納されている「パンクいたずら」に対する「エア抜け音」の音響パターンに対して、時間、振幅、周波数のそれぞれが予め定められた範囲内に収まる場合には、「パンクいたずら」に対する「エア抜け音」の音響パターンであると判定する。
【0035】
異常内容判定部111は、いずれかの異常パターンであると判定すると、異常パターンテーブル121を参照して、この異常パターンに対応する異常内容を定める(S2)。
【0036】
異常内容が定められると、通信制御部112は、送信先情報テーブル122aを参照して、定められた異常内容に対する送信先及び送信先毎の送信情報種を特定する(S3)
例えば、ステップ2で異常内容が「車上あらし」であると定められた場合、ここでは、送信先として、警察、自宅パソコン、自携帯電話が定められる。そして、送信先の一つである警察に対しては、送信情報種として、a:異常内容を示す文字情報、b:映像、c:日時、d:車両の位置情報、e:車両番号、g:所有者情報、を定め、自宅パソコンに対しては、送信情報種として、a:異常内容を示す文字情報、b:映像、c:日時、を定める。
【0037】
通信制御部112は、続いて、送信先毎に特定された情報種の情報を含む送信情報を合成する(S4)。例えば、ステップ2で異常内容が「車上あらし」であると定められた場合、送信先の一つである警察に対しては、異常内容を示す文字情報aとして「車上あらし」、映像bとして、映像記憶領域123に記憶されている映像のうち、現時刻、正確には、異常内容が定められた時点から予め定められた一分前から、異常内容が定められた時点から予め定められた一分後までの映像、日時cとして、RAM115に格納されている異常内容が定められた時点の日時、位置情報dとして、RAM115に格納されている異常内容が定められた時点の車両の位置情報、車両番号eとして、車両番号テーブル122cに格納されている車両番号、所有者情報gとして、所有者情報テーブル122cに格納されている所有者情報、を含む送信情報が合成される。なお、ここでは、異常内容が定められた時点を基準にして、前後1分間の合計2分間の映像を配信するようにしているが、車両所有者によりこの時間を変更できるようにしてもよい。
【0038】
通信制御部112は、送信先毎の送信情報を合成すると、この送信情報を無線通信装置128に渡し、この送信情報を指定の送信先へ無線送信させる(S5)。
【0039】
以上のように、本実施形態では、車両異常の種類に応じて、送信先及び送信情報種を変えているので、送信先である情報利用者は、無用な情報を受け取る必要がなくなる。つまり、本実施形態では、車両異常に関する情報を効率よく各情報利用者に配信することができる。しかも、本実施形態では、車両異常内容を文字情報としても送信しているので、情報利用者は直ちに車両異常内容を把握することができる。さらに、本実施形態では、異常内容が定められた時点を基準にして、前後1分間の合計2分間の映像が配信されるので、特許文献1に記載の技術のように、映像をリアルタイムに常時配信するものに比べて、情報利用者は、映像から車両異常内容の把握を容易に行うことができる上に、情報利用者側のデータ記憶容量を大幅に少なくすることができる。
【0040】
また、本実施形態では、少ないカメラ140fo,140ro,140fi,140riで、死角がほどんどない車外及び車内の映像を得ることができる。例えば、車外の映像を得る場合、背景技術欄で述べた特許文献1に記載の技術では、車体の前後及び左右にそれぞれ一つずつのカメラを設けている。仮に、この技術で、車内の映像を得ようとする場合、最低でも、車内用のカメラを二台追加する必要がある。すなわち、従来技術では、死角がほとんどない車外及び車内の映像を得ようとする場合、6台のカメラが必要となる。しかしながら、本実施形態では、図4に示すように、車外前面の中央の前方を向く車外前方カメラ140foと、車外後面の中央の後方を向く車外後方カメラ140roと、車内後面の中央の前方を向く車内前方カメラ140fiと、車内前面の中央の後方を向く車内後方カメラ140riとの合計4台のカメラで、死角の少ない車外及び車内の映像を得ることができる。これは、車内前方カメラ140fiで車内の前部のほぼ全域の映像と、車内後方カメラ140riで車内の後部のほぼ全域の映像を取得することで、車内のほぼ全域の映像を得ることができると共に、車内前方カメラ140fiで、車外の前方の両側部の映像と、車内後方カメラ140riで、車外の後方の両側部の映像を得て、車外の両側方のほぼ全域の映像を得ることができるからである。
【0041】
なお、ここでは、4台のカメラを用いたが、さらに多くのカメラを用いても、逆に、例えば、車内後方カメラ140riを省いてもよく、各カメラの配置も、車外カメラの死角を車内カメラで撮像できるようにすれば如何なる配置でもよい。
【0042】
また、本実施形態では、車両異常内容として、車上あらし、車体傷付け、パックいたずら、対物/車両事故、対人事故の合計5種類の車両異常内容を設定したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、対自転車事故等を追加してもよい。また、本実施形態では、車両環境を検知するセンサとして、振動センサと音響センサとを設けたが、さらに、赤外線センサを設けてもよい。この場合、音響センサの出力と赤外線センサの出力との組合せ、又はさらに振動センサの出力との組合せで、車上あらしを判定するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る一実施形態における車両異常配信装置の構成図である。
【図2】本発明に係る一実施形態における異常パターンテーブルのデータ構成を示す説明図である。
【図3】本発明に係る一実施形態における通信情報テーブルのデータ構成を示す説明図である。
【図4】本発明に係る一実施形態における各カメラの視野を示す説明図である。
【図5】本発明に係る一実施形態における車両異常配信装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0044】
1:車両異常配信装置、100:装置本体、110:CPU、111:異常内容判定部、112:通信制御部、113:入出力制御部、114:時計部、115:RAM、116:ROM、120:記憶装置、121:異常パターンテーブル、122:通信情報テーブル、122a:送信先情報テーブル、122b:所有者情報テーブル、122c:車両番号テーブル、122d:保険番号テーブル、128:無線通信装置、129:電源回路、130:入出力装置、131:ソーラーバッテリ、140fo,140ro,140fi,140ri:カメラ、141:振動センサ、142:音響センサ、200:車両、231:車両バッテリ、243:GPSセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信手段を備え、車両異常を該無線通信手段で外部に配信する車両異常配信装置において、
車両環境を検知する性能の異なる複数のセンサと、
複数の前記センサのそれぞれの各種出力パターンの組合せと各種車両異常内容のうちのいずれかの内容とが関係付けられて記憶されている異常パターン記憶領域と、
複数の前記センサのそれぞれの出力パターンが、前記異常パターン記憶領域に記憶されているいずれかの出力パターンの組合せに対応するか否かを判断して、車両異常内容を定める異常内容判定手段と、
車両異常内容毎の送信先情報が記憶されている通信情報記憶領域と、
前記異常内容判定手段により車両異常内容が定められると、前記通信情報記憶領域を参照して送信先情報を取得し、前記無線通信手段により、該送信先情報が示す送信先へ該車両異常内容に関する情報を送信させる通信制御手段と、
を備えていることを特徴とする車両異常配信装置。
【請求項2】
無線通信手段を備え、車両異常を該無線通信手段で外部に配信する車両異常配信装置において、
車両状況を撮像するカメラと、
車両環境を検知する性能の異なる複数のセンサと、
複数の前記センサのそれぞれの各種出力パターンの組合せと各種車両異常内容のうちのいずれかの内容とが関係付けられて記憶されている異常パターン記憶領域と、
複数の前記センサのそれぞれの出力パターンが、前記異常パターン記憶領域に記憶されているいずれかの出力パターンの組合せに対応するか否かを判断して、車両異常内容を定める異常内容判定手段と、
車両異常内容毎の、前記カメラによる映像を送信情報種の一種とした、一以上の送信情報種、及び車両異常内容毎の送信先が記憶されている通信情報記憶領域と、
前記異常内容判定手段により車両異常内容が定められると、前記通信情報記憶領域を参照して送信先及び一以上の送信情報種を定め、送信先に応じた1以上の送信情報種の各情報を含む送信情報を合成して、前記無線通信手段により、該送信先へ該送信情報を送信させる通信制御手段と、
を備えていることを特徴とする車両異常配信装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両異常配信装置において、
カメラを備え、
前記通信制御手段は、前記異常内容判定手段により車両異常内容が定められると、前記カメラで撮像された映像のうち、少なくとも、該車両異常内容が定められたときから予め定められた時間後の時点までの映像を、前記無線通信手段により、該車両異常内容に応じた前記送信先情報が示す送信先へ送信させる、
ことを特徴とする車両異常配信装置。
【請求項4】
請求項2及び3のいずれか一項に記載の車両異常配信装置において、
前記カメラで撮像された映像を記憶する映像記憶領域を備え、
前記通信制御手段は、前記異常内容判定手段により車両異常内容が定められると、前記映像記憶領域に記憶されている映像のうち、該車両異常内容が定められたときから予め定められた時間前の時点から、該車両異常内容が定められたときから予め定められた時間後の時点までの映像を、前記無線通信手段により、該車両異常内容に応じた前記送信先情報が示す送信先へ送信させる、
ことを特徴とする車両異常配信装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一項に記載の車両異常配信装置において、
前記通信情報記憶領域には、前記送信先情報毎に、映像を送るか否かが記憶されており、
前記通信制御手段は、前記異常内容判定手段により車両異常内容が定められると、前記通信情報記憶領域を参照して、該車両異常内容に応じた前記送信先情報が示す送信先のうち、映像を送ることになっている送信先へ該映像を送信させる、
ことを特徴とする車両異常配信装置。
【請求項6】
請求項2から4のいずれか一項に記載の車両異常配信装置において、
複数の前記カメラを備え、
複数の前記カメラのうち、少なくとも一台は、専ら車両外部の映像を撮像する車外カメラであり、少なくとも一台は、該車外カメラの撮像範囲の少なくとも一部と、該車外カメラの撮像範囲外の一部と、車両内部の映像を撮像する車内カメラである、
ことを特徴とする車両異常配信装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の車両異常配信装置において、
前記複数のセンサのうち、少なくとも一のセンサは、振動センサである、
ことを特徴とする車両異常配信装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の車両異常配信装置において、
前記複数のセンサのうち、少なくとも一のセンサは、音響センサである、
ことを特徴とする車両異常配信装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の車両異常配信装置において、
前記複数のセンサのうち、少なくとも一のセンサは、赤外線センサである、
ことを特徴とする車両異常配信装置。
【請求項10】
無線通信手段を備え、車両異常を該無線通信手段で外部に配信する車両異常配信装置において、
専ら車両外部の映像を撮像する第一の車外カメラと、
前記第一の外映像カメラが撮像する撮像範囲とは異なる車両外部を専ら撮像する第二の車外カメラと、
前記第一の車外カメラ又は前記第二の車外カメラの撮像範囲の少なくとも一部と、該第一の車外カメラ及び該第二の車外カメラの撮像範囲外の一部と、車両内部の映像を撮像する車内カメラと、
前記第一の車外カメラと前記第二の車外カメラと前記車外カメラとで撮像された映像を前記無線通信手段で外部に送信させる通信制御手段と、
を備えていることを特徴とする車両異常配信装置。
【請求項11】
請求項10に記載の車両異常配信装置において、
前記第一の車外カメラと前記第二の車外カメラと前記車内カメラとで撮像された映像を記憶する映像記憶領域と、
車両異常を検知する車両異常検知手段と、
を備え、
前記通信制御手段は、前記車両異常検知手段により車両異常が検知されると、前記映像記憶領域に記憶されている映像のうち、該車両異常が検知されたときから予め定められた時間前の時点から、該車両異常が検知されたときから予め定められた時間後の時点までの映像を、前記無線通信手段で外部に送信させる、
ことを特徴とする車両異常配信装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の車両異常配信装置において、
太陽電池を備え、
前記太陽電池により動作する、
ことを特徴とする車両異常配信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−64226(P2009−64226A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231359(P2007−231359)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000153465)株式会社日立コミュニケーションテクノロジー (770)
【Fターム(参考)】