車両駆動装置
【課題】インバータに高電圧を印加していない状態でもインバータ保護機能が正常に作動するか否かを診断可能にする。
【解決手段】コントロールユニット5が、スイッチング回路23の作動状態を制御することにより、インバータ保護装置4が作動していない時のインバータ電圧V1とインバータ保護装置4が作動している時のインバータ電圧V2とを検知,比較することによりインバータ保護装置4が正常に作動するか否かを診断する。
【解決手段】コントロールユニット5が、スイッチング回路23の作動状態を制御することにより、インバータ保護装置4が作動していない時のインバータ電圧V1とインバータ保護装置4が作動している時のインバータ電圧V2とを検知,比較することによりインバータ保護装置4が正常に作動するか否かを診断する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機の発電電力をインバータで交流電力に変換して車両の電動機に供給することにより車両を駆動する車両駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の内燃機関により駆動される発電機の発電電力をインバータで交流電力に変換して車両の電動機に供給することにより車両を駆動する車両駆動装置が知られている。このような車両駆動装置では、外力により電動機が制御方向とは逆方向に回転させられる場合に回生状態になり、また発電機と電動機の間には応答速度の違いがある。このような時に、発電機と電動機との間で電力の需給バランスが崩れることにより余剰電力が発生した場合に、インバータに高電圧が印加されることがある。このような背景から、インバータの電圧が設定電圧以上になった場合、バイパス手段を介して抵抗側に電流を流し、余剰電力を熱として消費することにより、インバータに高電圧が印加されないように制御するインバータ保護機能を備える車両駆動装置が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−352664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来技術では、実際に高電圧状態が発生した場合に備えてインバータ保護機能が正常に作動するか否かを診断する必要がある。ところがインバータ保護機能が正常に作動するか否かを診断するためには、実際に高電圧をインバータに印加しなければならず、この際にインバータ保護機能が正常に作動しなかった場合、インバータが破壊してしまう恐れがある。このような背景から、インバータに高電圧を印加していない状態でも正常に作動するか否かを診断可能なインバータ保護機能の提供が望まれている。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、インバータに高電圧を印加していない状態でも正常に作動するか否かを診断可能なインバータ保護機能を備える車両駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様に係る車両駆動装置は、インバータに印加される電圧を検出するインバータ電圧検出手段と、インバータ電圧検出手段により検出された電圧値に基づいてインバータ保護手段の動作状態を診断する診断手段とを備える。本発明の第2の態様に係る車両駆動装置は、バイパス抵抗回路に流れる電流を検出する電流検出手段と、電流検出手段により検出された電流値に基づいてインバータ保護手段の動作状態を診断する診断手段とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る車両駆動装置によれば、インバータに高電圧を印加していない状態でもインバータ保護機能が正常に作動するか否かを診断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態となる車両駆動装置の構成について説明する。
【0008】
〔第1の実施形態〕
始めに、図1乃至図3を参照して、本発明の第1の実施形態となる車両駆動装置の構成について説明する。
【0009】
〔車両駆動装置の構成〕
本発明の第1の実施形態となる車両駆動装置は、図1に示すように、図示しない車両の内燃機関により駆動される発電機1の発電電力を電動機駆動用インバータ回路(以下、インバータと略記)2で交流電力に変換して電動機3に供給することにより車両を駆動するものであり、発電機1,インバータ2,電動機3,本発明に係るインバータ保護手段に対応するインバータ保護装置4,及び本発明に係る診断手段に対応するコントロールユニット5を主な構成要素として備える。発電機1は、車両の内燃機関の回転動力を受けて駆動され、インバータ2に発電電力(発電機出力(+),(−))を出力する。発電機1の発電電力の大きさは、永久磁石11の磁束と、電源12に接続され、コントロールユニット5から出力される発電機界磁制御信号により制御される界磁コイルLの磁束により制御される。
【0010】
インバータ2は、コントロールユニット5からのインバータ制御信号に従って、発電機1から入力された発電電力を利用して電動機3を駆動する。電動機3は、インバータ2から供給される交流電力により駆動され、図示しない差動装置とタイヤを介して路面にトルクを伝達することにより車両を駆動する。インバータ保護装置4は、発電機1とインバータ2間に接続され、インバータ2に対し並列に接続された本発明に係るインバータ電圧検出手段に対応するインバータ電圧検知回路21,高電圧検知回路22,インバータ2に対し並列に接続されたバイパス抵抗回路R1,及びバイパス抵抗回路R1に対し直列に接続された本発明に係る作動手段に対応するスイッチング回路23を備える。
【0011】
インバータ電圧検知回路21は、インバータ2に印加されている電圧(以下、インバータ電圧と略記)を検知し、検知値を高電圧検知回路22とコントロールユニット5に出力する。高電圧検知回路22は、インバータ電圧検知回路21により検知されたインバータ電圧が設定値以上であるか否かを判別し、インバータ電圧が設定値以上である場合に作動状態を閉状態に切り換えるスイッチング回路作動信号をスイッチング回路23に出力する。スイッチング回路23は、高電圧検知回路22及びコントロールユニット5からのスイッチング回路作動信号に応じて開閉状態が切り換えられ、閉状態である場合、バイパス抵抗回路R1に電流を流すことによりインバータ2に高電圧が印加されることを抑制する。またスイッチング回路23は、現在の作動状態が開状態と閉状態のどちらであるかを示す信号をスイッチング回路作動状態信号としてコントロールユニット5に出力する。バイパス抵抗回路R1は、スイッチング回路23が閉状態である場合に発電機1から供給される電力を熱に変換することにより、エネルギーを放出してインバータ電圧を下げる。コントロールユニット5は、インバータ2,スイッチング回路23,及び界磁コイルLの動作を制御する。
【0012】
〔インバータ保護機能診断処理〕
このような構成を有する車両駆動装置は、以下に示すインバータ保護機能診断処理(以下、診断処理と略記)を実行することにより、インバータ保護装置4が正常に作動するか否かを診断する。以下、図2に示すフローチャートを参照して、この診断処理を実行する際の車両駆動装置の動作の流れについて説明する。
【0013】
図2に示すフローチャートは、所定の動作状態になったタイミングで開始となり、診断処理はステップS1の処理に進む。なお本実施形態では、内燃機関がアイドリング時の回転数相当で発電機1を駆動し、コントロールユニット5による界磁コイルLの界磁制御が停止している状態を所定の動作状態とした。
【0014】
ステップS1の処理では、コントロールユニット5が、インバータ電圧検知回路21により検知されたインバータ電圧が所定の判定閾値Vth1以上であるか否かを判別する。判別の結果、インバータ電圧が所定の判定閾値Vth1未満である場合、コントロールユニット5は一連の診断処理を終了する。一方、インバータ電圧が所定の判定閾値Vth1以上である場合には、コントロールユニット5は診断処理をステップS2の処理に進める。なお一般にインバータ電圧は、内燃機関がアイドリング時の回転数相当で発電機1を駆動し、コントロールユニット5による界磁コイルLの界磁制御が停止している状態においては常に一定になる(図3に示す時間T=0〜T1の間)。従って上記判定閾値Vth1はこの一定電圧以下の所定電圧値とする。
【0015】
ステップS2の処理では、コントロールユニット5が、スイッチング回路23の作動状態を開状態に切り換えるスイッチング回路作動信号を出力し、インバータ電圧検知回路21を介してスイッチング回路23が開状態にある際のインバータ電圧V1を検知する(図3に示す時間T=T1)。これにより、ステップS2の処理は完了し、診断処理はステップS3の処理に進む。
【0016】
ステップS3の処理では、コントロールユニット5が、スイッチング回路23の作動状態を閉状態に切り換えるスイッチング回路作動信号を出力することにより、発電機1からの電流をバイパス抵抗回路R1に流す(図3に示す時間T=T2)。これにより、ステップS3の処理は完了し、診断処理はステップS4の処理に進む。
【0017】
ステップS4の処理では、コントロールユニット5が、インバータ電圧検知回路21を介してスイッチング回路23が閉状態にある際のインバータ電圧V2を検知する(図3に示す時間T=T3)。これにより、ステップS4の処理は完了し、診断処理はステップS5の処理に進む。
【0018】
ステップS5の処理では、コントロールユニット5が、ステップS2の処理により検知されたインバータ電圧V1とステップS4の処理により検知されたインバータ電圧V2の差分値を電圧差DVとして演算する。これにより、ステップS5の処理は完了し、診断処理はステップS6の処理に進む。
【0019】
ステップS6の処理では、コントロールユニット5が、ステップS5の処理により算出された電圧差DVが所定の判定閾値Vth2(図3参照)以上であるか否かを判別する。判別の結果、電圧差DVが所定の判定閾値Vth2以上である場合、コントロールユニット5は、インバータ電圧に所定の判定閾値Vth2以上の電圧降下があることからインバータ保護装置4は正常に作動している判断し、診断処理をステップS8の処理に進める。一方、電圧差DVが所定の判定閾値Vth2未満である場合には、コントロールユニット5は、診断処理をステップS7の処理に進める。なお既に述べたように、インバータ電圧は、内燃機関がアイドリング時の回転数相当で発電機1を駆動し、コントロールユニット5による界磁コイルLの界磁制御が停止している状態においては常に一定になる。従って上記判定閾値Vth2はこの一定電圧とバイパス抵抗回路R1の抵抗値により決まる電圧値以下の所定電圧値とする。
【0020】
ステップS7の処理では、コントロールユニット5が、インバータ保護装置4によるインバータ電圧の電圧降下が正常に行われていないと判断し、インバータ2及び界磁コイルLの制御を停止することにより、発電機1の制御を停止し、電動機3の動作を停止する。これにより、ステップS7の処理は完了し、診断処理はステップS8の処理に進む。
【0021】
ステップS8の処理では、コントロールユニット5が、スイッチング回路23の作動状態を開状態に切り換えるスイッチング回路作動信号を出力する(図3に示す時間T=T4)。これにより、ステップS8の処理は完了し、一連の診断処理は終了する。
【0022】
以上の説明から明らかなように、本発明の第1の実施形態となる車両駆動装置では、コントロールユニット5が、スイッチング回路23の作動状態を制御することにより、インバータ保護装置4が作動していない時のインバータ電圧V1とインバータ保護装置4が作動している時のインバータ電圧V2とを検知,比較することによりインバータ保護装置4が正常に作動するか否かを診断するので、インバータ2に高電圧を印加していない状態でインバータ保護装置4が正常に作動するか否かを診断することができる。
【0023】
〔第2の実施形態〕
次に、図4乃至図6を参照して、本発明の第2の実施形態となる車両駆動装置の構成について説明する。
【0024】
〔車両駆動装置の構成〕
本発明の第2の実施形態となる車両駆動装置は、図4に示すように、図1に示す車両駆動装置の構成に加えて本発明に係る電流検出手段に対応する電流検知回路24を備える。電流検知回路24は、バイパス抵抗回路R1とスイッチング回路23間に設けられ、バイパス抵抗回路R1に流れる電流を検知し、検知値をバイパス回路電流値としてコントロールユニット5に出力する。なおその他の構成は、第1の実施形態となる車両駆動装置の構成と同じであるので、以下ではその説明を省略する。
【0025】
〔インバータ保護機能診断処理〕
このような構成を有する車両駆動装置は、以下に示すインバータ保護機能診断処理(以下、診断処理と略記)を実行することにより、インバータ保護装置4が正常に作動するか否かを診断する。以下、図5に示すフローチャートを参照して、この診断処理を実行する際の車両駆動装置の動作の流れについて説明する。
【0026】
図5に示すフローチャートは、所定の動作状態になったタイミングで開始となり、診断処理はステップS11の処理に進む。なお本実施形態では、内燃機関がアイドリング時の回転数相当で発電機1を駆動し、コントロールユニット5による界磁コイルLの界磁制御が停止している状態を所定の動作状態とした。またステップS11の処理は上記ステップS1の処理と同じであるので、以下では説明を省略し、ステップS12の処理から説明する。
【0027】
ステップS12の処理では、コントロールユニット5が、スイッチング回路23の作動状態を開状態に切り換えるスイッチング回路作動信号を出力し、電流検知回路24を介してスイッチング回路23が開状態にある際にバイパス抵抗回路R1に流れる電流I1を検知する(図5に示す時間T=T1)。これにより、ステップS12の処理は完了し、診断処理はステップS13の処理に進む。
【0028】
ステップS13の処理では、コントロールユニット5が、ステップS12の処理により検知された電流I1が所定の判定閾値Ith1以下であるか否かを判別する。判別の結果、電流I1が所定の判定閾値Ith1以下である場合、コントロールユニット5は、インバータ保護装置4は正常に作動していると判断し、診断処理をステップS15の処理に進める。一方、電流I1が所定の判定閾値Ith1以下でない場合には、コントロールユニット5は、診断処理をステップS14の処理に進める。なお上記判定閾値Ith1としては、バイパス抵抗回路R1に電流が流れていない状態における電流値を例示できる。電流I1が判定閾値Ith1よりも大きい場合には、スイッチング回路23のショート故障等によるインバータ保護回路4の異常と判断できる。
【0029】
ステップS14の処理では、コントロールユニット5が、スイッチング回路23が開状態であるのにも係わらず通電している又はバイパス抵抗回路R1により電力が消費されていないことからインバータ保護装置4が異常作動していると判断し、インバータ2及び界磁コイルLの制御を停止することにより、発電機1の制御を停止し、電動機3の動作を停止する。これにより、ステップS14の処理は完了し、診断処理はステップS18の処理に進む。
【0030】
ステップS15の処理では、コントロールユニット5が、スイッチング回路23の作動状態を閉状態に切り換えるスイッチング回路作動信号を出力することにより、発電機1からの電流をバイパス抵抗回路R1に流す(図5に示す時間T=T2)。これにより、ステップS15の処理は完了し、診断処理はステップS16の処理に進む。
【0031】
ステップS16の処理では、コントロールユニット5が、電流検知回路24を介してスイッチング回路23が閉状態にある際にバイパス抵抗回路R1に流れる電流I2を検知する(図5に示す時間T=T3)。これにより、ステップS16の処理は完了し、診断処理はステップS17の処理に進む。
【0032】
ステップS17の処理では、コントロールユニット5が、ステップS16の処理により検知された電流I2が所定の判定閾値Ith2以上であるか否かを判別する。判別の結果、電流I2が所定の判定閾値Ith2以上である場合、コントロールユニット5は、インバータ保護装置4は正常に作動していると判断し、診断処理をステップS18の処理に進める。一方、電流I2が所定の判定閾値Ith2未満である場合には、コントロールユニット5は、診断処理をステップS14の処理に進める。なお一般に発電機3の発電電力は、内燃機関がアイドリング時の回転数相当で発電機1を駆動し、コントロールユニット5による界磁コイルLの界磁制御が停止している状態においては常に一定になる。従って上記判定閾値Ith2はこの一定電力とバイパス抵抗回路R1の抵抗値により定まる電流値以下の所定電圧値とする。
【0033】
ステップS18の処理では、コントロールユニット5が、スイッチング回路23の作動状態を開状態に切り換えるスイッチング回路作動信号を出力する(図5に示す時間T=T4)。これにより、ステップS18の処理は完了し、一連の診断処理は終了する。
【0034】
以上の説明から明らかなように、本発明の第2の実施形態となる車両駆動装置では、コントロールユニット5が、スイッチング回路23の作動状態を制御することにより、インバータ保護装置4が作動していない時にバイパス抵抗回路R1に流れる電流I1とインバータ保護装置4が作動している時にバイパス抵抗回路R1に流れる電流I2とを検知し、検知された電流I1,I2を所定の判定閾値Ith1,Ith2と比較することによりインバータ保護装置4が正常に作動するか否かを診断するので、インバータ2に高電圧を印加していない状態でインバータ保護装置4が正常に作動するか否かを診断することができる。
【0035】
〔第3の実施形態〕
次に、図7,図8を参照して、本発明の第3の実施形態となる車両駆動装置の構成について説明する。
【0036】
〔車両駆動装置の構成〕
本発明の第3の実施形態となる車両駆動装置の構成は、第1の実施形態となる車両駆動装置の構成と同じであるので、以下ではその説明を省略する。
【0037】
〔インバータ保護機能診断処理〕
このような構成を有する車両駆動装置は、以下に示すインバータ保護機能診断処理(以下、診断処理と略記)を実行することにより、インバータ2に高電圧が印加され、高電圧検知回路22がスイッチング回路23の作動状態を閉状態とすることでインバータ保護装置4が作動する場合であっても、インバータ保護装置4が正常に作動するか否かを診断可能にする。以下、図7に示すフローチャートを参照して、この診断処理を実行する際の車両駆動装置の動作の流れについて説明する。
【0038】
図7に示すフローチャートは、所定の動作状態になったタイミングで開始となり、診断処理はステップS21の処理に進む。なおステップS21の処理は上記ステップS1の処理と同じであるので、以下では説明を省略し、ステップS22の処理から説明する。
【0039】
ステップS22の処理では、コントロールユニット5が、インバータ電圧検知回路21により検知されたインバータ電圧が高電圧判定閾値Vth3以上であるか否かを判別する。判別の結果、インバータ電圧が高電圧判定閾値Vth3未満である場合、コントロールユニット5は一連の診断処理を終了する。一方、インバータ電圧が高電圧判定閾値Vth3以上である場合には、コントロールユニット5は診断処理をステップS23の処理に進める。なお高電圧判定閾値Vth3としては、例えば電動機3の制御電圧の最大値以上、且つ、インバータ2の耐電圧値の最大値未満の電圧値を例示できる。
【0040】
ステップS23の処理では、コントロールユニット5が、スイッチング回路23の作動状態が開状態であるか否かを判別する。判別の結果、スイッチング回路23の作動状態が開状態である場合、コントロールユニット5は診断処理をステップS24の処理に進める。一方、スイッチング回路23の作動状態が閉状態である場合には、コントロールユニット5は診断処理をステップS25の処理に進める。
【0041】
ステップS24の処理では、コントロールユニット5が、インバータ電圧検知回路21によりスイッチング回路23が開状態にある際のインバータ電圧V21を測定し(図8に示す時間T=T1)、高電圧検知回路22が、インバータ電圧が高電圧判定閾値Vth3以上になるとスイッチング回路23の作動状態を閉状態にする信号を出力する(図8に示す時刻T=T2)。これにより、ステップS24の処理は完了し、診断処理はステップS26の処理に進む。
【0042】
ステップS25の処理では、コントロールユニット5が、インバータ電圧検知回路21によりスイッチング回路23が閉状態にある際のインバータ電圧V22を測定する(図8に示す時間T=T3)。これにより、ステップS25の処理は完了し、診断処理はステップS26の処理に進む。
【0043】
ステップS26の処理では、コントロールユニット5が、ステップS24の処理により測定されたインバータ電圧V21とステップS25の処理により測定されたインバータ電圧V22の差分値を電圧差DV2として算出する。これにより、ステップS26の処理は完了し、診断処理はステップS27の処理に進む。
【0044】
ステップS27の処理では、コントロールユニット5が、ステップS26の処理により算出された電圧差DV2が所定の判定閾値Vth2以上であるか否かを判別する。判別の結果、電圧差DV2が所定の判定閾値Vth2以上である場合、インバータ電圧に所定の判定閾値Vth2以上の電圧降下があることから、コントロールユニット5は、インバータ保護装置4は正常に作動していると判断し、一連の診断処理を終了する。一方、電圧差DV2が所定の判定閾値Vth2未満である場合には、コントロールユニット5は、診断処理をステップS28の処理に進める。
【0045】
ステップS28の処理では、コントロールユニット5が、インバータ保護装置4によるインバータ電圧の電圧降下が正常に行われていないと判断し、インバータ2及び界磁コイルLの制御を停止することにより、発電機1の制御を停止し、電動機3の動作を停止する。これにより、ステップS28の処理は完了し、一連の診断処理は終了する。
【0046】
以上の説明から明らかなように、本発明の第3の実施形態となる車両駆動装置では、コントロールユニット5が、インバータ保護装置4が作動する前後のインバータ電圧の差を所定の判定閾値と比較することによりインバータ保護装置4が正常に作動するか否かを診断するので、インバータ2に高電圧が印加されインバータ保護装置4が作動する場合であっても、インバータ保護装置4が正常に作動するか否かを診断することができる。なお本実施形態の車両駆動装置は、第1の実施形態の車両駆動装置と併用又はそれぞれ単独で使用することができる。
【0047】
〔第4の実施形態〕
次に、図9,図10を参照して、本発明の第4の実施形態となる車両駆動装置の構成について説明する。
【0048】
〔車両駆動装置の構成〕
本発明の第4の実施形態となる車両駆動装置の構成は、第2の実施形態となる車両駆動装置の構成と同じであるので、以下ではその説明を省略する。
【0049】
〔インバータ保護機能診断処理〕
このような構成を有する車両駆動装置は、以下に示すインバータ保護機能診断処理(以下、診断処理と略記)を実行することにより、インバータ2に高電圧が印加され、高電圧検知回路22がスイッチング回路23の作動状態を閉状態とすることでインバータ保護装置4が作動する場合であっても、インバータ保護装置4が正常に作動するか否かを診断可能にする。以下、図9に示すフローチャートを参照して、この診断処理を実行する際の車両駆動装置の動作の流れについて説明する。
【0050】
図9に示すフローチャートは、所定の動作状態になったタイミングで開始となり、診断処理はステップS31の処理に進む。なおステップS31の処理は上記ステップS1の処理と同じであるので、以下では説明を省略し、ステップS32の処理から説明する。
【0051】
ステップS32の処理では、コントロールユニット5が、インバータ電圧検知回路21により検知されたインバータ電圧が高電圧判定閾値Vth3以上であるか否かを判別する。判別の結果、インバータ電圧が高電圧判定閾値Vth3未満である場合、コントロールユニット5は一連の診断処理を終了する。一方、インバータ電圧が高電圧判定閾値Vth3以上である場合には、コントロールユニット5は診断処理をステップS33の処理に進める。なお高電圧判定閾値Vth3としては、例えば電動機3の制御電圧の最大値以上、且つ、インバータ2の耐電圧値の最大値未満の電圧値を例示できる。
【0052】
ステップS33の処理では、コントロールユニット5が、スイッチング回路23の作動状態が開状態であるか否かを判別する。判別の結果、スイッチング回路23の作動状態が開状態である場合、コントロールユニット5は診断処理をステップS34の処理に進める。一方、スイッチング回路23の作動状態が閉状態である場合には、コントロールユニット5は診断処理をステップS37の処理に進める。
【0053】
ステップS34の処理では、コントロールユニット5が、電流検知回路24によりスイッチング回路23が開状態にある際にバイパス抵抗回路R1に流れる電流I21を測定する(図10に示す時間T=T1)。これにより、ステップS34の処理は完了し、診断処理はステップS35の処理に進む。
【0054】
ステップS35の処理では、コントロールユニット5が、ステップS34の処理により測定された電流I21が所定の判定閾値Ith1より大きいか否かを判別する。判別の結果、電流I21が所定の判定閾値Ith1より大きい場合、コントロールユニット5は診断処理をステップS36の処理に進める。一方、電流I21が所定の判定閾値Ith1以下である場合には、コントロールユニット5は、インバータ保護装置4が正常に動作していると判断し、一連の診断処理を終了する。なお上記判定閾値Ith1としては、バイパス抵抗回路R1に電流が流れていない状態における電流値を例示できる。
【0055】
ステップS36の処理では、コントロールユニット5が、スイッチング回路23の作動状態が開状態にあるにも係わらず通電していることからインバータ保護装置4が異常作動していると判断し、インバータ2及び界磁コイルLの制御を停止することにより、発電機1の制御を停止し、電動機3の動作を停止する。また高電圧検知回路22が、インバータ電圧が高電圧になるとスイッチング回路23の作動状態を閉状態にする信号を出力する(図10に示す時刻T=T2)。これにより、ステップS36の処理は完了し、一連の診断処理は終了する。
【0056】
ステップS37の処理では、コントロールユニット5が、電流検知回路24によりスイッチング回路23が閉状態にある際にバイパス抵抗回路R1に流れる電流I22を測定する(図10に示す時間T=T3)。これにより、ステップS37の処理は完了し、診断処理はステップS38の処理に進む。
【0057】
ステップS38の処理では、コントロールユニット5が、ステップS37の処理により測定された電流I22が所定の判定閾値Ith2以上であるか否かを判別する。判別の結果、電流I21が所定の判定閾値Ith2以上である場合、コントロールユニット5は、インバータ保護装置4が正常に動作していると判断し、一連の診断処理を終了する。一方、電流I21が所定の判定閾値Ith2未満である場合には、コントロールユニット5は診断処理をステップS39の処理に進める。なお一般に発電機3の発電電力は、内燃機関がアイドリング時の回転数相当で発電機1を駆動し、コントロールユニット5による界磁コイルLの界磁制御が停止している状態においては常に一定になる。従って上記判定閾値Ith2はこの一定電力とバイパス抵抗回路R1の抵抗値により定まる電流値以下の所定電圧値とする。
【0058】
ステップS39の処理では、コントロールユニット5が、スイッチング回路23の作動状態が閉状態にあるにも係わらずバイパス抵抗回路R1により電力が消費されていないことからインバータ保護装置4が異常作動していると判断し、インバータ2及び界磁コイルLの制御を停止することにより、発電機1の制御を停止し、電動機3の動作を停止する。これにより、ステップS39の処理は完了し、一連の診断処理は終了する。
【0059】
以上の説明から明らかなように、本発明の第4の実施形態となる車両駆動装置では、コントロールユニット5が、インバータ保護装置4が作動している時にバイパス抵抗回路R1に流れる電流を検知して所定の判定閾値と比較することによりインバータ保護装置4が正常に作動するか否かを診断するので、インバータ2に高電圧が印加されインバータ保護装置4が作動する場合であっても、インバータ保護装置4が正常に作動するか否かを診断することができる。なお本実施形態の車両駆動装置は、第2の実施形態の車両駆動装置と併用又はそれぞれ単独で使用することができる。
【0060】
〔車両の構成〕
上記実施形態の車両駆動装置は例えば図11に示すようなハイブリッド車両に適用することができる。本ハイブリッド車両では、図11に示すように、内燃機関のエンジン41で前後輪の一方の主駆動輪42が回転駆動され、モータ43によって前後輪の後方の従駆動輪44が選択的に回転駆動される。すなわち、エンジン41で得られた動力はエンジン側クラッチ45,変速機46,及びデファレンシャルギア47を介して主駆動輪42の車軸に伝達され、車輪に取り付けられた主駆動輪42が回転駆動される。一方、モータ43で得られた回転駆動力は回転数センサ48,吸収部材49,モータ側クラッチ50,及びデファレンシャルギア51を介して従駆動輪44側の車軸に選択的に伝達され、車軸に取り付けられた従駆動輪44が選択的に回転駆動される。従って、モータ側クラッチ50が締結状態にあっては車両は四輪駆動される一方、モータ側クラッチ50が非締結状態にあっては車両は二輪駆動される。
【0061】
回転数センサ48は、モータ43の回転数を計測し、計測した回転数を後述するモータコントロールユニット53と車両コントロールユニット55に与え、モータ43の回転速度(ωm)を算出する際に用いられる。吸収部材49は、例えばスプリング等から構成され、モータ側クラッチ50の締結時に締結衝撃を緩和する。
【0062】
エンジン41には、ベルト等を介して発電機52が連結されている。この発電機52は、エンジン41で得られた動力で回転駆動され、車両コントロールユニット55の制御の元に所望の直流電力を発電する。モータ43には、モータ43の温度を計測する温度センサ(図示せず)が設けられ、この温度センサで計測されたモータ温度はモータコントロールユニット53及び車両コントロールユニット55に与えられる。
【0063】
モータコントロールユニット53は、発電機52で得られた直流電力をモータ43に供給される交流電力に変換するインバータからなるドライブユニット54を含み、回転数センサ48で計測されたモータ回転数,温度センサで計測されたモータ温度,及びモータ43に要求される要求トルク(τ)を入力し、これらの値と車両コントロールユニット55の制御の下にモータ43を駆動制御する。モータ43に要求される要求トルクは、アクセルペダルの踏み込み量やスロットル開度に応じて求められた車両全体としてのトルクからエンジン41側に要求されるトルクを差し引いた値として算出される。
【0064】
車両コントロールユニット55は、車両の運転を制御する制御中枢として機能し、プログラムに基づいて各種動作処理を制御するコンピュータに必要な、CPU,記憶装置,入出力装置等を備えた例えばマイクロコンピュータ等により実現される。車両コントロールユニット55は、回転数センサ48,モータ43の温度センサ,及び車両の運転に必要な情報を収集するセンサ(図示せず)からの信号を読み込み、読み込んだ各種信号と予め内部に保有する制御ロジック(プログラム)に基づいて、モータ側クラッチ50,発電機52,及びモータコントロールユニット53を含む本ハイブリッド車両の構成要素に指令を送り、車両の運転/停止に必要な全ての動作を統括管理して制御する。
【0065】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、発電機の発電電力をインバータで交流電力に変換して車両の電動機に供給することにより車両を駆動する車両駆動装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施形態となる車両駆動装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態となるインバータ保護機能診断処理の流れを示すフローチャート図である。
【図3】図2に示すインバータ保護機能診断処理を実行している際のインバータ電圧の時間変化を示す波形図である。
【図4】本発明の第2の実施形態となる車両駆動装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第2の実施形態となるインバータ保護機能診断処理の流れを示すフローチャート図である。
【図6】図5に示すインバータ保護機能診断処理を実行している際のバイパス抵抗回路に流れる電流値の時間変化を示す波形図である。
【図7】本発明の第3の実施形態となるインバータ保護機能診断処理の流れを示すフローチャート図である。
【図8】図7に示すインバータ保護機能診断処理を実行している際のインバータ電圧の時間変化を示す波形図である。
【図9】本発明の第4の実施形態となるインバータ保護機能診断処理の流れを示すフローチャート図である。
【図10】図9に示すインバータ保護機能診断処理を実行している際のバイパス抵抗回路に流れる電流値の時間変化を示す波形図である。
【図11】本発明に係る車両駆動装置が適用されるハイブリッド車両の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0068】
1:発電機
2:電動機駆動用インバータ回路
3:電動機
4:インバータ保護装置
5:コントロールユニット
11:永久磁石
12:電源
21:インバータ電圧検知回路
22:高電圧検知回路
23:スイッチング回路
24:電流検知回路
L:界磁コイル
R1:バイパス抵抗回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機の発電電力をインバータで交流電力に変換して車両の電動機に供給することにより車両を駆動する車両駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の内燃機関により駆動される発電機の発電電力をインバータで交流電力に変換して車両の電動機に供給することにより車両を駆動する車両駆動装置が知られている。このような車両駆動装置では、外力により電動機が制御方向とは逆方向に回転させられる場合に回生状態になり、また発電機と電動機の間には応答速度の違いがある。このような時に、発電機と電動機との間で電力の需給バランスが崩れることにより余剰電力が発生した場合に、インバータに高電圧が印加されることがある。このような背景から、インバータの電圧が設定電圧以上になった場合、バイパス手段を介して抵抗側に電流を流し、余剰電力を熱として消費することにより、インバータに高電圧が印加されないように制御するインバータ保護機能を備える車両駆動装置が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−352664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来技術では、実際に高電圧状態が発生した場合に備えてインバータ保護機能が正常に作動するか否かを診断する必要がある。ところがインバータ保護機能が正常に作動するか否かを診断するためには、実際に高電圧をインバータに印加しなければならず、この際にインバータ保護機能が正常に作動しなかった場合、インバータが破壊してしまう恐れがある。このような背景から、インバータに高電圧を印加していない状態でも正常に作動するか否かを診断可能なインバータ保護機能の提供が望まれている。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、インバータに高電圧を印加していない状態でも正常に作動するか否かを診断可能なインバータ保護機能を備える車両駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様に係る車両駆動装置は、インバータに印加される電圧を検出するインバータ電圧検出手段と、インバータ電圧検出手段により検出された電圧値に基づいてインバータ保護手段の動作状態を診断する診断手段とを備える。本発明の第2の態様に係る車両駆動装置は、バイパス抵抗回路に流れる電流を検出する電流検出手段と、電流検出手段により検出された電流値に基づいてインバータ保護手段の動作状態を診断する診断手段とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る車両駆動装置によれば、インバータに高電圧を印加していない状態でもインバータ保護機能が正常に作動するか否かを診断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態となる車両駆動装置の構成について説明する。
【0008】
〔第1の実施形態〕
始めに、図1乃至図3を参照して、本発明の第1の実施形態となる車両駆動装置の構成について説明する。
【0009】
〔車両駆動装置の構成〕
本発明の第1の実施形態となる車両駆動装置は、図1に示すように、図示しない車両の内燃機関により駆動される発電機1の発電電力を電動機駆動用インバータ回路(以下、インバータと略記)2で交流電力に変換して電動機3に供給することにより車両を駆動するものであり、発電機1,インバータ2,電動機3,本発明に係るインバータ保護手段に対応するインバータ保護装置4,及び本発明に係る診断手段に対応するコントロールユニット5を主な構成要素として備える。発電機1は、車両の内燃機関の回転動力を受けて駆動され、インバータ2に発電電力(発電機出力(+),(−))を出力する。発電機1の発電電力の大きさは、永久磁石11の磁束と、電源12に接続され、コントロールユニット5から出力される発電機界磁制御信号により制御される界磁コイルLの磁束により制御される。
【0010】
インバータ2は、コントロールユニット5からのインバータ制御信号に従って、発電機1から入力された発電電力を利用して電動機3を駆動する。電動機3は、インバータ2から供給される交流電力により駆動され、図示しない差動装置とタイヤを介して路面にトルクを伝達することにより車両を駆動する。インバータ保護装置4は、発電機1とインバータ2間に接続され、インバータ2に対し並列に接続された本発明に係るインバータ電圧検出手段に対応するインバータ電圧検知回路21,高電圧検知回路22,インバータ2に対し並列に接続されたバイパス抵抗回路R1,及びバイパス抵抗回路R1に対し直列に接続された本発明に係る作動手段に対応するスイッチング回路23を備える。
【0011】
インバータ電圧検知回路21は、インバータ2に印加されている電圧(以下、インバータ電圧と略記)を検知し、検知値を高電圧検知回路22とコントロールユニット5に出力する。高電圧検知回路22は、インバータ電圧検知回路21により検知されたインバータ電圧が設定値以上であるか否かを判別し、インバータ電圧が設定値以上である場合に作動状態を閉状態に切り換えるスイッチング回路作動信号をスイッチング回路23に出力する。スイッチング回路23は、高電圧検知回路22及びコントロールユニット5からのスイッチング回路作動信号に応じて開閉状態が切り換えられ、閉状態である場合、バイパス抵抗回路R1に電流を流すことによりインバータ2に高電圧が印加されることを抑制する。またスイッチング回路23は、現在の作動状態が開状態と閉状態のどちらであるかを示す信号をスイッチング回路作動状態信号としてコントロールユニット5に出力する。バイパス抵抗回路R1は、スイッチング回路23が閉状態である場合に発電機1から供給される電力を熱に変換することにより、エネルギーを放出してインバータ電圧を下げる。コントロールユニット5は、インバータ2,スイッチング回路23,及び界磁コイルLの動作を制御する。
【0012】
〔インバータ保護機能診断処理〕
このような構成を有する車両駆動装置は、以下に示すインバータ保護機能診断処理(以下、診断処理と略記)を実行することにより、インバータ保護装置4が正常に作動するか否かを診断する。以下、図2に示すフローチャートを参照して、この診断処理を実行する際の車両駆動装置の動作の流れについて説明する。
【0013】
図2に示すフローチャートは、所定の動作状態になったタイミングで開始となり、診断処理はステップS1の処理に進む。なお本実施形態では、内燃機関がアイドリング時の回転数相当で発電機1を駆動し、コントロールユニット5による界磁コイルLの界磁制御が停止している状態を所定の動作状態とした。
【0014】
ステップS1の処理では、コントロールユニット5が、インバータ電圧検知回路21により検知されたインバータ電圧が所定の判定閾値Vth1以上であるか否かを判別する。判別の結果、インバータ電圧が所定の判定閾値Vth1未満である場合、コントロールユニット5は一連の診断処理を終了する。一方、インバータ電圧が所定の判定閾値Vth1以上である場合には、コントロールユニット5は診断処理をステップS2の処理に進める。なお一般にインバータ電圧は、内燃機関がアイドリング時の回転数相当で発電機1を駆動し、コントロールユニット5による界磁コイルLの界磁制御が停止している状態においては常に一定になる(図3に示す時間T=0〜T1の間)。従って上記判定閾値Vth1はこの一定電圧以下の所定電圧値とする。
【0015】
ステップS2の処理では、コントロールユニット5が、スイッチング回路23の作動状態を開状態に切り換えるスイッチング回路作動信号を出力し、インバータ電圧検知回路21を介してスイッチング回路23が開状態にある際のインバータ電圧V1を検知する(図3に示す時間T=T1)。これにより、ステップS2の処理は完了し、診断処理はステップS3の処理に進む。
【0016】
ステップS3の処理では、コントロールユニット5が、スイッチング回路23の作動状態を閉状態に切り換えるスイッチング回路作動信号を出力することにより、発電機1からの電流をバイパス抵抗回路R1に流す(図3に示す時間T=T2)。これにより、ステップS3の処理は完了し、診断処理はステップS4の処理に進む。
【0017】
ステップS4の処理では、コントロールユニット5が、インバータ電圧検知回路21を介してスイッチング回路23が閉状態にある際のインバータ電圧V2を検知する(図3に示す時間T=T3)。これにより、ステップS4の処理は完了し、診断処理はステップS5の処理に進む。
【0018】
ステップS5の処理では、コントロールユニット5が、ステップS2の処理により検知されたインバータ電圧V1とステップS4の処理により検知されたインバータ電圧V2の差分値を電圧差DVとして演算する。これにより、ステップS5の処理は完了し、診断処理はステップS6の処理に進む。
【0019】
ステップS6の処理では、コントロールユニット5が、ステップS5の処理により算出された電圧差DVが所定の判定閾値Vth2(図3参照)以上であるか否かを判別する。判別の結果、電圧差DVが所定の判定閾値Vth2以上である場合、コントロールユニット5は、インバータ電圧に所定の判定閾値Vth2以上の電圧降下があることからインバータ保護装置4は正常に作動している判断し、診断処理をステップS8の処理に進める。一方、電圧差DVが所定の判定閾値Vth2未満である場合には、コントロールユニット5は、診断処理をステップS7の処理に進める。なお既に述べたように、インバータ電圧は、内燃機関がアイドリング時の回転数相当で発電機1を駆動し、コントロールユニット5による界磁コイルLの界磁制御が停止している状態においては常に一定になる。従って上記判定閾値Vth2はこの一定電圧とバイパス抵抗回路R1の抵抗値により決まる電圧値以下の所定電圧値とする。
【0020】
ステップS7の処理では、コントロールユニット5が、インバータ保護装置4によるインバータ電圧の電圧降下が正常に行われていないと判断し、インバータ2及び界磁コイルLの制御を停止することにより、発電機1の制御を停止し、電動機3の動作を停止する。これにより、ステップS7の処理は完了し、診断処理はステップS8の処理に進む。
【0021】
ステップS8の処理では、コントロールユニット5が、スイッチング回路23の作動状態を開状態に切り換えるスイッチング回路作動信号を出力する(図3に示す時間T=T4)。これにより、ステップS8の処理は完了し、一連の診断処理は終了する。
【0022】
以上の説明から明らかなように、本発明の第1の実施形態となる車両駆動装置では、コントロールユニット5が、スイッチング回路23の作動状態を制御することにより、インバータ保護装置4が作動していない時のインバータ電圧V1とインバータ保護装置4が作動している時のインバータ電圧V2とを検知,比較することによりインバータ保護装置4が正常に作動するか否かを診断するので、インバータ2に高電圧を印加していない状態でインバータ保護装置4が正常に作動するか否かを診断することができる。
【0023】
〔第2の実施形態〕
次に、図4乃至図6を参照して、本発明の第2の実施形態となる車両駆動装置の構成について説明する。
【0024】
〔車両駆動装置の構成〕
本発明の第2の実施形態となる車両駆動装置は、図4に示すように、図1に示す車両駆動装置の構成に加えて本発明に係る電流検出手段に対応する電流検知回路24を備える。電流検知回路24は、バイパス抵抗回路R1とスイッチング回路23間に設けられ、バイパス抵抗回路R1に流れる電流を検知し、検知値をバイパス回路電流値としてコントロールユニット5に出力する。なおその他の構成は、第1の実施形態となる車両駆動装置の構成と同じであるので、以下ではその説明を省略する。
【0025】
〔インバータ保護機能診断処理〕
このような構成を有する車両駆動装置は、以下に示すインバータ保護機能診断処理(以下、診断処理と略記)を実行することにより、インバータ保護装置4が正常に作動するか否かを診断する。以下、図5に示すフローチャートを参照して、この診断処理を実行する際の車両駆動装置の動作の流れについて説明する。
【0026】
図5に示すフローチャートは、所定の動作状態になったタイミングで開始となり、診断処理はステップS11の処理に進む。なお本実施形態では、内燃機関がアイドリング時の回転数相当で発電機1を駆動し、コントロールユニット5による界磁コイルLの界磁制御が停止している状態を所定の動作状態とした。またステップS11の処理は上記ステップS1の処理と同じであるので、以下では説明を省略し、ステップS12の処理から説明する。
【0027】
ステップS12の処理では、コントロールユニット5が、スイッチング回路23の作動状態を開状態に切り換えるスイッチング回路作動信号を出力し、電流検知回路24を介してスイッチング回路23が開状態にある際にバイパス抵抗回路R1に流れる電流I1を検知する(図5に示す時間T=T1)。これにより、ステップS12の処理は完了し、診断処理はステップS13の処理に進む。
【0028】
ステップS13の処理では、コントロールユニット5が、ステップS12の処理により検知された電流I1が所定の判定閾値Ith1以下であるか否かを判別する。判別の結果、電流I1が所定の判定閾値Ith1以下である場合、コントロールユニット5は、インバータ保護装置4は正常に作動していると判断し、診断処理をステップS15の処理に進める。一方、電流I1が所定の判定閾値Ith1以下でない場合には、コントロールユニット5は、診断処理をステップS14の処理に進める。なお上記判定閾値Ith1としては、バイパス抵抗回路R1に電流が流れていない状態における電流値を例示できる。電流I1が判定閾値Ith1よりも大きい場合には、スイッチング回路23のショート故障等によるインバータ保護回路4の異常と判断できる。
【0029】
ステップS14の処理では、コントロールユニット5が、スイッチング回路23が開状態であるのにも係わらず通電している又はバイパス抵抗回路R1により電力が消費されていないことからインバータ保護装置4が異常作動していると判断し、インバータ2及び界磁コイルLの制御を停止することにより、発電機1の制御を停止し、電動機3の動作を停止する。これにより、ステップS14の処理は完了し、診断処理はステップS18の処理に進む。
【0030】
ステップS15の処理では、コントロールユニット5が、スイッチング回路23の作動状態を閉状態に切り換えるスイッチング回路作動信号を出力することにより、発電機1からの電流をバイパス抵抗回路R1に流す(図5に示す時間T=T2)。これにより、ステップS15の処理は完了し、診断処理はステップS16の処理に進む。
【0031】
ステップS16の処理では、コントロールユニット5が、電流検知回路24を介してスイッチング回路23が閉状態にある際にバイパス抵抗回路R1に流れる電流I2を検知する(図5に示す時間T=T3)。これにより、ステップS16の処理は完了し、診断処理はステップS17の処理に進む。
【0032】
ステップS17の処理では、コントロールユニット5が、ステップS16の処理により検知された電流I2が所定の判定閾値Ith2以上であるか否かを判別する。判別の結果、電流I2が所定の判定閾値Ith2以上である場合、コントロールユニット5は、インバータ保護装置4は正常に作動していると判断し、診断処理をステップS18の処理に進める。一方、電流I2が所定の判定閾値Ith2未満である場合には、コントロールユニット5は、診断処理をステップS14の処理に進める。なお一般に発電機3の発電電力は、内燃機関がアイドリング時の回転数相当で発電機1を駆動し、コントロールユニット5による界磁コイルLの界磁制御が停止している状態においては常に一定になる。従って上記判定閾値Ith2はこの一定電力とバイパス抵抗回路R1の抵抗値により定まる電流値以下の所定電圧値とする。
【0033】
ステップS18の処理では、コントロールユニット5が、スイッチング回路23の作動状態を開状態に切り換えるスイッチング回路作動信号を出力する(図5に示す時間T=T4)。これにより、ステップS18の処理は完了し、一連の診断処理は終了する。
【0034】
以上の説明から明らかなように、本発明の第2の実施形態となる車両駆動装置では、コントロールユニット5が、スイッチング回路23の作動状態を制御することにより、インバータ保護装置4が作動していない時にバイパス抵抗回路R1に流れる電流I1とインバータ保護装置4が作動している時にバイパス抵抗回路R1に流れる電流I2とを検知し、検知された電流I1,I2を所定の判定閾値Ith1,Ith2と比較することによりインバータ保護装置4が正常に作動するか否かを診断するので、インバータ2に高電圧を印加していない状態でインバータ保護装置4が正常に作動するか否かを診断することができる。
【0035】
〔第3の実施形態〕
次に、図7,図8を参照して、本発明の第3の実施形態となる車両駆動装置の構成について説明する。
【0036】
〔車両駆動装置の構成〕
本発明の第3の実施形態となる車両駆動装置の構成は、第1の実施形態となる車両駆動装置の構成と同じであるので、以下ではその説明を省略する。
【0037】
〔インバータ保護機能診断処理〕
このような構成を有する車両駆動装置は、以下に示すインバータ保護機能診断処理(以下、診断処理と略記)を実行することにより、インバータ2に高電圧が印加され、高電圧検知回路22がスイッチング回路23の作動状態を閉状態とすることでインバータ保護装置4が作動する場合であっても、インバータ保護装置4が正常に作動するか否かを診断可能にする。以下、図7に示すフローチャートを参照して、この診断処理を実行する際の車両駆動装置の動作の流れについて説明する。
【0038】
図7に示すフローチャートは、所定の動作状態になったタイミングで開始となり、診断処理はステップS21の処理に進む。なおステップS21の処理は上記ステップS1の処理と同じであるので、以下では説明を省略し、ステップS22の処理から説明する。
【0039】
ステップS22の処理では、コントロールユニット5が、インバータ電圧検知回路21により検知されたインバータ電圧が高電圧判定閾値Vth3以上であるか否かを判別する。判別の結果、インバータ電圧が高電圧判定閾値Vth3未満である場合、コントロールユニット5は一連の診断処理を終了する。一方、インバータ電圧が高電圧判定閾値Vth3以上である場合には、コントロールユニット5は診断処理をステップS23の処理に進める。なお高電圧判定閾値Vth3としては、例えば電動機3の制御電圧の最大値以上、且つ、インバータ2の耐電圧値の最大値未満の電圧値を例示できる。
【0040】
ステップS23の処理では、コントロールユニット5が、スイッチング回路23の作動状態が開状態であるか否かを判別する。判別の結果、スイッチング回路23の作動状態が開状態である場合、コントロールユニット5は診断処理をステップS24の処理に進める。一方、スイッチング回路23の作動状態が閉状態である場合には、コントロールユニット5は診断処理をステップS25の処理に進める。
【0041】
ステップS24の処理では、コントロールユニット5が、インバータ電圧検知回路21によりスイッチング回路23が開状態にある際のインバータ電圧V21を測定し(図8に示す時間T=T1)、高電圧検知回路22が、インバータ電圧が高電圧判定閾値Vth3以上になるとスイッチング回路23の作動状態を閉状態にする信号を出力する(図8に示す時刻T=T2)。これにより、ステップS24の処理は完了し、診断処理はステップS26の処理に進む。
【0042】
ステップS25の処理では、コントロールユニット5が、インバータ電圧検知回路21によりスイッチング回路23が閉状態にある際のインバータ電圧V22を測定する(図8に示す時間T=T3)。これにより、ステップS25の処理は完了し、診断処理はステップS26の処理に進む。
【0043】
ステップS26の処理では、コントロールユニット5が、ステップS24の処理により測定されたインバータ電圧V21とステップS25の処理により測定されたインバータ電圧V22の差分値を電圧差DV2として算出する。これにより、ステップS26の処理は完了し、診断処理はステップS27の処理に進む。
【0044】
ステップS27の処理では、コントロールユニット5が、ステップS26の処理により算出された電圧差DV2が所定の判定閾値Vth2以上であるか否かを判別する。判別の結果、電圧差DV2が所定の判定閾値Vth2以上である場合、インバータ電圧に所定の判定閾値Vth2以上の電圧降下があることから、コントロールユニット5は、インバータ保護装置4は正常に作動していると判断し、一連の診断処理を終了する。一方、電圧差DV2が所定の判定閾値Vth2未満である場合には、コントロールユニット5は、診断処理をステップS28の処理に進める。
【0045】
ステップS28の処理では、コントロールユニット5が、インバータ保護装置4によるインバータ電圧の電圧降下が正常に行われていないと判断し、インバータ2及び界磁コイルLの制御を停止することにより、発電機1の制御を停止し、電動機3の動作を停止する。これにより、ステップS28の処理は完了し、一連の診断処理は終了する。
【0046】
以上の説明から明らかなように、本発明の第3の実施形態となる車両駆動装置では、コントロールユニット5が、インバータ保護装置4が作動する前後のインバータ電圧の差を所定の判定閾値と比較することによりインバータ保護装置4が正常に作動するか否かを診断するので、インバータ2に高電圧が印加されインバータ保護装置4が作動する場合であっても、インバータ保護装置4が正常に作動するか否かを診断することができる。なお本実施形態の車両駆動装置は、第1の実施形態の車両駆動装置と併用又はそれぞれ単独で使用することができる。
【0047】
〔第4の実施形態〕
次に、図9,図10を参照して、本発明の第4の実施形態となる車両駆動装置の構成について説明する。
【0048】
〔車両駆動装置の構成〕
本発明の第4の実施形態となる車両駆動装置の構成は、第2の実施形態となる車両駆動装置の構成と同じであるので、以下ではその説明を省略する。
【0049】
〔インバータ保護機能診断処理〕
このような構成を有する車両駆動装置は、以下に示すインバータ保護機能診断処理(以下、診断処理と略記)を実行することにより、インバータ2に高電圧が印加され、高電圧検知回路22がスイッチング回路23の作動状態を閉状態とすることでインバータ保護装置4が作動する場合であっても、インバータ保護装置4が正常に作動するか否かを診断可能にする。以下、図9に示すフローチャートを参照して、この診断処理を実行する際の車両駆動装置の動作の流れについて説明する。
【0050】
図9に示すフローチャートは、所定の動作状態になったタイミングで開始となり、診断処理はステップS31の処理に進む。なおステップS31の処理は上記ステップS1の処理と同じであるので、以下では説明を省略し、ステップS32の処理から説明する。
【0051】
ステップS32の処理では、コントロールユニット5が、インバータ電圧検知回路21により検知されたインバータ電圧が高電圧判定閾値Vth3以上であるか否かを判別する。判別の結果、インバータ電圧が高電圧判定閾値Vth3未満である場合、コントロールユニット5は一連の診断処理を終了する。一方、インバータ電圧が高電圧判定閾値Vth3以上である場合には、コントロールユニット5は診断処理をステップS33の処理に進める。なお高電圧判定閾値Vth3としては、例えば電動機3の制御電圧の最大値以上、且つ、インバータ2の耐電圧値の最大値未満の電圧値を例示できる。
【0052】
ステップS33の処理では、コントロールユニット5が、スイッチング回路23の作動状態が開状態であるか否かを判別する。判別の結果、スイッチング回路23の作動状態が開状態である場合、コントロールユニット5は診断処理をステップS34の処理に進める。一方、スイッチング回路23の作動状態が閉状態である場合には、コントロールユニット5は診断処理をステップS37の処理に進める。
【0053】
ステップS34の処理では、コントロールユニット5が、電流検知回路24によりスイッチング回路23が開状態にある際にバイパス抵抗回路R1に流れる電流I21を測定する(図10に示す時間T=T1)。これにより、ステップS34の処理は完了し、診断処理はステップS35の処理に進む。
【0054】
ステップS35の処理では、コントロールユニット5が、ステップS34の処理により測定された電流I21が所定の判定閾値Ith1より大きいか否かを判別する。判別の結果、電流I21が所定の判定閾値Ith1より大きい場合、コントロールユニット5は診断処理をステップS36の処理に進める。一方、電流I21が所定の判定閾値Ith1以下である場合には、コントロールユニット5は、インバータ保護装置4が正常に動作していると判断し、一連の診断処理を終了する。なお上記判定閾値Ith1としては、バイパス抵抗回路R1に電流が流れていない状態における電流値を例示できる。
【0055】
ステップS36の処理では、コントロールユニット5が、スイッチング回路23の作動状態が開状態にあるにも係わらず通電していることからインバータ保護装置4が異常作動していると判断し、インバータ2及び界磁コイルLの制御を停止することにより、発電機1の制御を停止し、電動機3の動作を停止する。また高電圧検知回路22が、インバータ電圧が高電圧になるとスイッチング回路23の作動状態を閉状態にする信号を出力する(図10に示す時刻T=T2)。これにより、ステップS36の処理は完了し、一連の診断処理は終了する。
【0056】
ステップS37の処理では、コントロールユニット5が、電流検知回路24によりスイッチング回路23が閉状態にある際にバイパス抵抗回路R1に流れる電流I22を測定する(図10に示す時間T=T3)。これにより、ステップS37の処理は完了し、診断処理はステップS38の処理に進む。
【0057】
ステップS38の処理では、コントロールユニット5が、ステップS37の処理により測定された電流I22が所定の判定閾値Ith2以上であるか否かを判別する。判別の結果、電流I21が所定の判定閾値Ith2以上である場合、コントロールユニット5は、インバータ保護装置4が正常に動作していると判断し、一連の診断処理を終了する。一方、電流I21が所定の判定閾値Ith2未満である場合には、コントロールユニット5は診断処理をステップS39の処理に進める。なお一般に発電機3の発電電力は、内燃機関がアイドリング時の回転数相当で発電機1を駆動し、コントロールユニット5による界磁コイルLの界磁制御が停止している状態においては常に一定になる。従って上記判定閾値Ith2はこの一定電力とバイパス抵抗回路R1の抵抗値により定まる電流値以下の所定電圧値とする。
【0058】
ステップS39の処理では、コントロールユニット5が、スイッチング回路23の作動状態が閉状態にあるにも係わらずバイパス抵抗回路R1により電力が消費されていないことからインバータ保護装置4が異常作動していると判断し、インバータ2及び界磁コイルLの制御を停止することにより、発電機1の制御を停止し、電動機3の動作を停止する。これにより、ステップS39の処理は完了し、一連の診断処理は終了する。
【0059】
以上の説明から明らかなように、本発明の第4の実施形態となる車両駆動装置では、コントロールユニット5が、インバータ保護装置4が作動している時にバイパス抵抗回路R1に流れる電流を検知して所定の判定閾値と比較することによりインバータ保護装置4が正常に作動するか否かを診断するので、インバータ2に高電圧が印加されインバータ保護装置4が作動する場合であっても、インバータ保護装置4が正常に作動するか否かを診断することができる。なお本実施形態の車両駆動装置は、第2の実施形態の車両駆動装置と併用又はそれぞれ単独で使用することができる。
【0060】
〔車両の構成〕
上記実施形態の車両駆動装置は例えば図11に示すようなハイブリッド車両に適用することができる。本ハイブリッド車両では、図11に示すように、内燃機関のエンジン41で前後輪の一方の主駆動輪42が回転駆動され、モータ43によって前後輪の後方の従駆動輪44が選択的に回転駆動される。すなわち、エンジン41で得られた動力はエンジン側クラッチ45,変速機46,及びデファレンシャルギア47を介して主駆動輪42の車軸に伝達され、車輪に取り付けられた主駆動輪42が回転駆動される。一方、モータ43で得られた回転駆動力は回転数センサ48,吸収部材49,モータ側クラッチ50,及びデファレンシャルギア51を介して従駆動輪44側の車軸に選択的に伝達され、車軸に取り付けられた従駆動輪44が選択的に回転駆動される。従って、モータ側クラッチ50が締結状態にあっては車両は四輪駆動される一方、モータ側クラッチ50が非締結状態にあっては車両は二輪駆動される。
【0061】
回転数センサ48は、モータ43の回転数を計測し、計測した回転数を後述するモータコントロールユニット53と車両コントロールユニット55に与え、モータ43の回転速度(ωm)を算出する際に用いられる。吸収部材49は、例えばスプリング等から構成され、モータ側クラッチ50の締結時に締結衝撃を緩和する。
【0062】
エンジン41には、ベルト等を介して発電機52が連結されている。この発電機52は、エンジン41で得られた動力で回転駆動され、車両コントロールユニット55の制御の元に所望の直流電力を発電する。モータ43には、モータ43の温度を計測する温度センサ(図示せず)が設けられ、この温度センサで計測されたモータ温度はモータコントロールユニット53及び車両コントロールユニット55に与えられる。
【0063】
モータコントロールユニット53は、発電機52で得られた直流電力をモータ43に供給される交流電力に変換するインバータからなるドライブユニット54を含み、回転数センサ48で計測されたモータ回転数,温度センサで計測されたモータ温度,及びモータ43に要求される要求トルク(τ)を入力し、これらの値と車両コントロールユニット55の制御の下にモータ43を駆動制御する。モータ43に要求される要求トルクは、アクセルペダルの踏み込み量やスロットル開度に応じて求められた車両全体としてのトルクからエンジン41側に要求されるトルクを差し引いた値として算出される。
【0064】
車両コントロールユニット55は、車両の運転を制御する制御中枢として機能し、プログラムに基づいて各種動作処理を制御するコンピュータに必要な、CPU,記憶装置,入出力装置等を備えた例えばマイクロコンピュータ等により実現される。車両コントロールユニット55は、回転数センサ48,モータ43の温度センサ,及び車両の運転に必要な情報を収集するセンサ(図示せず)からの信号を読み込み、読み込んだ各種信号と予め内部に保有する制御ロジック(プログラム)に基づいて、モータ側クラッチ50,発電機52,及びモータコントロールユニット53を含む本ハイブリッド車両の構成要素に指令を送り、車両の運転/停止に必要な全ての動作を統括管理して制御する。
【0065】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、発電機の発電電力をインバータで交流電力に変換して車両の電動機に供給することにより車両を駆動する車両駆動装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施形態となる車両駆動装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態となるインバータ保護機能診断処理の流れを示すフローチャート図である。
【図3】図2に示すインバータ保護機能診断処理を実行している際のインバータ電圧の時間変化を示す波形図である。
【図4】本発明の第2の実施形態となる車両駆動装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第2の実施形態となるインバータ保護機能診断処理の流れを示すフローチャート図である。
【図6】図5に示すインバータ保護機能診断処理を実行している際のバイパス抵抗回路に流れる電流値の時間変化を示す波形図である。
【図7】本発明の第3の実施形態となるインバータ保護機能診断処理の流れを示すフローチャート図である。
【図8】図7に示すインバータ保護機能診断処理を実行している際のインバータ電圧の時間変化を示す波形図である。
【図9】本発明の第4の実施形態となるインバータ保護機能診断処理の流れを示すフローチャート図である。
【図10】図9に示すインバータ保護機能診断処理を実行している際のバイパス抵抗回路に流れる電流値の時間変化を示す波形図である。
【図11】本発明に係る車両駆動装置が適用されるハイブリッド車両の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0068】
1:発電機
2:電動機駆動用インバータ回路
3:電動機
4:インバータ保護装置
5:コントロールユニット
11:永久磁石
12:電源
21:インバータ電圧検知回路
22:高電圧検知回路
23:スイッチング回路
24:電流検知回路
L:界磁コイル
R1:バイパス抵抗回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内燃機関により駆動される発電機の発電電力をインバータで交流電力に変換して車両の電動機に供給することにより車両を駆動する車両駆動装置であって、
前記発電機と前記インバータの間に配設され、インバータに所定電圧以上の電圧が印加される場合にバイパス抵抗回路に電流を流すことによりインバータに過電圧が印加されないように制御するインバータ保護手段と、
前記インバータに印加される電圧を検出するインバータ電圧検出手段と、
前記インバータ電圧検出手段により検出された電圧値に基づいて前記インバータ保護手段の動作状態を診断する診断手段と
を備えることを特徴とする車両駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両駆動装置において、
所定の条件下において前記インバータ保護手段を作動させる作動手段を備え、
前記診断手段は、前記作動手段により前記インバータ保護手段が作動されていない時に前記インバータ電圧検出手段により検出された電圧値と、前記作動手段により前記インバータ保護手段が作動されている時に前記インバータ電圧検出手段により検出された電圧値とを比較することにより、前記インバータ保護手段の動作状態を診断することを特徴とする車両駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両駆動装置において、前記診断手段は、前記インバータ電圧検出手段により検出された電圧値が所定値以上である場合に前記インバータ保護手段の動作状態を診断することを特徴とする車両駆動装置。
【請求項4】
車両の内燃機関により駆動される発電機の発電電力をインバータで交流電力に変換して車両の電動機に供給することにより車両を駆動する車両駆動装置であって、
前記発電機と前記インバータの間に配設され、インバータに所定電圧以上の電圧が印加される場合にバイパス抵抗回路に電流を流すことによりインバータに過電圧が印加されないように制御するインバータ保護手段と、
前記バイパス抵抗回路に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段により検出された電流値に基づいて前記インバータ保護手段の動作状態を診断する診断手段と
を備えることを特徴とする車両駆動装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両駆動装置において、
所定の条件下において前記インバータ保護手段を作動させる作動手段を備え、
前記診断手段は、前記作動手段により前記インバータ保護手段が作動されていない時に前記電流検出手段により検出された電流値と前記作動手段により前記インバータ保護手段が作動されている時に前記電流検出手段により検出された電流値とをそれぞれ所定の閾値と比較することにより、前記インバータ保護手段の動作状態を診断することを特徴とする車両駆動装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の車両駆動装置において、
前記インバータに印加される電圧を検出するインバータ電圧検出手段を備え、
前記診断手段は、前記インバータ電圧検出手段により検出された電圧値が所定値以上である場合に前記インバータ保護手段の動作状態を診断することを特徴とする車両駆動装置。
【請求項1】
車両の内燃機関により駆動される発電機の発電電力をインバータで交流電力に変換して車両の電動機に供給することにより車両を駆動する車両駆動装置であって、
前記発電機と前記インバータの間に配設され、インバータに所定電圧以上の電圧が印加される場合にバイパス抵抗回路に電流を流すことによりインバータに過電圧が印加されないように制御するインバータ保護手段と、
前記インバータに印加される電圧を検出するインバータ電圧検出手段と、
前記インバータ電圧検出手段により検出された電圧値に基づいて前記インバータ保護手段の動作状態を診断する診断手段と
を備えることを特徴とする車両駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両駆動装置において、
所定の条件下において前記インバータ保護手段を作動させる作動手段を備え、
前記診断手段は、前記作動手段により前記インバータ保護手段が作動されていない時に前記インバータ電圧検出手段により検出された電圧値と、前記作動手段により前記インバータ保護手段が作動されている時に前記インバータ電圧検出手段により検出された電圧値とを比較することにより、前記インバータ保護手段の動作状態を診断することを特徴とする車両駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両駆動装置において、前記診断手段は、前記インバータ電圧検出手段により検出された電圧値が所定値以上である場合に前記インバータ保護手段の動作状態を診断することを特徴とする車両駆動装置。
【請求項4】
車両の内燃機関により駆動される発電機の発電電力をインバータで交流電力に変換して車両の電動機に供給することにより車両を駆動する車両駆動装置であって、
前記発電機と前記インバータの間に配設され、インバータに所定電圧以上の電圧が印加される場合にバイパス抵抗回路に電流を流すことによりインバータに過電圧が印加されないように制御するインバータ保護手段と、
前記バイパス抵抗回路に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段により検出された電流値に基づいて前記インバータ保護手段の動作状態を診断する診断手段と
を備えることを特徴とする車両駆動装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両駆動装置において、
所定の条件下において前記インバータ保護手段を作動させる作動手段を備え、
前記診断手段は、前記作動手段により前記インバータ保護手段が作動されていない時に前記電流検出手段により検出された電流値と前記作動手段により前記インバータ保護手段が作動されている時に前記電流検出手段により検出された電流値とをそれぞれ所定の閾値と比較することにより、前記インバータ保護手段の動作状態を診断することを特徴とする車両駆動装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の車両駆動装置において、
前記インバータに印加される電圧を検出するインバータ電圧検出手段を備え、
前記診断手段は、前記インバータ電圧検出手段により検出された電圧値が所定値以上である場合に前記インバータ保護手段の動作状態を診断することを特徴とする車両駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−207317(P2009−207317A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48625(P2008−48625)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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