説明

車体前部構造

【課題】剛性を確保することができ、さらに、軽量化を図ることができる車体前部構造を提供する。
【解決手段】車体前部構造10は、左右の前脚部27,35の下端部を左右のアッパメンバー25,32の前端部にそれぞれ連結するために、左右の前脚部27,35の下端部から左右のアッパメンバー25,32の前端部までそれぞれ上り勾配で延ばした左右の傾斜連結部51,53を備える。左傾斜連結部51、左水平連結部26および左前脚部27で略三角形の左フレーム部18を形成可能とし、右傾斜連結部53、右水平連結部34および右前脚部35で、略三角形の右フレーム部19を形成可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントサイドフレームの前端部に脚部を設け、脚部にサブフレームを設け、サブフレームにフロントサスペンションを設けた車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造として、車体の前後方向にフロントサイドフレームを延ばし、このフロントサイドフレームの後方上側にフロントピラーを設け、このフロントピラーの下端部から前方に向けてフロントサイドフレームの外側にアッパメンバーを延ばし、このアッパメンバーを直線状に形成するとともに車体後方に向けて上り勾配に配置したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−112173公報
【0003】
特許文献1の車体前部構造によれば、アッパメンバーを直線状に形成するとともに車体後方に向けて上り勾配に配置することで、車体前方からアッパメンバーの前端部に作用した荷重をフロントピラーに良好に伝え、荷重を効率よく分散することが可能である。
【0004】
この車体前部構造は、通常、フロントサイドフレームの下部に脚部が設けられ、この脚部にサブフレームが設けられ、このサブフレームにエンジンやトランスミッションなどが搭載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車体前部構造のサブフレームには、左右のフロントサスペンションが取り付けられ、それぞれフロントサスペンションで左右の前輪が支えられている。
この車体前部構造によれば、例えば、車両の旋回中おいて、左右の前輪に車体幅方向の荷重(以下、「横荷重」という)が作用する。
【0006】
そして、左右の前輪の横荷重は、各フロントサスペンションやサブフレームを介して脚部の下端部に伝わる。
このため、左右の脚部が横荷重で倒れないように、左右の脚部の剛性を高める必要があり、そのことが車体重量の軽量化を図る妨げになっていた。
【0007】
本発明は、剛性を確保することができ、さらに、軽量化を図ることができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車体前後方向に左右のフロントサイドフレームを延ばし、各フロントサイドフレームの後方上側に左右のフロントピラーをそれぞれ設け、各フロントピラーの下端部から前方に向けて各フロントサイドフレームの外側に左右のアッパメンバーをそれぞれ延ばし、各アッパメンバーの前端部を車体幅方向に延びる左右の水平連結部で各フロントサイドフレームの前端部にそれぞれ連結し、各フロントサイドフレームの前端部に左右の脚部を下方に向けてそれぞれ設け、各脚部の下端部にサブフレームを設け、このサブフレームに左右の前輪を支えるフロントサスペンションをそれぞれ設けた車体前部構造において、前記脚部の下端部を前記アッパメンバーの前端部に連結するために、前記脚部の下端部から前記アッパメンバーの前端部まで上り勾配で延ばした傾斜連結部を備え、この傾斜連結部、前記水平連結部および前記脚部で、略三角形のフレーム部を形成可能としたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明において、前記傾斜連結部は、車体前後方向に所定間隔をおいて設けられた一対の傾斜連結バーであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、脚部の下端部をアッパメンバーの前端部に傾斜連結部で連結して、傾斜連結部、水平連結部および脚部で略三角形のフレーム部を構成した。
脚部を略三角形のフレーム部の構成部材とすることで、脚部の剛性を確保することが可能になる。
【0011】
すなわち、脚部の下端部に車体幅方向の横荷重が作用した際に、作用した横荷重が傾斜連結部を経てアッパメンバーの前端部に伝わる。
アッパメンバーの前端部は、水平連結部でフロントサイドフレームの前端部に連結されている。よって、伝わった横荷重をアッパメンバーの前端部で良好に受けることができる。
このように、脚部の下端部に作用した横荷重を好適に分散することで、横荷重に対する脚部の剛性を良好に確保することができるという利点がある。
【0012】
また、脚部の下端部に作用した横荷重をアッパメンバーの前端部に分散させることで、例えば脚部の板厚寸法を大きくして脚部自体の剛性を必要以上に高くしなくてもよい。
これにより、脚部の重量を抑えることが可能になり、車両の軽量化を図ることができるという利点がある。
【0013】
請求項2に係る発明では、傾斜連結部を、車体前後方向に所定間隔をおいて設けられた一対の傾斜連結バーとした。
よって、一対の傾斜連結バー間に収容空間を形成することができ、この収容空間に、フロントウインド用のウオッシャタンクなどの車体装備品(車両部品)を収容することができる。
これにより、ウオッシャタンクなどの車体装備品を収容する空間を容易に確保することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は作業者から見た方向に従い、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
図1は本発明に係る車体前部構造(第1実施の形態)を示す斜視図、図2は第1実施の形態に係る車体前部構造を示す正面図である。
車体前部構造10は、主要なフレームを構成するメインフレーム11と、メインフレーム11の下部に設けられたサブフレーム12と、左右の前輪13,14を支える左右のフロントサスペンション15,16とを備える。
【0015】
メインフレーム11は、車体前後方向に左右のフロントサイドフレーム21,22が延ばされ、左フロントサイドフレーム21の後方上側に左フロントピラー24が設けられ、左フロントピラー24の下端部24aから前方に向けて左フロントサイドフレーム21の外側に左アッパメンバー25が延ばされ、左アッパメンバー25の前端部25aが車体幅方向に延びる左水平連結部26で左フロントサイドフレーム21の前端部21aに連結され、この前端部21aに左前脚部(左脚部)27が下方に向けて設けられ、右フロントサイドフレーム22の後方上側に右フロントピラー31が設けられ、右フロントピラー31の下端部31aから前方に向けて右フロントサイドフレーム22の外側に右アッパメンバー32が延ばされ、右アッパメンバー32の前端部32aが車体幅方向に延びる右水平連結部34で右フロントサイドフレーム22の前端部22aに連結され、この前端部22aに右前脚部(右脚部)35が下方に向けて設けられている。
【0016】
また、メインフレーム11は、左フロントサイドフレーム21と左アッパメンバー25との間に、左前輪13を覆う左ホイールハウス37が設けられ、右フロントサイドフレーム22と右アッパメンバー32との間に、右前輪14(図2参照)を覆う右ホイールハウス38が設けられ、左右のフロントサイドフレーム21,22の前端部21a,22a間にフロントバルクヘッド41が設けられている。
【0017】
フロントバルクヘッド41は、左右のフロントサイドフレーム21,22の前端部21a,22aに左右のステイ43,44がそれぞれ設けられ、左右のステイ43,44の上端部にアッパーフレーム45が架け渡され、左右のステイ43,44の下端部にロアフレーム46が架け渡されている。
ロアフレーム46は、左端部46aが左ステイ43の下端部43aに取り付けられ、右端部46bが右ステイ44の下端部44aに取り付けられている。
【0018】
さらに、メインフレーム11は、左前脚部27の下端部27aを左アッパメンバー25の前端部25aに連結する左傾斜連結部(傾斜連結部)51が設けられ、左傾斜連結部51、左水平連結部26および左前脚部27で、車体前後方向に所定の幅を有する略三角形の左フレーム部(フレーム部)18が構成され、右前脚部35の下端部35aを右アッパメンバー32の前端部32aに連結する右傾斜連結部(傾斜連結部)53が設けられ、右傾斜連結部53、右水平連結部34および右前脚部35で、車体前後方向に所定の幅を有する略三角形の右フレーム部(フレーム部)19が構成されている。
【0019】
サブフレーム12は、車体前後方向に左右のサブサイドフレーム55,56が延ばされ、左右のサブサイドフレーム55,56の前端部に前サブクロスメンバー57が架け渡され、左右のサブサイドフレーム55,56の後端部に後サブクロスメンバー58が架け渡されることで略矩形状の枠体に形成されている。
【0020】
このサブフレーム12は、左前端部(前端部)12aが左前脚部27の下端部27aに取り付けられるとともに、右前端部(前端部)12bが右前脚部35の下端部35aに取り付けられ、左中央部12cが左中央脚部61の下端部に設けられるとともに、右中央部12dが右中央脚部62の下端部に設けられ、左後端部12eが左後脚部63の下端部に設けられるとともに、右後端部12fが右後脚部64の下端部に設けられている。
【0021】
左中央脚部61は、左フロントサイドフレーム21の中央部に下方に向けて設けられている。右中央脚部62は、右フロントサイドフレーム22の中央部に下方に向けて設けられている。
また、左後脚部63は、左フロントサイドフレーム21の後端部に下方に向けて設けられている。右後脚部64は、右フロントサイドフレーム22の後端部に下方に向けて設けられている。
【0022】
また、サブフレーム12は、左前輪13を支える左フロントサスペンション15が左サブサイドフレーム55に設けられ、右前輪14を支える右フロントサスペンション16が右サブサイドフレーム56に設けられている。
左フロントサスペンション15は、上端部15aが左ホイールハウス37の頂部37aに設けられてる。
右フロントサスペンション16は、上端部16aが右ホイールハウス38の頂部38aに設けられてる。
【0023】
つぎに、左フレーム部18を図3〜図5に基づいて説明する。
図3は第1実施の形態に係る車体前部構造の左フレーム部を示す斜視図である。
左フレーム部18は、左前脚部27、左水平連結部26および左傾斜連結部51で略三角形の枠体に形成可能なフレームである。
【0024】
具体的には、左前脚部27および左フロントサイドフレーム21の前端部21aで左鉛直部66が形成される。この左鉛直部66、左水平連結部26および左傾斜連結部51で左フレーム部18が略三角形の枠体に形成される。
左前脚部27を略三角形のフレーム部18の構成部材とすることで、左前脚部27の剛性を確保することができる。
この左フレーム部18は、車体前後方向に対して所定の幅Wを有するフレームである。
【0025】
図4は第1実施の形態に係る車体前部構造の左フレーム部を示す分解斜視図、図5は図3の5−5線断面図である。
左鉛直部66は、左フロントサイドフレーム21の前端部21aと、前端部21aに設けられた左前脚部27とで形成された部材である。
【0026】
左前脚部27は、左フロントサイドフレーム21の内壁71から内側壁72を下方に延ばし、左フロントサイドフレーム21の下壁73から前後の壁74,75をそれぞれ所定間隔(略W寸法)をおいて下方に延ばし、内側壁72、前後の壁74,75のそれぞれの下端部に底部76を設け、左フロントサイドフレーム21の外壁78、前後の壁74,75および底部76に外側壁81を接合したものである。
【0027】
底部76は、下壁82と補強部材83で形成された部材で、下壁82と補強部材83との間にナット84が溶接されている。
ナット84は、図1に示すサブフレーム12の左前端部12aを取り付けるための締結部材である。
内側壁72は、後壁75や、底部76の下壁82を一体に形成した部材である。この内側壁72のうち、前部72aが左ステイ43に接合されている。
【0028】
外側壁81は、略矩形状に形成された部材で、前辺81aから略三角形の前枠体86が車体外側に向けて折り曲げられ、後辺81bから略三角形の後枠体87が車体外側に向けて折り曲げられている。
外側壁81、前後の枠体86,87で連結フレーム80が形成されている。
【0029】
前枠体86は、前辺81aに沿って前縦部材89が延び、前縦部材89の上端部89aから車体外側に向けて前梁部材91が水平に延び、前縦部材89の下端部(すなわち、左前脚部27の下端部27a)から前梁部材91の外端部91aに向けて前傾斜連結バー(傾斜連結部)92が上り勾配で延びている。
【0030】
後枠体87は、後辺81bに沿って後縦部材94が延び、後縦部材94の上端部94aから車体外側に向けて後梁部材95が水平に延び、後縦部材94の下端部(すなわち、左前脚部27の下端部27a)から後梁部材95の外端部95aに向けて後傾斜連結バー(傾斜連結部)96が上り勾配で延びている。
【0031】
ここで、連結フレーム80の外側壁81を、左フロントサイドフレーム21の外壁78、前後の壁74,75および底部76に接合する例を具体的に説明する。
すなわち、左フロントサイドフレーム21の外壁78に、外側壁81の略上半分81dを接合して、外側壁81の略下半分81eを下方に延ばす。
【0032】
また、外側壁81の略下半分81eのうち、前辺81aを前壁74の外折曲片74aに接合する。さらに、後枠体87の後縦部材94を後壁75の外縁部75aに接合する。
加えて、外側壁81の下折曲片81cを、下壁82の折曲片82aに接合する。
これにより、連結フレーム80の外側壁81が、左フロントサイドフレーム21の外壁78、前後の壁74,75および底部76に接合される。
【0033】
左水平連結部26は、左フロントサイドフレーム21の外壁78と左アッパメンバー25の前端部25aとに連結部材98が架け渡されて水平に配置され、連結部材98の前折曲片98aに前枠体86の前水平梁部材91が接合され、連結部材98の後片98bに後枠体87の折曲片95bが接合されている。
【0034】
折曲片95bは、後水平梁部材95の上辺から車体後方に折り曲げられた片である。
後水平梁部材95の後端部95aから折曲片95cが折り曲げられ、折曲片95cが左アッパメンバー25の前端部25aに接合されている。
連結部材98は、外側端部の第1、第2の折曲片98c,98d(第2折曲片98dは図9参照)が左アッパメンバー25の前端部25aに接合されている。
【0035】
左傾斜連結部51は、連結フレーム80の前傾斜連結バー92および後傾斜連結バー96で形成されている。
前傾斜連結バー92および後傾斜連結バー96は、所定の幅(所定間隔)Wをおいて配置されている。
すなわち、左傾斜連結部51は、左前脚部27の下端部27aから左傾斜連結部51が左アッパメンバー25の前端部25aまで上り勾配で延びる補強部材である。
【0036】
以上説明したように、左フレーム部18は、車体前後方向に対して所定の幅Wを有するフレームである。そして、左傾斜連結部51は、車体前後方向(車長方向)に所定間隔Wをおいて設けられた前後の傾斜連結バー92,96である。
よって、前後の傾斜連結バー92,96間に収容空間101を形成することができ、この収容空間101に、車体装備品(車両部品)を収容することができる。
なお、左フレーム部18の収容空間101に車体装備品を設ける例は、第2〜第3実施の形態で詳しく説明する。
【0037】
つぎに、右フレーム部19を図6〜図7に基づいて説明する。
図6は第1実施の形態に係る車体前部構造の右フレーム部を示す斜視図、図7は第1実施の形態に係る車体前部構造の右フレーム部を後方から見た状態を示す斜視図である。
右フレーム部19は、右前脚部35、右水平連結部34および右傾斜連結部53で略三角形の枠体に形成可能なフレームである。
【0038】
具体的には、右前脚部35および右フロントサイドフレーム22の前端部22aで右鉛直部104が形成される。この右鉛直部104、右水平連結部34および右傾斜連結部53で右フレーム部19が略三角形の枠体に形成される。
右前脚部35を略三角形のフレーム部19の構成部材とすることで、右前脚部35の剛性を確保することができる。
この右フレーム部19は、車体前後方向に対して所定の幅Wを有するフレームである。
【0039】
なお、左右のフレーム部18,19(左フレーム部18は図3参照)は左右対称の部材である。
よって、右前脚部35、右水平連結部34および右傾斜連結部53の各構成部材を、左前脚部27、左水平連結部26および左傾斜連結部51の各構成部材と同一符号を付して説明を省略する。
【0040】
右フレーム部19は、車体前後方向に対して所定の幅Wを有するフレームであり、右傾斜連結部53を、車体前後方向(車長方向)に所定間隔Wをおいて設けられた前後の傾斜連結バー92,96とした。
よって、前後の傾斜連結バー92,96間に収容空間101を形成することができ、この収容空間101に、フロントウインド用のウオッシャタンク106を収容することができる。
【0041】
すなわち、ウオッシャタンク106は、略矩形枠体状に形成された水平タンク部107と、水平タンク部107の右側壁107a側から車体後方に向けて斜め上方に延びた傾斜タンク部108とを備える。
【0042】
水平タンク部107は、前後の傾斜連結バー92,96間から収容空間101内に収容され、水平タンク部107の左側壁107bが右フロントサイドフレーム22に近接され、水平タンク部107の右側壁107aが右アッパメンバー32の外側に位置している。
前後の傾斜連結バー92,96間に収容空間101を形成し、収容空間101に水平タンク部107を収容することで水平タンク部107を配置する空間を容易に確保することができる。
【0043】
傾斜タンク部108は、右アッパメンバー32の外壁78に沿って後方に延びている。右アッパメンバー32の外壁78は凹状に凹んでいるので、この凹みに傾斜タンク部108を収めることで、傾斜タンク部108を配置する空間を容易に確保することができる。
これにより、フロントウインド用のウオッシャタンク106を収容する収容空間101を一層容易に確保することができる。
【0044】
加えて、ウオッシャタンク106は、右フレーム部19に締結部材(ボルトなど)で取り付けることが可能である。
よって、右フレーム部19をウオッシャタンク106の取付ブラケットとして兼用することができるので部品点数を抑えることができる。
【0045】
つぎに、左右の前脚部27,35に横荷重が作用した例を図8に基づいて説明する。
図8(a),(b)は第1実施の形態に係る車体前部構造にフロントサスペンションから横荷重が作用した例を説明する図である。
(a)において、車両の旋回中に、右前輪14に車体幅方向の横荷重が作用することで、右前輪14の横荷重が右フロントサスペンション16およびサブフレーム12を介して左前脚部27の下端部27aに矢印F1の如く伝わる。
【0046】
左前脚部27の下端部27aの横荷重F1は、左傾斜連結部51を経て左アッパメンバー25の前端部25aに矢印F2の如く伝わる。
左アッパメンバー25の前端部25aは、左水平連結部26で左フロントサイドフレーム21の前端部21aに連結されている。
【0047】
よって、左アッパメンバー25の前端部25aに伝わった横荷重F2を前端部25aで良好に受けることができる。
このように、左前脚部27の下端部27aに作用した横荷重F1を好適に分散することで、横荷重F1に対する左前脚部27の剛性を良好に確保することができる。
【0048】
また、左前脚部27の下端部27aの横荷重F1を左アッパメンバー25の前端部25aに分散することで、例えば左前脚部27の板厚寸法を大きくして左前脚部27自体の剛性を必要以上に高くしなくてもよい。
これにより、左前脚部27の重量を抑えることが可能になり、車両の軽量化を図ることができる。
【0049】
(b)において、車両の旋回中に、左前輪13に車体幅方向の横荷重が作用することで、左前輪13の横荷重が左フロントサスペンション15およびサブフレーム12を介して右前脚部35の下端部35aに矢印F3の如く伝わる。
右前脚部35の下端部35aの横荷重F3は、右傾斜連結部53を経て右アッパメンバー32の前端部32aに矢印F4の如く伝わる。
右アッパメンバー32の前端部32aは、右水平連結部34で右フロントサイドフレーム22の前端部22aに連結されている。
【0050】
よって、右アッパメンバー32の前端部32aに伝わった荷重F4を前端部32aで良好に受けることができる。
このように、右前脚部35の下端部35aに作用した横荷重F3を好適に分散することで、横荷重F3に対する右前脚部35の剛性を良好に確保することができる。
【0051】
また、右前脚部35の下端部35aの横荷重F3を、右傾斜連結部53を経て右アッパメンバー32の前端部32aに分散することで、例えば右前脚部35の板厚寸法を大きくして右前脚部35自体の剛性を必要以上に高くしなくてもよい。
これにより、右前脚部35の重量を抑えることが可能になり、車両の軽量化を図ることができる。
【0052】
ところで、例えば、フロントバンパー高さの異なる車両が、左右の端部のみ前面衝突(いわゆる、オフセット前面衝突)することが考えられる。
車両前部構造10は、図8(a),(b)に示すように、左右の傾斜連結部51,53を備えている。
これにより、オフセット前面衝突の場合にも、左右の傾斜連結部51,53を他方の車両骨格に当てることが可能になり、それぞれの車両の骨格同士のすれ違いを防止することができる。
【0053】
つぎに、左フレーム部18の収容空間101に車体装備品を設ける第2〜第3実施の形態を図9〜図10に基づいて説明する。
図9は本発明に係る車体前部構造(第2実施の形態)の左フレーム部にインタークーラーを設けた状態を示す斜視図である。
左フレーム部18は、車体前後方向に対して所定の幅W(図3参照)を有するフレームで、左傾斜連結部51を、車体前後方向に所定間隔Wをおいて設けられた前後の傾斜連結バー92,96(後傾斜連結バー96は図3参照)とした。
よって、前後の傾斜連結バー92,96間に収容空間101を形成することができ、この収容空間101に、インタークーラー111を収容することができる。
【0054】
インタークーラー111は、略矩形枠体状に形成され、上端部111aに導入ホース112が取り付けられ、内側壁111bに導出ホース113が取り付けられている。
導入ホース112はターボチャージャー(図示せず)に連通され、導出ホース113はエアクリーナ(図示せず)に連通されている。
【0055】
インタークーラー111は、左フレーム部18の収容空間101に収容され、取付ブラケット115に取り付けられている。
取付ブラケット115は、左フレーム部18にボルト116…などの締結部材で取り付けられている。
そして、取付ブラケット115および左フレーム部18で、インタークーラー111を支える。
【0056】
具体的には、取付ブラケット115の底部材115aにインタークーラー111の底部111cが取り付けられ、取付ブラケット115の上部材115bにインタークーラー111の上部111aが取り付けられている。
導入ホース112は、連結部材98の開口部117を経てターボチャージャーまで延出されている。
これにより、インタークーラー111を収容する収容空間101を容易に確保することができる。
【0057】
加えて、取付ブラケット115を左フレーム部18にボルト116…などの締結部材で取り付け、取付ブラケット115および左フレーム部18でインタークーラー111を支えた。
これにより、左フレーム部18は、インタークーラー用取付ブラケットの一部を兼用することができるので部品点数を抑えることができる。
【0058】
図10は本発明に係る車体前部構造(第3実施の形態)の左フレーム部に吸気ダクトを設けた状態を示す斜視図である。
第3実施の形態は、左フレーム部18の収容空間101に吸気ダクト121を収容したものである。
【0059】
吸気ダクト121は、略矩形枠体状に形成されたダクト本体122と、ダクト本体122に外気を導く導入ダクト123と、ダクト本体122に設けられたレゾネータ124とを備える。
ダクト本体122は、図示しないダクトホースを介してエアクリーナに連通されている。
【0060】
ダクト本体122は、左フレーム部18の収容空間101に収容され、取付ブラケット125に取り付けられている。
取付ブラケット125は、上下の取付ブラケット125a,125bを有し、上下の取付ブラケット125a,125bは、左フレーム部18にボルト126…などの締結部材で取り付けられている。
【0061】
そして、取付ブラケット125および左フレーム部18で、吸気ダクト121を支える。これにより、吸気ダクト121を収容する収容空間101を容易に確保することができる。
なお、導入ダクト123は、連結部材98の開口部117を経て上方に延出されている。
【0062】
加えて、取付ブラケット125を左フレーム部18にボルト126…などの締結部材で取り付け、取付ブラケット125および左フレーム部18で吸気ダクト121を支えた。
これにより、左フレーム部18は、吸気ダクト用取付ブラケットの一部を兼用することができるので部品点数を抑えることができる。
【0063】
なお、前記実施の形態では、左傾斜連結部51を前後の傾斜連結バー92,96で形成するとともに、右傾斜連結部53を前後の傾斜連結バー92,96で形成した例について説明したが、これに限らないで、前後の傾斜連結バー92,96のいずれか一方のみを用いることや、前後の傾斜連結バー92,96を傾斜プレートで一体に連結することも可能である。
【0064】
また、前記実施の形態で例示した左右のフレーム部18,19、左右の水平連結部26,34、左右の前脚部27,35の形状は適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の車体前部構造は、フロントサイドフレームの前端部に脚部を設け、脚部にサブフレームを設け、サブフレームにフロントサスペンションを設けた自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る車体前部構造(第1実施の形態)を示す斜視図である。
【図2】第1実施の形態に係る車体前部構造を示す正面図である。
【図3】第1実施の形態に係る車体前部構造の左フレーム部を示す斜視図である。
【図4】第1実施の形態に係る車体前部構造の左フレーム部を示す分解斜視図である。
【図5】図3の5−5線断面図である。
【図6】第1実施の形態に係る車体前部構造の右フレーム部を示す斜視図である。
【図7】第1実施の形態に係る車体前部構造の右フレーム部を後方から見た状態を示す斜視図である。
【図8】第1実施の形態に係る車体前部構造にフロントサスペンションから横荷重が作用した例を説明する図である。
【図9】本発明に係る車体前部構造(第2実施の形態)の左フレーム部にインタークーラーを設けた状態を示す斜視図である。
【図10】本発明に係る車体前部構造(第3実施の形態)の左フレーム部に吸気ダクトを設けた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0067】
10…車体前部構造、12…サブフレーム、12a…左前端部(前端部)、12b…右前端部(前端部)、13…左前輪、14…右前輪、15…左フロントサスペンション、16…右フロントサスペンション、18…左フレーム部(フレーム部)、19…右フレーム部(フレーム部)、21…左フロントサイドフレーム、21a…左フロントサイドフレームの前端部、22…右フロントサイドフレーム、22a…右フロントサイドフレームの前端部、24…左フロントピラー、25…左アッパーメンバー、25a…左アッパーメンバーの前端部、31…右フロントピラー、32…右アッパーメンバー、32a…右アッパーメンバーの前端部、26…左水平連結部、34…右水平連結部、27…左前脚部(左脚部)、27a…左前脚部の下端部、35…右前脚部(右脚部)、35a…右前脚部の下端部、51…左傾斜連結部(傾斜連結部)、53…右傾斜連結部(傾斜連結部)、92…前傾斜連結バー(傾斜連結部)、96…後傾斜連結バー(傾斜連結部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に左右のフロントサイドフレームを延ばし、各フロントサイドフレームの後方上側に左右のフロントピラーをそれぞれ設け、各フロントピラーの下端部から前方に向けて各フロントサイドフレームの外側に左右のアッパメンバーをそれぞれ延ばし、各アッパメンバーの前端部を車体幅方向に延びる左右の水平連結部で各フロントサイドフレームの前端部にそれぞれ連結し、各フロントサイドフレームの前端部に左右の脚部を下方に向けてそれぞれ設け、各脚部の下端部にサブフレームを設け、このサブフレームに左右の前輪を支えるフロントサスペンションをそれぞれ設けた車体前部構造において、
前記脚部の下端部を前記アッパメンバーの前端部に連結するために、前記脚部の下端部から前記アッパメンバーの前端部まで上り勾配で延ばした傾斜連結部を備え、
この傾斜連結部、前記水平連結部および前記脚部で、略三角形のフレーム部を形成可能としたことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記傾斜連結部は、車体前後方向に所定間隔をおいて設けられた一対の傾斜連結バーであることを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−296885(P2007−296885A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124339(P2006−124339)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】