車線逸脱防止装置及びその方法
【課題】運転者による車線変更の行動に、車線逸脱防止制御の作動を合致させる。
【解決手段】車線逸脱防止装置は、走行車線に対して逸脱傾向が発生している方向への運転者の車線変更の意思を検出した場合、その車線変更のリスクの度合いを判定し、リスクが高いと判定した場合、車線逸脱防止制御を作動させて、リスクが低いと判定した場合、車線逸脱防止制御を作動させないようにする(ステップS4〜ステップS5)。
【解決手段】車線逸脱防止装置は、走行車線に対して逸脱傾向が発生している方向への運転者の車線変更の意思を検出した場合、その車線変更のリスクの度合いを判定し、リスクが高いと判定した場合、車線逸脱防止制御を作動させて、リスクが低いと判定した場合、車線逸脱防止制御を作動させないようにする(ステップS4〜ステップS5)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両が走行車線から逸脱しそうになったときに、その逸脱を防止する車線逸脱防止装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の車線逸脱防止装置では、運転者による操舵操作やウインカ操作等で該運転者が車線逸脱を認識している状態にあることを検出した場合、操舵トルクによる車線逸脱防止制御を終了(キャンセル)させている。
【特許文献1】特開2005−343303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1の装置では、車線変更のため運転者が操舵操作等をした場合には車線逸脱防止制御を終了させるので、その後、運転者が走行状況等から車線変更を中止したときでも、車線逸脱防止制御が終了したままとなる。しかし、このような車線逸脱防止制御の中止は、運転者に違和感を与えてしまう。
本発明の課題は、運転者による車線変更の行動に、車線逸脱防止制御の作動を合致させることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために、本発明は、走行車線に対して逸脱傾向が発生している方向への運転者の車線変更の意思を検出した場合、その車線変更のリスクの度合いを判定し、リスクが高いと判定したときには、車線逸脱防止制御を作動させて、リスクが低いと判定したときには、車線逸脱防止制御を抑制している。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、運転者が車線変更を中止する可能性が高い状況下で、車線逸脱防止制御を作動させることができ、運転者が車線変更を中止する可能性が低い状況下で、車線逸脱防止制御を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という。)を図面を参照しながら詳細に説明する。
(構成)
本発明の実施形態は、本発明に係る車線逸脱防止装置を搭載した後輪駆動車両である。この後輪駆動車両は、自動変速機とコンベンショナルディファレンシャルギヤとを搭載し、前後輪とも左右輪の制動力を独立制御可能な制動装置を搭載している。
図1は、本実施形態を示す概略構成図である。
図中の符号1はブレーキペダル、2はブースタ、3はマスタシリンダ、4はリザーバである。通常は、運転者によるブレーキペダル1の踏込み量に応じて、マスタシリンダ3で昇圧された制動流体圧を各車輪5FL〜5RRの各ホイールシリンダ6FL〜6RRに供給する。また、マスタシリンダ3と各ホイールシリンダ6FL〜6RRとの間には制動流体圧制御部7を介装している。
【0007】
制動流体圧制御部7は、例えばアンチスキッド制御(ABS:Anti-lock Brake System)、トラクション制御(TCS:Traction Control System)又はビークルダイナミックスコントロール装置(VDC:Vehicle Dynamics Control)に用いられる制動流体圧制御部を利用したものである。制動流体圧制御部7は、各ホイールシリンダ6FL〜6RRの制動流体圧を個別に制御する。そして、制動流体圧制御部7は、単独でその制動流体圧を制御できる。また、制動流体圧制御部7は、後述する制駆動力コントロールユニット8から制動流体圧指令値が入力された場合には、その制動流体圧指令値に応じて制動流体圧を制御することもできる。例えば、液圧供給系にアクチュエータを含んで制動流体圧制御部7を構成している。アクチュエータとしては、各ホイールシリンダ液圧を任意の制動液圧に制御可能な比例ソレノイド弁が挙げられる。
【0008】
また、この車両は、駆動トルクコントロールユニット12を搭載している。駆動トルクコントロールユニット12は、エンジン9の運転状態、自動変速機10の選択変速比及びスロットルバルブ11のスロットル開度を制御することにより、駆動輪である後輪5RL,5RRへの駆動トルクを制御する。駆動トルクコントロールユニット12は、燃料噴射量や点火時期を制御したり、同時にスロットル開度を制御したりすることで、エンジン9の運転状態を制御する。駆動トルクコントロールユニット12は、単独で後輪5RL,5RRの駆動トルクを制御することもできる。また、駆動トルクコントロールユニット12は、制駆動力コントロールユニット8から駆動トルク指令値が入力された場合には、その駆動トルク指令値に応じて駆動輪トルクを制御することもできる。駆動トルクコントロールユニット12は、制御に使用した駆動トルクTwの値を制駆動力コントロールユニット8に出力する。
【0009】
また、この車両は、画像処理機能付きの撮像部13を搭載している。撮像部13は、走行車線内における自車両の位置を検出する。例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラからなる単眼カメラで撮像するように撮像部13を構成している。車両前部に撮像部(フロントカメラ)13を設置している。
撮像部13は、自車両前方の撮像画像から例えば白線(レーンマーカ)等の車線区分線を検出する。撮像部13は、その検出した車線区分線を基に、走行車線を検出する。さらに、撮像部13は、検出した走行車線を基に、自車両の走行車線と自車両の前後方向軸とのなす角(ヨー角)φ、走行車線中央からの横変位X及び走行車線曲率β等を算出する。この撮像部13は、算出したこれらヨー角φ、横変位X及び走行車線曲率β等を制駆動力コントロールユニット8に出力する。また、走行車線曲率βを後述のステアリングホイール21の操舵角δに基づいて算出することもできる。
【0010】
また、この車両は、自車両の側面方向を走行する障害物を検出するレーダ装置14L,14Rを搭載している。レーダ装置14L,14Rは、少なくとも自車両の側面の死角エリアに存在する障害物(例えば隣接車線走行車両)を検出する。例えば、後側方に障害物検出範囲(障害物検出エリア)を設定し、その障害物検出範囲内で障害物(後側方車両)を検出する。レーダ装置14L,14Rは、このような障害物検出範囲内で検出した障害物の情報として、例えば障害物との相対横位置、相対縦位置、相対縦速度及び相対横速度を検出する。レーダ装置14L,14Rは、相対横位置等の障害物の検出結果を制駆動力コントロールユニット8に出力する。
【0011】
ここで、自車両から後側方に位置する限り、その障害物は後側方の障害物となる。しかし、本実施形態でいう後側方は、自車両から極端に遠い後側方を含むものではなく、例えば、レーダ装置14L,14Rが有する能力で検出可能な後側方をいうものである。また、後側方は、自車両の車線変更等の走行状態に影響を与えるような後側方を少なくとも含んでいる。
【0012】
また、この車両は、マスタシリンダ3の出力圧、すなわちマスタシリンダ液圧Pmを検出するマスタシリンダ圧センサ17を搭載している。また、この車両は、アクセルペダルの踏込み量、すなわちアクセル開度θtを検出するアクセル開度センサ18、及びステアリングホイール21の操舵角(ステアリング舵角)δを検出する操舵角センサ19を搭載している。また、この車両は、運転者による方向指示器(ターンシグナルスイッチ)の操作を検出する方向指示スイッチ20、及び各車輪5FL〜5RRの回転速度、所謂車輪速度Vwi(i=fl,fr,rl,rr)を検出する車輪速度センサ22FL〜22RRを搭載している。そして、これらセンサ等は、検出した検出信号を制駆動力コントロールユニット8に出力する。
【0013】
次に、制駆動力コントロールユニット8で行う演算処理を説明する。図2は、制駆動力コントロールユニット8で行う演算処理手順を示す。例えば10msec.毎の所定サンプリング時間ΔT毎にタイマ割込によって演算処理を実行する。なお、演算処理によって得た情報を随時記憶装置に更新記憶すると共に、必要な情報を随時記憶装置から読み出す。
図2に示すように、処理を開始すると、先ずステップS1において、前記各センサやコントローラ、コントロールユニットから各種データを読み込む。具体的には、各センサが検出した、各車輪速度Vwi、操舵角δ、アクセル開度θt、マスタシリンダ液圧Pm及び方向スイッチ信号、駆動トルクコントロールユニット12からの駆動トルクTw、撮像部13からヨー角φ、横変位X及び走行車線曲率β、並びにレーダ装置14L,14Rから検出結果を読み込む。
【0014】
続いてステップS2において、車速Vを算出する。具体的には、前記ステップS1で読み込んだ車輪速度Vwiに基づいて、下記(1)式により車速Vを算出する。
前輪駆動の場合
V=(Vwrl+Vwrr)/2
後輪駆動の場合
V=(Vwfl+Vwfr)/2
・・・(1)
【0015】
ここで、Vwfl,Vwfrは左右前輪それぞれの車輪速度であり、Vwrl,Vwrrは左右後輪それぞれの車輪速度である。すなわち、この(1)式では、従動輪の車輪速の平均値として車速Vを算出している。なお、本実施形態では、後輪駆動車両なので、後者の式、すなわち前輪の車輪速度により車速Vを算出する。
また、このように算出した車速Vは好ましくは通常走行時に用いる。例えば、ABS制御等が作動している場合、そのABS制御内で推定している推定車体速度を前記車速Vとして用いるようにする。また、図示しないナビゲーション装置でナビゲーション情報に利用している値を車速Vとして用いても良い。
【0016】
続いてステップS3において、車線逸脱傾向を判定する。図3は、この判定処理の処理手順を示す。また、図4には、この処理で用いる値の定義を示している。
図3に示すように、先ずステップS21において、所定時間T後の車両重心横位置の推定横変位Xsを算出する。具体的には、前記ステップS1で得たヨー角φ、走行車線曲率β及び現在の車両の横変位X、及び前記ステップS2で得た車速Vを用いて、下記(2)式により推定横変位Xsを算出する。
Xs=Tt・V・(φ+Tt・V・β)+X ・・・(2)
ここで、Ttは前方注視距離算出用の車頭時間である。この車頭時間Ttに自車速Vを乗じると前方注視点距離になる。また、車頭時間Tt後の走行車線中央からの横変位推定値が将来の推定横変位Xsとなる。この(2)式によれば、例えばヨー角φが大きくなるほど、推定横変位Xsは大きくなる。
【0017】
続いてステップS22において、逸脱判定をする。具体的には、推定横変位Xsと所定の逸脱傾向判定用しきい値XLとを比較する。ここで、逸脱傾向判定用しきい値XLは、一般的に車両が車線逸脱傾向にあると把握できる値である。逸脱傾向判定用しきい値XLは、例えば実験値等である。また、走行路の境界線の位置を示す値として、下記(3)式により逸脱傾向判定用しきい値XLを算出できる。
XL=(L−H)/2 ・・・(3)
ここで、Lは車線幅である。Hは車両の幅である。車線幅Lについては、撮像部13が撮像画像を処理して得ている。また、ナビゲーション装置から車両の位置を得たり、ナビゲーション装置の地図データから車線幅Lを得たりすることもできる。
【0018】
なお、図4において、自車両の走行車線内に逸脱傾向判定用しきい値XLを設定している。しかし、これに限らず、走行車線の外側に設定することもできる。また、自車両が走行車線から逸脱する前に逸脱傾向ありと判定することに限らず、例えば車輪の少なくとも1つが車線から逸脱した後に逸脱傾向ありと判定することもできる。この場合、そのような判定を得るように逸脱傾向判定用しきい値XLを設定する。
【0019】
このステップS22において、推定横変位Xsが逸脱傾向判定用しきい値XL以上の場合(|Xs|≧XL)、車線逸脱傾向ありと判定する。また、推定横変位Xsが逸脱傾向判定用しきい値XL未満の場合(|Xs|<XL)、車線逸脱傾向なしと判定する。
続いてステップS23において、逸脱判断フラグFoutを設定する。すなわち、前記ステップS22において、車線逸脱傾向ありと判定した場合(|Xs|≧XL)、逸脱判断フラグFoutをONにする(Fout=ON)。また、前記ステップS22において、車線逸脱傾向なしと判定した場合(|Xs|<XL)、逸脱判断フラグFoutをOFFにする(Fout=OFF)。
【0020】
このステップS22及びステップS23の処理により、例えば自車両が車線中央から離れていき、推定横変位Xsが逸脱傾向判定用しきい値XL以上になったとき(|Xs|≧XL)、逸脱判断フラグFoutがONになる(Fout=ON)。また、自車両(Fout=ONの状態の自車両)が車線中央側に復帰していき、推定横変位Xsが逸脱傾向判定用しきい値XL未満になったとき(|Xs|<XL)、逸脱判断フラグFoutがOFFになる(Fout=OFF)。例えば、車線逸脱傾向が発生している場合に、後述する逸脱防止のための制動制御を実施したり、運転者自身が車線逸脱を回避する操作をしたりすれば、逸脱判断フラグFoutがONからOFFになる。
【0021】
続いてステップS24において、横変位Xを基に逸脱方向Doutを判定する。具体的には、車線中央から左方向に横変位している場合、その方向を逸脱方向Doutにする(Dout=left)。また、車線中央から右方向に横変位している場合、その方向を逸脱方向Doutにする(Dout=right)。
続いてステップS4において、後側方の障害物を検出する。具体的には、前記ステップS1で読み込んだレーダ装置14L,14Rの検出結果(後側方障害物検出情報)を基に、後側方の障害物を検出する。より詳しくは、前記ステップS3で設定した逸脱判断フラグFoutがONである場合に、逸脱方向Doutにレーダ装置14L,14Rが後側方の障害物を検出しているときには、後側方障害物検出判断フラグFbsをONに設定する(Fbs=ON)。
【0022】
ここで、レーダ装置14L,14Rが、検出した後側方の障害物について出力する相対速度及び距離を基に、後側方障害物検出判断フラグFbsを設定することもできる。具体的には、自車両と障害物との縦方向距離Yobが所定のしきい値Yobth未満であり、かつ自車両と障害物との縦方向の相対速度Vrobが所定のしきい値Vrobth未満の場合(Yob<YobthかつVrob<Vrobth)、後側方障害物検出判断フラグFbsをONに設定する(Fbs=ON)。ここで、相対速度Vrobは、自車両の速度の方が大きくなるほど、正値で大きくなる値である。
【0023】
また、後側方の障害物との距離のみを基に、後側方障害物検出判断フラグFbsを設定することもできる。具体的には、自車両と障害物との縦方向距離Yobが所定のしきい値Yobth未満の場合(Yob<Yobth)、後側方障害物検出判断フラグFbsをONに設定する(Fbs=ON)。このような判定をする場合には、自車両と後側方の障害物との相対速度が小さくても自車両が車線変更できるような充分な距離を所定のしきい値Yobthに設定する。また、自車両と後側方の障害物との相対速度がほとんどないと考えて、自車両の速度に応じて所定のしきい値Yobthを設定することもできる。
【0024】
続いてステップS5において、運転者の車線変更の意思を判定する。具体的には、前記ステップS1で得た方向スイッチ信号及び操舵角δを基に、次のように運転者の車線変更の意思を判定する。
方向スイッチ信号が示す方向(ウインカ点灯側)と、前記ステップS3で得た逸脱方向Doutが示す方向とが同じ場合、運転者が意識的に車線変更していると判定し、逸脱判断フラグFoutをOFFに変更する(Fout=OFF)。すなわち、車線逸脱傾向なしとの判定結果に変更する。また、方向スイッチ信号が示す方向(ウインカ点灯側)と、前記ステップS3で得た逸脱方向Doutが示す方向とが異なる場合、逸脱判断フラグFoutを維持し、逸脱判断フラグFoutをONのままにする(Fout=ON)。すなわち、車線逸脱傾向ありとの判定結果を維持する。
【0025】
また、方向指示スイッチ20が操作されていない場合には、操舵角δを基に運転者の車線変更の意思を判定する。具体的には、運転者が逸脱方向に操舵している場合において、その操舵角δとその操舵角の変化量(単位時間当たりの変化量)Δδとの両方が設定値以上のときには、運転者が意識的に車線変更していると判定し、逸脱判断フラグFoutをOFFに変更する(Fout=OFF)。なお、操舵トルクを基に運転者の意思を判定しても良い。
【0026】
このように、逸脱判断フラグFoutがONである場合において運転者が意識的に車線変更していないと判定したときには、逸脱判断フラグFoutをONに維持している。そして、逸脱判断フラグFoutがONである場合において運転者が意識的に車線変更していると判定したときには、逸脱判断フラグFoutをONからOFFに変更している。しかし、前記ステップS4で後側方障害物検出判断フラグFbsをONに設定している場合には、逸脱判断フラグFoutをOFFに変更しないようにする(ONを維持する)。すなわち、運転者が意識的に車線変更しようとしていると判断できるような場合でも、その車線変更しようとしている車線に後側方の障害物を検出しているときには(Fbs=ONの場合)、逸脱判断フラグFoutをOFFに変更しないようにする。
【0027】
続いてステップS6において、前記ステップS4で設定(維持)した逸脱判断フラグFoutがONの場合、車線逸脱回避のための警報として、音出力又は表示出力をする。
なお、後述のように、逸脱判断フラグFoutがONの場合、車線逸脱防止制御として自車両へのヨーモーメント付与を開始するから、この自車両へのヨーモーメント付与と同時に該警報出力がなされる。しかし、これに限定されるものではなく、例えば車両へのヨーモーメント付与の開始タイミングよりも警報の出力タイミングを早くするもともできる。
【0028】
続いてステップS7において、車線逸脱防止制御として自車両の減速制御を行うか否かを判定する。本実施形態の車線逸脱防止制御では、自車両が車線逸脱してしまうのを防止する目的で、減速制御により自車両を減速させている。このステップS7では、その減速制御を行うか否かを判定する。具体的には、前記ステップS3で算出した推定横変位Xsから横変位限界距離XLを減じて得た減算値(|Xs|−XL)が減速制御判定用しきい値Xβ以上か否かを判定する。
【0029】
ここで、減速制御判定用しきい値Xβは、走行車線曲率βに応じて設定される値である。図5は、走行車線曲率βと減速制御判定用しきい値Xβとの関係の一例を示す。同図に示すように、走行車線曲率βが小さい場合、減速制御判定用しきい値Xβはある一定の大きい値となる。また、走行車線曲率βがある値より大きくなると、走行車線曲率βが増加するのに対して減速制御判定用しきい値Xβは減少する。そして、走行車線曲率βがさらに大きくなると、減速制御判定用しきい値Xβはある一定の小さい値となる。さらに、車速Vが大きくなるほど、減速制御判定用しきい値Xβを小さくすることもできる。
【0030】
このステップS7では、前記減算値(|Xs|−XL)が減速制御判定用しきい値Xβ以上の場合(|Xs|−XL≧Xβ)、減速制御を行うと決定するとともに、減速制御作動判断フラグFgsをONに設定する(Fgs=ON)。また、前記減算値(|Xs|−XL)が減速制御判定用しきい値Xβ未満の場合(|Xs|−XL<Xβ)、減速制御を行わない決定をするとともに、減速制御作動判断フラグFgsをOFFに設定する(Fgs=OFF)。
【0031】
なお、前記ステップS3において推定横変位Xsが逸脱傾向判定用しきい値XL以上の場合(|Xs|≧XL)、逸脱判断フラグFoutをONに設定している。一方、前記減算値(|Xs|−XL)が減速制御判定用しきい値Xβ以上の場合、減速制御作動判断フラグFgsをONに設定している。これらの関係から、逸脱判断フラグFoutをONに設定するとしても、その設定は、減速制御作動判断フラグFgsをONに設定した後になる。すなわち、後述する逸脱判断フラグFoutがONになった場合に実施する自車両へのヨーモーメント付与との関係では、自車両の減速制御を実施した後、自車両にヨーモーメントを付与するようになる。
【0032】
続いてステップS8において、車線逸脱防止制御として自車両に付与する目標ヨーモーメントMsを算出する。目標ヨーモーメントMsは、自車両が車線逸脱してしまうのを十分に防止できるヨーモーメントである。具体的には、前記ステップS3で得た推定横変位Xs及び横変位限界距離XLを用いて、下記(4)式により目標ヨーモーメントMsを算出する。
Ms=K1・K2・(|Xs|−XL) ・・・(4)
【0033】
ここで、K1は車両諸元から決まる比例ゲインであり、K2は車速Vに応じて変動するゲインである。図6はそのゲインK2の例を示す。同図に示すように、低速域では、ゲインK2は、ある一定の大きい値となる。また、車速Vがある値よりも大きくなると、車速Vの増加に対してゲインK2は減少する。そして、その後ある車速Vに達するとゲインK2はある一定の小さい値となる。
【0034】
続いてステップS9において、目標ヨーモーメントを補正する。
ここで、本実施形態における車線逸脱防止制御の処理は、走行車線から自車両が逸脱回避完了するまでに、該車線逸脱防止制御の処理ルーチンを複数回実行することを前提とした処理になっている。すなわち、車線逸脱防止制御では、逸脱状態に応じて変化するヨーモーメント(具体的には、目標ヨーモーメントMs)を連続的に逐次自車両に付与していき、走行車線からの自車両の逸脱回避を完了させている。このステップS9及び後述のステップS10の処理は、そのような車線逸脱防止制御の処理内容を前提として、目標ヨーモーメントを補正等するものである。
【0035】
図7は、この補正処理の処理手順を示す。同図に示すように、先ずステップS31において、目標ヨーモーメントMsが零よりも大きいか否かを判定する。ここで、目標ヨーモーメントMsが零よりも大きい場合(Ms>0)、ステップS32に進む。また、そうでない場合(Ms=0)、該図7に示す処理(ステップS9の処理)を終了する。
【0036】
ステップS32では、逸脱判断フラグFoutがONか否かを判定する。ここで、逸脱判断フラグFoutがONの場合(Fout=ON)、ステップS33に進む。また、逸脱判断フラグFoutがOFFの場合(Fout=OFF)、該図7に示す処理(ステップS9の処理)を終了する。
ステップS33では、後側方障害物検出判断フラグFbsがONか否かを判定する。ここで、後側方障害物検出判断フラグFbsがONの場合(Fbs=ON)、ステップS34に進む。また、後側方障害物検出判断フラグFbsがOFFの場合(Fbs=OFF)、該図7に示す処理(ステップS9の処理)を終了する。
【0037】
ステップS34では、制御開始時(FoutがONになった時点)からの操舵角の変化量に応じてゲインを設定する。具体的には、制御開始時からの操舵角の変化量が大きくなるほど、ゲインを大きくする。図8は、制御開始時からの操舵角の変化量Δθ1とゲインKstrとの関係の一例を示す。同図に示すように、操舵角の変化量Δθ1が小さい領域では、ゲインKstrは小さい値になる。また、操舵角の変化量Δθ1がある値になると、ゲインKstrは操舵角の変化量Δθ1とともに増加する。また、その後ある操舵角の変化量Δθ1に達すると、ゲインKstrは一定の大きい値になる。このように、概略として、操舵角の変化量Δθ1が大きくなるほど、ゲインKstrは大きくなる。
【0038】
続いてステップS35において、前記ステップS34で設定したゲインKstrを用いて目標ヨーモーメントを補正する。具体的には、下記(5)式により目標ヨーモーメントMsを補正する。
Ms=Ms・Kstr ・・・(5)
ここで、(5)式の右辺のMsは、前記ステップS8で算出した目標ヨーモーメントである。
続いてステップS36において、前記ステップS35の補正に対応し補正実行判断フラグFhを設定する。すなわち、前記ステップS35で目標ヨーモーメントを補正した場合、補正実行判断フラグFhをONに設定する(Fh=ON)。そして、該図7に示す処理(ステップS9の処理)を終了する。
【0039】
このようなステップS9(図7)の処理により、目標ヨーモーメントMsが零よりも大きく、逸脱判断フラグFoutがONであり、かつ後側方障害物検出判断フラグFbsがONの場合(前記ステップS31〜ステップS33)、制御開始時からの操舵角の変化量Δθ1に応じてゲインKstrを設定する(前記ステップS34)。すなわち、自車両が車線逸脱傾向が発生していることで車線逸脱防止制御が作動し、その逸脱方向の隣接車線に後側方障害物が存在するときには、制御開始時からの操舵角の変化量Δθ1に応じてゲインKstrを設定する。概略として、操舵角の変化量Δθ1が大きくなるほど、ゲインKstrを大きい値に設定する。そして、そのように設定したゲインKstrを用いて目標ヨーモーメントMsを補正する(前記ステップS35)。これにより、制御開始時からの操舵角の変化量Δθ1が大きくなるほど、目標ヨーモーメントMsは大きくなる。このとき、補正実行判断フラグFhをONに設定する(前記ステップS36)。なお、このような補正がなければ(前記ステップS31、ステップS32及びステップS33の判定処理で何れかが“NO”の場合)、目標ヨーモーメントMsは、前記ステップS8で算出された値のままである。
【0040】
続いてステップS10において、制御終了勾配を設定する。図9は、この設定処理の処理手順を示す。同図に示すように、先ずステップS41において、逸脱判断フラグFoutがOFFか否かを判定する。ここで、逸脱判断フラグFoutがOFFの場合(Fout=OFF)、ステップS42に進む。また、逸脱判断フラグFoutがONの場合(Fout=ON)、該図9に示す処理(ステップS10の処理)を終了する。
【0041】
ステップS42では、補正実行判断フラグFhがONか否かを判定する。すなわち、前記ステップS9で目標ヨーモーメントMsを補正したか否かを判定する。ここで、補正実行判断フラグFhがONの場合、ステップS43に進む。また、そうでない場合(Fh=OFF)、ステップS46に進む。
ステップS43では、目標ヨーモーメントMsが零よりも大きいか否かを判定する。ここで、目標ヨーモーメントMsが零よりも大きい場合(Ms>0)、ステップS44に進む。また、そうでない場合(Ms=0)、ステップS46に進む。
【0042】
ステップS44では、制御終了時(FoutがONからOFFになった時点)からの操舵角の変化量に応じて制御終了勾配を設定する。具体的には、制御開始時からの操舵角の変化量が大きくなるほど、制御終了勾配を大きくする。図10は、車線逸脱防止制御の終了時からの操舵角の変化量Δθ2と制御終了勾配LDECとの関係の一例を示す。同図に示すように、操舵角の変化量Δθ2が小さい領域では、制御終了勾配LDECは小さい値になる。また、操舵角の変化量Δθ2がある値になると、制御終了勾配LDECは操舵角の変化量Δθ2とともに増加する。また、その後ある操舵角の変化量Δθ2に達すると、制御終了勾配LDECは一定の大きい値になる。このように、概略として、操舵角の変化量Δθ2が大きくなるほど、制御終了勾配LDECは大きくなる。このように制御終了勾配LDECを設定し、ステップS45に進む。
なお、ここでの操舵角の変化量Δθ2は、車線逸脱防止制御の終了時には運転者が自車線内に自車両を戻すために戻し操舵をするのが通常であるから、その戻し操舵に係るものになる。
【0043】
また、前記ステップS42で補正実行判断フラグFhがONと判定した場合、又は前記ステップS43で目標ヨーモーメントMsが零の場合に進むステップS46では、通常の制御終了勾配LDECにする。例えば、通常の制御終了勾配LDECとは、前記ステップS44で操舵角の変化量θ2が零の場合に設定する制御終了勾配LDECと同等又はそれよりも小さい値である。また、目標ヨーモーメントMsが零であれば(前記ステップS43の判定処理で“No”の場合)、制御終了勾配LDECを用いた制御終了処理を省略することもできる。
【0044】
続いてステップS45において、前記ステップS44又はステップS46で設定した制御終了勾配LDECを用いて車線逸脱防止制御の制御勾配を補正する。具体的には、下記(6)式により目標ヨーモーメントMsを算出する。
Ms=Ms−LDEC ・・・(6)
ここで、前記ステップS44で制御終了勾配LDECを設定している場合(Fh=ONが前提)、前記ステップS9で目標ヨーモーメントMsを補正していることから、(6)式により算出する目標ヨーモーメントMsは、そのように補正されている目標ヨーモーメントMsを該制御終了勾配LDECにより減算した値になる。
【0045】
このようなステップS10(図9)の処理により、逸脱判断フラグFoutがOFFであり、補正実行判断フラグFhがONであり、かつ目標ヨーモーメントMsが零よりも大きい場合(前記ステップS41〜ステップS43)、制御終了時からの操舵角の変化量Δθ2に応じて制御終了勾配LDECを設定する(前記ステップS44)。すなわち、前記ステップS9で逸脱方向の隣接車線に後側方障害物(後側方車両)が存在するとして、目標ヨーモーメントMsが補正されている場合には、目標ヨーモーメントMsが零よりも大きくなっていることを条件に、制御終了時からの操舵角の変化量Δθ2に応じて制御終了勾配LDECを設定する。概略として、操舵角の変化量Δθ2が大きくなるほど、制御終了勾配LDECを大きい値に設定する。そして、制御終了時には、そのように設定した制御終了勾配LDECを用いて目標ヨーモーメントMsを減少させる処理を行う(前記ステップS45)。これにより、制御終了時からの操舵角の変化量Δθ2が大きくなるほど、制御終了時の目標ヨーモーメントMsの減少割合は大きくなる。
【0046】
なお、逸脱方向の隣接車線に後側方障害物が存在せず、目標ヨーモーメントMsが補正されてなければ(前記ステップS42の判定処理で“NO”の場合)、制御終了時(通常終了時)の目標ヨーモーメントMsは、通常の制御終了勾配LDECで減少する。前述のように、制御終了時からの操舵角の変化量Δθ2を基に制御終了勾配LDECを設定している場合、その目標ヨーモーメントMsの減少割合は、このような通常終了時の目標ヨーモーメントMsの減少割合より常に大きくなる。すなわち、常に制御終了勾配は大きくなる。
【0047】
なお、逸脱判断フラグFoutがONからOFFになった場合に車線逸脱防止制御は終了するが、その制御終了時の横方向位置は、通常、制御開始時の横方向位置とは異なる。これは、本実施形態では、前方注視点を基準に逸脱傾向の有無を判定しているからであり(前記ステップS3)、通常、制御終了時の横方向位置は、制御開始時の横方向位置よりも外側になる。
【0048】
続いてステップS11において、車線逸脱防止制御として実施する減速制御の減速度を算出する。本実施形態では、その減速度を実現するために左右両輪で発生させる制動力を算出する。具体的には、そのような制動力を左右両輪に発生させるための目標制動液圧Pgf,Pgrを算出する。前輪用の目標制動液圧Pgfについては、前記ステップS3で算出した推定横変位Xs及び横変位限界距離XL、並びに前記ステップS7で得た減速制御判定用しきい値Xβを用いて、下記(7)式により算出する。
Pgf=Kgv・Kgx・(|Xs|−XL−Xβ) ・・・(7)
【0049】
ここで、Kgv,Kgxはそれぞれ、車速V及び横変化量dxを基に設定する、制動力を制動液圧に換算するための換算係数である。図11は換算係数Kgvの例を示す。同図に示すように、例えば換算係数Kgvは、低速域で小さい値になる。また、車速Vがある値になると、換算係数Kgvは車速Vとともに増加する。また、その後ある車速Vに達すると、換算係数Kgvは大きい一定値になる。そして、前輪用の目標制動液圧Pgfを基に、前後配分を考慮した後輪用の目標制動液圧Pgrを算出する。
【0050】
続いてステップS12において、各車輪の目標制動液圧を算出する。すなわち、車線逸脱防止の制動制御の有無に基づいて最終的な制動液圧を算出する。具体的には次のように算出する。
逸脱判断フラグFoutがOFFの場合、すなわち車線逸脱傾向がないとの判定結果を得た場合、下記(8)式及び(9)式に示すように、各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を制動液圧Pmf,Pmrにする。
Psfl=Psfr=Pmf ・・・(8)
Psrl=Psrr=Pmr ・・・(9)
ここで、Pmfは前輪用の制動液圧である。また、Pmrは後輪用の制動液圧であり、前後配分を考慮して前輪用の制動液圧Pmfに基づいて算出した値になる。例えば、運転者がブレーキ操作をしていれば、制動液圧Pmf,Pmrはそのブレーキ操作の操作量(マスタシリンダ液圧Pm)に応じた値になる。
【0051】
一方、逸脱判断フラグFoutがONの場合、すなわち車線逸脱傾向が発生しているとの判定結果を得た場合、先ず目標ヨーモーメントMsに基づいて、前輪目標制動液圧差ΔPsf及び後輪目標制動液圧差ΔPsrを算出する。具体的には、下記(10)式〜(13)式により目標制動液圧差ΔPsf,ΔPsrを算出する。
|Ms|<Ms1の場合
ΔPsf=0 ・・・(10)
ΔPsr=Kbr・Ms/T ・・・(11)
|Ms|≧Ms1の場合
ΔPsf=Kbf・(Ms/|Ms|)・(|Ms|−Ms1)/T ・・・(12)
ΔPsr=Kbr・(Ms/|Ms|)・Ms1/T ・・・(13)
ここで、Ms1は設定用しきい値を示す。また、Tはトレッドを示す。なお、トレッドTは、便宜上前後で同じ値である。また、Kbf,Kbrは、制動力を制動液圧に換算する場合の前輪及び後輪についての換算係数であり、ブレーキ諸元により定まる。
【0052】
このように、目標ヨーモーメントMsの大きさに応じて車輪に発生させる制動力を配分している。そして、目標ヨーモーメントMsが設定用しきい値Ms1未満のときには、前輪目標制動液圧差ΔPsfを零として、後輪目標制動液圧差ΔPsrに所定値を与えて、左右後輪で制動力差を発生させる。また、目標ヨーモーメントMsが設定用しきい値Ms1以上のときには、各目標制動液圧差ΔPsr,ΔPsrに所定値を与え、前後左右輪で制動力差を発生させる。
【0053】
そして、以上のように算出した目標制動液圧差ΔPsf,ΔPsr及び減速用の目標制動液圧Pgf,Pgrを用いて最終的な各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出する。具体的には、前記ステップS7で得ている減速制御作動判断フラグFgsをも参照して、最終的な各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出する。
【0054】
すなわち、逸脱判断フラグFoutがONの場合、すなわち車線逸脱傾向が発生しているとの判定結果を得ているが、減速制御作動判断フラグFgsがOFFの場合、すなわち車両へのヨーモーメント付与だけを行う場合、下記(14)式により各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出する。
Psfl=Pmf
Psfr=Pmf+ΔPsf
Psrl=Pmr
Psrr=Pmr+ΔPsr
・・・(14)
【0055】
また、逸脱判断フラグFoutがONであり、かつ減速制御作動判断フラグFgsがONの場合、すなわち車両にヨーモーメントを付与しつつも、車両を減速させる場合、下記(15)式により各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出する。
Psfl=Pmf+Pgf/2
Psfr=Pmf+ΔPsf+Pgf/2
Psrl=Pmr+Pgr/2
Psrr=Pmr+ΔPsr+Pgr/2
・・・(15)
【0056】
また、この(14)式及び(15)式が示すように、運転者によるブレーキ操作、すなわち制動液圧Pmf,Pmrを考慮して各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出している。そして、制駆動力コントロールユニット8は、このようにして算出した各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を制動流体圧指令値として、制動流体圧制御部7に出力する。
【0057】
なお、前記(14)式及び(15)式に示した各車輪の目標制動液圧は、逸脱方向Doutがleftの場合(Dout=left)、すなわち左側車線に対して車線逸脱傾向が発生している場合のものである。例えば、逸脱方向Doutがrightの場合の、前記(14)式に対応する各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)は、下記(16)式により算出される。
Psfl=Pmf+ΔPsf
Psfr=Pmf
Psrl=Pmr+ΔPsr
Psrr=Pmr
・・・(16)
【0058】
(動作及び作用)
車両走行中、各種データを読み込むとともに(前記ステップS1)、車速Vを算出する(前記ステップS2)。また、推定横変位Xsを基に、逸脱傾向を判定する(逸脱判断フラグFoutを設定する、前記ステップS3)。さらに、後側方の障害物を検出する(後側方障害物検出判断フラグFbsを設定する、前記ステップS4)。そして、運転者の操舵操作等から運転者の車線変更の意思を検出して、その検出結果を基に、逸脱傾向の判定結果を変更する(逸脱判断フラグFoutを変更する、前記ステップS5)。このとき、運転者が意識的に車線変更しようとしていると判断できるような場合でも、その車線変更しようとしている車線に後側方の障害物を検出しているときには(Fbs=ONの場合)、逸脱判断フラグFoutをOFFに変更しないようにする。
【0059】
一方、推定横変位Xsを基に、減速制御の作動判定をするとともに(減速制御作動判断フラグFgsを設定する、前記ステップS7)、その減速制御の減速度を算出する(前記ステップS11)。また、推定横変位Xsを基に、目標ヨーモーメントMsを算出するとともに(前記ステップS8)、その目標ヨーモーメントMsを適宜補正する(前記ステップS9)。
【0060】
そして、逸脱判断フラグFoutの状態に基づいて、警報を出力する(前記ステップS6)。さらに、逸脱判断フラグFout及び減速制御作動判断フラグFgsの状態に基づいて、目標ヨーモーメントMs及び減速度(目標制動液圧Pgf)を基に各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出し、その算出した各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を制動流体圧制御部7に出力する(前記ステップS12)。これにより、自車両の車線逸脱傾向に応じて自車両にヨーモーメントを付与し、場合により、自車両を減速させる。そして、車線逸脱防止制御の終了タイミングになったとき(Fout=OFF)、制御終了処理として、所定の制御終了勾配LDECをもって目標ヨーモーメントMsを減少させる(前記ステップS10)。すなわち、制動力又は制動液圧を減少させる。
【0061】
以上のような車線逸脱防止制御では、車線逸脱傾向が発生している場合において、運転者の車線変更の意思を検出したときには、車線逸脱防止制御を作動させないようにしている(FoutをONからOFFに変更している)。しかし、車線逸脱傾向が発生している場合に、運転者の車線変更の意思を検出したときでも、自車両の後側方に障害物を検出したときには、車線逸脱防止制御を作動させるようにしている(FoutをONに維持している)。これにより、運転者が自車両の後側方を走行する車両に気づかずに、該車両が走行する車線に車線変更しようとしている場合でも、車線逸脱防止制御による自車両へのヨーモーメントの付与により、自車両が後側方を走行する車両に近づいてしまうのを防止できる。さらに、運転者は、そのようなヨーモーメントの付与による自車両挙動の変化を介して、後側方の車両の存在に気づくことができる。
【0062】
また、その車線逸脱防止制御では、制御開始時からの操舵角の変化量Δθ1が大きくなるほど、目標ヨーモーメントMsを大きくしている。図12は、車線逸脱防止制御時の自車両100の車両挙動を示す。同図に示すように、自車両の後側方に障害物を検出している場合の車線逸脱防止制御では(Fout=ONかつFbs=ON)、制御開始時からの操舵角の変化量Δθ1が大きくなるほど、目標ヨーモーメントMsを大きくしている。
【0063】
これにより、運転者が後側方を走行する車両の存在に気づかずに操舵操作を続けて車線変更を継続していくような場合でも、そのような状況に適合させたヨーモーメントを自車両に付与できる。これにより、自車両が後側方走行車両に近づいてしまうのを適切に防止でき、適切に運転者に後側方の車両の存在を気づかせることができる。
一方、車線逸脱防止制御では、その制御終了時には、制御終了勾配LDECをもって目標ヨーモーメントMsを減少させている。このとき、図12に示すように、逸脱方向の隣接車線に後側方の障害物を検出したとして、目標ヨーモーメントMsを補正している場合には、制御終了勾配LDECを通常時のものよりも小さくしている。加えて、制御終了時からの操舵角の変化量Δθ2が大きくなるほど、制御終了勾配LDECを大きくしている。
【0064】
前述のように、逸脱方向の隣接車線に後側方の障害物を検出した場合には、制御開始時からの操舵角の変化量Δθ1に応じて目標ヨーモーメントMsを大きくしている。このようなことから、その後、車線逸脱防止制御を終了する場合、その制御終了時点で、目標ヨーモーメントMsが、制御開始時からの操舵角の変化量Δθ1に応じて大きくなっている。よって、車線逸脱防止制御の終了時点から通常の制御終了勾配LDECをもって目標ヨーモーメントMsを減少させてしまうと、自車両が自車線内に戻り過ぎてしまう可能性が高い。
【0065】
このようなことから、逸脱方向の隣接車線に後側方障害物を検出したとして、目標ヨーモーメントMsを補正している場合には、制御終了勾配LDECを通常時のものよりも小さくしている。これにより、自車両が自車線内に戻り過ぎてしまうのを防止できる。さらに、制御終了時からの操舵角の変化量Δθ2が大きくなるほど、制御終了勾配LDECを大きくすることで、運転者が大きく戻し操舵した場合でも、それに適合させて、目標ヨーモーメントMsを減少させることができる。これにより、運転者が大きく戻し操舵した場合でも、自車両を自車線内に適切に戻すことができる。
【0066】
図13は、目標ヨーモーメントMsの時間変化を示す。同図に示すように、逸脱方向の隣接車線に後側方障害物を検出した場合には、車線逸脱防止制御の終了時点(Fout=OFF)で、目標ヨーモーメントMsが、制御開始時からの操舵角の変化量Δθ1に対応して大きくなっている。その結果、車線逸脱防止制御の終了時点から通常の制御終了勾配LDEC(同図中のFout=OFF以降の実線)をもって目標ヨーモーメントMsを減少させてしまうと(同図中のFout=OFF以降の破線)、自車両が自車線内に戻り過ぎてしまう可能性が高くなる。これに対して、本発明を適用することで、逸脱方向の隣接車線に後側方障害物を検出したことで目標ヨーモーメントMsを補正している場合には、制御終了勾配LDECを通常時のものよりも小さくしている。さらに、制御終了時からの操舵角の変化量Δθ2が大きくなるほど、制御終了勾配LDECを大きくしている(同図中のFout=OFF以降の一点鎖線)。これにより、自車両が自車線内に戻り過ぎてしまうのを防止でき、たとえ、運転者が大きく戻し操舵した場合でも、それに適合させて、目標ヨーモーメントMsを減少させ、自車両を自車線内に適切に戻すことができる。
【0067】
(実施形態の変形例)
(1)この実施形態では、走行車線に対する逸脱方向、かつ自車両の後側方で検出した障害物、特に車両を基に、車線変更に対するリスクの度合いを判定している。これに対して、障害物を人間等とすることもできる。また、障害物以外の対象、例えば走行環境を基に、車線変更に対するリスクの度合いを判定することもできる。
【0068】
(2)この実施形態では、車線変更しようとしている車線に後側方の障害物を検出した場合(Fbs=ONの場合)、すなわち車線変更のリスクが高い状況の場合、逸脱判定結果の逸脱判断フラグFoutをOFFに変更せず、ONに維持している。すなわち、逸脱判定を維持することで、車線逸脱防止制御を作動させている(作動を許容している)。これに対して、逸脱判定結果にかかわらず、車線変更のリスクが高い状況である限り、車線逸脱防止制御を作動させることもできる。
【0069】
(3)この実施形態では、車線逸脱防止制御の抑制として、逸脱判断フラグFoutをONからOFFに変更している。すなわち、車線逸脱防止制御を作動させないようにしている(中止している)。これに対して、車線逸脱防止制御の抑制として、車線逸脱防止制御の制御量(例えばヨーモーメント)を小さくすることもできる。また、車線逸脱防止制御の抑制として、車線逸脱防止制御の作動タイミングを遅らせることができる。すなわち、逸脱判断フラグFoutをONにするタイミングを遅らせることができる。また、車線逸脱防止制御の抑制として、車線逸脱防止制御の作動時間を短くすることができる。
【0070】
(4)この実施形態では、制動力差により自車両にヨーモーメントを付与している。これに対して、駆動力差や操舵操作により、自車両にヨーモーメントを付与することができる。
なお、この実施形態では、制駆動力コントロールユニット8のステップS3の処理は、走行車線に対する自車両の逸脱傾向を判定する車線逸脱傾向判定手段を実現している。また、制駆動力コントロールユニット8のステップS12の処理は、前記車線逸脱傾向判定手段が車線逸脱傾向が発生していると判定した場合、走行車線に対する自車両の逸脱を防止する車線逸脱防止制御を行う逸脱防止制御手段を実現している。また、制駆動力コントロールユニット8のステップS5の処理は、前記走行車線に対して逸脱傾向が発生している方向への運転者の車線変更の意思を検出する車線変更意思検出手段を実現している。また、制駆動力コントロールユニット8のステップS4、ステップS5及びステップS9の処理は、前記車線変更意思検出手段が前記運転者の車線変更の意思を検出した場合、その車線変更のリスクの度合いを判定するリスク判定手段、及び前記リスク判定手段がリスクが高いと判定した場合、前記車線逸脱防止制御を作動させて、前記リスク判定手段がリスクが低いと判定した場合、前記車線逸脱防止制御を抑制する制御補正手段を実現している。
【0071】
また、この実施形態では、走行車線に対して自車両が逸脱傾向が発生していると判定し、かつその逸脱傾向が発生している方向への運転者の車線変更の意思を検出したとき、その車線変更のリスクが高ければ、前記走行車線に対する自車両の逸脱を防止する車線逸脱防止制御を作動させ、その車線変更のリスクが低ければ、前記車線逸脱防止制御を抑制する車線逸脱防止方法を実現している。
【0072】
(実施形態における効果)
(1)運転者が意識的に車線変更しようとしていると判断できるような場合でも、その車線変更しようとしている車線に後側方の障害物を検出しているときには(Fbs=ONの場合)、逸脱判断フラグFoutをOFFに変更しない。これにより、車線逸脱防止制御を作動させるようにしている。すなわち、リスク判定手段は、走行車線に対して逸脱傾向が発生している方向への運転者の車線変更の意思を検出した場合、その車線変更のリスクの度合いを判定する。そして、制御補正手段は、リスクが高いと判定したときには、車線逸脱防止制御を作動させている。また、制御補正手段は、リスクが低いと判定したときには、車線逸脱防止制御を抑制している。これにより、運転者が車線変更を中止する可能性が高い状況下で、車線逸脱防止制御を作動させることができ、運転者が車線変更を中止する可能性が低い状況下で、車線逸脱防止制御を抑制できる。その結果、車線逸脱防止制御が運転者に違和感を与えてしまうのを防止できる。
【0073】
(2)車線変更しようとしている車線の後側方の障害物を基に、逸脱判断フラグFoutのONの状態を維持又は変更し、車線逸脱防止制御の作動を決定している。すなわち、障害物検出手段が検出した、走行車線に対する逸脱方向で、かつ自車両の後側方で検出した障害物に関する情報を基に、車線変更のリスクの度合いを判定している。これにより、自車両の後側方の障害物を基準とすることで、車線変更のリスクの度合いを適切に判定できる。また、従来技術では、自車両の後側方に障害物が存在する場合でも、運転者による操舵操作等の運転者の車線変更の意思を検出したときには、車線逸脱防止制御を中止させていた。このような車線逸脱防止制御の中止は、運転者に違和感を与えていた。しかし、自車両の後側方の障害物を基準として、車線変更のリスクの度合いを適切に判定できることで、運転者に違和感を与えることなく、車線逸脱防止制御を中止できる。
【0074】
(3)障害物検出手段が自車両の後側方の障害物の存在を検出している。そして、車線変更しようとしている車線に後側方の障害物の存在を検出しているときには(Fbs=ONの場合)、逸脱判断フラグFoutをOFFに変更しないようにして(ONに維持し)、車線逸脱防止制御を作動させている。また、車線変更しようとしている車線に後側方の障害物の存在を検出していないときには(Fbs=OFFの場合)、逸脱判断フラグFoutをOFFに変更して、車線逸脱防止制御を作動させないようにしている。すなわち、自車両の後側方の障害物の存在を検出している場合、車線変更のリスクが高いと判定し、自車両の後側方の障害物の存在を検出していない場合、車線変更のリスクが低いと判定している。これにより、自車両の後側方の障害物の検出状態を基準にすることで、車線変更のリスクの度合いを適切に判定できる。
【0075】
(4)障害物検出手段が自車両の後側方の障害物と自車両との距離及び相対速度の少なくとも何れかを検出している。そして、自車両の後側方の障害物と自車両との距離及び相対速度の少なくとも何れかを基に、後側方障害物検出判断フラグFbsを設定している。すなわち、自車両の後側方の障害物と自車両との距離及び相対速度の少なくとも何れかを基に、車線変更のリスクの度合いを判定している。これにより、車線逸脱防止制御の作動の可否を決定することとなる自車両の後側方の障害物の存在を適切に判断することができる。
【0076】
(5)後側方の障害物を検出していることで作動を維持した車線逸脱防止制御では、制御開始時からの操舵角の変化量が多くなるほど、ゲインKstrを大きくし、目標ヨーモーメントMsを大きくする補正をしている。すなわち、車線変更のリスクが高いと判定した場合、車線逸脱防止制御の制御量が、走行車線に対して逸脱傾向が発生している方向へのステアリングホイールの切り増し操舵量が多くなるほど多くなる様に補正している。これにより、運転者が後側方の障害物の存在に気づかずにステアリングホイールの操舵を続けて車線変更を継続していくような場合でも、そのような状況に適合させた制御量で車線逸脱防止制御できる。これにより、自車両が後側方の障害物に近づいてしまうのを適切に防止でき、適切に運転者に後側方の障害物の存在を気づかせることができる。
【0077】
(6)逸脱方向の隣接車線に後側方障害物を検出したことで目標ヨーモーメントMsを補正している場合には、制御終了勾配LDECを通常時のものよりも小さくしている。すなわち、車線逸脱防止制御の制御量を切り増し操舵量が多くなるほど多くなる様に補正した後に車線逸脱防止制御の終了する時には、該補正を行わずに車線逸脱防止制御を終了する時よりも該制御量の減少割合が大きくなるように補正をしている。これにより、自車両が自車線内に戻り過ぎてしまうのを防止できる。
【0078】
(7)制御終了時からの操舵角の変化量Δθ2が大きくなるほど、制御終了勾配LDECを大きくしている。すなわち、自車線方向へのステアリングホイールの切り戻し操舵量が多くなるほど、車線逸脱防止制御の制御量の減少割合を大きくしている。これにより、運転者が大きく戻し操舵した場合でも、それに適合させて、車線逸脱防止制御の制御量を減少させることができる。これにより、運転者が大きく戻し操舵した場合でも、自車両を自車線内に適切に戻すことができる。
(8)ステアリングホイールの操舵操作を基に、 運転者の車線変更の意思を検出している。これにより、運転者が方向指示器を操作せずに逸脱方向に車線変更する場合でも、運転者の車線変更の意思を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施形態の車両の構成を示す図である。
【図2】制駆動力コントロールユニットの処理手順を示すフローチャートである。
【図3】制駆動力コントロールユニットによる車線逸脱傾向の判定の処理内容を示すフローチャートである。
【図4】推定横変位Xsや逸脱判定用しきい値XLの説明に使用した図である。
【図5】走行車線曲率βと減速制御判定用しきい値Xβとの関係を示す特性図である。
【図6】車速VとゲインK2との関係を示す特性図である。
【図7】制駆動力コントロールユニットによる目標ヨーモーメントの補正の処理内容を示すフローチャートである。
【図8】車線逸脱防止制御の開始時からの操舵角の変化量Δθ1とゲインKstrとの関係を示す特性図である。
【図9】制駆動力コントロールユニットによる制御終了勾配設定の処理内容を示すフローチャートである。
【図10】車線逸脱防止制御の終了時からの操舵角の変化量Δθ2と制御終了勾配LDECとの関係を示す特性図である。
【図11】車速VとゲインKgvとの関係を示す特性図である。
【図12】本発明を適用した車線逸脱防止制御による車両挙動を示す図である。
【図13】従来例と本発明の適用例との比較の説明に使用した目標ヨーモーメントの経時変化を示す特性図である。
【符号の説明】
【0080】
6FL〜6RR ホイールシリンダ、7 制動流体圧制御部、8 制駆動力コントロールユニット、9 エンジン、12 駆動トルクコントロールユニット、13 撮像部、14L,14R レーダ装置、17 マスタシリンダ圧センサ、18 アクセル開度センサ、19 操舵角センサ、22FL〜22RR 車輪速度センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両が走行車線から逸脱しそうになったときに、その逸脱を防止する車線逸脱防止装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の車線逸脱防止装置では、運転者による操舵操作やウインカ操作等で該運転者が車線逸脱を認識している状態にあることを検出した場合、操舵トルクによる車線逸脱防止制御を終了(キャンセル)させている。
【特許文献1】特開2005−343303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1の装置では、車線変更のため運転者が操舵操作等をした場合には車線逸脱防止制御を終了させるので、その後、運転者が走行状況等から車線変更を中止したときでも、車線逸脱防止制御が終了したままとなる。しかし、このような車線逸脱防止制御の中止は、運転者に違和感を与えてしまう。
本発明の課題は、運転者による車線変更の行動に、車線逸脱防止制御の作動を合致させることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために、本発明は、走行車線に対して逸脱傾向が発生している方向への運転者の車線変更の意思を検出した場合、その車線変更のリスクの度合いを判定し、リスクが高いと判定したときには、車線逸脱防止制御を作動させて、リスクが低いと判定したときには、車線逸脱防止制御を抑制している。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、運転者が車線変更を中止する可能性が高い状況下で、車線逸脱防止制御を作動させることができ、運転者が車線変更を中止する可能性が低い状況下で、車線逸脱防止制御を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という。)を図面を参照しながら詳細に説明する。
(構成)
本発明の実施形態は、本発明に係る車線逸脱防止装置を搭載した後輪駆動車両である。この後輪駆動車両は、自動変速機とコンベンショナルディファレンシャルギヤとを搭載し、前後輪とも左右輪の制動力を独立制御可能な制動装置を搭載している。
図1は、本実施形態を示す概略構成図である。
図中の符号1はブレーキペダル、2はブースタ、3はマスタシリンダ、4はリザーバである。通常は、運転者によるブレーキペダル1の踏込み量に応じて、マスタシリンダ3で昇圧された制動流体圧を各車輪5FL〜5RRの各ホイールシリンダ6FL〜6RRに供給する。また、マスタシリンダ3と各ホイールシリンダ6FL〜6RRとの間には制動流体圧制御部7を介装している。
【0007】
制動流体圧制御部7は、例えばアンチスキッド制御(ABS:Anti-lock Brake System)、トラクション制御(TCS:Traction Control System)又はビークルダイナミックスコントロール装置(VDC:Vehicle Dynamics Control)に用いられる制動流体圧制御部を利用したものである。制動流体圧制御部7は、各ホイールシリンダ6FL〜6RRの制動流体圧を個別に制御する。そして、制動流体圧制御部7は、単独でその制動流体圧を制御できる。また、制動流体圧制御部7は、後述する制駆動力コントロールユニット8から制動流体圧指令値が入力された場合には、その制動流体圧指令値に応じて制動流体圧を制御することもできる。例えば、液圧供給系にアクチュエータを含んで制動流体圧制御部7を構成している。アクチュエータとしては、各ホイールシリンダ液圧を任意の制動液圧に制御可能な比例ソレノイド弁が挙げられる。
【0008】
また、この車両は、駆動トルクコントロールユニット12を搭載している。駆動トルクコントロールユニット12は、エンジン9の運転状態、自動変速機10の選択変速比及びスロットルバルブ11のスロットル開度を制御することにより、駆動輪である後輪5RL,5RRへの駆動トルクを制御する。駆動トルクコントロールユニット12は、燃料噴射量や点火時期を制御したり、同時にスロットル開度を制御したりすることで、エンジン9の運転状態を制御する。駆動トルクコントロールユニット12は、単独で後輪5RL,5RRの駆動トルクを制御することもできる。また、駆動トルクコントロールユニット12は、制駆動力コントロールユニット8から駆動トルク指令値が入力された場合には、その駆動トルク指令値に応じて駆動輪トルクを制御することもできる。駆動トルクコントロールユニット12は、制御に使用した駆動トルクTwの値を制駆動力コントロールユニット8に出力する。
【0009】
また、この車両は、画像処理機能付きの撮像部13を搭載している。撮像部13は、走行車線内における自車両の位置を検出する。例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラからなる単眼カメラで撮像するように撮像部13を構成している。車両前部に撮像部(フロントカメラ)13を設置している。
撮像部13は、自車両前方の撮像画像から例えば白線(レーンマーカ)等の車線区分線を検出する。撮像部13は、その検出した車線区分線を基に、走行車線を検出する。さらに、撮像部13は、検出した走行車線を基に、自車両の走行車線と自車両の前後方向軸とのなす角(ヨー角)φ、走行車線中央からの横変位X及び走行車線曲率β等を算出する。この撮像部13は、算出したこれらヨー角φ、横変位X及び走行車線曲率β等を制駆動力コントロールユニット8に出力する。また、走行車線曲率βを後述のステアリングホイール21の操舵角δに基づいて算出することもできる。
【0010】
また、この車両は、自車両の側面方向を走行する障害物を検出するレーダ装置14L,14Rを搭載している。レーダ装置14L,14Rは、少なくとも自車両の側面の死角エリアに存在する障害物(例えば隣接車線走行車両)を検出する。例えば、後側方に障害物検出範囲(障害物検出エリア)を設定し、その障害物検出範囲内で障害物(後側方車両)を検出する。レーダ装置14L,14Rは、このような障害物検出範囲内で検出した障害物の情報として、例えば障害物との相対横位置、相対縦位置、相対縦速度及び相対横速度を検出する。レーダ装置14L,14Rは、相対横位置等の障害物の検出結果を制駆動力コントロールユニット8に出力する。
【0011】
ここで、自車両から後側方に位置する限り、その障害物は後側方の障害物となる。しかし、本実施形態でいう後側方は、自車両から極端に遠い後側方を含むものではなく、例えば、レーダ装置14L,14Rが有する能力で検出可能な後側方をいうものである。また、後側方は、自車両の車線変更等の走行状態に影響を与えるような後側方を少なくとも含んでいる。
【0012】
また、この車両は、マスタシリンダ3の出力圧、すなわちマスタシリンダ液圧Pmを検出するマスタシリンダ圧センサ17を搭載している。また、この車両は、アクセルペダルの踏込み量、すなわちアクセル開度θtを検出するアクセル開度センサ18、及びステアリングホイール21の操舵角(ステアリング舵角)δを検出する操舵角センサ19を搭載している。また、この車両は、運転者による方向指示器(ターンシグナルスイッチ)の操作を検出する方向指示スイッチ20、及び各車輪5FL〜5RRの回転速度、所謂車輪速度Vwi(i=fl,fr,rl,rr)を検出する車輪速度センサ22FL〜22RRを搭載している。そして、これらセンサ等は、検出した検出信号を制駆動力コントロールユニット8に出力する。
【0013】
次に、制駆動力コントロールユニット8で行う演算処理を説明する。図2は、制駆動力コントロールユニット8で行う演算処理手順を示す。例えば10msec.毎の所定サンプリング時間ΔT毎にタイマ割込によって演算処理を実行する。なお、演算処理によって得た情報を随時記憶装置に更新記憶すると共に、必要な情報を随時記憶装置から読み出す。
図2に示すように、処理を開始すると、先ずステップS1において、前記各センサやコントローラ、コントロールユニットから各種データを読み込む。具体的には、各センサが検出した、各車輪速度Vwi、操舵角δ、アクセル開度θt、マスタシリンダ液圧Pm及び方向スイッチ信号、駆動トルクコントロールユニット12からの駆動トルクTw、撮像部13からヨー角φ、横変位X及び走行車線曲率β、並びにレーダ装置14L,14Rから検出結果を読み込む。
【0014】
続いてステップS2において、車速Vを算出する。具体的には、前記ステップS1で読み込んだ車輪速度Vwiに基づいて、下記(1)式により車速Vを算出する。
前輪駆動の場合
V=(Vwrl+Vwrr)/2
後輪駆動の場合
V=(Vwfl+Vwfr)/2
・・・(1)
【0015】
ここで、Vwfl,Vwfrは左右前輪それぞれの車輪速度であり、Vwrl,Vwrrは左右後輪それぞれの車輪速度である。すなわち、この(1)式では、従動輪の車輪速の平均値として車速Vを算出している。なお、本実施形態では、後輪駆動車両なので、後者の式、すなわち前輪の車輪速度により車速Vを算出する。
また、このように算出した車速Vは好ましくは通常走行時に用いる。例えば、ABS制御等が作動している場合、そのABS制御内で推定している推定車体速度を前記車速Vとして用いるようにする。また、図示しないナビゲーション装置でナビゲーション情報に利用している値を車速Vとして用いても良い。
【0016】
続いてステップS3において、車線逸脱傾向を判定する。図3は、この判定処理の処理手順を示す。また、図4には、この処理で用いる値の定義を示している。
図3に示すように、先ずステップS21において、所定時間T後の車両重心横位置の推定横変位Xsを算出する。具体的には、前記ステップS1で得たヨー角φ、走行車線曲率β及び現在の車両の横変位X、及び前記ステップS2で得た車速Vを用いて、下記(2)式により推定横変位Xsを算出する。
Xs=Tt・V・(φ+Tt・V・β)+X ・・・(2)
ここで、Ttは前方注視距離算出用の車頭時間である。この車頭時間Ttに自車速Vを乗じると前方注視点距離になる。また、車頭時間Tt後の走行車線中央からの横変位推定値が将来の推定横変位Xsとなる。この(2)式によれば、例えばヨー角φが大きくなるほど、推定横変位Xsは大きくなる。
【0017】
続いてステップS22において、逸脱判定をする。具体的には、推定横変位Xsと所定の逸脱傾向判定用しきい値XLとを比較する。ここで、逸脱傾向判定用しきい値XLは、一般的に車両が車線逸脱傾向にあると把握できる値である。逸脱傾向判定用しきい値XLは、例えば実験値等である。また、走行路の境界線の位置を示す値として、下記(3)式により逸脱傾向判定用しきい値XLを算出できる。
XL=(L−H)/2 ・・・(3)
ここで、Lは車線幅である。Hは車両の幅である。車線幅Lについては、撮像部13が撮像画像を処理して得ている。また、ナビゲーション装置から車両の位置を得たり、ナビゲーション装置の地図データから車線幅Lを得たりすることもできる。
【0018】
なお、図4において、自車両の走行車線内に逸脱傾向判定用しきい値XLを設定している。しかし、これに限らず、走行車線の外側に設定することもできる。また、自車両が走行車線から逸脱する前に逸脱傾向ありと判定することに限らず、例えば車輪の少なくとも1つが車線から逸脱した後に逸脱傾向ありと判定することもできる。この場合、そのような判定を得るように逸脱傾向判定用しきい値XLを設定する。
【0019】
このステップS22において、推定横変位Xsが逸脱傾向判定用しきい値XL以上の場合(|Xs|≧XL)、車線逸脱傾向ありと判定する。また、推定横変位Xsが逸脱傾向判定用しきい値XL未満の場合(|Xs|<XL)、車線逸脱傾向なしと判定する。
続いてステップS23において、逸脱判断フラグFoutを設定する。すなわち、前記ステップS22において、車線逸脱傾向ありと判定した場合(|Xs|≧XL)、逸脱判断フラグFoutをONにする(Fout=ON)。また、前記ステップS22において、車線逸脱傾向なしと判定した場合(|Xs|<XL)、逸脱判断フラグFoutをOFFにする(Fout=OFF)。
【0020】
このステップS22及びステップS23の処理により、例えば自車両が車線中央から離れていき、推定横変位Xsが逸脱傾向判定用しきい値XL以上になったとき(|Xs|≧XL)、逸脱判断フラグFoutがONになる(Fout=ON)。また、自車両(Fout=ONの状態の自車両)が車線中央側に復帰していき、推定横変位Xsが逸脱傾向判定用しきい値XL未満になったとき(|Xs|<XL)、逸脱判断フラグFoutがOFFになる(Fout=OFF)。例えば、車線逸脱傾向が発生している場合に、後述する逸脱防止のための制動制御を実施したり、運転者自身が車線逸脱を回避する操作をしたりすれば、逸脱判断フラグFoutがONからOFFになる。
【0021】
続いてステップS24において、横変位Xを基に逸脱方向Doutを判定する。具体的には、車線中央から左方向に横変位している場合、その方向を逸脱方向Doutにする(Dout=left)。また、車線中央から右方向に横変位している場合、その方向を逸脱方向Doutにする(Dout=right)。
続いてステップS4において、後側方の障害物を検出する。具体的には、前記ステップS1で読み込んだレーダ装置14L,14Rの検出結果(後側方障害物検出情報)を基に、後側方の障害物を検出する。より詳しくは、前記ステップS3で設定した逸脱判断フラグFoutがONである場合に、逸脱方向Doutにレーダ装置14L,14Rが後側方の障害物を検出しているときには、後側方障害物検出判断フラグFbsをONに設定する(Fbs=ON)。
【0022】
ここで、レーダ装置14L,14Rが、検出した後側方の障害物について出力する相対速度及び距離を基に、後側方障害物検出判断フラグFbsを設定することもできる。具体的には、自車両と障害物との縦方向距離Yobが所定のしきい値Yobth未満であり、かつ自車両と障害物との縦方向の相対速度Vrobが所定のしきい値Vrobth未満の場合(Yob<YobthかつVrob<Vrobth)、後側方障害物検出判断フラグFbsをONに設定する(Fbs=ON)。ここで、相対速度Vrobは、自車両の速度の方が大きくなるほど、正値で大きくなる値である。
【0023】
また、後側方の障害物との距離のみを基に、後側方障害物検出判断フラグFbsを設定することもできる。具体的には、自車両と障害物との縦方向距離Yobが所定のしきい値Yobth未満の場合(Yob<Yobth)、後側方障害物検出判断フラグFbsをONに設定する(Fbs=ON)。このような判定をする場合には、自車両と後側方の障害物との相対速度が小さくても自車両が車線変更できるような充分な距離を所定のしきい値Yobthに設定する。また、自車両と後側方の障害物との相対速度がほとんどないと考えて、自車両の速度に応じて所定のしきい値Yobthを設定することもできる。
【0024】
続いてステップS5において、運転者の車線変更の意思を判定する。具体的には、前記ステップS1で得た方向スイッチ信号及び操舵角δを基に、次のように運転者の車線変更の意思を判定する。
方向スイッチ信号が示す方向(ウインカ点灯側)と、前記ステップS3で得た逸脱方向Doutが示す方向とが同じ場合、運転者が意識的に車線変更していると判定し、逸脱判断フラグFoutをOFFに変更する(Fout=OFF)。すなわち、車線逸脱傾向なしとの判定結果に変更する。また、方向スイッチ信号が示す方向(ウインカ点灯側)と、前記ステップS3で得た逸脱方向Doutが示す方向とが異なる場合、逸脱判断フラグFoutを維持し、逸脱判断フラグFoutをONのままにする(Fout=ON)。すなわち、車線逸脱傾向ありとの判定結果を維持する。
【0025】
また、方向指示スイッチ20が操作されていない場合には、操舵角δを基に運転者の車線変更の意思を判定する。具体的には、運転者が逸脱方向に操舵している場合において、その操舵角δとその操舵角の変化量(単位時間当たりの変化量)Δδとの両方が設定値以上のときには、運転者が意識的に車線変更していると判定し、逸脱判断フラグFoutをOFFに変更する(Fout=OFF)。なお、操舵トルクを基に運転者の意思を判定しても良い。
【0026】
このように、逸脱判断フラグFoutがONである場合において運転者が意識的に車線変更していないと判定したときには、逸脱判断フラグFoutをONに維持している。そして、逸脱判断フラグFoutがONである場合において運転者が意識的に車線変更していると判定したときには、逸脱判断フラグFoutをONからOFFに変更している。しかし、前記ステップS4で後側方障害物検出判断フラグFbsをONに設定している場合には、逸脱判断フラグFoutをOFFに変更しないようにする(ONを維持する)。すなわち、運転者が意識的に車線変更しようとしていると判断できるような場合でも、その車線変更しようとしている車線に後側方の障害物を検出しているときには(Fbs=ONの場合)、逸脱判断フラグFoutをOFFに変更しないようにする。
【0027】
続いてステップS6において、前記ステップS4で設定(維持)した逸脱判断フラグFoutがONの場合、車線逸脱回避のための警報として、音出力又は表示出力をする。
なお、後述のように、逸脱判断フラグFoutがONの場合、車線逸脱防止制御として自車両へのヨーモーメント付与を開始するから、この自車両へのヨーモーメント付与と同時に該警報出力がなされる。しかし、これに限定されるものではなく、例えば車両へのヨーモーメント付与の開始タイミングよりも警報の出力タイミングを早くするもともできる。
【0028】
続いてステップS7において、車線逸脱防止制御として自車両の減速制御を行うか否かを判定する。本実施形態の車線逸脱防止制御では、自車両が車線逸脱してしまうのを防止する目的で、減速制御により自車両を減速させている。このステップS7では、その減速制御を行うか否かを判定する。具体的には、前記ステップS3で算出した推定横変位Xsから横変位限界距離XLを減じて得た減算値(|Xs|−XL)が減速制御判定用しきい値Xβ以上か否かを判定する。
【0029】
ここで、減速制御判定用しきい値Xβは、走行車線曲率βに応じて設定される値である。図5は、走行車線曲率βと減速制御判定用しきい値Xβとの関係の一例を示す。同図に示すように、走行車線曲率βが小さい場合、減速制御判定用しきい値Xβはある一定の大きい値となる。また、走行車線曲率βがある値より大きくなると、走行車線曲率βが増加するのに対して減速制御判定用しきい値Xβは減少する。そして、走行車線曲率βがさらに大きくなると、減速制御判定用しきい値Xβはある一定の小さい値となる。さらに、車速Vが大きくなるほど、減速制御判定用しきい値Xβを小さくすることもできる。
【0030】
このステップS7では、前記減算値(|Xs|−XL)が減速制御判定用しきい値Xβ以上の場合(|Xs|−XL≧Xβ)、減速制御を行うと決定するとともに、減速制御作動判断フラグFgsをONに設定する(Fgs=ON)。また、前記減算値(|Xs|−XL)が減速制御判定用しきい値Xβ未満の場合(|Xs|−XL<Xβ)、減速制御を行わない決定をするとともに、減速制御作動判断フラグFgsをOFFに設定する(Fgs=OFF)。
【0031】
なお、前記ステップS3において推定横変位Xsが逸脱傾向判定用しきい値XL以上の場合(|Xs|≧XL)、逸脱判断フラグFoutをONに設定している。一方、前記減算値(|Xs|−XL)が減速制御判定用しきい値Xβ以上の場合、減速制御作動判断フラグFgsをONに設定している。これらの関係から、逸脱判断フラグFoutをONに設定するとしても、その設定は、減速制御作動判断フラグFgsをONに設定した後になる。すなわち、後述する逸脱判断フラグFoutがONになった場合に実施する自車両へのヨーモーメント付与との関係では、自車両の減速制御を実施した後、自車両にヨーモーメントを付与するようになる。
【0032】
続いてステップS8において、車線逸脱防止制御として自車両に付与する目標ヨーモーメントMsを算出する。目標ヨーモーメントMsは、自車両が車線逸脱してしまうのを十分に防止できるヨーモーメントである。具体的には、前記ステップS3で得た推定横変位Xs及び横変位限界距離XLを用いて、下記(4)式により目標ヨーモーメントMsを算出する。
Ms=K1・K2・(|Xs|−XL) ・・・(4)
【0033】
ここで、K1は車両諸元から決まる比例ゲインであり、K2は車速Vに応じて変動するゲインである。図6はそのゲインK2の例を示す。同図に示すように、低速域では、ゲインK2は、ある一定の大きい値となる。また、車速Vがある値よりも大きくなると、車速Vの増加に対してゲインK2は減少する。そして、その後ある車速Vに達するとゲインK2はある一定の小さい値となる。
【0034】
続いてステップS9において、目標ヨーモーメントを補正する。
ここで、本実施形態における車線逸脱防止制御の処理は、走行車線から自車両が逸脱回避完了するまでに、該車線逸脱防止制御の処理ルーチンを複数回実行することを前提とした処理になっている。すなわち、車線逸脱防止制御では、逸脱状態に応じて変化するヨーモーメント(具体的には、目標ヨーモーメントMs)を連続的に逐次自車両に付与していき、走行車線からの自車両の逸脱回避を完了させている。このステップS9及び後述のステップS10の処理は、そのような車線逸脱防止制御の処理内容を前提として、目標ヨーモーメントを補正等するものである。
【0035】
図7は、この補正処理の処理手順を示す。同図に示すように、先ずステップS31において、目標ヨーモーメントMsが零よりも大きいか否かを判定する。ここで、目標ヨーモーメントMsが零よりも大きい場合(Ms>0)、ステップS32に進む。また、そうでない場合(Ms=0)、該図7に示す処理(ステップS9の処理)を終了する。
【0036】
ステップS32では、逸脱判断フラグFoutがONか否かを判定する。ここで、逸脱判断フラグFoutがONの場合(Fout=ON)、ステップS33に進む。また、逸脱判断フラグFoutがOFFの場合(Fout=OFF)、該図7に示す処理(ステップS9の処理)を終了する。
ステップS33では、後側方障害物検出判断フラグFbsがONか否かを判定する。ここで、後側方障害物検出判断フラグFbsがONの場合(Fbs=ON)、ステップS34に進む。また、後側方障害物検出判断フラグFbsがOFFの場合(Fbs=OFF)、該図7に示す処理(ステップS9の処理)を終了する。
【0037】
ステップS34では、制御開始時(FoutがONになった時点)からの操舵角の変化量に応じてゲインを設定する。具体的には、制御開始時からの操舵角の変化量が大きくなるほど、ゲインを大きくする。図8は、制御開始時からの操舵角の変化量Δθ1とゲインKstrとの関係の一例を示す。同図に示すように、操舵角の変化量Δθ1が小さい領域では、ゲインKstrは小さい値になる。また、操舵角の変化量Δθ1がある値になると、ゲインKstrは操舵角の変化量Δθ1とともに増加する。また、その後ある操舵角の変化量Δθ1に達すると、ゲインKstrは一定の大きい値になる。このように、概略として、操舵角の変化量Δθ1が大きくなるほど、ゲインKstrは大きくなる。
【0038】
続いてステップS35において、前記ステップS34で設定したゲインKstrを用いて目標ヨーモーメントを補正する。具体的には、下記(5)式により目標ヨーモーメントMsを補正する。
Ms=Ms・Kstr ・・・(5)
ここで、(5)式の右辺のMsは、前記ステップS8で算出した目標ヨーモーメントである。
続いてステップS36において、前記ステップS35の補正に対応し補正実行判断フラグFhを設定する。すなわち、前記ステップS35で目標ヨーモーメントを補正した場合、補正実行判断フラグFhをONに設定する(Fh=ON)。そして、該図7に示す処理(ステップS9の処理)を終了する。
【0039】
このようなステップS9(図7)の処理により、目標ヨーモーメントMsが零よりも大きく、逸脱判断フラグFoutがONであり、かつ後側方障害物検出判断フラグFbsがONの場合(前記ステップS31〜ステップS33)、制御開始時からの操舵角の変化量Δθ1に応じてゲインKstrを設定する(前記ステップS34)。すなわち、自車両が車線逸脱傾向が発生していることで車線逸脱防止制御が作動し、その逸脱方向の隣接車線に後側方障害物が存在するときには、制御開始時からの操舵角の変化量Δθ1に応じてゲインKstrを設定する。概略として、操舵角の変化量Δθ1が大きくなるほど、ゲインKstrを大きい値に設定する。そして、そのように設定したゲインKstrを用いて目標ヨーモーメントMsを補正する(前記ステップS35)。これにより、制御開始時からの操舵角の変化量Δθ1が大きくなるほど、目標ヨーモーメントMsは大きくなる。このとき、補正実行判断フラグFhをONに設定する(前記ステップS36)。なお、このような補正がなければ(前記ステップS31、ステップS32及びステップS33の判定処理で何れかが“NO”の場合)、目標ヨーモーメントMsは、前記ステップS8で算出された値のままである。
【0040】
続いてステップS10において、制御終了勾配を設定する。図9は、この設定処理の処理手順を示す。同図に示すように、先ずステップS41において、逸脱判断フラグFoutがOFFか否かを判定する。ここで、逸脱判断フラグFoutがOFFの場合(Fout=OFF)、ステップS42に進む。また、逸脱判断フラグFoutがONの場合(Fout=ON)、該図9に示す処理(ステップS10の処理)を終了する。
【0041】
ステップS42では、補正実行判断フラグFhがONか否かを判定する。すなわち、前記ステップS9で目標ヨーモーメントMsを補正したか否かを判定する。ここで、補正実行判断フラグFhがONの場合、ステップS43に進む。また、そうでない場合(Fh=OFF)、ステップS46に進む。
ステップS43では、目標ヨーモーメントMsが零よりも大きいか否かを判定する。ここで、目標ヨーモーメントMsが零よりも大きい場合(Ms>0)、ステップS44に進む。また、そうでない場合(Ms=0)、ステップS46に進む。
【0042】
ステップS44では、制御終了時(FoutがONからOFFになった時点)からの操舵角の変化量に応じて制御終了勾配を設定する。具体的には、制御開始時からの操舵角の変化量が大きくなるほど、制御終了勾配を大きくする。図10は、車線逸脱防止制御の終了時からの操舵角の変化量Δθ2と制御終了勾配LDECとの関係の一例を示す。同図に示すように、操舵角の変化量Δθ2が小さい領域では、制御終了勾配LDECは小さい値になる。また、操舵角の変化量Δθ2がある値になると、制御終了勾配LDECは操舵角の変化量Δθ2とともに増加する。また、その後ある操舵角の変化量Δθ2に達すると、制御終了勾配LDECは一定の大きい値になる。このように、概略として、操舵角の変化量Δθ2が大きくなるほど、制御終了勾配LDECは大きくなる。このように制御終了勾配LDECを設定し、ステップS45に進む。
なお、ここでの操舵角の変化量Δθ2は、車線逸脱防止制御の終了時には運転者が自車線内に自車両を戻すために戻し操舵をするのが通常であるから、その戻し操舵に係るものになる。
【0043】
また、前記ステップS42で補正実行判断フラグFhがONと判定した場合、又は前記ステップS43で目標ヨーモーメントMsが零の場合に進むステップS46では、通常の制御終了勾配LDECにする。例えば、通常の制御終了勾配LDECとは、前記ステップS44で操舵角の変化量θ2が零の場合に設定する制御終了勾配LDECと同等又はそれよりも小さい値である。また、目標ヨーモーメントMsが零であれば(前記ステップS43の判定処理で“No”の場合)、制御終了勾配LDECを用いた制御終了処理を省略することもできる。
【0044】
続いてステップS45において、前記ステップS44又はステップS46で設定した制御終了勾配LDECを用いて車線逸脱防止制御の制御勾配を補正する。具体的には、下記(6)式により目標ヨーモーメントMsを算出する。
Ms=Ms−LDEC ・・・(6)
ここで、前記ステップS44で制御終了勾配LDECを設定している場合(Fh=ONが前提)、前記ステップS9で目標ヨーモーメントMsを補正していることから、(6)式により算出する目標ヨーモーメントMsは、そのように補正されている目標ヨーモーメントMsを該制御終了勾配LDECにより減算した値になる。
【0045】
このようなステップS10(図9)の処理により、逸脱判断フラグFoutがOFFであり、補正実行判断フラグFhがONであり、かつ目標ヨーモーメントMsが零よりも大きい場合(前記ステップS41〜ステップS43)、制御終了時からの操舵角の変化量Δθ2に応じて制御終了勾配LDECを設定する(前記ステップS44)。すなわち、前記ステップS9で逸脱方向の隣接車線に後側方障害物(後側方車両)が存在するとして、目標ヨーモーメントMsが補正されている場合には、目標ヨーモーメントMsが零よりも大きくなっていることを条件に、制御終了時からの操舵角の変化量Δθ2に応じて制御終了勾配LDECを設定する。概略として、操舵角の変化量Δθ2が大きくなるほど、制御終了勾配LDECを大きい値に設定する。そして、制御終了時には、そのように設定した制御終了勾配LDECを用いて目標ヨーモーメントMsを減少させる処理を行う(前記ステップS45)。これにより、制御終了時からの操舵角の変化量Δθ2が大きくなるほど、制御終了時の目標ヨーモーメントMsの減少割合は大きくなる。
【0046】
なお、逸脱方向の隣接車線に後側方障害物が存在せず、目標ヨーモーメントMsが補正されてなければ(前記ステップS42の判定処理で“NO”の場合)、制御終了時(通常終了時)の目標ヨーモーメントMsは、通常の制御終了勾配LDECで減少する。前述のように、制御終了時からの操舵角の変化量Δθ2を基に制御終了勾配LDECを設定している場合、その目標ヨーモーメントMsの減少割合は、このような通常終了時の目標ヨーモーメントMsの減少割合より常に大きくなる。すなわち、常に制御終了勾配は大きくなる。
【0047】
なお、逸脱判断フラグFoutがONからOFFになった場合に車線逸脱防止制御は終了するが、その制御終了時の横方向位置は、通常、制御開始時の横方向位置とは異なる。これは、本実施形態では、前方注視点を基準に逸脱傾向の有無を判定しているからであり(前記ステップS3)、通常、制御終了時の横方向位置は、制御開始時の横方向位置よりも外側になる。
【0048】
続いてステップS11において、車線逸脱防止制御として実施する減速制御の減速度を算出する。本実施形態では、その減速度を実現するために左右両輪で発生させる制動力を算出する。具体的には、そのような制動力を左右両輪に発生させるための目標制動液圧Pgf,Pgrを算出する。前輪用の目標制動液圧Pgfについては、前記ステップS3で算出した推定横変位Xs及び横変位限界距離XL、並びに前記ステップS7で得た減速制御判定用しきい値Xβを用いて、下記(7)式により算出する。
Pgf=Kgv・Kgx・(|Xs|−XL−Xβ) ・・・(7)
【0049】
ここで、Kgv,Kgxはそれぞれ、車速V及び横変化量dxを基に設定する、制動力を制動液圧に換算するための換算係数である。図11は換算係数Kgvの例を示す。同図に示すように、例えば換算係数Kgvは、低速域で小さい値になる。また、車速Vがある値になると、換算係数Kgvは車速Vとともに増加する。また、その後ある車速Vに達すると、換算係数Kgvは大きい一定値になる。そして、前輪用の目標制動液圧Pgfを基に、前後配分を考慮した後輪用の目標制動液圧Pgrを算出する。
【0050】
続いてステップS12において、各車輪の目標制動液圧を算出する。すなわち、車線逸脱防止の制動制御の有無に基づいて最終的な制動液圧を算出する。具体的には次のように算出する。
逸脱判断フラグFoutがOFFの場合、すなわち車線逸脱傾向がないとの判定結果を得た場合、下記(8)式及び(9)式に示すように、各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を制動液圧Pmf,Pmrにする。
Psfl=Psfr=Pmf ・・・(8)
Psrl=Psrr=Pmr ・・・(9)
ここで、Pmfは前輪用の制動液圧である。また、Pmrは後輪用の制動液圧であり、前後配分を考慮して前輪用の制動液圧Pmfに基づいて算出した値になる。例えば、運転者がブレーキ操作をしていれば、制動液圧Pmf,Pmrはそのブレーキ操作の操作量(マスタシリンダ液圧Pm)に応じた値になる。
【0051】
一方、逸脱判断フラグFoutがONの場合、すなわち車線逸脱傾向が発生しているとの判定結果を得た場合、先ず目標ヨーモーメントMsに基づいて、前輪目標制動液圧差ΔPsf及び後輪目標制動液圧差ΔPsrを算出する。具体的には、下記(10)式〜(13)式により目標制動液圧差ΔPsf,ΔPsrを算出する。
|Ms|<Ms1の場合
ΔPsf=0 ・・・(10)
ΔPsr=Kbr・Ms/T ・・・(11)
|Ms|≧Ms1の場合
ΔPsf=Kbf・(Ms/|Ms|)・(|Ms|−Ms1)/T ・・・(12)
ΔPsr=Kbr・(Ms/|Ms|)・Ms1/T ・・・(13)
ここで、Ms1は設定用しきい値を示す。また、Tはトレッドを示す。なお、トレッドTは、便宜上前後で同じ値である。また、Kbf,Kbrは、制動力を制動液圧に換算する場合の前輪及び後輪についての換算係数であり、ブレーキ諸元により定まる。
【0052】
このように、目標ヨーモーメントMsの大きさに応じて車輪に発生させる制動力を配分している。そして、目標ヨーモーメントMsが設定用しきい値Ms1未満のときには、前輪目標制動液圧差ΔPsfを零として、後輪目標制動液圧差ΔPsrに所定値を与えて、左右後輪で制動力差を発生させる。また、目標ヨーモーメントMsが設定用しきい値Ms1以上のときには、各目標制動液圧差ΔPsr,ΔPsrに所定値を与え、前後左右輪で制動力差を発生させる。
【0053】
そして、以上のように算出した目標制動液圧差ΔPsf,ΔPsr及び減速用の目標制動液圧Pgf,Pgrを用いて最終的な各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出する。具体的には、前記ステップS7で得ている減速制御作動判断フラグFgsをも参照して、最終的な各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出する。
【0054】
すなわち、逸脱判断フラグFoutがONの場合、すなわち車線逸脱傾向が発生しているとの判定結果を得ているが、減速制御作動判断フラグFgsがOFFの場合、すなわち車両へのヨーモーメント付与だけを行う場合、下記(14)式により各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出する。
Psfl=Pmf
Psfr=Pmf+ΔPsf
Psrl=Pmr
Psrr=Pmr+ΔPsr
・・・(14)
【0055】
また、逸脱判断フラグFoutがONであり、かつ減速制御作動判断フラグFgsがONの場合、すなわち車両にヨーモーメントを付与しつつも、車両を減速させる場合、下記(15)式により各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出する。
Psfl=Pmf+Pgf/2
Psfr=Pmf+ΔPsf+Pgf/2
Psrl=Pmr+Pgr/2
Psrr=Pmr+ΔPsr+Pgr/2
・・・(15)
【0056】
また、この(14)式及び(15)式が示すように、運転者によるブレーキ操作、すなわち制動液圧Pmf,Pmrを考慮して各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出している。そして、制駆動力コントロールユニット8は、このようにして算出した各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を制動流体圧指令値として、制動流体圧制御部7に出力する。
【0057】
なお、前記(14)式及び(15)式に示した各車輪の目標制動液圧は、逸脱方向Doutがleftの場合(Dout=left)、すなわち左側車線に対して車線逸脱傾向が発生している場合のものである。例えば、逸脱方向Doutがrightの場合の、前記(14)式に対応する各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)は、下記(16)式により算出される。
Psfl=Pmf+ΔPsf
Psfr=Pmf
Psrl=Pmr+ΔPsr
Psrr=Pmr
・・・(16)
【0058】
(動作及び作用)
車両走行中、各種データを読み込むとともに(前記ステップS1)、車速Vを算出する(前記ステップS2)。また、推定横変位Xsを基に、逸脱傾向を判定する(逸脱判断フラグFoutを設定する、前記ステップS3)。さらに、後側方の障害物を検出する(後側方障害物検出判断フラグFbsを設定する、前記ステップS4)。そして、運転者の操舵操作等から運転者の車線変更の意思を検出して、その検出結果を基に、逸脱傾向の判定結果を変更する(逸脱判断フラグFoutを変更する、前記ステップS5)。このとき、運転者が意識的に車線変更しようとしていると判断できるような場合でも、その車線変更しようとしている車線に後側方の障害物を検出しているときには(Fbs=ONの場合)、逸脱判断フラグFoutをOFFに変更しないようにする。
【0059】
一方、推定横変位Xsを基に、減速制御の作動判定をするとともに(減速制御作動判断フラグFgsを設定する、前記ステップS7)、その減速制御の減速度を算出する(前記ステップS11)。また、推定横変位Xsを基に、目標ヨーモーメントMsを算出するとともに(前記ステップS8)、その目標ヨーモーメントMsを適宜補正する(前記ステップS9)。
【0060】
そして、逸脱判断フラグFoutの状態に基づいて、警報を出力する(前記ステップS6)。さらに、逸脱判断フラグFout及び減速制御作動判断フラグFgsの状態に基づいて、目標ヨーモーメントMs及び減速度(目標制動液圧Pgf)を基に各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出し、その算出した各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を制動流体圧制御部7に出力する(前記ステップS12)。これにより、自車両の車線逸脱傾向に応じて自車両にヨーモーメントを付与し、場合により、自車両を減速させる。そして、車線逸脱防止制御の終了タイミングになったとき(Fout=OFF)、制御終了処理として、所定の制御終了勾配LDECをもって目標ヨーモーメントMsを減少させる(前記ステップS10)。すなわち、制動力又は制動液圧を減少させる。
【0061】
以上のような車線逸脱防止制御では、車線逸脱傾向が発生している場合において、運転者の車線変更の意思を検出したときには、車線逸脱防止制御を作動させないようにしている(FoutをONからOFFに変更している)。しかし、車線逸脱傾向が発生している場合に、運転者の車線変更の意思を検出したときでも、自車両の後側方に障害物を検出したときには、車線逸脱防止制御を作動させるようにしている(FoutをONに維持している)。これにより、運転者が自車両の後側方を走行する車両に気づかずに、該車両が走行する車線に車線変更しようとしている場合でも、車線逸脱防止制御による自車両へのヨーモーメントの付与により、自車両が後側方を走行する車両に近づいてしまうのを防止できる。さらに、運転者は、そのようなヨーモーメントの付与による自車両挙動の変化を介して、後側方の車両の存在に気づくことができる。
【0062】
また、その車線逸脱防止制御では、制御開始時からの操舵角の変化量Δθ1が大きくなるほど、目標ヨーモーメントMsを大きくしている。図12は、車線逸脱防止制御時の自車両100の車両挙動を示す。同図に示すように、自車両の後側方に障害物を検出している場合の車線逸脱防止制御では(Fout=ONかつFbs=ON)、制御開始時からの操舵角の変化量Δθ1が大きくなるほど、目標ヨーモーメントMsを大きくしている。
【0063】
これにより、運転者が後側方を走行する車両の存在に気づかずに操舵操作を続けて車線変更を継続していくような場合でも、そのような状況に適合させたヨーモーメントを自車両に付与できる。これにより、自車両が後側方走行車両に近づいてしまうのを適切に防止でき、適切に運転者に後側方の車両の存在を気づかせることができる。
一方、車線逸脱防止制御では、その制御終了時には、制御終了勾配LDECをもって目標ヨーモーメントMsを減少させている。このとき、図12に示すように、逸脱方向の隣接車線に後側方の障害物を検出したとして、目標ヨーモーメントMsを補正している場合には、制御終了勾配LDECを通常時のものよりも小さくしている。加えて、制御終了時からの操舵角の変化量Δθ2が大きくなるほど、制御終了勾配LDECを大きくしている。
【0064】
前述のように、逸脱方向の隣接車線に後側方の障害物を検出した場合には、制御開始時からの操舵角の変化量Δθ1に応じて目標ヨーモーメントMsを大きくしている。このようなことから、その後、車線逸脱防止制御を終了する場合、その制御終了時点で、目標ヨーモーメントMsが、制御開始時からの操舵角の変化量Δθ1に応じて大きくなっている。よって、車線逸脱防止制御の終了時点から通常の制御終了勾配LDECをもって目標ヨーモーメントMsを減少させてしまうと、自車両が自車線内に戻り過ぎてしまう可能性が高い。
【0065】
このようなことから、逸脱方向の隣接車線に後側方障害物を検出したとして、目標ヨーモーメントMsを補正している場合には、制御終了勾配LDECを通常時のものよりも小さくしている。これにより、自車両が自車線内に戻り過ぎてしまうのを防止できる。さらに、制御終了時からの操舵角の変化量Δθ2が大きくなるほど、制御終了勾配LDECを大きくすることで、運転者が大きく戻し操舵した場合でも、それに適合させて、目標ヨーモーメントMsを減少させることができる。これにより、運転者が大きく戻し操舵した場合でも、自車両を自車線内に適切に戻すことができる。
【0066】
図13は、目標ヨーモーメントMsの時間変化を示す。同図に示すように、逸脱方向の隣接車線に後側方障害物を検出した場合には、車線逸脱防止制御の終了時点(Fout=OFF)で、目標ヨーモーメントMsが、制御開始時からの操舵角の変化量Δθ1に対応して大きくなっている。その結果、車線逸脱防止制御の終了時点から通常の制御終了勾配LDEC(同図中のFout=OFF以降の実線)をもって目標ヨーモーメントMsを減少させてしまうと(同図中のFout=OFF以降の破線)、自車両が自車線内に戻り過ぎてしまう可能性が高くなる。これに対して、本発明を適用することで、逸脱方向の隣接車線に後側方障害物を検出したことで目標ヨーモーメントMsを補正している場合には、制御終了勾配LDECを通常時のものよりも小さくしている。さらに、制御終了時からの操舵角の変化量Δθ2が大きくなるほど、制御終了勾配LDECを大きくしている(同図中のFout=OFF以降の一点鎖線)。これにより、自車両が自車線内に戻り過ぎてしまうのを防止でき、たとえ、運転者が大きく戻し操舵した場合でも、それに適合させて、目標ヨーモーメントMsを減少させ、自車両を自車線内に適切に戻すことができる。
【0067】
(実施形態の変形例)
(1)この実施形態では、走行車線に対する逸脱方向、かつ自車両の後側方で検出した障害物、特に車両を基に、車線変更に対するリスクの度合いを判定している。これに対して、障害物を人間等とすることもできる。また、障害物以外の対象、例えば走行環境を基に、車線変更に対するリスクの度合いを判定することもできる。
【0068】
(2)この実施形態では、車線変更しようとしている車線に後側方の障害物を検出した場合(Fbs=ONの場合)、すなわち車線変更のリスクが高い状況の場合、逸脱判定結果の逸脱判断フラグFoutをOFFに変更せず、ONに維持している。すなわち、逸脱判定を維持することで、車線逸脱防止制御を作動させている(作動を許容している)。これに対して、逸脱判定結果にかかわらず、車線変更のリスクが高い状況である限り、車線逸脱防止制御を作動させることもできる。
【0069】
(3)この実施形態では、車線逸脱防止制御の抑制として、逸脱判断フラグFoutをONからOFFに変更している。すなわち、車線逸脱防止制御を作動させないようにしている(中止している)。これに対して、車線逸脱防止制御の抑制として、車線逸脱防止制御の制御量(例えばヨーモーメント)を小さくすることもできる。また、車線逸脱防止制御の抑制として、車線逸脱防止制御の作動タイミングを遅らせることができる。すなわち、逸脱判断フラグFoutをONにするタイミングを遅らせることができる。また、車線逸脱防止制御の抑制として、車線逸脱防止制御の作動時間を短くすることができる。
【0070】
(4)この実施形態では、制動力差により自車両にヨーモーメントを付与している。これに対して、駆動力差や操舵操作により、自車両にヨーモーメントを付与することができる。
なお、この実施形態では、制駆動力コントロールユニット8のステップS3の処理は、走行車線に対する自車両の逸脱傾向を判定する車線逸脱傾向判定手段を実現している。また、制駆動力コントロールユニット8のステップS12の処理は、前記車線逸脱傾向判定手段が車線逸脱傾向が発生していると判定した場合、走行車線に対する自車両の逸脱を防止する車線逸脱防止制御を行う逸脱防止制御手段を実現している。また、制駆動力コントロールユニット8のステップS5の処理は、前記走行車線に対して逸脱傾向が発生している方向への運転者の車線変更の意思を検出する車線変更意思検出手段を実現している。また、制駆動力コントロールユニット8のステップS4、ステップS5及びステップS9の処理は、前記車線変更意思検出手段が前記運転者の車線変更の意思を検出した場合、その車線変更のリスクの度合いを判定するリスク判定手段、及び前記リスク判定手段がリスクが高いと判定した場合、前記車線逸脱防止制御を作動させて、前記リスク判定手段がリスクが低いと判定した場合、前記車線逸脱防止制御を抑制する制御補正手段を実現している。
【0071】
また、この実施形態では、走行車線に対して自車両が逸脱傾向が発生していると判定し、かつその逸脱傾向が発生している方向への運転者の車線変更の意思を検出したとき、その車線変更のリスクが高ければ、前記走行車線に対する自車両の逸脱を防止する車線逸脱防止制御を作動させ、その車線変更のリスクが低ければ、前記車線逸脱防止制御を抑制する車線逸脱防止方法を実現している。
【0072】
(実施形態における効果)
(1)運転者が意識的に車線変更しようとしていると判断できるような場合でも、その車線変更しようとしている車線に後側方の障害物を検出しているときには(Fbs=ONの場合)、逸脱判断フラグFoutをOFFに変更しない。これにより、車線逸脱防止制御を作動させるようにしている。すなわち、リスク判定手段は、走行車線に対して逸脱傾向が発生している方向への運転者の車線変更の意思を検出した場合、その車線変更のリスクの度合いを判定する。そして、制御補正手段は、リスクが高いと判定したときには、車線逸脱防止制御を作動させている。また、制御補正手段は、リスクが低いと判定したときには、車線逸脱防止制御を抑制している。これにより、運転者が車線変更を中止する可能性が高い状況下で、車線逸脱防止制御を作動させることができ、運転者が車線変更を中止する可能性が低い状況下で、車線逸脱防止制御を抑制できる。その結果、車線逸脱防止制御が運転者に違和感を与えてしまうのを防止できる。
【0073】
(2)車線変更しようとしている車線の後側方の障害物を基に、逸脱判断フラグFoutのONの状態を維持又は変更し、車線逸脱防止制御の作動を決定している。すなわち、障害物検出手段が検出した、走行車線に対する逸脱方向で、かつ自車両の後側方で検出した障害物に関する情報を基に、車線変更のリスクの度合いを判定している。これにより、自車両の後側方の障害物を基準とすることで、車線変更のリスクの度合いを適切に判定できる。また、従来技術では、自車両の後側方に障害物が存在する場合でも、運転者による操舵操作等の運転者の車線変更の意思を検出したときには、車線逸脱防止制御を中止させていた。このような車線逸脱防止制御の中止は、運転者に違和感を与えていた。しかし、自車両の後側方の障害物を基準として、車線変更のリスクの度合いを適切に判定できることで、運転者に違和感を与えることなく、車線逸脱防止制御を中止できる。
【0074】
(3)障害物検出手段が自車両の後側方の障害物の存在を検出している。そして、車線変更しようとしている車線に後側方の障害物の存在を検出しているときには(Fbs=ONの場合)、逸脱判断フラグFoutをOFFに変更しないようにして(ONに維持し)、車線逸脱防止制御を作動させている。また、車線変更しようとしている車線に後側方の障害物の存在を検出していないときには(Fbs=OFFの場合)、逸脱判断フラグFoutをOFFに変更して、車線逸脱防止制御を作動させないようにしている。すなわち、自車両の後側方の障害物の存在を検出している場合、車線変更のリスクが高いと判定し、自車両の後側方の障害物の存在を検出していない場合、車線変更のリスクが低いと判定している。これにより、自車両の後側方の障害物の検出状態を基準にすることで、車線変更のリスクの度合いを適切に判定できる。
【0075】
(4)障害物検出手段が自車両の後側方の障害物と自車両との距離及び相対速度の少なくとも何れかを検出している。そして、自車両の後側方の障害物と自車両との距離及び相対速度の少なくとも何れかを基に、後側方障害物検出判断フラグFbsを設定している。すなわち、自車両の後側方の障害物と自車両との距離及び相対速度の少なくとも何れかを基に、車線変更のリスクの度合いを判定している。これにより、車線逸脱防止制御の作動の可否を決定することとなる自車両の後側方の障害物の存在を適切に判断することができる。
【0076】
(5)後側方の障害物を検出していることで作動を維持した車線逸脱防止制御では、制御開始時からの操舵角の変化量が多くなるほど、ゲインKstrを大きくし、目標ヨーモーメントMsを大きくする補正をしている。すなわち、車線変更のリスクが高いと判定した場合、車線逸脱防止制御の制御量が、走行車線に対して逸脱傾向が発生している方向へのステアリングホイールの切り増し操舵量が多くなるほど多くなる様に補正している。これにより、運転者が後側方の障害物の存在に気づかずにステアリングホイールの操舵を続けて車線変更を継続していくような場合でも、そのような状況に適合させた制御量で車線逸脱防止制御できる。これにより、自車両が後側方の障害物に近づいてしまうのを適切に防止でき、適切に運転者に後側方の障害物の存在を気づかせることができる。
【0077】
(6)逸脱方向の隣接車線に後側方障害物を検出したことで目標ヨーモーメントMsを補正している場合には、制御終了勾配LDECを通常時のものよりも小さくしている。すなわち、車線逸脱防止制御の制御量を切り増し操舵量が多くなるほど多くなる様に補正した後に車線逸脱防止制御の終了する時には、該補正を行わずに車線逸脱防止制御を終了する時よりも該制御量の減少割合が大きくなるように補正をしている。これにより、自車両が自車線内に戻り過ぎてしまうのを防止できる。
【0078】
(7)制御終了時からの操舵角の変化量Δθ2が大きくなるほど、制御終了勾配LDECを大きくしている。すなわち、自車線方向へのステアリングホイールの切り戻し操舵量が多くなるほど、車線逸脱防止制御の制御量の減少割合を大きくしている。これにより、運転者が大きく戻し操舵した場合でも、それに適合させて、車線逸脱防止制御の制御量を減少させることができる。これにより、運転者が大きく戻し操舵した場合でも、自車両を自車線内に適切に戻すことができる。
(8)ステアリングホイールの操舵操作を基に、 運転者の車線変更の意思を検出している。これにより、運転者が方向指示器を操作せずに逸脱方向に車線変更する場合でも、運転者の車線変更の意思を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施形態の車両の構成を示す図である。
【図2】制駆動力コントロールユニットの処理手順を示すフローチャートである。
【図3】制駆動力コントロールユニットによる車線逸脱傾向の判定の処理内容を示すフローチャートである。
【図4】推定横変位Xsや逸脱判定用しきい値XLの説明に使用した図である。
【図5】走行車線曲率βと減速制御判定用しきい値Xβとの関係を示す特性図である。
【図6】車速VとゲインK2との関係を示す特性図である。
【図7】制駆動力コントロールユニットによる目標ヨーモーメントの補正の処理内容を示すフローチャートである。
【図8】車線逸脱防止制御の開始時からの操舵角の変化量Δθ1とゲインKstrとの関係を示す特性図である。
【図9】制駆動力コントロールユニットによる制御終了勾配設定の処理内容を示すフローチャートである。
【図10】車線逸脱防止制御の終了時からの操舵角の変化量Δθ2と制御終了勾配LDECとの関係を示す特性図である。
【図11】車速VとゲインKgvとの関係を示す特性図である。
【図12】本発明を適用した車線逸脱防止制御による車両挙動を示す図である。
【図13】従来例と本発明の適用例との比較の説明に使用した目標ヨーモーメントの経時変化を示す特性図である。
【符号の説明】
【0080】
6FL〜6RR ホイールシリンダ、7 制動流体圧制御部、8 制駆動力コントロールユニット、9 エンジン、12 駆動トルクコントロールユニット、13 撮像部、14L,14R レーダ装置、17 マスタシリンダ圧センサ、18 アクセル開度センサ、19 操舵角センサ、22FL〜22RR 車輪速度センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車線に対する自車両の逸脱傾向を判定する車線逸脱傾向判定手段と、
前記車線逸脱傾向判定手段が逸脱傾向が発生していると判定した場合、走行車線に対する自車両の逸脱を防止する車線逸脱防止制御を行う逸脱防止制御手段と、を備えた車線逸脱防止装置において、
さらに、前記走行車線に対して逸脱傾向が発生している方向への運転者の車線変更の意思を検出する車線変更意思検出手段と、
前記車線変更意思検出手段が前記運転者の車線変更の意思を検出した場合、その車線変更のリスクの度合いを判定するリスク判定手段と、
前記リスク判定手段がリスクが高いと判定した場合、前記車線逸脱防止制御を作動させて、前記リスク判定手段がリスクが低いと判定した場合、前記車線逸脱防止制御を抑制する制御補正手段と、
を備えることを特徴とする車線逸脱防止装置。
【請求項2】
前記走行車線に対する逸脱方向で、自車両の後側方の障害物に関する情報を検出する障害物検出手段を備え、
前記リスク判定手段は、前記障害物検出手段が検出した前記自車両の後側方の障害物に関する情報に基づいて、前記リスクの度合いを判定することを特徴とする請求項1に記載の車線逸脱防止装置。
【請求項3】
前記障害物検出手段は自車両後側方の障害物の存在を検出し、
前記リスク判定手段は、前記障害物検出手段が前記自車両の後側方の障害物の存在を検出している場合、前記リスクが高いと判定し、前記障害物検出手段が前記自車両の後側方の障害物の存在を検出していない場合、前記リスクが低いと判定することを特徴とする請求項2に記載の車線逸脱防止装置。
【請求項4】
前記障害物検出手段は自車両後側方の障害物と自車両との距離及び相対速度の何れかを検出し、
前記リスク判定手段は、前記障害物検出手段が検出した前記自車両の後側方の障害物と自車両との距離及び相対速度の少なくとも何れかを基に、前記リスクの度合いを判定することを特徴とする請求項2又は3に記載の車線逸脱防止装置。
【請求項5】
前記制御補正手段は、前記リスク判定手段が前記リスクが高いと判定した場合、前記車線逸脱防止制御の制御量が、走行車線に対して逸脱傾向が発生している方向へのステアリングホイールの切り増し操舵量が多くなるほど多くなる様に補正することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の車線逸脱防止装置。
【請求項6】
前記制御補正手段は、前記車線逸脱防止制御の制御量を前記切り増し操舵量が多くなるほど多くなる様に補正した後に車線逸脱防止制御を終了する時には、該補正を行わずに車線逸脱防止制御を終了する時よりも該制御量の減少割合が大きくなるように補正をすることを特徴とする請求項5に記載の車線逸脱防止装置。
【請求項7】
前記制御補正手段は、自車線方向へのステアリングホイールの切り戻し操舵量が多くなるほど、前記制御量の減少割合を大きくすることを特徴とする請求項6に記載の車線逸脱防止装置。
【請求項8】
前記車線変更意思検出手段は、ステアリングホイールの操舵操作を基に、 前記運転者の車線変更の意思を検出することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の車線逸脱防止装置。
【請求項9】
走行車線に対して自車両が逸脱傾向が発生していると判定し、かつその逸脱傾向が発生している方向への運転者の車線変更の意思を検出したとき、その車線変更のリスクが高ければ、前記走行車線に対する自車両の逸脱を防止する車線逸脱防止制御を作動させ、その車線変更のリスクが低ければ、前記車線逸脱防止制御を抑制することを特徴とする車線逸脱防止方法。
【請求項1】
走行車線に対する自車両の逸脱傾向を判定する車線逸脱傾向判定手段と、
前記車線逸脱傾向判定手段が逸脱傾向が発生していると判定した場合、走行車線に対する自車両の逸脱を防止する車線逸脱防止制御を行う逸脱防止制御手段と、を備えた車線逸脱防止装置において、
さらに、前記走行車線に対して逸脱傾向が発生している方向への運転者の車線変更の意思を検出する車線変更意思検出手段と、
前記車線変更意思検出手段が前記運転者の車線変更の意思を検出した場合、その車線変更のリスクの度合いを判定するリスク判定手段と、
前記リスク判定手段がリスクが高いと判定した場合、前記車線逸脱防止制御を作動させて、前記リスク判定手段がリスクが低いと判定した場合、前記車線逸脱防止制御を抑制する制御補正手段と、
を備えることを特徴とする車線逸脱防止装置。
【請求項2】
前記走行車線に対する逸脱方向で、自車両の後側方の障害物に関する情報を検出する障害物検出手段を備え、
前記リスク判定手段は、前記障害物検出手段が検出した前記自車両の後側方の障害物に関する情報に基づいて、前記リスクの度合いを判定することを特徴とする請求項1に記載の車線逸脱防止装置。
【請求項3】
前記障害物検出手段は自車両後側方の障害物の存在を検出し、
前記リスク判定手段は、前記障害物検出手段が前記自車両の後側方の障害物の存在を検出している場合、前記リスクが高いと判定し、前記障害物検出手段が前記自車両の後側方の障害物の存在を検出していない場合、前記リスクが低いと判定することを特徴とする請求項2に記載の車線逸脱防止装置。
【請求項4】
前記障害物検出手段は自車両後側方の障害物と自車両との距離及び相対速度の何れかを検出し、
前記リスク判定手段は、前記障害物検出手段が検出した前記自車両の後側方の障害物と自車両との距離及び相対速度の少なくとも何れかを基に、前記リスクの度合いを判定することを特徴とする請求項2又は3に記載の車線逸脱防止装置。
【請求項5】
前記制御補正手段は、前記リスク判定手段が前記リスクが高いと判定した場合、前記車線逸脱防止制御の制御量が、走行車線に対して逸脱傾向が発生している方向へのステアリングホイールの切り増し操舵量が多くなるほど多くなる様に補正することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の車線逸脱防止装置。
【請求項6】
前記制御補正手段は、前記車線逸脱防止制御の制御量を前記切り増し操舵量が多くなるほど多くなる様に補正した後に車線逸脱防止制御を終了する時には、該補正を行わずに車線逸脱防止制御を終了する時よりも該制御量の減少割合が大きくなるように補正をすることを特徴とする請求項5に記載の車線逸脱防止装置。
【請求項7】
前記制御補正手段は、自車線方向へのステアリングホイールの切り戻し操舵量が多くなるほど、前記制御量の減少割合を大きくすることを特徴とする請求項6に記載の車線逸脱防止装置。
【請求項8】
前記車線変更意思検出手段は、ステアリングホイールの操舵操作を基に、 前記運転者の車線変更の意思を検出することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の車線逸脱防止装置。
【請求項9】
走行車線に対して自車両が逸脱傾向が発生していると判定し、かつその逸脱傾向が発生している方向への運転者の車線変更の意思を検出したとき、その車線変更のリスクが高ければ、前記走行車線に対する自車両の逸脱を防止する車線逸脱防止制御を作動させ、その車線変更のリスクが低ければ、前記車線逸脱防止制御を抑制することを特徴とする車線逸脱防止方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−30386(P2010−30386A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193459(P2008−193459)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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