説明

車色判定装置及び車両検索システム

【課題】高度な画像処理によらず簡便な方法でありながら、データ伝送効率と車色判定精度の向上化が可能であり、更に、実環境で使用する場合に問題となる複数色に塗装している車両の車色判定と、照度変化があった場合の車色判定を高精度に行うことが可能な車色判定装置及び車両検索システムを実現する。
【解決手段】車色認識部112は、画像データ受信部113からカラー画像4を受信し、カラー画像4のファイル名称から、ナンバープレート座標242を取得する。ナンバープレート座標242を基準位置として、この基準位置から所定距離の車色判定エリア241を設定し、車色判定エリア241の色情報から車色を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理技術を用いて車両塗装色を判定する車色判定装置及びそれを用いた車両検索システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両検索システムでは、広域ネットワーク網を利用して、複数地点の路上装置から送信されるナンバープレート情報とそのナンバープレート情報に対応する車両が撮影されているカラー画像を中央装置に集約し、ナンバープレート情報、カラー画像、車両の走行地点及び走行時間等を管理していた。
【0003】
このような従来の車両検索システムでは、車両検索時にナンバープレート情報を検索項目として車両を検索し、カラー画像は特定された車両に間違いないかを確認するための車両確認用データとして用いられていた。
【0004】
また、車両検索システムは、犯罪車両等の目撃情報による車両検索に有効であるが、犯罪車両等の目撃は突発的なものであるため、通報者はナンバープレートを完全な状態では記憶できず、ナンバープレート情報を監視者に通報できない場合も多い。一般的に、人間は突発的な事象に対しては、ナンバープレート情報のような文字情報よりも、車両塗装色のようなイメージとして印象に残るものが記憶されやすい。
【0005】
このため、車両検索システムにおいては、ナンバープレート情報が完全でなくても車両を確実に検索できるようにするため、車両のカラー画像あるいは動画から車両塗装色を自動的に判定し、車色を検索項目とする需要がある。
【0006】
また、メンテナンスの面から、車色判定装置は中央装置に設置することが望ましく、複数の地点から送信されるカラー画像に対して、車色の判定が行える車色判定装置が求められていた。
【0007】
特許文献1には、車両検索システムにおいて、ナンバープレートを完全には認識できないとき、車両を特定することが困難であるという問題点を解決するために、カメラ1台で車両塗装色とナンバープレート情報とを認識し、車色の判定を行う車色判別装置が記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開2000−222673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、朝夕などで照度が大きく変化する環境下では車色の写り方が変わり、車色の正確な判定が行えないという問題がある。
【0010】
また、車体の車色判別エリアを設定するときに、高度な画像処理技術を用いるため、車色判定結果は画像の精密さに依存する。このため、中央装置にて一括車色判定を行うことを想定すると、データ伝送の面からデータの容量は小さいほうがよいにもかかわらず、伝送するデータは容量の大きいものを送らないと、正確な車色判定結果を得ることができず、データ伝送効率向上と車色判定精度向上とを両立し得ないものであった。
【0011】
また、従来技術における車色判定の問題としては、車両の塗装色の多様性、及び撮影条件の多様性がある。
【0012】
車両の塗装色の多様性は、例えば車両を複数色に塗装している車両の塗装色や、偏光性塗料の開発により、光の当たり方で異なる色に見えるような塗装色の判定が問題となる。
【0013】
撮影条件の多様性は、例えば、車両を撮影するカメラが設置箇所ごとに画角が異なること、また、朝夕などで照度変化が大きい場合、反射光の有無、気象条件等で車両の写り方が変化することが問題となる。
【0014】
本発明の目的は、高度な画像処理によらず簡便な方法でありながら、データ伝送効率と車色判定精度の向上化が可能であり、更に、実環境で使用する場合に問題となる複数色に塗装している車両の車色判定と、照度変化があった場合の車色判定を高精度に行うことが可能な車色判定装置及び車両検索システムを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)上記目的を達成するために、本発明の車色判定装置は、車両を撮影する撮影手段と、撮影手段により撮影された車両のナンバープレート位置を認識するナンバープレート認識部と、上記ナンバープレート認識部により認識された上記車両のナンバープレート位置を基準とし、予め決められた相対位置に車色判定エリアを設定し、この車色判定エリア内の色情報を色相成分・彩度成分・明度成分に分解し、車両の塗装色を判定する車色判定手段と、を備えるものとする。
【0016】
このように、ナンバープレート位置を基準とする予め決められた相対位置に車色判定エリアを設定し、この車色判定エリア内の画像の色情報を色相成分・彩度成分・明度成分に分解し車両の塗装色を判定することにより、高度な画像処理技術を必要とせず、車色の判定を実際に行う場合に問題となる環境変化および塗装色の変化に対応可能な精度のよい車色判定装置を供給することができる。
【0017】
(2)上記(1)において、前記車色判定手段は、前記車色判定エリアの色相成分により、車色を有彩色−青系色と無彩色+青系色に判別する判別手段と、前記判別手段において、車色が有彩色−青系色と判別されたときに、色相成分により詳細色判定を行う有彩色判定手段と、前記判別手段において、車色が無彩色+青系色と判別されたときに、彩度成分と明度成分により詳細色判定を行う無彩色判定手段とを備えるものとする。
【0018】
これにより、車色を判別する際に最も判別しにくい、青系色と無彩色を一つのグループとして、判別しきい値を設定できるため、精度のよい車色の判定が行える。
【0019】
(3)上記(1)において、前記車色判定手段は、前記カラー画像の車両の下部を路面エリアとして設定する路面エリア設定手段と、前記路面エリアの濃度値から白色、灰色、黒色を判別するしきい値を設定するオートチューニング手段とを備えるものとする。
【0020】
これにより、周囲の照度に合わせて無彩色の判定を行うことができるため、周囲の照度に影響を受けない車色の判定が行える。
【0021】
(4)上記(1)において、前記車色判定手段は、前記車色判定エリアの色相成分を、色相成分の分解能と任意の数との積で割り、その値を前記車色判定エリアの色相ヒストグラムのオフセット値として設定するオフセット設定手段と、前記色相ヒストグラムの前記オフセット値以上の特徴色を前記車両の塗装色として判定する複数色判定手段とを備えるものとする。
【0022】
これにより、車両1台に対して複数色を塗装した場合に簡単な方法で判別することができる。
【0023】
(5)上記(1)において、前記車色判定手段は、車色を判定するしきい値にファジー集合のメンバーシップ関数を用いて、前記車色判定エリアの判定したい車色らしさの合計値から車色を判定するファジー集合判定手段を備えるものとする。
【0024】
これにより、車色の曖昧さを加味した車色の判定を実現でき、周囲の照度が変化しても大きく間違った値を出力せず、照度に影響を受けない車色の判定が行える。
【0025】
(6)上記目的を達成するために、車両撮影装置から車両のナンバー情報、車両の画像情報、車両の検知位置情報及び検知の時刻情報が伝送網を介して、伝送され、伝送された車両の画像情報から車両の車色を判別し、特定車両を検索する中央装置を有する車両検索システムにおいて、前記中央装置は伝送された車両の画像情報に基づいて、車両のナンバープレート位置を検出し、基準位置とし、この基準位置の予め決められた相対位置に車色判定エリアを設定し、この車色判定エリア内の色情報を色相成分・彩度成分・明度成分に分解し、車両の塗装色を判定するものとする。
【0026】
これにより、高度な画像処理技術を必要とせず、車色の判定を実際に行う場合に問題となる環境変化および塗装色の変化に対応可能な精度のよい車色判定システムを供給することができる。
【0027】
(7)上記(6)において、前記中央装置は、前記車色判定エリアの色相成分により、車色を有彩色−青系色と無彩色+青系色に判別する判別手段と、前記判別手段において、車色が有彩色−青系色と判別されたときに、色相成分により詳細色判定を行う有彩色判定手段と、前記判別手段において、車色が無彩色+青系色と判別されたときに、彩度成分と明度成分により詳細色判定を行う無彩色判定手段とを備えるものとする。
【0028】
これにより、車色を判別する際に最も判別しにくい、青系色と無彩色を一つのグループとして、判別しきい値を設定できるため、精度のよい車色の判定が行える。
【0029】
(8)上記(6)において、前記中央装置は、前記カラー画像の車両の下部を路面エリアとして設定する路面エリア設定手段と、前記路面エリアの濃度値から白色、灰色、黒色を判別するしきい値を設定するオートチューニング手段とを備えるものとする。
【0030】
これにより、周囲の照度に合わせて無彩色の判定を行うことができるため、周囲の照度に影響を受けない車色の判定が行える。
【0031】
(9)上記(6)において、前記中央装置は、前記車色判定エリアの色相成分を、色相成分の分解能と任意の数との積で割り、その値を前記車色判定エリアの色相ヒストグラムのオフセット値として設定するオフセット設定手段と、前記色相ヒストグラムの前記オフセット値以上の特徴色を前記車両の塗装色として判定する複数色判定手段とを備えるものとする。
【0032】
これにより、車両1台に対して複数色を塗装した場合に簡単な方法で判別することができる。
【0033】
(10)上記(6)において、前記中央装置は、車色を判定するしきい値にファジー集合のメンバーシップ関数を用いて、前記車色判定エリアの判定したい車色らしさの合計値から車色を判定するファジー集合判定手段を備えるものとする。
【0034】
これにより、車色の曖昧さを加味した車色の判定を実現でき、周囲の照度が変化しても大きく間違った値を出力せず、照度に影響を受けない車色の判定が行える。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、高度な画像処理によらず簡便な方法でありながら、データ伝送効率と車色判定精度の向上化が可能であり、更に、実環境で使用する場合に問題となる複数色に塗装している車両の車色判定と、照度変化があった場合の車色判定を高精度に行うことが可能な車色判定装置及び車両検索システムを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
本発明の第1の実施の形態を図1〜図5により説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態が適用される車両検索システムの概略構成図である。
図1において、車両検索システムは、中央装置1と複数の路上装置2−1〜2−Nを備えている。中央装置1と複数の路上装置2−1〜2−Nとの間のデータ送受信は、広域ネットワーク網9を使用して行われる。
【0037】
図2は、本発明が適用される車両検索システムの路上装置の設置図である。
図2において、路上装置2−1〜2−Nのそれぞれは撮像部21と画像処理部22とを備えている。
【0038】
撮像部21は道路25を走行する車両24を撮影し、撮影した画像を画像処理部22に送信する。画像処理部22は撮像部21から送信された映像を処理し、後述するナンバープレート読取結果とカラー画像4を中央装置1へ送信する。
【0039】
路上装置2−1〜2−Nは道路25の側部に設けられた電柱23に設置される。路上装置2−1〜2−Nの撮像部21は電柱23の高い部分に設置される。このため、撮像部21の視野内に人物が侵入する等の車両監視に対する外乱が発生する可能性を軽減することができる。また、本実施の形態においては、路上装置2−1〜2−Nは電柱23に設置されるものとしているが、電柱23と同程度の高さの構造物に設置されるものとしてもよい。
【0040】
図3は、本発明が適用される車両検索システムの撮像部21のカラーカメラから得られるカラー画像4の一例を示す図である。
【0041】
図3において、カラー画像4には、後述するナンバープレート読取部221により、ナンバープレート座標242が設定され、同様に後述する車色認識部112により車色判定エリア241が設定される。
【0042】
図4は本発明の第1の実施形態が適用される車両検索システムの路上装置2の構成を示すブロック図である。
【0043】
図4において、路上装置2の撮像部21はカラーカメラ211とナンバープレート読取用カメラ212を備えている。カラーカメラ211とナンバープレート読取用カメラ212は、視野中心が同じ位置になるように設置される。
【0044】
画像処理部22はナンバープレート読取部221と、カラー画像取得部222と、車両情報伝送部223とを備えている。
【0045】
ナンバープレート読取部221は、道路25を走行する車両24をナンバープレート読取用カメラ212を通して監視し、車両24がナンバープレート読取用カメラ212の視野内に進入したことを検知して、ナンバープレートを読み取る。そして、ナンバープレート読取部221は、後述するナンバープレート座標24と車両検知時刻をカラー画像取得部222に送信し、同時にナンバープレート読取結果及び車両検知時刻を車両情報伝送部223へ送信する。
【0046】
カラー画像取得部222は、カラーカメラ211から送信された画像を、AD変換し、カラー画像4として画像処理部22の内部に設置された内部メモリに記憶する。内部メモリの容量はカラー画像4を100枚程度記憶できる容量が設置される。
【0047】
また、カラー画像取得部222は、ナンバープレート読取部221より車両検知時刻を受信すると、その時刻に最も近いカラー画像4を抽出し、画像データを圧縮し、車両情報伝送部223へ送信する。このとき送信されるカラー画像4のファイル名称には、ナンバープレート座標242と、車両検知時刻および路上の地点名が付加され、車両検索システムにおいて唯一の値に設定される。
【0048】
車両情報伝送部223は、ナンバープレート読取部221から、車両検知時刻、ナンバープレート読取結果を受信し、カラー画像取得部222から圧縮されたカラー画像4を受信し、受信したデータを広域ネットワーク網9を利用して中央装置1へ送信する。
【0049】
図5は、本発明の第1の実施形態の車両検索システムの中央装置の構成を示すブロック図である。
図5において中央装置1は、車色判定装置11と車両検索部12と外部記憶部13とデータ受信部14とを備えている。
データ受信部14は、路上装置2から送信されたナンバープレート読取結果と、圧縮されたカラー画像4とを受信し、ナンバープレート読取結果26を外部記憶装置13に記憶させ、圧縮されたカラー画像4を車色判定装置11へ送信する。
【0050】
車色判定装置11は、画像データ受信部113と車色認識部112と出力部111とを備えている。
画像データ受信部113は圧縮されたカラー画像4を受信し、この受信したカラー画像4を外部記憶部13へ記憶させ、同時に圧縮されたカラー画像4を解凍し、車色認識部112へ送信する。
【0051】
車色認識部112は、解凍されたカラー画像4を受信し、カラー画像4のファイル名称から、ナンバープレート座標242を取得し、そのナンバープレート座標242を基準位置として、その基準位置から一定の距離を有する車色判定エリア241を設定する。また、車色認識部112はこの車色判定エリア241の色情報から車両の塗装色を判定し、車色判定結果を出力部111に送信する。
【0052】
出力部111は、車色判定結果を受信し、この車色判定結果を外部記憶装置13に記憶する。
【0053】
車両検索装置12は、車両検索部122と、結果表示部121とを備えている。
車両検索部122は外部記憶部13に接続し、車両24のナンバープレート情報や車色情報等から、車両24を特定し、車両24のカラー画像4を取得する。車両検索部122は特定した車両のカラー画像4を、結果表示部121へ送信する。
【0054】
結果表示部121は車両検索部122から送信されたカラー画像4をディスプレイに表示する。
【0055】
以上のように構成された本発明の第1の実施形態によれば、ナンバープレート読取タイミングに連動してカラー画像4を取得し、カラー画像4に対して、ナンバープレート座標を基準位置として、その基準位置から一定の距離を有する車色判定エリア241に対して、車体の色判別を行う。つまり、特別な前処理を行うことなく簡便に車色判定エリア241を設定することにより、高度な画像処理技術によらず車色判定を行うことができる。これにより、車色判定はカラー画像の鮮明さに依存しなくなり、データ受信の負荷が軽減され、また画像処理の負荷が軽減されるため、中央装置1にカラー画像4が集中するようなシステムに適用することができる。
【0056】
また、中央装置1のデータ受信部14がカラー画像4の送信先を外部記憶部13に変更することにより、車色検索を行わない従来と同じ検索システムを実現できるため、従来の車両検索システムに車色判定装置11を容易に組み込むことができる。
【0057】
尚、本発明の第1の実施形態においては、ナンバープレート読取タイミングに連動してカラー画像4を取得するが、この連動するタイミングをずらし、カラー画像4における車両の撮影位置の調節を行い、車色判定の精度を向上させるものとしてもよい。また、ナンバープレート読取タイミングに連動して、カラー画像4を2枚取得し、あるいは短い時間の動画を撮影し、更に車色判定の精度を向上させることも可能である。
【0058】
次に本発明の第2の実施の形態を図6、図7により説明する。
図6は、本発明の第2の実施形態による車色判定装置の処理を示すフローチャートである。
本発明の第2の実施形態は、第1の実施形態における図1、図5に示した構成と同様な構成を備えている。
【0059】
第2の実施形態において、車色認識部112は、画像データ受信部113で解凍されたカラー画像4を受信し、カラー画像4のファイル名称から、ナンバープレート座標242を取得する。続いて、図6に示す車色判定手段の処理が行われる。
【0060】
図6において、まず取得したナンバープレート座標242に基づいて、車色判定エリア241を設定する(S601)。次にカラー画像4に設定した車色判定エリア241部分のBMPデータをHSV変換する(S602)。このとき、HSV変換は公知の式を用いる。ただし、R=B=Gのときは、H成分の値を240(色相成分の範囲が0〜359のとき)と設定する。次に図7に示す色相ヒストグラム3を作成する(S603)。
【0061】
図7において、色相ヒストグラム3は、区間31(色相成分0〜210)と区間32(色相成分210〜280)と区間33(色相成分280〜359)に分割される。区間32の領域は、色相成分の青系色に属する。
【0062】
図6のステップS604において、区間31+区間33の面積と、区間32の面積が比較される。区間32の面積が大きいときには、車色は無彩色+青系色であると判定され、ステップS605に進み、区間31+区間33の面積が大きいときには、車色は有彩色−青系色であると判定され、ステップS606に進む。車色が無彩色+青系色であると判定されたときには、彩度と明度成分による詳細色判定が行われ(S605)、車色が有彩色であると判定されたときには、色相成分による詳細色判定が行われる(S606)。
【0063】
以上のように構成した本発明の第2の実施形態によれば、最も判別しにくい、紺色(青系色)と無彩色(特に黒色、灰色)を一つのグループとして判別しきい値を設定できるため、精度の高い車色判定を行うことができる。
【0064】
また、車色が有彩色であると判定され、色相成分による詳細色判定が行われる場合には、すでにステップS603において色相ヒストグラムが算出済みであるため、これを流用することにより、車色判定を高速化することができる。
【0065】
次に、本発明の第3の実施形態を図8〜図10により説明する。
図8は、本発明の第3の実施形態による車色判定装置の車色判定手段の処理を示すフローチャートである。
【0066】
発明の第3の実施形態は、第1の実施形態における図1、図5に示した構成と同様な構成を備えている。
車色認識部112は、画像データ受信部113で解凍されたカラー画像4を受信し、カラー画像4のファイル名称から、ナンバープレート座標242を取得する。続いて、以下に示す処理が行われる。
【0067】
図8において、まず取得したナンバープレート座標242に基づいて、車色判定エリア241を設定する(S801)。次にカラー画像4に設定した車色判定エリア241部分のBMPデータをHSV変換する(S802)。このとき、HSV変換は公知の式を用いる。
【0068】
次に彩度ヒストグラム5を作成し、重心位置を算出する(S803)。続いてこの重心位置と予め定められた規定値とを比較する(S804)。この重心位置が予め定められた規定値より小さいときには、車色は無彩色であると判定され、ステップS805以下に進み、無彩色判定が行われる。
【0069】
ステップS804において、重心位置が予め定められた規定値より大きいときには、車色は有彩色であると判定されステップS808に進み、有彩色判定が行われる。有彩色判定は、色相成分により詳細色(有彩色)判定が行われる(S808)。
【0070】
図9は本発明の第3の実施形態による車色判定装置で使用されるカラー画像4を示す図である。
【0071】
図8のステップS805において、図9に示すように、カラー画像4の下部に一定領域が路面領域243として設定され、この路面領域243の明度ヒストグラムが作成され、その重心位置が路面明度値52として設定される。
【0072】
図10は本発明の第3の実施形態による車色判定装置の無彩色しきい値オートチューニング手段の処理例を示す図である。
【0073】
図8のステップS806において、図10に示すグラフが作成される。
【0074】
図10において、横軸は彩度、縦軸は明度を示し、左側のグラフはオートチューニング前に設定された無彩色(白、灰、黒)のしきい値を示し、路面明度値51を基準に設定されている。右側のグラフはオートチューニング後の設定された無彩色(白、灰、黒)しきい値を示し、カラー画像4より算出された路面明度値52を基準に設定される。
【0075】
このオートチューニングは路面明度値51とカラー画像4より算出された路面明度値52の差分53を例えば、数式(1−1),(1−2)に適用し、白色−灰色しきい値54および灰色−黒色しきい値55を決定することにより行われる。
【0076】
W2=W1+(255−W1)×ΔV/(W1−R)・・・(1−1)
B2=B1+(R−B1)×ΔV/B1 ・・・(1−2)
ただし、上記(1−1)、(1−2)において、Rは路面明度基準値、ΔVは明度変化差分、W1は白判定基準しきい値、W2は白判定補正しきい値、B1は黒判定基準しきい値、B2は黒判定補正しきい値である。
【0077】
続いて、ステップS807において、オートチューニングにより補正された無彩色のしきい値を用いて、彩度・明度成分から無彩色判定が行われる。
【0078】
以上のように構成された本発明の第3の実施形態によれば、周囲の照度に合わせて無彩色判定を行うことが可能となり、周囲の照度に影響されない車色判定を行うことができる。
【0079】
また、本発明の第3の実施形態による無彩色のしきい値オートチューニングは、第2の実施形態による車色判定手段に適用することができ、これにより周囲の照度に影響されずに、通常判別しにくいとされる、紺色(青系色)と無彩色(特に黒色、灰色)の更に精度の高い車色判定を行うことができる。
【0080】
次に、本発明の第4の実施形態を図11、図12により説明する。
【0081】
図11は、本発明の第4の実施形態による車色判定装置の車色判定手段の処理を示すフローチャートである。
【0082】
本発明の第4の実施形態は、第1の実施形態における図1、図5に示した構成と同様な構成を備えている。
【0083】
車色認識部112は、画像データ受信部113で解凍されたカラー画像4を受信し、カラー画像4のファイル名称から、ナンバープレート座標242を取得する。続いて、以下に示す処理が行われる。
【0084】
図11において、まず、取得したナンバープレート座標242に基づいて、車色判定エリア241を設定する(S111)。次にカラー画像4に設定した車色判定エリア241部分のBMPデータをHSV変換する(S112)。このとき、HSV変換は公知の式を用いる。ただし、R=B=Gのときは、H成分の値を240(色相成分の範囲が0〜359のとき)と設定する。次に色相ヒストグラム3を作成する(S113)。図12は、ステップS113における色相ヒストグラムの作成例を示す図である。
【0085】
次に、ステップS114において、算出した色相ヒストグラムを数式(2−1)に適用し、車色判定エリアの面積を任意定数Nと色相成分の分解能(ここでは360)の積で割り、これを色相ヒストグラムのオフセット値36とする。尚、この任意定数Nの数を増やすことにより、オフセット値36の値が下がり、より多くの塗装色の判定を行うことができる。
【0086】
C=車色判定エリアの面積/(N×360)・・・(2−1)
C:オフセット値 N:任意定数
続いて、この色相ヒストグラムにおいて、オフセット値36以上の度数を有する特徴色、すなわち図12に示す、判定色34、判定色35を複数色の車色として判定する(S115)。
【0087】
以上のように構成した本発明の第4の実施形態によれば、簡単な演算により、複数色の車両の車色判定が行える。また、本発明の第4の実施形態は単一色の車両の判定も実現可能であるため、車色判定の正解率に悪影響を及ぼすことなく、複数色の車色判定を行うことができる。
【0088】
次に本発明の第5の実施形態を図13〜図16により説明する。
図13は、本発明の第5の実施形態による車色判定装置の車色判定手段の処理を示すフローチャートである。
【0089】
本発明の第5の実施形態は、第1の実施形態における図1、図5に示した構成と同様な構成を備えている。
【0090】
車色認識部112は、画像データ受信部113で解凍されたカラー画像4を受信し、カラー画像4のファイル名称から、ナンバープレート座標242を取得する。続いて、以下に示す処理が行われる。
【0091】
図13において、まず取得したナンバープレート座標242に基づいて、車色判定エリア241を設定する(S131)。次に、カラー画像4に設定した車色判定エリア241部分のBMPデータをHSV変換する(S132)。このとき、HSV変換は公知の式を用いる。
【0092】
次に、各色の確信度を算出する。このとき、車色判定エリアの色相・彩度・明度成分に対する確信度を算出する色の色らしさをファジー集合のメンバーシップ関数を用いて作成した色相成分、彩度成分、明度成分の重み関数から、それぞれ色相成分の確信度、彩度成分の確信度、明度成分の確信度を算出する。色の確信度は数式(3−1)に示すように、色相成分の確信度と彩度成分の確信度と明度成分の確信度の積から算出する(S133)。
【0093】
K=FH(h)×FS(s)×FV(v)・・・(3−1)
K :赤系の確信度
FH:色相成分のメンバーシップ関数
FS:彩度成分のメンバーシップ関数
FV:明度成分のメンバーシップ関数
図14は、色相成分のメンバーシップ関数61(赤系)を示した図であり、図15は、彩度成分のメンバーシップ関数71(赤系)を示した図であり、図16は、明度成分のメンバーシップ関数81(赤系)を示した図である。
この図14,図15,図16に示す、メンバーシップ関数(重み関数)により車色の赤らしさが表現される。同様に判定したい車色数全てに対して、確信度が算出され、最終的に最も確信度の高い色がカラー画像4に撮影される車両24の途装色と判定される(S134)。
【0094】
以上のように構成した本発明の第5の実施形態によれば、ファジー集合のメンバーシップ関数を用いることにより、車両塗装色の類似色にまたがり重み付けがされるため、周囲の照度が変化したことにより、車色の写り方が変化しても、大きく間違った値が出力されることがなくなり、精度の高い車色の判定を行うことができる。
【0095】
また、茶色やオリーブ等の判別が困難な珍色に関しても容易に人間の主観に基づいてしきい値の設定を行うことができ、車色判定を行うことができる。
【0096】
また、更に車色の確信度が拮抗している場合には、拮抗している複数の車色により車両が途装されているものとすることにより、複数色の車色判定を行うことができる。
【0097】
図17は本発明の車色判定装置の車色判定精度を測定した実験データを示す図である。
【0098】
図17において、上段は従来の車色判定装置により実験を行った場合の車両塗装色の正解率であり、下段は本発明の車色判定装置により実験を行った場合の車両塗装色の正解率である。
【0099】
また、左の項目は車両塗装色の候補を1色のみ算出した場合の正解率であり、右の項目は車両塗装色の候補を2色算出した場合の正解率である。
【0100】
尚実験で測定した台数はそれぞれ200台である。
【0101】
第1候補のみ算出した場合には、正解率は対策前の74.7%から75.3%に向上し、また第1+第2候補の2色を算出した場合には、正解率は83.0%から95.4%に向上している。
【0102】
以上のように、どちらの場合にも車色判定精度に効果が認められ、本発明は車両塗装色の判定に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の車色判定装置が適用される車両検索システムの概略構成を示す図である。
【図2】本発明の車色判定装置が適用される車両検索システムの路上装置の設置図である。
【図3】本発明の車色判定装置が適用される車両検索システムのカラーカメラから得られるカラー画像の一例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態による車色判定装置を備える車両検索システムの路上装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第1の実施形態による車色判定装置を備える車両検索システムの概略構成図である。
【図6】本発明の第2の実施形態による車色判定処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2の実施形態による車色判定装置に適用する色相ヒストグラムを示した図である。
【図8】本発明の第3の実施形態による車色判定処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第3の実施形態による車色判定装置で使用されるカラー画像の一例を示す図である。
【図10】本発明の第3の実施形態による車色判定装置の無彩色しきい値オートチューニング手段の処理例を示す図である。
【図11】本発明の第4の実施形態による車色判定処理を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第4の実施形態による車色判定装置の複数色判定手段の処理例を示す図である。
【図13】本発明の第5の実施形態による車色判定処理を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第5の実施の形態による車色判定装置の色相成分のメンバーシップ関数(赤系)を示した図である。
【図15】本発明の第5の実施の形態による車色判定装置の彩度成分のメンバーシップ関数(赤系)を示した図である。
【図16】本発明の第5の実施の形態による車色判定装置の明度成分のメンバーシップ関数(赤系)を示した図である。
【図17】本発明の車色判定装置の車色判定精度を測定した実験データの表を示す図である。
【符号の説明】
【0104】
1 中央装置
2 路上装置
3 色相ヒストグラム
4 カラー画像
5 彩度-明度線図
6 色相成分メンバーシップ関数(赤系)
7 彩度成分メンバーシップ関数(赤系)
8 明度成分メンバーシップ関数(赤系)
9 広域ネットワーク網
11 車色判定装置
12 車両検索部
13 外部記憶部
14 データ受信部
21 撮像部
22 画像処理部
23 電柱
24 車両
25 道路
31 区間(色相成分0〜210)
32 区間(色相成分210〜270)
33 区間(色相成分270〜359)
34 判定色
35 判定色
36 オフセット値
51 路面明度基準値
52 路面明度値
53 差分
54 白色灰色判定しきい値
55 灰色黒色判定しきい値
61 メンバーシップ関数
71 メンバーシップ関数
81 メンバーシップ関数
101 車色判定手段
111 出力部
112 車色認識部
113 画像データ受信部
121 結果表示部
122 車両検索部
211 カラーカメラ
212 ナンバー読取用カメラ
221 ナンバープレート読取部
222 カラー画像取得部
223 車両情報伝送部
241 車色判定エリア
242 ナンバープレート座標
243 路面エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を撮影する撮影手段と、
撮影手段により撮影された車両のナンバープレート位置を認識するナンバープレート認識部と、
上記ナンバープレート認識部により認識された上記車両のナンバープレート位置を基準とし、予め決められた相対位置に車色判定エリアを設定し、この車色判定エリア内の色情報を色相成分・彩度成分・明度成分に分解し、車両の塗装色を判定する車色判定手段と、
を備えることを特徴とする車色判定装置。
【請求項2】
請求項1記載の車色判定装置において、
前記車色判定手段は、
前記車色判定エリアの色相成分により、車色を有彩色−青系色と無彩色+青系色に判別する判別手段と、
前記判別手段において、車色が有彩色−青系色と判別されたときに、色相成分により詳細色判定を行う有彩色判定手段と、
前記判別手段において、車色が無彩色+青系色と判別されたときに、彩度成分と明度成分により詳細色判定を行う無彩色判定手段とを備えることを特徴とする車色判定装置。
【請求項3】
請求項1記載の車色判定装置において、
前記車色判定手段は、
前記カラー画像の車両の下部を路面エリアとして設定する路面エリア設定手段と、
前記路面エリアの濃度値から白色、灰色、黒色を判別するしきい値を設定するオートチューニング手段とを備えることを特徴とする車色判定装置。
【請求項4】
請求項1記載の車色判定装置において、
前記車色判定手段は、
前記車色判定エリアの色相成分を、色相成分の分解能と任意の数との積で割り、その値を前記車色判定エリアの色相ヒストグラムのオフセット値として設定するオフセット設定手段と、
前記色相ヒストグラムの前記オフセット値以上の特徴色を前記車両の塗装色として判定する複数色判定手段とを備えることを特徴とする車色判定装置。
【請求項5】
請求項1記載の車色判定装置において、
前記車色判定手段は、
車色を判定するしきい値にファジー集合のメンバーシップ関数を用いて、前記車色判定エリアの判定したい車色らしさの合計値から車色を判定するファジー集合判定手段を備えることを特徴とする車色判定装置。
【請求項6】
車両撮影装置から車両のナンバー情報、車両の画像情報、車両の検知位置情報及び検知の時刻情報が伝送網を介して、伝送され、伝送された車両の画像情報から車両の車色を判別し、特定車両を検索する中央装置を有する車両検索システムにおいて、
前記中央装置は伝送された車両の画像情報に基づいて、車両のナンバープレート位置を検出し、基準位置とし、この基準位置の予め決められた相対位置に車色判定エリアを設定し、この車色判定エリア内の色情報を色相成分・彩度成分・明度成分に分解し、車両の塗装色を判定することを特徴とする車両検索システム。
【請求項7】
請求項6記載の車両検索システムにおいて、
前記中央装置は、
前記車色判定エリアの色相成分により、車色を有彩色−青系色と無彩色+青系色に判別する判別手段と、
前記判別手段において、車色が有彩色−青系色と判別されたときに、色相成分により詳細色判定を行う有彩色判定手段と、
前記判別手段において、車色が無彩色+青系色と判別されたときに、彩度成分と明度成分により詳細色判定を行う無彩色判定手段とを備えることを特徴とする車両検索システム。
【請求項8】
請求項6記載の車両検索システムにおいて、
前記中央装置は、
前記カラー画像の車両の下部を路面エリアとして設定する路面エリア設定手段と、
前記路面エリアの濃度値から白色、灰色、黒色を判別するしきい値を設定するオートチューニング手段とを備えることを特徴とする車両検索システム。
【請求項9】
請求項6記載の車両検索システムにおいて、
前記中央装置は、
前記車色判定エリアの色相成分を、色相成分の分解能と任意の数との積で割り、その値を前記車色判定エリアの色相ヒストグラムのオフセット値として設定するオフセット設定手段と、
前記色相ヒストグラムの前記オフセット値以上の特徴色を前記車両の塗装色として判定する複数色判定手段とを備えることを特徴とする車両検索システム。
【請求項10】
請求項6記載の車両検索システムにおいて、
前記中央装置は、
車色を判定するしきい値にファジー集合のメンバーシップ関数を用いて、前記車色判定エリアの判定したい車色らしさの合計値から車色を判定するファジー集合判定手段を備えることを特徴とする車両検索システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−201971(P2006−201971A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−11935(P2005−11935)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】