説明

車載情報伝達装置

【課題】インバータの温度を感知する感温ダイオードSDの温度に関する情報をマイコン20に伝達する際に、マイコン20のタイマ機能やA/D変換機能を備えたポートを使用すると、そのリソースが低減すること。
【解決手段】感温ダイオードSDの出力電圧に基づき周波数変調回路34にて周波数変調された信号は、フォトカプラ36に取り込まれる。フォトカプラ36の出力は、マイコン20に取り込まれる。マイコン20においては、フォトカプラ36の出力電圧が閾値電圧以上であるなら論理「H」と認識し、閾値電圧未満であるなら論理「L」と認識する処理を、ハードウェアにて行う。一方、論理「H」である期間や論理「L」である期間に基づく温度情報の復調処理を、ソフトウェア処理とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の特定箇所の状態に関する情報を伝達する車載情報伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の伝達装置としては、例えば下記特許文献1に見られるように、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等からなるスイッチング素子の温度を検出する検出手段の出力する電圧信号を周波数信号に変換し、フォトカプラを介して周波数/電圧変換回路に出力するものも提案されている。これにより、フォトカプラ等の絶縁手段を介して絶縁することが望まれる2つのシステム間で上記温度に関する情報を適切に伝達することができる。
【特許文献1】特開平7−115354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記の場合、フォトカプラの出力側に、周波数/電圧変換回路を備える必要がある。更に、周波数/電圧変換回路の出力をマイコン内にて処理する場合、マイコンのアナログ/デジタル変換(A/D変換)処理を行うポートを周波数/電圧変換回路の出力に割り当てる必要がある。こうした事態は、上記温度検出手段が1つでない場合等にあっては、周波数/電圧変換回路を複数備えたり、周波数/電圧変換回路の出力が割り当てられるA/D変換処理を行うポートを複数備えたりする必要が生じるため、部品点数の増加やマイコンのリソースの消費の増加を免れない。
【0004】
また、上記部品点数の増加を回避すべく、フォトカプラの出力をマイコンに直接取り込む場合、出力信号の周波数設定に際して、マイコンのサンプリング周期による制約を受けることとなる。一方、出力信号から情報(検出値)を抽出するために要する時間は、出力信号固有の周波数に依存する。このため、フォトカプラの出力をマイコンに直接取り込む場合には、取り込んだ信号からマイコン自体が情報を抽出するために要する時間が長期化する等の問題が生じる。
【0005】
なお、上記スイッチング素子の温度に限らず、車両の特定箇所の状態に関する情報を伝達するものにあっては、周波数信号から情報を抽出するまでに要する時間が信号の固有の周波数によって制限されたり部品点数が増加したりする不都合が生じるこうした実情も概ね共通したものとなっている。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、車両の特定箇所の状態に関する情報をより適切に伝達することのできる車載情報伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0008】
請求項1記載の発明は、車両の特定箇所の状態を検出する状態検出手段と、前記検出される状態に関する情報に基づき周波数変調した信号を送信する送信手段と、前記送信される信号を受信する受信手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
上記発明では、情報に基づき周波数変調した信号を用いるために、これを復調することで受信側で情報を把握することができるようになるまでの時間は、変調された周波数に依存することとなる。このため、特に迅速に把握したい情報の場合に高周波とすることで、迅速に把握したいという要求に適切に応じることができる。このため、上記発明では、情報をより適切に伝達することができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記受信手段は、前記送信される信号の電圧レベルが所定以上であるか否かを判断する判断手段と、前記所定以上である状態から所定未満である状態への遷移タイミング及び前記所定未満である状態から前記所定以上である状態への遷移タイミングについて、これら2つのタイミングのいずれか一方から他方までの所要時間を計時する計時手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
上記発明では、計時手段によって周波数を把握することができるため、受信された信号から上記情報を復調することができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記計時手段は、ソフトウェアにて構成されてなることを特徴とする。
【0013】
例えばマイクロコンピュータ等のデジタル処理のためのハードウェア資源は、通常、入力信号の電圧レベルが所定以上である状態と所定未満である状態との間の遷移タイミングをトリガとして、計時動作を行うタイマ機能等をハードウェアとして備えているものが多いものの、こうした入力端子には限りがある。これに対し、入力端子に印加される電圧レベルが所定以上であるか否かをハードウェアとして検出する機能のみを付与された入力端子の数は相対的に多い傾向にある。上記発明では、この点に鑑み、計時手段をソフトウェアにて構成することで、貴重な入力端子を使用することなく、計時手段を構成することができる。このため、使用可能なハードウェア資源の種類が豊富となる。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記送信手段は、前記状態に関する情報が、前記受信手段によって迅速に取得することが要求されるものであるほど、前記送信する信号を高周波とすることを特徴とする。
【0015】
高周波の信号に情報が重畳される方が低周波の信号に情報が重畳されるよりも、情報を迅速に抽出することができる。上記発明では、この点に鑑み、受信手段によって迅速に取得することが要求される情報であるほど、搬送波を高周波に変調することで、こうした要求に適切に対処することができる。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記状態検出手段は、車両の所定箇所の温度を検出する手段であり、前記送信手段は、前記温度が高いほど周波数を高周波とすることを特徴とする。
【0017】
車載温度検出手段の検出結果については、一般にそれが高温であることを示すものであるほど、受信側にその情報を迅速に伝える要求が高くなる。上記発明では、この点に鑑み、温度が高いほど周波数を高周波とすることで、高温であるほどその情報を迅速に伝達させることができる。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記温度検出手段は、前記車載電力変換回路の温度を検出するものであり、前記受信手段によって受信される信号に基づき、前記車載電力変換回路の温度が所定以上である場合、前記車載電力変換回路の操作を制限する制限手段を備えることを特徴とする。
【0019】
上記発明では、電力変換回路の温度が所定以上となる場合、迅速に操作を制限することができるようになる。
【0020】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明において、前記状態検出手段は、車載高圧システム内の温度を検出するものであり、前記受信手段は、前記送信手段の送信する信号を絶縁手段を介して受信することを特徴とする。
【0021】
上記絶縁手段を備える場合、アナログ信号を直接高精度に送信することが困難であることから、絶縁手段への入力信号を2値信号等の周波数信号とすることが周知である。この点、上記発明では、周波数変調処理を行う手段を、周波数信号への変換手段とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明にかかる車載情報伝達装置をパラレル・シリーズハイブリッド車に適用した一実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
図1に、本実施形態にかかるモータジェネレータの制御システムの全体構成のうちのパラレル・シリーズハイブリッド車に搭載される2つの回転機のうちの1つに関する部分を示す。
【0024】
図示されるように、モータジェネレータ10の3つの相(U相、V相、W相)には、インバータ12が接続されている。このインバータ12は、3相インバータであり、高圧バッテリ14の電圧をモータジェネレータ10の3つの相に適宜印加する。詳しくは、インバータ12は、3つの相のそれぞれと高圧バッテリ14の正極側又は負極側とを導通させるべく、スイッチング素子SW1、SW2とスイッチング素子SW3,SW4とスイッチング素子SW5,SW6との並列接続体を備えて構成されている。そして、スイッチング素子SW1及びスイッチング素子SW2を直列接続する接続点がモータジェネレータ10のU相と接続されている。また、スイッチング素子SW3及びスイッチング素子SW4を直列接続する接続点がモータジェネレータ10のV相と接続されている。更に、スイッチング素子SW5及びスイッチング素子SW6を直列接続する接続点がモータジェネレータ10のW相と接続されている。ちなみに、これらスイッチング素子SW1〜SW6は、本実施形態では、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)によって構成されている。また、インバータ12は、各スイッチング素子SW1〜SW6に逆並列に接続されたフライホイールダイオードD1〜D6を備えている。
【0025】
上記インバータ12には、更に、その温度を感知する感温ダイオードSDが設けられている。
【0026】
上記スイッチング素子SW1〜SW6は、ドライバユニット16を介して、低圧バッテリ18を電力源とするマイクロコンピュータ(マイコン20)により操作される。この際、マイコン20のスイッチング制限処理部20aでは、上記感温ダイオードSDの感知する温度を取得し、これが所定以上である場合には、スイッチング素子SW1〜SW6を流れる電流を制限すべくスイッチング素子SW1〜SW6のスイッチング状態を制限したり、インバータ12をシャットダウンしたりする。図2に、ドライバユニット16のうち、感温ダイオードSDの感知する温度情報をマイコン20に伝達させる情報伝達経路の構成部分を示す。
【0027】
図示されるように、感温ダイオードSDのカソード側は接地されており、アノード側は、定電流源32を介して電源30に接続されている。また、感温ダイオードSDのアノード側の電圧は、感温ダイオードSDの感知する温度と相関を有する信号として、周波数変調回路34に取り込まれる。周波数変調回路34では、入力される電圧信号に基づき周波数変調された交流信号をフォトカプラ36に出力する。これにより、周波数変調された交流信号がフォトカプラ36の1次側を構成するフォトダイオードのアノードに印加される。ちなみに、フォトカプラ36の上記フォトダイオードのカソード側は接地されている。
【0028】
フォトカプラ36の2次側を構成するフォトトランジスタのエミッタは接地されており、コレクタは、抵抗体37を介して電源38に接続されている。また、フォトカプラ36のコレクタ電圧は、フォトカプラ36の出力信号として、マイコン20の汎用ポートに取り込まれる。ここで、汎用ポートとは、印加される電圧が閾値電圧以上であるなら論理「H」と認識し、印加される電圧が閾値未満であるなら論理「L」と認識する機能をハードウェア手段にて実現しているものであるが、論理「H」及び論理「L」の切り替わり時をトリガとして計時動作等を行う機能については有しないものである。これは、上記計時動作を行う機能を有するもの(タイマ機能を有するポート)は、マイコン20のポートの中でも限られており、こうした限られた資源を用いることを回避するためである。
【0029】
特に、本実施形態のようにパラレル・シリーズハイブリッド車の場合、実際には2つのモータジェネレータを備え、これらにそれぞれインバータが設けられるために、これら各インバータの温度に関する情報毎に、マイコン20のポートを必要とする。このため、タイマ機能を有するポート等を利用する場合、これらの資源の消費量も大きくなる。
【0030】
このため、本実施形態では、マイコン20内のハードウェアによって判断された電圧レベルが論理「H」であるか期間や論理「L」である期間を計時することで温度情報を復調する処理を、ソフトウェア処理として行う。ここで、情報の復調精度が取り込まれる電圧レベルのサンプリング周期に依存する。すなわち、サンプリング周期を短くすればするほど、論理「H」の期間や論理「L」の期間の計時精度を向上させることができる。一方、ソフトウェア処理の場合には、サンプリング周期を短くすればするほど、マイコン20の演算負荷が大きくなる。このため、サンプリング周期を短くすることには制約がある。
【0031】
そこで本実施形態では、周波数変調回路34において、感温ダイオードSDの感知する温度が高いほど高周波となるような変調をして且つ、感知する温度の最高温度における周波数を、サンプリング周期の逆数程度とする。これにより、最高温度である際に入力ポートの電圧レベルの一定期間を正確に計時することができるため、最高温度以下の温度情報を高精度に復調することができる。更に、高周波の信号ほどこれに重畳された情報を短時間で復調することができるため、最高温度近傍の温度情報については、特に迅速に復調することができる。したがって、マイコン20の負荷の低減の観点からサンプリング周期を設定しつつも、最高温度近傍の温度情報を迅速に取得することができる。
【0032】
図3に、周波数変調回路34による周波数変調態様を示す。図示されるように、温度が低温から高温へと移行するにつれて、周波数は「数Hz」から「数百Hz」の周波数帯域に変調される。これは、マイコン20の演算負荷の観点から、入力ポートの電圧レベルのサンプリング周期を「数ms」程度に設定したことと関係している。この場合、精度よく検出できる周波数の上限は、「数百Hz」となる。一方、感温ダイオードSDによって感知される最低温度に対していかなる周波数を割り当てるかは、要求される温度精度に依存する。すなわち、最高温度と最低温度との間を必要な温度精度(分解能Td)にて分割した際の値を、上記サンプリング周期で乗算した乗算値の逆数程度の周波数が最低周波数となる。
【0033】
詳しくは、周波数変調回路34では、出力信号の最小周期Smin、感温ダイオードSDの感知する温度T、及びその最高値Tmax、分解能Tdを用いて、変調周波数fを下記の式にて定義する。
f=1/[Smin・{(Tmax−T)/Td+1}]
図4に、マイコン20内における温度情報の復調処理の手順を示す。この処理は、マイコン20内に格納されたプログラムによって規定されているものであり、このプログラムは、中央処理装置(CPU)によって所定周期で実行されるものである。
【0034】
この一連の処理では、まずステップS10において、サンプリングタイミングであるか否かを判断する。これは、所定の時間周期でポートの電圧レベルをサンプリングするための設定である。なお、サンプリング周期SPは、例えば「数ms」とすればよい。そして、サンプリングタイミングであると判断される場合、ステップS12に移行する。ステップS12においては、上記フォトカプラ36によってポートに印加されている電圧レベルが論理「H」であるか否かを判断する。そして、論理「H」レベルであると判断される場合、ステップS14において、前回ポートに印加されていた電圧レベルが論理「H」レベルであるか否かを判断する。この処理は、ポートに印加される電圧レベルが論理「L」レベルから論理「H」レベルに変化したタイミングでないか否かを判断するものである。そして、ステップS14において論理「H」レベルであると判断される場合には、論理「H」レベルが継続している状況にあると考えられることから、論理「H」レベルの継続時間を計時すべく、ステップS16においてカウンタをインクリメントする。
【0035】
こうした状況下、上記ステップS12において論理「H」レベルでないと判断される場合、ステップS18において、前回ポートに印加されていた電圧レベルが論理「H」レベルであるか否かを判断する。この処理は、ポートに印加される電圧が論理「H」レベルから論理「L」レベルに変化したタイミングであるか否かを判断するものである。そして、ステップS18において論理「H」レベルであると判断される場合、論理「H」レベルから論理「L」レベルに変化したタイミングであると判断し、ステップS20に移行する。ステップS20においては、カウンタのカウント値から温度を算出する。ここで、カウンタのカウント値は、フォトカプラ36の出力信号の周期と相関を有する。このため、カウント値が大きいほど温度は低い値となる。ステップS20の処理が完了する場合、ステップS22において、カウンタをリセットする。
【0036】
一方、上記ステップS18において否定判断される場合、ポートに印加される電圧レベルが論理「L」レベルの状態が継続している状況にあると考えられることから、論理「L」レベルの継続時間を計時すべく、ステップS24において、カウンタをインクリメントする。
【0037】
こうした状況下、上記ステップS12において肯定判断されて且つステップS14において否定判断される場合には、換言すれば、論理「L」レベルから論理「H」レベルに変化するタイミングである場合には、ステップS26において、上記ステップS20と同様にして、カウント値から温度を算出する。なお、フォトカプラ36の出力信号の周波数が同一なら、論理「H」期間と論理「L」期間とは同一と考えられるため、カウント値と温度との関係は、ステップS20の処理とステップS26の処理とで全く同一とする。そして、ステップS26の処理が完了する場合、ステップS28においてカウンタをリセットする。
【0038】
なお、ステップS16,S22,S24,S28の処理が完了する場合や、ステップS10において否定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0039】
図5に、感温ダイオードSDの感知する温度が上昇していく際における上記処理の態様を模式的に示す。詳しくは、図5(a)は、温度が連続的に上昇していく際のマイコン20の入力波形を模式的に示しており、図5(b)は、マイコン20のポートに印加される電圧レベルの推移を示し、図5(c)は、上記カウンタの計時動作を示す。
【0040】
図示されるように、高温となるほどポートに印加される電圧レベルが頻繁に反転することに起因して、カウンタが頻繁にリセットされる。このため、高温となるほど、先の図4のステップS20、S26の処理によって温度情報を取得する機会が増加する。このため、インバータ12の温度が過度に高くなる状況下、先の図1に示したスイッチング制限処理部20aにおいて、インバータ12の操作を迅速に制限することができる。
【0041】
なお、図5(a)では、感温ダイオードSDの温度が上昇していく際のマイコン20の入力波形を示したため、論理「H」及び論理「L」の周期に対する論理「H」の時比率(Duty)が「50%」とならないように記載されているが、本実施形態では、温度が一定である場合、入力波形はDuty「50%」の周波数信号となる。
【0042】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0043】
(1)感温ダイオードSDの感知する温度に関する情報に基づき周波数変調した信号を送信する一方、マイコン20においては、送信される信号の電圧レベルが論理「H」レベルであるか論理「L」レベルであるかの判断をハードウェア資源によって行い、論理「H」又は論理「L」の継続時間を計時することで周波数信号を復調する処理をソフトウェア処理とした。このため、ポートに印加される電圧レベルの遷移タイミングをトリガとして計時動作を行うタイマ機能等を適用可能な貴重なポートを使用することなく、上記復調処理を行うことができる。
【0044】
(2)感温ダイオードSDの温度が高いほど周波数を高周波とした。これにより、高温であるほどその情報を迅速に伝達させることができる。
【0045】
(3)インバータ12の温度が所定以上である場合、インバータ12の操作を制限するスイッチング制限処理部20aを備えた。ここで、感温ダイオードSDの温度が高いほど高周波信号に変調することで、インバータ12の温度が高くなる場合、迅速に操作を制限することができるようになる。
【0046】
(4)感温ダイオードSDの感知する温度に関する情報を、フォトカプラ36を介してマイコン20に伝達させた。ここで、フォトカプラ36は、アナログ信号を直接高精度に送信することが困難であることから、予め周波数信号とすることが要求される。この点、本実施形態では、周波数変調回路34を、フォトカプラ36の前段に備えるべき周波数信号生成手段とすることができる。
【0047】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0048】
・上記実施形態では、周波数変調回路34の出力を、交流波形の信号としたが、これに限らず、例えば2値信号としてもよい。この際、一周期に対する論理「H」の時間の時比率(Duty)を、「50%」とするものに限らない。ただし、Dutyが「50%」とならない場合には、マイコン20において、論理「H」の期間を計時する場合と論理「L」の期間を計時する場合とで、計時された値を温度に換算する処理を相違させることが望ましい。また、これに代えて、温度換算対象を、論理「H」の期間及び論理「L」の期間のいずれか一方に限ってもよい。
【0049】
・周波数変調回路34による周波数変調態様としては、上記の式に基づくものに限らない。例えば、周波数が温度Tの平方根に比例するものであってもよい。
【0050】
・伝達対象となる情報としては、上記インバータ12の温度に限らない。例えばインバータ12の各スイッチング素子SW1〜SW6のそれぞれに独立に感温ダイオードを備える構成においては、これら各スイッチング素子SW1〜SW6のそれぞれの温度を伝達対象となる情報としてもよい。また、インバータ12が昇圧回路を介して高圧バッテリ14に接続される構成の場合、昇圧回路を構成するスイッチング素子の温度を、伝達対象とする情報としてもよい。
【0051】
・上記発明では、マイコン20の入力信号の論理反転タイミング間の間隔を計時する計時処理を、ソフトウェアにて実現したがこれに限らない。例えば、フォトカプラ36の出力を、マイコン20のタイマ機能を有する入力ポートから取り込むことで、計時処理をハードウェアにて実現してもよい。この場合であっても、感温ダイオードSDの感知する温度が高いほど周波数を高くすることで、高温であるほどマイコン20がその温度を把握するまでに要する時間を短縮することができる。
【0052】
・伝達対象となる情報としては、上記高圧システムの温度情報に限らない。いかなる情報であろうとも、その値に応じてマイコンがその値を迅速に取得することが必要な程度が相違するなら、これに基づき周波数変調した信号を用いることで、必要な情報を迅速に取得可能としつつも、タイマ機能を有しない汎用の入力ポートを介して変調された信号をマイコン内に取り込むことができるようになるため、本発明の適用は有効である。
【0053】
・車載電力変換回路としては、インバータに限らない。例えば、高圧バッテリ14の電圧を降圧して低圧バッテリ18に出力するDCDCコンバータ等であってもよい。
【0054】
・ハイブリッド車としては、パラレル・シリーズハイブリッド車に限らず、例えばシリーズハイブリッド車であってもよい。また、ハイブリッド車に限らず、例えば電気自動車に、本発明の情報伝達装置を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】一実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかる温度情報の伝達経路を示す図。
【図3】同実施形態の変調処理における温度と周波数との関係を示す図。
【図4】同実施形態にかかる温度情報の復調処理の手順を示す流れ図。
【図5】同実施形態にかかる温度情報の復調処理の態様を示すタイムチャート。
【符号の説明】
【0056】
10…モータジェネレータ、12…インバータ、14…高圧バッテリ、20…マイコン、34…周波数変調回路、36…フォトカプラ、SD…感温ダイオード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の特定箇所の状態を検出する状態検出手段と、
前記検出される状態に関する情報に基づき周波数変調した信号を送信する送信手段と、
前記送信される信号を受信する受信手段とを備えることを特徴とする車載情報伝達装置。
【請求項2】
前記受信手段は、前記送信される信号の電圧レベルが所定以上であるか否かを判断する判断手段と、前記所定以上である状態から所定未満である状態への遷移タイミング及び前記所定未満である状態から前記所定以上である状態への遷移タイミングについて、これら2つのタイミングのいずれか一方から他方までの所要時間を計時する計時手段とを備えることを特徴とする請求項1記載の車載情報伝達装置。
【請求項3】
前記計時手段は、ソフトウェアにて構成されてなることを特徴とする請求項2記載の車載情報伝達装置。
【請求項4】
前記送信手段は、前記状態に関する情報が、前記受信手段によって迅速に取得することが要求されるものであるほど、前記送信する信号を高周波とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車載情報伝達装置。
【請求項5】
前記状態検出手段は、車両の所定箇所の温度を検出する手段であり、
前記送信手段は、前記温度が高いほど周波数を高周波とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車載情報伝達装置。
【請求項6】
前記温度検出手段は、前記車載電力変換回路の温度を検出するものであり、
前記受信手段によって受信される信号に基づき、前記車載電力変換回路の温度が所定以上である場合、前記車載電力変換回路の操作を制限する制限手段を備えることを特徴とする請求項5記載の車載情報伝達装置。
【請求項7】
前記状態検出手段は、車載高圧システム内の温度を検出するものであり、
前記受信手段は、前記送信手段の送信する信号を絶縁手段を介して受信することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車載情報伝達装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−171312(P2009−171312A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8119(P2008−8119)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】