説明

車輌のホイールアライメント測定装置

【課題】より簡単な構成でしかもトー角及びキャンバ角を高精度で測定することができるホイールアライメント測定装置を提供する。
【解決手段】水平に放射された一対のレーザ光を車輪側面に照射させて該車輪側面上にレーザ光による輝線パターンを形成するための、互いに上下鉛直に位置するレーザ光放射手段、該輝線パターンを測定画像として取り込み、該レーザ光放射手段と同一面内で外側に配置された画像取込手段、取り込んだ測定画像と予め登録しておいた登録画像との輝線パターン形状を比較し、該登録画像の中から相関率が一定値以上の高い登録画像をサーチし、選択してその選択した画像から重心位置データを決定、登録する画像処理手段、登録された位置データを基にホイールアライメントを算出する演算処理手段を含む、車輌のホイールアライメントを非接触式で測定する車輌のホイールアライメント測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌のホイールアライメントを非接触式で測定する車輌のホイールアライメント測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌を安全にかつ安定に運転、走行させるためには、車輌のホイールアライメント(車輪の整列)が適正な範囲で調整されていることが必要である。ホイールアライメントを表す用語としては、一般に、トー角及びキャンバ角が用いられており、前者は、車輌を真上から見たときにホイール(以下、車輪と称する)が進行方向に対して内側又は外側に傾斜している角度を表し、内側に向いている場合をトーイン角、外側に向いているトーアウト角と称している。また後者は、車輌を正面又は後ろから見たときに車輪の接地点における鉛直面に対して車輪が内側又は外側に傾斜している角度を表し、車輪が内側に傾斜して下に開いている場合をネガティブ、車輪が外側に傾斜して上に開いている場合をポジティブと称している。車輌のホイールアライメントが適正な範囲に調整されているか否かのチェックは、一般に上記トー角及びキャンバ角を計測することにより行われる。
【0003】
近年、ホイールアライメントの設定や調整が効率よく迅速にかつ高精度で行われることが要求されており、そのための様々なアライメント測定技術が提案されている。そして現在では、従来の接触方式に代わり、非接触方式が主流であり、非接触方式を最初に導入した技術として、下記特許文献1に記載のホイールアライメント測定装置が知られている。この測定装置10は、図10に示すように、車両11の車輪12を載置するためのローラトラック13と、これに隣接し、レーザ光を車輪側面上(この場合は、タイヤの側面上)に照射して、該車輪側面上に輪郭線La、Lb、Lc(レーザライン又は輝線パターン)を形成すると共に、該輪郭線を検出する非接触センサステーション14、及び形成した輪郭線の像を表示するモニター15、更にこの像から車輪の位置を決定する、コンピュータシステム(図示せず)などから構成されている。そして、上記トー角及びキャンバ角を計測するためには、一つの車輪側面上に上記三つの輪郭線La、Lb、Lcを形成することが必要であり、そのために、非接触センサステーション14には、三つのセンサモジュール16が配設され、各センサモジュール16にはレーザ光源16a及び受像器のビデオカメラセンサ16bが備えられている(図10では一台のセンサモジュール16のみ表示されている)。
【0004】
図11及び図12は、上記ホイールアライメント測定装置10に車輌11をセットして、例えば、トー角を測定するときの車輪12と非接触センサステーション14の配置を示すものである。図11は、車輌を上から見た図を示し、図12は、正面又は後ろから見た図を示す。図11及び図12に示すように、センサモジュール16のレーザ光源16aから放射された平行なレーザ光17は、扇状の平面レーザ光であり、これにより車輪12(タイヤ)側面上に輪郭線が形成され(図示せず)、この輪郭線は、下方から受像器であるビデオカメラセンサ16bにより検出されている。
上記のように、上記特許文献1の装置では、トー角及びキャンバ角を同時に測定する場合には、一つの車輪に対して、少なくとも3台のレーザ光源と3台の受像器が必要であるため、これらの調整が煩雑であると共に構成要素が増大する結果、比較的コスト高である。
【0005】
上記測定装置を改良したものとして、例えば、下記特許文献2には、上記車輪(タイヤ)の側面に三つの輪郭線(輝線パターン)を得るために、鉛直方向とこれに交差する傾斜方向の2方向に平面レーザ光を放射できる一台のレーザ光源と該レーザ光により車輪のタイヤ側面上に形成された輝線パターンを検出し、該輝線パターンを含む電子画像を得るように配置された受像器であるCCDカメラを3台配置したホイールアライメント測定装置が提案されている。また下記特許文献3には、所定の間隔で鉛直位置又は並列位置にある2台のレーザ光源とその間に配置された一台の受像器、或は所定の間隔で鉛直位置又は並列位置にある2台の受像器とその間に配置された、複数のレーザ光を放射可能な一台のレーザ光源とから構成されたホイールアライメント測定装置が提案されている。
【0006】
上記のような従来の測定装置では、輪郭線を利用した車輪の位置決めは、レーザ光の面に対して受像器のビデオカメラを輪郭線上に直角に走査させ(輪郭線を分割し)、その交点での強さのピークを検出し、その点を最も受像器(センサモジュール)に接近した点として選択する方法が採られている。図13は、この車輪の位置決め方法を示すもので、輪郭線(レーザライン)La上に受像器を走査させて、走査線ごとに分割された多数の点(交点)のX−Y座標における強度をサンプリングし、そのサンプリングした点の中から、装置内のコンピュータシステムにより、最大強度(最大ピークポイント)Paを示す位置の座標(Xp,Yp)が決定される。そしてこの位置データ(これを重心位置データとも称する)を基にトー角及びキャンバ角が計測されている。
【0007】
【特許文献1】特公平7−81853号公報
【特許文献2】特開平9−280843号公報
【特許文献3】特開2001−4344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記文献2及び3の測定装置は、いずれも装置全体の構成要素を減少して構造を簡略化すると共に、その操作性を容易にし、また製造コストをも低減するものではあるが、平面レーザ光を水平ではなく、斜めからタイヤに照射しており、またタイヤ側面上に形成された複数の輝線パターンの全体を一つの受像器で検出するため、視角が広くなり、測定精度が十分でない。
また上記測定装置で採用されている輪郭線Laを利用した車輪の位置決め方法は、フィルター平均化等の処理(補正)を行う必要があり、車輪を高速回転で回転させながらアライメントを測定する場合には、処理速度に遅れが生じ易い。また位置データの決定は、上記のように、輪郭線を分割する方法を採用するため、例えば、タイヤ側面上に突出部分(例えば、所謂ヒゲ(突起)、文字、模様等)やリムエッジ等がある場合には、これらが検出されるため、測定誤差を招き易い。図14は、ヒゲ等の突起gがある場合(b)と、ない場合(a)の最大ピークポイントPaにおける位置座標の位置データを示すもので、図14(b)に示すように、突起がある場合には、その最大ピークポイントPaの位置座標は、(Xa,Ya+Y1)が検出され、図14(a)の突起gがない場合に比べて、決定される位置座標には大きな差が生じることになる。
【0009】
本発明は、より簡単な構成でしかもトー角及びキャンバ角を高精度で測定することができるホイールアライメント測定装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、所定間隔で上下鉛直位置にあり、かつ所定の放射角で水平に放射する一対のレーザ光放射手段から放射された一対のレーザ光、又は該一対のレーザ光放射手段を90°回転した位置から放射された一対のレーザ光が、ホイール側面上に照射されることにより、該ホイールの回転軸を通るホイール側面上の鉛直中心軸に対してその片側の側面上の上下に、又は該鉛直中心軸に対して該側面上の左右に二つの輝線パターンが形成されるように、上記ホイールの回転軸の回りに回転可能に配置されたレーザ光放射手段と、
上記ホイール側面上に形成された上下又は左右の二つの輝線パターンを同時に撮像できる位置で上記一対のレーザ光放射手段を通る延長線上の該二つのレーザ光放射手段に対して外側に配置され、該一対のレーザ光放射手段と共に移動可能な画像取込手段と、
上記画像取込手段により取込まれた輝線パターンを含む測定画像と予め画像登録した輝線パターンを含む複数の登録画像とを比較し、該複数の登録画像の中から、該測定画像と登録画像との形状が一定値以上の相関率の範囲内にある登録画像を選択し、その選択画像から重心位置データを決定し、登録する画像処理手段と、
上記画像処理手段により登録された重心位置データを用いてホイールアライメントの演算を行うホイールアライメント演算処理手段と、を含む車輌のホイールアライメントを非接触式で測定する車輌のホイールアライメント測定装置にある。
【0011】
また本発明は、所定間隔で上下鉛直位置にあり、かつ所定の放射角で水平に放射する一対のレーザ光放射手段により放射された一対のレーザ光が、ホイールの回転軸を通るホイール側面上の鉛直中心軸に対して左側と右側の該ホイール側面上に左右照射されることにより、該ホイール側面上に四つの輝線パターンが形成されるように、所定間隔で左右並列に配置されたレーザ光放射手段と、
上記左側のホイール側面上に形成された上下二つの輝線パターン及び右側のホイール側面上に形成された上下二つの輝線パターンに対してそれぞれ上下二つの輝線パターンを同時に撮像できる位置で上記左右それぞれ一対のレーザ光放射手段を通る延長線上の該二つのレーザ光放射手段に対して外側に配置され、該左右一対のレーザ光放射手段のそれぞれと共に移動可能な左右の画像取込手段と、
上記画像取込手段により取込まれた輝線パターンを含む測定画像と予め画像登録した輝線パターンを含む複数の登録画像とを比較し、該複数の登録画像の中から、該測定画像と登録画像との形状が一定値以上の相関率の範囲内にある登録画像を選択し、その選択画像から重心位置データを決定し、登録する画像処理手段と、
上記画像処理手段により登録された重心位置データを用いてホイールアライメントの演算を行うホイールアライメント演算処理手段と、を含む、車輌のホイールアライメントを非接触式で測定する車輌のホイールアライメント測定装置にある。
【発明の効果】
【0012】
本発明のホイールアライメント測定装置は、レーザ光源と受像器とを一対のレーザ光放射手段と一台の画像取込手段とからなる基本構成の態様を有しているため、測定装置全体はシンプルであり、大掛かりなものではなく、また更に測定精度を上げるために、この基本構成の態様を二つ並べて構成した態様の測定装置の場合でも、その操作性や設置方法も容易であり、低コストで測定装置を提供することができる。
また本発明は、従来の光切断法を利用した測定方法を採用するものであるが、放射されるレーザ光は水平レーザ光として車輪に照射されるため、またレーザ光放射手段及び画像取込手段を同一面内でかつ画像取込手段を外側に配置させているため、画像取込手段の視角を比較的狭く設定することができる。したがって、車輪上に形成される上下、又は左右の輝線パターンを正確に読み取ることが可能であり、車輪の位置データを求める際により有利なものとなる。
【0013】
また本発明では、測定する車輪の位置データ(位置座標)を決定する場合、同型、又は同種類の車輪について予め登録しておいた、輝線パターンを含む所定の画像領域を有する複数の登録画像と、実際に測定する車輪にレーザ光を照射して得られる上記登録画像領域と同じ画像領域に対応する輝線パターンを含む画像領域を有する画像(測定画像)とを比較し、サーチし、複数の登録画像の中から、測定画像と登録画像とがその輝線パターンの形状において一定以上の相関率の範囲にある登録画像を選択してその画像から位置座標を決定する方法を採用している。したがって、従来のような測定精度を下げる原因となる突起等があってもこれらによる影響が少なく、より正確に測定車輪の重心位置データを得ることができるため、この位置データに基づくトー角及びキャンバ角の算出をより高精度に行うことができる。
また本発明における車輪の位置決めは、従来のような、輝線パターンを非常に細かく分割して最大ピークポイントを得る方法とは異なり、測定画像と登録画像とのパターン形状の相関率(一致度あるいは照合度)に基づいて選択する方法により行われるため、処理速度は速く、車輪を停止した状態はもとより、高速回転させた状態であっても高精度でアライメントを測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のホイールアライメント測定装置(以下、本発明の測定装置と称する)を添付の図面を用いて説明する。
図1は、本発明の測定装置の一例を示すブロック図であり、本発明の測定装置1は、図1に示すように、レーザ光を車輪側面に照射させて該車輪側面上にレーザ光による輝線パターンを形成するためのレーザ光放射手段4、得られた輝線パターンを測定画像として取り込むための画像取込手段6、取り込んだ測定画像と予め登録しておいた登録画像との輝線パターン形状を比較し、該登録画像の中から相関率が一定値以上の高い登録画像をサーチし、選択してその選択した画像から重心位置データを決定、登録する画像処理手段7、登録された位置データを基にホイールアライメントを算出する演算処理手段8、そしてモニターなどの画像を表示するための出力手段9が含まれる。
【0015】
図2及び図3は、本発明の測定装置1を用いて、それぞれキャンバ角及びトー角を測定する際の測定される車輪2に対するレーザ光放射手段4及び画像取込手段6の配置を模式的に示す図である。図3は、図2におけるレーザ光放射手段4及び画像取込手段6を車輪の回転軸C−Cに対して90°回転させた時の図である。
図2に示すように、キャンバ角を測定する場合、2台のレーザ光放射手段4a、4bは、所定の間隔で上下鉛直位置にあり、このレーザ光放射手段から放射された一対のレーザ光5a、5bが測定される車輪2の側面に照射されるように配置される。上記間隔は、車輪2の型(車輪の大きさ、タイヤ側面3a形状)などにより調整される。レーザ光放射手段4a、4bは、一対のレーザ光5a、5bが車輪回転軸C−Cを通る車輪側面上の鉛直中心軸A−Aに対して車輪2側面の左右いずれの側にも照射するように、配置することができるが(図2の場合は、左側)、水平中心軸B−B(車輪回転軸を通り上記鉛直中心軸に対して直交する線)に対しては、より正確なデータを得るために、この水平中心軸B−Bを跨ぐように一対のレーザ光5a、5bが車輪側面の上下に照射されるように配置することが好ましい。この点は、図3に示すように、図2におけるレーザ光放射手段4a、4b及び画像取込手段6を車輪回転軸の回りに90°回転させてトー角を測定する場合にもレーザ光放射手段4a、4bは、一対のレーザ光5c、5dが上記鉛直中心軸A−Aに対して車輪側面の左右に照射するように、配置することが好ましい。
【0016】
レーザ光放射手段4は、所定の放射角αの平面レーザ光を放射することができる公知のものを使用することができる。本発明では、稼動部がなく、比較的簡単な構造を有する、シリンドリカルレンズ付半導体レーザを用いることが好ましい。放射角αは、車輪側面上のレーザ光照射部分(例えば、タイヤ3部分、車輪の端部のリム部分)に応じて調整することができる。本発明では、レーザ光放射角は車輪のタイヤ側面3a部分を照射できるように調整されていることが好ましい。
上記レーザ光放射手段4a、4bから放射された一対のレーザ光5a、5bにより、キャンバ角を測定する場合には、図2に示すように、車輪2側面(タイヤ3側面)上の片側に上下に輝線パターンLa、Lbが横方向に形成される。またトー角を測定する場合には、輝線パターンLc、Ldは、図3に示すように、車輪2側面(タイヤ3側面)上の鉛直中心軸A−Aに対して左右に縦方向に形成される。
【0017】
画像取込手段6は、上記車輪側面上に形成された上下又は左右の二つの輝線パターンLa、Lb及びLc、Ldが同時に撮像できる位置で、かつ上記2台のレーザ光放射手段4a、4bを通る延長線上で該レーザ光放射手段の外側となるように配置される。即ち、画像取込手段6は、2台のレーザ光放射手段4a、4bに対して同一面内でそれらの外側にある。このため、その視角は比較的狭く設定でき、車輪側面上に形成された輝線パターンの像を正確に撮像できる。
画像取込手段6は、車輪の回転軸の回りに回転可能にされた上記一対のレーザ光放射手段と一緒に移動可能に設けられている。したがって、一対のレーザ光放射手段を車輪の回転軸C−Cの回りに90°回転させると、それに伴って画像取込手段も回転するため、操作は容易である。画像取込手段は、一対のレーザ光放射手段と一体に形成されていてもよく、また画像取込手段は、一対のレーザ光放射手段と共に一つの筐体に収納させることもできる。画像取込手段は、従来からこの分野で使用されている公知の受像器を使用することができる。本発明では、CCDカメラが好ましい。
【0018】
上記画像取込手段6により取り込まれる車輪側面上の輝線パターンLaは、例えば、タイヤ3の側面3a上では、図4に示すように、該画像取込手段を通して円弧状のパターン(レーザライン)として認識される。そして本発明では、この円弧状の輝線パターンLaを含む所定領域Sの画像(測定画像)は、後述するように、予め画像登録しておいた輝線パターンを含む複数の登録画像とそのパターンの形状が比較され、車輪の位置データが決定される。この画像領域Sは、車輪の型(大きさ、タイヤの形状等)や、測定する車輪の部分(タイヤ側面部分、タイヤ端部を含む部分)などにより適宜決めることができ、予め登録しておいた登録画像領域と同じ領域となるように設定されている。またこの画像登録領域自体の大きさ(面積)も任意であるが、より広く設定することで精度を上げることができる。
【0019】
画像処理手段7における車輪2の位置決めは、以下のように行われる。
予め画像処理手段7に画像登録しておく輝線パターンを含む登録画像は、測定する車輪の型等が同じもので、同じ部分について同じ条件でレーザ光を照射して得られた輝線パターンを含む所定領域の複数の画像である。測定される車輪について上記のようにして得られた輝線パターンを含む測定画像は、画像処理手段7によって予め登録された複数の登録画像と測定中に常に比較され、サーチされる。そして、複数の登録画像の中から、その測定画像中の輝線パターンの形状が一定値以上の相関率を有する登録画像が選択される。設定される相関率は通常80%以上、更に好ましくは、90%以上であり、画像形状の相関率が高いものから選択される。
【0020】
図5は、図4に示す測定画像領域Sに対応する登録画像領域の拡大図であり、登録画像と測定画像との形状を比較し、両者の形状が一定値以上の相関率の範囲にある登録画像が選択される場合を模式的に示す図である。例えば、図5(b)に示すように、測定されるタイヤ側面上にヒゲ等の突起gがある場合でも、その輝線パターンLa全体の形状の相関率が所定の範囲内にある登録画像が選択される結果、図5(a)に示すような突起gがない場合に登録された画像における最大ピークポイントPaの位置座標(Xa,Ya)と殆ど差のない位置座標(Xa,Ya+Y2)を示す登録画像が選択される。即ち、突起の部分で輝線パターンの形状が変形していても、その全体の輝線パターンの形状が所定の相関率以上の形状を有しているため、突起による輝線パターンの変形による影響は非常に僅かである(殆ど無視される)。この方法は、従来の方法によって決められる位置座標(Xa,Ya+Y1)に比べて更にその測定誤差を少なくするものである。同時にこのような処理が画像単位で行われるため、処理速度を更に速めることができる。このようにして選択された登録画像から、その輝線パターンに従い、最大ピークポイントである重心位置(最も画像取込手段に近い点)座標(Xa,Ya)が決定され、この重心位置データは画像処理手段に登録(保存)される。
【0021】
上記画像処理手段7には、所謂カメラコントローラが使用されており、これには、マイクロコンピュータシステムが組み込まれているため、上記の一連の処理、即ち、測定画像及び予め登録しておく登録画像の取込(登録を含む)、測定画像と登録画像のとの比較、サーチ、そして位置決め等の処理、そして決定された位置データの登録(保存)等を行うことができる。
【0022】
登録された重心位置データは演算処理手段8においてキャンバ角及びトー角が計測される。キャンバ角及びトー角は、それぞれ下記式に基づいて算出することができる。図6は、それぞれキャンバ角(C)及びトー角(T)を算出するために、本発明の測定装置と車輪との位置関係を示す図である。
キャンバ角(C)=arctan{(Z3−Z1)/H}
トー角(T)=arctan{(Z4−Z2)/L) }
演算処理手段8は汎用のマイクロコンピュータシステムを利用することができる。また上記キャンバ角及びトー角の算出は公知のソフトウエアーを利用して行うことができる。
【0023】
本発明のホイールアライメント測定装置では、上記一対のレーザ光放射手段及び画像取込手段を含む測定装置を車輪に対して二つ並列に並べた構成とすることにより、さらに高精度にアライメントの測定が可能である。
図7は、一対のレーザ光放射手段及び画像取込手段を車輪側面上の鉛直中心軸に対して左右に並列に配置したときの装置の態様を模式的に示す図である。図7に示すように、並列に配置された一対のレーザ光放射手段4a、4b、4c、4dから放出された所定の放射角を有する平面レーザ光5a、5b、5c、5dが平行に、車輪2側面(タイヤ3の側面3a)上に鉛直中心軸A−Aに対して左右に照射されるため、該側面上の左右に上下に対応した四つの輝線パターンLa、Lb、Lc、Ldが形成される。この態様は、上記一対のレーザ光放射手段及び画像取込手段を含む装置を並列に並べて配置させればよいため、また一つの車輪2に対して測定箇所を四箇所にすることができるため、比較的簡単な構成でありながら、より正確で高精度の計測を行うことができる。
【0024】
上記図7に示す態様におけるキャンバ角及びトー角は、それぞれ下記式に基づいて算出することができる。図8及び図9は、それぞれキャンバ角(C)及びトー角(T)を算出するために、本発明の測定装置と車輪との位置関係を示す図である。
C1=arctan{(Z3−Z1)/H}
C2=arctan{(Z4−Z2)/H}
キャンバ角(C)=(C1+C2)/2
T1=arctan{(Z2−Z1)/(L−(X1+X2)) }
T2=arctan{(Z4−Z3)/(L−(X3+X4)) }
キャンバ角(T)=(T1+T2)/2
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のホイールアライメント測定装置の一例のブロック図である。
【図2】キャンバ角測定時の測定される車輪に対するレーザ光放射手段及び画像取込手段の配置を示す模式図である。
【図3】トー角測定時の測定される車輪に対するレーザ光放射手段及び画像取込手段の配置を示す模式図であり、図1におけるレーザ光放射手段及び画像取込手段を車輪回転軸の回りに90°回転させた時の図である。
【図4】画像取込手段により取り込まれる、タイヤ側面上に形成された輝線パターンを含む測定画像を模式的に示す図である。
【図5】図4に示す測定画像領域に対応する登録画像領域の拡大図であり、測定画像の形状が一定値以上の相関率にある登録画像を選択する場合を模式的に示す図である。
【図6】図2及び3に示す態様の本発明の測定装置を用いてキャンバ角及びトー角を算出する際の該装置と車輪との位置関係を示す図である。
【図7】一対のレーザ光放射手段及び画像取込手段を車輪側面上の鉛直中心軸に対して並列に配置したときの態様を模式的に示す図である。
【図8】図7に示す態様の本発明の測定装置を用いてキャンバ角を算出する際の該装置と車輪との位置関係を示す図である。
【図9】図7に示す態様の本発明の測定装置を用いてトー角を算出する際の該装置と車輪との位置関係を示す図である。
【図10】従来の非接触式ホイールアライメント測定装置の模式図である。
【図11】図10に示す従来のアライメント測定装置に車輌をセットしたときの車輪と非接触センサステーションの配置を上から見た図である。
【図12】図10に示す従来のアライメント測定装置に車輌をセットしたときの車輪と非接触センサステーションの配置を正面又は後ろから見た図である。
【図13】従来のアライメント測定装置における輪郭線を利用した車輪の位置決め方法を模式的に示す図である。
【図14】図13の最大ピークポイントを示す位置座標の拡大図であり、測定するタイヤ側面上に突起がない場合(a)と、突起がある場合(b)の位置座標を示す。
【符号の説明】
【0026】
1、10 ホイールアライメント測定装置
2 車輪
3 タイヤ
3a タイヤ側面
4、4a、4b、4c、4d レーザ光放射手段
5、5a、5b、5c、5d レーザ光
6、6a、6b 画像取込手段
7 画像処理手段
8 演算処理手段
9 出力手段
11 車両
12 車輪
13 ローラトラック
14 非接触センサステーション
15 モニター
16 センサモジュール
16a レーザ光源
16b ビデオカメラセンサ
17 レーザ光
La、Lb、Lc、Ld 輪郭線(輝線パターン、レーザライン)
Pa、Pb、Pc、Pd 最大ピークポイント
C−C ホイールの回転軸
A−A ホイール側面上の鉛直中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔で上下鉛直位置にあり、かつ所定の放射角で水平に放射する一対のレーザ光放射手段から放射された一対のレーザ光、又は該一対のレーザ光放射手段を90°回転した位置から放射された一対のレーザ光が、ホイール側面上に照射されることにより、該ホイールの回転軸を通るホイール側面上の鉛直中心軸に対してその片側の側面上の上下に、又は該鉛直中心軸に対して該側面上の左右に二つの輝線パターンが形成されるように、上記ホイールの回転軸の回りに回転可能に配置されたレーザ光放射手段と、
上記ホイール側面上に形成された上下又は左右の二つの輝線パターンを同時に撮像できる位置で上記一対のレーザ光放射手段を通る延長線上の該二つのレーザ光放射手段に対して外側に配置され、該一対のレーザ光放射手段と共に移動可能な画像取込手段と、
上記画像取込手段により取込まれた輝線パターンを含む測定画像と予め画像登録した輝線パターンを含む複数の登録画像とを比較し、該複数の登録画像の中から、該測定画像と登録画像との形状が一定値以上の相関率の範囲内にある登録画像を選択し、その選択画像から重心位置データを決定し、登録する画像処理手段と、
上記画像処理手段により登録された重心位置データを用いてホイールアライメントの演算を行うホイールアライメント演算処理手段と、を含む車輌のホイールアライメントを非接触式で測定する車輌のホイールアライメント測定装置。
【請求項2】
所定間隔で上下鉛直位置にあり、かつ所定の放射角で水平に放射する一対のレーザ光放射手段により放射された一対のレーザ光が、ホイールの回転軸を通るホイール側面上の鉛直中心軸に対して左側と右側の該ホイール側面上に左右に照射されることにより、該ホイール側面上に四つの輝線パターンが形成されるように、所定間隔で左右並列に配置されたレーザ光放射手段と、
上記左側のホイール側面上に形成された上下二つの輝線パターン及び右側のホイール側面上に形成された上下二つの輝線パターンに対してそれぞれ上下二つの輝線パターンを同時に撮像できる位置で上記左右それぞれ一対のレーザ光放射手段を通る延長線上の該二つのレーザ光放射手段に対して外側に配置され、該左右一対のレーザ光放射手段のそれぞれと共に移動可能な左右の画像取込手段と、
上記画像取込手段により取込まれた輝線パターンを含む測定画像と予め画像登録した輝線パターンを含む複数の登録画像とを比較し、該複数の登録画像の中から、該測定画像と登録画像との形状が一定値以上の相関率の範囲内にある登録画像を選択し、その選択画像から重心位置データを決定し、登録する画像処理手段と、
上記画像処理手段により登録された重心位置データを用いてホイールアライメントの演算を行うホイールアライメント演算処理手段と、を含む、車輌のホイールアライメントを非接触式で測定する車輌のホイールアライメント測定装置。
【請求項3】
輝線パターンが、ホイールのタイヤ側面上に形成されている請求項1又は2に記載の車輌のホイールアライメント測定装置。
【請求項4】
ホイールの回転軸を通るホイール側面上の鉛直中心軸に対してその片側の側面上の上下に位置する二つの輝線パターンを含む測定画像から得られた重心位置データを基にキャンバ角を算出する請求項1に記載の車輌のホイールアライメント測定装置。
【請求項5】
ホイールの回転軸を通るホイール側面上の鉛直中心軸に対してその左右のホイール側面上に位置する二つの輝線パターンを含む測定画像から得られた重心位置データを基にトー角を算出する請求項1に記載の車輌のホイールアライメント測定装置。
【請求項6】
ホイールの回転軸を通るホイール側面上の鉛直中心軸に対して、該ホイール側面上の左側に位置する上下二つの輝線パターンを含む測定画像から得られた重心位置データとその右側に位置する上下二つの輝線パターンを含む測定画像から得られた重心位置データを基にキャンバ角を算出する請求項2に記載の車輌のホイールアライメント測定装置。
【請求項7】
ホイールの回転軸を通るホイール側面上の鉛直中心軸に対して、該ホイール側面上の上側に位置する左右二つの輝線パターンを含む測定画像から得られた重心位置データと、その下側に位置する左右二つの輝線パターンを含む測定画像から得られた重心位置データを基にトー角を算出する請求項2に記載の車輌のホイールアライメント測定装置。
【請求項8】
更に出力手段を含む請求項1又は2に記載の車輌のホイールアライメント測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−107194(P2008−107194A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289891(P2006−289891)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(594084549)彌榮精機株式会社 (6)
【Fターム(参考)】