説明

車輪支持用転がり軸受装置及びその軌道輪製造方法

【課題】軌道輪の転がり寿命を高めることのできる車輪支持用転がり軸受装置を提供する。
【解決手段】車輪と一体に回転する回転側軌道輪1と、回転側軌道輪1の外周面に形成された内輪軌道溝と対向する外輪軌道溝を内周面に有する静止側軌道輪2と、これら軌道輪1,2の軌道溝間に設けられた多数の転動体3とを備えた車輪支持用転がり軸受装置において、軌道輪素材の炭素含有量を0.45質量%以上0.75質量%以下、組成加工前の軌道輪素材の金属組織に存在する全ての炭化物のうち長軸径と短軸径とのアスペクト比が2以下で短軸径が0.7μm以上の球状化炭化物の面積率を70%以上、球状化炭化物の平均間隔が15μm以下、高周波焼入れを施した後の軌道溝の旧オーステナイト結晶粒の粒度番号を6番以上、表面硬さをHV650以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持する車輪支持用転がり軸受装置及びその軌道輪製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持する車輪支持用転がり軸受装置は、一般に、車輪と一体に回転するハブホイール(回転側軌道輪)と、このハブホイールの外周面に形成された内輪軌道溝と対向する外輪軌道溝を内周面に有する外輪(静止側軌道輪)と、これら軌道輪の軌道溝間に転動自在に設けられた多数の転動体とを備えた構成となっている。
【0003】
このような車輪支持用転がり軸受装置の軌道輪は、従来、例えばS50〜S55C相当材(中炭素鋼材)やSAE1070等の高炭素鋼材を熱間鍛造した後、旋削加工および高周波焼入れを施して製造されるが、近年では、製造コストを低減するために、軌道輪素材として鋼板を用い、これを塑性加工して車輪支持用転がり軸受装置の軌道輪を製造する技術が知られている(特許文献1−5参照)。
【特許文献1】特開2003−25803号公報
【特許文献2】特許第3352226号公報
【特許文献3】特開平9−151950号公報
【特許文献4】特開平7−317777号公報
【特許文献5】特開2006−64036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1−4には、軌道輪素材としての鋼板を所定の形状に塑性加工する方法が開示されているのみであり、塑性加工をする前の軌道輪素材の硬さや金属組織については言及されていない。このため、軌道輪素材として用いられる鋼板の状態が硬ければ、塑性加工量が大きくなる部位に関しては、塑性加工時に割れが発生してしまう可能性がある。
【0005】
また、特許文献5には、軌道輪素材としての鋼板を塑性加工する前に軟化焼鈍を施す点が開示されているが、軟化焼鈍が施された鋼板を所定の形状に塑性加工した後、高周波焼入れを施すと、焼入れ時間が数秒程度と短いため、不完全焼入れ組織が軌道輪の軌道面表層部に発生し、車輪支持用転がり軸受装置の転がり寿命を低下させるおそれがある。つまり、高周波焼入れのような数秒程度の短時間焼入れを軌道輪素材に施す場合、焼入れ前の金属組織が大きな影響を受け易い。軌道輪素材に軟化焼鈍を施す場合、球状化炭化物が大きいと溶けるまでに時間がかかったり、炭化物間隔が長いとマトリックスに均一に炭素が溶け込みにくいことが考えられる。そのため、不完全焼入れ組織が発生し、転がり寿命や疲労特性を低下させるおそれがある、
本発明は上述した問題点に着目してなされたものであり、その目的は、軌道輪の転がり寿命を高めることのできる車輪支持用転がり軸受装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、軌道輪素材を冷間加工して車輪支持用転がり軸受装置の軌道輪を製造する際に、フレーキングの発生原因となる不完全焼入れ組織が軌道輪の軌道面表層部に発生することを抑制することのできる車輪支持用転がり軸受装置の軌道輪製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明に係る車輪支持用転がり軸受装置は、車輪と一体に回転する回転側軌道輪と、該回転側軌道輪の外周面に形成された内輪軌道溝と対向する外輪軌道溝を内周面に有する静止側軌道輪と、これら軌道輪の軌道溝間に設けられた多数の転動体とを備え、前記回転側軌道輪及び前記静止側軌道輪のうち少なくとも一方の軌道輪が鋼材を所定の形状に塑性加工し、塑性加工の後に高周波焼入れを施して形成された車輪支持用転がり軸受装置であって、前記鋼材の炭素含有量が0.45質量%以上0.75質量%以下、塑性加工前の鋼材の金属組織に存在する全ての炭化物のうち長軸径と短軸径とのアスペクト比が2以下で短軸径が0.7μm以上の球状化炭化物の面積率が70%以上、前記球状化炭化物の平均間隔が15μm以下、高周波焼入れを施した後の軌道溝の旧オーステナイト結晶粒の粒度番号が6番以上、表面硬さがHV650以上であることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の車輪支持用転がり軸受装置の軌道輪を製造する方法であって、炭素含有量が0.45質量%以上0.75質量%以下の鋼材を軌道輪素材として用い、軌道輪素材を所定の形状に塑性加工する前に、740〜860℃の温度で0.1時間以上加熱した後、20〜70℃/hrの速度で720〜680℃の温度まで冷却し、次いで720〜680℃の温度で1〜5時間程度保持した後、10〜100℃/hrの速度で620〜680℃の温度まで冷却し、さらに10〜15℃/hrの速度で500〜560℃の温度まで冷却する軟化焼鈍を軌道輪素材に施すことを特徴とする。
【0008】
ここで、軌道輪素材の炭素含有量を0.45質量%以上0.75質量%以下とした理由は、軌道輪素材の炭素含有量が0.45質量%を下回ると表面硬さがHV650以上の軌道輪を得ることができなくなり、軌道輪素材の炭素含有量が0.75質量%を上回ると軌道輪素材の冷間加工性が低下してしまうためである。
また、軟化焼鈍された軌道輪素材の金属組織に存在する全ての炭化物のうち長軸径と短軸径とのアスペクト比が2以下で短軸径が0.7μm以上の球状化炭化物の面積率を70%以上、球状化炭化物の平均間隔を15μm以下とした理由は、以下の理由からである。一般に、炭化物の球状化が不十分で炭化物のアスペクト比が2を超えると、炭化物周辺に応力集中が発生し、軌道輪素材の冷間加工性が低下してしまうため、本発明では、球状化炭化物のアスペクト比を2以下とした。また、アスペクト比が2以下で短軸径が0.7μm以上の球状化炭化物の面積率が70%を下回ると、軟化焼鈍された鋼材の硬さや変形抵抗が増大し、軌道輪素材の冷間加工性が低下してしまうため、本発明では、アスペクト比が2以下で短軸径が0.7μm以上の球状化炭化物の面積率を70%以上とした。さらに、球状化炭化物の平均間隔が15μmを超えると、適正な高周波焼入れ組織が得られ難くなり、炭化物間隔が長いと炭素がマトリックスに均一に拡散する上で不利となるため、本発明では、球状化炭化物の平均間隔を15μm以下とした。なお、短軸径が0.7μm以上の球状化炭化物の面積率が70%以上でなければ、図5に示すように、限界据え込み率の試験においてよくないことがわかる。そのため、上記の数値を規定した。また、短軸径が0.7μm以上の球状化炭化物の面積率は80〜90%とすることが望ましい。
【0009】
高周波焼入れを施した後の軌道溝の表面硬さをHV650以上とした理由は、軌道溝の表面硬さがHV650を下回ると、十分な転がり寿命を確保することが困難となるためである。
また、軟化焼鈍された軌道輪素材の旧オーステナイト結晶粒の粒度番号を6番以上とした理由は、結晶粒度が6番を下回ると、転がり寿命が著しく低下するためである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明に係る車輪支持用転がり軸受装置によれば、高周波焼入れによる不完全焼入れ組織が軌道輪の軌道面表層部に発生することを抑制できるため、軌道輪の転がり寿命を高めることができる。
請求項2記載の発明に係る車輪支持用転がり軸受装置の軌道輪製造方法によれば、高周波焼入れのような数秒程度の短時間焼入れを軟化焼鈍された軌道輪素材に施す場合、マトリックス中への炭化物の固溶が不十分となることがなく、フレーキングの発生原因となる不完全焼入れ組織が軌道輪の軌道面表層部に発生することを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態に係る車輪支持用転がり軸受装置の概略構成を示す断面図であり、同図に示される車輪支持用転がり軸受装置は、車輪と一体に回転する回転側軌道輪1と、この回転側軌道輪1の外周面に形成された内輪軌道溝1aと対向する外輪軌道溝2aを内周面に有する静止側軌道輪2と、これら軌道輪1,2の軌道溝1a,2a間に転動自在に設けられた多数の球状転動体3とを備えている。
【0012】
回転側軌道輪1及び静止側軌道輪2は、炭素含有量が0.45質量%以上0.75質量%以下の鋼板を所定の形状に塑性加工した後、軌道溝1a,2aの溝面に高周波焼入れを施して形成されているが、本実施形態では、軌道輪素材としての鋼板を所定の形状に塑性加工する前に、740〜860℃の温度で0.1時間以上加熱した後、20〜70℃/hrの速度で720〜680℃の温度まで冷却し、次いで720〜680℃の温度で1〜5時間程度保持した後、10〜100℃/hrの速度で620〜680℃の温度まで冷却し、さらに10〜15℃/hrの速度で500〜560℃の温度まで冷却して軟化焼鈍を軌道輪素材に施している。
【0013】
本発明者は、車輪支持用転がり軸受装置の軌道輪素材を塑性加工等の冷間加工で成形する場合の問題点について鋭意研究した。そして、炭素含有量が0.45質量%以上0.75質量%以下の鋼材を軌道輪素材として用い、軌道輪素材を所定の形状に塑性加工する前に、所定の熱処理条件で軟化焼鈍を鋼材に施すことにより、軌道輪の転がり寿命を高められるという知見を以下に詳述する転がり寿命試験と据え込み試験の試験結果から得た。
【0014】
本発明者が実施した転がり寿命試験と据え込み試験の試験結果を表1に示す。
【0015】
【表1】

【0016】
表1において、実施例1〜12は車輪支持用転がり軸受装置の軌道輪素材としてJIS S45C〜S75C(炭素含有量:0.45質量%以上0.75質量%以下)を用い、軌道輪素材を例えば前方押出し工程、段付け工程、側方押出し工程(図2参照)を経て所定の形状に冷間成形する前に、740〜860℃の温度で0.1時間以上加熱した後、20〜70℃/hrの速度で720〜680℃の温度まで冷却し、次いで720〜680℃の温度で1〜5時間程度保持した後、10〜100℃/hrの速度で620〜680℃の温度まで冷却し、さらに10〜15℃/hrの速度で500〜560℃の温度まで冷却して軟化焼鈍を軌道輪素材に施した場合の試験例を示している。
【0017】
一方、比較例1,3,5,7,9,11は車輪支持用転がり軸受装置の軌道輪素材としてJIS S45C〜S75Cを用い、これを熱間鍛造して軌道輪を作製した場合の試験例を示している。また、比較例2,4,6,8,10,12は車輪支持用転がり軸受装置の軌道輪素材としてJIS S45C〜S75Cを用い、これを例えば前方押出し工程、段付け工程、側方押出し工程(図2参照)を経て所定の形状に冷間成形する前に、長軸径と短軸径のアスペクト比が2以下で短軸径0.7μm以上の球状炭化物の平均間隔が15μmを超えるような熱処理条件で軟化焼鈍を軌道輪素材に施した場合の試験例を示している。
【0018】
なお、表1の球状炭化物面積率、球状炭化物平均間隔、表面硬さ、結晶粒度、転がり寿命比、限界据え込み率比は以下の方法で求めた値である。
(1)球状炭化物面積率
軌道輪の軌道面を鏡面研磨した後、ピラクールで腐食させ、軌道面直下0.25mmまでの領域において図3に示すような金属組織を500倍で写真撮影し、得られた写真から軌道輪素材中の金属組織中に存在する全ての炭化物のうち長軸径と短軸径とのアスペクト比が2以下で短軸径が0.7μm以上の球状炭化物を画像解析して球状炭化物の面積率を求めた。
【0019】
(2)球状炭化物平均間隔
軌道輪の軌道面を鏡面研磨した後、ナイタロールで腐食させ、軌道面直下0.25mmまでの領域において図3に示すような金属組織を写真撮影し、得られた写真から軌道輪素材の金属組織中に存在する全ての炭化物のうち長軸径と短軸径とのアスペクト比が2以下で短軸径が0.7μm以上の球状炭化物を画像解析して球状炭化物の平均間隔を求めた。
【0020】
(3)表面硬さ
表1の表面硬さは、冷間成形後に高周波焼入れが施された軌道輪の軌道面硬さをビッカース硬度計で測定した測定値である。
(4)結晶粒度
JIS G0051の鋼のオーステナイト結晶粒度試験方法に基づいて結晶粒度を求めた。
【0021】
(5)転がり寿命比
表1の転がり寿命比は、車輪支持用転がり軸受装置の内輪軌道面にフレーキングが生じるまでの軌道輪の総回転数を転がり寿命として評価し、比較例1,3,5の転がり寿命を1とした相対値である。具体的には、ラジアル荷重:7000N、アキシアル荷重:5000N、回転速度:300min−1の試験条件で車輪支持用転がり軸受装置の回転試験を行い、内輪軌道面にフレーキングが生じるまでの軌道輪の総回転数を計測した。その際、固定側軌道輪の外周部に設けられた懸架装置取付け用フランジ4(図1参照)を固定し、回転側軌道輪の外周面に設けられた車輪取付け用フランジ5(図1参照)に荷重を負荷して回転側軌道輪と固定側軌道輪の振動を測定することによってフレーキングの発生を検知し、内輪軌道面にフレーキングが生じるまでの総回転数により寿命を評価した。
【0022】
(6)限界据え込み率比
表1の限界据え込み率比は、下式から試験片の臨界据え込み率を算出し、比較例12の臨界据え込み率を1とした相対値である。
臨界据え込み率={(HO−HF)/HO]×100
ただし、HO:試験片の初期高さ、Hf:据え込み試験(試験片の端面に潤滑剤を塗布し、2mm/minの加工速度で試験片に荷重を負荷してクラックを試験片に発生させる試験)でクラックの発生が確認された試験片の高さ。
【0023】
図4は上述した方法で求めた旧オーステナイト結晶粒の結晶粒度と転がり寿命比との関係を示す図であり、軟化焼鈍された軌道輪素材の旧オーステナイト結晶粒の結晶粒度が6を超えると、軌道輪の転がり寿命比が急激に高くなることが図4からわかる。
本試験とは別に球状炭化物の短軸径が0.7μm以上の球状炭化物の面積率と限界据え込み率比の関係を調べる目的で、据え込み試験を行った結果を表2及び図5に示す。
【0024】
【表2】

【0025】
図5は上述した方法で求めた球状炭化物の面積率と限界据え込み率比との関係を示す図であり、軟化焼鈍された軌道輪素材の金属組織中に存在する全ての炭化物のうち長軸径と短軸径とのアスペクト比が2以下で短軸径が0.7μm以上の球状炭化物の面積率が高くなると、限界据え込み率比が上昇し、クラックが発生し難くなることが図5から分かる。
【0026】
したがって、実施例1〜12のように、高周波焼入れ前の軌道輪素材の金属組織に存在する全ての炭化物のうち長軸径と短軸径とのアスペクト比が2以下で短軸径が0.7μm以上の球状化炭化物の面積率を70%以上、長軸径と短軸径とのアスペクト比が2以下で短軸径が0.7μm以上の球状化炭化物の平均間隔を15μm以下、軟化焼鈍された軌道輪素材の旧オーステナイト結晶粒の粒度番号を6番以上、高周波焼入れを施した後の軌道輪の軌道面硬さをHV650以上とすることにより、軌道輪の転がり寿命を高めることができる。
【0027】
比較例2,4,6,8,10,12は、平均炭化物間隔が15μmを上回ったり、全炭化物中の面積率が70%を下回ったりしたため、軌道溝の表面硬さが低くなったり、転がり寿命比が小さくなったり、限界据え込み率比が小さくなったり、微細な不完全組織が発生した。
上述したように、炭素含有量が0.45質量%以上0.75質量%以下の鋼材を軌道輪素材として用い、軌道輪素材を所定の形状に塑性加工する前に、740〜860℃の温度で0.1時間以上加熱した後、20〜70℃/hrの速度で720〜680℃の温度まで冷却し、次いで720〜680℃の温度で1〜5時間程度保持した後、10〜100℃/hrの速度で620〜680℃の温度まで冷却し、さらに10〜15℃/hrの速度で500〜560℃の温度まで冷却して軟化焼鈍を軌道輪素材に施すことにより、軟化焼鈍された軌道輪素材の金属組織に存在する全ての炭化物のうち長軸径と短軸径とのアスペクト比が2以下で短軸径が0.7μm以上の球状化炭化物の割合が面積率で70%以上になり、かつ長軸径と短軸径とのアスペクト比が2以下で短軸径が0.7μm以上の球状化炭化物の平均間隔が15μm以下になる。
【0028】
したがって、高周波焼入れのような数秒程度の短時間焼入れを軟化焼鈍後の軌道輪素材に施す場合、マトリックス中への炭化物の固溶が不十分となることがなく、フレーキングの発生原因となる数十μmレベルの不完全焼入れ組織が軌道輪の軌道面表層部に発生することを抑制することができる。
なお、本発明では、炭素含有量が0.45質量%以上0.75質量%以下の軌道輪素材のうち、JISやSAEに規定された機械構造用炭素鋼を用いることがコストや熱処理品質を満足するために好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る車輪支持用転がり軸受装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】車輪支持用転がり軸受装置の軌道輪を冷間加工で成形する場合の一例を示す図である。
【図3】軌道輪素材の金属組織を示す図である。
【図4】軌道輪素材の旧オーステナイト結晶粒の結晶粒度と軌道輪の転がり寿命比との関係を示す図である。
【図5】軌道輪素材の球状炭化物の面積率と限界据え込み率比との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 回転側軌道輪
1a 内輪軌道溝
2 固定側軌道輪
2a 外輪軌道溝
3 転動体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と一体に回転する回転側軌道輪と、該回転側軌道輪の外周面に形成された内輪軌道溝と対向する外輪軌道溝を内周面に有する静止側軌道輪と、これら軌道輪の軌道溝間に設けられた多数の転動体とを備え、前記回転側軌道輪及び前記静止側軌道輪のうち少なくとも一方の軌道輪が鋼材を所定の形状に塑性加工し、塑性加工の後に高周波焼入れを施して形成された車輪支持用転がり軸受装置であって、
前記鋼材の炭素含有量が0.45質量%以上0.75質量%以下、塑性加工前の鋼材の金属組織に存在する全ての炭化物のうち長軸径と短軸径とのアスペクト比が2以下で短軸径が0.7μm以上の球状化炭化物の面積率が70%以上、前記球状化炭化物の平均間隔が15μm以下、高周波焼入れを施した後の軌道溝の旧オーステナイト結晶粒の粒度番号が6番以上、表面硬さがHV650以上であることを特徴とする車輪支持用転がり軸受装置。
【請求項2】
請求項1記載の車輪支持用転がり軸受装置の軌道輪を製造する方法であって、炭素含有量が0.45質量%以上0.75質量%以下の鋼材を軌道輪素材として用い、軌道輪素材を所定の形状に塑性加工する前に、740〜860℃の温度で0.1時間以上加熱した後、20〜70℃/hrの速度で720〜680℃の温度まで冷却し、次いで720〜680℃の温度で1〜5時間程度保持した後、10〜100℃/hrの速度で620〜680℃の温度まで冷却し、さらに10〜15℃/hrの速度で500〜560℃の温度まで冷却する軟化焼鈍を軌道輪素材に施すことを特徴とする車輪支持用転がり軸受装置の軌道輪製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−249044(P2008−249044A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92078(P2007−92078)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】