説明

車輪用軸受装置

【課題】シールの密封性と耐久性を高めて軸受の長寿命化を図った車輪用軸受装置を提供する。
【解決手段】シール9が、外方部材10に内嵌される芯金15とシール部材16からなる環状のシール板13と、これに対向配置され、内輪3に外嵌される円筒状の嵌合部14a、径方向外方に延びる立板部14b、軸方向に延びる円筒部14cからなるスリンガ14とを備え、この円筒部14cがシール板13と僅かな径方向すきまを介して対峙されてラビリンスシール17が構成されると共に、シール部材16が、径方向外方に傾斜して延びて立板部14bに摺接されるサイドリップ16aと、二股状に形成されて嵌合部14aに摺接されるグリースリップ16b、中間リップ16cと、サイドリップ16aよりも外径側に径方向外方に湾曲して延びる補助リップ16dとを備え、この補助リップ16dが円筒部14cの内側面に摺接されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車輪を回転自在に支承する車輪用軸受装置、特に、雨水や泥水等の異物が多量に存在する環境下においても長期間充分な密封性を有するシールが装着された車輪用軸受装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持する車輪用軸受装置は、雨水や泥水等に直接曝される環境下にあるため、この雨水や泥水等が軸受内部に浸入しないように強固な密封性を有するシールが装着されている。近年、こうした厳しい環境下で使用されるこの種の車輪用軸受装置において、さらなる長寿命化が要求されるようになっているが、市場回収品の軸受損傷状況を検証すると、剥離等の本来の軸受寿命よりも、シール不具合による損傷が多くを占めている。したがって、シールの密封性と耐久性を高めて軸受寿命の向上を図った車輪用軸受装置が種々提案されている。
【0003】
これらの車輪用軸受装置は泥水等がかかり易い部位に配置されるため、外方部材と内方部材との間に形成される環状空間の開口部にシールが装着されている。これらのシールの中でも特に密封性を高めたシールとして、シールリップを備えたシール部材が固定側部材となる外方部材に装着され、シールリップが内方部材に装着されたスリンガに摺接されている、所謂パックシールが一般的に使用されている。
【0004】
この種のハイパックシールに関しては従来から種々提案されているが、こうしたシールの代表的な一例を図10に示す。このシールは、相対回転する軸受内輪等からなる内周側部材51と軸受外輪等からなる外周側部材52との間を密封し、内周側部材51および外周側部材52に各々取り付けられて互いに対向する断面L字状で環状のシール板53および密封要素54からなる。
【0005】
シール板53は、内周側部材51の外径面に圧入された円筒部53aと、この円筒部53aから立ち上がった立板部53bと、この立板部53bの先端に内側に傾斜して形成された傾斜板部53cとを有している。このシール板53はスリンガとなるもので、鋼板からプレス加工によって形成されている。
【0006】
密封要素54は、断面L字状の鋼板製の基板55にゴムまたは合成樹脂等の弾性体56を設けたものであって、基板55の円筒部55aを外周側部材52の内径面に圧入することによって取り付けられている。基板55の立板部55bは、先端に内側に傾斜する傾斜片部55cを有している。弾性体56は、基板55の内側を覆って設けられ、第1、第2のサイドリップ56a、56bと、1枚のラジアルリップ56cとを有している。
【0007】
第1のサイドリップ56aは、基板55の立板部55bから斜め外径側に延びて先端がシール板53の傾斜板部53cに摺接し、第2のサイドリップ56bは、立板部55bの先端付近から斜め外径側に延びて先端がシール板53の立板部53bに摺接している。一方、ラジアルリップ56cは、立板部55bの先端からシール板53の立板部53bと反対側の斜め内径側に延び、先端がシール板53の円筒部53aに摺接している。
【0008】
このシール50に飛散した泥水等は、シール板53の内面に摺接する第1のサイドリップ56aの外面に付着するが、シール板53の立板部53bの外径部に傾斜板部53cが設けられているため、泥水等の溜まる空間Sは、極力小さく抑えられる。そのため、泥水等に含まれる泥や砂等の異物で第1のサイドリップ56aのシール機能が低下するのが緩和される。
【0009】
内周側部材51が回転側となる場合は、シールの空間S内にある泥水の水分あるいは異物を遠心力により振り切り、密封力を下げることなく迅速に排除する作用が得られる。これによって、その内方に泥水が浸入した場合、第1のサイドリップ56aよりも内径側でシール板53に摺接する第2のサイドリップ56bにより高い密封性が得られる。また、これよりもさらに内側にラジアルリップ56cがあるため、外部からの泥水等の浸入防止を3重に行うと共に、内部の潤滑剤に対する密封作用が得られる。
【特許文献1】特開平9−292032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
こうした従来のシール50では、シール50の空間S内にある泥水の水分等を遠心力により振り切ると共に、内方に泥水が浸入したとしても、第1および第2のサイドリップ56a、56b、さらにその内側のラジアルリップ56cにより、外部からの泥水等の浸入防止を3重に行い、高い密封作用が得られる。然しながら、シール板53の立板部53bの外径部に傾斜板部53cが設けられ、基板55の円筒部55aとの間にラビリンスシールが形成されているが、泥水等が内方に浸入して溜まり、第1および第2のサイドリップ56a、56bが摩耗する恐れがある。したがって、特に、オフロードカーやピックアップトラック等のように劣悪な環境で運転される車両においては、このような構成のシール50でも泥水性能が不足し、さらなる密封性の向上が要求されている。
【0011】
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたもので、シールの密封性と耐久性を高めて軸受の長寿命化を図った車輪用軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に保持器を介して転動自在に収容された複列の転動体と、前記外方部材と内方部材との間に形成された環状空間の開口部に装着されたシールとを備えた車輪用軸受装置において、前記シールのうち少なくとも一方のシールが、前記外方部材の端部に内嵌される芯金、およびこの芯金に加硫接着により一体に接合され、複数のシールリップを有するシール部材からなる環状のシール板と、このシール板に対向配置され、前記内方部材に外嵌される円筒状の嵌合部と、この嵌合部から径方向外方に延びる立板部、およびこの立板部から軸受内方側に向って軸方向に延びる円筒部からなる断面略コの字状に形成されたスリンガとを備え、前記シール部材が、径方向外方に傾斜して延びて前記スリンガの立板部に摺接されるサイドリップと、このサイドリップよりも外径側に突設され、径方向外方に延びる補助リップとを備え、この補助リップが前記スリンガの円筒部に摺接されている。
【0013】
このように、外方部材と内方部材との間に形成された環状空間の開口部に装着されたシールを備えた車輪用軸受装置において、シールのうち少なくとも一方のシールが、外方部材の端部に内嵌される芯金、およびこの芯金に加硫接着により一体に接合され、複数のシールリップを有するシール部材からなる環状のシール板と、このシール板に対向配置され、内方部材に外嵌される円筒状の嵌合部と、この嵌合部から径方向外方に延びる立板部、およびこの立板部から軸受内方側に向って軸方向に延びる円筒部からなる断面略コの字状に形成されたスリンガとを備え、シール部材が、径方向外方に傾斜して延びて前記スリンガの立板部に摺接されるサイドリップと、このサイドリップよりも外径側に突設された補助リップとを備え、この補助リップが前記スリンガの円筒部に摺接されているので、泥水等がシール内部に浸入しても、補助シールによって遮断され、泥水等の溜まる空間は、従来のシールに比べ極力小さく抑えられる。そのため、泥水等に含まれる泥や砂等の異物でサイドリップが摩耗するのを防止し、長期間に亘ってシールの密封性と耐久性を高めることができ、軸受の長寿命化を図った車輪用軸受装置を提供することができる。
【0014】
好ましくは、請求項2に記載の発明のように、前記スリンガの円筒部が前記シール板と僅かな径方向すきまを介して対峙され、所定の軸方向長さを有するラビリンスシールが構成されていれば、従来のシールのように、ラビリンス長さがスリンガの板厚分に止まらず、円筒部の長さ分だけ幅広い領域に亙って形成することができるので、効果的なラビリンスシールを構成することができ、泥水等がシール内部に浸入するのを抑制することができる。
【0015】
また、請求項3に記載の発明のように、前記補助リップが径方向外方に湾曲されて延び、前記円筒部の内側面に摺接されていれば、適度な緊迫力を付与することができ、長期間に亘って所望の密封性を確保することができる。
【0016】
また、請求項4に記載の発明のように、前記シール部材が、二股状に形成されたグリースリップと中間リップとを有し、これらグリースリップと中間リップが前記スリンガの嵌合部に摺接されていても良い。
【0017】
また、請求項5に記載の発明のように、前記シール部材が、径方向外方に傾斜して延びて前記スリンガの立板部に摺接されるサイドリップをさらにもう一枚備えていれば、強固な密封性を確保することができる。
【0018】
好ましくは、請求項6に記載の発明のように、前記一対のサイドリップのうちどちらか一方のシメシロあるいは傾斜角度が異なっていれば、他方のサイドリップが摩耗してもそれを補うことができ、長期間に亘って所望の密封性を確保することができる。
【0019】
また、請求項7に記載の発明のように、前記グリースリップが、前記スリンガの嵌合部に所定の径方向すきまを介して対峙してラビリンスシールが形成されていれば、サイドリップの摺接面へのグリースの供給が良好になってリップ摺動抵抗が小さくなり、シールの回転トルクを大幅に抑えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る車輪用軸受装置は、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に保持器を介して転動自在に収容された複列の転動体と、前記外方部材と内方部材との間に形成された環状空間の開口部に装着されたシールとを備えた車輪用軸受装置において、前記シールのうち少なくとも一方のシールが、前記外方部材の端部に内嵌される芯金、およびこの芯金に加硫接着により一体に接合され、複数のシールリップを有するシール部材からなる環状のシール板と、このシール板に対向配置され、前記内方部材に外嵌される円筒状の嵌合部と、この嵌合部から径方向外方に延びる立板部、およびこの立板部から軸受内方側に向って軸方向に延びる円筒部からなる断面略コの字状に形成されたスリンガとを備え、前記シール部材が、径方向外方に傾斜して延びて前記スリンガの立板部に摺接されるサイドリップと、このサイドリップよりも外径側に突設され、径方向外方に延びる補助リップとを備え、この補助リップが前記スリンガの円筒部に摺接されているので、従来のシールのように、ラビリンス長さがスリンガの板厚分に止まらず、円筒部の長さ分だけ幅広い領域に亙って形成することができるので、泥水等がシール内部に浸入しても、補助シールによって遮断され、泥水等の溜まる空間は、従来のシールに比べ極力小さく抑えられる。そのため、泥水等に含まれる泥や砂等の異物でサイドリップが摩耗するのを防止し、長期間に亘ってシールの密封性と耐久性を高めることができ、軸受の長寿命化を図った車輪用軸受装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
外周に懸架装置に取り付けられるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に前記複列の外側転走面に対向する一方の内側転走面と、この内側転走面から軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入され、外周に前記複列の外側転走面に対向する他方の内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に保持器を介して転動自在に収容された複列の転動体と、前記外方部材と内方部材との間に形成された環状空間の開口部に装着されたシールとを備えた車輪用軸受装置において、前記シールのうち少なくとも一方のシールが、前記外方部材の端部に内嵌される芯金、およびこの芯金に加硫接着により一体に接合され、複数のシールリップを有するシール部材からなる環状のシール板と、このシール板に対向配置され、前記内輪に外嵌される円筒状の嵌合部と、この嵌合部から径方向外方に延びる立板部、およびこの立板部から軸受内方側に向って軸方向に延びる円筒部からなる断面略コの字状に形成されたスリンガとを備え、このスリンガの円筒部が前記シール板と僅かな径方向すきまを介して対峙され、所定の軸方向長さを有するラビリンスシールが構成されると共に、前記シール部材が、径方向外方に傾斜して延びて前記スリンガの立板部に摺接されるサイドリップと、二股状に形成されて前記スリンガの嵌合部に摺接されるグリースリップと中間リップと、前記サイドリップよりも外径側に突設され、径方向外方に湾曲して延びる補助リップとを備え、この補助リップが前記スリンガの円筒部の内側面に摺接されている。
【実施例1】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基いて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る車輪用軸受装置の第1の実施形態を示す縦断面図、図2は、図1の一方のシール部を示す要部拡大図、図3は、図2のシールの変形例を示す拡大図である。なお、以下の説明では、車両に組み付けた状態で車両の外側寄りとなる側をアウター側(図1の左側)、中央寄り側をインナー側(図1の右側)という。
【0023】
この車輪用軸受装置は駆動輪用で、内方部材1と外方部材10、および両部材1、10間に収容された複列の転動体(ボール)6、6とを備え、第3世代と称される構成をなしている。内方部材1は、ハブ輪2と、このハブ輪2に所定のシメシロを介して圧入された内輪3とからなる。
【0024】
ハブ輪2は、アウター側の端部に車輪(図示せず)を取り付けるための車輪取付フランジ4を一体に有し、外周に一方(アウター側)の内側転走面2aと、この内側転走面2aから軸方向に延びる円筒状の小径段部2bが形成され、内周にはトルク伝達用のセレーション(またはスプライン)2cが形成されている。また、車輪取付フランジ4の周方向等配位置にハブボルト5が植設されている。内輪3は、外周に他方(インナー側)の内側転走面3aが形成され、ハブ輪2の小径段部2bに所定のシメシロを介して圧入固定されている。
【0025】
ハブ輪2はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、内側転走面2aをはじめ、後述するシール8のシールランド部となる車輪取付フランジ4のインナー側の基部4aから小径段部2bに亙って高周波焼入れによって58〜64HRCの範囲に表面が硬化処理されている。一方、内輪3および転動体6はSUJ2等の高炭素クロム鋼で形成され、ズブ焼入れによって芯部まで58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。
【0026】
外方部材10は、外周に懸架装置を構成するナックル(図示せず)に取り付けられるための車体取付フランジ10bを一体に有し、内周に内方部材1の内側転走面2a、3aに対向する複列の外側転走面10a、10aが一体に形成されている。これら両転走面10a、2aおよび10a、3a間には保持器7を介して複列の転動体6、6が転動自在に収容されている。この外方部材10はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、少なくとも複列の外側転走面10a、10aが、高周波焼入れによって58〜64HRCの範囲に表面が硬化処理されている。
【0027】
また、外方部材10と内方部材1との間に形成される環状空間の開口部にはシール8、9が装着され、軸受内部に封入された潤滑グリースの外部への漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に浸入するのを防止している。なお、ここでは、転動体6にボールを使用した複列アンギュラ玉軸受を例示したが、本発明はこれに限らず、転動体6に円錐ころを使用した複列円錐ころ軸受であっても良い。
【0028】
シール8、9のうちアウター側のシール8は、芯金11と、この芯金11に加硫接着により一体に接合されたシール部材12とからなる一体型のシールで構成されている。芯金11は、冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)をプレス加工にて形成されている。
【0029】
一方、シール部材12は、ニトリルゴム等の合成ゴムからなり、加硫接着によって芯金11に一体に接合されている。このシール部材12は、径方向外方に傾斜して形成されたサイドリップ12aと、二股状に形成された一対のラジアルリップ12b、12cとを有している。車輪取付フランジ4の基部4aは断面が円弧状の曲面に形成され、この基部4aにサイドリップ12aが所定の軸方向シメシロをもって摺接されると共に、ラジアルリップ12b、12cが所定の径方向シメシロをもって摺接されている。
【0030】
また、インナー側のシール9は、図2に拡大して示すように、環状のシール板13とスリンガ14とからなる、所謂パックシールで構成されている。シール板13は外方部材10に装着された芯金15と、この芯金15に加硫接着により一体に接合されたシール部材16とからなる。芯金15は、冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)からプレス加工にて断面略L字状に形成され、外方部材10の端部内周に圧入される円筒状の嵌合部15aと、この嵌合部15aから径方向内方に延びる内径部15bとを有している。シール部材16は、ニトリルゴム等の合成ゴムからなり、径方向外方に傾斜して延びるサイドリップ16aと、二股状に形成されたグリースリップ16bと中間リップ16c、さらに、サイドリップ16aよりも外径側に突設され、径方向外方に湾曲されて延びる補助リップ16dを有している。なお、シール部材16の材質としては、ニトリルゴム以外にもフッ素ゴムやアクリルゴムを例示することができる。
【0031】
一方、スリンガ14は、内輪3の外径に圧入された円筒状の嵌合部14aと、この嵌合部14aから径方向外方に延びる立板部14b、およびこの立板部14bから軸受内方側に向って軸方向に延びる円筒部14cを備え、断面略コの字状に形成されている。そして、シール部材16のサイドリップ16aが立板部14bに摺接されると共に、グリースリップ16bと中間リップ16cが嵌合部14aに摺接され、さらに、補助リップ16dが円筒部14cの内側面に摺接されている。この補助リップ16dにより、適度な緊迫力を付与することができる。また、スリンガ14における円筒部14は、シール板13と僅かな径方向すきまを介して対峙され、ラビリンスシール17が構成されている。
【0032】
スリンガ14は、フェライト系のステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS430系等)やオーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系等)、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)からプレス加工にて断面が略L字状に形成されている。これにより、スリンガ14が雨水や泥水等に曝されても、また、内輪3との嵌合部に雨水や泥水等が浸入してもスリンガ14が発錆するのを防止することができる。
【0033】
本実施形態では、スリンガ14の円筒部14がシール板13との間でラビリンスシール17が構成され、従来のシールのように、ラビリンス長さLがスリンガの板厚分に止まらず、円筒部14の長さ分だけ幅広い領域に亙って形成することができるので、効果的なラビリンスシールを構成することができ、泥水等がシール内部に浸入するのを抑制することができる。また、泥水等がこのラビリンスシール17を通過してシール内部に浸入しても、補助シール16dによって遮断され、泥水等の溜まる空間Sは、従来のシールに比べ極力小さく抑えられる。そのため、泥水等に含まれる泥や砂等の異物でサイドリップ16aが摩耗するのを防止し、長期間に亘ってシール9の密封性と耐久性を高めることができ、軸受の長寿命化を図った車輪用軸受装置を提供することができる。
【0034】
図3は、前述したシール9の変形例であるが、前述した実施形態とシール部材の構成が一部異なるだけで、その他同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0035】
このシール18は、環状のシール板19とスリンガ14とからなる。シール板19は、芯金15と、この芯金15に加硫接着により一体に接合されたシール部材20とからなる。このシール部材20はニトリルゴム等の合成ゴムからなり、径方向外方に傾斜して延びるサイドリップ16aと、二股状に形成されたグリースリップ20aと中間リップ16c、さらに、サイドリップ16aよりも外径側に突設され、径方向外方に延びる補助リップ16dを有している。
【0036】
シール部材16のサイドリップ16aは立板部14bに摺接されると共に、中間リップ16cが嵌合部14aに摺接され、さらに、補助リップ16dが円筒部14cに摺接されている。ここで、グリースリップ20aは、スリンガ14の嵌合部14aに僅かな径方向すきまδを介して対峙され、ラビリンス構造が形成されている。これにより、シール18の回転トルクが小さくなると共に、中間リップ16cやサイドリップ16aとスリンガ14との摺接面にグリースが行き届き易くなり、摺接面における潤滑性が向上してリップ摺動抵抗が小さくなり、スリンガ14と各リップ16a、16cとの低摩擦により摩耗が抑制される。
【実施例2】
【0037】
図4は、本発明に係る車輪用軸受装置の第2の実施形態を示す縦断面図、図5(a)は、図4のインナー側のシール単体を示す拡大図、(b)〜(d)は、(a)のシールの変形例を示す拡大図である。なお、前述した実施形態と同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0038】
この車輪用軸受装置は第1世代と称され、外方部材21と、一対の内輪3、3、およびこれら外方部材21と内輪3との間に保持器7を介して転動自在に収容された複列の転動体6、6とを備え、背面合せタイプの複列アンギュラ玉軸受が構成されている。
【0039】
外方部材21はSUJ2等の高炭素クロム鋼で形成され、ズブ焼入れによって芯部まで58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。そして、この外方部材21と内輪3との間に形成される環状空間の開口部にシール22、23が装着され、軸受内部に封入された潤滑グリースの外部への漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に浸入するのを防止している。
【0040】
アウター側のシール22は、芯金24と、この芯金24に加硫接着により一体に接合されたシール部材25とからなる一体型のシールで構成されている。芯金24は、冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)をプレス加工にて形成されている。シール部材25は、ニトリルゴム等の合成ゴムからなり、加硫接着によって芯金24に一体に接合されている。このシール部材25は、二股状に形成された一対のラジアルリップ25a、25bを有し、所定の径方向シメシロをもって内輪3の外径面に摺接されている。
【0041】
また、インナー側のシール23は、図5(a)に拡大して示すように、環状のシール板26とスリンガ14とからなる。シール板26は外方部材21に装着された芯金15と、この芯金15に加硫接着により一体に接合されたシール部材27とからなる。シール部材27は、合成ゴム等の弾性部材からなり、径方向外方に傾斜して延びるサイドリップ27aとグリースリップ16b、およびサイドリップ27aよりも外径側に突設され、径方向外方に延びる補助リップ16dを有している。
【0042】
本実施形態では、前述した実施形態(図2)に比べ、中間リップが省略されているので、シールリップの設計自由度が拡大すると共に、サイドリップ16aとスリンガ14との摺接面にグリースが行き届き易くなり、摺接面における潤滑性が向上してリップ摺動抵抗が小さくなり、シール23の回転トルクが一層小さくなる。
【0043】
図5(b)〜(d)は、(a)の変形例を示す。(b)に示すシール28は、基本的には(a)のシール23におけるグリースリップ16bが非接触タイプで構成されていることだけが異なっている。すなわち、シール28のシール部材29は、径方向外方に傾斜して延びる一対のサイドリップ27aとグリースリップ29a、およびサイドリップ27aよりも外径側に突設され、径方向外方に延びる補助リップ16dを有し、グリースリップ29aがスリンガ14の嵌合部14aに所定の径方向すきまδを介して対峙され、ラビリンスシールが形成されている。これにより、サイドリップ27aの摺接面における潤滑性が向上してリップ摺動抵抗が小さくなり、回転トルクが一層小さくなる。
【0044】
(c)に示すシール30は、基本的には(a)に示すシール23とサイドリップ27aが一枚追加されていることだけが異なっている。すなわち、シール部材31は、径方向外方に傾斜して延びる一対のサイドリップ27a、31aとグリースリップ16b、および補助リップ16dを有している。これにより、前述したシールより強固な密封性を確保することができる。なお、一対のサイドリップ27a、31のうちどちらか一方のシメシロあるいは傾斜角度を変更することにより、他方のサイドリップが摩耗してもそれを補うことができ、長期間に亘って所望の密封性を確保することができる。
【0045】
また、(d)に示すシール32は、シール部材33が径方向外方に傾斜して延びる一対のサイドリップ27a、31aとグリースリップ29a、およびサイドリップ27aよりも外径側に突設された補助リップ16dを有し、グリースリップ29aがスリンガ14の嵌合部14aに所定の径方向すきまδを介して対峙され、ラビリンスシールが形成されている。これにより、所望の密封性を確保することができると共に、サイドリップ27a、31aの摺接面へのグリースの供給が良好になってリップ摺動抵抗が一層小さくなり、シール32の回転トルクを大幅に抑えることができる。
これにより、
【実施例3】
【0046】
図6は、本発明に係る車輪用軸受装置の第3の実施形態を示す縦断面図、図7は、図6のインナー側のシール部を示す要部拡大図である。なお、前述した実施形態と同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0047】
この実施形態は従動輪用の第2世代と称され、外方部材34と、図示しないアクスルに圧入固定される一対の内輪3、3、および外方部材34と内輪3間に保持器7を介して回転自在に収容された複列の転動体6、6を備え、背面合せタイプの複列アンギュラ玉軸受が構成されている。
【0048】
外方部材34は、外周のアウター側の端部に車輪取付フランジ4を一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成されている。この外方部材34はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成されている。そして、この外方部材34と一対の内輪3、3との間に形成される環状空間の開口部にシールド35とシール36が装着され、軸受内部に封入された潤滑グリースの外部への漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に浸入するのを防止している。なお、内輪3との間にラビリンスシールが構成されたシールド35は、主として軸受内部に封入された潤滑グリースが外部へ漏洩するのを防止している。そして、図示はしないが、外方部材34のアウター側の端部にはエンドキャップが装着され、外部から軸受内部に雨水等の異物が侵入するのを防止している。
【0049】
インナー側のシール36は、図7に拡大して示すように、環状のシール板37とスリンガ14とからなる。シール板37は外方部材34に装着された芯金15と、この芯金15に加硫接着により一体に接合されたシール部材38とからなる。このシール部材38は、ニトリルゴム等の合成ゴムからなり、径方向外方に傾斜して延びる一対のサイドリップ27a、31aと、二股状に形成されたグリースリップ16bと中間リップ16c、さらに、サイドリップ16aよりも外径側に突設され、径方向外方に延びる補助リップ16dを有している。
【0050】
そして、シール部材38の一対のサイドリップ27a、31aが立板部14bに摺接されると共に、グリースリップ16bと中間リップ16cが嵌合部14aに摺接され、さらに、補助リップ16dが円筒部14cに摺接されている。
【0051】
本実施形態では、スリンガ14の円筒部14cとシール板37との間にラビリンス長さLの長いラビリンスシール17が形成されると共に、各リップ16d、27a、31a、16c、16bが4重にスリンガ14に摺接され、外部から泥水等が軸受内部に浸入するのを確実に防止することができるので、強固な密封性を確保することができる。
【実施例4】
【0052】
図8は、本発明に係る車輪用軸受装置の第4の実施形態を示す縦断面図、図9は、図8のインナー側のシール部を示す要部拡大図である。なお、前述した実施形態と同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0053】
この実施形態は第4世代と称され、外方部材10と内方部材39、および複列の転動体6、6を備え、背面合せタイプの複列アンギュラ玉軸受が構成されている。内方部材39は、ハブ輪40と、このハブ輪40に一体に塑性結合された等速自在継手41の外側継手部材42とからなる。
【0054】
ハブ輪40は、アウター側の端部に車輪取付フランジ4を一体に有し、外周に内側転走面2aと、この内側転走面2aから軸方向に延びる円筒状の小径段部40aが形成され、内周に凹凸部43が形成されている。この凹凸部43はアヤメローレット状に形成され、旋削等により独立して形成された複数の環状溝と、ブローチ加工等により形成された複数の軸方向溝とを略直交させて構成した交叉溝、あるいは、互いに傾斜した螺旋溝で構成した交叉溝からなる。また、凹凸部43は、後述する良好な食い込み性を確保するためにその凸部の先端部が三角形状等の尖塔形状に形成されると共に、高周波焼入れによって所定の表面硬さに硬化処理されている。なお、ハブ輪40はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、内側転走面2aをはじめ、基部4aから小径段部40aに亙って高周波焼入れによって58〜64HRCの範囲に表面が硬化処理されている。
【0055】
一方、等速自在継手41は、外側継手部材42に内挿された継手内輪41aとケージ41bおよびトルク伝達ボール41cとを備えている。外側継手部材42は、カップ状のマウス部44と、このマウス部44の底部となる肩部45と、この肩部45から軸方向に延びる中空状の軸部46とが一体に形成されている。肩部45の外周にはインナー側の内側転走面45aが直接形成されている。また、軸部46には、ハブ輪40の小径段部40aに円筒嵌合されるインロウ部46aと、このインロウ部46aの端部に嵌合部46bが形成されている。
【0056】
外側継手部材42はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、肩部45から軸部46の外周面に亙って高周波焼入れによって58〜64HRCの範囲に表面が硬化処理されている。なお、嵌合部46bは鍛造加工後の表面硬さのままとされている。
【0057】
そして、外側継手部材42の肩部45がハブ輪40の小径段部40aに衝合するまで軸部46が内嵌され、嵌合部46bの内径にマンドレル等の拡径治具をアウター側に押し込んで嵌合部46bを拡径することにより、嵌合部46bを塑性変形させてハブ輪40の凹凸部43に食い込ませて加締め、ハブ輪40と外側継手部材42が塑性結合されて一体化されている。これにより、結合部の緩みを防止し、長期間に亙って初期に設定された軸受予圧を維持することができる。なお、ハブ輪40のアウター側の端部と外側継手部材42の肩部45にはエンドキャップ47a、47bが装着され、外部から継手内部に雨水やダスト等の異物が侵入するのを防止すると共に、継手内部に封入された潤滑グリースが外部へ漏洩するのを防止している。そして、外方部材10と内方部材39との間に形成される環状空間の開口部にシール8、48が装着され、軸受内部に封入された潤滑グリースの外部への漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に浸入するのを防止している。
【0058】
インナー側のシール48は、環状のシール板49とスリンガ14とからなる。シール板49は、芯金15と、この芯金15に加硫接着により一体に接合されたシール部材37’とからなる。このシール部材37’は、径方向外方に傾斜して延びる一対のサイドリップ27a、31aと、二股状に形成されたグリースリップ20aと中間リップ16c、さらに、サイドリップ16aよりも外径側に突設され、径方向外方に延びる補助リップ16dを有している。
【0059】
シール部材37’の一対のサイドリップ27a、31aは立板部14bに摺接されると共に、中間リップ16cが嵌合部14aに摺接され、さらに、補助リップ16dが円筒部14cに摺接されている。ここで、グリースリップ20aは、スリンガ14の嵌合部14aに僅かな径方向すきまδを介して対峙され、ラビリンス構造が形成されている。これにより、シール48の強固な密封性を確保しつつ回転トルクが小さくなると共に、中間リップ16cや一対のサイドリップ31a、27aとスリンガ14との摺接面にグリースが行き届き易くなり、摺接面における潤滑性が向上してリップ摺動抵抗が小さくなり、スリンガ14と各リップ27a、31a、16cとの低摩擦により摩耗が抑制される。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る車輪用軸受装置は、環状空間の開口部にシールが装着された第1世代乃至第4世代構造の車輪用軸受装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係る車輪用軸受装置の第1の実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1のインナー側のシール部を示す要部拡大図である。
【図3】図2のシールの変形例を示す拡大図である。
【図4】本発明に係る車輪用軸受装置の第2の実施形態を示す縦断面図である。
【図5】(a)は、図4のインナー側のシール部を示す要部拡大図である。 (b)〜(d)は、(a)のシールの変形例を示す拡大図である。
【図6】本発明に係る車輪用軸受装置の第3の実施形態を示す縦断面図である。
【図7】図6のインナー側のシール部を示す要部拡大図である。
【図8】本発明に係る車輪用軸受装置の第4の実施形態を示す縦断面図である。
【図9】図8のインナー側のシール部を示す要部拡大図である。
【図10】従来の車輪用軸受装置のシール部を示す要部拡大図である。
【符号の説明】
【0063】
1、39・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・内方部材
2、40・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハブ輪
2a、3a、45a・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・内側転走面
2b、40a・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・小径段部
2c・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・セレーション
3・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・内輪
4・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・車輪取付フランジ
4a・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・基部
5・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハブボルト
6・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・転動体
7・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・保持器
8、22・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アウター側のシール
9、18、23、28、30、32、36、48・・・・・・・・・インナー側のシール
10、21、34・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・外方部材
10a・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・外側転走面
10b・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・車体取付フランジ
11、15、24・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・芯金
12、16、20、25、27、29、31、33、37、37’、38・シール部材
12a、16a、27a、31a・・・・・・・・・・・・・・・・・サイドリップ
12b、12c、25a、25b・・・・・・・・・・・・・・・・・ラジアルリップ
13、19、26、37、49・・・・・・・・・・・・・・・・・・シール板
14・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・スリンガ
14a、15a、46b・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・嵌合部
14b・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・立板部
14c・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・円筒部
15b・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・内径部
16b、20a、29a・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・グリースリップ
16c・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・中間リップ
16d・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・補助リップ
17・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ラビリンスシール
35・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・シールド
41・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・等速自在継手
41a・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・継手内輪
41b・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ケージ
41c・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・トルク伝達ボール
42・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・外側継手部材
43・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・凹凸部
44・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・マウス部
45・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・肩部
46・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・軸部
46a・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・インロウ部
47a、47b・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・エンドキャップ
50・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・シール
51・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・内周側部材
52・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・外周側部材
53・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・シール板
53a、55a・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・円筒部
53b、55b・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・立板部
53c・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・傾斜板部
54・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・密封要素
55・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・基板
55c・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・傾斜片部
56・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・弾性体
56a・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・第1のサイドリップ
56b・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・第2のサイドリップ
56c・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ラジアルリップ
L・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ラビリンス長さ
S・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・空間
δ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・径方向すきま

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、
外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、
この内方部材と前記外方部材の両転走面間に保持器を介して転動自在に収容された複列の転動体と、
前記外方部材と内方部材との間に形成された環状空間の開口部に装着されたシールとを備えた車輪用軸受装置において、
前記シールのうち少なくとも一方のシールが、前記外方部材の端部に内嵌される芯金、およびこの芯金に加硫接着により一体に接合され、複数のシールリップを有するシール部材からなる環状のシール板と、
このシール板に対向配置され、前記内方部材に外嵌される円筒状の嵌合部と、この嵌合部から径方向外方に延びる立板部、およびこの立板部から軸受内方側に向って軸方向に延びる円筒部からなる断面略コの字状に形成されたスリンガとを備え、
前記シール部材が、径方向外方に傾斜して延びて前記スリンガの立板部に摺接されるサイドリップと、このサイドリップよりも外径側に突設され、径方向外方に延びる補助リップとを備え、この補助リップが前記スリンガの円筒部に摺接されていることを特徴とする車輪用軸受装置。
【請求項2】
前記スリンガの円筒部が前記シール板と僅かな径方向すきまを介して対峙され、所定の軸方向長さを有するラビリンスシールが構成されている請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【請求項3】
前記補助リップが径方向外方に湾曲されて延び、前記円筒部の内側面に摺接されている請求項1または2に記載の車輪用軸受装置。
【請求項4】
前記シール部材が、二股状に形成されたグリースリップと中間リップとを有し、これらグリースリップと中間リップが前記スリンガの嵌合部に摺接されている請求項1乃至3いずれかに記載の車輪用軸受装置。
【請求項5】
前記シール部材が、径方向外方に傾斜して延びて前記スリンガの立板部に摺接されるサイドリップをさらにもう一枚備えている請求項1乃至4いずれかに記載の車輪用軸受装置。
【請求項6】
前記一対のサイドリップのうちどちらか一方のシメシロあるいは傾斜角度が異なっている請求項5に記載の車輪用軸受装置。
【請求項7】
前記グリースリップが、前記スリンガの嵌合部に所定の径方向すきまを介して対峙してラビリンスシールが形成されている請求項1乃至6いずれかに記載の車輪用軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−197884(P2009−197884A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39706(P2008−39706)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】