説明

車輪駆動装置

【課題】車輪駆動装置において、モータに接続される複数の配線を適正に配索することでこの配線と周辺部材との干渉を防止して耐久性の向上を図る。
【解決手段】車体側に支持されたナックルアーム11に車輪26を回転自在に支持し、ホイール24内にこの車輪を駆動回転するモータ19を配置して構成し、車体側のECUからモータ19に接続される複数の配線31,32,33,34を、ナックルアーム11における車両前方側の壁面11a及び後方側の壁面11bに、その長手方向に沿って配索する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気モータにより駆動輪を駆動可能な車両の車輪駆動装置に関し、特に、インホイールモータを有する車輪駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車、ハイブリッド自動車及び燃料電池自動車などのように、車両推進用の駆動源として交流式モータを採用し、この交流式モータを駆動するモータ駆動装置を搭載する自動車が登場している。このような自動車では、左右の駆動輪または左右及び前後の4つの駆動輪に駆動用のモータをそれぞれ設ける、所謂、インホイールモータを搭載することが検討されている。
【0003】
このインホイールモータを有する車輪駆動装置では、車輪のホイールが懸架装置により回転自在に支持され、この懸架装置に支持されてホイール内に配置されたモータが、このホイールを駆動回転可能に連結されており、車体内の設けられた制御装置から駆動用配線や制御用配線がこのモータまで延出して接続されている。この制御装置とモータとを接続する複数の配線は、懸架装置の周辺に配索されることから、車輪やサスペンションなどとの接触を防止することが必要である。また、車輪が操舵可能である場合には、複数の配線は、操舵された車輪に追従しなければならず、耐久性を確保する必要がある。
【0004】
従来のインホイールモータを有する車輪駆動装置における配送装置としては、下記特許文献1に記載されたものがある。
【0005】
この特許文献1に記載された配線装置は、ホイール内に少なくとも一部が配置されるインホイールモータへ車両本体側から電気信号を供給するものであって、インホイールモータに設けられた配線ボックスと車体側の機器とを複数の配線により接続し、この複数の配線を配線クランプによりアッパアームに保持し、このクランプをキングピンの軸を中心として回転可能に設けている。従って、キングピン付近で複数の配線を保持することで、ハンドルの回転に伴って車輪の切れ角が変化しても、配線ボックスへの接続部分に加わる配線への無理な張力を軽減させることができる。
【0006】
【特許文献1】特開2005−271909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の配線装置にあっては、一端部がインホイールモータの配線ボックスに接続された複数の配線の他端部側を、上方に延出してから屈曲し、アッパアームに配線クランプを用いて保持している。この場合、複数の配線を、ナックルに対して車両前方側に配索し、一つの配線クランプにより全ての配線をアッパアームに保持している。そのため、複数の配線が車両前方側及び上方側へ大きく突出してしまうと共に、この複数の配線を保持する配線クランプが大型化して、車両上方側へ大きく突出してしまう。すると、車輪が操舵されたときに、複数の配線が車輪やサスペンションのコイルバネなどと干渉するおそれがある。また、車輪が上下に振動したときには、複数の配線や配線クランプがホイールハウスと干渉するおそれがある。配線や配線クランプが車輪、サスペンションのコイルバネ、ホイールハウスなどと干渉すると、この配線や配線クランプが損傷してしまうことがある。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためのものであって、モータに接続される複数の配線を適正に配索することでこの配線と周辺部材との干渉を防止して耐久性の向上を図った車輪駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の車輪駆動装置は、車体側に支持されたナックルアームに車輪が回転自在に支持され、ホイール内に前記車輪を駆動回転するモータが配置される車輪駆動装置において、前記車体側から前記モータに接続される複数の配線が、前記ナックルアームにおける車両前方側及び後方側に沿って配索されることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の車輪駆動装置では、前記複数の配線は、前記ナックルアームの上部及び下部にてクランプにより固定されることを特徴としている。
【0011】
本発明の車輪駆動装置では、前記ナックルアームに沿って配索される前記複数の配線は、一端部側がまとめられて前記モータにおける車両前方側または後方側に設けられるモータ端子に接続されることを特徴としている。
【0012】
本発明の車輪駆動装置では、前記ナックルアームに沿って配索される前記複数の配線は、他端部側がホイールハウスに沿って配索された後、前記車体の内部に延出されることを特徴としている。
【0013】
本発明の車輪駆動装置では、前記ナックルアームにおける車両前方側に沿って配索される前記配線は、他端部側がホイールハウスに沿って車両前方側に配索されて前記車体の内部に延出され、前記ナックルアームにおける車両後方側に沿って配索される配線は、他端部側がホイールハウスに沿って車両後方側に配索されて前記車体の内部に延出され、前記全ての配線がまとめられて制御装置に接続されることを特徴としている。
【0014】
本発明の車輪駆動装置では、前記複数の配線は、モータ駆動用信号を送信する第1配線と、センサ用信号を送信する第2配線とを有し、前記ナックルアームにおける車両前方側に前記第1配線または前記第2配線のいずれか一方の配線が配索され、前記ナックルアームにおける車両後方側に前記他方の配線が配索されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車輪駆動装置によれば、車体側に支持されたナックルアームに車輪を回転自在に支持し、ホイール内に車輪を駆動回転するモータを配置して構成し、車体側からモータに接続される複数の配線をナックルアームにおける車両前方側及び後方側に沿って配索するので、配線における車両前方側及び後方側への突出量を低減し、複数の配線を適正に配索することでこの配線と周辺部材との干渉を防止して耐久性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明に係る車輪駆動装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の実施例1に係る車輪駆動装置を表す車両前方からの正面図、図2は、実施例1の車輪駆動装置を表す車両後方からの後面図、図3は、実施例1の車輪駆動装置を表す車両側方からの側面図、図4は、実施例1の車輪駆動装置における配線支持構造を表すナックルアームの断面図、図5は、実施例1の車輪駆動装置を概略構成図である。
【0018】
実施例1の車輪駆動装置は、インホイールモータが適用された車輪駆動装置であって、図1乃至図5に示すように、ナックルアーム11は、上端部が車体側に支持されたアッパアーム12に連結される一方、下端部が車体側に支持されたロアアーム13にボールジョイント14を介して連結されている。そして、アッパアーム12とロアアーム13との間には、ショックアブソーバ15及びコイルスプリング16が介装されている。また、ナックルアーム11の下端部には、タイロッド17が連結されている。
【0019】
このナックルアーム11には、ハウジング18が固定されており、このハウジング18内にモータ19及び減速機20が収容されている。即ち、モータ19は、ハウジング18に固定されてリング形状をなすステータコアと、このステータコアの内側に所定の隙間をもって回転自在に支持されたロータと、このロータに固結された駆動軸21とから構成されている。一方、減速機20は、例えば、遊星歯車機構からなる減速機であって、モータ19の駆動軸21の回転を減速して出力軸22に伝達するものである。ここで、このハウジング18にモータ19及び減速機20が収容されることでインホイールモータ23が構成される。
【0020】
一方、ホイール24は、円筒形状をなし、外周側にタイヤ25が装着されて車輪26をなしており、この車輪26がナックルアーム11に回転自在に支持され、減速機20の出力軸22が連結されている。また、この出力軸22には、ブレーキディスク27が連結されており、このブレーキディスク27は、車体側に装着されたブレーキキャリパ28により係止可能であり、このブレーキキャリパ28のホイールシリンダ29にブレーキホース30が連結されている。
【0021】
そして、車両には、図示しない電子制御ユニット(ECU)が搭載されており、このECUは、ドライバが踏み込み操作するアクセルペダルのペダルストロークやペダル踏力に応じてインホイールモータ23を駆動制御可能となっている。本実施例では、車体側に設けられたECUからインホイールモータ23(モータ19)に接続される複数の配線31,32,33,34が、ナックルアーム11における車両前方側及び後方側に沿って配索されている。
【0022】
即ち、複数(本実施例では、4本)の配線31,32,33,34は、ECUのインバータユニットからインホイールモータ23に対して、モータ駆動用信号であるU相、V相、W相の三相交流信号を送信するモータ駆動用配線(第1配線)31,32,33と、モータ19の内部に設けられてロータポジションを検出するレゾロバやロータ温度を検出するサーミスタからのセンサ用信号をECUに送信するセンサ用配線(第2配線)34とから構成されている。一方、インホイールモータ23は、車両前方側に配線31,32,33,34を接続するための複数のモータ端子が格納された端子ボックス35が設けられている。
【0023】
このモータ駆動用配線31,32は、ナックルアーム11における車両前方側の壁面11aにその長手方向(上下方向)に沿って付設されている。一方、モータ駆動用配線33とセンサ用配線34は、ナックルアーム11における車両後方側の壁面11bにその長手方向(上下方向)に沿って付設されている。そして、このナックルアーム11の各壁面11a,11bに沿って配索される各配線31,32,33,34は、一端部側が車両前方側でまとめられ、インホイールモータ23の端子ボックス35に接続されている。また、各配線31,32,33,34は、他端部側が車体側に延設され、ECUに接続されている。
【0024】
また、ナックルアーム11の一方の壁面11aに沿って配索される各配線31,32は、このナックルアーム11の上部及び下部にてクランプ36a,37aにより保持され、固定ねじ38a,39aにより固定されている。また、ナックルアーム11の他方の壁面11bに沿って配索される各配線33,34は、このナックルアーム11の上部及び下部にてクランプ36b,37bにより保持され、固定ねじ38b,39bにより固定されている。この場合、クランプ36a,37aとクランプ36b,37bは、ナックルアーム11の長手方向におけるほぼ同じ位置に固定されている。なお、配線31,32を保持するクランプ36a,37aと、各配線33,34を保持するクランプ36b,37bを別々に設けたが、一体のクランプとしてもよい。
【0025】
従って、ドライバがアクセルペダルを踏み込むと、ECUは、アクセル開度センサが検出したアクセル開度に基づいてドライバの要求出力を推定し、この要求出力に基づいてインホイールモータ23を構成するモータ19に供給するモータ電流値を設定する。そして、ECUは、設定されたモータ電流値に基づいて、モータ駆動用配線31,32,33によりモータ19にU相、V相、W相の三相交流信号を送信し、このモータ19を駆動制御する。即ち、モータ19に所定の三相交流信号を通電すると、ステータコアに対してロータと共に駆動軸21が回転し、この駆動軸21の回転が減速機20により減速され、出力軸22が回転し、この出力軸22に連結されるホイール24が回転し、車輪26を回転駆動することができる。このとき、レゾロバがモータ19のロータポジションを検出すると共に、サーミスタがロータ温度を検出しており、センサ用配線34によりECUに送信している。
【0026】
また、ドライバがブレーキペダルを踏み込むと、ECUは、ペダルストロークセンサが検出したブレーキストロークまたはペダル踏力に基づいてドライバの要求制動力を推定し、この要求制動力に基づいてブレーキ装置による制動油圧を設定し、マスタシリンダ圧を設定する。そして、ブレーキ装置は、ホイールシリンダ29に設定されたマスタシリンダ圧を供給すると、ホイールシリンダ29によりブレーキキャリパ28が作動し、ブレーキディスク27を係止し、このブレーキディスク27に連結されるホイール24に制動力を付与し、車輪26の回転を停止することができる。
【0027】
この場合、ECUからインホイールモータ23(モータ19)に接続される複数の配線31,32,33,34が、ナックルアーム11における車両前方側の壁面11a及び後方側の壁面11bにその長手方向に沿って付設され、クランプ36a,37a,36b,37bにより保持されている。そのため、複数の配線31,32,33,34が車両前方側や後方側、または上方側へ大きく突出することはなく、この複数の配線31,32,33,34を保持する各クランプ36a,37a,36b,37bが大型化することなく、車両前方側や後方側へ大きく突出することはない。
【0028】
従って、車輪26が操舵されたときに、複数の配線31,32,33,34がこの車輪26やショックアブソーバ15及びコイルスプリング16などに干渉するおそれがない。また、車輪26が上下に振動したときに、複数の配線31,32,33,34やクランプ36a,37a,36b,37bがホイールハウスに干渉するおそれもない。そのため、配線31,32,33,34やクランプ36a,37a,36b,37bが車輪26、ショックアブソーバ15、コイルスプリング16、ホイールハウスなどに干渉するおそれがないことから、この配線31,32,33,34やクランプ36a,37a,36b,37bの損傷が防止される。
【0029】
このように実施例1の車輪駆動装置にあっては、車体側に支持されたナックルアーム11に車輪26を回転自在に支持し、ホイール24内にこの車輪を駆動回転するモータ19を配置して構成し、車体側のECUからモータ19に接続される複数の配線31,32,33,34を、ナックルアーム11における車両前方側の壁面11a及び後方側の壁面11bに、その長手方向に沿って配索している。
【0030】
従って、複数の配線31,32,33,34をナックルアーム11の前後壁面11a,11bに分配して配索しており、配線31,32,33,34における車両前方側、車両後方側、車両上方側への突出量を低減することができ、複数の配線31,32,33,34を適正に配索することで、この配線31,32,33,34と周辺部材との干渉を防止することができ、配線31,32,33,34の耐久性を向上することができる。
【0031】
また、本実施例の車輪駆動装置では、複数の配線31,32,33,34を、ナックルアーム11の上部及び下部にて、クランプ36a,37a,36b,37bにより固定している。従って、ナックルアーム11の一方の壁面11aに付設された配線31,32をクランプ36a,37aにより保持し、ナックルアーム11の他方の壁面11bに付設された配線33,34クランプ36b,37bにより保持することから、このクランプ36a,37a,36b,37bの大型化を抑制することができ、クランプ36a,37a,36b,37bにおける車両前方側や車両後方側への突出量を低減することができ、このクランプ36a,37a,36b,37bと周辺部材との干渉を防止することができる。
【0032】
また、本実施例の車輪駆動装置では、ナックルアーム11に沿って配索される複数の配線31,32,33,34は、一端部側が車両前方側でまとめられ、インホイールモータ23の端子ボックス35に接続されている。従って、複数の配線31,32,33,34を一箇所に束ねて端子ボックス35に接続することとなり、配線31,32,33,34を適正に、且つ、効率的に配索することができる。
【0033】
また、本実施例では、複数の配線31,32,33,34をナックルアーム11に沿って付設し、クランプ36a,37a,36b,37bにより固定し、一端部側を端子ボックス35に接続している、この場合、ナックルアーム11は、キングピン軸に近似しており、インホイールモータ23(モータ19)はナックルアーム11に一体に連結されていることから、車輪26を操舵しても、複数の配線31,32,33,34がナックルアーム11と共に移動することとなり、車輪26、ショックアブソーバ15、コイルスプリング16、ホイールハウスなどに干渉するおそれがなく、この配線31,32,33,34やクランプ36a,37a,36b,37bの損傷を防止することができる。また、複数の配線31,32,33,34を、キングピン軸に近似するナックルアーム11に付設することから、この配線31,32,33,34の曲げやねじりを極力抑えることができる。
【実施例2】
【0034】
図6は、本発明の実施例2に係る車輪駆動装置を表す車両前方からの正面図、図7は、実施例2の車輪駆動装置を表す車両側方からの側面図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0035】
実施例2の車輪駆動装置は、インホイールモータが適用された車輪駆動装置であって、図6及び図7に示すように、ナックルアーム11は、上端部がアッパアーム12に連結され、下端部がロアアーム13にボールジョイント14を介して連結され、アッパアーム12とロアアーム13との間にショックアブソーバ15及びコイルスプリング16が介装されている。ナックルアーム11には、ハウジング18が固定され、このハウジング18内にモータ19及び減速機20が収容されてインホイールモータ23が構成されている。そして、ホイール24の外周部にタイヤ25が装着された車輪26は、ナックルアーム11に回転自在に支持され、インホイールモータ23が連結されている。
【0036】
本実施例では、車体側に設けられたECUからインホイールモータ23に接続される複数の配線31,32,33,34がナックルアーム11における車両前方側及び後方側に沿って配索されている。即ち、複数の配線31,32,33,34は、モータ駆動用配線31,32,33と、センサ用配線34とから構成されている。一方、インホイールモータ23は、車両前方側に配線31,32,33,34を接続するための端子ボックス35が設けられている。
【0037】
このモータ駆動用配線31,32は、ナックルアーム11における車両前方側の壁面11aに沿って付設され、モータ駆動用配線33とセンサ用配線34は、ナックルアーム11における車両後方側の壁面11bに沿って付設されている。そして、このナックルアーム11の各壁面11a,11bに沿って配索される各配線31,32,33,34は、一端部側が車両前方側でまとめられ、インホイールモータ23の端子ボックス35に接続されている。また、各配線31,32,33,34は、他端部側が車体のホイールハウスに沿って配索された後、この車体の内部に延出され、ECUに接続されている。
【0038】
即ち、車体側のアウタパネルを構成するフェンダパネル41の下端部に、車輪26の形状に合わせて、弧状をなすと共に断面が半円形状をなすフェンダライナ42を連結することで、ホイールハウス43を形成し、このホイールハウス43(フェンダライナ42)における車両前方側及び後方側に貫通孔43a,43bが形成されている。
【0039】
そして、ナックルアーム11における車両前方側の壁面11aに付設された配線31,32は、他端部側が車両前方側(図7にて右方側)へ向けて延出された後、ホイールハウス43の内壁面に沿って付設され、貫通孔43aを通って車体の内部に延出されている。一方、ナックルアーム11における車両後方側の壁面11bに付設された配線33,34は、他端部側が車両後方側(図7にて左方側)へ向けて延出された後、ホイールハウス43の内壁面に沿って付設され、貫通孔43bを通って車体の内部に延出されている。車体内部に延出された配線31,32は、車両後方側に折り返され、ホイールハウス43の上方を通って車両後方側に延出され、配線33,34と共にまとめられ、ECUに接続されている。
【0040】
また、各配線31,32は、ナックルアーム11の一方の壁面11aに沿って配索された状態で、このナックルアーム11の上部及び下部にてクランプ36a,37aにより保持され、固定ねじ38a,39aにより固定されている。また、各配線31,32は、ホイールハウス43の内壁面に沿って配索された状態で、このホイールハウス43(フェンダライナ42)にてクランプ44aより保持され、固定ねじ45aにより固定されている。一方、各配線33,34は、ナックルアーム11の他方の壁面11bに沿って配索された状態で、このナックルアーム11の上部及び下部にてクランプ36b,37bにより保持され、固定ねじ38b,39bにより固定されている。また、各配線33,34は、ホイールハウス43の内壁面に沿って配索された状態で、このホイールハウス43(フェンダライナ42)にてクランプ44bより保持され、固定ねじ45bにより固定されている。
【0041】
この場合、各配線31,32,33,34は、クランプ36a,37aとクランプ44a,44bとで保持された間で、所定の撓み量をもってホイールハウス43に付設されており、車輪26の操舵時に、各配線31,32,33,34に張力が作用しないように配索されている。
【0042】
従って、ECUからインホイールモータ23に接続される複数の配線31,32,33,34が、ナックルアーム11における車両前方側の壁面11a及び後方側の壁面11bにその長手方向に沿って付設され、クランプ36a,37a,36b,37bにより保持されている。そのため、複数の配線31,32,33,34が車両前方側や後方側、または上方側へ大きく突出することはなく、この複数の配線31,32,33,34を保持する各クランプ36a,37a,36b,37bが大型化することなく、車両前方側や後方側へ大きく突出することはない。
【0043】
その結果、車輪26が操舵されたときに、複数の配線31,32,33,34がこの車輪26やショックアブソーバ15及びコイルスプリング16などに干渉するおそれがない。また、車輪26が上下に振動したときに、複数の配線31,32,33,34やクランプが36a,37a,36b,37bがホイールハウスに干渉するおそれもない。そのため、配線31,32,33,34やクランプ36a,37a,36b,37bが車輪26、ショックアブソーバ15、コイルスプリング16、ホイールハウスなどに干渉するおそれがないことから、この配線31,32,33,34やクランプ36a,37a,36b,37bの損傷が防止される。
【0044】
また、ナックルアーム11に各壁面11a,11bに配索された配線31,32,33,34は、他端部側がホイールハウス43の内壁面に沿って付設され、貫通孔43a,43bを通って車体の内部に延出され、クランプ44a,44bにより保持されている。そのため、配線31,32,33,34をホイールハウス43に付設することで、大きな湾曲面に沿って支持することとなり、配線31,32,33,34に対して、大きな曲げ応力やねじり応力の付加が抑制される。
【0045】
このように実施例2の車輪駆動装置にあっては、車体側のECUからモータ19に接続される複数の配線31,32,33,34を、ナックルアーム11における車両前方側の壁面11a及び後方側の壁面11bに沿って配索すると共に、一端部側をインホイールモータ23の端子ボックス35に接続し、他端部側をホイールハウス43の内壁面に沿って付設した後、貫通孔43a,43bを通して車体の内部に延出している。
【0046】
従って、複数の配線31,32,33,34をナックルアーム11の前後壁面11a,11bに分配して配索しており、配線31,32,33,34における車両前方側や車両後方側への突出量を低減し、この配線31,32,33,34と周辺部材との干渉を防止することができ、また、各配線31,32,33,34の他端部側をホイールハウス43の内壁面に沿って配索しており、この配線31,32,33,34と周辺部材との干渉を防止することができると共に、配線31,32,33,34に対して大きな曲げ応力やねじり応力の付加が抑制され、配線31,32,33,34の耐久性を向上することができる。
【0047】
また、本実施例の車輪駆動装置では、複数の配線31,32,33,34を、ナックルアーム11の上部及び下部にて、クランプ36a,37a,36b,37bにより固定すると共に、ホイールハウス43の内壁面にて、クランプ44a,44bより固定している。従って、複数の配線31,32,33,34が2つに分配され、それぞれがナックルアーム11及びホイールハウス43に保持されることとなり、クランプ36a,37a,36b,37b,44a,44bの大型化を抑制することができ、車両前方側や車両後方側、または、車輪26側への突出量を低減することができ、このクランプ36a,37a,36b,37b,44a,44bと周辺部材との干渉を防止することができる。
【0048】
また、本実施例の車輪駆動装置では、ナックルアーム11に沿って配索される複数の配線31,32,33,34を2組に分配し、一方の配線31,32をホイールハウス43の内壁面に沿って車両前方側に延出した後、貫通孔43aを通して車体の内部に配索し、他方の配線33,34をホイールハウス43の内壁面に沿って車両後方側に延出した後、貫通孔43bを通して車体の内部に配索し、配線31,32を車体内部で折り返して全ての配線31,32,33,34をまとめてECUに接続している。従って、例えば、懸架装置がダブルウィッシュボーン式のサスペンション形式であっても、複数の配線31,32,33,34と懸架装置との干渉を防止することができる。
【0049】
なお、上述した各実施例では、4本の配線31,32,33,34を、モータ駆動用配線31,32,33と、センサ用配線34とから構成し、モータ駆動用配線31,32をナックルアーム11における車両前方側の壁面11aに付設し、モータ駆動用配線33とセンサ用配線34をナックルアーム11における車両後方側の壁面11bに付設したが、この構成に限定されるものではない。例えば、モータ駆動用配線31,32,33をナックルアーム11における車両前方側の壁面11aに付設し、センサ用配線34をナックルアーム11における車両後方側の壁面11bに付設してもよい。この場合、センサ用配線34は、モータ駆動用配線31,32,33に比べて流れる電流値が小さいため、両者を別々に配索することで、センサ用配線34におけるノイズの発生を防止することができる。
【0050】
また、ナックルアーム11に配索される配線は、上述したモータ駆動用配線31,32,33とセンサ用配線34の4本に限らず、他の配線を配索してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように、本発明に係る車輪駆動装置は、複数の配線をナックルアームに沿って適正に配索することで、この配線と周辺部材との干渉を防止して耐久性の向上を図るものであり、いずれの車両にも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施例1に係る車輪駆動装置を表す車両前方からの正面図である。
【図2】実施例1の車輪駆動装置を表す車両後方からの後面図である。
【図3】実施例1の車輪駆動装置を表す車両側方からの側面図である。
【図4】実施例1の車輪駆動装置における配線支持構造を表すナックルアームの断面図である。
【図5】実施例1の車輪駆動装置を概略構成図である。
【図6】本発明の実施例2に係る車輪駆動装置を表す車両前方からの正面図である。
【図7】実施例2の車輪駆動装置を表す車両側方からの側面図である。
【符号の説明】
【0053】
11 ナックルアーム
11a 車両前方側壁面
11b 車両後方側壁面
18 ハウジング
19 モータ
20 減速機
23 インホイールモータ
24 ホイール
26 車輪
31,32,33 モータ駆動用配線(第1配線)
34 センサ用配線(第2配線)
35 端子ボックス
36a,36b,37a,37b,44a,44b クランプ
43 ホイールハウス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側に支持されたナックルアームに車輪が回転自在に支持され、ホイール内に前記車輪を駆動回転するモータが配置される車輪駆動装置において、前記車体側から前記モータに接続される複数の配線が、前記ナックルアームにおける車両前方側及び後方側に沿って配索されることを特徴とする車輪駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車輪駆動装置において、前記複数の配線は、前記ナックルアームの上部及び下部にてクランプにより固定されることを特徴とする車輪駆動装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車輪駆動装置において、前記ナックルアームに沿って配索される前記複数の配線は、一端部側がまとめられて前記モータにおける車両前方側または後方側に設けられるモータ端子に接続されることを特徴とする車輪駆動装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の車輪駆動装置において、前記ナックルアームに沿って配索される前記複数の配線は、他端部側がホイールハウスに沿って配索された後、前記車体の内部に延出されることを特徴とする車輪駆動装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車輪駆動装置において、前記ナックルアームにおける車両前方側に沿って配索される前記配線は、他端部側がホイールハウスに沿って車両前方側に配索されて前記車体の内部に延出され、前記ナックルアームにおける車両後方側に沿って配索される配線は、他端部側がホイールハウスに沿って車両後方側に配索されて前記車体の内部に延出され、前記全ての配線がまとめられて制御装置に接続されることを特徴とする車輪駆動装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載の車輪駆動装置において、前記複数の配線は、モータ駆動用信号を送信する第1配線と、センサ用信号を送信する第2配線とを有し、前記ナックルアームにおける車両前方側に前記第1配線または前記第2配線のいずれか一方の配線が配索され、前記ナックルアームにおける車両後方側に前記他方の配線が配索されることを特徴とする車輪駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−308033(P2008−308033A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157806(P2007−157806)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】