説明

転写樹脂シートの製造方法

【課題】転写ロールの表面形状を精度よく、速やかに転写しうる転写樹脂シートの製造方法を提供する。
【解決手段】加熱溶融状態でダイから連続的に押し出された連続樹脂シートを、第一押圧ロールと第二押圧ロールとの間で挟み込んで前記第二押圧ロールに密着させた状態で前記連続樹脂シートを冷却させ、その後に前記第二押圧ロールと該第二押圧ロールに隣接する転写ロールとの間で挟み込むことで、該転写ロールの表面形状を連続樹脂シートに転写する転写樹脂シートの製造方法であって、前記転写ロールと密着する面の連続樹脂シートの表面温度が前記連続樹脂シートの樹脂のビカット軟化点より20℃〜60℃高い温度である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転写樹脂シートの製造方法に関し、詳しくは転写型の表面形状が転写された樹脂シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、転写型の表面形状が転写された樹脂シートの製造方法として、特許文献1〔特開平9−11328号公報〕には、図3に示すように樹脂を加熱溶融状態でダイ32から連続的に押し出して得られる連続樹脂シート31を第一押圧ロール33と転写ロール34との間に挟み込むことにより、この転写ロールの表面形状を連続樹脂シートに転写する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平9−11328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の転写樹脂シートの製造方法では、転写ロールの表面形状を精度よく連続樹脂シートに転写するには、転写速度を遅くする必要があり必ずしも生産性のよい方法であるとは言えなかった。
【0004】
本発明は転写ロールの表面形状を精度よく、速やかに転写しうる転写樹脂シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、加熱溶融状態でダイから連続的に押し出された連続樹脂シートを、第一押圧ロールと第二押圧ロールとの間で挟み込んで前記第二押圧ロールに密着させた状態で前記連続樹脂シートを冷却させ、その後に前記第二押圧ロールと該第二押圧ロールに隣接する転写ロールとの間で挟み込むことで、該転写ロールの表面形状を連続樹脂シートに転写する転写樹脂シートの製造方法であって、前記転写ロールと密着する面の連続樹脂シートの表面温度が前記連続樹脂シートの樹脂のビカット軟化点より20℃〜60℃高い温度であることを特徴とする前記転写樹脂シートの製造方法に関する。
【0006】
本発明の好ましい形態は、前記転写ロールの表面には凹溝が複数個形成され、その断面形状において隣接する凹溝の溝底間隔Pが10μm〜200μmに設定され、凹溝の溝深さHが3μm〜200μmに設定されている転写樹脂シートの製造方法である。
【0007】
本発明の他の好ましい形態は、前記転写ロールの表面には断面形状が略半円形状である略半円凹溝が複数個形成され、隣接する略半円凹溝の溝底間隔Pが10μm〜200μmに設定され、前記略半円凹溝の溝深さHが3μm〜200μmに設定されている転写樹脂シートの製造方法である。
【0008】
本発明の他の好ましい形態は、前記転写ロールの表面には断面形状が三角形である三角形凹溝が複数個形成され、該三角形凹溝の底部溝角が40〜160度に設定され、隣接する三角形凹溝のの溝底間隔Pが10μm〜200μmに設定されている転写樹脂シートの製造方法である。
【0009】
さらに本発明の他の好ましい形態は前記転写ロールの表面にはマット面が形成され、該マット面の形状は、算術平均粗さRaが1〜10μmであり、前記マット面の凹凸の十点平均粗さRzは5〜50μmに設定されている転写樹脂シートの製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、樹脂シートの表面の温度を適切な範囲に調整することで転写ロールの表面形状を精度よく、速やかに樹脂シートに転写して、精度及び生産性に優れた転写樹脂シートを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の製造方法について説明する。ここで、図1には、表面形状転写樹脂シートの製造装置を模式的に示しており、この製造装置は、加熱溶融状態の樹脂を連続的に押し出して連続樹脂シート11を得るダイ12と、一対の押圧ロール13、14と、上記連続樹脂シート11を、一方の押圧ロール14とこれに隣接する転写ロール15との間に挟み込むことにより、転写ロール14の表面形状を上記連続樹脂シート11に転写する。そして前記転写ロールと密着する面の連続樹脂シートの表面温度が前記連続樹脂シートの樹脂のビカット軟化点より20℃〜60℃高い温度に調整される。
【0012】
<樹脂材料>
本発明の製造方法に用いられる樹脂は、加熱により硬化する熱硬化性樹脂も使用できるが、通常は、加熱により溶融状態となる熱可塑性樹脂が使用される。例えばスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状オレフィン重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂などが挙げられる。
【0013】
前記樹脂は、光拡散剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、帯電防止剤などの添加剤が添加されていてもよい。光拡散剤は、無機系光拡散剤であってもよいし、有機系光拡散剤であってもよい。無機系光拡散剤としては、例えば炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、無機ガラス、タルク、マイカ、ホワイトカーボン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などのような無機化合物の粒子が挙げられる。分散性などを向上させるため無機系光拡散剤は、脂肪酸などの表面処理剤により表面処理されていてもよい。
【0014】
有機系光拡散剤としては、例えばスチレン系重合体粒子、アクリル系重合体粒子、シロキサン系重合体粒子などのような有機化合物の粒子が挙げられる。
【0015】
光拡散剤を添加する場合、添加される光拡散剤の屈折率と樹脂の屈折率との差の絶対値は、光拡散の効果の点で、通常0.02以上であり、得られる表面形状転写樹脂シートの光透過性の点で、通常は0.20以下である。樹脂に光拡散剤を添加して製造される表面形状転写樹脂シートは、光拡散板として使用することができる。
【0016】
<樹脂の押出成型>
図1に示されるように連続樹脂シート11を押出機10から押し出すためのダイ12は、通常の押出成形法に用いられると同様の金属製のTダイなどが用いられる。ダイ12から樹脂を加熱溶融状態で押し出すには、通常の押出成形法に使用される押出機が用いられる。押出機は一軸押出機であってもよいし、二軸押出機であってもよい。樹脂は押出機内で加熱され、溶融された状態でダイに送られ押し出される。
【0017】
ダイから樹脂を加熱溶融状態で押し出すに当っては、ダイに1種の樹脂を供給し単層で押し出しをしてもよいし、2種以上の樹脂を供給し、積層した状態で共押し出しをしてもよい。2種以上の樹脂を積層した状態で共押し出しをするには、例えば2種3層分配型フィードブロック(図示せず)を用い、これを経由してダイに樹脂を供給する。ダイから押し出された樹脂は通常、連続的にシート状となって押し出され連続樹脂シート11となる。
【0018】
<ロール成形>
前記ダイから連続的に押し出された連続樹脂シート11は、第一押圧ロール13と第二押圧ロール14とで同時に挟み込まれる。第一押圧ロールおよび第二押圧ロールの材料は、通常はステンレス鋼、鉄鋼などの金属で構成された金属製ロールが用いられ、その直径は通常100mm〜500mmである。
【0019】
前記第一押圧ロールおよび第二押出ロールとして金属製ロールを用いる場合、その表面は、例えばクロームメッキ、銅メッキ、ニッケルメッキ、ニッケル−リンメッキなどのメッキ処理が施されていても良い。また、押圧ロールの表面は、鏡面であってもよいし、精度よく転写する必要がなければ、エンボスなどの凹凸が施された転写面とすることもできる。
【0020】
本発明では連続樹脂シートを移送するための駆動ロール、あるいは成形するためのロールを付設することができ、かかるロールとしては、ダイ12と前記第一押圧ロール13、前記第二ロールの間に設置してもよく、前記連続樹脂シート11が第二押圧ロール14に接している際に、該第二押圧ロール14と隣接するように設置することもできる。
【0021】
ここで第一押圧ロール13と第二押圧ロール14とで押圧された連続樹脂シート11は、第二押圧ロール14の表面に密着した状態で、第二押圧ロール14の回転にしたがって、これに隣接する転写ロール15に搬送される。
【0022】
該連続樹脂シート11は、第一押圧ロール13および第二押圧ロール14に接し、第二押圧ロール14の表面に付着して回転する間に冷却され、また外気温からの冷却によって、ダイから押し出された加熱溶融状態より温度が降下する。
【0023】
<転写ロール>
前記連続樹脂シート11は、第二押圧ロール14と転写ロール15とで再度押圧され、第二押圧ロール14から剥離し、転写ロール15の表面に付着し、転写ロール15の回転に従って搬送される。この際、連続樹脂シート11の表面温度が高く、第二押圧ロール14と転写ロール15とで押圧せずとも、連続樹脂シート11が十分に転写ロール15に付着する場合は、第二押圧ロール14と転写ロール15との間は連続樹脂シートの厚さよりも若干大きく開いていても良い。
【0024】
転写ロールは、連続樹脂シートの表面に押し当てられ、その表面形状を逆型として連続樹脂シートに転写する。
【0025】
<転写ロールの表面形状>
前記転写ロールの表面には凹溝が複数個形成され、その断面形状において隣接する凹溝の溝底間隔(反転された樹脂シートのピーク間隔)で定義されるピッチPが10μm〜200μmに設定され、凹溝の溝深さHが3μm〜200μmに設定されている。ここでピッチPは、溝底間隔が一定でない場合も包含される。
【0026】
前記転写ロールの表面に形成される凹溝の断面形状が略半円形状である略半円凹溝が複数個形成されもので転写された連続樹脂シートの断面の概略図を図2に示す。隣接する略半円凹溝どうしのピッチ間隔Pは、10μm〜200μmに設定され、前記略半円凹溝の溝深さHが3μm〜200μmに設定されていることが好ましい。
【0027】
転写ロールのピッチ間隔Pは、10μm未満の場合には、その製造が困難となるため、好ましくは30μm以上である。一方、ピッチ間隔Pが200μmを超えると反転される樹脂シートの表面が粗くなり外観が悪くなる。また、前記略半円凹溝の溝深さHは、3μm〜200μmの範囲において転写ロールの作製が容易となり、通常10μm以上、好ましくは50μm以上である。一方、前記略半円凹部の溝深さHが200μmを超えると表面形状を高精度に転写するうえで不利となる。
【0028】
なお、前記転写ロールの面内には断面形状が三角形である三角形凹溝が複数個形成され、該三角形凹溝の側壁で形成される底部溝角が40〜160度に設定され、隣り合う三角形凹溝のピッチ間隔Pが10μm〜200μmに設定されていることが好ましい。前記転写ロールの表面の凹溝として、例えば多数のV溝が平行に設けられた形状が挙げられる。V溝の底部溝角は通常160°以下であり、作製が容易である点で通常は40°以上である。V溝のピッチ間隔Pは、転写ロールの作製を容易にするため、通常10μm以上、好ましくは50μm以上である。
【0029】
前記転写ロールの表面にはマット面が形成され、該マット面の形状は、算術平均粗さRaが1〜10μmであり、前記マット面の凹凸の十点平均粗さRzは5〜50μmに設定されていることが望ましい。
【0030】
転写ロールの表面形状の作製方法としては、ステンレス鋼、鉄鋼などの金属ロールの面内に、例えばクロームメッキ、銅メッキ、ニッケルメッキ、ニッケル−リンメッキなどのメッキ処理を施した後に、そのメッキ面に対してダイヤモンドバイトや金属砥石等を用いた除去加工や、レーザー加工や、またはケミカルエッチングを行い、形状を加工することがあるが、これらの手法に特に限定されるものではない。
【0031】
転写ロールの表面状態としては、例えば表面形状の精度を損なわないレベルで、クロームメッキ、銅メッキ、ニッケルメッキ、ニッケル−リンメッキなどのメッキ処理を表面形状の加工後に施しても良い。
【0032】
かくして転写ロールの表面形状を連続樹脂シートに転写することにより、目的の表面形状転写樹脂シートを製造することができる。得られた表面形状転写樹脂シートは通常、さらに冷却されたのち枚葉に切断されて、例えば液晶表示装置を構成する輝度向上シートなどとして用いられる。また、樹脂として光拡散剤が添加されたものを用いた場合には、表面に形状が転写された光拡散板として用いられる。
【0033】
前記転写ロールの表面の凹凸部として、例えば多数のV溝が平行に設けられた形状が挙げられる。V溝の頂角は通常160°以下であり、作製が容易である点で通常は40°以上である。V溝のピッチは、転写ロールの作製が容易である点で、通常10μm以上、好ましくは50μm以上であり、本発明の製造方法は、ピッチが10μm〜200μmの範囲において好適である。
【0034】
<ビカット軟化点>
本発明の製造方法において、前記転写ロールと密着する面の連続樹脂シートの表面温度が前記連続樹脂シートの樹脂のビカット軟化点より20℃〜60℃高い温度に調整される。ここで樹脂のビカット軟化点に合わせて前記樹脂シートの表面温度を調整するには、転写ロールの温度を適宜調整するか、あるいは前記第二押圧ロール14の温度、さらには前記押圧ロール14および転写ロール15の回転速度を調整することで行うことができる。
前記転写ロールと密着する面の連続樹脂シートの表面温度が前記連続樹脂シートの樹脂のビカット軟化点より20℃未満の場合は、樹脂が冷却、固化するため転写率の向上が十分でなく、一方、60℃を越えると表面形状を高精度で転写しにくくなる。
【実施例】
【0035】
<原材料>
透光性樹脂A:スチレン樹脂(屈折率1.59、ビカット軟化点106.8℃)
透光性樹脂B:MS樹脂(スチレン/メタクリル酸メチル=80質量部/20質量部、屈折率1.57、ビカット軟化点102.1℃)
<転写ロール>
半円凹溝:転写型に施されている該半円形状凹溝のレプリカの断面形状(図2)は、ピッチ間隔(P)=118.2(μm)、凸部間の平坦面(F)=15.2(μm)、溝から頂点までの距離(H)=48.5(μm)、高さと巾の比率(A=H/P)=0.41の寸法となっているシリンドリカルレンズ形状であり、各溝部が平行に等間隔(ピッチ間隔)で構成されている。ここで、シリンドリカルレンズ形状とは、円柱レンズとも呼ばれ、少なくとも、一つの面が、円柱の一部のような形をしたレンズであり、例えば、円柱を軸方向に二つに割った形を意味する。
【0036】
マット面:転写型の全面に施されているマット面の形状は、算術平均粗さRaが7.55μmであり、前記マット面の十点平均粗さRzが39.17μmであり、前記マット面の平均長さSmが114μmで構成されている。
【0037】
<実施例1>
透光性樹脂Aをシリンダー内の温度が190〜260℃の第1押出機で溶融混練して、フィードブロックに供給する。一方、透光性樹脂Bをシリンダー内の温度が190〜260℃の第2押出機で溶融混練して、フィードブロックに供給する。
【0038】
前記第1押出機からフィードブロックに供給される樹脂が主層となり、前記第2押出機からフィードブロックに供給される樹脂が表層(主層の両面)となるように押出樹脂温度260℃で共押出成形を行い、押圧ロールで押圧と冷却を行うことによって、厚さ2.0mmの3層の積層板からなる連続樹脂シート(S1)を作製した。
【0039】
また、前記成形時に押圧ロールを2本使用したが、押出機より吐出された連続樹脂シートを押圧するために、上側に第一押圧ロール、下側に第二押圧ロールを配置した。さらに、連続樹脂シート(S1)は、第二押圧ロールに密着して搬送されている際に冷却され、その後に第二押圧ロールと転写ロールとで押圧される。
この際、転写ロールには、ロール表面の円周上に略半円凹溝が形成されており、連続樹脂シート(S1)の表層の上面側に、略半円凹溝の反対型が転写され、表面形状転写樹脂シート(S1)を得ることができる。
【0040】
前記成形時に各ロールの温度は、第一押圧ロールの温度(a)=95℃、第二押圧ロールの温度(b)=105℃、転写ロールの温度(c)=108℃とした。また、押圧ロール2本と転写ロール1本と樹脂引取ロールの回転速度(r)=0.58rpmとした。前記成形時に転写ロールと密着する面の樹脂の前記表面温度は127℃であった。前記表面形状転写樹脂シート(S1)に転写された形状の転写率は、79%であった。
【0041】
〔表面形状転写樹脂シートの評価〕
得られた表面形状転写樹脂シート(S1)を切断し、断面を鏡面仕上げしたのち、超深度形状測定顕微鏡〔KEYENCE社製「VK−8500」〕で観察して、表面に転写された略半円凹溝の反対型の溝から頂点までの距離(N)を測定し、レプリカの断面形状溝から頂点までの距離(H)とから、次の式(1)にて転写率βを算出した。
【0042】
β = N/H×100(%)・・・(1)
その結果を表1に示す。
【0043】
<実施例2>
前記成形時に各ロールの温度を、第一押圧ロールの温度(a)=95℃、第二押圧ロールの温度(b)=103℃、転写ロールの温度(c)=107℃とした。また、押圧ロール2本と転写ロール1本と樹脂引取ロールの回転速度(r)=0.65rpmとして、厚さ2.0mmの連続樹脂シート(S2)を得る以外は、実施例1と同様の操作をした。前記成形時に転写ロールと密着する面の樹脂の前記表面温度は135℃であった。前記表面形状転写樹脂シート(S2)に転写された形状の転写率は、75%であった。
【0044】
<実施例3>
透光性樹脂Aをシリンダー内の温度が190〜260℃の第1押出機で溶融混練して、フィードブロックに供給する。一方、透光性樹脂Bをシリンダー内の温度が190〜260℃の第2押出機で溶融混練して、フィードブロックに供給する。
【0045】
前記第1押出機からフィードブロックに供給される樹脂が主層となり、前記第2押出機からフィードブロックに供給される樹脂が表層(主層の両面)となるように押出樹脂温度260℃で共押出成形を行い、押圧ロールで押圧と冷却を行うことによって、厚さ2.0mmの3層の積層板からなる連続樹脂シート(S3)を作製した。
【0046】
また、前記成形時に押圧ロールを2本使用したが、押出機より吐出された連続樹脂シートを押圧するために、上側に第一押圧ロール、下側に第二押圧ロールを配置した。さらに、連続樹脂シート(S3)は、第二押圧ロールに密着して搬送されている際に冷却され、その後に第二押圧ロールと転写ロールとで押圧される。
【0047】
この際、転写ロールには、ロール表面の全面に前記マット面が形成されており、表面形状転写樹脂シート(S3)の表層の上面側に、マット面の反対型が転写され、表面氣印上転写樹脂シート(S3)を得ることができる。
【0048】
前記成形時に各ロールの温度は、第1番押圧ロールの温度(a)=95℃、第2番押圧ロールの温度(b)=95℃、転写ロールの温度(c)=109℃とした。また、押圧ロール2本と転写ロール1本と樹脂引取ロールの回転速度(r)=0.59rpmとした。
【0049】
前記成形時に転写ロールと密着する面の樹脂の前記表面温度は130℃であった。前記表面形状転写樹脂シート(S3)に転写された形状は、Raが4.16μm、Rzが20.6μmであり、前記マット面の平均長さSmが173μmであった。
【0050】
<比較例1>
実施例1と同様に操作して連続樹脂シート(S4)を得る際に押圧ロールを2本使用したが、図3に示すように押出機より吐出された連続樹脂シートを押圧するために、上側に第一押圧ロール、下側に転写ロールを配置した。さらに、連続樹脂シート(S4)は、転写ロールに密着して搬送されている際に冷却され、その後に転写ロールと第二押圧ロールとで押圧される。
【0051】
この際、転写ロールには、ロール表面の円周上に略半円凹溝が形成されており、連続樹脂シート(S4)の表層の下面側に、略半円凹溝の反対型が転写され、厚さ2.0mmの表面形状転写樹脂シート(S4)を得ることができる。
【0052】
前記成形時に各ロールの温度は、第一押圧ロールの温度(a)=95℃、第二押圧ロールの温度(b)=108℃、転写ロールの温度(c)=105℃とした。また、押圧ロール2本と転写ロール1本と樹脂引取ロールの回転速度(r)=0.58rpmとした。前記成形時に転写ロールと密着する面の樹脂の前記表面温度は255℃であった。前記表面形状転写樹脂シート(S4)に転写された形状の転写率は、39.0%であった。
【0053】
<比較例2>
実施例1と同様に操作して連続樹脂シート(S5)を得る際に押圧ロールを2本使用したが、図3に示すように押出機より吐出された連続樹脂シートを押圧するために、上側に第一押圧ロール、下側に転写ロールを配置した。さらに、連続樹脂シート(S5)は、転写ロールに密着して搬送されている際に冷却され、その後に転写ロールと第二押圧ロールとで押圧される。
【0054】
この際、転写ロールには、ロール表面の円周上に略半円凹溝が形成されており、連続樹脂シート(S5)の表層の下面側に、略半円凹溝の反対型が転写され、厚さ2.0mmの表面形状転写樹脂シート(S5)を得ることができる。
【0055】
前記成形時に各ロールの温度は、第一押圧ロールの温度(a)=95℃、第二押圧ロールの温度(b)=108℃、転写ロールの温度(c)=105℃とした。また、押圧ロール2本と転写ロール1本と樹脂引取ロールの回転速度(r)=0.65rpmとした。前記成形時に転写ロールと密着する面の樹脂の前記表面温度は255℃であった。前記表面形状転写樹脂シート(S5)に転写された形状の転写率は、24.0%であった。
【0056】
<比較例3>
透光性樹脂Aをシリンダー内の温度が190〜260℃の第1押出機で溶融混練して、フィードブロックに供給する。一方、透光性樹脂をシリンダー内の温度が190〜260℃の第2押出機で溶融混練して、フィードブロックに供給する。
【0057】
前記第1押出機からフィードブロックに供給される樹脂が主層となり、前記第2押出機からフィードブロックに供給される樹脂が表層(主層の両面)となるように押出樹脂温度260℃で共押出成形を行い、押圧ロールで押圧と冷却を行うことによって、厚さ2.0mmの3層の積層板からなる連続樹脂シート(S6)を作製した。
【0058】
また、前記成形時に押圧ロールを2本使用したが、押出機より吐出された連続樹脂シートを押圧するために、上側に第一押圧ロール、下側に第二押圧ロールを配置した。さらに、連続樹脂シート(S6)は、第二押圧ロールに密着して搬送されている際に冷却され、その後に第二押圧ロールと転写ロールとで押圧される。
この際、転写ロールには、ロール表面の全面に前記マット面が形成されており、表面形状転写樹脂シート(S6)の表層の上面側に、マット面の反対型が転写され、厚さ2.0mmの表面形状転写樹脂シート(S6)を得ることができる。前記成形時に各ロールの温度は、第一押圧ロールの温度(a)=90℃、第二押圧ロールの温度(b)=94℃、転写ロールの温度(c)=110℃とした。
【0059】
また、押圧ロール2本と転写ロール1本と樹脂引取ロールの回転速度(r)=0.59rpmとした。前記成形時に転写ロールと密着する面の樹脂の前記表面温度は115℃であった。前記表面形状転写樹脂シート(6)に転写された形状は、Raが1.61μm、Rzが8.86μmであり、前記マット面の平均長さSmが306μmであった。
【0060】
<比較例4>
実施例1と同様に操作して連続樹脂シート(S7)を得る際に押圧ロールを2本使用したが、押出機より吐出された連続樹脂シートを押圧するために、上側に第一押圧ロール、下側に転写ロールを配置した。さらに、連続樹脂シート(S7)は、転写ロールに密着して搬送されている際に冷却され、その後に転写ロールと第二押圧ロールとで押圧される。
【0061】
この際、転写ロールには、ロール表面の全面に前記マット面が形成されており、表面形状転写樹脂シート(S7)の表層の上面側に、マット面の反対型が転写され、表面形状転写樹脂シート(S7)を得ることができる。
【0062】
前記成形時に各ロールの温度は、第一押圧ロールの温度(a)=82℃、第二押圧ロールの温度(b)=110℃、転写ロールの温度(c)=92℃とした。また、押圧ロール2本と転写ロール1本と樹脂引取ロールの回転速度(r)=0.55rpmとした。前記成形時に転写ロールと密着する面の樹脂の前記表面温度は255℃であった。前記表面形状転写樹脂シート(S7)に転写された形状は、Raが2.60μm、Rzが8.86μmであり、前記マット面の平均長さSmが252μmであった。
【0063】
<比較例5>
実施例1と同様に操作して連続樹脂シート(S8)を得る際に押圧ロールを2本使用したが、押出機より吐出された連続樹脂シートを押圧するために、上側に転写ロール、下側に第一押圧ロールを配置した。さらに、連続樹脂シート(S8)は、第一押圧ロールに密着して搬送されている際に冷却され、その後に第一押圧ロールと第二押圧ロールとで押圧される。
【0064】
この際、転写ロールには、ロール表面の全面に前記マット面が形成されており、表面形状転写樹脂シート(S8)の表層の上面側に、マット面の反対型が転写され、表面形状転写樹脂シート(S8)を得ることができる。
【0065】
前記成形時に各ロールの温度は、第一押圧ロールの温度(a)=94℃、第二押圧ロールの温度(b)=110℃、転写ロールの温度(c)=90℃とした。また、押圧ロール2本と転写ロール1本と樹脂引取ロールの回転速度(r)=0.55rpmとした。前記成形時に転写ロールと密着する面の樹脂の前記表面温度は255℃であった。前記表面形状転写樹脂シート(S8)に転写された形状は、Raが0.82μm、Rzが2.93μmであり、前記マット面の平均長さSmが532μmであった。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
なお、表1、表2における転写ロールの位置の欄は、押出機のダイに近いロールから、第1番目、第2番目、第3番目とした。図1において第1番目が第一押圧ロール、第2番目が第二押圧ロール、第3番目が転写ロールとなる。
【0069】
<算術平均粗さRa測定法>
JIS B0601−1994に準拠して算術平均粗さRaを測定した。即ち、表面粗さ計(Mitutoyo製「SJ−201P」)を用いて、転写型のマット面と、表面形状転写樹脂シートのマット面の算術平均粗さRaを測定した。表面粗さ計の測定条件は、カットオフ値:2.5×5に設定した。
【0070】
<十点平均粗さRz測定法>
JIS B0601−1994に準拠して十点平均粗さRzを測定した。即ち、表面粗さ計(Mitutoyo製「SJ−201P」)を用いて、転写型のマット面と、表面形状転写樹脂シートの十点平均粗さRzを測定した。表面粗さ計の測定条件は、カットオフ値:2.5×5に設定した。
【0071】
<平均長さSm測定法>
JIS B0601−1994に準拠して平均長さSmを測定した。即ち、表面粗さ計(Mitutoyo製「SJ−201P」)を用いて、転写型のマット面と、表面形状転写樹脂シートの平均長さSmを測定した。表面粗さ計の測定条件は、カットオフ値:2.5×5に設定した。
【0072】
<評価結果>
実施例1と比較例1は、引取速度を一定(0.58rpm)にして転写前の樹脂温度を、それぞれ127℃と255℃としたものであり、比較例1は樹脂のビカット軟化点(102.1℃)よりも大幅に高い温度であるため、形状転写率は39%と低い。
【0073】
実施例2と比較例2は、引取速度を一定(0.65rpm)にして転写前の樹脂温度を、それぞれ135℃と255℃としたものであり、比較例2は樹脂のビカット軟化点(102.1℃)よりも大幅に高い温度であるため、形状転写率は24%と低い。
【0074】
実施例3と比較例3は、引取速度を一定(0.59rpm)にして転写前の樹脂温度を、それぞれ130℃と115℃としたものであり、比較例3は樹脂のビカット軟化点(102.1℃)との差は約13℃で、20℃を超えないため、マット面の粗さRa、Rzが実施例3よりも小さい値となっている。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の転写樹脂シートの製造方法は、転写シートと表面形状の精度が高く、しかも転写速度が速いため、液晶デスプレーなどの拡散シートなどに広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の転写樹脂シートの製造方法の概略図である。
【図2】本発明の製造方法に使用される転写ロールの表面凹溝で転写された樹脂シート表面の断面形状の概略図を示す。
【図3】従来の転写樹脂シートの製造方法の概略図である。
【符号の説明】
【0077】
10 押出機、11 樹脂シート、12 ダイ、13 第一押圧ロール、14 第二押圧ロール、15 転写ロール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱溶融状態でダイから連続的に押し出された連続樹脂シートを、第一押圧ロールと第二押圧ロールとの間で挟み込んで前記第二押圧ロールに密着させた状態で前記連続樹脂シートを冷却させ、その後に前記第二押圧ロールと該第二押圧ロールに隣接する転写ロールとの間で挟み込むことで、該転写ロールの表面形状を連続樹脂シートに転写する転写樹脂シートの製造方法であって、前記転写ロールと密着する面の連続樹脂シートの表面温度が前記連続樹脂シートの樹脂のビカット軟化点より20℃〜60℃高い温度であることを特徴とする前記転写樹脂シートの製造方法。
【請求項2】
前記転写ロールの表面には凹溝が複数個形成され、その断面形状において隣接する凹溝の溝底間隔Pが10μm〜200μmに設定され、凹溝の溝深さHが3μm〜200μmに設定されていることを特徴とする請求項1に記載の転写樹脂シートの製造方法。
【請求項3】
前記転写ロールの表面には断面形状が略半円形状である略半円凹溝が複数個形成され、隣り合う略半円凹溝の溝底間隔Pが10μm〜200μmに設定され、前記略半円凹溝の溝深さHが3μm〜200μmに設定されていることを特徴とする請前記転写ロールの面内には断面形状が略半円形状である略半円凹溝が複数個形成され、隣接する略半円凹溝の溝間隔Pが10μm〜200μmに設定され、前記略半円凹溝の溝深さHが3μm〜200μmに設定されていることを特徴とする請求項1に記載の転写樹脂シートの製造方法。
【請求項4】
前記転写ロールの面内には断面形状が三角形である三角形凹溝が複数個形成され、該三角形凹溝の底部溝角が40〜160度に設定され、隣接する三角形凹溝の溝底間隔Pが10μm〜200μmに設定されていることを特徴とする請求項1に記載の転写樹脂シートの製造方法。
【請求項5】
前記転写ロールの表面にはマット面が形成され、該マット面の形状は、算術平均粗さRaが1〜10μmであり、前記マット面の凹凸の十点平均粗さRzは5〜50μmに設定されている請求項1に記載の転写樹脂シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−202479(P2009−202479A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48347(P2008−48347)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】