説明

軸受組立カムシャフト

【課題】製造コストの低減をより効果的に図ることのできる軸受組立カムシャフトを提供する。
【解決手段】一端側又は両端側に向けて順次径が小さくなる複数段の円柱状部(101,102,103)を有するカムシャフト本体(10)と、カムシャフト本体の複数段の円柱状部に組み付けられるカムピース(30)及び軸受(20)と、を備える軸受組立カムシャフトにおいて、軸受(20)は、内輪(22)及び外輪(24)と、内輪及び外輪の両者間に配置されて保持器(26)に保持された転動体(28)とを含む転がり軸受であり、転がり軸受の内輪(22)は、複数段の円柱状部のそれぞれの外径に適合する内径を有するが、外輪及び保持器に保持された転動体は複数段の円柱状部のそれぞれにおいて同一である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受組立カムシャフト、特に、一端側又は両端側に向けて順次径が小さくなる複数段の円柱状部を有する軸受組立カムシャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンのカムシャフトの製造工程を簡略化し製造コストを低減するための、種々の組立カムシャフトが知られている。これらの組立カムシャフトのうち、例えば、特許文献1には、カムシャフト本体が一端側又は両端側に向けて順次径が小さくなる複数段の円柱状組付け部を有するように形成され、この複数段の円柱状組付け部のそれぞれに、プーリー、カムピース、ジャーナル等の組付け部品が、径の大きい円柱状部から径の小さい円柱状部へと順次圧入等により組み付けられるようにした組立カムシャフトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−329214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の特許文献1に記載の組立カムシャフトにあっては、カムシャフト本体に形成された径の異なる円柱状組付け部に対し、その径に合わせて孔が形成された組付け部品が順次圧入等により組み付けられるようにされているので、組み付けのための工数は低減されると認められる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の組立カムシャフトでは、軸受けであるジャーナルも異なる径の円柱状組付け部に合わせた大きさのジャーナルを用いていることから、その大きさがカムシャフト本体の軸方向位置によって変わり、複数種の軸受けを用意する必要があった。特に、軸受けとして、一体型転がり軸受けを用いる場合には、この一体型転がり軸受けを収容する軸受けハウジングの寸法も軸受けの外形寸法に応じて変更する必要があり、製造コストの低減効果を制限するものであった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、製造コストの低減をより効果的に図ることのできる軸受組立カムシャフトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明の一形態の軸受組立カムシャフトは、一端側又は両端側に向けて順次径が小さくなる複数段の円柱状部を有するカムシャフト本体と、前記カムシャフト本体の前記複数段の円柱状部に組み付けられるカムピース及び軸受と、を備える軸受組立カムシャフトにおいて、前記軸受は、内輪及び外輪と、内輪及び外輪の両者間に配置されて保持器に保持された転動体とを含む転がり軸受であり、該転がり軸受の内輪は、前記複数段の円柱状部のそれぞれの外径に適合する内径を有するが、前記外輪及び保持器に保持された転動体は前記複数段の円柱状部のそれぞれにおいて同一であることを特徴とする。
【0008】
ここで、上記本発明の一形態において、前記カムシャフト本体は、軸方向中央部に最大の第1の外径を有する第1の円柱状部と、該第1の円柱状部の両側に第1の外径よりも小さな第2の外径を有する第2の円柱状部と、該第2の円柱状部の両側に第2の外径よりも小さな第3の外径を有する第3の円柱状部と、を備え、前記第1の円柱状部に転がり軸受が圧入され、前記第2及び第3の円柱状部には、それぞれ、カムピースが焼き嵌めされると共に、転がり軸受が圧入されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
上記目的を達成する本発明の一形態によれば、転がり軸受が一端側又は両端側に向けて順次径が小さくなる複数段の円柱状部を有するカムシャフト本体に組み付けられたとき、転がり軸受の内輪は、複数段の円柱状部のそれぞれの外径に適合する内径を有するが、外輪及び保持器に保持された転動体は複数段の円柱状部のそれぞれにおいて同一であるので、外輪及び保持器に保持された転動体を複数段の円柱状部にかかわらず共通化できるので、構成部品の種類が増大するのを抑制することができる。さらに、この結果、転がり軸受けの外形寸法も同じであるから、転がり軸受けを収容する軸受けハウジングの寸法も共通にすることができ、製造コストを著しく低減することができる。
【0010】
ここで、上記本発明の一形態において、前記カムシャフト本体は、軸方向中央部に最大の第1の外径を有する第1の円柱状部と、該第1の円柱状部の両側に第1の外径よりも小さな第2の外径を有する第2の円柱状部と、該第2の円柱状部の両側に第2の外径よりも小さな第3の外径を有する第3の円柱状部と、を備え、前記第1の円柱状部に転がり軸受が圧入され、前記第2及び第3の円柱状部には、それぞれ、カムピースが焼き嵌めされると共に、転がり軸受が圧入されている形態によれば、焼き嵌めに比べて組み付けコストの低い圧入でもって転がり軸受が組み付けられる。そして、同一外径の第2及び第3の円柱状部に対し、カムピースが焼き嵌めされると共に、転がり軸受が圧入されていることから、カムピースがカムシャフト本体に挿入される際にカムシャフト本体の外面が損傷を受けるのが抑制され、その後に常温で圧入される転がり軸受の組み付け不良の発生が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る軸受組立カムシャフトの一実施形態を示す側面図である。
【図2】本発明に係る軸受組立カムシャフトにおけるカムシャフト本体の一実施形態を示す側面図である。
【図3】本発明に係る軸受組立カムシャフトにおける転がり軸受の一実施形態を示す正面図である。
【図4】本発明に係る軸受組立カムシャフトにおけるカムピースの一実施形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
まず、図1を参照して、本発明に係る軸受組立カムシャフトの実施形態において、その各構成部品を説明する。
【0014】
10はカムシャフト本体であり、不図示のシリンダーヘッドに転がり軸受20を介して回転自在に支持される。30はカムピースであり、本実施形態においては、一気筒当り2個配設されている吸気弁又は排気弁を開成駆動する。
【0015】
そして、カムシャフト本体10は、図2に示すように、軸方向中央部に最大の第1の外径Φd1を有する第1の円柱状部101と、該第1の円柱状部101の両側に第1の外径よりも小さな第2の外径Φd2を有する第2の円柱状部102と、該第2の円柱状部102の両側に第2の外径よりも小さな第3の外径Φd3を有する第3の円柱状部103とを有するように形成されている。
【0016】
再度図1に戻ると、本実施形態における軸受組立カムシャフトは、カムシャフト本体10の軸方向中央部の第1の円柱状部101に第1の転がり軸受201が配設され、第2の円柱状部102に2つのカムピース30,30と第2の転がり軸受202が配設され、そして、第3の円柱状部103に2つのカムピース30,30と第3の転がり軸受203が配設されている。
【0017】
ここで、転がり軸受け20は、図3に示すように、内輪22及び外輪24と、内輪22及び外輪24の両者間に配置されて保持器26に保持された複数個の転動体28とを備えて構成されている。そして、本実施形態では、外輪24と保持器26に保持された転動体28、及び内輪22の外径は一定のまま、その内径が複数段の円柱状部のそれぞれの外径に適合するように変えられている。すなわち、カムシャフト本体10の軸方向中央部の第1の円柱状部101に配設される第1の転がり軸受201においては、その内径が第1の円柱状部101の第1の外径Φd1にほぼ等しく、第2の円柱状部102に配設される第2の転がり軸受202においては、その内径が第2の円柱状部102の第2の外径Φd2にほぼ等しく、そして、第3の円柱状部103に配設される第3の転がり軸受203においては、その内径が第3の円柱状部103の第3の外径Φd3にほぼ等しく形成されている。換言すると、第1乃至第3の円柱状部の外径をΦdi(i=1〜3の整数)とするとき、第1乃至第3の転がり軸受の内輪の内径もΦdi(i=1〜3の整数)となる。なお、上述のように第1乃至第3の転がり軸受の外輪24の外径はΦd0で一定である。
【0018】
また、カムピース30においても、図4に示すように、その取付け孔32の内径が複数段の円柱状部のそれぞれの外径に適合するように変えられている。すなわち、カムシャフト本体10の第2の円柱状部102に配設されるカムピース30においては、その取付け孔32の内径が第2の円柱状部102の第2の外径Φd2にほぼ等しく、そして、第3の円柱状部103に配設されるカムピース30においては、その取付け孔32の内径が第3の円柱状部103の第3の外径Φd3にほぼ等しく形成されている。換言すると、第2及び第3の円柱状部の外径をΦdi(i=2〜3の整数)とするとき、カムピース30の取付け孔32の内径もΦdi(i=2〜3の整数)となる。
【0019】
そして、このように構成された軸受組立カムシャフトは、シリンダーヘッドに一体に形成されるか、又は別体に形成されてシリンダーヘッドに組み付けられる不図示のカムハウジングと、該カムハウジングに固定される不図示のキャップとから構成される軸受ハウジングの収容部にそれぞれ第1乃至第3の転がり軸受が収容されて、カムシャフト本体10を回転自在に支持する。
【0020】
次に、上記の構成になる軸受組立カムシャフトの組み付け手順について説明する。まず、本実施形態においては、カムシャフト本体10のいずれかの端部から第1の転がり軸受201が挿入されて、カムシャフト本体10の軸方向中央部の第1の円柱状部101に圧入により組み付けられる。次いで、比較的高温(約200℃程度)に加熱され、内径Φdiが第2の円柱状部102の外径Φdiに対して十分に拡大されたカムピース30が2つづつカムシャフト本体10の両端部から挿入されて、第2の円柱状部102に焼き嵌めされる。その後、冷却を待って、カムシャフト本体10の両端部から第2の転がり軸受202が常温で挿入されて、カムシャフト本体10の第2の円柱状部102に圧入により組み付けられる。さらに、第3の円柱状部102に対しても第2の円柱状部102に対する場合と同じようにして、2つのカムピース30が焼き嵌めされると共に、第3の転がり軸受203が圧入され、軸受組立カムシャフトが完成される。
【0021】
このように、本実施形態の軸受組立カムシャフトによれば、第1乃至第3の転がり軸受201,202、203の外輪24と保持器26に保持された転動体28とは共通であり、外輪24の外径Φd0が一定、すなわち、外形寸法が同じであるから、第1乃至第3の転がり軸受けを収容する軸受けハウジングの寸法も共通にすることができ、製造コストを著しく低減することができる。
【0022】
また、第1の円柱状部101に第1の転がり軸受201が圧入され、第2及び第3の円柱状部102及び103には、それぞれ、2つのカムピース30,30が焼き嵌めされると共に、第2及び第3の転がり軸受202及び203が圧入されているので、焼き嵌めに比べて組み付けコストの低い圧入でもって第2及び第3の転がり軸受202及び203が組み付けられる。そして、同一外径の第2及び第3の円柱状部102及び103に対し、カムピースが焼き嵌めされると共に、第2及び第3の転がり軸受202及び203が圧入されていることから、カムピース30,30がカムシャフト本体10に挿入される際に、カムシャフト本体10の外面が損傷を受けるのが抑制され、その後に常温で圧入される第2及び第3の転がり軸受202及び203の組み付け不良の発生が低減される。
【符号の説明】
【0023】
10 カムシャフト本体
101 カムシャフト本体の第1の円柱状部
102 カムシャフト本体の第2の円柱状部
103 カムシャフト本体の第3の円柱状部
20 転がり軸受け
201 第1の転がり軸受け
202 第2の転がり軸受け
203 第3の転がり軸受け
22 内輪
24 外輪
26 保持器
28 転動体
30 カムピース
32 カムピースの取付け孔
Φd0 転がり軸受け外輪の外径
Φdi カムシャフト本体円柱状部の外径、及び転がり軸受け内輪及びカムピース取付け孔の内径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側又は両端側に向けて順次径が小さくなる複数段の円柱状部を有するカムシャフト本体と、前記カムシャフト本体の前記複数段の円柱状部に組み付けられるカムピース及び軸受と、を備える軸受組立カムシャフトにおいて、
前記軸受は、内輪及び外輪と、内輪及び外輪の両者間に配置されて保持器に保持された転動体とを含む転がり軸受であり、該転がり軸受の内輪は、前記複数段の円柱状部のそれぞれの外径に適合する内径を有するが、前記外輪及び保持器に保持された転動体は前記複数段の円柱状部のそれぞれにおいて同一であることを特徴とする軸受組立カムシャフト。
【請求項2】
前記カムシャフト本体は、軸方向中央部に最大の第1の外径を有する第1の円柱状部と、該第1の円柱状部の両側に第1の外径よりも小さな第2の外径を有する第2の円柱状部と、該第2の円柱状部の両側に第2の外径よりも小さな第3の外径を有する第3の円柱状部と、を備え、前記第1の円柱状部に転がり軸受が圧入され、前記第2及び第3の円柱状部には、それぞれ、カムピースが焼き嵌めされると共に、転がり軸受が圧入されていることを特徴とする請求項1に記載の軸受組立カムシャフト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−62949(P2012−62949A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206986(P2010−206986)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】