説明

送液装置、送液方法、及び全反射減衰を利用した測定方法、並びに流路ユニット

【課題】 試料の非特異的な結合を防止して、高精度な測定を行う。
【解決手段】 流路30は、流路部材20の底面に形成された溝部30dと、この溝部30dから流路部材20の上面に貫通して出入口を形成する3つの送排液管30e、30f、30gとによって、略山字型に形成されている。送液ヘッド43には、各出入口に嵌入する3つのピペット50a、50b、50cが設けられている。各ピペット50a、50b、50cのそれぞれには、加圧又は減圧して各ピペット50a、50b、50cに液体の吸引又は吐出を行わせるポンプが接続されている。各ポンプの加圧、減圧、停止を制御することにより、金属膜31の上に設けられた各リンカー膜32、33への個別の送液と、同時送液とが選択的に切り替えられる。各リンカー膜32、33に個別に送液することで、試料の非特異的な結合が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の出入口が形成された流路に試料溶液を注入して、試料の反応を検出するためのセンサ面に試料溶液を送液する送液装置、及びその送液方法と、これらを用いた全反射減衰を利用した測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タンパク質やDNAなどの生化学物質間における相互作用の測定や、薬品のスクリーニングなどを行う際に、全反射減衰を利用して試料の反応を測定する測定装置が知られている。
【0003】
このような全反射減衰を利用した測定装置の1つに、表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance)現象を利用した測定装置(以下、SPR測定装置と称す)がある。なお、表面プラズモンとは、金属中の自由電子が集団的に振動することによって生じ、その金属の表面に沿って進む自由電子の粗密波である。
【0004】
例えば、特許文献1などで知られるKretschmann配置を採用したSPR測定装置では、透明な誘電体(以下、プリズムと称す)上に形成された金属膜の表面をセンサ面として、このセンサ面上で試料を反応させた後、プリズムを介してセンサ面の裏面側から全反射条件を満たすように金属膜を照射し、その反射光を測定している。
【0005】
全反射条件を満たすように金属膜に照射された光のうち、エバネッセント波と呼ばれるわずかな光は、反射せずに金属膜内を透過してセンサ面側に染み出す。この際、エバネッセント波の振動数と表面プラズモンの振動数とが一致するとSPRが発生し、反射光の強度を大きく減衰させる。また、この減衰が発生する光の入射角度(共鳴角)は、金属膜上の屈折率に応じて変化する。すなわち、SPR測定装置は、金属膜からの反射光を捉えて共鳴角を検出することにより、センサ面上の試料の反応状況を測定する。
【0006】
ところで、タンパク質やDNAなどの生体試料は、乾燥による変性や失活を防ぐため、生理的食塩水や純水、または各種のバッファ液などの溶媒に溶かされた試料溶液として扱われることが多い。特許文献1記載のSPR測定装置は、こうした生体試料の相互作用などを調べるものであり、センサ面の上には試料溶液を送液するための流路が設けられている。また、センサ面にはリガンドとなる試料を固定させるためのリンカー膜が設けられており、流路にリガンド溶液を注入してリンカー膜にリガンドを固定(固定工程)させた後、アナライト溶液を注入してリガンドとアナライトとを接触(測定工程)させることにより、その相互作用を測定する。
【0007】
流路とプリズムは、装置本体に設けられた測定ステージに配置されている。前述の測定は、ガラス基板上に金属膜を形成したチップ型のセンサユニットを測定ステージにセットすることで行われる。流路には、配管(ゴムチューブなどを含む)やバルブなどを介してポンプが接続されており、このポンプによって容器に保管された試料溶液を流路内に送り込むようにしているが、この方法では、配管内に付着した試料が後に注入する試料溶液中に混入してしまう、いわゆるコンタミネーションが生じやすいという問題があった。
【0008】
この問題を解決するため、本出願人は、先端に小孔が形成された略円錐筒状のピペットチップと、このピペットチップを着脱自在に保持するヘッド部とからなるピペットを用いて、容器に保管された試料溶液などの液体を流路に送液するSPR測定装置を提案している(例えば、特願2004−288534号明細書参照)。このSPR測定装置では、送液する液体毎にピペットチップを交換することで、流路に液体を送り込む際に生じるコンタミネーションを防止することができる。
【0009】
また、このSPR測定装置では、流路が形成された流路部材と、上面に金属膜が形成されたプリズムと、流路部材の底面とプリズムの上面とを接合させた状態(流路と金属膜とを対面させた状態)で保持する保持部材とからなるセンサユニットを用いている。このセンサユニットの金属膜上にも、前述と同様のリンカー膜が設けられており、リガンド溶液やアナライト溶液などの試料溶液をピペットで流路内に送り込むことによって測定が行われる。
【0010】
リンカー膜には、リガンドと結合する測定領域と、結合しない参照領域とが形成されている。上述のSPR測定装置は、光源から測定領域と参照領域とに光を照射し、それぞれの領域からの反射光を検出器で光電変換して測定信号と参照信号とを取得している。こうして得られた2つの信号の差や比を求めて解析することにより、センサユニットの個体差や液体の温度変化などの外乱に起因するノイズをキャンセルした精度の高い測定結果を得ることができる。
【特許文献1】特許第3294605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
参照領域は、測定領域と同様に製膜した後、リガンドとの固定基を失活させたものであり、本来リガンドは結合しないはずである。しかしながら、単に失活させただけでは、参照領域へのリガンドの結合を完全に抑えることは難しく、リガンドの一部が参照領域に結合してしまうという問題があった。また、アナライト溶液を送液してリンカー膜にアナライトを接触させる際に、アナライトが参照領域に結合してしまうということもあった。こうした試料の非特異的な結合は、測定誤差の要因となってしまうため、これの防止策が望まれていた。
【0012】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、試料の非特異的な結合を防止して、高精度な測定を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を達成するため、本発明の送液装置は、試料を含む試料溶液の注入と排出とが行われる3つの出入口を通じて注入された前記試料溶液を前記各出入口間で送液する流路が形成され、前記試料の反応を検出するためのセンサ面に底面を当接させて、前記流路に流れる前記試料溶液を前記センサ面に接触させる流路ユニットが着脱自在にセットされるステージと、前記各出入口のそれぞれに嵌入する3つのピペットが設けられた送液ヘッドと、前記各ピペットのそれぞれに対応して設けられ、前記各ピペット内を加圧又は減圧して前記各ピペットに前記試料溶液を吸引又は吐出させることにより、前記流路に前記試料溶液を送り込む3つのポンプとを備え、前記流路を、前記底面に形成された溝部と、前記溝部の両端のそれぞれから前記流路ユニットの上面に貫通して前記出入口を形成する第1送排液管、第2送排液管と、前記溝部の略中央から前記上面に貫通して前記出入口を形成する第3送排液管とから構成し、前記各ポンプの加圧、減圧、停止を制御することによって、前記第1送排液管から前記溝部を介して前記第3送排液管へと至る第1経路と、前記第2送排液管から前記溝部を介して前記第3送排液管へと至る第2経路と、前記第1送排液管から前記溝部を介して前記第2送排液管へと至る第3経路とで、前記流路の送液経路を選択的に切り替える駆動制御手段を設けたことを特徴とする。
【0014】
なお、前記駆動制御手段は、前記第1送排液管に嵌入した前記ピペットに対応する前記ポンプが加圧、前記第2送排液管に嵌入した前記ピペットに対応する前記ポンプが停止、前記第3送排液管に嵌入した前記ピペットに対応する前記ポンプが減圧、するように前記各ポンプを駆動して前記第1経路を選択し、前記第1送排液管に嵌入した前記ピペットに対応する前記ポンプが停止、前記第2送排液管に嵌入した前記ピペットに対応する前記ポンプが減圧、前記第3送排液管に嵌入した前記ピペットに対応する前記ポンプが加圧、するように前記各ポンプを駆動して前記第2経路を選択し、前記第1送排液管に嵌入した前記ピペットに対応する前記ポンプが加圧、前記第2送排液管に嵌入した前記ピペットに対応する前記ポンプが減圧、前記第3送排液管に嵌入した前記ピペットに対応する前記ポンプが停止、するように前記各ポンプを駆動して前記第3経路を選択することが好ましい。
【0015】
また、前記各ポンプは、停止している際に、前記ピペットが嵌入した前記出入口からの流体の流通を遮断することが好ましい。
【0016】
さらに、前記第1経路に対応する前記センサ面上には、前記試料を固定して、前記試料の反応状況を表す測定信号を取得するための測定用高分子膜が設けられ、前記第2経路に対応する前記センサ面上には、前記測定信号のノイズを除去する際に用いる参照信号を取得するための参照用高分子膜が設けられていることが好ましい。
【0017】
なお、本発明の送液装置は、試料を含む試料溶液の注入と排出とが行われる複数の出入口を通じて注入された前記試料溶液を前記各出入口間で送液する流路が形成され、前記試料の反応を検出するためのセンサ面に底面を当接させて、前記流路に流れる前記試料溶液を前記センサ面に接触させる流路ユニットが着脱自在にセットされるステージと、前記各出入口のぞれぞれに嵌入する複数のピペットが設けられた送液ヘッドと、前記各ピペットのそれぞれに対応して設けられ、前記各ピペット内を加圧又は減圧して前記各ピペットに前記試料溶液を吸引又は吐出させることにより、前記流路に前記試料溶液を送り込む複数のポンプとを備え、前記流路を、前記底面に形成された溝部と、前記溝部から前記流路ユニットの上面に貫通して前記各出入口を形成する複数の送排液管とから構成し、前記各ポンプの加圧、減圧、停止を制御することによって、前記各送排液管と前記溝部とによって形成される複数の送液経路を選択的に切り替える駆動制御手段を設ける構成としてもよい。
【0018】
また、本発明の送液方法は、試料を含む試料溶液の注入と排出とが行われる3つの出入口を通じて注入された前記試料溶液を前記各出入口間で送液する流路が形成され、前記試料の反応を検出するためのセンサ面に底面を当接させて、前記流路に流れる前記試料溶液を前記センサ面に接触させる流路ユニットをステージにセットし、3つのピペットが設けられた送液ヘッドを前記流路ユニットにアクセスさせて、前記各ピペットを前記各出入口に嵌入し、前記各ピペットのそれぞれに対応して設けられた3つのポンプに、前記各ピペット内を加圧又は減圧させて前記各ピペットに前記試料溶液を吸引又は吐出させることにより、前記流路に前記試料溶液を送り込む際に、前記底面に形成された溝部と、前記溝部の両端のそれぞれから前記流路ユニットの上面に貫通して前記出入口を形成する第1送排液管、第2送排液管と、前記溝部の略中央から前記上面に貫通して前記出入口を形成する第3送排液管とから構成される前記流路の送液経路を、前記各ポンプの加圧、減圧、停止を制御する駆動制御手段によって、前記第1送排液管から前記溝部を介して前記第3送排液管へと至る第1経路と、前記第2送排液管から前記溝部を介して前記第3送排液管へと至る第2経路と、前記第1送排液管から前記溝部を介して前記第2送排液管へと至る第3経路とに選択的に切り替えることを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明の全反射減衰を利用した測定方法は、一面に薄膜層が形成された誘電体ブロックと、試料を含む試料溶液の注入と排出とが行われる3つの出入口を通じて注入された前記試料溶液を前記薄膜層に送液する流路が形成され、前記薄膜層に底面を当接させて、前記流路に流れる前記試料溶液を前記薄膜層に接触させる流路部材とからなるセンサユニットを、前記薄膜層に全反射条件を満足するように光を照射する光源と、前記薄膜層からの反射光を受光して電気信号に光電変換する検出手段とが設けられたステージにセットし、3つのピペットが設けられた送液ヘッドを前記センサユニットにアクセスさせて、前記各ピペットを前記各出入口に嵌入し、前記各ピペットのそれぞれに対応して設けられた3つのポンプに、前記各ピペット内を加圧又は減圧させて前記各ピペットに前記試料溶液を吸引又は吐出させることにより、前記流路に前記試料溶液を送り込んで前記薄膜層上での前記試料の反応状況を測定する際に、前記底面に形成された溝部と、前記溝部の両端のそれぞれから前記流路部材の上面に貫通して前記出入口を形成する第1送排液管、第2送排液管と、前記溝部の略中央から前記上面に貫通して前記出入口を形成する第3送排液管とから構成される前記流路の送液経路を、前記各ポンプの加圧、減圧、停止を制御する駆動制御手段によって、前記第1送排液管から前記溝部を介して前記第3送排液管へと至る第1経路と、前記第2送排液管から前記溝部を介して前記第3送排液管へと至る第2経路と、前記第1送排液管から前記溝部を介して前記第2送排液管へと至る第3経路とに選択的に切り替えて前記試料溶液を送液することを特徴とする。
【0020】
なお、前記第1経路に対応する前記薄膜層上には、前記試料を固定して前記試料の反応状況を表す測定信号を取得するための測定用高分子膜が、前記第2経路に対応する前記薄膜層上には、前記測定信号のノイズを除去する際に用いる参照信号を取得するための参照用高分子膜が、それぞれ設けられており、前記流路に前記試料溶液を送液する際には、前記駆動制御手段によって前記第1経路を選択し、前記第1経路に前記試料溶液を送液して、前記測定用高分子膜にのみ前記試料溶液を接触させることが好ましい。
【0021】
また、前記測定用高分子膜に前記試料を固定させた後には、前記駆動制御手段によって前記第3経路を選択し、前記第3経路に前記試料と反応させる被検体を含む被検液を送液して、前記測定用高分子膜と前記参照用高分子膜とに前記被検液を接触させ、前記試料と前記被検体との反応状況を表す前記測定信号と、この測定信号に対応した前記参照信号とを、前記光源と前記検出手段とによって測定することが好ましい。
【0022】
さらに、前記参照用高分子膜に前記被検液を接触させる前には、前記駆動制御手段によって前記第2経路を選択し、前記参照用高分子膜に前記被検体が結合することを防止するブロック剤を含むブロック液を前記第2経路に送液して、前記参照用高分子膜に前記ブロック液を接触させ、前記参照用高分子膜に前記ブロック剤を結合させることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、流路を、流路ユニットの底面に形成された溝部と、この溝部の両端のそれぞれから流路ユニットの上面に貫通して出入口を形成する第1送排液管、第2送排液管と、溝部の略中央から上面に貫通して出入口を形成する第3送排液管とから構成し、各ピペットに試料溶液を吸引又は吐出させる各ポンプの加圧、減圧、停止を制御することによって、第1送排液管から溝部を介して第3送排液管へと至る第1経路と、第2送排液管から溝部を介して第3送排液管へと至る第2経路と、第1送排液管から溝部を介して第2送排液管へと至る第3経路とで、流路の送液経路を選択的に切り替える駆動制御手段を設けたので、第1経路、又は第2経路に切り替えて試料溶液を送液する際には、溝部と対面するセンサ面のうち、各経路に対応する部分にのみ試料溶液を接触させることができる。一方、第3経路に切り替えて試料溶液を送液する際には、溝部と対面するセンサ面の全面に試料溶液を接触させることができる。これにより、例えば、第1経路に対応するセンサ面上に測定領域を形成し、第2経路に対応するセンサ面上に参照領域を形成することで、試料を結合させたい領域にのみ試料溶液を送液することが可能となり、各領域への試料の非特異的な結合を防止して、高精度な測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、SPRを利用した測定に用いられるセンサユニット(流路ユニット)10の分解斜視図である。センサユニット10は、流路30が形成された流路部材20と、上面に金属膜(センサ面、薄膜層)31が形成されたプリズム(誘電体ブロック)21と、流路部材20の底面とプリズム21の上面とを接合させた状態で保持する保持部材22とからなる。
【0025】
流路部材20には、例えば、2つの流路30が形成されている。流路部材20は、長尺状に形成されており、2つの流路30は、その長手方向に沿って配列されている。各流路30は、流路部材20の上面に第1出入口30a、第2出入口30b、第3出入口30cの3つ出入口を有しており、流路部材20の底面に形成された溝部30dと、溝部30dの両端のそれぞれから流路部材20の上面に貫通して第1出入口30a、第2出入口30bを形成する第1送排液管30e、第2送排液管30fと、溝部30dの略中央から流路部材20の上面に貫通して第3出入口30cを形成する第3送排液管30gとによって、略山字型に成形されている。なお、流路30の管径は、例えば、1mm程度であり、各出入口30a、30b、30cのそれぞれの間隔は、例えば、10mm程度である。
【0026】
また、流路30の底部は、開放されており、この開放部位は金属膜31によって覆われて密閉される。このため、流路部材20には、金属膜31との密着性を高めるように、例えば、ゴムやPDMS(ポリジメチルシロキサン)などといった弾性材料が用いられている。これにより、流路部材20の底面をプリズム21の上面に圧接すると、流路部材20が弾性変形して金属膜31との接合面の隙間を埋め、各流路30の開放された底部がプリズム21の上面によって水密に覆われる。なお、これ以降では、流路30とプリズム21の上面とによって囲まれた部分をセンサセル23(図2参照)と称す。また、本例では、流路30の数(センサセル23の数)が2つの例で説明したが、これらの数は、2つに限らず、1つであってもよいし、3つ以上でもよい。
【0027】
プリズム21は、その上面に金属膜31が形成された透明な誘電体であり、底面側から全反射条件を満たすように照射された光を上面(金属膜31)に集光する。金属膜31は、流路部材20に形成された2つの流路30と対向するように、例えば、蒸着法によって短冊状に成形される。この金属膜31としては、例えば、金や銀などが使用され、その膜厚は、例えば、50nmである。なお、この膜厚は、金属膜31の素材、プリズム21に照射される光の波長などに応じて適宜選択される。
【0028】
また、金属膜31の上面には、各流路30のそれぞれに対応して、測定用リンカー膜(測定用高分子膜)32と参照用リンカー膜(参照用高分子膜)33とが設けられている。測定用リンカー膜32は、第1出入口30aと第3出入口30cとの間の溝部30dと対面する位置に形成されている。一方、参照用リンカー膜33は、第2出入口30bと第3出入口30cとの間の溝部30dと対面する位置に形成されている。測定用リンカー膜32は、リガンド(試料)が固定される固定基であって、固定されたリガンドとアナライト(被検体)との反応を測定する領域となる。参照用リンカー膜33は、測定用リンカー膜32と同様に製膜した後、固定基を失活させたものである。これにより、参照用リンカー膜33には、リガンドが固定されなくなる。
【0029】
後に詳述するが、測定用リンカー膜32に対応して発生したSPR信号を測定信号とし、参照用リンカー膜33に対応して発生したSPR信号を参照信号としてそれぞれ測定し、例えば、これら2つのSPR信号の差分を取る。こうすることで、センサユニット10の個体差や液体の温度変化など、外乱に起因するノイズをキャンセルすることが可能となり、S/N比の良好な信号を得られるようになる。また、各リンカー膜32、33は、センサユニット10の製造段階において予め形成される。各リンカー膜32、33としては、例えば、カルボキシメチルデキストランなどが用いられる。これらの種類は、測定用リンカー膜32に固定するリガンドの種類などに応じて適宜選択される。
【0030】
また、プリズム21の長手方向の両側面には、保持部材22の係合部22aと係合する係合爪21aが設けられている。これらの係合により、流路部材20が保持部材22とプリズム21とによって挟み込まれ、その底面とプリズム21の上面とが圧接した状態で保持される。こうして、流路部材20、プリズム21、保持部材22の各部が一体化し、センサユニット10が構成される。
【0031】
なお、プリズム21には、例えば、ホウケイクラウン(BK7)やバリウムクラウン(Bak4)などに代表される光学ガラスや、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネイト(PC)、非晶性ポリオレフィン(APO)などに代表される光学プラスチックなどを用いることができる。
【0032】
保持部材22の上面には、流路30の各出入口30a、30b、30cのそれぞれに対応する位置に、ピペット(図2参照)の先端が進入する受け入れ口22bが形成されている。各受け入れ口22bは、ピペットから吐出された液体を流路30内に導くように、漏斗形状をしている。保持部材22が流路部材20を挟み込んでプリズム21と係合すると、各受け入れ口22bの下面と、各出入口30a、30b、30cとが接合し、受け入れ口22bと流路30とが連結される。
【0033】
なお、センサユニット10のプリズム21や保持部材22などに、例えば、非接触式のICメモリであるRFID(Radio Frequency IDentification)タグなどを取り付けるようにしてもよい。例えば、読み込み専用のRFIDタグにセンサユニット10毎の固有のID番号を書き込んでおき、各工程を行う前にこのID番号を読み込むことで、センサユニット10の識別を行うことができる。これにより、複数のセンサユニット10に対して同時に固定や測定を行う場合にも、間違ったアナライトの注入や、測定結果の取り違えなどといった問題の発生を防止することができる。さらには、読み書き可能なRFIDタグを用いて、例えば、固定したリガンドの種類やリガンドを固定させた日時、及び反応させたアナライトの種類などを、各工程毎に書き込んでいくようにしてもよい。
【0034】
図2は、全反射減衰を利用した測定装置としてのSPR測定装置12の構成を概略的に説明する説明図である。SPR測定装置12は、センサユニット10の金属膜31上での試料の反応状況に応じたSPR信号を取得する測定部14と、センサユニット10の流路30に種々の液体を送液する送液部(送液装置)16とから構成されている。これらの各部は、図示を省略したコントローラによって統括的に制御される。
【0035】
測定部14は、センサユニット10に全反射条件を満足するように光を照射する照明器(光源)40と、センサユニット10によって全反射した光を受光して電気信号に光電変換する検出器(検出手段)41と、照明器40と検出器41とを固定する測定ステージ42とからなる。測定ステージ42は、例えば、台形状に成形された台座であって、照明器40と検出器41とを全反射条件を満足する所定の角度で固定するとともに、照明器40の光路上にセンサユニット10を位置決めする。照明器40は、全反射条件を満足する様々な入射角の光をプリズム21に対して照射する。照明器40は、例えば、集光レンズ、拡散板、偏光板などからなる光学系と、光源とから構成され、配置位置および設置角度は、照射する光の入射角が、全反射条件を満足するように調整される。
【0036】
照明器40の光源としては、例えば、LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)、SLD(Super Luminescent Diode)などの発光素子が使用される。照明器40は、こうした発光素子を1個使用し、この単一光源から1つセンサセル23に向けて光を照射する。なお、センサユニット10に設けられた複数のセンサセル23(本例では2つ)を同時に測定するような場合には、単一光源からの光を分光して複数の各センサセル23に照射してもよいし、各センサセル23に対して発光素子が1つずつ割り当てられるように複数の発光素子を並べて使用してもよい。拡散板は、光源からの光を拡散させ、発光面内の光量ムラを抑える。偏光板は、照射光のうち、SPRを生じさせるp偏光のみを通過させる。なお、LDを使用する場合など、光源が発する光線自体の偏光の向きが揃っている場合には、偏光板は不要である。また、偏光が揃っている光源を使用した場合でも、拡散板を通過することにより、偏光の向きが不揃いになってしまう場合には、偏光板を使用して偏光の向きを揃える。こうして拡散および偏光された光は、集光レンズによって集光されてプリズム21に照射される。これにより、光強度にバラツキがなく様々な入射角を持つ光をセンサセル23に入射させることができる。
【0037】
検出器41には、例えば、CCDエリアセンサやフォトダイオードアレイなどが使用される。プリズム21の長辺側の一方の側面から入射した光は、プリズム21内を透過して内側からプリズム21の上面(金属膜31の裏面)に集光され、上面で全反射して他方の側面に抜ける。プリズム21には、様々な角度の光が入射するので、プリズム21の上面では、それらの入射光が、それぞれの入射角に応じた反射角で反射する。検出器41は、これらの様々な角度の反射光を受光し、それらを光電変換して光強度に応じたレベルのSPR信号として出力する。
【0038】
また、検出器41は、測定用リンカー膜32に対応するSPR信号を測定信号として出力し、参照用リンカー膜33に対応するSPR信号を参照信号として出力する。照明器40及び検出器41は、これら測定信号と参照信号との2チャンネルの計測を行うことができるように構成されている。例えば、照明器40を1個の発光素子から構成した際には、反射ミラーなどを用いて測定用リンカー膜32と参照用リンカー膜33とのそれぞれに向けて入射する複数の光線に照射光を分光する。そして、各チャンネル用の複数のフォトダイオードアレイで構成した検出器41により、各光線をそれぞれ受光する。
【0039】
一方、検出器41として、CCDエリアセンサを用いた場合には、各チャンネルの反射光を同時に受光することによって得られた信号を画像処理することにより、測定信号と参照信号とを認識することができる。しかし、こうした画像処理による方法が難しい場合には、測定用リンカー膜32と参照用リンカー膜33とに対して光を入射させるタイミングを微小時間ずらして、各チャンネルの信号を受光するようにしてもよい。入射タイミングをずらす方法としては、例えば、配置角度が180度ずれた位置に2つの孔が形成された円板を照明器40の光路上に配置し、この円板を回転させる。各孔は、中心からの距離が各リンカー膜32、33の間隔だけ異なる位置に配置されており、一方の孔が光路内に進入したときには、測定用リンカー膜32に光線を入射させ、他方の孔が光路内に進入したときには、参照用リンカー膜33に光線を入射させる。これにより、各チャンネルへの入射タイミングがずらされる。
【0040】
送液部16は、各出入口30a、30b、30cのそれぞれにアクセスする第1ピペット50a、第2ピペット50b、第3ピペット50cの3つのピペットが設けられた送液ヘッド43と、この送液ヘッド43を移動させるヘッド移動機構44とからなる。ヘッド移動機構44は、例えば、搬送ベルト、プーリ、キャリッジ、モータなどから構成される周知の移動機構であり、図示を省略したコントローラの制御の下、送液ヘッド43を前後左右上下の3方向に移動させる。SPR測定装置12には、流路30へ注入する種々の液体(リガンド溶液、アナライト溶液、洗浄液、バッファ液など)を保管する複数の液保管部(図示は省略)が設置されている。ヘッド移動機構44は、これらの各液保管部や測定ステージ42にセットされたセンサユニット10などに送液ヘッド43をアクセスさせる。
【0041】
送液ヘッド43の各ピペット50a、50b、50cは、先端に小孔が形成された略円錐筒状をなしており、各々の間隔が各出入口30a、30b、30cの間隔に対応するようにされている。また、各ピペット50a、50b、50cの先端部は、交換可能なチップ状(以下、「ピペットチップ」と称す)にされている。ピペットチップは、送液する液体と直接接触するので、各ピペット50a、50b、50cを介して異種の液体の混液が生じないように、送液毎に交換される。SPR測定装置12には、複数のピペットチップを保管するピペットチップ保管部(図示は省略)が設置されている。ピペットチップの交換は、ヘッド移動機構44を駆動して送液ヘッド43をピペットチップ保管部にアクセスさせることによって行われる。
【0042】
各ピペット50a、50b、50cのそれぞれには、送液ヘッド43と、図示を省略した配管とを介して第1ポンプ45a、第2ポンプ45b、第3ポンプ45cが接続されている。各ポンプ45a、45b、45cは、送液ヘッド43へと至る配管経路内を減圧することによって、対応する各ピペット50a、50b、50cに液体を吸引させるとともに、配管経路内を加圧することによって各ピペット50a、50b、50cに吸引した液体を吐出させる。また、各ポンプ45a、45b、45cは、ポンプドライバ(駆動制御手段)46に接続されている。ポンプドライバ46は、例えば、SPR測定装置12のコントローラに電気的に接続されており、このコントローラからの制御信号に基づいて、各ポンプ45a、45b、45cを独立に駆動し、各ピペット50a、50b、50cの吸い込みや吐き出しのタイミング、及び吸い込み量や吐き出し量などを制御する。なお、各ポンプ45a、45b、45cとしては、例えば、シリンダとピストンとからなる、いわゆるシリンジポンプなどを用いることができる。また、各ポンプ45a、45b、45cにシリンジポンプを用いた際には、ポンプドライバ46として、シリンダ内でピストンを往復動させる周知のスライド移動機構などを用いればよい。
【0043】
送液ヘッド43は、各ピペット50a、50b、50cの先端を各出入口30a、30b、30cに挿し込み、流路30内に種々の液体を注入、及び排出する。この際、液体の注入による流路30の加圧と、液体の吸引による流路30の減圧とが平衡するように送液しないと、排出すべき液体が流路30内に残ってしまったり、流路30から液体が溢れ出てしまったりなどといった送液不具合の要因となる。このため、送液ヘッド43は、各出入口30a、30b、30cとの間に隙間が生じないように各ピペット50a、50b、50cの先端を嵌入させ(図3、4参照)、各ポンプ45a、45b、45cによる圧力変動が流路30に正確に伝わるようにする。
【0044】
各ピペット50a、50b、50cを各出入口30a、30b、30cに嵌入させた後、ポンプドライバ46によって第1ポンプ45aが加圧、第2ポンプ45bが停止、第3ポンプ45cが減圧するように各々を駆動し、第1ピペット50aで液体の注入、第3ピペット50cで排出を行う。この際、第2ポンプ45bを停止させて第2出入口30bからの流体の流通を遮断した状態にしておくと、第2送排液管30fと第3送排液管30gとの間の溝部30d内の流体と、第2送排液管30f内の流体の逃げ場がなくなるので、図3(a)に示すように、参照用リンカー膜33に液体が流れ込むことなく、測定用リンカー膜32にのみ液体を送液することが可能になる(請求項記載の第1経路に相当)。
【0045】
一方、ポンプドライバ46によって第1ポンプ45aが停止、第2ポンプ45bが減圧、第3ポンプ45cが加圧するように各々を駆動し、第3ピペット50cで液体の注入、第2ピペット50bで排出を行うと、図3(b)に示すように、測定用リンカー膜32に液体が流れ込むことなく、参照用リンカー膜33にのみ液体を送液することが可能になる(請求項記載の第2経路に相当)。また、ポンプドライバ46によって第1ポンプ45aが加圧、第2ポンプ45bが減圧、第3ポンプ45cが停止するように各々を駆動し、第1ピペット50aで液体の注入、第2ピペット50bで排出を行うと、図4に示すように、各リンカー膜32、33の双方に液体を送液することが可能になる(請求項記載の第3経路に相当)。このように、送液部16は、各ポンプ45a、45b、45cの駆動を制御することによって、各リンカー膜32、33に個別に送液する経路と、同時に送液する経路とで、流路30の送液経路を選択的に切り替えることができる。なお、上述した3つの送液経路において、加圧と減圧との関係(送液する向き)は、反対であってもよい。
【0046】
SPRを利用した測定は、大きく分けて、固定工程と、測定工程(データ読み取り工程)と、データ解析工程との3つの工程からなる。固定工程は、リガンドが溶解したリガンド溶液(試料溶液)を流路30内に注入し、測定用リンカー膜32にリガンドを固定する工程である。リガンド溶液を注入するリガンド固定化処理を行う前には、まず、測定用リンカー膜32に固定用バッファ液が送液され、測定用リンカー膜32を湿らせてリガンドを結合しやすくする測定用リンカー膜32の活性化処理が施される。例えば、アミンカップリング法では、各リンカー膜32、33としてカルボキシメチルデキストランが使用され、リガンド内のアミノ基をこのデキストランに直接共有結合させる。この場合の活性化液としては、N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)とN−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)との混合液が使用される。この活性化処理の後、固定用バッファ液によって流路30が洗浄される。
【0047】
固定用バッファ液や、リガンド溶液の溶媒(希釈液)としては、例えば、各種のバッファ液(緩衝液)の他、生理的食塩水に代表される生理的塩類溶液や、純水が使用される。これらの各液の種類、pH値、混合物の種類及びその濃度などは、リガンドの種類に応じて適宜決められる。例えば、リガンドとして生体物質を使用する場合には、pHを中性付近に調整した生理的食塩水が使用される場合が多い。しかし、上記アミンカップリング法では、測定用リンカー膜32は、カルボキシメチルデキストランにより負(マイナス)に帯電するので、この測定用リンカー膜32と結合しやすいようにタンパク質を正(プラス)に帯電させるため、生理的とはいえない高濃度のリン酸塩を含む緩衝作用の強いリン酸緩衝溶液(PBS:phosphatic−buffered,saline)などが使用される場合もある。
【0048】
こうした活性化処理及び洗浄が行われた後、流路30へリガンド溶液が注入されてリガンド固定化処理が行われる。リガンド溶液が流路30へ注入されると、溶液中で拡散しているリガンドが徐々に測定用リンカー膜32へ近づいて結合する。こうして測定用リンカー膜32にリガンドが固定される。固定化には、通常、約1時間程度かかり、この間、センサユニット10は、温度を含む環境条件が所定の条件に設定された状態で保管される。なお、固定化が進行している間、流路30内のリガンド溶液を静置しておいてもよいが、流路30内のリガンド溶液を攪拌して流動させることが好ましい。こうすることで、リガンドと測定用リンカー膜32との結合が促進され、リガンドの固定量を増加させることができる。
【0049】
測定用リンカー膜32へのリガンドの固定化が完了すると、流路30からリガンド溶液が排出される。リガンド溶液は、各ピペット50a、50b、50cによって吸い出されて排出される。リガンド溶液が吸い出されると、流路30へ洗浄液が注入されて洗浄処理が行われる。この後、流路30には、乾燥防止液が注入される。こうして、センサユニット10は、各リンカー膜32、33が乾燥防止液に浸された状態で、測定までの間保管される。
【0050】
測定工程では、まず、流路30へ測定用バッファ液が注入される。この後、アナライトを溶媒に溶かしたアナライト溶液(被検液)を注入し、その後、再び測定用バッファ液が注入される。なお、最初に測定用バッファ液を注入する前に、いったん流路30の洗浄を行ってもよい。照明器40と検出器41とによるデータの読み取りは、基準となる信号レベルを検出するために、最初に測定用バッファを注入した直後から開始され、アナライト溶液の注入後、再び測定用バッファが注入されるまでの間行われる。これにより、基準レベル(ベースライン)の検出、アナライトとリガンドの反応状況(結合状況)、測定用バッファ液の注入による結合したアナライトとリガンドとの脱離までのSPR信号を測定することができる。
【0051】
測定用バッファ液や、アナライト溶液の溶媒(希釈液)としては、例えば、各種のバッファ液(緩衝液)の他、生理的食塩水に代表される生理的塩類溶液や、純水が使用される。これらの各液の種類、pH値、混合物の種類及びその濃度等は、リガンドの種類に応じて適宜決められる。例えば、アナライトを溶けやすくするために、生理的食塩水にDMSO(ジメチル−スルホ−オキシド)を含ませてもよい。このDMSOは、信号レベルに大きく影響する。上述したとおり測定用バッファ液は基準レベルの検出に用いられるので、アナライトの溶媒中にDMSOが含まれる場合には、そのDMSO濃度と同程度のDMSO濃度を持つ測定用バッファ液を使用することが好ましい。
【0052】
なお、アナライト溶液は、長期間(例えば、1年)保管されることも多く、そうした場合には、経時変化によって、初期のDMSO濃度と測定時のDMSO濃度との間に濃度差が生じてしまう場合がある。厳密な測定を行う必要がある場合には、こうした濃度差をアナライト溶液を注入したときの参照信号のレベルから推定し、測定データに対して補正(DMSO濃度補正)が行われる。
【0053】
DMSO濃度補正のための補正データは、アナライト溶液を注入する前に、DMSO濃度が異なる複数種類の測定用バッファ液を流路30に注入して、このときのDMSO濃度変化に応じた、測定信号のレベルと参照信号のレベルのそれぞれの変化量を調べることにより求められる。
【0054】
測定用リンカー膜32上の媒質に変化が生じると屈折率が変化して、反射光の光強度が減衰する光の入射角(SPRが発生する共鳴角)も変化する。測定用リンカー膜32上にアナライトを送液すると、アナライトとリガンドの反応状況に応じて測定用リンカー膜32上の屈折率が変化するため、それに応じて共鳴角も変化する。リガンドとアナライトの反応状況は、この受光面内における反射光の減衰位置の推移として表れる。例えば、アナライトがリガンドと接触する前後では、測定用リンカー膜32上の屈折率が異なり、SPRが発生する共鳴角が異なる。そして、アナライトがリガンドと接触して反応を開始すると、それに応じて共鳴角が変化を開始し、前記受光面内における反射光の減衰位置が移動し始める。
【0055】
データ解析工程では、こうして得られた反応状況を表すSPR信号を解析して、アナライトの特性を分析する。前述のように、検出器41は、測定用リンカー膜32に対応するSPR信号を測定信号として出力し、参照用リンカー膜33に対応するSPR信号を参照信号として出力する。これら測定信号と参照信号は、基準レベルの検出から結合反応を経て脱離に至るまで、ほぼ同時に計測される。この測定信号と参照信号の差や比を求めることで、データ解析が行われる。例えば、測定信号と参照信号との差分データを求め、この差分データを測定データとし、これに基づいて解析を行う。こうすることで、センサユニット10や各センサセル23の個体差、及び装置の機械的な変動や、液体の温度変化など、外乱に起因するノイズがキャンセルされ、精度の高い測定が可能になる。
【0056】
次に、図5、及び図6に示すフローチャートを参照しながら、上記構成によるSPR測定装置12の作用について説明する。リガンドとアナライトとの反応状況を測定する際には、まず、センサユニット10を測定ステージ42にセットし、照明器40の光路上に位置する測定位置に一方のセンサセル23を合わせる。前述のように、SPR測定装置12は、センサユニット10にリガンドを固定する固定工程と、固定したリガンドにアナライトを接触させて、その際のSPR信号を取得する測定工程と、取得したSPR信号を解析するデータ解析工程とを行って、リガンドとアナライトとの反応状況を測定する。
【0057】
SPR測定装置12は、センサユニット10がセットされた後、オペレータからの固定開始指示が入力されたことに応じて固定工程を開始する。SPR測定装置12のコントローラは、固定開始指示が入力されたことに応答してヘッド移動機構44を駆動し、送液ヘッド43を測定用リンカー膜32の活性化液を保管する液保管部に移動させる。送液ヘッド43を液保管部にアクセスさせたコントローラは、ポンプドライバ46を介して第1ポンプ45aを駆動し、第1ピペット50aに所定量の活性化液を吸引させる。第1ピペット50aに活性化液を吸引させたコントローラは、送液ヘッド43をセンサユニット10に移動させ、各ピペット50a、50b、50cを、各出入口30a、30b、30cに嵌入させて、測定対象となるセンサセル23の流路30と、各ピペット50a、50b、50cとを接続する。この際、ヘッド移動機構44は、前述のように各ピペット50a、50b、50cと、各出入口30a、30b、30cとの間に隙間が生じないように送液ヘッド43の高さを調整する。
【0058】
各ピペット50a、50b、50cを流路30に接続させたコントローラは、ポンプドライバ46に制御信号を送信し、第1ポンプ45aが加圧、第2ポンプ45bが停止、第3ポンプ45cが減圧するように各々を駆動させる。第1ピペット50aは、内部に保持した活性化液を吐出して流路30内に注入し、第3ピペット50cは、流路30内の空気、もしくは予め注入されていた洗浄液などを吸引して流路30から排出させる。
【0059】
この際、第2ポンプ45bを停止させて第2出入口30bからの流体の流通を遮断した状態にしているので、第2送排液管30fと第3送排液管30gとの間の溝部30d内の流体と、第2送排液管30f内の流体の逃げ場がなくなり、図3(a)に示すように、測定用リンカー膜32にのみ活性化液が送液される。これにより、測定用リンカー膜32に対応した部分の流路30内の流体が、空気又は洗浄液などから活性化液に入れ換えられ、測定用リンカー膜32が活性化される。
【0060】
測定用リンカー膜32の活性化が終了すると、コントローラは、第3ピペット50cが吸引を行うように第3ポンプ45cを駆動し、流路30から活性化液を排出させる。活性化液を排出させたコントローラは、図示を省略した廃液タンクに送液ヘッド43を移動させ、第3ピペット50cに保持された活性化液を廃却した後、活性化液に浸された各ピペット50a、50b、50cのピペットチップを交換する。このようにピペットチップの交換を行うことで、次に送液するリガンド溶液と活性化液との各ピペット50a、50b、50cを介した混液が防止される。
【0061】
ピペットチップの交換を行ったコントローラは、リガンド溶液を保管する液保管部に送液ヘッド43を移動させて、第1ピペット50aにリガンド溶液を吸引させる。リガンド溶液を吸引させたコントローラは、送液ヘッド43をセンサユニット10に移動させ、活性化液と同様の手順で測定用リンカー膜32のみにリガンド溶液を送液し、測定用リンカー膜32にリガンドを固定させる固定化処理を施す。なお、第1ピペット50aと第3ピペット50cとに吸引・吐出を交互に繰り返させて、流路30内に注入したリガンド溶液を攪拌するようにしてもよい。こうすることで、リガンドと測定用リンカー膜32との結合が促進され、リガンドの固定量を増加させることができる。
【0062】
測定用リンカー膜32にリガンドを固定させたコントローラは、参照用リンカー膜33にアナライトが吸着することを防止するブロック処理を実施する。流路30からのリガンド溶液の排出、及びピペットチップの交換などを行ったコントローラは、ブロック液を保管する液保管部に送液ヘッド43を移動させる。なお、ブロック液には、参照用リンカー膜33に応じたブロック剤が溶解している。このブロック剤としては、例えば、HSA(Human Serum albumine)やBSA(Bovine Serum albumine)に代表される血清アルブミン、及びカゼインなどを用いることができる。ブロック剤は、アナライトの種類や各リンカー膜32、33の製膜材料などに応じて、適宜選択される。
【0063】
液保管部に送液ヘッド43を移動させたコントローラは、ポンプドライバ46を介して第3ポンプ45cを駆動し、第3ピペット50cに所定量のブロック液を吸引させる。第3ピペット50cにブロック液を吸引させたコントローラは、送液ヘッド43をセンサユニット10に移動させ、各ピペット50a、50b、50cを流路30に接続する。
【0064】
各ピペット50a、50b、50cを流路30に接続させたコントローラは、ポンプドライバ46に制御信号を送信し、第1ポンプ45aが停止、第2ポンプ45bが減圧、第3ポンプ45cが加圧するように各々を駆動させ、図3(b)に示すように、参照用リンカー膜33にのみブロック液を送液する。ブロック液中に溶解したブロック剤は、参照用リンカー膜33に接触して結合する。このように、予め参照用リンカー膜33にブロック剤を結合させておくことで、測定に際して送液されるアナライトの参照用リンカー膜33への非特異的な結合が防止される。
【0065】
以上のように、測定用リンカー膜32にリガンドを、参照用リンカー膜33にブロック剤を、それぞれ結合させることによって固定工程が終了する。本例では、各ポンプ45a、45b、45cの駆動を制御し、それぞれの溶液が一方の各リンカー膜32、33にのみ送り込まれるようにしたので、参照用リンカー膜33にリガンドが付着したり、測定用リンカー膜32にブロック剤が付着するなどといった非特異的な結合を確実に防止することができる。また、本例では、リガンド固定化処理を行った後にブロック処理を行うようにしているが、もちろん、ブロック処理を先に行ってもよい。さらに、参照用リンカー膜33に結合する可能性の低いアナライトを送液する際には、ブロック処理を行わなくてもよい。
【0066】
固定工程が終了したSPR測定装置12は、温度などの環境条件を一定に保った状態でセンサユニット10を保持し、オペレータからの測定開始指示が入力されたことに応じて測定工程を開始する。コントローラは、測定開始指示が入力されたことに応答して、照明器40と検出器41とによるデータ読み取りを開始させる。また、これと同時に、ヘッド移動機構44を駆動して送液ヘッド43を測定用バッファ液を保管する液保管部に移動させる。液保管部に送液ヘッド43を移動させたコントローラは、ポンプドライバ46を介して第1ポンプ45aを駆動し、第1ピペット50aに所定量の測定用バッファ液を吸引させる。
【0067】
第1ピペット50aに測定用バッファ液を吸引させたコントローラは、送液ヘッド43をセンサユニット10に移動させ、測定対象となるセンサセル23の流路30に、各ピペット50a、50b、50cを接続する。各ピペット50a、50b、50cを流路30に接続したコントローラは、ポンプドライバ46に制御信号を送信し、第1ポンプ45aが加圧、第2ポンプ45bが減圧、第3ポンプ45cが停止するように各々を駆動させ、図4に示すように、各リンカー膜32、33の双方に一度に測定用バッファ液を送液する。
【0068】
測定用バッファ液を流路30に注入したコントローラは、ピペットチップの交換などを行った後、送液ヘッド43をアナライト溶液を保管した液保管部に移動させ、以下同様にして、アナライト溶液と脱離反応用の測定用バッファ液とを順次流路30に送液する。この際、参照用リンカー膜33にブロック処理を施したので、参照用リンカー膜33へのアナライトの結合が防止される。脱離反応用の測定用バッファ液を流路30に注入させたコントローラは、照明器40と検出器41とによるデータ読み取りを停止させる。これにより、検出器41は、基準レベル(ベースライン)の検出、アナライトとリガンドの反応状況(結合状況)、結合したアナライトとリガンドとの脱離までのSPR信号が取得される。
【0069】
SPR信号を取得したSPR測定装置12は、測定用リンカー膜32に対応した測定信号から参照用リンカー膜33に対応した参照信号を差し引いて測定データを算出し、この測定データを基にしてリガンドとアナライトとの反応状況を解析する。以上により、1つのセンサセル23に対する測定が終了する。本例のように、1つのセンサユニット10に複数のセンサセル23が含まれる際には、上記と同様の手順でそれぞれのセンサセル23の測定を行う。
【0070】
なお、上記実施形態では、金属膜31を含むセンサユニット10を、請求項記載の流路ユニットとしているが、例えば、流路30が形成された流路部材20のみを流路ユニットとしてもよい。また、流路部材20のみを流路ユニットとする際には、流路部材20とプリズム21とをそれぞれ個別にSPR測定装置12にセットするようにしてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、各工程を一つのSPR測定装置12で行うようにしているが、各工程毎に装置を分けるようにしてもよい。こうすることで、複数のセンサユニット10を同時に処理することが可能となり、処理効率を向上させることができる。
【0072】
さらに、上記実施形態では、第3送排液管30gの部分で送液経路が重複してしまうため、測定用リンカー膜32と参照用リンカー膜33とを分けて形成しているが、測定用リンカー膜32と参照用リンカー膜33とは、一続きに形成するようにしてもよい。
【0073】
なお、上記実施形態では、溝部30dと、3つの送排液管30e、30f、30gとからなる略山字型の流路30を示しているが、送排液管の数は3つに限ることなく、さらに多くの送排液管を設けるようにしてもよい。図7に示すセンサユニット100の流路部材101には、溝部102aと、等間隔に形成された5本の送排液管102bとからなる流路102が形成されている。プリズム103の上面に形成された金属膜104には、各送排液管102bの間に位置するように、4つのリンカー膜105が設けられている。
【0074】
送液ヘッド110には、各送排液管102bのそれぞれに対応したピペット111が設けられている。各ピペット111には、上記実施形態と同様に、それぞれに対応したポンプ112が接続されている。各ポンプ112は、ポンプドライバ113によって駆動され、ピペット111に至る配管経路内を加圧又は減圧して、各ピペット111に液体の吸引又は吐出を行わせる。
【0075】
このように構成されたセンサユニット100と、送液ヘッド110では、各ポンプ112のいずれか1つが加圧、いずれか1つが減圧、残り全てが停止するように各々を駆動し、流路102への液体の注入と排出とを、それぞれ1つずつのピペット111で行わせる。これにより、例えば、両端部に位置する2つのピペット111で液体の注入と排出とを行い、間に位置する3つの送排液管102bからの流体の流通を遮断しておけば、各リンカー膜105に同時に送液することができる。また、隣り合う2つのピペット111で液体の注入と排出とを行い、他の3つの送排液管102bからの流体の流通を遮断しておけば、2つのピペット111の間に位置する1つのリンカー膜105にのみ送液することができる。このように、各ポンプ112の駆動を制御することによって、全てのリンカー膜105に同時に送液したり、各リンカー膜105に個別に送液したり、さらには、隣り合う2つ、又は3つのリンカー膜105に送液するなど、流路102の送液経路を選択的に切り替えて汎用性の高い送液を行うことができる。
【0076】
なお、各リンカー膜105は、測定用と参照用とを交互に並べるものでもよいし、各リンカー膜105に測定領域と参照領域とを形成するものでもよい。さらに、高い精度が要求されない場合など、測定信号のノイズを除去する必要がなければ、測定用のリンカー膜のみを並べるものでもよい。
【0077】
また、上記各実施形態では、誘電体ブロックとしてプリズム21、103を示しているが、誘電体ブロックには、この他に、光学ガラスや光学プラスチックなどを板状にしたものや、これらの板状のものとプリズムとを光学面平滑剤(例えば、光学マッチングオイル)で一体化させたものなどを含めるものとする。
【0078】
さらに、上記各実施形態では、全反射減衰を利用した測定装置の一例として、SPR測定装置を示したが、全反射減衰を利用した測定装置としては、この他に、例えば、漏洩モードセンサが知られている。漏洩モードセンサは、誘電体と、この上に順に層設されたクラッド層と光導波層とによって構成された薄膜とからなり、この薄膜の一方の面がセンサ面となり、他方の面が光入射面となる。光入射面に全反射条件を満たすように光を入射させると、その一部が前記クラッド層を透過して前記光導波層に取り込まれる。そして、この光導波層において、導波モードが励起されると、前記光入射面における反射光が大きく減衰する。導波モードが励起される入射角は、SPRの共鳴角と同様に、センサ面上の媒質の屈折率に応じて変化する。この反射角の減衰を検出することにより、前記センサ面上の化学反応が測定される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】センサユニットの概略構成を示す分解斜視図である。
【図2】SPR測定装置の構成を概略的に説明する説明図である。
【図3】各リンカー膜に個別に送液する例を示す説明図である。
【図4】各リンカー膜に同時に送液する例を示す説明図である。
【図5】SPR測定装置による測定の手順を示すフローチャート(1/2)である。
【図6】SPR測定装置による測定の手順を示すフローチャート(2/2)である。
【図7】送排液管などの数を増やした例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0080】
10、100 センサユニット(流路ユニット)
12 SPR測定装置(全反射減衰を利用した測定装置)
14 測定部
16 送液部(送液装置)
20、101 流路部材
21、103 プリズム(誘電体ブロック)
30、102 流路
30a 第1出入口
30b 第2出入口
30c 第3出入口
30d 溝部
30e 第1送排液管
30f 第2送排液管
30g 第3送排液管
30h 薄肉部分
31、104 金属膜(センサ面、薄膜層)
32 測定用リンカー膜(測定用高分子膜)
33 参照用リンカー膜(参照用高分子膜)
40 照明器(光源)
41 検出器(検出手段)
42 測定ステージ(ステージ)
43、110 送液ヘッド
45a 第1ポンプ
45b 第2ポンプ
45c 第3ポンプ
46 ポンプドライバ(駆動制御手段)
50a 第1ピペット
50b 第2ピペット
50c 第3ピペット
111 ピペット
102a 溝部
102b 送排液管
112 ポンプ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を含む試料溶液の注入と排出とが行われる3つの出入口を通じて注入された前記試料溶液を前記各出入口間で送液する流路が形成され、前記試料の反応を検出するためのセンサ面に底面を当接させて、前記流路に流れる前記試料溶液を前記センサ面に接触させる流路ユニットが着脱自在にセットされるステージと、
前記各出入口のぞれぞれに嵌入する3つのピペットが設けられた送液ヘッドと、
前記各ピペットのそれぞれに対応して設けられ、前記各ピペット内を加圧又は減圧して前記各ピペットに前記試料溶液を吸引又は吐出させることにより、前記流路に前記試料溶液を送り込む3つのポンプとを備えた送液装置において、
前記流路は、前記底面に形成された溝部と、前記溝部の両端のそれぞれから前記流路ユニットの上面に貫通して前記出入口を形成する第1送排液管、第2送排液管と、前記溝部の略中央から前記上面に貫通して前記出入口を形成する第3送排液管とから構成されており、
前記各ポンプの加圧、減圧、停止を制御することによって、前記第1送排液管から前記溝部を介して前記第3送排液管へと至る第1経路と、前記第2送排液管から前記溝部を介して前記第3送排液管へと至る第2経路と、前記第1送排液管から前記溝部を介して前記第2送排液管へと至る第3経路とで、前記流路の送液経路を選択的に切り替える駆動制御手段を設けたことを特徴とする送液装置。
【請求項2】
前記駆動制御手段は、前記第1送排液管に嵌入した前記ピペットに対応する前記ポンプが加圧、前記第2送排液管に嵌入した前記ピペットに対応する前記ポンプが停止、前記第3送排液管に嵌入した前記ピペットに対応する前記ポンプが減圧、するように前記各ポンプを駆動して前記第1経路を選択し、
前記第1送排液管に嵌入した前記ピペットに対応する前記ポンプが停止、前記第2送排液管に嵌入した前記ピペットに対応する前記ポンプが減圧、前記第3送排液管に嵌入した前記ピペットに対応する前記ポンプが加圧、するように前記各ポンプを駆動して前記第2経路を選択し、
前記第1送排液管に嵌入した前記ピペットに対応する前記ポンプが加圧、前記第2送排液管に嵌入した前記ピペットに対応する前記ポンプが減圧、前記第3送排液管に嵌入した前記ピペットに対応する前記ポンプが停止、するように前記各ポンプを駆動して前記第3経路を選択することを特徴とする請求項1記載の送液装置。
【請求項3】
前記各ポンプは、停止している際に、前記ピペットが嵌入した前記出入口からの流体の流通を遮断することを特徴とする請求項1又は2記載の送液装置。
【請求項4】
前記第1経路に対応する前記センサ面上には、前記試料を固定して、前記試料の反応状況を表す測定信号を取得するための測定用高分子膜が設けられ、
前記第2経路に対応する前記センサ面上には、前記測定信号のノイズを除去する際に用いる参照信号を取得するための参照用高分子膜が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の送液装置。
【請求項5】
試料を含む試料溶液の注入と排出とが行われる複数の出入口を通じて注入された前記試料溶液を前記各出入口間で送液する流路が形成され、前記試料の反応を検出するためのセンサ面に底面を当接させて、前記流路に流れる前記試料溶液を前記センサ面に接触させる流路ユニットが着脱自在にセットされるステージと、
前記各出入口のぞれぞれに嵌入する複数のピペットが設けられた送液ヘッドと、
前記各ピペットのそれぞれに対応して設けられ、前記各ピペット内を加圧又は減圧して前記各ピペットに前記試料溶液を吸引又は吐出させることにより、前記流路に前記試料溶液を送り込む複数のポンプとを備えた送液装置において、
前記流路は、前記底面に形成された溝部と、前記溝部から前記流路ユニットの上面に貫通して前記各出入口を形成する複数の送排液管とから構成されており、
前記各ポンプの加圧、減圧、停止を制御することによって、前記各送排液管と前記溝部とによって形成される複数の送液経路を選択的に切り替える駆動制御手段を設けたことを特徴とする送液装置。
【請求項6】
試料を含む試料溶液の注入と排出とが行われる3つの出入口を通じて注入された前記試料溶液を前記各出入口間で送液する流路が形成され、前記試料の反応を検出するためのセンサ面に底面を当接させて、前記流路に流れる前記試料溶液を前記センサ面に接触させる流路ユニットをステージにセットし、
3つのピペットが設けられた送液ヘッドを前記流路ユニットにアクセスさせて、前記各ピペットを前記各出入口に嵌入し、
前記各ピペットのそれぞれに対応して設けられた3つのポンプに、前記各ピペット内を加圧又は減圧させて前記各ピペットに前記試料溶液を吸引又は吐出させることにより、前記流路に前記試料溶液を送り込む送液方法において、
前記底面に形成された溝部と、前記溝部の両端のそれぞれから前記流路ユニットの上面に貫通して前記出入口を形成する第1送排液管、第2送排液管と、前記溝部の略中央から前記上面に貫通して前記出入口を形成する第3送排液管とから構成される前記流路の送液経路を、前記各ポンプの加圧、減圧、停止を制御する駆動制御手段によって、前記第1送排液管から前記溝部を介して前記第3送排液管へと至る第1経路と、前記第2送排液管から前記溝部を介して前記第3送排液管へと至る第2経路と、前記第1送排液管から前記溝部を介して前記第2送排液管へと至る第3経路とに選択的に切り替えて前記試料溶液を送液することを特徴とする送液方法。
【請求項7】
一面に薄膜層が形成された誘電体ブロックと、試料を含む試料溶液の注入と排出とが行われる3つの出入口を通じて注入された前記試料溶液を前記薄膜層に送液する流路が形成され、前記薄膜層に底面を当接させて、前記流路に流れる前記試料溶液を前記薄膜層に接触させる流路部材とからなるセンサユニットを、前記薄膜層に全反射条件を満足するように光を照射する光源と、前記薄膜層からの反射光を受光して電気信号に光電変換する検出手段とが設けられたステージにセットし、
3つのピペットが設けられた送液ヘッドを前記センサユニットにアクセスさせて、前記各ピペットを前記各出入口に嵌入し、
前記各ピペットのそれぞれに対応して設けられた3つのポンプに、前記各ピペット内を加圧又は減圧させて前記各ピペットに前記試料溶液を吸引又は吐出させることにより、前記流路に前記試料溶液を送り込んで前記薄膜層上での前記試料の反応状況を測定する全反射減衰を利用した測定方法において、
前記底面に形成された溝部と、前記溝部の両端のそれぞれから前記流路部材の上面に貫通して前記出入口を形成する第1送排液管、第2送排液管と、前記溝部の略中央から前記上面に貫通して前記出入口を形成する第3送排液管とから構成される前記流路の送液経路を、前記各ポンプの加圧、減圧、停止を制御する駆動制御手段によって、前記第1送排液管から前記溝部を介して前記第3送排液管へと至る第1経路と、前記第2送排液管から前記溝部を介して前記第3送排液管へと至る第2経路と、前記第1送排液管から前記溝部を介して前記第2送排液管へと至る第3経路とに選択的に切り替えて前記試料溶液を送液することを特徴とする全反射減衰を利用した測定方法。
【請求項8】
前記第1経路に対応する前記薄膜層上には、前記試料を固定して前記試料の反応状況を表す測定信号を取得するための測定用高分子膜が、前記第2経路に対応する前記薄膜層上には、前記測定信号のノイズを除去する際に用いる参照信号を取得するための参照用高分子膜が、それぞれ設けられており、
前記流路に前記試料溶液を送液する際には、前記駆動制御手段によって前記第1経路を選択し、
前記第1経路に前記試料溶液を送液して、前記測定用高分子膜にのみ前記試料溶液を接触させることを特徴とする請求項7記載の全反射減衰を利用した測定方法。
【請求項9】
前記測定用高分子膜に前記試料を固定させた後、前記駆動制御手段によって前記第3経路を選択し、
前記第3経路に前記試料と反応させる被検体を含む被検液を送液して、前記測定用高分子膜と前記参照用高分子膜とに前記被検液を接触させ、
前記試料と前記被検体との反応状況を表す前記測定信号と、この測定信号に対応した前記参照信号とを、前記光源と前記検出手段とによって測定することを特徴とする請求項8記載の全反射減衰を利用した測定方法。
【請求項10】
前記参照用高分子膜に前記被検液を接触させる前に、前記駆動制御手段によって前記第2経路を選択し、
前記参照用高分子膜に前記被検体が結合することを防止するブロック剤を含むブロック液を前記第2経路に送液して、前記参照用高分子膜に前記ブロック液を接触させ、
前記参照用高分子膜に前記ブロック剤を結合させることを特徴とする請求項9記載の全反射減衰を利用した測定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−10538(P2007−10538A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193423(P2005−193423)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】