説明

通信検出システムにおいて位相差およびドップラー効果に対する耐性を得るための方法および装置

マルチユーザ同時信号送信システムにおいて干渉を減少するための符号化および復号化方法および装置。本発明は、伝送媒体で信号を送受信する必要がある任意のシステムに適用されるときに、送受信される信号間の位相差による影響をなくすことができるようにし、かつ異なる送信機および受信機の速度差によって生じるドップラー効果をなくすことができるようにする符号化および復号化方法および装置を提供する。この方法は、現在のシステムよりも空間分解能が大きく、かつ計算力が低い検出システム(レーダー、ソーナー分光法、NDTなど)を設計できるようにすることによって、前記影響を低減できるようにする。同様に、データフローが受信される際の位相とは無関係に複数の直交データフローの同時通信を行う必要があるシステムでは、この方法はまた、受信機に到達する際の位相およびドップラー効果とは無関係に多元接続干渉を打ち消すことができるようにする。最後に、この方法は、信号の送信と受信を同時に行うことができるようにし、したがって、パルス圧縮を使用するシステムにおける測定間のブラインド時間をなくすことができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に関する本発明は、符号化および復号化方法および装置であって、伝送媒体で信号を送受信する必要がある任意のシステムに適用されるときに、送受信される信号間の位相差による影響をなくすことができるようにし、かつ異なる送信機および受信機の速度差によって生じるドップラー効果をなくすことができるようにする符号化および復号化方法および装置である。この方法は、現在のシステムよりも空間分解能が大きく、かつ計算力が低い検出システム(レーダー、ソーナー、分光法、NDTなど)を設計できるようにすることによって、前記影響を低減できるようにする。
【背景技術】
【0002】
同様に、データフローが受信される際の位相とは無関係に複数の直交データフローの同時通信を行う必要があるシステム(例えば、移動体通信またはマルチポイントツーポイント、DSL用途などの上り方向)では、この方法は同様に、受信機に到達する際の位相およびドップラー効果とは無関係に多元接続干渉を打ち消すことができるようにする。
【0003】
最後に、この方法により、信号の送信と受信を同時に行うことができ、したがって、パルス圧縮を使用するシステムにおける測定間のブラインド時間をなくすことができる。
【0004】
本発明は、この技術の広範な使用範囲により、広範囲の分野にわたって適用可能である。非限定的な例として、通信分野での使用に言及することができる。同様に、この技術は、レーダーまたはソーナー通信に関連する軍事および民用分野で非常に有用であり、この技術の重要性および多用途性を例として挙げると、超音波走査、磁気共鳴走査、またはコンピュータ体軸断層撮影など画像ベースの医療診断装置、および非侵襲性の物理的および化学的な量の測定およびスペクトル分析にも適用可能であり、とりわけ、この技法は、送信システムの転送機能を直接実現することができる。
【0005】
最新の検出システムは、信号を送信し、その信号が、媒体を通して伝播され、検出対象の物体によって吸収または反射されるとパラメータを変更され、したがって、信号が受信される際の位相ならびに周波数および振幅が、受信機に対する検出対象の物体の変位によって変えられる。また、受信される信号は、前記物体での吸収および反射の影響により異なる振幅を有して位相および周波数がずれた元の信号のコピーによって形成されることが明らかである。
【0006】
さらに、遠隔分解能が、これらのタイプのシステムでの最も重要な因子の1つであり、これは、送信される信号の形態によって制限されるだけでなく、位相歪、特にドップラー効果およびクラッター効果によっても制限される。
【0007】
デジタルパルス圧縮は、理想的な自己相関(低いサイドローブによって定義される最大ピーク)をもつ2進系列の使用を可能にするので、遠隔分解能を高めるために最も頻繁に使用される技法の1つである。バーカー系列が、ドップラー効果への耐性を実証されていることから、数年来最も広く使用されているリソースの1つである。しかし、それらの長さは比較的短い(13ビット以下)ため、他の技法を使用することができない低ノイズ環境または強いドップラー効果が起きる環境に用途が限定される。J. Watkins等による論文(「A Binary Sequence of Period 64 with Better Autocorrelation Properties Than Barker Sequence of Period 13」, JPL, TDA Progress Report, April−June 1985)が、バーカー系列よりも良い特性を得ることができる可能性を示しているが、これが現在知られている唯一の例であり、前記特性を有するより長い系列が存在するとは考えられていない。
【0008】
線形周波数変調関数(LFM)による圧縮、すなわち「チャープ(chirps)」、およびその変形形態が、現在最も頻繁に使用されている技法である。というのも、これは、使用される帯域でのエネルギーを最適化し、それにより理想的な自己相関関数が得られるという利点を有するからである(米国特許第4633185号、米国特許第4309703号)。逆に、受信される信号の「ウィンドウイング(windowing)」またはフィルタリングなど比較的複雑なプロセスを行わない限り、ドップラー効果に対する耐性は低く、サイドローブは比較的高い。
【0009】
ゴーレイ系列によるパルス圧縮が、本特許の発明者に属するものもいくつか含め、多くの特許および刊行物で既に取り扱われている。しかし、それらはすべて、位相変化および周波数変化の影響を非常に受けやすいという欠点を有し、そのため、チャープ信号の場合と同様に、補償しなければならない高いサイドローブが発生するので、ドップラー効果を伴うレーダーおよびソーナー用途に使用が限定される(米国特許第5440311号、米国特許第5151702号、米国特許第4353067号)。しかし、相補系列の利点の1つは、交差相関がゼロのコードの組合せを見出すことができることであり、これは、異なる検出システム間の干渉の減少を容易にする。これは既に米国特許第5047784号または国際出願第PCT/ES2008/000734号で考察されている。しかし、どちらの技法もクラッターおよびドップラー効果に敏感であり、補償が必要である。1つの解決策は、米国特許第5376939号におけるようなドップラー効果補償フィルタの使用であるが、これは信号処理を過剰に複雑にする。
【0010】
ドップラー効果補償技法は、非常に多様であり、それに関連する多くの特許があるが(米国特許第7439906号、米国特許第5414428号、米国特許第3945010号)、前記特許は本特許の目的には関連していない。というのも、本特許が提供する技法は、ドップラー効果補償を必要とせず、前記効果に対する耐性があるからである。
【0011】
他方で、通信システムにおける主要な問題の1つは、ユーザ間の干渉である。符号分割またはCDMAに基づくシステムは、異なるユーザが使用する異なる系列間の低い交差相関に基づくシステムである。前記交差相関がゼロでないことにより、複数のユーザによる同時アクセスによる干渉(MAI(多元接続干渉)と呼ばれる)があり、これは、前記干渉に関連する限界を超えてユーザ数が増加するのを妨げる。セル内でのユーザの互いに対する移動、および基地局に対する移動が、ドップラー効果により位相および周波数の歪を引き起こすことは明らかであり、これは時として修正することができず、または伝送速度を低下させる。これは特に、ユーザ間での異なる距離および速度により、同期および低い相互干渉の維持が難しくなるマルチポイントツーポイント・システム(衛星リンクや移動体通信など)で問題となる。
【0012】
同様に、ユーザと基地局のリンクにおいて、異なるユーザ間で位相差があり、これが干渉を増加させる。
【0013】
さらに、高速で移動する車両(航空機、電車、宇宙船、ミサイル、衛星など)間の通信は、高速ではスペクトル効率またはデータ伝送速度が急速に下がるので、非常に繊細なものである。
【0014】
同様に、加入者またはサービス間で同じ周波数帯域を共有する影響が、特にxDSLケーブルに基づく帯域幅アクセスシステムでは問題となり、そのようなシステムでは、同じケーブル対を共有する加入者の数が増えたときに、リモートディアフォニーまたはテレディアフォニー(FEXT、遠端漏話)により、各加入者に関するデータ伝送速度が所与の距離にわたって減少する。この影響は重大になることがあり、約12Mbpsの平均速度では、あるサービスに関するカバレッジを最大50%減少させ、20Mbpsの速度の場合には最大2500%減少させ、カバレッジ半径が1kmから200mに減少される。
【0015】
相補系列セットを使用することにより異なる搬送波によって使用される符号化が、例えばHsiao−Hwa Chen等によって公開された論文(「A Multicarrier CDMA Architecture Based on Orthogonal Complementary Codes for New Generations of Wideband Wireless Communications」, IEEE Communications Magazine, Oct 2001, pp.126−135)などいくつかの論文で既に考察されている。
【0016】
同じ解決策に対する別の手法は、Zao Ying等によって「Complex Orthogonal Spreading Sequences Using Mutually Orthogonal Complementary Sets」, MILKON Internacional conference, 2006. 22−24 May, pp.622−625で提案されている。この論文は、系列および搬送波当たり4つの位相が使用されるように修正された相補系列の使用を考察している。両方法は、使用される系列に関する小さな修正以外は同一である。
【0017】
最後に、Shu−Ming Tsengによる論文(「Asynchronous Multicarrier DS−CDMA Using Mutually Orthogonal Complementary Sets of Sequences」, IEEE Trans. On Comm, Vol. 48, No. 1, Jan 2000, pp.53−59)を参照しなければならず、これは、他の論文で考察されているのと同じ変調および復調プロセスを繰り返すが、わずかな修正を伴う。
【0018】
さらに、レーダーやソーナーなどのパルス圧縮ベース検出システムの主な欠点の1つは、圧縮された信号が送信される時間中に受信段階を使用不可にする必要があることであり、これは「ブラインド時間」として知られている。前記段階が使用不可にされない場合、飽和状態になり、放出された信号が完全に送信されるまでは、受信機に到達する反射パルスを正確に受信することができなくなる。この影響は、パルスレーダーを測定することができる最小距離と、信号を圧縮するときに得ることができる最大処理利得との両方を制限する。これを避けるために、典型的な解決策は、送信中の受信段階の飽和を避けるのに十分な指向性を有する別の信号受信トランスデューサを追加することからなる。
【0019】
上記のすべてのことから、一方では、情報の効率的で単純な伝送(圧縮/符号化プロセス)を可能にし、他方では、受信される信号間の位相差、ドップラー効果、および「クラッター」効果による弱め合う効果を減少できるようにし、さらにレーダーおよびソーナーシステムでの「ブラインド時間」をなくすことができる符号化技法が必要であると考えることができる。
【0020】
明らかな用途としては、とりわけ、移動体電話、レーダーまたはソーナーシステムの最適化、および医療画像の生成、またはスペクトル分析が挙げられる。
【0021】
本明細書で開示する特徴と同一または同様の特徴を有する参考文献、特許、または実用新案の存在は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国特許第4633185号
【特許文献2】米国特許第4309703号
【特許文献3】米国特許第5440311号
【特許文献4】米国特許第5151702号
【特許文献5】米国特許第4353067号
【特許文献6】米国特許第5047784号
【特許文献7】国際出願第PCT/ES2008/000734号
【特許文献8】米国特許第5376939号
【特許文献9】米国特許第7439906号
【特許文献10】米国特許第5414428号
【特許文献11】米国特許第3945010号
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】J. Watkins等「A Binary Sequence of Period 64 with Better Autocorrelation Properties Than Barker Sequence of Period 13」, JPL, TDA Progress Report, April−June 1985
【非特許文献2】Hsiao−Hwa Chen等「A Multicarrier CDMA Architecture Based on Orthogonal Complementary Codes for New Generations of Wideband Wireless Communications」, IEEE Communications Magazine, Oct 2001, pp.126−135
【非特許文献3】Zao Ying等「Complex Orthogonal Spreading Sequences Using Mutually Orthogonal Complementary Sets」, MILKON Internacional conference, 2006. 22−24 May, pp.622−625
【非特許文献4】Shu−Ming Tseng「Asynchronous Multicarrier DS−CDMA Using Mutually Orthogonal Complementary Sets of Sequences」, IEEE Trans. On Comm, Vol. 48, No. 1, Jan 2000, pp.53−59
【非特許文献5】C.C.TsengおよびC.L.Liu「Complementary Sets of Sequences」, IEEE Trans.Inform.Theory, Vol.IT−18, no.5, pp.644−651, September 1972
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0024】
本説明で言及する本発明は、最大N個の異なる直交チャネルを使用するN個の相補系列からなるセットの使用に基づく。相補とは、系列の自己相関の和がクロネッカーのデルタになることを意味するものと理解される。
【0025】
さらにまた、Nの値は、互いに直交するN個の相補系列(A1〜AN、B1〜BN、C1〜CNなど)からなるセット(A、B、C、・・・)の数と一致する。
【0026】
直交とは、各セットの相補系列の交差相関の和がゼロであることを意味するものと理解される。
【0027】
これらは、所望の結果を得るために本特許で使用される2つの性質である。直交系列が対(N=2)となっている特別な場合には、発見者にちなんでゴーレイ系列と呼ばれる。
【0028】
本明細書で使用される系列の主な性質は、それらが理想的な自己相関特性を有し、すなわちサイドローブがない完全なクロネッカーのデルタ、および直交系列セット内の群間の相互交差相関がゼロであることに対応することである。
【0029】
結果を適切に実施するために、システムは、以下の2つの明確に区別されたブロックから構成される。
a.送信符号化システム
b.受信復号化システム
【0030】
また、方法は、以下のようなものである。
【0031】
制御信号がコード発生器を作動させ、コード発生器がN個の同時のコードを発生する。コードセットの各コードまたは要素が、コードごとに異なる周波数(f1〜fN)を使用して直交変調器によって送信される。周波数ごとに、セットのコードの少なくとも1つが同相で送信され、かつ同じコードが、符号を変えられて直交位相で送信される。各変調器の出力は、対応する中間周波数での変調された複素信号に対応する。前記出力が加算されて、周波数変換器を使用して伝送周波数に上げられ、信号が増幅され、前記媒体に適合されたトランスデューサを使用して媒体に送信される。
【0032】
復号器装置は、媒体に適合されたトランスデューサによって受信された信号に作用し、周波数変換器を使用して信号の周波数を下げ、これは信号を中間周波数まで下げ、それにより信号を各直交位相復調器ブロックによって処理することができるようにする。同相出力および直交位相出力は、ローパスフィルタによってフィルタリングされてベースバンド成分が抽出され、前記信号が相関器ブロックで相関され、その出力が加算器によって加算され、それぞれ実数成分および虚数成分が得られる。これは、受信される符号の振幅の測定だけでなく、受信機に到達する際の位相も測定も可能にする。
【0033】
この方法を的確に使用することにより、受信される信号(実数部および虚数部)を、受信される異なる信号またはエコーが到達する際のドップラー効果および位相差に対して耐性があるものにすることができるようになり、また「クラッター」効果も減少させる。同時に、前記性質は、レーダーおよびソーナーシステムでの「ブラインド時間」をなくすことができるようにする。
【0034】
さらに、直交セットの性質を適用することによって、異なるセットまたは直交系列を使用して、他の検出システム(レーダーやソーナーなど)の相互相関を実現することができ、したがって、互いに近くに位置される場合または同じ伝送周波数を使用する場合でさえ相互干渉をなくすことができる。
【0035】
本発明をより良く理解する助けとなるように、3枚の図面を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】N個のコードとN個の同時周波数を使用する単一の送信機に関する符号化システムのブロック図である。使用される系列および変調される周波数を除き、すべての発生ブロックおよびN個のコードに関して繰り返される直交変調は同一である。
【図2】独立して送受信されるN個のコードを用いる単一の受信機に関するブロック図を示す。使用される系列および変調される周波数を除き、N個のコードに関して繰り返されるすべての直交位相復調、フィルタリング、および相関ブロックが同一である。
【図3】「ブラインド時間」の抑制に対応するパラメータを表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
開示する本発明は、1つの同一の帰結のために、2つの独立した請求項群を備える。
−一方では、装置が特許請求される。
−他方では、前記装置を使用する方法が特許請求される。
【0038】
前記方法を実施するために、信号を符号化する機能と信号を復号化する機能との2つの機能を有する装置が必要である。
【0039】
この方法は、N個の相補系列からなるセットを使用する。相補とは、系列の自己相関の和がクロネッカーのデルタになることを意味するものと理解される。
【0040】
さらにまた、Nの値は、互いに直交する相補系列からなるセットの数と一致する。
【0041】
直交とは、各セットの相補系列の交差相関の和がゼロであることを意味するものと理解される。
【0042】
これらは、所望の結果を得るために本特許で使用される2つの性質である。直交系列が対(N=2)となっている特別な場合には、発見者にちなんでゴーレイ系列と呼ばれる。
【0043】
通信システムとして定義される装置は、2つの主要なブロック、すなわち符号器と復号器から構成される。
【0044】
符号化システムは、明らかにデータ待ち状態の送信となることがある信号間隔を制御するために相補系列のセットを生成して送信する役割をする。逆に、復号器は、受信された信号を、送信時に使用されたのと同じ相補系列セットと相関させて、結果を加算して元の情報を得る役割をする。
【0045】
本明細書で使用される系列の主要な性質は、それらの理想的な自己相関特性であり、すなわち、以下の式を満たすように、サイドローブがない完全なクロネッカーのデルタ、および直交系列セット内の群間の相互交差相関がゼロであることに対応する。
【0046】
【数1】

【0047】
φiiは、長さNの選択されたM個の相補系列それぞれの個々の自己相関であり、ΦとΩは、自己相関の周波数応答と、使用される帯域幅内での長さNの直交系列のセット内の群Ωの相補系列iの周波数応答であり、は共役演算子である。
【0048】
そのような系列は、現在知られているいわゆる2、10、および26ビットの基本カーネルに関して生成される(相補系列の群の生成規則は、IEEE Trans.Inform.Theory, Vol.IT−18, no.5, pp.644−651, September 1972に公開されているC.C.TsengおよびC.L.Liuによる論文「Complementary Sets of Sequences」において論じられている)。
【0049】
この技法を理解するために、プロセスのブロック図(図1および図2)によれば、以下のことが観察される。
【0050】
図1に概略的に示される符号化ブロックは、以下のように働く。
【0051】
帯域幅がBである送信すべき情報または制御信号(10)がコード発生器(9)を作動し、それにより信号は、N個の要素からなる相補系列セットのN個の相補系列によって符号化される。
【0052】
出力は、実際には、コード発生器(9)によって生成される、制御信号と各系列との畳み込みに対応し、信号(11)、(13)、・・・、(21)に変換される。
【0053】
同様に、周波数ごとに、セットのコード(A1)、(A2)、・・・、(AN)の少なくとも1つが同相で送信され、符号を変えられた同じコード(−A1)、(−A’’)、・・・、(−AN)が直交位相で送信され、これらは、信号(12)、(14)、・・・、(22)に対応し、符号を変えられた同じ信号と前述の各系列との畳み込みに対応する。
【0054】
上記の2N個の信号が、N個の中間周波数f〜fを使用して変調ブロック(23)によって直交変調されて、信号(15)、(16)、・・・(1X)となる。これらの変調信号が、点17で加算され、生成されたセットが、周波数変換器または「アップコンバータ」(18)を使用して伝送周波数まで上げられ、増幅器(19)を使用して増幅されて、トランスデューサ(20)によって媒体に送信される。
【0055】
変調から増幅までのプロセス全体をダイレクトコンバージョンによって実施することもできることは明らかである。
【0056】
帯域の数Nは、使用される相補系列のセットの大きさ、および必要であれば、直交化したいシステムまたはサービスの数によって決まる。
【0057】
図2に概略的に示される復号化ブロックに関して、復号化ブロックは以下のように働く。
【0058】
このブロックは、N台の装置によって共有される検出または通信システムである。直交系列の群の相補系列セットが各ユニットに割り当てられ、これらが相互干渉せずに独立して、互いに近接して動作できるようにする。
【0059】
プロセスは、トランスデューサ(50)によって受信された信号(30)の周波数を「ダウンコンバータ」ブロック(51)を使用して変換することから始まる。それにより中間周波数(FI)での複合信号(31)を得る。
【0060】
この点に関して、N個の搬送波周波数それぞれで送信された各データフローが復調され、直交位相復調器ブロック(32)によって2N個のバンドベース信号が得られる。
【0061】
各ブロックからの各出力信号が、ローパスフィルタ(57)によってフィルタリングされて、帯域外周波数を除去され、信号(33)、(34)、・・・、(3N)が得られる。これらの信号は、選択されて送信されたセットからの送信された系列に対応する記憶されているコピーによって、相関器(37)によって相関される。
【0062】
等価位相で相関される信号(33)の和(35)から、本明細書ではReal(55)と表す情報を得ることができ、等価直交位相で相関される信号(34)の和(35)から、本明細書ではImag(56)と表す情報を得ることができる。
【0063】
したがって、受信された信号は、以下の複素信号と等価である。
Rx=Real+j・Imag
【0064】
重要な特徴は、送信機に関して、受信された異なる信号が到達した際の位相およびモジュールに関する情報、ならびに受けたドップラー効果によるずれに関する情報を、前記複素信号から得ることができるようにすることである。
【0065】
特定の用途では、レーダーおよびソーナーなどパルス圧縮検出システムの最大の問題の1つは、圧縮された信号が送信される期間中に受信段階を使用不可にする必要がある(「ブラインド時間」と呼ぶ)ことであると考えられ、使用不可にされない場合には、前記段階は飽和され、信号放出が完了する前に到達した物体からの反射パルスを正確に受信することができなくなる。
【0066】
この影響は、パルスレーダを測定することができる最小距離と、信号を圧縮することによって得ることができる最大処理利得との両方を制限する。これを避けるために、典型的な解決策は、送信中の受信段階の飽和を回避するのに十分な指向性を有する別の受信トランスデューサを追加することからなる。
【0067】
図3は、この機能を概略的に示し、ここで参照番号(40)は圧縮信号であり、参照番号(42)は受信段階であり、参照番号(43)はここで「ブラインド時間」と呼ぶものである。
【0068】
したがって、前述した方法によって、直交化が、受信される信号の位相およびモジュールとは無関係であり、かつこれがチャープ間隔の半分以上の任意の離隔値にわたって満たされると仮定して、物体(44)で反射されるパルス(45)を送信すること(46)と、信号(48)を受信すること(47)を、ただ1つのトランスデューサまたはアンテナを使用して同時に行うことができる。
【0069】
本明細書で開示する方法によって提供される利点は、直交化が、受信される信号の位相およびモジュールとは無関係であり、これがチャープ間隔の半分以上の任意の離隔値にわたって当てはまると仮定して、単一のトランスデューサまたはアンテナを使用して信号の送信と受信を同時に行うことができ、したがって測定間の「ブラインド時間」をなくす。
【0070】
これは、パルス圧縮ベースのシステムにおいて「ブラインド時間」をなくすことができるようにする現在知られている唯一の方法である。
【0071】
結論として、この技法は以下の様々な利点を有すると言うことができる。すなわち、一方では、検出すべき異なる信号が検出される際のドップラー効果および位相への依存性をなくし、「クラッター」効果を減少する助けとなり、同じ周波数帯域を使用する異なるユニットに関して、時間に関して独立または直交したチャネルを作成することができ、それと同時に検出システムでの「ブラインド時間」をなくす。
【0072】
したがって、説明した本発明は、通信、検出、測定、または医療画像の用途向けの現在のパルス圧縮技法を大幅に改良する強力な符号化および復号化システムを構成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出および通信システムにおいて位相差およびドップラー効果に対する耐性を得るための方法および装置において、前記方法が本質的に、群の部分集合間の交差相関がゼロである相補系列セット群の異なるチャネルによって情報が符号化されることからなり、前記方法が、N個の相補系列からなるセットを使用し、相補とは、系列の自己相関の和がクロネッカーのデルタになることを意味し、また、Nの値が、互いに直交する相補系列セットの数と一致し、すなわち各セットの相補系列の交差相関の和がゼロであり、放出される信号が、同相コードと、符号を変えられた直交位相での前記コードとのそれぞれの直交位相放出からなることを特徴とする方法および装置。
【請求項2】
検出および通信システムにおいて位相差およびドップラー効果に対する耐性を得るための方法および装置において、前記装置が、本質的に2つの主要な要素、すなわち送信符号器と受信復号器とからなり、前記符号器が働いて、帯域幅Bの送信すべき情報または制御信号(10)がコード発生器(9)を作動させ、信号が、N個の要素からなる相補系列セットのN個の相補系列によって符号化され、出力が、実際には、前記コード発生器(9)によって生成される、制御信号と各系列との畳み込みに対応し、信号(11)、(13)、・・・、(21)に変換され、それにより、各周波数ごとに、同相のセットのコード(A1)、(A2)、・・・(AN)の少なくとも1つが送信され、符号を変えられた直交位相での同じコード(−A1)、(−A’’)、・・・、(−AN)が、信号(12)、(14)、・・・、(22)に対応し、符号を変えられた同じ信号と前記各系列との畳み込みに対応し、
前記2N個の信号が、N個の中間周波数f〜fを使用して変調器ブロック(23)によって直交変調されて、信号(15)、(16)、・・・、(1X)が得られ、前記変調信号が点17で加算され、生成されたセットが、周波数変換器または「アップコンバータ」(18)を使用して伝送周波数まで上げられ、増幅器(19)によって増幅されて、トランスデューサ(20)によって媒体に送信され、
前記復号器が、プロセスを開始し、トランスデューサ(50)によって受信された信号(30)の周波数を「ダウンコンバータ」ブロック(51)を使用して変換し、それにより中間周波数(FI)での複合信号(31)が得られ、その後、N個の搬送波周波数それぞれで送信された各データフローが復調され、直交位相復調器ブロック(32)によって2N個のバンドベース信号が得られ、各ブロックからの各出力信号が、ローパスフィルタ(57)によってフィルタリングされて、帯域外周波数を除去され、信号(33)、(34)、・・・(3N)が得られ、前記信号が、送信中の選択されたセットの送信された系列に対応する記憶されているコピーによって、相関器(37)によって相関され、
等価位相で相関される信号(33)の和(35)から、Real(55)と表す情報を得ることができるようにし、等価直交位相で相関される信号(34)の和(35)から、Imag(56)と表す情報を得ることができるようにし、前記受信された信号が、複素信号
Rx=Real+j・Imag
と等価であることを特徴とする方法および装置。
【請求項3】
前記方法を、N個の周波数ではなく、N個の同時のトランスデューサを使用することによって実施することができる請求項1または2に記載の検出および通信システムにおいて位相差およびドップラー効果に対する耐性を得るための方法および装置。
【請求項4】
前記装置を使用して実施される符号化および復号化方法が、隣接する異なる装置間で相互干渉なしで同時に送信と受信を行うことができるようにすることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の検出および通信システムにおいて位相差およびドップラー効果に対する耐性を得るための方法および装置。
【請求項5】
直交化が、受信される信号の位相およびモジュールとは無関係であり、またチャープ間隔の半分以上の任意の離隔値にわたって使用される場合に、ただ1つのトランスデューサまたはアンテナを使用して信号の送信と受信を同時に行うことができ、したがって測定間の「ブラインド時間」をなくすことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の検出および通信システムにおいて位相差およびドップラー効果に対する耐性を得るための方法および装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−513583(P2012−513583A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541524(P2011−541524)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【国際出願番号】PCT/ES2009/070581
【国際公開番号】WO2010/072872
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(511147207)
【Fターム(参考)】