通信用半導体集積回路
【課題】 広い周波数範囲で高精度に発振動作ができ、占有面積を増大させずにVCOの使用周波数帯を短時間に選択できる通信用半導体集積回路の提供。
【解決手段】 発振器と発振信号を任意の分周比(整数I+分数F/G)で分周可能な可変分周器とを有する発振回路を備えた通信用半導体集積回路で、外部からの送信開始指示と使用周波数帯情報により、可変分周器に与える分周比を算出の分周比算出回路と、分周比算出回路により算出の分周比により可変分周器を動作させ、発振器に所定レベルの電位を制御電圧として供給した状態で可変分周回路の出力信号の位相と基準信号を分周する固定分周回路の出力信号の位相とを比較して発振器の発振周波数帯を選択のバンド選択回路とを設け、バンド選択回路により発振器の発振周波数帯を選択後、発振器の制御電圧もしくは制御電流を周波数制御回路の出力に切り替えて発振回路を動作させる。
【解決手段】 発振器と発振信号を任意の分周比(整数I+分数F/G)で分周可能な可変分周器とを有する発振回路を備えた通信用半導体集積回路で、外部からの送信開始指示と使用周波数帯情報により、可変分周器に与える分周比を算出の分周比算出回路と、分周比算出回路により算出の分周比により可変分周器を動作させ、発振器に所定レベルの電位を制御電圧として供給した状態で可変分周回路の出力信号の位相と基準信号を分周する固定分周回路の出力信号の位相とを比較して発振器の発振周波数帯を選択のバンド選択回路とを設け、バンド選択回路により発振器の発振周波数帯を選択後、発振器の制御電圧もしくは制御電流を周波数制御回路の出力に切り替えて発振回路を動作させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オンチップのVCO(電圧制御発振器)およびVCOをループに含むPLL(フェーズ・ロックド・ループ)回路を内蔵した半導体集積回路に適用して有効な技術に関し、例えば携帯電話機のような無線通信システムにおいて送信信号の周波数をアップコンバートする送信用VCOおよびPLL回路を内蔵したオフセットPLL方式の通信用半導体集積回路に利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機のような無線通信システムにおいては、受信信号や送信信号に高周波の局部発振信号を合成して周波数のダウンコンバートやアップコンバートを行なったり、送信信号の変調や受信信号の復調を行なう通信用半導体集積回路(以下、高周波ICと称する)が用いられている。かかる高周波ICにおいて、送信I,Q信号を中間周波数の搬送波で直交変調するとともに、送信用VCOの出力側からの帰還信号をRFVCOからの高周波発振信号とミキシングすることで周波数差(オフセット)に相当する中間周波数の信号にダウンコンバートした後、該信号と上記直交変調後の信号とを位相比較して位相差に応じて送信用VCOを制御するオフセットPLL方式がある。
【0003】
かかるオフセットPLL方式の高周波ICには、送信用VCOとRFVCOの他に中間周波数の搬送波を生成するIFVCOが必要である。VCOは比較的広い占有面積を必要とするため、従来の高周波ICにおいては外付けのVCOを用いるものが多かった(特許文献1)。しかしながら、外付けのVCOを用いると部品点数が多くなり小型化の妨げとなる。そこで、VCOをチップに内蔵させることが提案されているが、上記3つのVCOをすべてチップに内蔵させるとチップサイズが増大し、チップコストの上昇をもたらすことになる。
【0004】
一方、近年の携帯電話機においては、例えば880〜915MHz帯のGSM(Global System for Mobile Communication)と1710〜1785MHz帯のDCS(Digital Cellular System)のような2つの周波数帯の信号を扱えるデュアルバンド方式の携帯電話機がある。また、最近は、GSMやDCSの他に例えば1850〜1915MHz帯のPCS(Personal Communication System)の信号を扱えるトリプルバンド方式の携帯電話機に対する要求があり、携帯電話機は今後さらに多くの方式に対応できるものが要求されると予想さる。このような複数の方式に対応できる携帯電話機に使用される電圧制御発振回路(VCO)は発振周波数範囲が広いことが必要である。
【0005】
ここで、一つのVCOで全ての周波数に対応しようとすると、VCOの制御電圧に対する発振周波数の感度(以下、制御感度と称する)が高くなり外来ノイズや電源電圧変動に弱くなるという不具合がある。そこで、VCOを複数(例えば16個)の周波数帯に切り替えて使用できるようにすることによって、所望の発振周波数範囲を保持しつつVCOの制御感度を低減できるようにした発明が提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2003−158452号
【特許文献2】特開2004−112749号
【特許文献3】特開2003−152535号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らはVCOを内蔵した高周波ICのチップサイズを小さくするため、RFVCOとIFVCOを共通化してVCOの数を減らす、具体的にはRFVCOの発振信号を分周して中間周波数の信号を生成することでIFVCOを削減することについて検討した。その結果、VCOを含むPLLループ内の可変分周器(カウンタ)として整数の分周比を設定すれば良いものであれば、比較的簡単なロジック回路により分周比を設定することができるが、整数の分周比を設定した場合には基準信号の周波数と同じ周波数間隔でしか発振周波数を切り替えることができない。一方、RFVCOとIFVCOを共通化した場合には、より細かな発振周波数の切り替えが必要になるため、小数を含む分周比で可変分周器を動作させなければならない。
【0007】
ところが、小数を含む分周比を設定するロジック回路を高周波ICに内蔵させようとすると、ロジック回路の規模が大きくなってチップサイズの低減の妨げとなる。また、高周波IC内にメモリを設けておいて、予め使用周波数に対応したすべての分周比をメモリに記憶しておく方式も考えられるが、記憶すべき分周比が多いためメモリの容量を大きくしなければならずチップサイズの増大を招く。また、小数を含む分周比をチップ外部(ベースバンド回路)から与える方法も考えられるが、そのようにすると、送信周波数を決定するベースバンド回路に要求される機能が増加して、高周波ICを使用する通信システムの設計者の負担が非常に大きくなってしまうという不具合がある。
【0008】
さらに、PLLでは、ループフィルタの電圧がVCOの制御端子に直接印加されるため、ループフィルタを構成する抵抗素子の熱雑音が大きくかつVCOの制御感度が高いと、抵抗素子で発生した熱雑音がVCOの出力に現われてしまうという不具合がある。そこで、VCOの発振周波数帯を多くして1つ1つの周波数帯における制御電圧の変化に対する発振周波数の変化の割合を小さくすることでVCOの制御感度を下げ、ループフィルタを構成する抵抗素子を大きくしても熱雑音の影響がVCOの出力に現われにくくすることが考えられる。
【0009】
そして、かかる発振周波数帯を切替え可能なVCOにおいて、使用する発振周波数帯を決定する方式として、予めすべての周波数帯について実際の周波数を測定してメモリに記憶しておいて使用周波数帯を選択する方式が提案されている(特許文献3)。しかしながら、この先願の選択方式にあっては、VCOの周波数帯が多くなるほど測定時間が長くなって消費電力が増加してしまうとともに、測定結果を記憶するメモリの容量を大きくしなければならないためチップサイズの増大を招くという不具合がある。
【0010】
この発明の目的は、広い周波数範囲に亘って高精度で発振動作することができるとともに、占有面積を増大させることなくVCOの使用周波数帯を短時間に選択することができる通信用半導体集積回路(高周波IC)を提供することにある。
この発明の他の目的は、IFVCOを持たずRFVCOの発振信号を分周して中間周波数の搬送波を生成し、該中間周波数の搬送波で送信I,Q信号を直交変調した後、送信用VCOで所望の送信周波数にアップコンバートして送信する通信用半導体集積回路装置(高周波IC)において、PLLループ内の可変分周器(カウンタ)に対して小数を含む分周比を設定するロジック回路を簡略化してチップサイズの低減を図ることにある。
【0011】
この発明のさらに他の目的は、IFVCOを持たずRFVCOの発振信号を分周して中間周波数の搬送波を生成し、該中間周波数の搬送波で送信I,Q信号を直交変調した後、送信用VCOで所望の送信周波数にアップコンバートして送信する通信用半導体集積回路装置(高周波IC)において、外部の回路つまり送信周波数を決定する制御回路に要求される機能を軽減しそれによってシステム設計者の負担を軽減することにある。
この発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴については、本明細書の記述および添附図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
すなわち、発振器と該発振器の発振信号を整数部Iと分数部F/Gとで表される分周比(I+F/G)で分周可能な可変分周器とを有する発振回路を備えた通信用半導体集積回路において、外部から供給される送信開始指令と使用周波数帯情報に基づいて、前記可変分周器に与える分周比を算出する分周比算出回路と、該分周比算出回路により算出された分周比により前記可変分周器を動作させ、前記発振器に所定レベルの電位を制御電圧として供給した状態で前記可変分周回路の出力信号の位相と基準信号を分周する固定分周回路の出力信号の位相とを比較して前記発振器の発振周波数帯を選択するバンド選択回路とを設け、前記バンド選択回路により前記発振器の発振周波数帯を選択した後、前記発振器の制御電圧もしくは制御電流を前記周波数制御回路の出力に切り替えて発振回路を動作させるように構成したものである。
【0013】
上記した手段によれば、任意の分周比(I+F/G)で分周可能な可変分周器を備えるため広い周波数範囲に亘って高精度で発振動作することができるとともに、リアルタイムで使用周波数帯を選択するため、予めすべての周波数帯について実際の周波数を測定してメモリに記憶しておいて使用周波数帯を選択する必要がないため占有面積を増大させることないとともに、毎回VCOの周波数を測定する必要がないため、VCOの使用周波数帯を短時間に決定することができる。
【0014】
また、外部から設定された値に応じた周波数の発振信号を生成する発振回路と、前記発振回路により生成された発振信号を分周して中間周波数の信号を生成する分周回路とを備えたオフセットPLL方式の通信用半導体集積回路装置(高周波IC)において、前記発振回路を、発振器(RFVCO)と該発振器の発振信号を整数部Iと分数部F/Gからなる任意の分周比(I+F/G)で分周可能な可変分周器(カウンタ)とを有する構成とする。
【0015】
上記した手段によれば、RFVCOの発振信号を分周して中間周波数の搬送波を生成するため、IFVCOをチップに内蔵させる必要がないのでチップサイズを低減することができる。また、可変分周器の分周比を半導体チップ内部で自動的に生成して可変分周器へ与えることができるため、ベースバンド回路など外部装置で生成して与える情報を少なくすることができ、ユーザ(セットメーカ)すなわちシステム設計者の負担を軽減することができる。
【0016】
また、望ましくは、前記分数部F/Gの分母Gや分子Fは、前記バンド情報と前記分周回路の分周比設定情報に対応して予め用意された複数の整数の組み合わせの中から選択されたいずれかの整数に基づいて生成されるように構成する。これにより、整数部Iと分数部F/Gで表わされるような小数を含む可変分周器の分周比を生成する分周比生成回路の規模を小さくすることができ、チップサイズの増大を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。
すなわち、本発明に従うと、広い周波数範囲に亘って高精度で発振動作することができるとともに、占有面積を増大させることなくVCOの使用周波数帯を短時間に選択することができる通信用半導体集積回路(高周波IC)を実現することができる。
【0018】
また、RFVCOの発振信号を分周して中間周波数の搬送波を生成するため、IFVCOをチップに内蔵させる必要がないとともに、PLLループ内の可変分周器(カウンタ)に対して小数を含む分周比を設定するロジック回路を簡略化することができるため、チップサイズの小さな通信用半導体集積回路(高周波IC)を実現することができる。
【0019】
さらに、送信周波数を決定するベースバンドLSIのような外部の制御回路に要求される機能を軽減しそれによってシステム設計者の負担を軽減することができる通信用半導体集積回路(高周波IC)を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
図1は、本発明を適用したマルチバンド方式の通信用半導体集積回路装置(高周波IC)とそれを用いた無線通信システムの一例を示す。
図1に示されているように、システムは信号電波の送受信用アンテナ100、送受信切り替え用のスイッチ110、受信信号から不要波を除去するSAWフィルタなどからなる高周波フィルタ120a〜120d、送信信号を増幅する高周波電力増幅回路(パワーモジュール)130、受信信号を復調したり送信信号を変調したりする高周波IC200、送信すべき音声信号やデータ信号を基本波に対し同相成分のI信号および直交成分のQ信号に変換したり復調された受信I,Q信号を音声信号やデータ信号に変換するなどのベースバンド処理を行なったり高周波IC200を制御する信号を送ったりするベースバンド回路300などで構成される。
【0021】
高周波IC200とベースバンド回路300は、各々別個の半導体チップ上に半導体集積回路として構成される。特に制限されるものでないが、本実施例のシステムでは、高周波IC200と高周波電力増幅回路130は、同一の電圧レギュレータから供給される電源電圧Vregによって動作される。
【0022】
さらに、特に制限されるものでないが、この実施例の高周波IC200は、GSM850とGSM900、DCS1800、PCS1900の3つの通信方式による4つの周波数帯の信号の変復調が可能に構成されている。また、これに応じて、高周波フィルタは、PCS1900の周波数帯の受信信号を通過させるフィルタ120aと、DCS1800の周波数帯の受信信号を通過させるフィルタ120bと、GSM系の周波数帯の受信信号を通過させるフィルタ120c,120dとが設けられている。
【0023】
本実施例の高周波IC200は、大きく分けると、受信系回路RXCと、送信系回路TXCと、それ以外の制御回路やクロック生成回路など送受信系に共通の回路からなる制御系回路CTCとで構成される。
受信系回路RXCは、PCS、DCS、GSMの各周波数帯の受信信号をそれぞれ増幅するロウノイズアンプ211a,211b,211c,211dと、後述の高周波発振回路(RFVCO)262で生成された局部発振信号φRFを分周し互いに90°位相がずれた直交信号を生成する分周移相回路210と、ロウノイズアンプ211a,211b,211c,211dで増幅された受信信号に分周移相回路210で生成された直交信号をミキシングすることで復調およびダウンコンバートを行なうミキサ212a,212bと、復調されたI,Q信号をそれぞれ増幅してベースバンド回路300へ出力する高利得増幅部220A,220Bと、高利得増幅部220A,220B内のアンプの入力DCオフセットをキャンセルするためのオフセットキャンセル回路213などからなる。本実施例の受信系回路RXCは、受信信号を直接ベースバンドの周波数帯の信号にダウンコンバートするダイレクトコンバージョン方式を採用している。
【0024】
高利得増幅部220Aは、複数のロウパスフィルタLPF11,LPF12,LPF13,LPF14と利得制御アンプPGA11,PGA12,PGA13とが交互に直列形態に接続され、最終段にアンプAMP1が接続された構成を有しており、復調されたI信号を増幅してベースバンド回路300へ出力する。高利得増幅部220Bも同様に、複数のロウパスフィルタLPF21,LPF22,LPF23,LPF24と利得制御アンプPGA21,PGA22,PGA23とが交互に直列形態に接続され、最終段にアンプAMP2が接続された構成を有しており、復調されたQ信号を増幅してベースバンド回路300へ出力する。
【0025】
オフセットキャンセル回路213は、各利得制御アンプPGA11〜PGA23に対応して設けられ入力端子間を短絡した状態におけるそれらの出力電位差をディジタル信号に変換するAD変換回路(ADC)と、これらのAD変換回路による変換結果に基づき対応する利得制御アンプPGA11〜23の出力のDCオフセットを「0」とするような入力オフセット電圧を生成し差動入力に対して与えるDA変換回路(DAC)と、これらのAD変換回路(ADC)とDA変換回路(DAC)を制御してオフセットキャンセル動作を行なわせる制御回路などから構成される。
【0026】
制御系回路CTCには、チップ全体を制御する制御回路(コントロールロジック)260と、基準となる発振信号φref を生成する基準発振回路(DCXO)261、周波数変換用の高周波発振信号φRFを生成する局部発振回路としての高周波発振回路(RFVCO)262、該高周波発振回路(RFVCO)262と共にPLL回路を構成するRFシンセサイザ263、RFシンセサイザ263内の可変分周器の分周比を生成して与える分周比生成回路264、RFVCO262により生成された発振信号φRF を分周する分周回路DVD1,DVD2やモード切替えスイッチSW1,SW2などが設けられている。
【0027】
スイッチSW1,SW2は、GSM方式に従った送受信を行なうGSMモードとDCSまたはPCS方式に従った送受信を行なうDCS/PCSモードとで接続状態が切り替えられて、伝達される信号の分周比を選択するもので、これらのスイッチSW1,SW2は制御回路260からの信号によって制御される。
【0028】
制御回路260には、ベースバンド回路300から同期用のクロック信号CLKと、データ信号SDATAと、制御信号としてのロードイネーブル信号LENとが供給されており、制御回路260は、ロードイネーブル信号LENが有効レベルにアサートされると、ベースバンド回路300から伝送されてくるデータ信号SDATAをクロック信号CLKに同期して順次取り込んで、データ信号SDATAに含まれるコマンドに応じてチップ内部の制御信号を生成する。特に制限されるものでないが、データ信号SDATAはシリアルで伝送される。
【0029】
なお、基準発振信号φrefは周波数精度の高いことが要求されるため、基準発振回路261には外付けの水晶振動子が接続される。基準発振信号φrefとしては、26MHzあるいは13MHzのような周波数が選択される。かかる周波数の水晶振動子は、汎用部品であり容易に手に入れることができる。RFシンセサイザ263は、分周回路や位相比較回路、チャージポンプ、ループフィルタなどで構成される。
【0030】
送信系回路TXCは、RFVCO262により生成された発振信号φRF を分周して例えば160MHzのような中間周波数の発振信号φIFを生成する分周回路231、該分周回路231で分周された信号をさらに分周しかつ互いに90°位相がずれた直交信号を生成する分周移相回路232、生成された直交信号をベースバンド回路300から供給されるI信号とQ信号により変調をかける変調回路233a,233b、変調された信号を合成する加算器234と、所定の周波数の送信信号φTXを発生する送信用発振回路(TXVCO)240、送信用発振回路(TXVCO)240から出力される送信信号φTXをカプラ280a,280b等で抽出したフィードバック信号と前記高周波発振回路(RFVCO)262で生成された高周波発振信号φRFを分周した信号φRF'とをミキシングすることでそれらの周波数差に相当する周波数の信号を生成するオフセットミキサ235、該オフセットミキサ235の出力と前記加算器234で合成された信号TXIFとを比較して位相差を検出する位相比較器236、該位相検出器236の出力に応じた電圧を生成するループフィルタ237、送信用発振回路(TXVCO)234の出力を分周してGSMの送信信号とする分周回路238、送信出力用バッファ回路239a,239bなどから構成されている。
【0031】
この実施例の送信系回路は、送信I,Q信号を中間周波数の搬送波で直交変調するとともに、TXVCO240の出力側からの帰還信号をRFVCO262の高周波発振信号φRFを分周した 信号φRF'とミキシングすることで周波数差(オフセット)に相当する中間周波数の信号にダウンコンバートした後、該信号と上記直交変調後の信号とを位相比較して位相差に応じてTXVCO240を制御するオフセットPLL方式を採用している。位相検出器236と、ループフィルタ237、TXVCO240およびオフセットミキサ235によって周波数変換(アップコンバート)を行なう送信用PLL回路(TX−PLL)が構成される。BFFはカプラ280a,280bにより抽出したフィードバック信号を増幅してミキサ235へ供給するバッファである。
【0032】
本実施例のマルチバンド方式の無線通信システムでは、例えばベースバンド回路300からの指令によって制御回路260が、送受信時に高周波発振回路262の発振信号の周波数φRFを使用バンドおよびチャネルに応じて変更すると共に、GSMモードかDCS/PCSモードかに応じて上記スイッチSW1,SW2を切り替えることで、受信系回路RXCや受信系回路TXCに供給される発振信号の周波数が変更されることによって送受信の周波数の切り替えが行なわれる。さらに、切替えスイッチSW1,SW2を送受信の周波数帯に応じて切り替えるための制御信号が制御回路260からSW1,SW2へ供給される。また、本実施例では、制御回路260からの制御信号によって分周回路231の分周比NIFが設定される。
【0033】
RFVCO262の発振周波数は、受信モードと送信モードとで異なる値に設定される。送信モードでは、RFVCO262の発振周波数fRFは、例えばGSM850の場合3616〜3716MHzに、GSM900の場合3840〜3980MHzに、またDCSの場合3610〜3730MHzに、さらにPCSの場合3860〜3980MHzに設定され、これが分周回路DVD1,DVD2でGSMの場合は1/4に分周され、またDCSとPCSの場合は1/2に分周されて、スイッチSW1,SW2を通してφRF'としてオフセットミキサ235に供給される。
【0034】
オフセットミキサ235では、このφRF'とTXVCO240からの送信用発振信号φTXの周波数の差(fRF'−fTX)に相当する差信号が出力されて位相比較器236へ供給され、この差信号の周波数が変調信号TXIFの周波数と一致するように送信用PLL(TX−PLL)が動作する。言いかえると、TXVCO240は、RFVCO262からの発振信号φRF'の周波数(fRF/4またはfRF/2)と変調信号TXIFの周波数(fTX)の差に相当する周波数で発振するように制御される。
【0035】
受信モードでは、RFVCO262の発振周波数fRFは、例えばGSM850の場合3476〜3576MHzに、GSM900の場合3700〜3840MHzに、またDCSの場合3610〜3730MHzに、さらにPCSの場合3860〜3980MHzに設定され、GSMの場合はこれが分周回路DVD1で1/2分周され、またDCSとPCSの場合はそのまま分周移相回路210へ供給されて分周と位相シフトがされて直交信号としてミキサ212a,212bに供給される。
【0036】
RFVCO262は、LC共振型発振回路などで構成され、LC共振回路を構成する容量素子が各々スイッチ素子を介して複数個並列に設けられ、そのスイッチ素子をバンド切り替え信号で選択的にオンさせることにより、接続される容量素子すなわちLC共振回路のCの値を切り替えることで発振周波数を段階的に切り替えることができるように構成されている。また、RFVCO262は、RFシンセサイザ263内のループフィルタからの制御電圧によって可変容量素子の容量値が変化され、発振周波数が連続的に変化される。
【0037】
図2には、前記RFシンセサイザ263とRFVCO262を含むRF−PLL回路およびの一実施例が示されている。
この実施例のPLL回路は、RFVCO262の発振信号φRFを1/Nに分周する可変分周回路631と、26MHzのような基準発振信号φrefを生成する基準発振回路(DCXO)261により生成された基準発振信号φrefと前記可変分周回路631で分周された信号φdivの位相差を検出する位相比較回路632と、検出された位相差に応じた電流Idを生成し出力するチャージポンプ633と、該チャージポンプ633から出力される検出位相差に応じた電圧を生成するループフィルタ634とを備え、該ループフィルタ634で平滑された電圧が発振制御電圧Vtとして前記RXVCO262にフィードバックされVtに応じた周波数で発振するように構成されている。上記可変分周回路631はカウンタにより構成することができる。
【0038】
また、本実施例のPLL回路には、発振開始前にループを開いた状態で所定の電圧VDCをRFVCO262に印加する切り替えスイッチ635と、基準発振信号φrefを所定の分周比で分周する固定分周回路636と、該分周回路で分周された信号φr'と前記可変分周回路631で分周された信号φdivの位相の進み遅れを判定する判別回路を備え位相の進み遅れから使用周波数帯(バンド)を決定する自動バンド選択回路637が設けられている。
【0039】
さらに、上記可変分周回路631の分周比を設定するため、この実施例では、外部から供給される設定周波数を示すチャネル情報CHと、使用バンドがGSM850かGSM900かDCSかPCSかを示すバンド情報BNDと、送信か受信かを示すモード情報T/Rと、IF用分周器231に設定する分周比設定情報NIFと、から可変分周回路631の分周比を算出し設定する分周比生成回路(分周比設定ロジック)264が設けられている。分周比生成回路264は、分周比計算部641と、分数データを入力とするシグマデルタ変調器642と、加算器643とからなる。チャネル情報CHは、送信周波数または受信周波数を100kHzで割った値としてベースバンド回路300から入力される。
【0040】
本実施例では、IF用分周器231の分周比NIFは"40","44","48"または"52"のいずれかとされる。以下、その理由を説明する。
例えば、使用バンドがDCSで、モードが送信、送信周波数が1713.6MHzの場合を考えると、DCSの場合、送信周波数帯は1710.2MHz〜1784.8MHzで、受信周波数帯は1805.2MHz〜1879.8MHzである。また、RFVCO262の発振信号φRFの周波数をfRF、送信用VCO234の発振信号φTXの周波数をfTX、IF用分周器231の後の中間周波数の信号φIFの周波数fIFとおくと、オフセットPLLでは、fRF'−fTX=fIFであり、DCSではfRF'=fRF/2,fRF=fIF×NIFである。そのため、NIF=44に設定すると、IF用分周器231の後の中間周波数の信号φIFの周波数fIFは、fIF=2fTX/(NIF−2)=fTX/21=1713.6MHz/21=81.6MHzであり、その22倍高調波と23倍高調波はそれぞれ1795.2MHzと1876.8MHzになる。
【0041】
したがって、この場合、22倍高調波は問題ないが、23倍高調波の1876.8MHzは受信周波数帯の1805.2MHz〜1879.8MHzの範囲に入ってしまうので、信号φIFの23倍高調波がミキサ234や送信用VCO234を通って出力にスプリアスとして現われることになり、受信周波数帯への信号の漏れ量が大きくなって受信帯ノイズが仕様を満たさなくなるおそれがある。そこで、分周比NIFを"40"に設定すると20倍高調波と21倍高調波が問題となるが、それぞれ1803.8MHzと1894.0MHzとなる。したがって、この場合、受信周波数帯は1805.2MHz〜1879.8MHzの範囲からはずれ、受信周波数帯への信号の漏れの問題は回避される。
【0042】
送信周波数が他の周波数に設定される場合も同様であり、IF用分周器231の分周比NIFをずらすことによって、中間周波数信号φIFの高調波成分の受信周波数帯への信号の漏れを回避することができる。以下、本明細書ではこれをローカル周波数のサイドステップと称する。本発明者らは、IF用分周器231のIF用分周器231の分周比NIFとして"40","44","48"または"52"のいずれかをとるようにしておけば、送信周波数としていずれの周波数が設定されたとしても中間周波数信号φIFの高調波の周波数が受信周波数帯からはずすことができることを見出して、分周比NIFを"40","44","48"または"52"のいずれかとすることにしたものである。
【0043】
かかる複数の分周比NIF"40","44","48","52"の組み合わせの中からいずれの分周比を設定するかは、ベースバンド回路300の側からの指令に基づいて行なうことになるので、予め高周波ICのメーカがある送信周波数を選択するときはどの分周比を設定するのが良いか示す周波数プランを用意し、ユーザすなわちシステムの設計者に提示しておくようにするのが望ましい。
【0044】
このような手法によれば、最適なサイドステップを可能にする周波数プランを作成してユーザに提示しておくことによって、ICのレイアウトにより大きく特性変動する可能性のある受信周波数帯への信号の漏れの少ないシステムを実現することが可能になる。
【0045】
次に、前記実施例の高周波ICにおける可変分周器631への分周比Nの設定方法について説明する。
本実施例の高周波ICの受信系回路におけるRFVCO262の発振周波数fRFと受信信号の周波数fRXの関係は、分周回路DVD1やスイッチSW1,分周移相回路210の存在により次式で与えられる。
GSM850,GSM900の場合 :fRF=4・fRX ……(1)
DCS1800,PCS1900の場合:fRF=2・fRX ……(2)
【0046】
一方、送信系回路はオフセットPLL方式であるので、RFVCO262の発振周波数fRFと送信信号の周波数fTXの関係は、RFVCO262の発振信号φRFを分周して直交変調に用いられる中間周波数の信号φIFを生成するIF用分周器231の分周比NIFを用いて次式で表わすことができる。
GSM850,GSM900の場合、fRF/4−fTX=fRF/NIFより、
fRF=(1/4−1/NIF)-1・fTX ……(3)
DCS1800,PCS1900の場合、fRF/2−fTX=fRF/NIFより、
fRF=(1/2−1/NIF)-1・fTX ……(4)
【0047】
また、チャネル情報CHは、次式の形式で与えられるものとする。
GSM850,GSM900の場合
CH=fRX/100kHz ……(5-1)
CH=fTX/100kHz ……(5-2)
DCS1800,PCS1900の場合
CH=fRX/200kHz,CH=fTX/200kHz ……(6-1)
CH=fRX/200kHz,CH=fTX/200kHz ……(6-2)
【0048】
従って、式(1)と(5-1)より、GSM850,GSM900の受信モードの場合、
fRF=4・100kHz・CH=0.4MHz・CH ……(7)
式(2)と(6-1)より、DCS1800,PCS1900の受信モードの場合、
fRF=2・200kHz・CH=0.4MHz・CH ……(8)
式(1)と(5-2)より、GSM850,GSM900の送信モードの場合、
fRF=(1/4−1/NIF)-1・100kHz・CH ……(9)
式(2)と(6-2)より、DCS1800,PCS1900の送信モードの場合、
fRF=(1/2−1/NIF)-1・200kHz・CH ……(10)
が成り立つ。
【0049】
ここで、基準発振回路(DCXO)261の発振信号φrefを26MHzとすると、可変分周器631の分周比Nは、次式で表わすことができる。
GSM850,GSM900の受信モードの場合、
N=fRF/26=(0.4/26)・CH=CH/65 ……(11)
DCS1800,PCS1900の受信モードの場合、
N=fRF/26=(0.4/26)・CH=CH/65 ……(12)
GSM850,GSM900の送信モードの場合、
N=(1/4−1/NIF)-1・CH/65 ……(13)
DCS1800,PCS1900の送信モードの場合、
N=(1/2−1/NIF)-1・CH/65 ……(14)
【0050】
式(11),(12)より、受信モード時の可変分周器631の分周比Nの分母は"65"で表現できることが分かる。また、式(13),(14)において、IF用分周器231の分周比NIFは、前述したように、サイドステップにより"40","44","48","52"の組み合わせの中から1つが選択される。したがって、式(13)より、GSM850,GSM900の送信モード時の可変分周器631の分周比Nの分母は"585","650","715","780"で表現できることが分かる。また、式(14)より、DCS1800,PCS1900の送信モード時の可変分周器631の分周比Nの分母は"1235","1365","1495","1625"で表現できることが分かる。
【0051】
以上より、送受信すべてにおける可変分周器631の分母の組み合わせを一つの回路で実現するためには65,585,650・・・1625の最小公倍数を分母にすれば良いが、ロジック回路が非常に大きくなってしまう。そこで、本実施例では、以下の様にして回路面積の増大を抑えることとした。
(1)分母はバンド情報とIF用分周器231の分周比NIFから「場合分け」で決定する。
(2)アルゴリズムの共通化のため、分母のオーダーはDCS1800,PCS1900の送信モード時の1235〜1755の範囲を考慮して1200〜1700程度に統一する。
(3)上記のようにして分母のオーダーをあわせたことにより生じる分周比の誤差は、分子で調整する。
【0052】
図3には、分周比計算部641の構成例が示されている。分周比計算部641は、チャネル情報CHにXをかけた値を求める乗算器MLT1と、バンド情報BNDと分周比情報NIFから決まる値を定数倍(65倍)する乗算器MLT2と、乗算器MLT2の出力を1/2にしてその整数部を出力する割算器DIV1と、乗算器MLT1の出力と割算器DIV1から出力される整数部とを加算する加算器ADD1と、加算器ADD1の出力を乗算器MLT2の出力で割って"商"と"余り"を出力する割算器DIV2と、該割算器DIV2から出力される"余り"から割算器DIV1の出力を引いた値を出力する減算器ASC1とから構成されている。上記割算器DIV2から出力される"商"の値が整数部データIとして、また減算器ASC1から出力される値が分子データFとして、さらに乗算器MLT2の出力が分母データGとして、可変分周器631にそれぞれ供給される。本明細書では、分子データFと分母データGからなる"F/G"を分数部データと称する。
【0053】
乗算器MLT1と乗算器MLT2には、それぞれデコーダDEC1,DEC2が設けられており、デコーダDEC1は送信か受信かを示す情報T/Rとバンド情報BNDと分周比情報NIFをデコードして、乗算器MLT1にて入力チャネル情報CHにかける値Xを出力する。また、デコーダDEC2は、バンド情報BNDと分周比情報NIFをデコードして乗算器MLT2で定数倍(65倍)される値Yを出力する。図4にデコーダDEC1の入力と出力の関係を、また図5にデコーダDEC2の入力と出力の関係を示す。
【0054】
図4および図5より、例えばモードがGSMの送信で、分周比NIFが"44"の場合、乗算器MLT1のXは"22"、乗算器MLT2のYは"20"であることが分かる。これより、チャネル情報CHが"8274"(送信周波数は827.4MHz)の場合には、乗算器MLT1の出力CH×22は"182028"で、乗算器MLT2の出力である分母データGは"1300"となるので、割算器DIV1の出力は"650"、加算器ADD1の出力は"182678"で、割算器DIV2から出力される整数部データIは"140"、減算器ASC1から出力される分子データFは"28"となる。
【0055】
ここで、加算器ADD1と減算器ASC1は、分数部のデータを0〜1299の範囲にするのではなく、−650〜+649の範囲にするためのオフセット演算を行なうために設けられている。平均値が650の近傍になるよりも±0の近傍になる方が、直流成分を小さくすることができるためである。
【0056】
次に、前記実施例の分周比生成回路264におけるシグマデルタ変調器642のより詳細な構成と分周比Nの生成方法について説明する。
図6に示されているように、本実施例のシグマデルタ変調器642は、入力分子データFとフィードバックデータとを加算する加算器ADD2と、加算結果を量子化する1ビット量子化器QTG1と、該量子化器QTG1の出力を定数倍する演算器ALU1と、該演算器ALU1の出力と加算器ADD2の出力との差分を求める減算器ASC2と、得られた差分を遅延して前記加算器ADD2にフィードバックする遅延器DLY1とから構成され、基準クロックφrefに同期して動作し、入力分数データを時間軸方向のデータに変換して出力する。
【0057】
上記量子化器QTG1と演算器ALU1には、分周比計算部641から分母データGが供給され、量子化器QTG1は入力が分母データGよりも大きいときは"+1"を出力し、入力が0〜Gの範囲にあるときは"0"を出力し、入力が0よりも小さいときは"−1"を出力する。一方、演算器ALU1はそのゲイン(倍数)が、分周比計算部641より与えられた分母データGと同じ値に設定され、入力をG倍して出力する。演算器ALU1は、乗算器でもよいが、Gを設定するためのレジスタと入力に応じてレジスタの値またはその符号反転値あるいは"0"を選択して出力するセレクタなどにより構成することもできる。
【0058】
ここで、分周比計算部641から入力された分子データFが"28"で、分母データGが"1300"である場合のシグマデルタ変調器642の動作を、図7を用いて説明する。
分子データFが"28"であると、加算器ADD2の出力は図7(b)のように、1クロックごとに"28"ずつ階段状に増加して行く。量子化器QTG1は入力が分母データGよりも大きいときは"+1"を出力するため、加算器ADD2の出力がG(=1300)を超えたときに「+1」を出力する。つまり、1300/28(≒47)クロックごとに「+1」を出力する。その結果、シグマデルタ変調器642は、基準クロックφrefの1300回に28回だけ「+1」を出力することになる。
【0059】
つまり、この実施例のシグマデルタ変調器642は、分母データGのクロック数の期間に分子データFの数だけ「+1」を出力することが分かる。これは、量子化器QTG1のしきい値であるGを入力の変化量Fで割った値G/Fで、基準クロックφrefの期間Gを割ると、G÷G/F=Fとなることからも明らかである。
【0060】
図9には、分周比生成回路264において分周比計算部641から出力される整数部データIと、分子データFと、分母データGと、シグマデルタ変調器642から出力される分数部データF/Gと、整数部データIと分数部データF/Gとを加算して可変分周器631へ分周比を出力する加算器643の出力分周比N(=I+F/G)の関係が示されている。
【0061】
図9に示されているように、I=140,F=28,G=1300の場合、可変分周器631へは基準クロックφrefの1300回に28回だけ"141"が出力され、残りの1272回は「140」が出力される。すなわち、基準クロックφrefの1300回に28回だけ"141"が分周比Nとして、分周比生成回路264から可変分周器631へ供給され、1300回の内の残りの1272回は"140" が分周比Nとして、分周比生成回路264から可変分周器631へ供給される。この供給された分周比Nに従って、可変分周器631は、発振信号φRFを分周して、信号φdivを形成する。これにより形成された信号φdivは、ある時間的な期間を見た場合、可変分周器631が、小数点以下の分周比(140+28/1300)で発振信号φRFを分周して形成した信号と実質的に同じと見なすことが出来る。
【0062】
ところで、図6の実施例の1次のシグマデルタ変調器においては、例えば1300回に28回だけ規則的に"141"が出力されるというように、変調された分周比に周期的な繰り返しつまり所定の周波数の固定パターンが存在する。この周期性の固定パターンは、比較的低い周波数であるが、可変分周器231を含むRF−PLLの出力にスプリアスとして現われるため望ましくない。
【0063】
そこで、この1次のシグマデルタ変調器に含まれる周期性の固定パターンを除去してノイズシェーピングを行えるようにするため、以下に述べるような高次のシグマデルタ変調器を使用するのが望ましいことを見出した。ただし、高次のシグマデルタ変調器としてあまり次数の高い変調器を用いてもノイズシェーピング効果が薄れるとともに、回路規模が大きくなりすぎるので、3次のシグマデルタ変調器を用いることとした。
【0064】
図8には、本発明の第2の実施例に用いられる3次のシグマデルタ変調器の構成例が示されている。
この実施例のシグマデルタ変調器は、図6の1次のシグマデルタ変調器を構成する加算器ADD2と1ビット量子化器QTG1と演算器ALU1と減算器ASC2と遅延器DLY1の組を3組備え、2段目の加算器ADD22にはFの代わりに1段目の遅延器DLY1の出力が入力され、3段目の加算器ADD23にはFの代わりに2段目の遅延器DLY2の出力が入力されるとともに、3段目の1ビット量子化器QTG3の出力を微分器DFR1で微分した値と2段目の1ビット量子化器QTG2の出力が加算器ADD3で加算され、さらにその加算値を微分器DFR2で微分した値と1段目の1ビット量子化器QTG1の出力が加算器ADD4で加算されて出力されるように構成されている。また、遅延器DLY4及びDLY5は、1段目、2段目及び3段目の遅延量を合わせるために、設けられている。
【0065】
3次のシグマデルタ変調器を用いることにより、分数部データF/Gに含まれる低周波数の固定パターンが見えなくなり、周波数の高い方に拡散したものが出力されるようになる。具体的には、例えばI=140,F=28,G=1300の場合を考えると、可変分周器631へは基準クロックφrefの1300回に28回だけ"141"が出力される他、それらの出力の途中で"142"や"143"等が出力されるとともに、それを打ち消すように"142"の出現回数と同じ回数だけ"138"が出力され、また"143"の出現回数と同じ回数だけ"137"が出力されるようになる。つまり、平均すると"141"が28回出力されたのと同じになる。
【0066】
これにより、3次のシグマデルタ変調器を用いた場合にも1次のシグマデルタ変調器を用いた場合と同じ分周比Nが可変分周回路631に与えられるとともに、シグマデルタ変調器の出力からRF−PLLの出力にのるスプリアスが減少され、ノイズシェーピング効果が得られるようになる。なお、"142"や"143"とそれを打ち消す "138"や "137"を出力させる代わりに、"141"をφrefの1300回にN回(N≧29)以上出力させるとともに"139"を(N−28)回出力させて、平均するとφrefの1300回に28回だけ"141"が出力されるようにしてもよい。
【0067】
特に制限されるものでないが、本実施例のシグマデルタ変調器は、微分器DFR2と加算器ADD4との間に、微分器DFR2の出力またはオールゼロの値を選択的に加算器ADD4に供給可能なセレクタSEL1が設けられており、微分器DFR2の出力を選択したときは回路を3次のシグマデルタ変調器として動作させ、オールゼロの値を選択したときは回路を1次のシグマデルタ変調器として動作させることができるように構成されている。
【0068】
次に、本発明の第3の実施例を、図10を用いて説明する。この実施例は、図6の実施例のシグマデルタ変調器642の前段にレジスタREG0と加算器ADD0を付加することによって、RF−PLLの発振周波数の調整を可能にしたものである。具体的には、レジスタREG0に小数部のデータDを設定可能にし、加算器ADD0にて分子データFと小数データDとを加算して加算器ADD2へ供給させることによって、分周比の分数部データを小数方向へ拡張できるようにしたものである。これにより、例えば分子データFとして"28"が設定され、小数データDとして"0.025"が設定されたような場合、シグマデルタ変調器642は1300000回に28025回だけ「+1」を出力するように動作し、これによりRF−PLLの発振周波数の微調整(ファインチューニング)が可能になる。
【0069】
携帯電話機は、消費電力の大きなパワーアンプを使用する送信時にはパワーアンプを使用しない受信時に比べて電源電圧が低下する現象がある。この現象は、電源電圧としてバッテリー電圧を使う場合は勿論のことDC−DCコンバータで変換された電圧を使う場合にも生じる。そのため、送信時と受信時とで電源電圧が異なり基準発振信号φrefを発生する基準発振回路(DCXO)261の周波数が若干ずれることがある。しかるに、この実施例を適用して、レジスタREG0に小数データDを設定することによって、かかる周波数ずれを回避することが可能になる。
【0070】
なお、レジスタREG0に設定すべき小数データDは、予め電源電圧を変化させたときの基準発振回路の発振周波数を測定して決定し、ベースバンド回路300内のEPROMやフラッシュメモリのような書き替え可能な不揮発性メモリに記憶させておいて、ベースバンド回路300から高周波IC200へバンド情報BNDや分周比情報NIFを与えるときに小数データDも同時に送り、レジスタREG0に設定させるようにすれば良い。加算器ADD0の代わりに乗算器を設け、レジスタREG0に例えば1.001のような値を設定して分子データFが小数以下の部分を含む値となるようにしても良い。
【0071】
図11は、前記分周比計算部641を構成する割算器DIV2の構成例が示されている。この実施例の割算器DIV2は、加算器ADD1から供給される分子データと乗算器MLT2から供給される分母データによる割り算を一度に行なうように構成する代わりに、引き算とシフトの繰り返しで実現するように構成することにより、回路規模を小さくしたものである。
【0072】
具体的には、割算器DIV2は、加算器ADD1から供給される分子データXR(CH・X)を設定する19ビットのXレジスタ411と、乗算器MLT2から供給される分母データYR(65Y)を設定する11ビットのYレジスタ412と、Yレジスタ412に取り込まれた分母データYRを上位側へ最大Mビットだけシフトするビットシフタ413と、該ビットシフタ413におけるシフト量Mを付与するダウンカウンタ414と、前記Xレジスタ411に取り込まれた分子データXRとビットシフタ413によりシフトされた分母データYRSの大小を比較する比較回路415と、比較回路415による比較結果の大小を示す値YXRS(部分商)を順次加算する加算器416と、加算結果を保持するQレジスタ417と、割算器DIV2全体の動作を制御するタイミングコントロール回路418とから構成されている。ビットシフタ413によって分母データYRを上位側へMビットシフトさせることにより、シフトされた分母データYRSは2Mの重みを持つデータとされる。
【0073】
そして、上記比較回路415は、比較結果が"1"すなわちXR≧YRSのときは部分商YXRSとして2Mの重みを持つ"1"と、部分商の余りYXRMとして差分"XR−YRS"をそれぞれ出力し、比較結果が"0"すなわちXR<YRSのときは部分商YXRSとして"0"を出力し、部分商の余りYXRMとして"XR"を出力するように構成されている。コントロール回路418は、上記比較回路415による比較結果が"1"すなわちXR≧YRSのときはその差分"XR−YRS"をXレジスタ411へ戻し、比較結果が"0"すなわちXR<YRSのときは"XR"をXレジスタ411へ戻すように、Xレジスタ411の前段のセレクタSEL2を制御する。また、コントロール回路418は、上記比較回路415による比較動作が行なわれるたびに、上記カウンタ414の値Mを"1"ずつ減少すなわちデクリメントする。
【0074】
上記"M"の値は、レジスタ411と412に取り込まれる分子データXRと分母データYRの関係から、XR≧YR×2MすなわちXR/YR≧2Mを満足する整数のうち最大の値とされる。例えば、分子データXRのビット数が19で、分母データYRのビット数が11の場合を考えると、XRの最大値は219、YRの最大値は211であるので、XR/YR=219/211=524288/2048=256=28より、M=8となる。本実施例の割算器DIV2においては、上記比較回路415による比較動作を(M+1)回すなわち9回実行すると全演算が終了し、そのときQレジスタ417に保持されている値が割り算の"商"、比較回路415から出力されるYXRMが割り算の"余り"となる。タイミングコントロール回路418は、基準発振回路261からの基準発振信号φrefに基づいて生成された26MHzのクロック信号によって動作し、演算リセット信号RESや演算クロックCLK1,CLK2を生成し、割算器DIV2内部の回路に供給する。
【0075】
次に、図11の割算器DIV2を有する分周比生成ロジック264と、それを含む図2のPLL回路における自動バンド選択回路637による選択バンドの決定の手順を、図12〜図14のタイミングチャートを用いて説明する。
図12〜図14のうち、図12は分周比生成ロジック264における分周比生成タイミングである。また、図13は自動バンド選択回路637による選択バンドの決定の手順を、図14は図2のPLL回路を有する図1の高周波ICにおける制御回路260によるモード制御および各VCOの立ち上げの手順を示す。図12の分周比生成ロジック264における分周比生成は、図13における選択バンドの決定動作開始の直前(t6'−t61の期間)に行なわれ、図13の選択バンドの決定動作は図14の送信モードTxの前のウァームアップ期間"Warm up" (t6−t7の期間)の初期に行なわれる。
【0076】
図12の分周比生成動作を説明する前に、まず、図14のタイミングチャートを用いて高周波ICにおける制御回路260によるモード制御および各VCOの立ち上げの手順を説明する。なお、図14において、(A)はIFVCOを有しVCOの周波数測定とその測定値に基づくバンド選択を行なう従来の高周波ICにおけるRFVCO,IFVCOおよびTXVCOの動作を、また、(B)は本実施例の高周波ICにおけるRFVCOおよびTXVCOの動作を示す。
【0077】
システムの電源が投入されると、高周波IC(200)に対して電源の供給が開始される。また、電源の立上がり後にベースバンドIC(300)から高周波ICに対して例えば "Word4"なるコマンドが供給される。すると、制御回路(260)によって高周波IC内部のレジスタなどの回路がリセット状態にされ、高周波ICはアイドルモード(コマンド待ちのスリープ状態)に入る(図14タイミングt1)。
【0078】
この状態では、各VCOの発振動作は停止されている。VCOのキャリブレーションを行なう従来の高周波ICでは、アイドルモード"Idle"中に、ベースバンドICからVCOの測定を指示する所定のビットコードからなるコマンド(Word7)が供給されると、高周波IC内のRFVCOとIFVCOの周波数測定処理(測定と記憶)が行なわれるが、本実施例の高周波IC200においては何もなされない(図14タイミングt2)。
【0079】
また、従来の高周波ICにおいては、RFVCOとIFVCOの各バンドの周波数測定は並行して行なわれる。その後、IFVCOの周波数測定に使用したカウンタを用いた送信用TXVCOの周波数測定を行なう。そのため、RFVCOの周波数測定の方が早く終わる。ベースバンドICは 測定開始コマンド"Word7"の送信後、適当な時間が経過すると初期設定を指令する"Word5,6"を送って来る(図14タイミングt3)。TXVCOの周波数測定が終了すると、終了が制御回路に通知されるように構成されており、制御回路は測定終了後に高周波IC内部を送受信動作のために初期設定する。
【0080】
この初期設定が終了すると、ベースバンドICから高周波ICに対して、使用チャネルの周波数情報を含むコマンド"Word1"が供給され、制御回路はVCOを起動するウォームアップモード"Warm up"に入る(図14タイミングt4)。このコマンドには送信または受信を指示するビットも含まれており、そのビットに応じて受信の時はベースバンドからの周波数情報に基づいてRFVCO(262)の使用バンドの選択動作を行なう。そして、RFVCOを発振動作させ、RF−PLLループをロック状態にさせる。
【0081】
その後、ベースバンドICから受信動作を指令するコマンド"Word2"が送られて来ると、受信モード"Rx"に入り、受信系回路RXCを動作させて受信信号の増幅、復調を行なわせる(図14タイミングt5)。従来の高周波ICにおいては、"Word1"が供給されるとRFVCOの周波数測定を行なってから、RFシンセサイザをロックさせるようになっており、この周波数測定はすべてのバンドについて行なうため、2分探査方式で使用バンドを決定する本実施例の高周波ICに比べて使用バンドが決定されるまでの時間が長くかかる。RFVCOのバンド数が例えば16個のような場合にはそれでも時間的に間に合っていたが、バンド数が増加して例えば256個のような数になると、RFシンセサイザのロックアップが受信開始に間に合わないおそれがある。これに対し、本実施例の高周波ICでは2分探査方式で使用バンドを決定するため、バンド数が多くても受信開始前にRFシンセサイザのロックアップを確実に終了させることができるようになる。
【0082】
次に、受信モード"Rx"が終了するとベースバンドIC(300)から周波数情報を含むコマンド"Word1"が供給され、再び制御回路(260)はVCOを起動するウォームアップモード"Warm up"に入る(図14タイミングt6)。このコマンド内の送信または受信を指示するビットが送信を示しているときは、従来の高周波ICにおいては、IFVCOを起動させてIFシンセサイザのロッキングを行なうとともに、ベースバンドICからの周波数情報に基づいてRFVCOとTXVCOの使用バンドの選択動作を行なう。そして、バンド決定後にRFシンセサイザおよびTX−PLLループをロック状態にさせる。これに対し、本実施例の高周波ICでは、コマンド"Word1"によるウォームアップモード"Warm up"の開始に応じて"Word1"に含まれる周波数情報(CH,T/R,NIF,BND)に基づくRFVCOの分周比生成と、RFVCOとTXVCOの使用バンドの選択動作を行なった後、RFシンセサイザおよびTX−PLLループをロック状態にさせる。
【0083】
その後、ベースバンドIC300から高周波IC200に対して送信動作を指令する"Word3"が送られ、"Word3"を受信すると、制御回路260は送信モードに入り、送信信号の変調、増幅を行なわせる(図14タイミングt7)。また、制御回路260は、GSMかDCS/PCSかに応じてスイッチSW1,SW2などの切替え制御も行なう。なお、上記受信モード"Rx"および送信モード"Tx"は、それぞれタイムスロットと呼ばれる時間単位(例えば577μ秒)で実行される。
【0084】
ベースバンドIC300から"T/R"が送信を示すコマンド"Word1"を本実施例の高周波IC200が受けると、RFVCOの分周比の生成を開始する。分周比の生成は、図12に示されているように、図11の割算器DIV2における前述した演算が9回実行されて、"商"Qと"余り"YXRMが算出され、"商"Qが整数部データIとして、また"余り" YXRMから65Y/2を引いたものが分子データFとして分母データGと共にシグマデルタ変調器642に供給される。そして、シグマデルタ変調器642で生成されたF/Gと上記整数部データIとを加算器643で加算したI+F/Gが、分周比Nとして分周比生成ロジック264から可変分周器631へ供給されて、可変分周器631はRFVCO262から発振信号φRFを分周比Nで分周したクロックφdivを生成して出力する。
【0085】
次に、RFシンセサイザ263内の自動バンド選択回路637による選択バンドの決定の手順を、図13のタイミングチャートを用いて説明する。
分周比生成ロジック264における上記可変分周器631の分周比の生成が終了すると、制御回路260から自動バンド選択回路637に対して自動バンド選択動作の開始を指示する信号BSSが供給される。すると、自動バンド選択回路637から、PLLループ上の切替えスイッチ635を固定電圧VDC側に切り替えるスイッチ切替え信号SCとリセット信号RTが出力されるとともに、分周比生成ロジック264から可変分周回路631への分周比「N」の供給が開始される(タイミングt61)。切替えスイッチ635が固定電圧VDC側に切り替えられると、この固定電圧VDCが制御電圧VtとしてVCO262に供給され、VCOはその固定電圧VDCに応じた周波数で発振を開始する。
【0086】
なお、本実施例においては、このとき同時に図8のシグマデルタ変調器642に対して、3次のシグマデルタ変調から1次のシグマデルタ変調動作を行なうように切り替え信号が供給される。前述したように、3次のシグマデルタ変調器として動作すると可変分周器631の平均分周比は一定であるが局所的には分周比が変動する。一方、自動バンド選択では、可変分周器631で分周されたクロックφdivと基準発振信号φrを固定分周器636で1/65分周したクロックφr'の位相の進み遅れを判定するため、可変分周器631の分周比が変動すると位相がずれてしまい正しい位相判定が行なえなくなるおそれがある。そこで、この実施例では、自動バンド選択の際には、シグマデルタ変調器642を、1次のシグマデルタ変調器として動作させるようにしている。
【0087】
また、自動バンド選択回路637内には、基準発振回路261からの基準発振信号φrを計数してタイマ動作を行なう周波数カウンタや制御回路、可変分周回路631の出力φ1と固定分周回路636の出力φr'を比較してφ1の位相がφr'の位相よりも進んでいるか遅れているか判定する位相進み遅れ判定回路、該判定回路372の判定結果に応じてVCO262のバンドを切り替えるVCOバンド切替え回路が設けられており、リセット信号RTの入力後、周波数カウンタが5μs(マイクロ秒)経過すると制御回路にタイマ信号が送られる。この5μsの時間は、ループフィルタ634の電圧が固定電圧VDCで安定するのに要する時間である。5μsが経過すると、制御回路は、VCOバンド切替え回路に対してVCO262へバンド切替え制御信号VB0〜VB7を送るよう指令する信号を与える。これにより、VCO262において選択的に接続される容量素子が切り替えられて選択バンドが指定される(タイミングt62)。ここで最初の指定バンドは256個のバンド#0〜#255のうち中央のバンド#127である。
【0088】
次に、自動バンド選択回路637内の制御回路は、VCO262のバンド切替えに要する短い時間(例えば0.5μs)を待ってから、可変分周回路631および固定分周回路636に対してリセット信号RESを送る。可変分周回路631と固定分周回路636はカウンタ回路であり、リセット信号RESにより可変分周回路631と固定分周回路636が一旦「0」にリセットされ、そのリセットが解除されて計数を開始する。そして、それぞれ設定された分周比「N」と「65」を計数するとそれぞれパルスφdiv,φr'を出力する。固定分周回路636は基準発振回路13からの正確な基準発振信号φr(26MHz)により動作するので、出力パルスφr'の周波数は400kHzで周期は2.5μsである。これらの出力パルスφdiv,φr'は位相進み遅れ判別回路に供給されており、進み遅れ判別回路は可変分周回路631の出力パルスφdivの立ち上がりが固定分周回路636の出力パルスφr'の立ち上がりよりも進んでいるか遅れているかを判別する。
【0089】
そして、位相進み遅れ判別回路は、可変分周回路631の出力パルスφdivが遅れていると判別すると、VCOバンド切替え回路に対して、VCO262へ現在よりも高い周波数のバンドを指定するバンド切替え制御信号VB0〜VB7を送るよう指令する信号を与える(タイミングt63)。一方、可変分周回路631の出力パルスφdivが進んでいると判別すると、位相進み遅れ判別回路22はVCOバンド切替え回路23に対して、VCO11へ現在よりも低い周波数のバンドを指定するバンド切替え制御信号VB0〜VB7を送るよう指令する信号を与える。2回目のバンド切替え制御信号VB0〜VB7により指定されるバンドは、φdivが遅れているときは#127と#255の真ん中の#191、φdivが進んでいるときは#127と#0の真ん中の#63である。
【0090】
バンドの切替え指令が行なわれると、制御回路はVCO262のバンド切替えに要する短い時間(例えば0.5μs)を待ってから、可変分周回路631および固定分周回路636に対して再びリセット信号RESを送る。すると、可変分周回路631と固定分周回路636は、一旦「0」にリセットされてから計数を再開する。そして、それぞれ設定された分周比Nと「65」を計数するとそれぞれパルスφdiv,φr'を出力し、進み遅れ判別回路により可変分周回路631の出力パルスφdivの立ち上がりが固定分周回路636の出力パルスφr'の立ち上がりよりも進んでいるか遅れているか判別される。
【0091】
そして、可変分周回路631の出力パルスφdivが遅れていると判別すると、進み遅れ判別回路VCOバンド切替え回路に対して、VCO262へ現在よりも高い周波数のバンドを指定するバンド切替え制御信号VB0〜VB7を送るよう指令する信号を与える(タイミングt64)。一方、可変分周回路631の出力パルスφdivが進んでいると判別すると、進み遅れ判別回路はVCOバンド切替え回路に対して、VCO262へ現在よりも低い周波数のバンドを指定するバンド切替え制御信号VB0〜VB7を送るよう指令する信号を与える。3回目のバンド切替え制御信号VB0〜VB7により指定されるバンドは、#127と#191の真ん中の#159、#191と#255の真ん中の#123、#127と#63の真ん中の#95または#63と#0の真ん中の#31である。
【0092】
上記動作を8回繰り返すことで、256バンドの中から指定発振周波数(分周比Nに対応した周波数)に適したバンドが選択される(タイミングt65)。8回目の判定では7回目の判定で選択されたバンドもしくはそれよりも1つだけ上のバンド(または1つ下のバンドでも可)が選択される。以上の動作によって、VCO262の使用バンドが決定され、PLLループ上のスイッチ635が固定電圧VDCからチャージポンプ633側へ切り替えられて通常のPLLの周波数引き込み動作が開始される。なお、8回目の判定で選択されたバンドにさらにオフセットを加えて最終選択バンドを決定するようにしても良い。このオフセットは、リセット信号RESによる可変分周回路631と固定分周回路636のリセット動作のずれに起因する判別誤差を補償するためのものである。
【0093】
また、このとき同時に図8のシグマデルタ変調器642に対して、1次のシグマデルタ変調から3次のシグマデルタ変調動作を行なうように切り替え信号が供給される。さらに、このときシグマデルタ変調器642の内部はリセットされる。このように、バンド選択動作中はシグマデルタ変調器642を1次のシグマデルタ変調器として動作させることにより、可変分周器631で分周されたクロックφdivと基準発振信号φrを固定分周器636で1/65分周したクロックφr'の位相の進み遅れの判定を正しく行なうことができる。しかも、本実施例のPLL回路を適用した高周波ICにおいては、スイッチ635が固定電圧VDCからチャージポンプ633側へ切り替えられる直前の電圧がループフィルタの電圧すなわち固定電圧VDCに極めて近い値になるため、周波数引き込みも極めて短時間に終了するようになる。
【0094】
以上本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものでない。例えば前記実施例においては、分周比生成回路641に設けられている乗算器MLT1,MLT2において入力に掛け合わせる値を生成するデコーダDEC1,DEC2を高周波IC内に設けたものを説明したが、デコーダDEC1,DEC2を設ける代わりに、デコーダの出力に相当する値(図4および図5参照)をベースバンド回路300から高周波IC200に与えるように構成しても良い。
【0095】
また、前記実施例では、IF用分周器231の分周比NIFをチップの外のベースバンド回路300から与えるようにしているが、スプリアス対策のサイドステップを考えなければ、送信か受信かを示す情報T/Rとバンド情報BNDとチャネル情報CHとからチップ内部で自動的に分周比NIFを決定してIF用分周器231に設定するように構成しても良い。
【0096】
さらに、前記実施例では、同一の半導体チップに送信系回路と受信系回路とが形成された高周波ICについて説明したが、送信系回路とRF−PLLを内蔵し、別個の半導体チップに形成された受信系回路に対して上記RF−PLLで生成された発振信号を供給するようにしたものにも適用することができる。また、基準となる信号φrefを生成する発振回路(DCXO)261が送信系回路や受信系回路と同一の半導体チップ上に形成されているものを説明したが、基準信号φrefはチップ外部から与えるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上の説明では主として本発明者によってなされた発明をその背景となった利用分野である高周波ICにおけるRF−PLLを構成する分周回路に適用したものについて説明したが、それに限定されず、いわゆる整数部と小数部からなる分周比で分周を行なう可変分周器一般に適用することができる。また、実施例では、携帯電話機のような無線通信システムに用いられる高周波ICに適用した場合について説明したが、本発明はそれに限定されるものでなく、無線LAN用の高周波ICその他、受信信号や送信信号と合成されて周波数変換や変復調を行なう高周波信号を生成するPLL回路を有する高周波ICに対しても本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明を適用したマルチバンド方式の通信用半導体集積回路(高周波IC)とそれを用いた通信システムの一例を示すブロック図である。
【図2】実施例の高周波ICにおけるRF−PLLのシンセサイザと分周比設定ロジックの構成例を示すブロック図である。
【図3】図2の分周比設定ロジックを構成する分周比計算部の構成例を示すブロック図である。
【図4】図3の分周比計算部を構成する乗算器MLT1に付随するデコーダの入力と出力の関係を示す説明図である。
【図5】図3の分周比計算部を構成する乗算器MLT2に付随するデコーダの入力と出力の関係を示す説明図である。
【図6】図2の分周比設定ロジックを構成するシグマデルタ変調器の構成例を示すブロック図である。
【図7】図6のシグマデルタ変調器の動作タイミングを示すタイミングチャートである。
【図8】本発明の第2の実施例に用いられる3次のシグマデルタ変調器の構成例が示すブロック図である。
【図9】図2の分周比設定ロジックの動作タイミングを示すタイミングチャートである。
【図10】本発明の第3の実施例におけるシグマデルタ変調器の構成例を示すブロック図である。
【図11】分周比計算部を構成する割算器の構成例を示すブロック図である。
【図12】分周比生成ロジックにおける分周比生成タイミングを示すタイミングチャートである。
【図13】自動バンド選択回路による選択バンドの決定の手順を示すタイミングチャートである。
【図14】GSM用の高周波ICにおけるモード制御および各VCOの立ち上げの手順を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0099】
100 送受信用アンテナ
110 送受信切り替え用のスイッチ
120 フィルタ
130 高周波電力増幅回路
200 高周波IC
211 ロウノイズアンプ
212 復調&ダウンコンバート用ミキサ
213 高利得増幅回路
231 IF用分周回路
233 変調&アップコンバート用ミキサ
235 オフセットミキサ
240 送信用発振回路(TXVCO)
260 制御回路
261 基準発振回路
262 発振回路(RFVCO)
263 シンセサイザ
264 分周比生成ロジック
631 可変分周回路
632 位相比較回路
633 チャージポンプ
634 ループフィルタ
637 バンド選択回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、オンチップのVCO(電圧制御発振器)およびVCOをループに含むPLL(フェーズ・ロックド・ループ)回路を内蔵した半導体集積回路に適用して有効な技術に関し、例えば携帯電話機のような無線通信システムにおいて送信信号の周波数をアップコンバートする送信用VCOおよびPLL回路を内蔵したオフセットPLL方式の通信用半導体集積回路に利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機のような無線通信システムにおいては、受信信号や送信信号に高周波の局部発振信号を合成して周波数のダウンコンバートやアップコンバートを行なったり、送信信号の変調や受信信号の復調を行なう通信用半導体集積回路(以下、高周波ICと称する)が用いられている。かかる高周波ICにおいて、送信I,Q信号を中間周波数の搬送波で直交変調するとともに、送信用VCOの出力側からの帰還信号をRFVCOからの高周波発振信号とミキシングすることで周波数差(オフセット)に相当する中間周波数の信号にダウンコンバートした後、該信号と上記直交変調後の信号とを位相比較して位相差に応じて送信用VCOを制御するオフセットPLL方式がある。
【0003】
かかるオフセットPLL方式の高周波ICには、送信用VCOとRFVCOの他に中間周波数の搬送波を生成するIFVCOが必要である。VCOは比較的広い占有面積を必要とするため、従来の高周波ICにおいては外付けのVCOを用いるものが多かった(特許文献1)。しかしながら、外付けのVCOを用いると部品点数が多くなり小型化の妨げとなる。そこで、VCOをチップに内蔵させることが提案されているが、上記3つのVCOをすべてチップに内蔵させるとチップサイズが増大し、チップコストの上昇をもたらすことになる。
【0004】
一方、近年の携帯電話機においては、例えば880〜915MHz帯のGSM(Global System for Mobile Communication)と1710〜1785MHz帯のDCS(Digital Cellular System)のような2つの周波数帯の信号を扱えるデュアルバンド方式の携帯電話機がある。また、最近は、GSMやDCSの他に例えば1850〜1915MHz帯のPCS(Personal Communication System)の信号を扱えるトリプルバンド方式の携帯電話機に対する要求があり、携帯電話機は今後さらに多くの方式に対応できるものが要求されると予想さる。このような複数の方式に対応できる携帯電話機に使用される電圧制御発振回路(VCO)は発振周波数範囲が広いことが必要である。
【0005】
ここで、一つのVCOで全ての周波数に対応しようとすると、VCOの制御電圧に対する発振周波数の感度(以下、制御感度と称する)が高くなり外来ノイズや電源電圧変動に弱くなるという不具合がある。そこで、VCOを複数(例えば16個)の周波数帯に切り替えて使用できるようにすることによって、所望の発振周波数範囲を保持しつつVCOの制御感度を低減できるようにした発明が提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2003−158452号
【特許文献2】特開2004−112749号
【特許文献3】特開2003−152535号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らはVCOを内蔵した高周波ICのチップサイズを小さくするため、RFVCOとIFVCOを共通化してVCOの数を減らす、具体的にはRFVCOの発振信号を分周して中間周波数の信号を生成することでIFVCOを削減することについて検討した。その結果、VCOを含むPLLループ内の可変分周器(カウンタ)として整数の分周比を設定すれば良いものであれば、比較的簡単なロジック回路により分周比を設定することができるが、整数の分周比を設定した場合には基準信号の周波数と同じ周波数間隔でしか発振周波数を切り替えることができない。一方、RFVCOとIFVCOを共通化した場合には、より細かな発振周波数の切り替えが必要になるため、小数を含む分周比で可変分周器を動作させなければならない。
【0007】
ところが、小数を含む分周比を設定するロジック回路を高周波ICに内蔵させようとすると、ロジック回路の規模が大きくなってチップサイズの低減の妨げとなる。また、高周波IC内にメモリを設けておいて、予め使用周波数に対応したすべての分周比をメモリに記憶しておく方式も考えられるが、記憶すべき分周比が多いためメモリの容量を大きくしなければならずチップサイズの増大を招く。また、小数を含む分周比をチップ外部(ベースバンド回路)から与える方法も考えられるが、そのようにすると、送信周波数を決定するベースバンド回路に要求される機能が増加して、高周波ICを使用する通信システムの設計者の負担が非常に大きくなってしまうという不具合がある。
【0008】
さらに、PLLでは、ループフィルタの電圧がVCOの制御端子に直接印加されるため、ループフィルタを構成する抵抗素子の熱雑音が大きくかつVCOの制御感度が高いと、抵抗素子で発生した熱雑音がVCOの出力に現われてしまうという不具合がある。そこで、VCOの発振周波数帯を多くして1つ1つの周波数帯における制御電圧の変化に対する発振周波数の変化の割合を小さくすることでVCOの制御感度を下げ、ループフィルタを構成する抵抗素子を大きくしても熱雑音の影響がVCOの出力に現われにくくすることが考えられる。
【0009】
そして、かかる発振周波数帯を切替え可能なVCOにおいて、使用する発振周波数帯を決定する方式として、予めすべての周波数帯について実際の周波数を測定してメモリに記憶しておいて使用周波数帯を選択する方式が提案されている(特許文献3)。しかしながら、この先願の選択方式にあっては、VCOの周波数帯が多くなるほど測定時間が長くなって消費電力が増加してしまうとともに、測定結果を記憶するメモリの容量を大きくしなければならないためチップサイズの増大を招くという不具合がある。
【0010】
この発明の目的は、広い周波数範囲に亘って高精度で発振動作することができるとともに、占有面積を増大させることなくVCOの使用周波数帯を短時間に選択することができる通信用半導体集積回路(高周波IC)を提供することにある。
この発明の他の目的は、IFVCOを持たずRFVCOの発振信号を分周して中間周波数の搬送波を生成し、該中間周波数の搬送波で送信I,Q信号を直交変調した後、送信用VCOで所望の送信周波数にアップコンバートして送信する通信用半導体集積回路装置(高周波IC)において、PLLループ内の可変分周器(カウンタ)に対して小数を含む分周比を設定するロジック回路を簡略化してチップサイズの低減を図ることにある。
【0011】
この発明のさらに他の目的は、IFVCOを持たずRFVCOの発振信号を分周して中間周波数の搬送波を生成し、該中間周波数の搬送波で送信I,Q信号を直交変調した後、送信用VCOで所望の送信周波数にアップコンバートして送信する通信用半導体集積回路装置(高周波IC)において、外部の回路つまり送信周波数を決定する制御回路に要求される機能を軽減しそれによってシステム設計者の負担を軽減することにある。
この発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴については、本明細書の記述および添附図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
すなわち、発振器と該発振器の発振信号を整数部Iと分数部F/Gとで表される分周比(I+F/G)で分周可能な可変分周器とを有する発振回路を備えた通信用半導体集積回路において、外部から供給される送信開始指令と使用周波数帯情報に基づいて、前記可変分周器に与える分周比を算出する分周比算出回路と、該分周比算出回路により算出された分周比により前記可変分周器を動作させ、前記発振器に所定レベルの電位を制御電圧として供給した状態で前記可変分周回路の出力信号の位相と基準信号を分周する固定分周回路の出力信号の位相とを比較して前記発振器の発振周波数帯を選択するバンド選択回路とを設け、前記バンド選択回路により前記発振器の発振周波数帯を選択した後、前記発振器の制御電圧もしくは制御電流を前記周波数制御回路の出力に切り替えて発振回路を動作させるように構成したものである。
【0013】
上記した手段によれば、任意の分周比(I+F/G)で分周可能な可変分周器を備えるため広い周波数範囲に亘って高精度で発振動作することができるとともに、リアルタイムで使用周波数帯を選択するため、予めすべての周波数帯について実際の周波数を測定してメモリに記憶しておいて使用周波数帯を選択する必要がないため占有面積を増大させることないとともに、毎回VCOの周波数を測定する必要がないため、VCOの使用周波数帯を短時間に決定することができる。
【0014】
また、外部から設定された値に応じた周波数の発振信号を生成する発振回路と、前記発振回路により生成された発振信号を分周して中間周波数の信号を生成する分周回路とを備えたオフセットPLL方式の通信用半導体集積回路装置(高周波IC)において、前記発振回路を、発振器(RFVCO)と該発振器の発振信号を整数部Iと分数部F/Gからなる任意の分周比(I+F/G)で分周可能な可変分周器(カウンタ)とを有する構成とする。
【0015】
上記した手段によれば、RFVCOの発振信号を分周して中間周波数の搬送波を生成するため、IFVCOをチップに内蔵させる必要がないのでチップサイズを低減することができる。また、可変分周器の分周比を半導体チップ内部で自動的に生成して可変分周器へ与えることができるため、ベースバンド回路など外部装置で生成して与える情報を少なくすることができ、ユーザ(セットメーカ)すなわちシステム設計者の負担を軽減することができる。
【0016】
また、望ましくは、前記分数部F/Gの分母Gや分子Fは、前記バンド情報と前記分周回路の分周比設定情報に対応して予め用意された複数の整数の組み合わせの中から選択されたいずれかの整数に基づいて生成されるように構成する。これにより、整数部Iと分数部F/Gで表わされるような小数を含む可変分周器の分周比を生成する分周比生成回路の規模を小さくすることができ、チップサイズの増大を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。
すなわち、本発明に従うと、広い周波数範囲に亘って高精度で発振動作することができるとともに、占有面積を増大させることなくVCOの使用周波数帯を短時間に選択することができる通信用半導体集積回路(高周波IC)を実現することができる。
【0018】
また、RFVCOの発振信号を分周して中間周波数の搬送波を生成するため、IFVCOをチップに内蔵させる必要がないとともに、PLLループ内の可変分周器(カウンタ)に対して小数を含む分周比を設定するロジック回路を簡略化することができるため、チップサイズの小さな通信用半導体集積回路(高周波IC)を実現することができる。
【0019】
さらに、送信周波数を決定するベースバンドLSIのような外部の制御回路に要求される機能を軽減しそれによってシステム設計者の負担を軽減することができる通信用半導体集積回路(高周波IC)を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
図1は、本発明を適用したマルチバンド方式の通信用半導体集積回路装置(高周波IC)とそれを用いた無線通信システムの一例を示す。
図1に示されているように、システムは信号電波の送受信用アンテナ100、送受信切り替え用のスイッチ110、受信信号から不要波を除去するSAWフィルタなどからなる高周波フィルタ120a〜120d、送信信号を増幅する高周波電力増幅回路(パワーモジュール)130、受信信号を復調したり送信信号を変調したりする高周波IC200、送信すべき音声信号やデータ信号を基本波に対し同相成分のI信号および直交成分のQ信号に変換したり復調された受信I,Q信号を音声信号やデータ信号に変換するなどのベースバンド処理を行なったり高周波IC200を制御する信号を送ったりするベースバンド回路300などで構成される。
【0021】
高周波IC200とベースバンド回路300は、各々別個の半導体チップ上に半導体集積回路として構成される。特に制限されるものでないが、本実施例のシステムでは、高周波IC200と高周波電力増幅回路130は、同一の電圧レギュレータから供給される電源電圧Vregによって動作される。
【0022】
さらに、特に制限されるものでないが、この実施例の高周波IC200は、GSM850とGSM900、DCS1800、PCS1900の3つの通信方式による4つの周波数帯の信号の変復調が可能に構成されている。また、これに応じて、高周波フィルタは、PCS1900の周波数帯の受信信号を通過させるフィルタ120aと、DCS1800の周波数帯の受信信号を通過させるフィルタ120bと、GSM系の周波数帯の受信信号を通過させるフィルタ120c,120dとが設けられている。
【0023】
本実施例の高周波IC200は、大きく分けると、受信系回路RXCと、送信系回路TXCと、それ以外の制御回路やクロック生成回路など送受信系に共通の回路からなる制御系回路CTCとで構成される。
受信系回路RXCは、PCS、DCS、GSMの各周波数帯の受信信号をそれぞれ増幅するロウノイズアンプ211a,211b,211c,211dと、後述の高周波発振回路(RFVCO)262で生成された局部発振信号φRFを分周し互いに90°位相がずれた直交信号を生成する分周移相回路210と、ロウノイズアンプ211a,211b,211c,211dで増幅された受信信号に分周移相回路210で生成された直交信号をミキシングすることで復調およびダウンコンバートを行なうミキサ212a,212bと、復調されたI,Q信号をそれぞれ増幅してベースバンド回路300へ出力する高利得増幅部220A,220Bと、高利得増幅部220A,220B内のアンプの入力DCオフセットをキャンセルするためのオフセットキャンセル回路213などからなる。本実施例の受信系回路RXCは、受信信号を直接ベースバンドの周波数帯の信号にダウンコンバートするダイレクトコンバージョン方式を採用している。
【0024】
高利得増幅部220Aは、複数のロウパスフィルタLPF11,LPF12,LPF13,LPF14と利得制御アンプPGA11,PGA12,PGA13とが交互に直列形態に接続され、最終段にアンプAMP1が接続された構成を有しており、復調されたI信号を増幅してベースバンド回路300へ出力する。高利得増幅部220Bも同様に、複数のロウパスフィルタLPF21,LPF22,LPF23,LPF24と利得制御アンプPGA21,PGA22,PGA23とが交互に直列形態に接続され、最終段にアンプAMP2が接続された構成を有しており、復調されたQ信号を増幅してベースバンド回路300へ出力する。
【0025】
オフセットキャンセル回路213は、各利得制御アンプPGA11〜PGA23に対応して設けられ入力端子間を短絡した状態におけるそれらの出力電位差をディジタル信号に変換するAD変換回路(ADC)と、これらのAD変換回路による変換結果に基づき対応する利得制御アンプPGA11〜23の出力のDCオフセットを「0」とするような入力オフセット電圧を生成し差動入力に対して与えるDA変換回路(DAC)と、これらのAD変換回路(ADC)とDA変換回路(DAC)を制御してオフセットキャンセル動作を行なわせる制御回路などから構成される。
【0026】
制御系回路CTCには、チップ全体を制御する制御回路(コントロールロジック)260と、基準となる発振信号φref を生成する基準発振回路(DCXO)261、周波数変換用の高周波発振信号φRFを生成する局部発振回路としての高周波発振回路(RFVCO)262、該高周波発振回路(RFVCO)262と共にPLL回路を構成するRFシンセサイザ263、RFシンセサイザ263内の可変分周器の分周比を生成して与える分周比生成回路264、RFVCO262により生成された発振信号φRF を分周する分周回路DVD1,DVD2やモード切替えスイッチSW1,SW2などが設けられている。
【0027】
スイッチSW1,SW2は、GSM方式に従った送受信を行なうGSMモードとDCSまたはPCS方式に従った送受信を行なうDCS/PCSモードとで接続状態が切り替えられて、伝達される信号の分周比を選択するもので、これらのスイッチSW1,SW2は制御回路260からの信号によって制御される。
【0028】
制御回路260には、ベースバンド回路300から同期用のクロック信号CLKと、データ信号SDATAと、制御信号としてのロードイネーブル信号LENとが供給されており、制御回路260は、ロードイネーブル信号LENが有効レベルにアサートされると、ベースバンド回路300から伝送されてくるデータ信号SDATAをクロック信号CLKに同期して順次取り込んで、データ信号SDATAに含まれるコマンドに応じてチップ内部の制御信号を生成する。特に制限されるものでないが、データ信号SDATAはシリアルで伝送される。
【0029】
なお、基準発振信号φrefは周波数精度の高いことが要求されるため、基準発振回路261には外付けの水晶振動子が接続される。基準発振信号φrefとしては、26MHzあるいは13MHzのような周波数が選択される。かかる周波数の水晶振動子は、汎用部品であり容易に手に入れることができる。RFシンセサイザ263は、分周回路や位相比較回路、チャージポンプ、ループフィルタなどで構成される。
【0030】
送信系回路TXCは、RFVCO262により生成された発振信号φRF を分周して例えば160MHzのような中間周波数の発振信号φIFを生成する分周回路231、該分周回路231で分周された信号をさらに分周しかつ互いに90°位相がずれた直交信号を生成する分周移相回路232、生成された直交信号をベースバンド回路300から供給されるI信号とQ信号により変調をかける変調回路233a,233b、変調された信号を合成する加算器234と、所定の周波数の送信信号φTXを発生する送信用発振回路(TXVCO)240、送信用発振回路(TXVCO)240から出力される送信信号φTXをカプラ280a,280b等で抽出したフィードバック信号と前記高周波発振回路(RFVCO)262で生成された高周波発振信号φRFを分周した信号φRF'とをミキシングすることでそれらの周波数差に相当する周波数の信号を生成するオフセットミキサ235、該オフセットミキサ235の出力と前記加算器234で合成された信号TXIFとを比較して位相差を検出する位相比較器236、該位相検出器236の出力に応じた電圧を生成するループフィルタ237、送信用発振回路(TXVCO)234の出力を分周してGSMの送信信号とする分周回路238、送信出力用バッファ回路239a,239bなどから構成されている。
【0031】
この実施例の送信系回路は、送信I,Q信号を中間周波数の搬送波で直交変調するとともに、TXVCO240の出力側からの帰還信号をRFVCO262の高周波発振信号φRFを分周した 信号φRF'とミキシングすることで周波数差(オフセット)に相当する中間周波数の信号にダウンコンバートした後、該信号と上記直交変調後の信号とを位相比較して位相差に応じてTXVCO240を制御するオフセットPLL方式を採用している。位相検出器236と、ループフィルタ237、TXVCO240およびオフセットミキサ235によって周波数変換(アップコンバート)を行なう送信用PLL回路(TX−PLL)が構成される。BFFはカプラ280a,280bにより抽出したフィードバック信号を増幅してミキサ235へ供給するバッファである。
【0032】
本実施例のマルチバンド方式の無線通信システムでは、例えばベースバンド回路300からの指令によって制御回路260が、送受信時に高周波発振回路262の発振信号の周波数φRFを使用バンドおよびチャネルに応じて変更すると共に、GSMモードかDCS/PCSモードかに応じて上記スイッチSW1,SW2を切り替えることで、受信系回路RXCや受信系回路TXCに供給される発振信号の周波数が変更されることによって送受信の周波数の切り替えが行なわれる。さらに、切替えスイッチSW1,SW2を送受信の周波数帯に応じて切り替えるための制御信号が制御回路260からSW1,SW2へ供給される。また、本実施例では、制御回路260からの制御信号によって分周回路231の分周比NIFが設定される。
【0033】
RFVCO262の発振周波数は、受信モードと送信モードとで異なる値に設定される。送信モードでは、RFVCO262の発振周波数fRFは、例えばGSM850の場合3616〜3716MHzに、GSM900の場合3840〜3980MHzに、またDCSの場合3610〜3730MHzに、さらにPCSの場合3860〜3980MHzに設定され、これが分周回路DVD1,DVD2でGSMの場合は1/4に分周され、またDCSとPCSの場合は1/2に分周されて、スイッチSW1,SW2を通してφRF'としてオフセットミキサ235に供給される。
【0034】
オフセットミキサ235では、このφRF'とTXVCO240からの送信用発振信号φTXの周波数の差(fRF'−fTX)に相当する差信号が出力されて位相比較器236へ供給され、この差信号の周波数が変調信号TXIFの周波数と一致するように送信用PLL(TX−PLL)が動作する。言いかえると、TXVCO240は、RFVCO262からの発振信号φRF'の周波数(fRF/4またはfRF/2)と変調信号TXIFの周波数(fTX)の差に相当する周波数で発振するように制御される。
【0035】
受信モードでは、RFVCO262の発振周波数fRFは、例えばGSM850の場合3476〜3576MHzに、GSM900の場合3700〜3840MHzに、またDCSの場合3610〜3730MHzに、さらにPCSの場合3860〜3980MHzに設定され、GSMの場合はこれが分周回路DVD1で1/2分周され、またDCSとPCSの場合はそのまま分周移相回路210へ供給されて分周と位相シフトがされて直交信号としてミキサ212a,212bに供給される。
【0036】
RFVCO262は、LC共振型発振回路などで構成され、LC共振回路を構成する容量素子が各々スイッチ素子を介して複数個並列に設けられ、そのスイッチ素子をバンド切り替え信号で選択的にオンさせることにより、接続される容量素子すなわちLC共振回路のCの値を切り替えることで発振周波数を段階的に切り替えることができるように構成されている。また、RFVCO262は、RFシンセサイザ263内のループフィルタからの制御電圧によって可変容量素子の容量値が変化され、発振周波数が連続的に変化される。
【0037】
図2には、前記RFシンセサイザ263とRFVCO262を含むRF−PLL回路およびの一実施例が示されている。
この実施例のPLL回路は、RFVCO262の発振信号φRFを1/Nに分周する可変分周回路631と、26MHzのような基準発振信号φrefを生成する基準発振回路(DCXO)261により生成された基準発振信号φrefと前記可変分周回路631で分周された信号φdivの位相差を検出する位相比較回路632と、検出された位相差に応じた電流Idを生成し出力するチャージポンプ633と、該チャージポンプ633から出力される検出位相差に応じた電圧を生成するループフィルタ634とを備え、該ループフィルタ634で平滑された電圧が発振制御電圧Vtとして前記RXVCO262にフィードバックされVtに応じた周波数で発振するように構成されている。上記可変分周回路631はカウンタにより構成することができる。
【0038】
また、本実施例のPLL回路には、発振開始前にループを開いた状態で所定の電圧VDCをRFVCO262に印加する切り替えスイッチ635と、基準発振信号φrefを所定の分周比で分周する固定分周回路636と、該分周回路で分周された信号φr'と前記可変分周回路631で分周された信号φdivの位相の進み遅れを判定する判別回路を備え位相の進み遅れから使用周波数帯(バンド)を決定する自動バンド選択回路637が設けられている。
【0039】
さらに、上記可変分周回路631の分周比を設定するため、この実施例では、外部から供給される設定周波数を示すチャネル情報CHと、使用バンドがGSM850かGSM900かDCSかPCSかを示すバンド情報BNDと、送信か受信かを示すモード情報T/Rと、IF用分周器231に設定する分周比設定情報NIFと、から可変分周回路631の分周比を算出し設定する分周比生成回路(分周比設定ロジック)264が設けられている。分周比生成回路264は、分周比計算部641と、分数データを入力とするシグマデルタ変調器642と、加算器643とからなる。チャネル情報CHは、送信周波数または受信周波数を100kHzで割った値としてベースバンド回路300から入力される。
【0040】
本実施例では、IF用分周器231の分周比NIFは"40","44","48"または"52"のいずれかとされる。以下、その理由を説明する。
例えば、使用バンドがDCSで、モードが送信、送信周波数が1713.6MHzの場合を考えると、DCSの場合、送信周波数帯は1710.2MHz〜1784.8MHzで、受信周波数帯は1805.2MHz〜1879.8MHzである。また、RFVCO262の発振信号φRFの周波数をfRF、送信用VCO234の発振信号φTXの周波数をfTX、IF用分周器231の後の中間周波数の信号φIFの周波数fIFとおくと、オフセットPLLでは、fRF'−fTX=fIFであり、DCSではfRF'=fRF/2,fRF=fIF×NIFである。そのため、NIF=44に設定すると、IF用分周器231の後の中間周波数の信号φIFの周波数fIFは、fIF=2fTX/(NIF−2)=fTX/21=1713.6MHz/21=81.6MHzであり、その22倍高調波と23倍高調波はそれぞれ1795.2MHzと1876.8MHzになる。
【0041】
したがって、この場合、22倍高調波は問題ないが、23倍高調波の1876.8MHzは受信周波数帯の1805.2MHz〜1879.8MHzの範囲に入ってしまうので、信号φIFの23倍高調波がミキサ234や送信用VCO234を通って出力にスプリアスとして現われることになり、受信周波数帯への信号の漏れ量が大きくなって受信帯ノイズが仕様を満たさなくなるおそれがある。そこで、分周比NIFを"40"に設定すると20倍高調波と21倍高調波が問題となるが、それぞれ1803.8MHzと1894.0MHzとなる。したがって、この場合、受信周波数帯は1805.2MHz〜1879.8MHzの範囲からはずれ、受信周波数帯への信号の漏れの問題は回避される。
【0042】
送信周波数が他の周波数に設定される場合も同様であり、IF用分周器231の分周比NIFをずらすことによって、中間周波数信号φIFの高調波成分の受信周波数帯への信号の漏れを回避することができる。以下、本明細書ではこれをローカル周波数のサイドステップと称する。本発明者らは、IF用分周器231のIF用分周器231の分周比NIFとして"40","44","48"または"52"のいずれかをとるようにしておけば、送信周波数としていずれの周波数が設定されたとしても中間周波数信号φIFの高調波の周波数が受信周波数帯からはずすことができることを見出して、分周比NIFを"40","44","48"または"52"のいずれかとすることにしたものである。
【0043】
かかる複数の分周比NIF"40","44","48","52"の組み合わせの中からいずれの分周比を設定するかは、ベースバンド回路300の側からの指令に基づいて行なうことになるので、予め高周波ICのメーカがある送信周波数を選択するときはどの分周比を設定するのが良いか示す周波数プランを用意し、ユーザすなわちシステムの設計者に提示しておくようにするのが望ましい。
【0044】
このような手法によれば、最適なサイドステップを可能にする周波数プランを作成してユーザに提示しておくことによって、ICのレイアウトにより大きく特性変動する可能性のある受信周波数帯への信号の漏れの少ないシステムを実現することが可能になる。
【0045】
次に、前記実施例の高周波ICにおける可変分周器631への分周比Nの設定方法について説明する。
本実施例の高周波ICの受信系回路におけるRFVCO262の発振周波数fRFと受信信号の周波数fRXの関係は、分周回路DVD1やスイッチSW1,分周移相回路210の存在により次式で与えられる。
GSM850,GSM900の場合 :fRF=4・fRX ……(1)
DCS1800,PCS1900の場合:fRF=2・fRX ……(2)
【0046】
一方、送信系回路はオフセットPLL方式であるので、RFVCO262の発振周波数fRFと送信信号の周波数fTXの関係は、RFVCO262の発振信号φRFを分周して直交変調に用いられる中間周波数の信号φIFを生成するIF用分周器231の分周比NIFを用いて次式で表わすことができる。
GSM850,GSM900の場合、fRF/4−fTX=fRF/NIFより、
fRF=(1/4−1/NIF)-1・fTX ……(3)
DCS1800,PCS1900の場合、fRF/2−fTX=fRF/NIFより、
fRF=(1/2−1/NIF)-1・fTX ……(4)
【0047】
また、チャネル情報CHは、次式の形式で与えられるものとする。
GSM850,GSM900の場合
CH=fRX/100kHz ……(5-1)
CH=fTX/100kHz ……(5-2)
DCS1800,PCS1900の場合
CH=fRX/200kHz,CH=fTX/200kHz ……(6-1)
CH=fRX/200kHz,CH=fTX/200kHz ……(6-2)
【0048】
従って、式(1)と(5-1)より、GSM850,GSM900の受信モードの場合、
fRF=4・100kHz・CH=0.4MHz・CH ……(7)
式(2)と(6-1)より、DCS1800,PCS1900の受信モードの場合、
fRF=2・200kHz・CH=0.4MHz・CH ……(8)
式(1)と(5-2)より、GSM850,GSM900の送信モードの場合、
fRF=(1/4−1/NIF)-1・100kHz・CH ……(9)
式(2)と(6-2)より、DCS1800,PCS1900の送信モードの場合、
fRF=(1/2−1/NIF)-1・200kHz・CH ……(10)
が成り立つ。
【0049】
ここで、基準発振回路(DCXO)261の発振信号φrefを26MHzとすると、可変分周器631の分周比Nは、次式で表わすことができる。
GSM850,GSM900の受信モードの場合、
N=fRF/26=(0.4/26)・CH=CH/65 ……(11)
DCS1800,PCS1900の受信モードの場合、
N=fRF/26=(0.4/26)・CH=CH/65 ……(12)
GSM850,GSM900の送信モードの場合、
N=(1/4−1/NIF)-1・CH/65 ……(13)
DCS1800,PCS1900の送信モードの場合、
N=(1/2−1/NIF)-1・CH/65 ……(14)
【0050】
式(11),(12)より、受信モード時の可変分周器631の分周比Nの分母は"65"で表現できることが分かる。また、式(13),(14)において、IF用分周器231の分周比NIFは、前述したように、サイドステップにより"40","44","48","52"の組み合わせの中から1つが選択される。したがって、式(13)より、GSM850,GSM900の送信モード時の可変分周器631の分周比Nの分母は"585","650","715","780"で表現できることが分かる。また、式(14)より、DCS1800,PCS1900の送信モード時の可変分周器631の分周比Nの分母は"1235","1365","1495","1625"で表現できることが分かる。
【0051】
以上より、送受信すべてにおける可変分周器631の分母の組み合わせを一つの回路で実現するためには65,585,650・・・1625の最小公倍数を分母にすれば良いが、ロジック回路が非常に大きくなってしまう。そこで、本実施例では、以下の様にして回路面積の増大を抑えることとした。
(1)分母はバンド情報とIF用分周器231の分周比NIFから「場合分け」で決定する。
(2)アルゴリズムの共通化のため、分母のオーダーはDCS1800,PCS1900の送信モード時の1235〜1755の範囲を考慮して1200〜1700程度に統一する。
(3)上記のようにして分母のオーダーをあわせたことにより生じる分周比の誤差は、分子で調整する。
【0052】
図3には、分周比計算部641の構成例が示されている。分周比計算部641は、チャネル情報CHにXをかけた値を求める乗算器MLT1と、バンド情報BNDと分周比情報NIFから決まる値を定数倍(65倍)する乗算器MLT2と、乗算器MLT2の出力を1/2にしてその整数部を出力する割算器DIV1と、乗算器MLT1の出力と割算器DIV1から出力される整数部とを加算する加算器ADD1と、加算器ADD1の出力を乗算器MLT2の出力で割って"商"と"余り"を出力する割算器DIV2と、該割算器DIV2から出力される"余り"から割算器DIV1の出力を引いた値を出力する減算器ASC1とから構成されている。上記割算器DIV2から出力される"商"の値が整数部データIとして、また減算器ASC1から出力される値が分子データFとして、さらに乗算器MLT2の出力が分母データGとして、可変分周器631にそれぞれ供給される。本明細書では、分子データFと分母データGからなる"F/G"を分数部データと称する。
【0053】
乗算器MLT1と乗算器MLT2には、それぞれデコーダDEC1,DEC2が設けられており、デコーダDEC1は送信か受信かを示す情報T/Rとバンド情報BNDと分周比情報NIFをデコードして、乗算器MLT1にて入力チャネル情報CHにかける値Xを出力する。また、デコーダDEC2は、バンド情報BNDと分周比情報NIFをデコードして乗算器MLT2で定数倍(65倍)される値Yを出力する。図4にデコーダDEC1の入力と出力の関係を、また図5にデコーダDEC2の入力と出力の関係を示す。
【0054】
図4および図5より、例えばモードがGSMの送信で、分周比NIFが"44"の場合、乗算器MLT1のXは"22"、乗算器MLT2のYは"20"であることが分かる。これより、チャネル情報CHが"8274"(送信周波数は827.4MHz)の場合には、乗算器MLT1の出力CH×22は"182028"で、乗算器MLT2の出力である分母データGは"1300"となるので、割算器DIV1の出力は"650"、加算器ADD1の出力は"182678"で、割算器DIV2から出力される整数部データIは"140"、減算器ASC1から出力される分子データFは"28"となる。
【0055】
ここで、加算器ADD1と減算器ASC1は、分数部のデータを0〜1299の範囲にするのではなく、−650〜+649の範囲にするためのオフセット演算を行なうために設けられている。平均値が650の近傍になるよりも±0の近傍になる方が、直流成分を小さくすることができるためである。
【0056】
次に、前記実施例の分周比生成回路264におけるシグマデルタ変調器642のより詳細な構成と分周比Nの生成方法について説明する。
図6に示されているように、本実施例のシグマデルタ変調器642は、入力分子データFとフィードバックデータとを加算する加算器ADD2と、加算結果を量子化する1ビット量子化器QTG1と、該量子化器QTG1の出力を定数倍する演算器ALU1と、該演算器ALU1の出力と加算器ADD2の出力との差分を求める減算器ASC2と、得られた差分を遅延して前記加算器ADD2にフィードバックする遅延器DLY1とから構成され、基準クロックφrefに同期して動作し、入力分数データを時間軸方向のデータに変換して出力する。
【0057】
上記量子化器QTG1と演算器ALU1には、分周比計算部641から分母データGが供給され、量子化器QTG1は入力が分母データGよりも大きいときは"+1"を出力し、入力が0〜Gの範囲にあるときは"0"を出力し、入力が0よりも小さいときは"−1"を出力する。一方、演算器ALU1はそのゲイン(倍数)が、分周比計算部641より与えられた分母データGと同じ値に設定され、入力をG倍して出力する。演算器ALU1は、乗算器でもよいが、Gを設定するためのレジスタと入力に応じてレジスタの値またはその符号反転値あるいは"0"を選択して出力するセレクタなどにより構成することもできる。
【0058】
ここで、分周比計算部641から入力された分子データFが"28"で、分母データGが"1300"である場合のシグマデルタ変調器642の動作を、図7を用いて説明する。
分子データFが"28"であると、加算器ADD2の出力は図7(b)のように、1クロックごとに"28"ずつ階段状に増加して行く。量子化器QTG1は入力が分母データGよりも大きいときは"+1"を出力するため、加算器ADD2の出力がG(=1300)を超えたときに「+1」を出力する。つまり、1300/28(≒47)クロックごとに「+1」を出力する。その結果、シグマデルタ変調器642は、基準クロックφrefの1300回に28回だけ「+1」を出力することになる。
【0059】
つまり、この実施例のシグマデルタ変調器642は、分母データGのクロック数の期間に分子データFの数だけ「+1」を出力することが分かる。これは、量子化器QTG1のしきい値であるGを入力の変化量Fで割った値G/Fで、基準クロックφrefの期間Gを割ると、G÷G/F=Fとなることからも明らかである。
【0060】
図9には、分周比生成回路264において分周比計算部641から出力される整数部データIと、分子データFと、分母データGと、シグマデルタ変調器642から出力される分数部データF/Gと、整数部データIと分数部データF/Gとを加算して可変分周器631へ分周比を出力する加算器643の出力分周比N(=I+F/G)の関係が示されている。
【0061】
図9に示されているように、I=140,F=28,G=1300の場合、可変分周器631へは基準クロックφrefの1300回に28回だけ"141"が出力され、残りの1272回は「140」が出力される。すなわち、基準クロックφrefの1300回に28回だけ"141"が分周比Nとして、分周比生成回路264から可変分周器631へ供給され、1300回の内の残りの1272回は"140" が分周比Nとして、分周比生成回路264から可変分周器631へ供給される。この供給された分周比Nに従って、可変分周器631は、発振信号φRFを分周して、信号φdivを形成する。これにより形成された信号φdivは、ある時間的な期間を見た場合、可変分周器631が、小数点以下の分周比(140+28/1300)で発振信号φRFを分周して形成した信号と実質的に同じと見なすことが出来る。
【0062】
ところで、図6の実施例の1次のシグマデルタ変調器においては、例えば1300回に28回だけ規則的に"141"が出力されるというように、変調された分周比に周期的な繰り返しつまり所定の周波数の固定パターンが存在する。この周期性の固定パターンは、比較的低い周波数であるが、可変分周器231を含むRF−PLLの出力にスプリアスとして現われるため望ましくない。
【0063】
そこで、この1次のシグマデルタ変調器に含まれる周期性の固定パターンを除去してノイズシェーピングを行えるようにするため、以下に述べるような高次のシグマデルタ変調器を使用するのが望ましいことを見出した。ただし、高次のシグマデルタ変調器としてあまり次数の高い変調器を用いてもノイズシェーピング効果が薄れるとともに、回路規模が大きくなりすぎるので、3次のシグマデルタ変調器を用いることとした。
【0064】
図8には、本発明の第2の実施例に用いられる3次のシグマデルタ変調器の構成例が示されている。
この実施例のシグマデルタ変調器は、図6の1次のシグマデルタ変調器を構成する加算器ADD2と1ビット量子化器QTG1と演算器ALU1と減算器ASC2と遅延器DLY1の組を3組備え、2段目の加算器ADD22にはFの代わりに1段目の遅延器DLY1の出力が入力され、3段目の加算器ADD23にはFの代わりに2段目の遅延器DLY2の出力が入力されるとともに、3段目の1ビット量子化器QTG3の出力を微分器DFR1で微分した値と2段目の1ビット量子化器QTG2の出力が加算器ADD3で加算され、さらにその加算値を微分器DFR2で微分した値と1段目の1ビット量子化器QTG1の出力が加算器ADD4で加算されて出力されるように構成されている。また、遅延器DLY4及びDLY5は、1段目、2段目及び3段目の遅延量を合わせるために、設けられている。
【0065】
3次のシグマデルタ変調器を用いることにより、分数部データF/Gに含まれる低周波数の固定パターンが見えなくなり、周波数の高い方に拡散したものが出力されるようになる。具体的には、例えばI=140,F=28,G=1300の場合を考えると、可変分周器631へは基準クロックφrefの1300回に28回だけ"141"が出力される他、それらの出力の途中で"142"や"143"等が出力されるとともに、それを打ち消すように"142"の出現回数と同じ回数だけ"138"が出力され、また"143"の出現回数と同じ回数だけ"137"が出力されるようになる。つまり、平均すると"141"が28回出力されたのと同じになる。
【0066】
これにより、3次のシグマデルタ変調器を用いた場合にも1次のシグマデルタ変調器を用いた場合と同じ分周比Nが可変分周回路631に与えられるとともに、シグマデルタ変調器の出力からRF−PLLの出力にのるスプリアスが減少され、ノイズシェーピング効果が得られるようになる。なお、"142"や"143"とそれを打ち消す "138"や "137"を出力させる代わりに、"141"をφrefの1300回にN回(N≧29)以上出力させるとともに"139"を(N−28)回出力させて、平均するとφrefの1300回に28回だけ"141"が出力されるようにしてもよい。
【0067】
特に制限されるものでないが、本実施例のシグマデルタ変調器は、微分器DFR2と加算器ADD4との間に、微分器DFR2の出力またはオールゼロの値を選択的に加算器ADD4に供給可能なセレクタSEL1が設けられており、微分器DFR2の出力を選択したときは回路を3次のシグマデルタ変調器として動作させ、オールゼロの値を選択したときは回路を1次のシグマデルタ変調器として動作させることができるように構成されている。
【0068】
次に、本発明の第3の実施例を、図10を用いて説明する。この実施例は、図6の実施例のシグマデルタ変調器642の前段にレジスタREG0と加算器ADD0を付加することによって、RF−PLLの発振周波数の調整を可能にしたものである。具体的には、レジスタREG0に小数部のデータDを設定可能にし、加算器ADD0にて分子データFと小数データDとを加算して加算器ADD2へ供給させることによって、分周比の分数部データを小数方向へ拡張できるようにしたものである。これにより、例えば分子データFとして"28"が設定され、小数データDとして"0.025"が設定されたような場合、シグマデルタ変調器642は1300000回に28025回だけ「+1」を出力するように動作し、これによりRF−PLLの発振周波数の微調整(ファインチューニング)が可能になる。
【0069】
携帯電話機は、消費電力の大きなパワーアンプを使用する送信時にはパワーアンプを使用しない受信時に比べて電源電圧が低下する現象がある。この現象は、電源電圧としてバッテリー電圧を使う場合は勿論のことDC−DCコンバータで変換された電圧を使う場合にも生じる。そのため、送信時と受信時とで電源電圧が異なり基準発振信号φrefを発生する基準発振回路(DCXO)261の周波数が若干ずれることがある。しかるに、この実施例を適用して、レジスタREG0に小数データDを設定することによって、かかる周波数ずれを回避することが可能になる。
【0070】
なお、レジスタREG0に設定すべき小数データDは、予め電源電圧を変化させたときの基準発振回路の発振周波数を測定して決定し、ベースバンド回路300内のEPROMやフラッシュメモリのような書き替え可能な不揮発性メモリに記憶させておいて、ベースバンド回路300から高周波IC200へバンド情報BNDや分周比情報NIFを与えるときに小数データDも同時に送り、レジスタREG0に設定させるようにすれば良い。加算器ADD0の代わりに乗算器を設け、レジスタREG0に例えば1.001のような値を設定して分子データFが小数以下の部分を含む値となるようにしても良い。
【0071】
図11は、前記分周比計算部641を構成する割算器DIV2の構成例が示されている。この実施例の割算器DIV2は、加算器ADD1から供給される分子データと乗算器MLT2から供給される分母データによる割り算を一度に行なうように構成する代わりに、引き算とシフトの繰り返しで実現するように構成することにより、回路規模を小さくしたものである。
【0072】
具体的には、割算器DIV2は、加算器ADD1から供給される分子データXR(CH・X)を設定する19ビットのXレジスタ411と、乗算器MLT2から供給される分母データYR(65Y)を設定する11ビットのYレジスタ412と、Yレジスタ412に取り込まれた分母データYRを上位側へ最大Mビットだけシフトするビットシフタ413と、該ビットシフタ413におけるシフト量Mを付与するダウンカウンタ414と、前記Xレジスタ411に取り込まれた分子データXRとビットシフタ413によりシフトされた分母データYRSの大小を比較する比較回路415と、比較回路415による比較結果の大小を示す値YXRS(部分商)を順次加算する加算器416と、加算結果を保持するQレジスタ417と、割算器DIV2全体の動作を制御するタイミングコントロール回路418とから構成されている。ビットシフタ413によって分母データYRを上位側へMビットシフトさせることにより、シフトされた分母データYRSは2Mの重みを持つデータとされる。
【0073】
そして、上記比較回路415は、比較結果が"1"すなわちXR≧YRSのときは部分商YXRSとして2Mの重みを持つ"1"と、部分商の余りYXRMとして差分"XR−YRS"をそれぞれ出力し、比較結果が"0"すなわちXR<YRSのときは部分商YXRSとして"0"を出力し、部分商の余りYXRMとして"XR"を出力するように構成されている。コントロール回路418は、上記比較回路415による比較結果が"1"すなわちXR≧YRSのときはその差分"XR−YRS"をXレジスタ411へ戻し、比較結果が"0"すなわちXR<YRSのときは"XR"をXレジスタ411へ戻すように、Xレジスタ411の前段のセレクタSEL2を制御する。また、コントロール回路418は、上記比較回路415による比較動作が行なわれるたびに、上記カウンタ414の値Mを"1"ずつ減少すなわちデクリメントする。
【0074】
上記"M"の値は、レジスタ411と412に取り込まれる分子データXRと分母データYRの関係から、XR≧YR×2MすなわちXR/YR≧2Mを満足する整数のうち最大の値とされる。例えば、分子データXRのビット数が19で、分母データYRのビット数が11の場合を考えると、XRの最大値は219、YRの最大値は211であるので、XR/YR=219/211=524288/2048=256=28より、M=8となる。本実施例の割算器DIV2においては、上記比較回路415による比較動作を(M+1)回すなわち9回実行すると全演算が終了し、そのときQレジスタ417に保持されている値が割り算の"商"、比較回路415から出力されるYXRMが割り算の"余り"となる。タイミングコントロール回路418は、基準発振回路261からの基準発振信号φrefに基づいて生成された26MHzのクロック信号によって動作し、演算リセット信号RESや演算クロックCLK1,CLK2を生成し、割算器DIV2内部の回路に供給する。
【0075】
次に、図11の割算器DIV2を有する分周比生成ロジック264と、それを含む図2のPLL回路における自動バンド選択回路637による選択バンドの決定の手順を、図12〜図14のタイミングチャートを用いて説明する。
図12〜図14のうち、図12は分周比生成ロジック264における分周比生成タイミングである。また、図13は自動バンド選択回路637による選択バンドの決定の手順を、図14は図2のPLL回路を有する図1の高周波ICにおける制御回路260によるモード制御および各VCOの立ち上げの手順を示す。図12の分周比生成ロジック264における分周比生成は、図13における選択バンドの決定動作開始の直前(t6'−t61の期間)に行なわれ、図13の選択バンドの決定動作は図14の送信モードTxの前のウァームアップ期間"Warm up" (t6−t7の期間)の初期に行なわれる。
【0076】
図12の分周比生成動作を説明する前に、まず、図14のタイミングチャートを用いて高周波ICにおける制御回路260によるモード制御および各VCOの立ち上げの手順を説明する。なお、図14において、(A)はIFVCOを有しVCOの周波数測定とその測定値に基づくバンド選択を行なう従来の高周波ICにおけるRFVCO,IFVCOおよびTXVCOの動作を、また、(B)は本実施例の高周波ICにおけるRFVCOおよびTXVCOの動作を示す。
【0077】
システムの電源が投入されると、高周波IC(200)に対して電源の供給が開始される。また、電源の立上がり後にベースバンドIC(300)から高周波ICに対して例えば "Word4"なるコマンドが供給される。すると、制御回路(260)によって高周波IC内部のレジスタなどの回路がリセット状態にされ、高周波ICはアイドルモード(コマンド待ちのスリープ状態)に入る(図14タイミングt1)。
【0078】
この状態では、各VCOの発振動作は停止されている。VCOのキャリブレーションを行なう従来の高周波ICでは、アイドルモード"Idle"中に、ベースバンドICからVCOの測定を指示する所定のビットコードからなるコマンド(Word7)が供給されると、高周波IC内のRFVCOとIFVCOの周波数測定処理(測定と記憶)が行なわれるが、本実施例の高周波IC200においては何もなされない(図14タイミングt2)。
【0079】
また、従来の高周波ICにおいては、RFVCOとIFVCOの各バンドの周波数測定は並行して行なわれる。その後、IFVCOの周波数測定に使用したカウンタを用いた送信用TXVCOの周波数測定を行なう。そのため、RFVCOの周波数測定の方が早く終わる。ベースバンドICは 測定開始コマンド"Word7"の送信後、適当な時間が経過すると初期設定を指令する"Word5,6"を送って来る(図14タイミングt3)。TXVCOの周波数測定が終了すると、終了が制御回路に通知されるように構成されており、制御回路は測定終了後に高周波IC内部を送受信動作のために初期設定する。
【0080】
この初期設定が終了すると、ベースバンドICから高周波ICに対して、使用チャネルの周波数情報を含むコマンド"Word1"が供給され、制御回路はVCOを起動するウォームアップモード"Warm up"に入る(図14タイミングt4)。このコマンドには送信または受信を指示するビットも含まれており、そのビットに応じて受信の時はベースバンドからの周波数情報に基づいてRFVCO(262)の使用バンドの選択動作を行なう。そして、RFVCOを発振動作させ、RF−PLLループをロック状態にさせる。
【0081】
その後、ベースバンドICから受信動作を指令するコマンド"Word2"が送られて来ると、受信モード"Rx"に入り、受信系回路RXCを動作させて受信信号の増幅、復調を行なわせる(図14タイミングt5)。従来の高周波ICにおいては、"Word1"が供給されるとRFVCOの周波数測定を行なってから、RFシンセサイザをロックさせるようになっており、この周波数測定はすべてのバンドについて行なうため、2分探査方式で使用バンドを決定する本実施例の高周波ICに比べて使用バンドが決定されるまでの時間が長くかかる。RFVCOのバンド数が例えば16個のような場合にはそれでも時間的に間に合っていたが、バンド数が増加して例えば256個のような数になると、RFシンセサイザのロックアップが受信開始に間に合わないおそれがある。これに対し、本実施例の高周波ICでは2分探査方式で使用バンドを決定するため、バンド数が多くても受信開始前にRFシンセサイザのロックアップを確実に終了させることができるようになる。
【0082】
次に、受信モード"Rx"が終了するとベースバンドIC(300)から周波数情報を含むコマンド"Word1"が供給され、再び制御回路(260)はVCOを起動するウォームアップモード"Warm up"に入る(図14タイミングt6)。このコマンド内の送信または受信を指示するビットが送信を示しているときは、従来の高周波ICにおいては、IFVCOを起動させてIFシンセサイザのロッキングを行なうとともに、ベースバンドICからの周波数情報に基づいてRFVCOとTXVCOの使用バンドの選択動作を行なう。そして、バンド決定後にRFシンセサイザおよびTX−PLLループをロック状態にさせる。これに対し、本実施例の高周波ICでは、コマンド"Word1"によるウォームアップモード"Warm up"の開始に応じて"Word1"に含まれる周波数情報(CH,T/R,NIF,BND)に基づくRFVCOの分周比生成と、RFVCOとTXVCOの使用バンドの選択動作を行なった後、RFシンセサイザおよびTX−PLLループをロック状態にさせる。
【0083】
その後、ベースバンドIC300から高周波IC200に対して送信動作を指令する"Word3"が送られ、"Word3"を受信すると、制御回路260は送信モードに入り、送信信号の変調、増幅を行なわせる(図14タイミングt7)。また、制御回路260は、GSMかDCS/PCSかに応じてスイッチSW1,SW2などの切替え制御も行なう。なお、上記受信モード"Rx"および送信モード"Tx"は、それぞれタイムスロットと呼ばれる時間単位(例えば577μ秒)で実行される。
【0084】
ベースバンドIC300から"T/R"が送信を示すコマンド"Word1"を本実施例の高周波IC200が受けると、RFVCOの分周比の生成を開始する。分周比の生成は、図12に示されているように、図11の割算器DIV2における前述した演算が9回実行されて、"商"Qと"余り"YXRMが算出され、"商"Qが整数部データIとして、また"余り" YXRMから65Y/2を引いたものが分子データFとして分母データGと共にシグマデルタ変調器642に供給される。そして、シグマデルタ変調器642で生成されたF/Gと上記整数部データIとを加算器643で加算したI+F/Gが、分周比Nとして分周比生成ロジック264から可変分周器631へ供給されて、可変分周器631はRFVCO262から発振信号φRFを分周比Nで分周したクロックφdivを生成して出力する。
【0085】
次に、RFシンセサイザ263内の自動バンド選択回路637による選択バンドの決定の手順を、図13のタイミングチャートを用いて説明する。
分周比生成ロジック264における上記可変分周器631の分周比の生成が終了すると、制御回路260から自動バンド選択回路637に対して自動バンド選択動作の開始を指示する信号BSSが供給される。すると、自動バンド選択回路637から、PLLループ上の切替えスイッチ635を固定電圧VDC側に切り替えるスイッチ切替え信号SCとリセット信号RTが出力されるとともに、分周比生成ロジック264から可変分周回路631への分周比「N」の供給が開始される(タイミングt61)。切替えスイッチ635が固定電圧VDC側に切り替えられると、この固定電圧VDCが制御電圧VtとしてVCO262に供給され、VCOはその固定電圧VDCに応じた周波数で発振を開始する。
【0086】
なお、本実施例においては、このとき同時に図8のシグマデルタ変調器642に対して、3次のシグマデルタ変調から1次のシグマデルタ変調動作を行なうように切り替え信号が供給される。前述したように、3次のシグマデルタ変調器として動作すると可変分周器631の平均分周比は一定であるが局所的には分周比が変動する。一方、自動バンド選択では、可変分周器631で分周されたクロックφdivと基準発振信号φrを固定分周器636で1/65分周したクロックφr'の位相の進み遅れを判定するため、可変分周器631の分周比が変動すると位相がずれてしまい正しい位相判定が行なえなくなるおそれがある。そこで、この実施例では、自動バンド選択の際には、シグマデルタ変調器642を、1次のシグマデルタ変調器として動作させるようにしている。
【0087】
また、自動バンド選択回路637内には、基準発振回路261からの基準発振信号φrを計数してタイマ動作を行なう周波数カウンタや制御回路、可変分周回路631の出力φ1と固定分周回路636の出力φr'を比較してφ1の位相がφr'の位相よりも進んでいるか遅れているか判定する位相進み遅れ判定回路、該判定回路372の判定結果に応じてVCO262のバンドを切り替えるVCOバンド切替え回路が設けられており、リセット信号RTの入力後、周波数カウンタが5μs(マイクロ秒)経過すると制御回路にタイマ信号が送られる。この5μsの時間は、ループフィルタ634の電圧が固定電圧VDCで安定するのに要する時間である。5μsが経過すると、制御回路は、VCOバンド切替え回路に対してVCO262へバンド切替え制御信号VB0〜VB7を送るよう指令する信号を与える。これにより、VCO262において選択的に接続される容量素子が切り替えられて選択バンドが指定される(タイミングt62)。ここで最初の指定バンドは256個のバンド#0〜#255のうち中央のバンド#127である。
【0088】
次に、自動バンド選択回路637内の制御回路は、VCO262のバンド切替えに要する短い時間(例えば0.5μs)を待ってから、可変分周回路631および固定分周回路636に対してリセット信号RESを送る。可変分周回路631と固定分周回路636はカウンタ回路であり、リセット信号RESにより可変分周回路631と固定分周回路636が一旦「0」にリセットされ、そのリセットが解除されて計数を開始する。そして、それぞれ設定された分周比「N」と「65」を計数するとそれぞれパルスφdiv,φr'を出力する。固定分周回路636は基準発振回路13からの正確な基準発振信号φr(26MHz)により動作するので、出力パルスφr'の周波数は400kHzで周期は2.5μsである。これらの出力パルスφdiv,φr'は位相進み遅れ判別回路に供給されており、進み遅れ判別回路は可変分周回路631の出力パルスφdivの立ち上がりが固定分周回路636の出力パルスφr'の立ち上がりよりも進んでいるか遅れているかを判別する。
【0089】
そして、位相進み遅れ判別回路は、可変分周回路631の出力パルスφdivが遅れていると判別すると、VCOバンド切替え回路に対して、VCO262へ現在よりも高い周波数のバンドを指定するバンド切替え制御信号VB0〜VB7を送るよう指令する信号を与える(タイミングt63)。一方、可変分周回路631の出力パルスφdivが進んでいると判別すると、位相進み遅れ判別回路22はVCOバンド切替え回路23に対して、VCO11へ現在よりも低い周波数のバンドを指定するバンド切替え制御信号VB0〜VB7を送るよう指令する信号を与える。2回目のバンド切替え制御信号VB0〜VB7により指定されるバンドは、φdivが遅れているときは#127と#255の真ん中の#191、φdivが進んでいるときは#127と#0の真ん中の#63である。
【0090】
バンドの切替え指令が行なわれると、制御回路はVCO262のバンド切替えに要する短い時間(例えば0.5μs)を待ってから、可変分周回路631および固定分周回路636に対して再びリセット信号RESを送る。すると、可変分周回路631と固定分周回路636は、一旦「0」にリセットされてから計数を再開する。そして、それぞれ設定された分周比Nと「65」を計数するとそれぞれパルスφdiv,φr'を出力し、進み遅れ判別回路により可変分周回路631の出力パルスφdivの立ち上がりが固定分周回路636の出力パルスφr'の立ち上がりよりも進んでいるか遅れているか判別される。
【0091】
そして、可変分周回路631の出力パルスφdivが遅れていると判別すると、進み遅れ判別回路VCOバンド切替え回路に対して、VCO262へ現在よりも高い周波数のバンドを指定するバンド切替え制御信号VB0〜VB7を送るよう指令する信号を与える(タイミングt64)。一方、可変分周回路631の出力パルスφdivが進んでいると判別すると、進み遅れ判別回路はVCOバンド切替え回路に対して、VCO262へ現在よりも低い周波数のバンドを指定するバンド切替え制御信号VB0〜VB7を送るよう指令する信号を与える。3回目のバンド切替え制御信号VB0〜VB7により指定されるバンドは、#127と#191の真ん中の#159、#191と#255の真ん中の#123、#127と#63の真ん中の#95または#63と#0の真ん中の#31である。
【0092】
上記動作を8回繰り返すことで、256バンドの中から指定発振周波数(分周比Nに対応した周波数)に適したバンドが選択される(タイミングt65)。8回目の判定では7回目の判定で選択されたバンドもしくはそれよりも1つだけ上のバンド(または1つ下のバンドでも可)が選択される。以上の動作によって、VCO262の使用バンドが決定され、PLLループ上のスイッチ635が固定電圧VDCからチャージポンプ633側へ切り替えられて通常のPLLの周波数引き込み動作が開始される。なお、8回目の判定で選択されたバンドにさらにオフセットを加えて最終選択バンドを決定するようにしても良い。このオフセットは、リセット信号RESによる可変分周回路631と固定分周回路636のリセット動作のずれに起因する判別誤差を補償するためのものである。
【0093】
また、このとき同時に図8のシグマデルタ変調器642に対して、1次のシグマデルタ変調から3次のシグマデルタ変調動作を行なうように切り替え信号が供給される。さらに、このときシグマデルタ変調器642の内部はリセットされる。このように、バンド選択動作中はシグマデルタ変調器642を1次のシグマデルタ変調器として動作させることにより、可変分周器631で分周されたクロックφdivと基準発振信号φrを固定分周器636で1/65分周したクロックφr'の位相の進み遅れの判定を正しく行なうことができる。しかも、本実施例のPLL回路を適用した高周波ICにおいては、スイッチ635が固定電圧VDCからチャージポンプ633側へ切り替えられる直前の電圧がループフィルタの電圧すなわち固定電圧VDCに極めて近い値になるため、周波数引き込みも極めて短時間に終了するようになる。
【0094】
以上本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものでない。例えば前記実施例においては、分周比生成回路641に設けられている乗算器MLT1,MLT2において入力に掛け合わせる値を生成するデコーダDEC1,DEC2を高周波IC内に設けたものを説明したが、デコーダDEC1,DEC2を設ける代わりに、デコーダの出力に相当する値(図4および図5参照)をベースバンド回路300から高周波IC200に与えるように構成しても良い。
【0095】
また、前記実施例では、IF用分周器231の分周比NIFをチップの外のベースバンド回路300から与えるようにしているが、スプリアス対策のサイドステップを考えなければ、送信か受信かを示す情報T/Rとバンド情報BNDとチャネル情報CHとからチップ内部で自動的に分周比NIFを決定してIF用分周器231に設定するように構成しても良い。
【0096】
さらに、前記実施例では、同一の半導体チップに送信系回路と受信系回路とが形成された高周波ICについて説明したが、送信系回路とRF−PLLを内蔵し、別個の半導体チップに形成された受信系回路に対して上記RF−PLLで生成された発振信号を供給するようにしたものにも適用することができる。また、基準となる信号φrefを生成する発振回路(DCXO)261が送信系回路や受信系回路と同一の半導体チップ上に形成されているものを説明したが、基準信号φrefはチップ外部から与えるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上の説明では主として本発明者によってなされた発明をその背景となった利用分野である高周波ICにおけるRF−PLLを構成する分周回路に適用したものについて説明したが、それに限定されず、いわゆる整数部と小数部からなる分周比で分周を行なう可変分周器一般に適用することができる。また、実施例では、携帯電話機のような無線通信システムに用いられる高周波ICに適用した場合について説明したが、本発明はそれに限定されるものでなく、無線LAN用の高周波ICその他、受信信号や送信信号と合成されて周波数変換や変復調を行なう高周波信号を生成するPLL回路を有する高周波ICに対しても本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明を適用したマルチバンド方式の通信用半導体集積回路(高周波IC)とそれを用いた通信システムの一例を示すブロック図である。
【図2】実施例の高周波ICにおけるRF−PLLのシンセサイザと分周比設定ロジックの構成例を示すブロック図である。
【図3】図2の分周比設定ロジックを構成する分周比計算部の構成例を示すブロック図である。
【図4】図3の分周比計算部を構成する乗算器MLT1に付随するデコーダの入力と出力の関係を示す説明図である。
【図5】図3の分周比計算部を構成する乗算器MLT2に付随するデコーダの入力と出力の関係を示す説明図である。
【図6】図2の分周比設定ロジックを構成するシグマデルタ変調器の構成例を示すブロック図である。
【図7】図6のシグマデルタ変調器の動作タイミングを示すタイミングチャートである。
【図8】本発明の第2の実施例に用いられる3次のシグマデルタ変調器の構成例が示すブロック図である。
【図9】図2の分周比設定ロジックの動作タイミングを示すタイミングチャートである。
【図10】本発明の第3の実施例におけるシグマデルタ変調器の構成例を示すブロック図である。
【図11】分周比計算部を構成する割算器の構成例を示すブロック図である。
【図12】分周比生成ロジックにおける分周比生成タイミングを示すタイミングチャートである。
【図13】自動バンド選択回路による選択バンドの決定の手順を示すタイミングチャートである。
【図14】GSM用の高周波ICにおけるモード制御および各VCOの立ち上げの手順を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0099】
100 送受信用アンテナ
110 送受信切り替え用のスイッチ
120 フィルタ
130 高周波電力増幅回路
200 高周波IC
211 ロウノイズアンプ
212 復調&ダウンコンバート用ミキサ
213 高利得増幅回路
231 IF用分周回路
233 変調&アップコンバート用ミキサ
235 オフセットミキサ
240 送信用発振回路(TXVCO)
260 制御回路
261 基準発振回路
262 発振回路(RFVCO)
263 シンセサイザ
264 分周比生成ロジック
631 可変分周回路
632 位相比較回路
633 チャージポンプ
634 ループフィルタ
637 バンド選択回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振回路と、該発振回路の発振信号を整数部Iと分数部F/Gからなる分周比(I+F/G)で分周可能な可変分周回路と、該可変分周回路の出力信号と基準信号の位相差を検出する位相比較回路と、該位相比較回路により検出された位相差に応じた電圧を出力して前記発振回路の発振周波数を制御する周波数制御回路とを有するPLL回路を備えた通信用半導体集積回路であって、
外部から供給される送信開始指令と使用周波数帯情報に基づいて、前記可変分周回路に与える分周比を算出する分周比算出回路と、
該分周比算出回路により算出された分周比により前記可変分周回路を動作させ、前記発振回路に所定レベルの電位を制御電圧として供給した状態で前記可変分周回路の出力信号の位相と基準信号を所定の分周比で分周した信号の位相とを比較して前記発振回路の発振周波数帯を選択するバンド選択回路とを備え、
前記バンド選択回路により前記発振回路の発振周波数帯を選択した後、前記発振回路の制御電圧を前記所定レベルの電位から前記周波数制御回路の出力電圧に切り替えて前記発振回路を動作させるように構成されてなること特徴とする通信用半導体集積回路装置。
【請求項2】
前記発振回路により生成された発振信号を分周して中間周波数の信号を生成する分周回路と、該分周回路により分周された信号を送信用ベースバンド信号により変調させる変調回路と、該変調回路により変調された信号をより周波数の高い送信信号に変換する第1周波数変換回路と、該第1周波数変換回路の出力側から取り出された信号と前記分周回路により分周された信号を合成してそれらの信号の周波数差に相当する周波数の信号を生成する第2周波数変換回路と、前記第2周波数変換回路で変換された信号と前記発変調回路により変調された信号の位相差を検出する第2位相比較回路と、を備え、前記第1周波数変換回路は前記第2位相比較回路により検出された位相差に応じた周波数で発振動作することを特徴とする請求項1に記載の通信用半導体集積回路。
【請求項3】
前記発振回路により生成された発振信号を分周する第2分周回路と、受信信号と前記第2分周回路により分周された信号を合成して受信信号を周波数の低い信号に変換する第3周波数変換回路をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の通信用半導体集積回路。
【請求項4】
前記分周比生成回路は、外部から供給される使用周波数帯情報と送信か受信かを示すモード情報とチャネル情報とに基づいて前記整数部Iと分数部F/Gを生成して前記可変分周回路へ与えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の通信用半導体集積回路装置。
【請求項5】
前記分数部F/Gの分母Gは、前記バンド情報と前記分周比に関する設定情報とに対応して予め用意された複数の整数の組み合わせの中から選択されたいずれかの整数に基づいて生成されるように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の通信用半導体集積回路装置。
【請求項6】
前記分周比生成回路は、使用周波数帯情報とチャネル情報とモード情報に対応して予め用意された組み合わせの中から選択された値を前記選択された分母Gで割り算して商を整数部Iとして出力し、余りを分子Fとして出力する分周比計算回路と、前記分母Gを用いて前記分子Fをデルタシグマ変調して分数部F/Gを生成するデルタシグマ変調回路と、該デルタシグマ変調回路の出力と前記整数部Iとを合成して出力する加算回路とから構成されていることを特徴とする請求項5に記載の通信用半導体集積回路。
【請求項7】
前記分周比計算回路は、前記選択された分母Gを順次ビットシフトするシフト回路と、該シフト回路によりシフトされた値と前記使用周波数帯情報とチャネル情報とモード情報に対応して予め用意された組み合わせの中から選択された値または戻り値との大小比較演算を行ない前記戻り値を生成する比較演算回路とを備え、前記ビットシフトと前記大小比較演算を繰り返し実行して前記整数部Iと前記分子Fを生成することを特徴とする請求項6に記載の通信用半導体集積回路。
【請求項8】
前記デルタシグマ変調回路は2次以上のデルタシグマ変調回路であり、前記バンド選択回路による前記発振回路の発振周波数帯の選択動作は、前記デルタシグマ変調回路を1次のデルタシグマ変調回路として動作させて行なうことを特徴とする請求項6に記載の通信用半導体集積回路。
【請求項9】
前記デルタシグマ変調回路は、入力分子データFとフィードバックデータとを加算する加算回路と、加算結果を量子化する1ビット量子化回路と、該量子化回路の出力をゲイン倍する演算回路と、該演算回路の出力と前記加算回路の出力との差分を求める減算回路と、得られた差分を遅延する遅延回路とを備え、前記遅延回路で遅延された差分が前記フィードバックデータとして前記加算回路に供給されるように構成されていることを特徴とする請求項8に記載の通信用半導体集積回路。
【請求項10】
前記デルタシグマ変調回路は、前記加算回路と前記1ビット量子化回路と前記演算回路と前記減算回路と前記遅延回路を複数組備え、いずれかの組の量子化回路の出力に他の組の量子化回路の出力を減算回路で微分した出力をそれぞれ順次加算して出力するようにされ、前記減算回路の出力の代わりにオールゼロの値を加算して出力させることで1次のデルタシグマ変調回路として動作することを特徴とする請求項9に記載の通信用半導体集積回路。
【請求項11】
発振回路と、該発振回路の発振信号を整数部Iと分数部F/Gとで表される分周比(I+F/G)で分周可能な可変分周回路と、該可変分周回路の出力信号と基準信号の位相差を検出する位相比較回路と、該位相比較回路により検出された位相差に応じた電圧を出力して前記発振回路の発振周波数を制御する周波数制御回路とを有するPLL回路を備えた通信用半導体集積回路であって、
外部から供給される送信開始指令と使用周波数帯情報に基づいて、前記可変分周回路に与える分周比を算出する分周比算出回路と、
該分周比算出回路により算出された分周比により前記可変分周回路を動作させ、前記発振回路に所定レベルの電位を制御電圧として供給した状態で前記可変分周回路の出力信号の位相と所定の信号の位相とを比較して前記発振回路の発振周波数帯を選択するバンド選択回路とを備え、
前記バンド選択回路により前記発振回路の発振周波数帯を選択した後、前記発振回路の制御電圧を前記所定レベルの電位から前記周波数制御回路の出力電圧に切り替えて前記発振回路を動作させるように構成されてなること特徴とする通信用半導体集積回路装置。
【請求項1】
発振回路と、該発振回路の発振信号を整数部Iと分数部F/Gからなる分周比(I+F/G)で分周可能な可変分周回路と、該可変分周回路の出力信号と基準信号の位相差を検出する位相比較回路と、該位相比較回路により検出された位相差に応じた電圧を出力して前記発振回路の発振周波数を制御する周波数制御回路とを有するPLL回路を備えた通信用半導体集積回路であって、
外部から供給される送信開始指令と使用周波数帯情報に基づいて、前記可変分周回路に与える分周比を算出する分周比算出回路と、
該分周比算出回路により算出された分周比により前記可変分周回路を動作させ、前記発振回路に所定レベルの電位を制御電圧として供給した状態で前記可変分周回路の出力信号の位相と基準信号を所定の分周比で分周した信号の位相とを比較して前記発振回路の発振周波数帯を選択するバンド選択回路とを備え、
前記バンド選択回路により前記発振回路の発振周波数帯を選択した後、前記発振回路の制御電圧を前記所定レベルの電位から前記周波数制御回路の出力電圧に切り替えて前記発振回路を動作させるように構成されてなること特徴とする通信用半導体集積回路装置。
【請求項2】
前記発振回路により生成された発振信号を分周して中間周波数の信号を生成する分周回路と、該分周回路により分周された信号を送信用ベースバンド信号により変調させる変調回路と、該変調回路により変調された信号をより周波数の高い送信信号に変換する第1周波数変換回路と、該第1周波数変換回路の出力側から取り出された信号と前記分周回路により分周された信号を合成してそれらの信号の周波数差に相当する周波数の信号を生成する第2周波数変換回路と、前記第2周波数変換回路で変換された信号と前記発変調回路により変調された信号の位相差を検出する第2位相比較回路と、を備え、前記第1周波数変換回路は前記第2位相比較回路により検出された位相差に応じた周波数で発振動作することを特徴とする請求項1に記載の通信用半導体集積回路。
【請求項3】
前記発振回路により生成された発振信号を分周する第2分周回路と、受信信号と前記第2分周回路により分周された信号を合成して受信信号を周波数の低い信号に変換する第3周波数変換回路をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の通信用半導体集積回路。
【請求項4】
前記分周比生成回路は、外部から供給される使用周波数帯情報と送信か受信かを示すモード情報とチャネル情報とに基づいて前記整数部Iと分数部F/Gを生成して前記可変分周回路へ与えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の通信用半導体集積回路装置。
【請求項5】
前記分数部F/Gの分母Gは、前記バンド情報と前記分周比に関する設定情報とに対応して予め用意された複数の整数の組み合わせの中から選択されたいずれかの整数に基づいて生成されるように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の通信用半導体集積回路装置。
【請求項6】
前記分周比生成回路は、使用周波数帯情報とチャネル情報とモード情報に対応して予め用意された組み合わせの中から選択された値を前記選択された分母Gで割り算して商を整数部Iとして出力し、余りを分子Fとして出力する分周比計算回路と、前記分母Gを用いて前記分子Fをデルタシグマ変調して分数部F/Gを生成するデルタシグマ変調回路と、該デルタシグマ変調回路の出力と前記整数部Iとを合成して出力する加算回路とから構成されていることを特徴とする請求項5に記載の通信用半導体集積回路。
【請求項7】
前記分周比計算回路は、前記選択された分母Gを順次ビットシフトするシフト回路と、該シフト回路によりシフトされた値と前記使用周波数帯情報とチャネル情報とモード情報に対応して予め用意された組み合わせの中から選択された値または戻り値との大小比較演算を行ない前記戻り値を生成する比較演算回路とを備え、前記ビットシフトと前記大小比較演算を繰り返し実行して前記整数部Iと前記分子Fを生成することを特徴とする請求項6に記載の通信用半導体集積回路。
【請求項8】
前記デルタシグマ変調回路は2次以上のデルタシグマ変調回路であり、前記バンド選択回路による前記発振回路の発振周波数帯の選択動作は、前記デルタシグマ変調回路を1次のデルタシグマ変調回路として動作させて行なうことを特徴とする請求項6に記載の通信用半導体集積回路。
【請求項9】
前記デルタシグマ変調回路は、入力分子データFとフィードバックデータとを加算する加算回路と、加算結果を量子化する1ビット量子化回路と、該量子化回路の出力をゲイン倍する演算回路と、該演算回路の出力と前記加算回路の出力との差分を求める減算回路と、得られた差分を遅延する遅延回路とを備え、前記遅延回路で遅延された差分が前記フィードバックデータとして前記加算回路に供給されるように構成されていることを特徴とする請求項8に記載の通信用半導体集積回路。
【請求項10】
前記デルタシグマ変調回路は、前記加算回路と前記1ビット量子化回路と前記演算回路と前記減算回路と前記遅延回路を複数組備え、いずれかの組の量子化回路の出力に他の組の量子化回路の出力を減算回路で微分した出力をそれぞれ順次加算して出力するようにされ、前記減算回路の出力の代わりにオールゼロの値を加算して出力させることで1次のデルタシグマ変調回路として動作することを特徴とする請求項9に記載の通信用半導体集積回路。
【請求項11】
発振回路と、該発振回路の発振信号を整数部Iと分数部F/Gとで表される分周比(I+F/G)で分周可能な可変分周回路と、該可変分周回路の出力信号と基準信号の位相差を検出する位相比較回路と、該位相比較回路により検出された位相差に応じた電圧を出力して前記発振回路の発振周波数を制御する周波数制御回路とを有するPLL回路を備えた通信用半導体集積回路であって、
外部から供給される送信開始指令と使用周波数帯情報に基づいて、前記可変分周回路に与える分周比を算出する分周比算出回路と、
該分周比算出回路により算出された分周比により前記可変分周回路を動作させ、前記発振回路に所定レベルの電位を制御電圧として供給した状態で前記可変分周回路の出力信号の位相と所定の信号の位相とを比較して前記発振回路の発振周波数帯を選択するバンド選択回路とを備え、
前記バンド選択回路により前記発振回路の発振周波数帯を選択した後、前記発振回路の制御電圧を前記所定レベルの電位から前記周波数制御回路の出力電圧に切り替えて前記発振回路を動作させるように構成されてなること特徴とする通信用半導体集積回路装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−41580(P2006−41580A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214020(P2004−214020)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】
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