説明

通信端末、測位システム及び測位方法

【課題】 通信端末の現在位置を早期に且つ精度良く算出すること。
【解決手段】 携帯電話機10は、GPS衛星40からの信号を受信するGPS受信部13と、その信号に基づいて現在位置を算出する自律測位部14と、自律測位部14による現在位置の算出が開始されてから所定時間経過後、且つ当該算出が終了する以前に、GPS受信部13により受信された信号に基づく測定情報を、当該測定情報に基づいて現在位置を算出する測位サーバ33に送信する測定情報送信部15と、その送信に応じて測位サーバ33が算出した現在位置を受信する位置情報受信部16と、自律測位部14での算出結果と位置情報受信部16での受信結果とに基づいて、自律測位結果又はハイブリッド測位結果のいずれかを測位結果として選択する現在位置選択部18とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末、測位システム及び測位方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、GPS(Global Positioning System、全地球測位システム)衛星からの電波(信号)を端末自身で処理して現在位置を測位する自律測位(UE−Based測位)と、測位サーバに現在位置を測位させるハイブリッド測位とを併用する通信端末が知られている。自律測位だけでなくハイブリッド測位も用いることで、通信端末は、GPS衛星から電波を受信することが困難な場所(例えば、屋内、ビルの陰など)に位置するために自律測位ができない場合でも、現在位置を算出することが可能になる。その結果、全体として、通信端末の現在位置を精度良く算出することができる。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、GPS測位(自律測位)と、ハイブリッド測位と、基地局測位とを併用する携帯端末が開示されている。この携帯端末は、設定テーブルに格納されたデータに従って測位方式を決定する。特に、GPS測位が失敗した場合には、ハイブリッド測位又は基地局測位のいずれかが選択され、選択された測位方式により携帯端末の現在位置が算出される。
【特許文献1】特開2005−77226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の携帯端末では、GPS測位が失敗して初めてハイブリッド測位及び基地局測位のどちらを実行するかが判定され、その後、選択された測位方法により現在位置が算出されるため、測位時間が増大するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を解決する為になされたものであり、通信端末の現在位置を早期に且つ精度良く算出することが可能な通信端末、測位システム及び測位方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の通信端末は、GPS衛星からの信号を受信するGPS受信手段と、GPS受信手段により受信された信号に基づいて現在位置を算出する算出手段と、算出手段による現在位置の算出が開始されてから所定時間経過後、且つ当該算出が終了する以前に、GPS受信手段により受信された信号に基づく測定情報を、当該測定情報に基づいて現在位置を算出する測位サーバに送信する送信手段と、送信手段により送信された測定情報に応じて測位サーバが算出した現在位置を受信する結果受信手段と、算出手段での算出結果と結果受信手段での受信結果とに基づいて、算出手段により算出された現在位置又は結果受信手段により受信された現在位置のいずれかを測位結果として選択する選択手段とを備える。
【0007】
また、本発明の測位システムは、通信端末と、通信端末の現在位置を算出する測位サーバとを備える測位システムであって、通信端末は、GPS衛星からの信号を受信するGPS受信手段と、GPS受信手段により受信された信号に基づいて現在位置を算出する算出手段と、算出手段による現在位置の算出が開始されてから所定時間経過後、且つ当該算出が終了する以前に、GPS受信手段により受信された信号に基づく測定情報を、当該測定情報に基づいて現在位置を算出する測位サーバに送信する送信手段と、送信手段により送信された測定情報に応じて測位サーバが算出した現在位置を受信する結果受信手段と、算出手段での算出結果と結果受信手段での受信結果とに基づいて、算出手段により算出された現在位置又は結果受信手段により受信された現在位置のいずれかを測位結果として選択する選択手段とを備え、測位サーバは、送信手段により送信された測定情報に基づいて現在位置を算出し、当該現在位置を通信端末に送信するサーバ側算出手段を備える、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の測位方法は、通信端末が、GPS衛星からの信号を受信するGPS受信ステップと、通信端末が、GPS受信ステップにおいて受信された信号に基づいて現在位置を算出する算出ステップと、通信端末が、算出ステップにおいて現在位置の算出が開始されてから所定時間経過後、且つ当該算出が終了する以前に、GPS受信ステップにおいて受信された信号に基づく測定情報を、当該測定情報に基づいて現在位置を算出する測位サーバに送信する送信ステップと、通信端末が、送信ステップにおいて送信された測定情報に応じて測位サーバが算出した現在位置を受信する結果受信ステップと、通信端末が、算出ステップでの算出結果と結果受信ステップでの受信結果とに基づいて、算出ステップにおいて算出された現在位置又は結果受信ステップにおいて受信された現在位置のいずれかを測位結果として選択する選択ステップとを備える。
【0009】
これら通信端末、測位システム及び測位方法によれば、通信端末において現在位置が算出されている間に、GPS衛星の信号に基づく測定情報が測位サーバに送信される。そのため、測位サーバは、通信端末における自律測位の実行結果にかかわらず予め測定情報を取得して通信端末の現在位置の算出を開始し、通信端末の現在位置を当該通信端末に早期に提供することが可能になる。また、通信端末が測定情報を測位サーバに送信するのは、その通信端末が自律測位を開始してから所定時間経過後である。そのため、測位サーバは、直近の測定情報を用いて通信端末の現在位置を算出することができる。この手法を用いることで通信端末の直近の位置を算出することができるため、特に、通信端末が移動中にその端末の位置を算出する場合に有効である。加えて、通信端末での算出結果と測位サーバから受信した算出結果とに基づいて測位結果が決定される。したがって、通信端末の現在位置を早期に且つ精度良く測位することが可能になる。
【0010】
本発明の通信端末では、所定時間は、送信手段により複数回行われる送信処理が算出手段による現在位置の算出の終了時に合わせて終了するように設定されることが好ましい。
【0011】
この場合、通信端末における現在位置の算出の終了時に合わせて測定情報の送信が終了するように所定時間、すなわち、通信端末で現在位置の算出が開始されてから最初に測定情報が送信されるまでの時間が決定される。そのため、複数の測定情報をより適切な時期に測位サーバに送信することが可能になり、測位サーバにおいて、精度及び処理速度の双方がより考慮された適切な測位を実施することが可能になる。
【0012】
本発明の通信端末では、選択手段は、算出手段により算出された現在位置が所定の精度以上である場合には当該現在位置を測位結果として選択し、算出手段により算出された現在位置が所定の精度未満である場合には結果受信手段により受信された現在位置を測位結果として選択することが好ましい。
【0013】
この場合、通信端末で算出された現在位置の精度に基づいて、通信端末で算出された現在位置又は測位サーバで算出された現在位置のいずれかが測位結果として選択される。そのため、通信端末の現在位置を精度良く測位することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
このような通信端末、測位システム及び測位方法によれば、通信端末の現在位置を早期に且つ精度良く算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
まず、図1を用いて、実施形態に係る測位システム1について説明する。図1は、測位システム1の全体構成を示す図である。この測位システムは、携帯電話機(通信端末)10と、その携帯電話機10と移動体通信網20を介してデータ通信可能なハイブリッド測位システム30とを備えている。このうち、ハイブリッド測位システム30は、アシストデータ生成サーバ31と、通信サーバ32と、測位サーバ33とを有している。
【0017】
携帯電話機10は、GPS衛星40からの信号を受信し、その信号に基づいて自己の現在位置を算出すること(自律測位)が可能であるとともに、その信号から測定情報を生成してハイブリッド測位システム30に送信することができる。一方、ハイブリッド測位システム30は、携帯電話機10からの測定情報と、移動体通信網20内の基地局(図示せず)から受信した、移動機・基地局間の距離情報とに基づいて、携帯電話機10の現在位置を算出し、算出結果を当該携帯電話機10に送信すること(ハイブリッド測位)が可能である。したがって、携帯電話機10は、自律測位及びハイブリッド測位により自己の現在位置を取得することができる。
【0018】
なお、図1では、簡単のため、携帯電話機10及びGPS衛星40をそれぞれ一ずつ示したが、測位システム1が携帯電話機10及びGPS衛星40をそれぞれ複数備えてもよい。
【0019】
次に、図2及び3を用いて携帯電話機10の機能構成及びハードウェア構成を説明する。図2は、図1に示される携帯電話機10の機能構成を示す図である。また、図3は、その携帯電話機10のハードウェア構成図である。
【0020】
携帯電話機10は、機能的構成要素としてGPS用アンテナ11、データ通信用アンテナ12、GPS受信部(GPS受信手段)13、自律測位部(算出手段)14、測定情報送信部(送信手段)15、位置情報受信部(結果受信手段)16、リファレンスポジション受信部17及び現在位置選択部(選択手段)18を備えている。
【0021】
この携帯電話機10は、図3に示すように、オペレーティングシステムやアプリケーションプログラムなどを実行するCPU101、ROM及びRAMで構成される主記憶部102、メモリなどで構成される補助記憶部103、移動体通信網20を介してデータ通信を行う通信制御部104、液晶モニタなどで構成される表示部105並びに文字・数字入力及び実行指示を行うキーで構成される操作部106で構成される。図2を示して説明した各機能は、図3に示すCPU101及び主記憶部102の上に所定のソフトウェアを読み込ませ、CPU101の制御の下で通信制御部104を動作させるとともに、主記憶部102や補助記憶部103におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0022】
GPS用アンテナ11は、一以上のGPS衛星40から所定のGPS信号を受信可能である。データ通信用アンテナ12は、移動体通信網20を構成する基地局(図示せず)との間で所定のデータ信号を送受信することができる。なお、本実施形態では、携帯電話機10がGPS用及びデータ通信用にそれぞれアンテナを備えているが、アンテナの構成はこれに限定されず、例えば、一本のアンテナと、複数の周波数帯域を分離可能な共用器とを用いる共用方式を採用してもよい。
【0023】
GPS受信部13は、GPS用アンテナ11を介して入力された信号(電波)を受信及び復号し、復号されたデータを自律測位部14に出力する。なお、GPS用アンテナ11は、一以上のGPS衛星40からGPS信号を受信するので、GPS受信部13が自律測位部14に対して複数のGPS衛星40からのデータを出力する場合がある。
【0024】
自律測位部14は、GPS受信部13から都度入力される一以上のデータに基づいて携帯電話機10の現在位置を算出し(自律測位)、算出された現在位置を自律測位結果として現在位置選択部18に出力する。特に、自律測位部14は、3個の測定情報を生成することができた場合には二次元の測位が可能であり、4個の測定情報を生成することができた場合には三次元の測位が可能である。算出される現在位置は、緯度経度と誤差半径とを含むデータによって表される。例えば、「北緯35度39分31秒、東経139度44分43秒、誤差半径50m」を示す自律測位結果が算出され現在位置選択部18に出力される。
【0025】
更に、自律測位部14は、現在位置の算出を開始してから所定時間経過後、且つ当該算出が終了する以前に、入力されたデータに基づいて当該データに対応する測定情報を生成し、その測定情報を測定情報送信部15に出力する。自律測位部14で生成される測定情報は、GPS衛星40から発信された航法メッセージそのものである。この航法メッセージには、GPS衛星40の軌道情報、時計の補正情報、電離層補正データ、アルマナック(複数のGPS衛星それぞれについての大凡の軌道情報)等が含まれている。
【0026】
自律測位部14が測定情報の生成及び出力を開始する時期、すなわち、現在位置の算出が開始されてから測定情報の生成が開始されるまでの所定時間は、予め設定されている現在位置算出の制限時間と、測定情報をハイブリッド測位システム30へ送信するために確保される時間(以下「送信時間」という)とに基づいて決定される。この際、自律測位部14は、送信時間を決定するために、測定情報の送信回数(回)及び送信間隔(秒)が含まれる制御情報を予めハイブリッド測位システム30から受信する。そして、自律測位部14は、受信した送信回数及び送信間隔に基づいて送信時間を算出し、制限時間と送信時間との差を計算し、この差を所定時間と決定する。
【0027】
例えば、制限時間が予め25秒に設定されており、送信回数「10回」及び送信間隔「1秒」が含まれる制御情報を受信した場合、自律測位部14は、送信時間を「1秒×10回=10秒」と計算し、制限時間「25秒」と算出された送信時間「10秒」との差「15秒」を所定時間と決定する。この場合、自律測位部14は、現在位置の算出を開始してから15秒経過した時に最初の測定情報を測定情報送信部15に出力する。
【0028】
その後、自律測位部14は、受信した制御情報により指定された送信間隔で(例えば1秒毎に)、指定された送信回数(例えば10回)だけ測定情報を生成して測定情報送信部15に出力する。自律測位部14には直近のデータが都度入力されるので、自律測位部14は、その都度最新の測定情報を生成し、その測定情報を測定情報送信部15に出力する。
【0029】
測定情報送信部15は、自律測位部14から入力された測定情報を移動体通信網20を介してハイブリッド測位システム30に送信する。この測定情報送信部15に最初に測定情報が入力される時期は、自律測位部14での現在位置算出の制限時間と測定情報の送信のために確保される送信時間との差である所定時間が経過した後、且つ自律測位部14での算出が終了する以前である。したがって、測定情報送信部15は、所定時間経過後且つ当該算出が終了する以前に測定情報を送信する部分であるといえる。また、このように送信時期が決定されることにより、自律測位部14が算出を終了した時とほぼ同じ時期に、測定情報送信部15による測定情報の送信が終了する。すなわち、測定情報送信部15により複数回行われる送信処理は、自律測位部14による現在位置の算出の終了時に合わせて終了するように設定される。
【0030】
位置情報受信部16は、測定情報送信部15から送信された測定情報に応じてハイブリッド測位システム30から送信されるハイブリッド測位結果を受信して現在位置選択部18に出力する。
【0031】
リファレンスポジション受信部17は、自律測位開始前に移動体通信網20内の基地局(図示せず)からリファレンスポジション(Reference Position)を受信して現在位置選択部18に出力する。このリファレンスポジションは、緯度経度及び誤差半径を含む。例えば、リファレンスポジション受信部17は「北緯35度39分20秒、東経139度44分20秒、誤差半径100m」というリファレンスポジションを受信して現在位置選択部18に出力する。
【0032】
現在位置選択部18は、自律測位部14での算出結果と、位置情報受信部16での受信結果と、リファレンスポジション受信部17から入力されたリファレンスポジションとに基づいて、自律測位部14から入力された自律測位結果、位置情報受信部16から入力されたハイブリッド測位結果又はリファレンスポジション受信部17から入力されたリファレンスポジションのいずれかを携帯電話機10の現在位置(測位結果)として選択する。なお、選択された現在位置は、携帯電話機10の使用者に視認可能なように画面上に表示されたり、携帯電話機10に搭載されている他のアプリケーションプログラムに出力されたりする。
【0033】
具体的には、自律測位結果が入力されたがハイブリッド測位結果が入力されたかった場合、現在位置選択部18は、自律測位結果の誤差半径とリファレンスポジションの誤差半径とを比較し、誤差半径が小さい方の測位結果を携帯電話機10の現在位置として選択する。すなわち、現在位置選択部18は、自律測位結果の誤差半径がリファレンスポジションの誤差半径以下である場合に(自律測位結果が所定の精度以上である場合に)、自律測位結果を携帯電話機10の現在位置として選択する。
【0034】
これとは別に、自律測位結果及びハイブリッド測位結果の双方が入力された場合、現在位置選択部18は、まず、自律測位結果の誤差半径とリファレンスポジションの誤差半径とを比較する。ここで、自律測位結果の誤差半径がリファレンスポジションの誤差半径以下である場合(自律測位結果が所定の精度以上である場合に)、現在位置選択部18は、自律測位結果を携帯電話機10の現在位置として選択する。一方、自律測位結果の誤差半径がリファレンスポジションの誤差半径よりも大きい場合(自律測位結果が所定の精度未満である場合に)、現在位置選択部18は、ハイブリッド測位結果を携帯電話機10の現在位置として選択する。
【0035】
更に、ハイブリッド測位結果が入力されたが自律測位結果が入力されなかった場合(自律測位結果が所定の精度未満である場合に)、現在位置選択部18は、ハイブリッド測位結果を携帯電話機10の現在位置として選択する。なお、自律測位結果及びハイブリッド測位結果の双方が入力されなかった場合は、現在位置選択部18によりリファレンスポジションが携帯電話機10の現在位置として選択される。
【0036】
次に、図4及び5を用いて、ハイブリッド測位システム30の機能構成、及びハイブリッド測位システム30に含まれる各サーバのハードウェア構成を説明する。図4は、図1に示されるハイブリッド測位システム30の機能構成を示す図である。また、図5は、そのハイブリッド測位システム30に含まれる測位サーバ33のハードウェア構成図である。
【0037】
このハイブリッド測位システム30は、機能的構成要素として、アシストデータ生成サーバ31内のアシストデータ生成部31aと、通信サーバ32内の通信部32aと、測位サーバ33内の制御情報生成部33a及びハイブリッド測位部(サーバ側算出手段)33bとを備えている。
【0038】
測位サーバ33は、図5に示すように、オペレーティングシステムやアプリケーションプログラムなどを実行するCPU331、ROM及びRAMで構成される主記憶装置332、ハードディスクなどで構成される補助記憶装置333、ネットワークカードなどの通信制御装置334、キーボードやマウスなどの入力装置335、及びモニタやプリンタなどの出力装置336で構成される。図4に示される制御情報生成部33a及びハイブリッド測位部33bの機能は、図5に示すCPU331や主記憶装置332の上に所定のソフトウェアを読み込ませ、CPU331の制御の下で通信制御装置334を動作させるとともに、主記憶装置332や補助記憶装置333におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0039】
アシストデータ生成サーバ31及び通信サーバ32も、測位サーバ33と同様のハードウェア構成を有している。そして、これらのサーバに備えられている各機能的構成要素も、測位サーバ33内の制御情報生成部33a及びハイブリッド測位部33bと同様にハードウェア上で実現される。
【0040】
アシストデータ生成部31aは、移動体通信網20内の基地局(図示せず)から受信した信号に基づいて、携帯電話機10と当該基地局との距離を示すアシストデータを生成し、生成されたアシストデータをハイブリッド測位部33bに出力する。
【0041】
通信部32aは、移動体通信網20を介して携帯電話機10から送信されてきた測定情報を受信してハイブリッド測位部33bに出力する。また、通信部32aは、制御情報生成部33aから入力された各種制御情報とハイブリッド測位部33bから入力されたハイブリッド測位結果とを移動体通信網20を介して携帯電話機10に送信する。
【0042】
制御情報生成部33aは、携帯電話機10が実行する自律測位を制御するための各種制御情報を通信部32aに出力する。一例として、制御情報生成部33aは、携帯電話機10の測定情報送信部15が測定情報を送信する際の送信回数及び送信間隔を含む制御情報を生成し、その制御情報を通信部32aに出力する。例えば、制御情報生成部33aは、送信回数「10回」及び送信間隔「1秒」を含む制御情報を生成して出力する。また、制御情報生成部33aは、ハイブリッド測位部33bが所定の送信回数分の測定情報を受け付けたときに、携帯電話機10に測定情報の送信を停止させるための制御情報を生成して出力する。なお、制御情報生成部33aが生成する制御情報はこれらに限定されない。
【0043】
ハイブリッド測位部33bは、アシストデータ生成部31aから入力されたアシストデータと、通信部32aから入力された測定情報とに基づいて携帯電話機10の現在位置を算出する(ハイブリッド測位)。そして、ハイブリッド測位部33bは、算出した現在位置を示すハイブリッド測位結果を通信部32aに出力する。このハイブリッド測位結果は、緯度経度と誤差半径とを含む。例えば、ハイブリッド測位部33bは、「北緯35度39分10秒、東経139度44分40秒、誤差半径80m」というハイブリッド測位結果を算出し出力する。
【0044】
次に、図6を用いて、図1に示す測位システム1の処理を説明するとともに本実施形態に係る測位方法について説明する。図6は、図1に示される測位システム1の処理を示すシーケンス図である。
【0045】
携帯電話機10の使用者や他のアプリケーションプログラム等から現在位置の取得が指示されると、携帯電話機10とハイブリッド測位システム30とが移動体通信網20を介して接続される(図示せず)。そして、制御情報生成部33aにより生成された、送信回数及び送信間隔を含む制御情報が携帯電話機10に送信され、保持される(ステップS01)。
【0046】
携帯電話機10では、その制御情報に基づいてGPS受信部13がGPS衛星からの信号を受信及び復号し始め、復号されたデータがGPS受信部13から自律測位部14に出力される(ステップS02、GPS受信ステップ)。そして、自律測位部14において、入力されたデータに基づく現在位置の算出(自律測位)が開始される(ステップS03、算出ステップ)。なお、自律測位部14にて自律測位が行われている間も、GPS受信部13によりGPS衛星からの信号が受信及び復号され、復号データがGPS受信部13から自律測位部14に所定の間隔で出力される(ステップS04、GPS受信ステップ)。
【0047】
そして、自律測位が開始されてから所定時間が経過した時に、自律測位部14により最初の測定情報が生成され、その測定情報が測定情報送信部15に出力される(ステップS05)。次いで、この測定情報が測定情報送信部15によりハイブリッド測位部33bに送信される(ステップS06、送信ステップ)。これら測定情報の生成及び送信の開始時期は、自律測位の制限時間と、制御情報生成部33aから受信した制御情報に含まれる送信回数及び送信間隔から算出した送信時間との差である所定時間により定まる。
【0048】
その後、GPS受信部13から自律測位部14への復号データの出力、自律測位部14から測定情報送信部15への測定情報の出力、及び測定情報送信部15からハイブリッド測位部33bへのその測定情報の送信が、上記ステップS01において送信された制御情報に含まれる送信間隔及び送信回数に従って実行される(ステップS07、送信ステップ)。そして、自律測位部14による自律測位が制限時間経過を理由に終了した時(ステップS08)とほぼ同じ時期に、受信した送信回数分の測定情報が測定情報送信部15によりハイブリッド測位部33bに送信される。
【0049】
その後、測定情報の送信を中止させるための制御情報が制御情報生成部33aで生成され、携帯電話機10に送信される(ステップS09)。次いで、ハイブリッド測位部33bにおいて携帯電話機10からの測定情報などに基づいてハイブリッド測位が行われ(ステップS10)、ハイブリッド測位結果が通信部32aを介して携帯電話機10へ送信される。このハイブリッド測位結果は、携帯電話機10の位置情報受信部16により受信され(結果受信ステップ)、その後、現在位置選択部18に入力される(ステップS11)。一方、携帯電話機10では、自律測位部14で算出された自律測位結果が現在位置選択部18に出力される(ステップS12)。そして最後に、現在位置選択部18において、入力された一以上の測位結果のうち一の測位結果が携帯電話機10の現在位置として選択される(ステップS13、選択ステップ)。
【0050】
以上説明したように、本実施形態によれば、自律測位部14において現在位置が算出されている間に、その自律測位部14にてGPS衛星40の信号から生成された測定情報が測位サーバ33に送信される。そのため、測位サーバ33は、通信端末における自律測位の実行結果にかかわらず予め測定情報を取得して携帯電話機10の現在位置の算出を開始し、測位結果を携帯電話機10に早期に提供することが可能になる。また、測定情報送信部15が測定情報を測位サーバ33に送信するのは、自律測位部14が自律測位を開始してから所定時間経過後である。そのため、測位サーバ33は、直近の測定情報を用いて携帯電話機10の現在位置を算出することができる。この手法を用いることで携帯電話機10の直近の位置を算出することができるため、移動することが多い携帯電話機10の位置を算出する場合に有効である。加えて、自律測位部14での算出結果と測位サーバ33から受信した算出結果とに基づいて測位結果が決定される。したがって、携帯電話機10の現在位置を早期に且つ精度良く測位することが可能になる。
【0051】
また、本実施形態によれば、自律測位部14における現在位置の算出の終了時に合わせて測定情報の送信が終了するように所定時間、すなわち、自律測位部14で現在位置の算出が開始されてから最初に測定情報が送信されるまでの時間が決定される。そのため、複数の測定情報をより適切な時期に測位サーバ33に送信することが可能になり、測位サーバ33において、精度及び処理速度の双方がより考慮された適切な測位を実施することが可能になる。
【0052】
また、本実施形態によれば、自律測位部14での自律測位開始から測定情報送信部15による測定情報送信開始までの所定時間は、測位サーバ33から送信された送信回数及び送信間隔に基づいて決定される。そのため、所定時間をより簡易に決定することができるとともに、自律測位の終了時と測定情報送信の終了時とをより的確に合わせることが可能になる。
【0053】
また、本実施形態によれば、自律測位部14で算出された自律測位結果が所定の精度以上である場合に、その自律測位結果が携帯電話機10の現在位置として選択される一方で、その自律測位結果が所定の精度未満である場合に、測位サーバ33で算出されたハイブリッド測位結果が携帯電話機10の現在位置として選択される。そのため、携帯電話機10の現在位置を精度良く測位することが可能になる。
【0054】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で以下のような様々な変形が可能である。
【0055】
上記実施形態では、自律測位の終了時に所定回数分の測定情報の送信が終了するように所定時間が決定されたが、測定情報の処理方法はこれに限定されない。例えば、自律測位が終了するよりも前に所定回数分の測定情報の送信が終了するように所定時間が決定されてもよいし、自律測位が終了した後に所定回数分の測定情報の送信が終了するように所定時間が決定されてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、自律測位部14が所定時間経過後に測定情報の生成及び出力を開始し、測定情報送信部15が自律測位部14から入力された測定情報をそのままハイブリッド測位部33bに出力したが、所定時間経過後の処理方法はこれに限定されない。例えば、自律測位部14は、所定時間経過の前後にかかわらず測定情報を生成して測定情報送信部15に出力し、測定情報送信部15が所定時間経過後に測定情報の送信を開始するように携帯電話機10を構成してもよい。
【0057】
また、現在位置選択部18における現在位置の選択方法も上記実施形態に限定されない。例えば、自律測位結果とハイブリッド測位結果とが現在位置選択部18に入力された場合に、自律測位結果の誤差半径とハイブリッド測位結果の誤差半径とを比較し、自律測位結果の誤差半径がハイブリッド測位結果の誤差半径以下である場合に自律測位結果を携帯電話機10の現在位置として選択してもよい。また、上記実施形態では、リファレンスポジションの誤差半径を所定の精度として測位結果を選択したが、何を所定の精度とするかも限定されない。例えば、予め設定された固定値を所定の精度として判定してもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、測定情報送信部15が所定の回数分の測定情報を送信したが、測定情報送信部15は、常にその回数分送信する必要はない。例えば、制御情報生成部33aが、送信回数及び送信間隔を含む制御情報に代えて送信可能時間(秒)を含む制御情報を生成し、測定情報送信部15がその送信可能時間だけ測定情報を送信することが可能なように測位システム1を構成してもよい。なお、この場合、所定時間を、自律測位の制限時間と送信可能時間との差とすることが可能である。
【0059】
また、測定情報送信部15は、制御情報生成部33aからの制御情報に含まれる送信回数分測定情報を送信する前に所定の精度以上の自律測位結果が算出された場合に、その算出時点で測定情報の送信を停止してもよい。この場合、測位サーバ33によるハイブリッド測位を行う必要はなく、現在位置選択部18は、自律測位結果を携帯電話機10の現在位置として選択すればよい。この変形例について図7を用いて具体的に説明する。図7は、変形例に係る測位システムの処理を示すシーケンス図である。
【0060】
制御情報の送信(ステップS21)から自律測位開始後の復号データの出力(ステップS24)までの処理は、上記実施形態におけるステップS01〜S04までの処理と同様である。しかし、本変形例では、所定時間が経過して測定情報の生成及び送信がある回数(制御情報に含まれる送信回数未満の回数)実施された(ステップS25)後に、自律測位部14が、算出された自律測位結果が所定の精度以上であり、且つ制限時間内か否かを判定する(ステップS26)。図7に示す例では、自律測位部14が制限時間内に所定の精度以上の自律測位結果を算出したと判定し、自律測位を終了している(ステップS27)。そして、自律測位部14は、自律測位が成功したことを示す測位成功通知を生成し、その測位成功通知を測定情報送信部15を介して測位サーバ33に送信する(ステップS28)。測位サーバ33は、その測位成功通知にしたがってハイブリッド測位を実行しないと判断し、処理を終了する(ステップS29)。
【0061】
なお、図7に示す例で制限時間内に自律測位が終了しなかった場合、すなわち制限時間内に所定の制度以上の自律測位結果が得られなかった場合は、まず、制御情報生成部33aからの制御情報(送信停止指示)にしたがって、その自律測位結果が自律測位部14から現在位置選択部18に出力される。また、ハイブリッド測位部33bにおいてハイブリッド測位が行われ、ハイブリッド測位結果が現在位置選択部18に送信される。そして、現在位置選択部18において、入力された測位結果のうち一の測位結果が携帯電話機10の現在位置として選択される。つまり、制限時間内に自律測位が終了しなかった場合には、図6に示すステップS09〜S13の処理が行われる。
【0062】
なお、図7では、測定情報の生成及び送信をある回数行った後に自律測位が終了したが、所定時間経過前に自律測位が終了する場合もある。このように、所定の精度以上の自律測位結果が算出された時点で測定情報の送信を停止することで、携帯電話機10の現在位置をより早く提供することができる。また、不要な測定情報の送信が回避されるので、移動体通信網20にかかる通信負荷が低減される。更に、早期に自律測位結果が携帯電話機10の現在位置として選択されるので、ハイブリッド測位システム30による不要なハイブリッド測位が回避される。
【0063】
また、上記実施形態では、ハイブリッド測位システム30がアシストデータ生成サーバ31と通信サーバ32と測位サーバ33とを備えたが、ハイブリッド測位システム30の構成はこれに限定されない。例えば、1台のサーバのみでハイブリッド測位システム30を構成してもよいし、上記実施形態とは異なる複数のサーバによりそのシステムを構成してもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、通信端末として携帯電話機10を用いたが、簡易型携帯電話機(PHS:Personal Handy-phone System)、あるいは、携帯型情報端末(PDA:Personal Digital Assistant)などを通信端末として利用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施形態に係る測位システムの全体構成を示す図である。
【図2】図1に示される携帯電話機の機能構成を示す図である。
【図3】図2に示される携帯電話機のハードウェア構成図である。
【図4】図1に示されるハイブリッド測位システムの機能構成を示す図である。
【図5】図1に示される測位サーバのハードウェア構成である。
【図6】図1に示される測位システムの処理を示すシーケンス図である。
【図7】変形例に係る測位システムの処理を示すシーケンス図である。
【符号の説明】
【0066】
1…測位システム、10…携帯電話機(通信端末)、13…GPS受信部(GPS受信手段)、14…自律測位部(算出手段)、15…測定情報送信部(送信手段)、16…位置情報受信部(結果受信手段)、18…現在位置選択部(選択手段)、30…ハイブリッド測位システム、33…測位サーバ、33b…ハイブリッド測位部(サーバ側算出手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS衛星からの信号を受信するGPS受信手段と、
前記GPS受信手段により受信された信号に基づいて現在位置を算出する算出手段と、
前記算出手段による現在位置の算出が開始されてから所定時間経過後、且つ当該算出が終了する以前に、前記GPS受信手段により受信された信号に基づく測定情報を、当該測定情報に基づいて現在位置を算出する測位サーバに送信する送信手段と、
前記送信手段により送信された測定情報に応じて前記測位サーバが算出した現在位置を受信する結果受信手段と、
前記算出手段での算出結果と前記結果受信手段での受信結果とに基づいて、前記算出手段により算出された現在位置又は前記結果受信手段により受信された現在位置のいずれかを測位結果として選択する選択手段とを備える、通信端末。
【請求項2】
前記所定時間は、前記送信手段により複数回行われる送信処理が前記算出手段による現在位置の算出の終了時に合わせて終了するように設定されることを特徴とする、請求項1に記載の通信端末。
【請求項3】
前記選択手段は、前記算出手段により算出された現在位置が所定の精度以上である場合には当該現在位置を測位結果として選択し、前記算出手段により算出された現在位置が所定の精度未満である場合には前記結果受信手段により受信された現在位置を測位結果として選択することを特徴とする、請求項1又は2に記載の通信端末。
【請求項4】
通信端末と、前記通信端末の現在位置を算出する測位サーバとを備える測位システムであって、
前記通信端末は、
GPS衛星からの信号を受信するGPS受信手段と、
前記GPS受信手段により受信された信号に基づいて現在位置を算出する算出手段と、
前記算出手段による現在位置の算出が開始されてから所定時間経過後、且つ当該算出が終了する以前に、前記GPS受信手段により受信された信号に基づく測定情報を、当該測定情報に基づいて現在位置を算出する測位サーバに送信する送信手段と、
前記送信手段により送信された測定情報に応じて前記測位サーバが算出した現在位置を受信する結果受信手段と、
前記算出手段での算出結果と前記結果受信手段での受信結果とに基づいて、前記算出手段により算出された現在位置又は前記結果受信手段により受信された現在位置のいずれかを測位結果として選択する選択手段とを備え、
前記測位サーバは、
前記送信手段により送信された測定情報に基づいて前記現在位置を算出し、当該現在位置を前記通信端末に送信するサーバ側算出手段を備える、
ことを特徴とする測位システム。
【請求項5】
通信端末が、GPS衛星からの信号を受信するGPS受信ステップと、
前記通信端末が、前記GPS受信ステップにおいて受信された信号に基づいて現在位置を算出する算出ステップと、
前記通信端末が、前記算出ステップにおいて現在位置の算出が開始されてから所定時間経過後、且つ当該算出が終了する以前に、前記GPS受信ステップにおいて受信された信号に基づく測定情報を、当該測定情報に基づいて現在位置を算出する測位サーバに送信する送信ステップと、
前記通信端末が、前記送信ステップにおいて送信された測定情報に応じて前記測位サーバが算出した現在位置を受信する結果受信ステップと、
前記通信端末が、前記算出ステップでの算出結果と前記結果受信ステップでの受信結果とに基づいて、前記算出ステップにおいて算出された現在位置又は前記結果受信ステップにおいて受信された現在位置のいずれかを測位結果として選択する選択ステップとを備える、測位方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−151661(P2008−151661A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340386(P2006−340386)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】