説明

通信装置および通信方法

【課題】回線交換通信の呼び出し信号の受信によってパケット交換通信が中断されることによるユーザの不便を低減できる通信装置および通信方法を提供する。
【解決手段】通信部102においてパケット交換通信を行っているときに回線交換網からの呼び出し信号を受信すると、実行中のパケット交換通信が中断され、当該呼び出し信号に対する応答を拒否することを知らせるメッセージが回線交換通信によって呼び出し信号の発信元に送信される。そして、このメッセージの送信後、中断したパケット交換通信が再開される。例えばPTT通信中に電話の着信があった場合でも、呼び出し相手に対して応答を拒否するメッセージが自動的に送信され、中断したPTT通信が自動的に再開される。したがって、ユーザが自ら着信相手に応答したり、中断されたPTT通信を再開するなどの面倒な操作を行わずに済むため、利便性を大幅に向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回線交換通信とパケット交換通信を行うことが可能な携帯電話機等の通信装置とその通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電話機の通信態様が多様化しており、回線交換による従来の音声通話に加えて、IP(internet protocol)網を利用したパケット通信を行うことが可能な電話機が広く利用されている。例えば、携帯電話機同士でリアルタイムに文字をやり取りすることで会話を行う「チャットメール」がある(特許文献1参照)。チャットメールは、予め登録しておいたメンバによってグループを形成し、このグループ内でリアルタイムに文字などのデータをやり取りする「グループ通信」と呼ばれる通信態様の1つである。
【0003】
このグループ通信において、VoIP(voice over internet protocol)を利用した音声通話を行う試みがあり、その一つにPoC(push to talk over cellular)やPTT(push to talk)と呼ばれるものがある。PTTでは、SIP(session initiation protocol)サーバによって各グループとグループ内の各メンバを管理し、パケット化した音声の呼制御を行う。
【特許文献1】特開2003−174520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、一般的な携帯電話機では、パケット交換網を介したデータ通信と、回線交換網を介した音声の通話を同時に実行できる仕様になっていないため、データ通信中に音声通話の着信を受けると、データ通信が自動的に遮断されてしまう。データ通信によってWebページの閲覧などを行っている場合には、途中で通信が遮断されても使用上あまり問題はないが、例えば上述したPTTのグループ通信を行っている途中でデータ通信が遮断されると、円滑なコミュニケーションが阻害されてしまう。すなわち、PTTのグループ通信が途中で遮断されてしまった場合、これに再び参加するためには、グループ通信を開催しているサーバ装置に対して参加を申し出るための操作をユーザ自身が行わねばならならず、特に回線交換網から頻繁に着信があるときには非常に不便であるという問題がある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、回線交換通信の呼び出し信号の受信によってパケット交換通信が中断されることによるユーザの不便を低減できる通信装置および通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る通信装置は、回線交換通信又はパケット交換通信を行う通信部と、前記通信部においてパケット交換通信を行っているときに回線交換通信の呼び出し信号を受信すると、実行中のパケット交換通信を中断し、当該呼び出し信号に対する応答を拒否することを知らせるメッセージを回線交換通信によって前記通信部から前記呼び出し信号の発信元に送信し、当該メッセージの送信後、前記中断したパケット交換通信を再開する制御部とを有する。
【0007】
前記制御部は、実行中のパケット交換通信を中断する場合、通信の中断を知らせるメッセージをパケット交換通信によって前記通信部から通信相手に送信しても良い。
【0008】
上記第1の観点に係る通信装置は、情報を表示する表示部を有していても良い。この場合、前記制御部は、パケット交換通信を中断している間、パケット交換通信が中断していることを知らせる情報を前記表示部に表示しても良い。
【0009】
前記制御部は、実行中のパケット交換通信を中断した後、前記呼び出し信号の発信元の情報を前記通信部の回線交換通信によって取得し、当該取得した情報を前記表示部に表示しても良い。
【0010】
上記第1の観点に係る通信装置は、指示を入力する入力部を有していても良い。この場合、前記制御部は、前記表示部に情報を表示中の発信元との回線交換通信を開始する指示が前記入力部された場合、当該発信元に対する応答拒否メッセージの送信を中止して回線交換通信を開始しても良い。
また、上記第1の観点に係る通信装置は、回線交換通信の通信相手のリストを記憶する記憶部を有していても良い。この場合、前記制御部は、実行中のパケット交換通信を中断した後、前記呼び出し信号の発信元の情報を前記通信部の回線交換通信によって取得し、当該取得した情報において示される発信元が前記リストに登録されている場合は、当該発信元に対する応答拒否メッセージの送信を中止して回線交換通信を開始しても良い。
【0011】
上記第1の観点に係る通信装置は、振動を発生する振動部を有していても良い。この場合、前記制御部は、実行中のパケット交換通信を中断する際に、前記振動部において振動を発生させても良い。
【0012】
上記第1の観点に係る通信装置は、報知音を発生させる報知音出力部を有していても良い。この場合、前記制御部は、実行中のパケット交換通信を中断する際に、前記報知音出力部にて報知音を出力さても良い。
【0013】
本発明の第2の観点は、回線交換通信又はパケット交換通信を行う通信装置における通信方法に関するものであり、この通信方法は、パケット交換通信を行っているときに回線交換通信の呼び出し信号を受信すると、実行中のパケット交換通信を中断する第1の工程と、前記呼び出し信号に対する応答を拒否することを知らせるメッセージを回線交換通信によって前記呼び出し信号の発信元に送信する第2の工程と、前記メッセージの送信後、前記中断したパケット交換通信を再開する第3の工程とを有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、回線交換通信の呼び出し信号の受信によってパケット交換通信が中断されても、中断されたパケット交換通信を自動的に再開することによって、ユーザの面倒な操作を無くすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、通信システムの構成の一例を示す図である。
図1に示す通信システムは、携帯電話機等の通信装置100−1〜100−4と、通信管理装置200とを有する。
【0016】
通信装置100−1〜100−4は、基地局303,304を介してパケット交換網301及び回線交換網302に接続される。
【0017】
通信装置100−1〜100−4は、通信管理装置200の制御に従って、パケット交換網301を介したパケット交換通信を行う。本実施形態では、一例として、PTT(push to talk)によるパケット交換通信を行うものとする。パケット交換通信によって伝送されるデータには、例えばVoIPによる通話の音声や、画像、文字などのデータが含まれる。
【0018】
また、通信装置100−1〜100−4は、回線交換網302を介した音声通話も行う。
通信装置100−1〜100−4は、パケット交換通信の途中で回線交換通信の呼び出し信号を受信した場合、後に述べる手順にしたがって、パケット交換通信の中断、呼び出し先への応答、中断したパケット交換通信の再開を自動的に実行する。
【0019】
通信管理装置200は、通信装置100−1〜100−4のPTTによるグループ通信の管理や制御を行う。
【0020】
通信管理装置200は、通信装置100−1〜100−4の1つからPTTによるグループ通信の開始要求を受けると、その要求に応じて相手方の通信装置を呼出す。例えばメール通信機能を用いて、相手方にグループ通信の開催通知を送信する。この開催通知には、グループ通信に用いるサーバ装置(通信管理装置200)のアドレスや、ログインのためのIDが記載されている。グループ通信への参加に承諾するため、ユーザが通信装置に対して所定の操作を行うと、通信装置は、この開催通知に記載されたアドレスの通信管理装置200に対して、記載されたIDを用いてログインを行い、通信セッションを確立するとともに、参加する旨の応答メッセージを返信する。
【0021】
次に、本発明の実施形態に係る通信装置100−1〜100−4の構成について説明する。
【0022】
図2は、通信装置100−1〜100−4の構成の一例を示す図である。
図2に示す通信装置は、アンテナ101と、通信部102と、キー入力部103と、音声処理部104と、拡声スピーカ105と、イヤースピーカ106と、マイクロフォン107と、表示部108と、記憶部109と、振動部110と、制御部111とを有する。
通信部102は、本発明の通信部の一実施形態である。
キー入力部103は、本発明の入力部の一実施形態である。
拡声スピーカ105,イヤースピーカ106は、それぞれ本発明の報知音出力部の一実施形態である。
表示部108は、本発明の表示部の一実施形態である。
記憶部109は、本発明の記憶部の一実施形態である。
制御部111は、本発明の制御部の一実施形態である。
【0023】
通信部2は、パケット交換網301及び回線交換網302に接続される基地局(303,304)と無線通信を行い、パケット交換網301を介して伝送される信号の送受信、並びに、回線交換網302を介して伝送される信号の送受信を行う。通信部102が送受信する信号には、回線通話に関わる通信データや、VoIP通話に関わる通信データが含まれる。
【0024】
例えば、通信部2は、制御部111から供給される送信データに所定の変調処理を施して無線信号に変換し、アンテナ101から送出する。また、アンテナ101において受信される基地局からの無線信号に所定の復調処理を施して受信データに変換し、制御部111に出力する。
【0025】
キー入力部103は、例えば数字キー、文字キー、矢印キー、決定キーなど、各種の機能を持ったキーを有しており、これらのキーがユーザによって操作された場合に、その操作内容に対応する信号を発生し、これをユーザの指示として制御部111に入力する。
【0026】
音声処理部104は、スピーカ(拡声スピーカ105,イヤースピーカ106)において出力される音声信号やマイクロフォン107において入力される音声信号の処理を行う。すなわち、マイクロフォン107から入力される音声信号に増幅、アナログ−デジタル変換、符号化等の信号処理を施し、デジタルの音声データに変換して制御部111に出力する。また、制御部111から供給される音声データに復号化、デジタル−アナログ変換、増幅等の信号処理を施し、アナログの音声信号に変換してスピーカ105,106に出力する。
【0027】
拡声スピーカ105は、例えば、電話や電子メールの着信を知らせる報知音の出力や、ハンズフリー通話時の音声の出力などに用いられる。
他方、イヤースピーカ106は、通信装置の本体をユーザの耳にあてた状態で行われる通常の通話において音声の出力に用いられる。
【0028】
マイクロフォン107は、例えば、上述した通常の通話やハンズフリー通話において通話相手に送信する音声信号の入力に用いられる。
【0029】
表示部108は、例えば液晶表示パネルや有機ELパネルなどの表示デバイスを用いて構成されており、制御部111から供給される画像データに応じた画像を表示する。例えば、発信時における発信先の電話番号や、着信時における着信相手の電話番号、受信メールや送信メールの内容、待ち受け画面、日付、時刻、バッテリ残量等、種々の情報を表示する。
【0030】
記憶部109は、制御部111の処理で利用される各種のデータや、制御部111の処理結果のデータを記憶する。例えば、制御部111のコンピュータ・プログラムのコードや、その処理に用いる定数データ、処理過程で一時的に記憶する変数データなどを記憶する。また記憶部109は、電話番号のリスト(すなわち回線交換通信の通信相手のリスト)や電子メールドレスを管理するアドレス帳などを記憶する。
【0031】
振動部110は、制御部111の制御に従って振動を発生するユニットであり、例えば圧電素子やコアレスモータなどによって構成される。振動部110は、例えば、電話や電子メールを報知するために振動を発生する。
【0032】
制御部111は、例えば、記憶部109に格納されたプログラム(オペレーティングシステム、アプリケーション等)に基づいて処理を実行するコンピュータを有しており、装置の全体的な動作を統括的に制御する。
例えば制御部111は、所定のプロトコルに従った音声通話(VoIP通話、回線通話)が適切に行われるように、音声処理部104における音声の入出力処理、通信部102における通話用の信号の送受信を制御する。PTTのグループ通信をおこなう場合、制御部111はPTT用のアプリケーションプログラム(以下、PTTアプリと省略して記す)を起動する。
【0033】
また、制御部111は、通信部102においてPTTのパケット交換通信を行っているときに回線交換通信の呼び出し信号を受信すると、実行中のパケット交換通信を中断し、この呼び出し信号に対する応答を拒否することを知らせるメッセージ(例えば音声のメッセージ)を回線交換通信によって通信部102から呼び出し信号の発信元に送信する。そして、このメッセージの送信後、回線交換通信を終了し、中断したパケット交換通信を再開する。なお、実行中のパケット交換通信を中断させる場合、制御部111は、PTT用のアプリケーションプログラムを、通信管理装置200へのログインの状態、すなわち通信セッションを保った状態にサスペンドする。また、中断したパケット交換通信を再開する場合、制御部111は、サスペンドさせていたPTT用のアプリケーションプログラムを再開する。ここでもし、通信セッションがタイムアウトなどにより開放されていたならば、再度IDを用いて通信管理装置200にログインを行うことになる。
【0034】
実行中のパケット交換通信を中断する場合、制御部111は、通信の中断を知らせるメッセージをパケット交換通信によって通信部102から通信相手に送信する。
【0035】
パケット交換通信を中断している間、制御部111は、パケット交換通信が中断していることを知らせる情報を表示部108に表示する。
【0036】
また、制御部111は、実行中のパケット交換通信を中断した後、呼び出し信号の発信元の情報(例えば発信元の電話番号など)を通信部102の回線交換通信によって取得し、取得した情報を表示部108に表示する。
【0037】
更に、制御部111は、実行中のパケット交換通信を中断する際、振動部110において振動を発生させる。この振動の発生をさせるか否かは、動作モード(マナーモード、通常モード、ハンズフリー通話モードなど)に応じて決定しても良い。
【0038】
また、制御部111は、実行中のパケット交換通信を中断する際に、拡声スピーカ105やイヤースピーカ106から所定の報知音が出力されるように、音声処理部104を制御する。
【0039】
ここで、上述した構成を有する本実施形態に係る通信装置において、PTT通信時に回線交換網からの着信が発生した場合の動作について説明する。図3は、その動作を説明するためのフローチャートである。
【0040】
PTT通信の主催者からSMSなどによってPTT通信の開催通知が送信され、これが通信部102において受信されると(ステップST101)、制御部111はPTTアプリを起動する(ステップST201)。制御部111は、起動したPTTアプリによって、主催者からの開催通知を表示部108に表示し、PTT通信に参加するか否かの選択を促す。キー入力部103において通信に参加することを指示するキー操作が行われると、制御部111は、通信部102からPTT通信の主催者に対してSMS等による返信を送信する。この返信を受けた通信管理装置200が通信装置100と通信セッションを確立し、PTT通信を開始する。
【0041】
他方、自らがPTT通信の主催者となることを指示するキー操作がキー入力部103において行われた場合(ステップST101)も、制御部111はPTTアプリを起動する(ステップST201)。制御部111は、起動したPTTアプリによって、指定した参加者とのPTT通信を確立するように、通信部102から通信管理装置200へ要求を送信する。この要求を受けた通信管理装置200は、指定された参加者の通信装置にPTT通信の開催通知を送信する。通信管理装置200は、開催通知に対して応答を返した通信装置と通信セッションを確立し、PTT通信を開始する(ステップST101)。
【0042】
PTT通信が始まると、制御部111は、通信管理装置200において現在開設中のPTT通信を識別するための情報を、記憶部109に保存する(ステップST102)。例えば、通信管理装置200がPTT通信の主催者の電話番号によって開設中のPTT通信を管理している場合、制御部111は、この電話番号を記憶部109に保存する。
【0043】
PTT通信中の通信装置に回線交換網の全く別の電話機が発呼を行い(ステップST301)、この呼び出し信号が通信装置の通信部102に受信されると、制御部111は、PTT通信の中断を知らせるメッセージを各参加メンバに送信する。
例えば制御部111は、着信に伴ってPTT通信を中断する旨の通知を通信部102から通信管理装置200へ送信する。この通知を受けた通信管理装置200が、他の参加メンバに対して通信中断の通知を送信する。これにより、通信中断のメッセージが他の参加メンバに伝えられる。
【0044】
通信中断のメッセージを各参加メンバに送信した後、制御部111は、実行中のPTT通信を中断し、パケット交換通信から回線交換通信に切り換える(ステップST103)。実行中のPTT通信を中断させる場合、制御部111は、PTT用のアプリケーションプログラムを、通信管理装置200へのログインの状態、すなわち通信セッションを保った状態にサスペンドする。この動作は自動的に行われるため、制御部111は、現在PTT通信を中断していることを知らせる情報を表示部108に表示する(図202)。
【0045】
PTT通信を中断しているとき、制御部111は、呼び出し信号の発信元に係わる情報を表示部108に表示する。例えば、通信部102における回線交換通信によって、発信元の電話番号に関する情報を取得し、これを表示部108に表示する。
【0046】
なお、ハンズフリー通話ではない通常の通話モードでは、イヤースピーカ106に耳を押し当てた状態でPTTの通話が行われるため、表示部108に表示を行ってもユーザが気付かない可能性がある。そこで、制御部111は、例えばイヤースピーカ106にPTT通信の中断を知らせる報知音(警音、音声など)を出力しても良い。また、PTT通信の中断を知らせる振動を振動部110において発生しても良い。
制御部は、こうした報知音や振動を発生させるか否かについて、ユーザの設定に応じて適宜変更できるようにしても良い。
【0047】
また、制御部111は、ハンズフリー通話モードに設定されている場合、上述した音や振動を発生させず、表示部108の表示によってPTT通信の中断をユーザに知らせても良い。すなわち、動作モードに応じて、PTT通信の中断の通知方法を自動的に変更しても良い。
【0048】
PTTのパケット交換通信から回線交換通信に切り換えると、次に制御部111は、呼び出し信号の発信元に対して、当該呼び出し信号に対する応答を拒否するメッセージを通信部102より送信する(ステップST104)。これにより、例えば「ただ今PTT通信中のため、電話に出ることができません」などの音声によるメッセージが、呼び出し信号の発信元において再生される。
【0049】
呼び出し信号の発信元に対して上記のようなメッセージを送信すると、制御部111は回線交換通信を終了し、ステップST103で中断したPTT通信を再開する(ステップST105)。すなわち、サスペンド状態のPTT用アプリケーションプログラムを再開し、記憶部109に保存したPTT通信の識別情報(例えば主催者の電話番号)に基づいて、先ほど中断したPTT通信に再接続するための要求を通信部102から通信管理装置200へ送信する。この要求を通信管理装置200が受信し、PTTの通信セッションを確立することにより、中断したPTT通信が再び開始される(ステップST203)。
【0050】
以上説明したように、本実施形態によれば、通信部102においてパケット交換通信を行っているときに回線交換網からの呼び出し信号を受信すると、実行中のパケット交換通信が中断され、当該呼び出し信号に対する応答を拒否することを知らせるメッセージが回線交換通信によって呼び出し信号の発信元に送信される。そして、このメッセージの送信後、中断したパケット交換通信が再開される。
例えばPTT通信中に電話の着信があった場合でも、呼び出し相手に対して応答を拒否するメッセージが自動的に送信され、中断したPTT通信が自動的に再開される。したがって、ユーザが自ら着信相手に応答したり、中断されたPTT通信を再開するなどの面倒な操作を行わずに済むため、利便性を大幅に向上することができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、回線交換網からの着信によってパケット交換通信を中断する場合、通信の中断を知らせるメッセージが通信相手に送信されるため、通信の中断に伴う不便を低減することができる。
例えば、PTTなどの1対多の通信において、通信中にメンバの一人が誰にも通知せずに抜けてしまうと、それを知らない他のメンバは、抜けてしまったメンバがまだ参加していると勘違いしたまま通話を行う。そのため、誤解や理解の相違が生じ、円滑なコミュニケーションが阻害される。本実施形態のように、回線交換網からの着信による通信の中断が発生した場合に、その旨が他のメンバへ確実に通知されれば、上記のような不都合を有効に回避することができる。
【0052】
さらに、本実施形態によれば、回線交換網からの着信に応答するためにパケット交換通信を一時的に中断していることが表示部108に表示されるため、ユーザが現在の通信状態を的確に把握することができる。例えばPTT通信中に相手方の音声が途絶えても、それが上記の一時中断によるものであることを認識できるため、状況を把握できずにユーザが戸惑うことを防止できる。
【0053】
また、パケット交換通信を一時的に中断していることを音声や振動でユーザに伝えることによって、例えば通信装置の本体を耳に当ててPTTの音声通話を行っている場合でも、通信装置の本体の表示画面を見ることなく、通信が中断した理由を把握することができる。
【0054】
ここまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の形態のみに限定されるものではなく、種々のバリエーションを含んでいる。
【0055】
上述の実施家形態では、パケット交換通信から回線交換通信に切り替えた際に、呼び出し信号の発信元の情報(例えば電話番号)を表示部108に表示する例を挙げている。このとき制御部111は、表示部108において表示中の発信元と回線交換通信を開始する指示がキー入力部103に入力されたならば、この発信元に対する応答拒否メッセージの送信を中止して、この発信元との回線交換通信(音声通話)を開始しても良い。これにより、発信元が誰かを把握した上で、その相手と通話するか否か判断できるため、全ての着信に対する応答を一律に拒否する場合に比べて、利便性を向上できる。
また、この場合、一定の時間制限を定めて、ある時間内にキー入力部103への指示の入力がない場合は、呼び出し信号の発信元へ自動的に応答拒否メッセージを送信し、回線交換通信を終了しても良い。
【0056】
また、制御部111は、呼び出し信号の発信元が記憶部109に記憶されるリストに登録されている場合、キー入力部103への指示の入力がなくても自動的に回線交換通信を開始しても良い。
例えば、制御部111は、記憶部109に記憶される特定の電話番号リストに登録されている電話番号と、取得した呼び出し信号の発信元の電話番号とを比較し、両者が一致している場合は、この発信元に対する応答拒否メッセージの送信を中止して回線交換通信を開始する。
これにより、呼び出し信号の発信元がユーザによって特に指定された相手である場合、自動的に回線交換通信を選択し、ユーザの操作を軽減することができる。
【0057】
また、上述のようにして回線交換通信を選択した場合、制御部111は、呼び出し信号の発信元の情報(電話番号等)を記憶部109に保存して回線交換通信を一旦終了し、先に中断したパケット交換通信に接続し直し、パケット交換通信の通信相手(例えばPTT通信の参加メンバ)に対して改めて通信終了のメッセージを送信し、その後再び回線交換通信に切り替えて、上記発信元との回線交換通信を開始しても良い。これにより、パケット交換通信の通信相手は、通信の中断が一時的なものであるか、それとも完全に終了したものであるのかを的確に把握できる。
【0058】
上述の実施形態では、パケット交換通信によって通話の音声データをリアルタイム伝送するためにVoIPを使用する例を挙げているが、これに限らず、他の種々の通信方式によって音声データを伝送しても良い。
また、上述の実施形態では、PTTのグループ通信によって音声通話を行う例を挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、パケット交換網を介した任意の通信方式による1対1若しくは1対多の音声通話に本発明は適用可能である。
【0059】
上述した通信装置や通信管理装置の構成要素の機能は、全てをソフトウェアで実現しても良いし、その少なくとも一部をハードウェアで実現しても良い。例えば、制御部111における処理や通信部102、音声処理部104におけるデータ処理は、1つまたは複数のプログラムによってコンピュータ上で実現しても良いし、その少なくとも一部をハードウェアで実現しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態に係る通信システムの構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る通信装置の構成の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る通信装置において、PTT通信時に回線交換網からの着信が発生した場合の動作の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0061】
101…アンテナ、102…通信部、103…キー入力部、104…音声処理部、105…拡声スピーカ、106…イヤースピーカ、107…マイクロフォン、108…表示部、109…記憶部、110…振動部、111…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回線交換通信又はパケット交換通信を行う通信部と、
前記通信部においてパケット交換通信を行っているときに回線交換通信の呼び出し信号を受信すると、実行中のパケット交換通信を中断し、当該呼び出し信号に対する応答を拒否することを知らせるメッセージを回線交換通信によって前記通信部から前記呼び出し信号の発信元に送信し、当該メッセージの送信後、前記中断したパケット交換通信を再開する制御部と
を有することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記パケット交換通信は、前記通信部にて、所定のサーバ装置を介して複数の他の通信装置との間で音声、文字、または画像に関するデータを送受信する通信である
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記パケット交換通信は、前記サーバに所定のIDをもってログインした状態で行われ、
前記制御部は、前記実行中のパケット交換通信を中断する場合、前記パケット交換通信を実行するプログラムを、前記ログインの状態を保ったままサスペンドさせる
ことを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記中断したパケット交換通信を再開させる場合、前記サスペンドさせたプログラムを再開させる
ことを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記制御部は、実行中のパケット交換通信を中断する場合、通信の中断を知らせるメッセージをパケット交換通信によって前記通信部から通信相手に送信する
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一に記載の通信装置。
【請求項6】
情報を表示する表示部を有し、
前記制御部は、パケット交換通信を中断している間、パケット交換通信が中断していることを知らせる情報を前記表示部に表示する
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一に記載の通信装置。
【請求項7】
前記制御部は、実行中のパケット交換通信を中断した後、前記呼び出し信号の発信元の情報を前記通信部の回線交換通信によって取得し、当該取得した情報を前記表示部に表示する
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一に記載の通信装置。
【請求項8】
指示を入力する入力部を有し、
前記制御部は、前記表示部に情報を表示中の発信元との回線交換通信を開始する指示が前記入力部された場合、当該発信元に対する応答拒否メッセージの送信を中止して回線交換通信を開始する、
ことを特徴とする請求項7に記載の通信装置。
【請求項9】
回線交換通信の通信相手のリストを記憶する記憶部を有し、
前記制御部は、実行中のパケット交換通信を中断した後、前記呼び出し信号の発信元の情報を前記通信部の回線交換通信によって取得し、当該取得した情報において示される発信元が前記リストに登録されている場合は、当該発信元に対する応答拒否メッセージの送信を中止して回線交換通信を開始する
ことを特徴とする請求項7に記載の通信装置。
【請求項10】
振動を発生する振動部を有し、
前記制御部は、実行中のパケット交換通信を中断する際に、前記振動部において振動を発生させる
ことを特徴とする請求項1乃至9の何れか一に記載の通信装置。
【請求項11】
報知音を発生させる報知音出力部を有し、
前記制御部は、実行中のパケット交換通信を中断する際に、前記報知音出力部にて報知音を出力させる
ことを特徴する請求項1乃至10の何れか一に記載の通信装置。
【請求項12】
回線交換通信又はパケット交換通信を行う通信装置における通信方法であって、
パケット交換通信を行っているときに回線交換通信の呼び出し信号を受信すると、実行中のパケット交換通信を中断する第1の工程と、
前記呼び出し信号に対する応答を拒否することを知らせるメッセージを回線交換通信によって前記呼び出し信号の発信元に送信する第2の工程と、
前記メッセージの送信後、前記中断したパケット交換通信を再開する第3の工程と
を有することを特徴とする通信方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−96990(P2007−96990A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285661(P2005−285661)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】