説明

通信装置

【課題】複数の妨害波の存否によってLPFの次数を制御して消費電力を抑制するに当たり、回路規模やデータ伝送量が大きくなる。
【解決手段】LPF12は3つの同構成の2次LPFから成り、通信信号に含まれる隣接ch信号や次隣接ch信号を除去して主信号を出力する。BPF14は隣接ch信号と次隣接ch信号を帯域幅に差をつけて通信信号から取り出す。PowerDET15は取り出した隣接ch信号と次隣接ch信号のパワーを電圧値により出力する。コンパレータ16,17は各電圧値を帯域幅の差に対応したリファレンス電圧18,19と比較して次隣接ch信号,隣接ch信号の存否を検出する。LPF12は次隣接ch信号,隣接ch信号の存否に基づいて2次LPFを3〜1段直列接続に自動的に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、特に、UWB(Ultra Wide Band)通信やBlueTooth通信等のOFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing)通信において妨害波除去用フィルタの低消費電力化に好適な受信装置および送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
UWB(Ultra Wide Band)通信やBlueTooth通信等のOFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing)通信では、主信号の周波数に隣接した周波数や、隣接した周波数に更に隣接した周波数に信号が存在することがある。これらの信号を隣接ch信号、次隣接ch信号と称することにする。隣接ch信号と次隣接信号は主信号から見ると不要な妨害波であり、これらを除去するために高次のLPF(Low Pass Filter)を使用することが定められている。
【0003】
しかし、隣接ch信号や次隣接ch信号は常に存在するわけではなく、隣接ch信号または次隣接ch信号が存在しない時には、より低次数のLPFで足りる。従って、隣接ch信号と次隣接ch信号の存否によってLPFを可変にすれば、低消費電力化を図ることができる。
【0004】
この種の従来技術として、隣接ch対応にBPF、次隣接ch対応にHPFを設け、BPFの出力およびHPFの出力それぞれを異なる基準電圧と比較した結果によって、LPFの次数を切り換える無線受信回路(特許文献1)や、妨害波を除去する複数の異なる極位置を持つフィルタの内の必要としないフィルタ部分をバンド選択信号によってパワーオフする携帯電話用の受信回路(特許文献2)が知られている。
【0005】
しかしながら、上述した従来技術においては、LPFの次数を切り換えるため、ch対応にフィルタを設けると回路の規模が大きくなり、またバンド選択信号を載せて送信するとデータ伝送量の増大につながるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献2】特開2006−020238
【特許文献2】特開2007−300260
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明が解決しようとする問題点は、複数の妨害波の存否によってLPFの次数を制御して消費電力を抑制するに当たり、回路規模やデータ伝送量が大きくなる点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数の妨害波を妨害波の間で帯域幅に差をつけて通信信号から取り出し、複数の妨害波それぞれの存否を各妨害波の電圧値によって知れることとしたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の通信装置によると、複数の妨害波それぞれの存否を各妨害波の電圧値によって知ることができるため、複数の妨害波を取り出すためのフィルタは1つで足り、また、複数の妨害波の有無の情報を通信信号内に載せて送る必要がなくなるので、伝送量の増大を図ることができるという利点がある。
【0010】
更に、フィルタ次数の変更を妨害波成分のパワー値から自動的に行なうことが可能となるため、複数の妨害波の有無を通信装置の仕様として予め決めておく必要がなく、後発的に仕様が変更されても対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の受信装置の一実施例のブロック図である。
【図2】本発明の受信装置におけるBPFの周波数特性図である。
【図3】本発明の受信装置におけるコンパレータでのパワー検出を示す図である。
【図4】本発明の受信装置におけるLPF次数自動切替回路の主要部を示す図である。
【図5】図4に示したLPF次数自動切替回路の動作を説明するための図である。
【図6】本発明の受信装置の他の実施例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の通信装置は、通信信号に含まれる複数の妨害波を除去して主信号を出力するためのフィルタと、複数の妨害波を妨害波の間で帯域幅に差をつけて通信信号から取り出す帯域通過フィルタと、取り出した各妨害波のパワーを電圧値により出力するパワー検出器と、各妨害波の電圧値を帯域幅の差に対応したリファレンス電圧と比較して各妨害波の存否を検出する妨害波と1対1対応のコンパレータと、各妨害波の存否に基づいてフィルタの次数を自動的に切り替えることを特徴とする。
【実施例1】
【0013】
本発明の実施例1について図1を参照して詳細に説明する。図1は本発明の受信装置を示すブロック図である。無線通信信号はアンテナ20によって捉えられ、アンテナ20からLNA(低雑音増幅器)30に入力されて増幅される。LNA30の出力がDEM(直交復調器)40に入力され、DEM40では無線通信信号から搬送周波数であるRF周波数が取り除かれ、DEM40の出力がLPF次数自動切替回路10に入力される。LPF次数自動切替回路10は、妨害波成分の強弱によりLPFの次数を自動的にアナログ回路のみで切り替えることによって、無線通信信号から隣接ch信号と次隣接ch信号を低消費電力で取り除いて主信号のみのベースバンド信号を出力する。
【0014】
LPF次数自動切替回路10は、VGA(可変ゲイン増幅器)11,LPF12,VGA13,BPF14,PowerDET(パワー検出器)15,コンパレータ16およびコンパレータ17で構成されている。先ず、DEM40の出力はゲインを調整することのできるVGA11に入力され、VGA11の出力は、次数を切り替えることができるLPF3と、妨害波成分である隣接ch信号および次隣接ch信号のみのパワー成分を通過させるBPF14に接続される。
【0015】
図2の実線で示すように、BPF14は隣接ch信号の全周波数帯域と次隣接ch信号の一部周波数帯域を通過させる。即ち、隣接ch信号については隣接ch全域の周波数成分を抽出するが、次隣接ch信号については一部の周波数成分を抽出するのみである。このような特性をBPF14に持たせたのは、隣接ch信号と次隣接ch信号の存否をそれらの強弱の差によって識別するためである。なお、図2における点線は、主信号,隣接ch信号および次隣接ch信号の周波数帯域を参考までに示したものである。
【0016】
PowerDET15は、BPF14の出力、即ち妨害波のパワーを電圧値により出力する。これにより、BPF14の上記特性から、次隣接ch信号が存在する時より隣接ch信号が存在する時に、より大きな電圧値を発生させることになる。PowerDET15の出力は、コンパレータ16の一方の入力端子と、コンパレータ17の一方の入力端子に接続される。コンパレータ16は、他方の入力端子に接続されたRef電圧18とPowerDET15の出力とを比較する。また、コンパレータ17は、他方の入力端子に接続されたRef電圧19とPowerDET15の出力とを比較する。
【0017】
ここに、Ref電圧19とRef電圧18は、隣接ch信号が存在する時はPowerDET15の出力がRef電圧19を超え、隣接ch信号が存在せず次隣接ch信号が存在する時はPowerDET15の出力がRef電圧18とRef電圧19の間の電圧値、隣接ch信号と次隣接ch信号の両方が存在しない時はPowerDET15の出力がRef電圧18未満となるように設定される。従って、図3に示すように、コンパレータ17は隣接ch信号の有無を検出し、コンパレータ16は隣接ch信号がない場合の次隣接ch信号の有無を検出する。コンパレータ17とコンパレータ16における比較結果はLPF12に供給され、LPF12の次数切替のために使用される。
【0018】
図4はLPF12の一例として6次のLPFを示しており、LPF12は2次LPF21,2次LPF22および2次LPF23が直列に3段接続されて成る。2次LPF21,2次LPF22,2次LPF23は、それぞれ2次関数の遮断特性を持つLPFであり、それらの出力は、スイッチ24,スイSW25,スイSW26を介してLPF3の出力と接続されている。LPF12の次数制御部(不図示)は、コンパレータ16とコンパレータ17における比較結果に基づいて、2次LPF22および2次LPF23をON/OFFするための信号と、スイッチ24,スイッチ25,スイッチ26をON/OFFするための信号を生成する。
【0019】
この実施例では、LPF12は、同じ次数の複数段のLPFで構成し、それらをON/OFFすることにより、次数切替を実現しているので、次数の異なるLPFを多数用意する必要がなくレイアウトが少なくて済む利点がある。
【0020】
図5は、次数が切り替えられた場合のLPF12のフィルタ特性を示す。先ず、アンテナ20で受信された無線通信信号に隣接ch信号と次隣接ch信号が含まれている場合(図5A)、コンパレータ16とコンパレータ17の出力があり、LPF12の次数制御部は、2次LPF22と2次LPF23をONとし、かつスイッチ24とスイッチ25はOPENでスイッチ26をSHORTとする。この結果、LPF12は、2次LPF21と2次LPF22と2次LPF23が直列接続された6次LPFとなり、急峻な遮断周波数特性となって、隣接ch信号と次隣接ch信号を遮断し主信号のみを通過させる。なお、無線通信信号に隣接ch信号が含まれ次隣接ch信号が含まれていない場合も同様である。
【0021】
次に、アンテナ20で受信された無線通信信号に次隣接ch信号が含まれている場合(図5B)、コンパレータ16の出力があり、LPF12の次数制御部は、2次LPF21と2次LPF22をONとし2次LPF23をOFFとし、かつスイッチ24とスイッチ26はOPENでSWをSHORTとする。この結果、LPF12は、2次LPF21と2次LPF22が直列接続された4次LPFとなり、中ほどの遮断周波数特性となって、次隣接ch信号を遮断し主信号のみを通過させる。隣接ch信号は存在しないのだから、LPF12の周波数特性は隣接chの周波数帯域に及んでも差し支えない理である。
【0022】
最後に、アンテナ20で受信された無線通信信号に隣接ch信号および次隣接ch信号が含まれていない場合(図5C)、コンパレータ16およびコンパレータ17の出力がなく、LPF12の次数制御部は、2次LPF22と2次LPF23をOFFとし、かつスイッチ24をSHORTとしスイッチ25とスイッチ26をOPENとする。この結果、LPF12は、2次LPF21のみの2次LPFとなり、緩やかな遮断周波数特性となって主信号のみを通過させる。隣接ch信号も次隣接ch信号も存在しないのだから、LPF12の周波数特性は隣接chの周波数帯域を超え次隣接ch信号の周波数帯域に及んでも差し支えない理である。
【0023】
このようにして、隣接ch信号と次隣接ch信号の有無により、LPF12の次数を自動的に切り替えることにより低消費電力化を実現している。そして、隣接ch信号と次隣接ch信号の有無は、同一のフィルタで隣接ch信号は全部、次隣接ch信号は一部を抽出して判断することとした。この結果、ch対応にフィルタを設ける必要がないので回路の規模を抑制でき、また隣接ch信号と次隣接ch信号の有無を告げるためのバンド選択信号も不要であるのでデータ伝送量の増大を抑制できる。隣接ch信号および次隣接ch信号が取り除かれたLPF12の出力は、VGA13を経由して主信号のみが出力される。
【0024】
以上に説明した実施例は、受信側でLPFの次数自動切替を行なっているが、送信側で行なうこともできる。図6は、LPF次数自動切替回路10を送信側に設けた場合の本発明の受信装置のブロック図である。図6において、入力データ信号はLPF次数自動切換回路10に入力され、LPF次数自動切換回路10の出力がMOD(直交変調器)50に入力され、MOD50にてRF周波数とミキシングされた信号がPA(電力増幅器)60に入力され、PA42の出力がアンテナ60に入力され無線通信信号として出力される。
【0025】
以上に説明した実施例における隣接ch信号および次隣接ch信号は、広くは妨害波成分のデータ信号から発生する2次高調波や3次高調波ということができる。また、無線通信信号を対象としているが、有線通信信号を対象に含めても差し支えない。更に、コンパレータの個数を2より多くすることによって、よりきめ細かい妨害波の除去をすることもできる。
【符号の説明】
【0026】
10 LPF次数自動切替回路
11,13 VGA(可変ゲイン増幅器)
12 LPF(低域通過フィルタ)
14 BPF(帯域通過フィルタ)
15 PowerDET(パワー検出器)
16,17 コンパレータ
18,19 Ref電圧
20,70 アンテナ
21〜23 2次LPF
24〜26 スイッチ
30 LNA(低雑音増幅器)
40 DEM(直交復調器)
50 MOD(直交変調器)
60 PA(電力増幅器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信信号に含まれる複数の妨害波を除去して主信号を出力するためのフィルタと、
前記複数の前記妨害波を妨害波の間で帯域幅に差をつけて前記通信信号から取り出す帯域通過フィルタと、
前記取り出した各妨害波のパワーを電圧値により出力するパワー検出器と、
前記各妨害波の電圧値を前記帯域幅の差に対応したリファレンス電圧と比較して前記各妨害波の存否を検出する前記妨害波と1対1対応のコンパレータと、
前記各妨害波の存否に基づいて前記フィルタの次数を自動的に切り替えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記帯域通過フィルタは、前記主信号に対する隣接ch信号の全周波数帯域と次隣接ch信号の一部周波数帯域を通過させ、
前記コンパレータは、前記通過後の隣接ch信号の電圧値を第1リファレンス電圧と比較する第1コンパレータと、前記通過後の次隣接ch信号の電圧値を第2リファレンス電圧と比較する第2コンパレータから成ることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記フィルタは同構成の2次低域通過フィルタ3個から成り、
前記第1コンパレータの出力と前記第2コンパレータの出力によって、前記2次低域通過フィルタを3段〜1段直列接続に切り替えることを特徴とする請求項2記載の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−146946(P2011−146946A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6426(P2010−6426)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(303013763)NECエンジニアリング株式会社 (651)
【Fターム(参考)】