遅延同期ループ回路
【課題】外部クロック信号が擾乱したとき、擬似ロックを検出し初期化したとき、電源を投入したとき、いずれの場合も確実にロックはずれを防止でき、レイアウトがコンパクトなDLL回路を提供する。
【解決手段】遅延同期ループ回路であって、入力クロックを、制御電圧の大きさに応じて遅延させて帰還クロックを出力する電圧制御遅延手段と、帰還クロックと基準クロックとを比較して位相差を検出し、該位相差に応じて、制御電圧を上昇させるための上昇信号と該制御電圧を下降させるための下降信号とを出力する位相比較器と、上昇信号と下降信号とに応じて制御電圧を決定し、電圧制御遅延手段に出力する制御電圧生成手段と、基準クロックと電圧制御遅延手段からの中間クロックとの論理和に基づき位相比較器をリセットする。
【解決手段】遅延同期ループ回路であって、入力クロックを、制御電圧の大きさに応じて遅延させて帰還クロックを出力する電圧制御遅延手段と、帰還クロックと基準クロックとを比較して位相差を検出し、該位相差に応じて、制御電圧を上昇させるための上昇信号と該制御電圧を下降させるための下降信号とを出力する位相比較器と、上昇信号と下降信号とに応じて制御電圧を決定し、電圧制御遅延手段に出力する制御電圧生成手段と、基準クロックと電圧制御遅延手段からの中間クロックとの論理和に基づき位相比較器をリセットする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロック同期や多相クロック発生や逓倍等に用いる遅延同期ループ回路、特に遅延同期ループ回路のロックはずれ状態の防止技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遅延同期ループ回路(以下DLL回路と略す。DLL;Delay Locked Loop)は半導体集積回路チップ内のクロックの同期をとるために、電圧制御遅延線(以下VCDLと略す。VCDL;Voltage Controlled Delay Line)から出力された帰還クロックと、1クロック遅れた基準クロックと同期させる回路である。DLL回路の代表的な誤動作に、擬似ロックとロックはずれがある。擬似ロックとは、2クロック以上遅れた基準クロックとの帰還クロックが同期してしまう状態である。擬似ロックが起こると多相クロック発生や逓倍ができなくなる。特許文献1は、この擬似ロック防止について記載している。
【0003】
ロックはずれとは、DLL回路が基準クロックと、基準クロックから0クロック遅れた帰還クロックとを同期させようとする誤動作である。図13を参照してロックはずれについて説明する。図中、CLKINは基準クロック、FBCLKは帰還クロック、Upはチャージポンプ(以下CPと略す)出力を上昇させるための位相比較器から上昇信号、DnはCP出力を下降させるための位相比較器から下降信号を表す。CPは、UpとDnのパルス幅(パルスの時間的な幅)の差に応じてその出力電圧を上下させる。
【0004】
DLL回路では、基準クロック(CLKIN)の2クロック目の立ち上がりエッジbと、帰還クロック(FBCLK)の1クロック目の立ち上がりエッジcとを位相比較するのが、正常な位相比較器の動作である。しかし、電源投入時や、外部クロック信号の乱れにより、基準クロック(CLKIN)の1クロック目の立ち上がりエッジaと、帰還クロック(FBCLK)の1クロック目の立ち上がりエッジcとを、位相比較してしまうことがある。これがロックはずれである。
【0005】
この場合、帰還クロック(FBCLK)が基準クロック(CLKIN)より遅いと、位相比較器が判断している。このため、Upの上昇信号のパルス幅がDnの下降信号のパルス幅より広くなり、制御電圧はCPの出力できる最高電圧まで上昇してしまう。そして、帰還クロック(FBCLK)の遅延時間は、VCDLの最小遅延時間で固定される。しかし、この固定状態は、温度ばらつき、電源電圧ばらつき、製造ばらつきなどに連動し、遅延時間がばらつくためロック状態とは異なる。よって帰還クロックのジッタが大きくなり、チップにDLL回路を組み込んだことが意味をなさない。このため、DLL回路では、ロックはずれを防止する機構を組み込むことが望ましい。そのロックはずれ防止機構として、特許文献2と特許文献3の方法を説明する。
【0006】
特許文献2では、DLL回路とカウンタ制御回路(CNT)とを用いる。カウンタ制御回路(CNT)2は、基準クロック(CLKIN)を入力して、1クロックカウントした後、制御信号(S)を出力し、DLL回路1を起動する。これにより図13の基準クロック(CLKIN)のエッジbと、帰還クロック(FBCLK)のエッジcの位相比較ができ、ロックはずれが防止できる。
【0007】
特許文献3のロックはずれ防止機構では、ロックはずれに状態になるとチャージポンプ回路からの出力をローパスフィルタリングするローパスフィルタ(LPF)の出力線の電圧がある中間電圧(VR)より大きくなる。このため、電圧コンパレータを使って、出力線の電圧と中間電圧(VR)とを比較し、出力線の電圧が中間電圧(VR)より大きくなればリセット信号RSTを出して、この結果、位相比較器とLPFとがリセットされ、ロックはずれが防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−020711号公報
【特許文献2】特開2007−243877号公報
【特許文献3】特開平11−205102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2のカウンタを使ったロックはずれ防止方法は、半導体集積回路チップの電源投入時のVCDLの動作が特許文献2の記述通りに動けば有効である。しかし、外部クロック信号が擾乱したときもロックはずれを起すことがあり、この場合、カウンタ制御回路2は意味をなさず、特許文献2の方法では、ロックはずれからの脱出できない。また、DLL回路は通常擬似ロック検出回路を持つが、擬似ロック検出回路で擬似ロックを検出しDLL回路を初期状態に戻した場合のロックはずれの防止もできない。また、半導体集積回路チップの電源投入時は、VCDL内のインバータ制御節点の電位が不安定であり、VCDLから意図しないクロックが出力される。このため、電源投入時でも、ロックはずれを防止できない場合がある。
【0010】
特許文献3の方法は、ロックはずれの検出にアナログ回路である電圧コンパレータと、電圧コンパレータに入力する中間電圧(VR)を必要とする。電圧コンパレータはアナログ回路であるためレイアウトに大きな面積を必要とするうえ、回路規模が大きく論理回路に比べ消費電力が大きい。中間電圧(VR)を生成するためには、抵抗または容量が必要であり、これもまたレイアウトに大きな面積を必要とする。また、位相比較器3を、正しいタイミングでリセットするために複雑な回路が必要になる。
【0011】
このため、外部クロック信号が擾乱したとき、擬似ロックを検出し初期化したとき、電源を投入したとき、いずれの場合も確実にロックはずれを防止でき、レイアウトがコンパクトなDLL回路を提供することを本発明の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明は遅延同期ループ回路であって、入力クロックを、制御電圧の大きさに応じて遅延させて帰還クロックを出力する電圧制御遅延手段と、
前記帰還クロックと基準クロックとを比較して位相差を検出し、該位相差に応じて、前記制御電圧を上昇させるための上昇信号と該制御電圧を下降させるための下降信号とを出力する位相比較器と、
前記上昇信号と前記下降信号とに応じて前記制御電圧を決定し、前記電圧制御遅延手段に出力する制御電圧生成手段と、
前記基準クロックと、前記電圧制御遅延手段において前記入力クロックを遅延させた信号であって、かつ、前記帰還クロックよりも前に出力された第1の中間クロックとの論理和に基づき、前記位相比較器をリセットするリセット回路とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の遅延同期ループ回路は、外部クロック信号が擾乱したとき、擬似ロックを検出し初期化したとき、電源を投入したとき、いずれの場合も確実にロックはずれを防止できる。またかつ、論理回路のみでロックはずれ検出回路を構成しているため、消費電力が小さく、レイアウトがコンパクトである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態1のDLL回路の構成例を示すブロック図。
【図2】実施形態1のVCDL9の回路構成例を示す図。
【図3】実施形態1の位相比較器3とロックはずれ検出回路10の回路構成例を示す図。
【図4】実施形態1の立ち下がりエッジ検出回路12の回路構成例を示す図。
【図5】実施形態1の動作タイミングチャート。
【図6】実施形態1の擬似ロック検出回路20、CP6、LPF8の回路構成例を示す図。
【図7】実施形態1の擬似ロック解除動作を説明するタイミングチャート。
【図8】実施形態2のロックはずれ状態の解除を説明する動作タイミングチャート。
【図9】実施形態3のロックはずれ検出回路10の回路構成例を示す図。
【図10】実施形態3のロックはずれ状態の解除を説明する動作タイミングチャート。
【図11】実施形態4のDLL回路の構成例を示すブロック図。
【図12】実施形態4のロックはずれ状態の解除を説明する動作タイミングチャート。
【図13】従来技術のタイミングチャートである。
【図14】実施形態5のDLL回路の構成例を示すブロック図。
【図15】実施形態5の位相比較器3とロックはずれ検出回路10の回路構成例を示す図。
【図16】実施形態5の動作タイミングチャート。
【図17】実施形態5の擬似ロック検出回路20、CP6、LPF8の回路構成例を示す図。
【図18】実施形態5の擬似ロック解除動作を説明するタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照して発明の実施形態を説明する。
【0016】
[実施形態1]
実施形態1では、VCDLから帰還クロックの1/2の遅延時間を持つ中間クロックを出力させ、基準クロックと中間クロックの論理和を演算して論理和出力のパルス立ち下がり検出をし、位相比較器のリセット信号を作成する。
【0017】
図1は、実施形態1の遅延同期ループ回路(DLL回路)1の全体ブロック図である。N1はCP6からの出力節点であり、ローパスフィルタ(LPF)8に入力されている。N2はLPF8からの出力節点であり、電圧制御遅延線(VCDL)9の制御電圧が入力される。位相比較器3は、基準クロック(CLKIN)の2クロック目の立ち上がりエッジと、帰還クロック(FBCLK)の1クロック目の立ち上がりエッジとの位相を比較する。Upはチャージポンプ(CP)6の出力節点N1の電圧を上昇させる位相比較器3から上昇信号が出力される節点である。DnはCP6の出力節点N1の電圧を下降させる位相比較器3からの下降信号が出力される節点である。
【0018】
VCDL9は、入力節点T0に基準クロック(CLKIN)を受け、内部の単位遅延素子24個を通して節点T24から帰還クロック(FBCLK)を出力する。ここで節点T24は、24番目の遅延素子からの出力である。また、VCDL9は、節点N2の電圧が大きいほど、帰還クロック(FBCLK)の基準クロック(CLKIN)に対する遅延時間が小さくなるように設計されている。さらに、VCDL9は、節点T12から中間クロック(第1の中間クロック)をロックはずれ検出回路10に出力する。節点T12は、12番目の遅延素子からの出力である。また、VCDL9は、節点T4と節点T11から中間クロック(第2の中間クロック、第3の中間クロック)を擬似ロック検出回路20に出力する。節点T4とT11とは、それぞれ4番目と11番目の遅延素子からの出力である。
【0019】
ロックはずれ検出回路10は、節点T0の基準クロック(CLKIN)と節点T12の中間クロックからリセット信号を生成するリセット回路として機能し、節点N15を通して位相比較器3をリセットできる。擬似ロック検出回路20は、節点T4と節点T11の第2、第3の中間クロックからリセット信号を生成し、節点N20を通してCP6をリセットできる。
【0020】
図2はVCDL9のブロック内部の回路を表す。VCDL9の遅延制御について説明する。図中、50は単位遅延素子、51は制御電圧節点、52は定電流源を構成するn型チャンネルMOSトランジスタ、53、55はインバータを構成するn型チャンネルMOSトランジスタ、54、56はインバータを構成するpMOSトランジスタである。以下、n型チャンネルMOSトランジスタをnMOS、p型チャンネルMOSトランジスタをpMOSと省略する。
【0021】
インバータを構成するnMOS53とpMOS54の共通ゲート(N21)の電圧がGnd(例えば0V)からVdd(例えば1.8V)になると、インバータの出力節点N22の電圧はVddからGndに切り替わる。なお、N22は、nMOS53とpMOS54の共通ドレインである。これは、pMOS54がオンからオフに切り替わり、N22がVddから切り離される一方、nMOS53がオフからオンに切り替わり、nMOS53とnMOS52を通じてGndに接続されるからである。この切り替わりのタイミングで、nMOS52のソース(Gnd)からN19(nMOS52のドレインとnMOS53のソースとの共通節点)を通じてN22の寄生容量に電子が流れ、寄生容量に電子が蓄積されていく。
【0022】
制御電圧節点51の電圧を変えることにより、定電流源を構成するnMOS52が流す電流が制御される。すなわち、制御電圧節点51の電圧を小さくすれば、nMOS電流源52のソースからのドレインN19へ流れる電子数が少なくなり、nMOS53がオンであっても、N22の寄生容量に流れ込む電子数は少ない。このためインバータ(53、54)の出力節点N22の電圧がVddからGndに変化する立ち下がり遅延が大きくなる。同様に、インバータ(55、56)出力N23の立ち下がり遅延も大きくすることができる。この結果、単位遅延素子50の出力節点N23の入力節点N21に対するパルス遅延は、立ち上がりも立ち下がりも一定に保たれる。つまり、単位遅延素子50は、入力N21と出力N23のパルスのデューティ比(信号1周期に占めるVdd期間の割合)を一定に保ったまま、出力節点N23のパルスを制御された遅延時間だけ遅らせることができる。
【0023】
図2で示した実施形態1のVCDL9は、nMOS電流枯渇型VCDL(Current Starved VCDL)と呼ばれる。また、VCDL9は、図1に示したようにLPF8からの出力節点N2によって遅延時間の制御がされる。つまり、節点N2は、図3の制御電圧節51と接続されている。
【0024】
実施形態1のVCDL9は、基準クロック(CLKIN)と帰還クロック(FBCLK)の間に単位遅延素子50が24個ある構成となっている。そして、ロックはずれ検出回路10のために、12個目の単位遅延素子の出力節点T12から中間クロックがブロック外部に出力できる。また、擬似ロック検出回路20に、4個目の単位遅延素子の出力節点T4と、11個目の単位遅延素子の出力節点T11から第2、第3の中間クロックをブロック外部に出力できる。
【0025】
図3は、図1の位相比較器3とロックはずれ検出回路10のブロック内部の回路を表す。図中、12は立ち下がりエッジ検出回路、13、14は立ち上がりエッジトリガー型Dフリップフロップ(以下DFFと略す)、15はANDゲート、16、19はNORゲートである。以前に説明した部材と同一部材については同一符号を付する。ロックはずれ検出回路10は、NORゲート19と立ち下がりエッジ検出回路12からなる。NORゲート19は、節点T12と節点T0を入力とし、節点N14を出力としている。つまり、節点T24の1/2の遅延時間の節点T12の第1の中間クロックと、節点T0の基準クロックの論理和を演算し、その出力を反転させる構成をとっている。この出力が節点N14のパルスである。立ち下がりエッジ検出回路12は、節点N14のパルスを取り込み、N14のパルス立ち下がりエッジを検出した細いパルスを出力する。
【0026】
図3の位相比較器3は、DFF13、14、ANDゲート15、NORゲート16からなる。DFF13、14は、RB節点にVdd電位が印加されセット状態になっていれば、CK節点のパルスが立ち上がり時に、D節点の電位がQ節点に出力される。DFF13、14は、D節点がVdd電位に固定されているため、CK節点のパルスが立ち上がり時にQ節点からVdd電位を出力する。また、DFF13、14は、RB節点にGnd電位が印加されると、リセット状態となりQ節点からGnd電位を出力する。DFF13、14は、スタティック論理であるため、位相比較器3もやはりスタティック論理である。
【0027】
図4は、図3の立ち下がりエッジ検出回路12の詳細な回路図である。図中、21はNORゲート、22は3段インバータ、N16は3段インバータ22の出力節点である。3段インバータ22により、節点N16には、節点N14から遅延を持った反転パルスが出力される。よって、NORゲート21で、N14とN16のNORをとることによって、3段インバータ22の遅延時間分のパルス幅を持ち、N14のパルス立ち下がりを検出したパルスがN15に出力される。3段インバータ22は、奇数段であれば良く、N15に出力される細いパルスが、立ち下がりエッジ検出回路12の後段に伝わるように選択すればよい。
【0028】
図5(a)は、ロックはずれ状態から正常状態への脱出時の動作タイミイングチャートである。図3の位相比較器3とロックはずれ検出回路10の動作を図5を用いて説明する。図5中のT0、T24、Up、Dn、T12、N14、N15、N11、N17は、図3のそれぞれの節点の電圧波形を表す。図5(a)のように、T0とT24に基準クロック(CLKIN)と帰還クロック(FBCLK)が入ったとき、基準クロックの立ち上がりエッジbと帰還クロックの立ち上がりエッジcが同時になるように位相比較器3が動作すべきである。しかし、図5(a)の前半のタイミングでは点線で囲ったように位相比較器3が誤動作し、ロックはずれのパルスを出力している。このロックはずれは、電源投入時や外部クロックが乱れた場合、または擬似ロック検出で初期化したとき(遅延時間を最小とした場合)に起こる。
【0029】
つぎに、このロックはずれ状態から正常状態への脱出過程について説明する。図5(a)のように、NORゲート19がN14のようなパルスを出力する。そして、立ち下がりエッジ検出回路12が、N15の波形のように、N14のパルス立ち下がりエッジを検出した細いパルスを出力する。このように生成された節点N15のパルスが図3のNORゲート16に入力され、NORゲート16から図5(a)のN17のdのようなリセットパルスが出力される。そして、このN17のdのようなリセットパルスにより、DFF13、14がリセットされる。このため、図5(a)のeのようなT24の帰還クロックのパルス立ち上がりを検出して、図3のDFF14のQ節点がVdd電位となる。そして、fのようなT0の基準クロックの立ち上がりによりDFF13のQ節点がVdd電位になるまで、DFF14のQ節点はVdd電位が保たれ、その後Gnd電位となる。この結果、DFF14のQ節点につながった位相比較器3のDn節点には、時間eから時間fの間、下降信号が出力され、T24に出力される帰還クロック(FBCLK)は遅れる方向に向かう。つまり、ロックはずれ状態から脱出し正常状態に復帰したことになる。
【0030】
このように、位相比較器3のUp節点とDn節点に正常な上昇信号と下降信号が出力されることにより、図1のN1とN2の電位が下がり、帰還クロック(T24)の基準クロック(T0)への遅延時間が次第に大きくなる。そして、帰還クロック(T24)の基準クロック(T0)からの遅延時間が、ちょうど1周期分になったところでDLL回路1はロック状態となる。
【0031】
図5(b)は、ロック状態になったときのDLL回路1の各節点のパルスを表す。ロックしたときは、基準クロック(T0)と第1の中間クロック(T12)は、ちょうど半周期ずれ、図5(b)のN14のように、基準クロック(T0)と第1の中間クロック(T12)の立ち上がりと立ち下がり時に、細いパルスが出る可能性がある。しかし、その細いパルスを検出した図5(b)のN15、N17のパルスは、Up節点の上昇信号とDn節点の下降信号が出ていないタイミングで、DFF13、14をリセットするので、位相比較器3は正常動作のままである。
【0032】
図5(c)は、帰還クロック(FBCLK)が基準クロック(CLKIN)に対して遅れたときの動作を表すタイミングチャートである。この状態は、電源が揺れたり、外部から入力する基準クロックが擾乱したときなどに起こりうる。この場合、図5(c)の基準クロック(CLKIN)の立ち上がりエッジbに帰還クロック(FBCLK)の立ち上がりエッジcを同時にするため動作が起こる。すなわち、チャージポンプ6は、下降信号Dnより上昇信号Upのパルス幅を大きくして、VCDL9の遅延時間を小さくする。そして、NORゲート19は、基準クロック(T0)と中間クロック(T12)により、節点N14に図5(c)のようなパルスを出力する。すると、節点N15には、N14のパルス立ち下がりを検出したパルスが立ち上がる。節点N17は、NORゲート16により、dの時間にGnd電位になり、DFF13と14をリセットする。しかし、この時間は、上昇信号Upも下降信号DnもGndの状態であるため、上昇信号Upと下降信号DnとがVdd電位となるパルス幅に影響を与えない。このため、しばらくすると図5(b)に示すように、実施形態1のDLL1はロック状態に到達する。
【0033】
図6は、擬似ロック検出回路20、CP6、LPF8の回路図である。図6を用いて、図1の擬似ロック検出回路20とCP6とLPF8について説明する。擬似ロック検出回路20は、立ち上がりエッジトリガー型Dフリップフロップ(以下DFFと略す)23を有する。CP6は、pMOS61、定電流源62、63、スイッチ64、65を有する。LPF8は容量66を有する。CP6とLPF8とで、上昇信号と下降信号とに応じてVCDL9の制御電圧を決定し、制御電圧生成を行う。具体的には、CP6の出力節点N1とLPFの出力節点はN2は、Up節点に上昇信号が入力されるとその間スイッチ64がONして、定電流源62から定電流が容量66に供給され、その電位が大きくなる。その結果、VCDL9の遅延時間が短くなる。一方、Dn端子に下降信号が来るとスイッチ65がONして、定電流源63により定電流が容量66から引き抜かれ、N1とN2の電位が小さくなる。その結果、VCDL9の遅延時間が長くなる。そして、ロック状態になると、上昇信号と下降信号のパルス幅が同じになり、スイッチ64、65のオンの時間が同じになるので、節点N1とN2の電位は固定される。ここで、容量66は、LPF8として高周波ノイズを除去する機能も備えている。
【0034】
擬似ロック検出回路20は、DFF23で構成される。DFF23のD節点にT11の第3の中間クロック、そのCK節点にT4の第2の中間クロックを入力し、そのQN節点からの出力をCP6のpMOS61のゲートに接続する。図7は、擬似ロック検出回路20に関するタイミングチャートである。図7(a)は、正常ロック時のT0、T24、T11、T4、N20の電圧波形を表す。このとき、T0、T24の立ち上がりエッジa、bが同時であり、T4(CK節点)のパルスの立ち上がり時は、T11(D節点)はGnd電位である。図6のDFF23は、RB節点にVdd電位が印加されセット状態なので、CK節点のパルス立ち上がり時のD節点の電位を、Q節点に出力する。一方、QN節点には、Q節点の反転信号を出力する。よって、N20は、常にVdd電位であり、CP6のpMOS61はオフのままで、N1、N2の電位は、DLL回路1のロック時の電位に保たれる。
【0035】
図7(b)は、1周期遅れの擬似ロックが起こった場合のタイミングチャートである。本来、T0、T24の立ち上がりエッジa、bがロックされるべきであるが、T0のaより1周期遅れた立ち上がりエッジcと、T24の立ち上がりエッジbがロックされ擬似ロック状態に陥っている。この場合、T4(CK節点)のパルスの立ち上がり時にT11(D節点)がVdd電位である。このため、N20(QN節点)はGnd電位となり、CP6内のpMOS61がオンしてN1、N2がVdd電位に持ち上げられる。すると、VCDL9の遅延時間が最小になり、DLL回路1は初期状態に戻る。
【0036】
また、図7(c)は、2周期遅れの擬似ロックが起こった場合である。本来、T0、T24の立ち上がりエッジa、bがロックされるべきであるが、T0のaより2周期遅れた立ち上がりエッジdと、T24の立ち上がりエッジbがロックされている。この場合、T4(CK節点)のパルスの立ち上がり時にT11(D節点)がVdd電位である。このため、N20(QN節点)はGnd電位となり、pMOS61がオンしてN1、N2がVdd電位に持ち上げられる。すると、VCDL9の遅延時間が最小になり、DLL回路1が初期状態に戻る。
【0037】
このように擬似ロック検出回路20は、第3の中間クロック(T11)が立ち上がっている状態(オン状態)において第2の中間クロック(T4)が立ち上がった場合に、初期化信号としてN20をGnd電位とする。これにより擬似ロック検出回路20は、CP6を介してVCDL9の遅延時間を初期化する初期化回路として機能する。また、CP6では初期化信号の入力に応じて、制御電圧を該制御電圧が有する最大値(Vdd電位)に設定して初期化する。以上が、擬似ロック検出回路の説明である。
【0038】
実施形態1のロックはずれ防止方法では、擬似ロックが検出されDLL回路1が初期状態に戻った場合でも、ロックはずれを防止できる。実施形態1のロックはずれ検出回路10は、DLL回路1がロックはずれを起している状態になれば、位相比較器3をリセットするので、ロックはずれ状態から正常状態への復帰ができるからである。
【0039】
[実施形態1の変形例]
実施形態1では、VCDLが24個の単位遅延素子を持つとし、その入力節点T0を基準クロックとし、その出力節点T24を帰還クロックし、位相比較器で比較するとして説明した。しかし、VCDLの単位遅延素子の数は任意である。また、位相比較器が比較するVCDLからの出力クロックも任意に選べる。基準クロックは、VCDLへの入力クロックと同じである必要は無く、VCDLからの中間クロックでも良い。また、実施形態1では、帰還クロックの基準クロックからの遅延時間の1/2の遅延時間を持つ中間クロックと、基準クロックを論理和を演算するロックはずれ検出回路に入力すると説明している。しかし、厳格に基準クロックである必要は無く、その近傍のクロックを拾ってくれば良い。また、中間クロックも厳格に1/2の遅延時間を持つ中間クロックである必要は無く、その近傍のクロックを拾ってくればよい。基準クロックの近傍のクロックとは、望ましくは基準クロックから帰還クロックの遅延時間を1としたとき、その±1/5以内の遅延時間を持つクロックである。また、中間クロックとは、その1/2±1/5以内の遅延時間を持つクロックであるのが望ましい。
【0040】
また、実施形態1では、VCDLは図2のようなnMOS電流枯渇型VCDL(current starved VCDL)であるとして説明した。しかし、本発明は、pMOS電流枯渇型VCDL、nMOS−pMOS電流枯渇型VCDL、完全差動型VCDLなどいずれのVCDLにも適用できる。
【0041】
[実施形態2]
実施形態2のロックはずれ検出回路は、実施形態1から立ち下がりエッジ検出回路12を除去している。実施形態2のDLL回路の全体ブロック図は、立ち下がりエッジ検出回路12を除去した以外は実施形態1の図1と同様である。本実施形態では立ち下がりエッジ検出回路12がないので、NORゲート19の出力N15が直接にNORゲート16の入力に接続される。このため、実施形態2は、実施形態1に比べて回路がコンパクトになる効果がある。
【0042】
実施形態2の動作を図8のタイミングチャートを使って説明する。図8(a)は、ロックはずれ状態から正常状態への脱出時の動作を表す。タイミングチャート中のT0、T24、Up、Dn、T12、N15、N11、N17は、図3のそれぞれの節点の電圧波形を表す。図8(a)のように、T0とT24に基準クロック(CLKIN)と帰還クロック(FBCLK)が入ったとき、基準クロックの立ち上がりエッジbと帰還クロックの立ち上がりエッジcが同時になるように位相比較器3が動作すべきである。しかし、図8(a)の前半のタイミングでは点線で囲ったように位相比較器3が誤動作し、ロックはずれのパルスを出力している。
【0043】
実施形態2のロックはずれの脱出法について記述する。図8(a)のように、NORゲート19がN15のようなパルスを出力する。N15のパルスは、NORゲート16を通じ、dのようなリセットパルスを節点N17に生成する。このdのリセットパルスにより、DFF13、14がリセットされる。ここで、N17のリセットパルスが終わる時間dが、T0のパルス立ち上がり時間bに対して遅延が大きい方が望ましい。N17のパルス立ち上がりdの位置は、T0のパルス立ち上がりbの位置より2段のNORゲート19、16を介して決まる。このため、最速のNORゲートを使っても遅延が生じるので、最速のNORゲートを使って良い。しかし、実施形態2では、ロックはずれからの脱出を確実にするために、望ましくは2段のNORゲート19、16のいずれかもしくは両方を遅いNORゲートにする。また、望ましくは2段のNORゲート19、16のいずれかもしくは両方の出力に偶数段のインバータを挿入してN15またはN17のパルスの遅延を大きくする。
【0044】
以上の脱出動作の結果、図8(a)のeのようなT24の帰還クロックのパルス立ち上がりを検出して、図3のDFF14のQ節点の出力がVdd電位となる。そして、T12のgの立ち下がりに基づくN17のhの立ち下がりによりDFF14がリセットされ、DFF14のQ節点の出力がGnd電位となる。この結果、DFF14のQ節点につながった位相比較器3のDn節点には、時間eから時間hの間、下降信号が出力され、T24に出力されるFBCLKは遅れる方向に向かう。つまり、ロックはずれ状態から脱出し正常状態に復帰していくことになる。
【0045】
ここで、実施形態1でのDn節点の下降信号と、実施形態2でのDn節点の下降信号とを比較すると、実施形態2の下降信号のパルス幅の方が短いことがわかる。つまり、実施形態2の位相比較器は、実施形態1の位相比較器よりゲイン(=パルス幅/位相差)が小さい。このため、実施形態2のDLL回路は、実施形態1よりロックに時間がかかる。つまり、実施形態1のDLL回路1は、実施形態2に比べて回路規模が大きいものの、DLL回路のロックまでの時間が短い効果がある。
【0046】
図8(b)は、DLL回路1がロックしたときの各節点のパルスを表す。ロックしたときは、基準クロック(T0)と中間クロック(T12)は、ちょうど半周期ずれ、図8(b)のN18のように、基準クロック(T0)とT12のクロックの立ち上がりと立下り時に、細いパルスが出る可能性がある。しかし、その細いパルスを検出した図8(b)のN15、N17のパルスは、Up信号とDn信号が出ていないタイミングで、DFF13、14をリセットするので、位相比較器3は正常動作のままである。
【0047】
[実施形態3]
実施形態3は、実施形態1とほぼ同様であるが、ロック時に不用な細いパルスがロックはずれ検出回路から位相比較器に出力されないようにしている。実施形態3のDLL回路の全体ブロック図は、実施形態1の図1と同様である。また、位相比較器の構成も図3を使って説明した実施形態1と同じである。
【0048】
図9は、実施形態3のロックはずれ検出回路12の詳細な回路図である。図中、30、31はデューティ比変換回路、32、33はインバータである。以前に説明した部材と同一部材については同一符号を付する。図3の実施形態1のロックはずれ検出回路10との違いは、T0とT12からの入力を、それぞれをデューティ比変換回路30、31を通してNORゲート34に入力していることである。ここで、NORゲート34の表記を図3のNORゲート19を異ならせたのは、本発明の論理和は、否定論理積も含むからである。
【0049】
実施形態3の動作を図10のタイミングチャートを使って説明する。図10(a)は、ロックはずれ状態から正常状態への脱出動作を表すタイミングチャートである。タイミングチャート中のT0、T24、Up、Dn、T12、N18、N19、N15、N11、N17は、図9および図3同様の位相比較器3のそれぞれの節点の電圧波形を表す。図10(a)のように、T0とT24に基準クロック(CLKIN)と帰還クロック(FBCLK)が入ったとき、基準クロックの立ち上がりエッジbと帰還クロックの立ち上がりエッジcが同じになるように位相比較器3が動作すべきである。しかし、図10(a)の前半のタイミングでは点線で囲ったように位相比較器3が誤動作し、ロックはずれのパルスを出力している。
【0050】
実施形態3のロックはずれの脱出法について記述する。図9のようにVCDL9からの中間クロック(T12)と基準クロック(CLKIN;T0)が、それぞれ、デューティ比変換回路31、30に入力されている。デューティ比変換回路31、30は、入力側のインバータ32内のpMOSのチャンネル長(Lp)を大きく、出力側のインバータ33内のnMOSのチャンネル長(Ln)を大きく設計されている。この結果、デューティ比変換回路31、30にデューティ比50%のパルスが入力されても、出力は50%より大きく(例えば55%)になる。
【0051】
そして、デューティ比変換回路31、30の出力節点N19、N18は、NORゲート34に入力される。NORゲート34の出力節点N14以降の信号の流れは、図1や図3を使って説明した実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0052】
図10(b)は、DLL回路1のロック時の各節点のタイミングチャートである。ロック時は、基準クロック(T0)と中間クロック(T12)はちょうど半周期ずれ、実施形態1では、図5(b)のN14のように基準クロック(T0)と中間クロック(T12)の立ち上がりと立ち下がり時に、細いパルスが出る可能性があった。一方、実施形態3で、デューティ比変換回路31、30を組み込んだ結果、図10(b)の節点N14、N15の電圧波形に示されるように、ロック時はロックはずれ検出回路10からリセットパルスが出力されない。
【0053】
実施形態3では、ロックはずれ検出回路は、ロック時に位相比較器をリセットするパルスを出力しない。このため、位相比較器の選択にロックはずれ検出回路との信号交換の関係を考えなくても良く、設計を効率化できる効果がある。位相比較器には、図3で説明したようなスタティック論理を使っても良いし、ダイナミック論理を使っても良い。
【0054】
また、実施形態3のデューティ比変換回路31は必ずしも必要無い。DLL回路1のロック状態では、位相比較器3のUpとDnの節点に細いパルスが出ており、これらがAND15を通じて、N11に細いパルスが生成されている(図10(b))。デューティ比変換回路31が無ければ、T12の立ち下がりとT0の立ち上がりの間の時間、N15に細いパルスが生成される。しかし、N15に生成されるこの細いパルスは、N11の細いパルスとほぼ同時であり、N17の出力結果に違いは生まれないからである。
【0055】
[実施形態4]
実施形態4は、第1の中間クロックを帰還クロックの1/3の遅延時間を持つクロックとし、更に2/3の遅延時間を持つ第4の中間クロックをVCDLから出力させる。そして、基準クロックと第1の中間クロックと第4の中間クロックの3入力の論理和をとり、その論理和出力のパルス立ち下がり検出をして、位相比較器のリセット信号を作成する。
【0056】
図11は、実施形態4のDLL回路1'の全体ブロック図である。図中、以前に説明した部材と同一部材については同一符号を付する。VCDL9は、節点T8と節点T16から中間クロックをロックはずれ検出回路10に出力する。本実施形態では、ロックはずれ検出回路10の構成が実施形態1と異なる。具体的に、実施形態1では、NORゲート19が2入力NORゲートであったのに対し、本実施形態では3入力NORゲートを用いる。その他の構成は同一である。3入力NORゲートには図11のVCDL9の節点T0と節点T8と節点T16が入力される。
【0057】
図12(a)は、実施形態4のロックはずれ状態から正常状態への脱出時のタイミングチャートである。上述の3入力NORゲート35により、N14のような電圧波形が出力される。他は実施形態1と同様の動作なので、説明を省略する。図12(b)は、実施形態4のDLL回路11のロック時の各節点のタイミングチャートである。ロック時は、基準クロック(T0)と第1の中間クロック(T12)とがちょうど半周期ずれている。よって、実施形態1では図5(b)のN14のように基準クロック(T0)と第1の中間クロック(T12)の立ち上がりと立ち下がり時に、細いパルスが出る可能性があった。一方、実施形態4で、論理和に3入力NORゲート35を使った結果、図12(b)の節点N14、N15の電圧波形に示されるように、ロック時はロックはずれ検出回路10からリセットパルスが出力されない。
【0058】
実施形態4では、ロックはずれ検出回路は、ロック時に位相比較器をリセットするパルスを出力しない。このため位相比較器の選択にロックはずれ検出回路との信号交換の関係を考えなくても良く、設計を効率化できる効果がある。位相比較器には、上述のスタティック論理を使っても良いし、ダイナミック論理を使っても良い。
【0059】
実施形態4では、基準クロックと、帰還クロックの基準クロックからの遅延時間の1/3の遅延時間を持つ第1の中間クロックと、2/3の遅延時間を持つ第2の中間クロックとをロックはずれ検出回路に入力すると説明している。しかし、厳格に基準クロックである必要は無く、その近傍のクロックを拾ってくれば良い。また、中間クロックも厳格に1/3、2/3の遅延時間を持つ中間クロックである必要は無く、その近傍のクロックを拾ってくればよい。基準クロックの近傍のクロックとは、望ましくは基準クロックから帰還クロックの遅延時間を1としたとき、その±1/5以内の遅延時間を持つクロックである。また、第1の中間クロックは、1/3±1/5以内の遅延時間を持つクロックであるのが望ましい。第2の中間クロックは、2/3±1/5以内の遅延時間を持つクロックであるのが望ましい。
【0060】
また、実施形態4では、3入力論理和をとっていたが、本発明の考え方を使って、さらに多くの入力の論理和(例えば、4入力論理和、5入力論理和)をとって、ロックはずれ検出回路を構成しても良い。
【0061】
本発明のDLL回路をCMOSセンサなどの半導体チップ内に組み込むことにより、チップのクロック同期、チップ内の多相クロック発生やクロック逓倍などをすることができる。このため、サンプルホールドなどのクロックマージンを小さく設計することができ、ひいては高速の半導体チップを提供することができる。
【0062】
[実施形態5]
図14は、実施形態5のDLL回路の全体ブロック図である。図中、以前に説明した部材と同一部材については同一符号を付する。
【0063】
VCDL9は、内部に単位遅延素子50を49個を備え、入力節点T_1に外部クロックを受ける。VCDL9は、単位遅延素子50を通して節点T0から基準クロック(CLKIN)、T48から帰還クロック(FBCLK)をそれぞれ出力する。また、VCDL9は、節点N2の電圧が大きいほど、帰還クロック(FBCLK)の基準クロック(CLKIN)に対する遅延時間が小さくなるように設計されている。VCDL9は、中間クロックT13を擬似ロック検出回路20に、中間クロックT24をロックはずれ検出回路10に出力する。
【0064】
ロックはずれ検出回路10は、外部クロックT1と中間クロックT24からリセット信号を生成し、節点N15を通して位相比較器3をリセットできる。擬似ロック検出回路20は、外部クロックT1と中間クロックT13からリセット信号を生成し、節点N20を通してCP6をリセットできる。
【0065】
図15は、図14の位相比較器3とロックはずれ検出回路10のブロック内部の回路を表す。図中、以前に説明した部材と同一部材については同一符号を付する。ロックはずれ検出回路10は、NORゲート19と立ち下がりエッジ検出回路12とインバータ80からなる。インバータ80は外部クロックT_1を受け、NORゲート19に出力する。NORゲート19は、中間クロックT24とインバータ80出力を入力とし、節点N14を出力としている。つまり、帰還クロックT48の1/2の遅延時間の中間クロックT24と、基準クロック(CLKIN)の近傍の外部クロックT_1の論理和をとり、その出力を反転させる構成をとっている。この出力が節点N14のパルスである。
【0066】
立ち下がりエッジ検出回路12は、節点N14のパルスを取り込み、N14のパルス立ち下がりエッジを検出した細いパルスを出力する。立ち下がりエッジ検出回路12の構成は、図4で説明した実施形態1と同様である。
【0067】
図15の位相比較器3とロックはずれ検出回路10の動作を図16のタイミングチャートを使って説明する。図16(a)は、ロックはずれ状態から正常状態への脱出時の動作を表す。タイミングチャート中のT_1、T0,T48,Up,Dn,T24,N14,N15,N11,N17は、図14のそれぞれの節点の電圧波形を表す。図16(a)のように、T0とT48に基準クロック(CLKIN)と帰還クロック(FBCLK)が入ったとき、基準クロック(CLKIN)の立ち上がりエッジbと帰還クロック(FBCLK)の立ち上がりエッジcが同時になるように位相比較器3が動作すべきである。しかし、図16(a)の前半のタイミングでは点線で囲ったように位相比較器3が、ロックはずれのパルスを出力している。このロックはずれは、電源投入時や外部クロックが乱れた場合、または擬似ロック検出で初期化したときに起こる。
【0068】
つぎに、このロックはずれ状態から正常状態への復帰過程について説明する。図16(a)のように、NORゲート19がN14のようなパルスを出力する。そして、立ち下がりエッジ検出回路12が、N15の波形ように、N14のパルス立ち下がりエッジを検出した細いパルスを出力する。このように生成された節点N15のパルスが図15のNORゲート16に入力され、NORゲート16から図16(a)のN17のdのようなリセットパルスが出力される。そして、このN17のdのようなリセットパルスにより、DFF13,14がリセットされる。このため、図16(a)のeのようなT48の帰還クロックのパルス立ち上がりを検出して、図15のDFF14のQ節点がVdd電位となる。そして、fのようなT0の基準クロックの立ち上がりによりDFF13のQ節点がVdd電位になるまで、DFF14のQ節点はVdd電位が保たれ、その後Gnd電位となる。この結果、DFF14のQ節点につながった位相比較器3のDn節点には、時間eから時間fの間、下降信号が出力され、T48に出力される帰還クロック(FBCLK)は遅れる方向に向かう。つまり、ロックはずれ状態から脱出し正常状態に復帰したことになる。
【0069】
このように、位相比較器3のUp節点とDn節点に正常な上昇信号と下降信号が出力されることにより、図14のN1とN2の電位が下がり、帰還クロック(T48)の基準クロック(T0)への遅延時間が次第に大きくなる。そして、帰還クロック(T48)の基準クロック(T0)からの遅延時間が、ちょうど1周期分になったところでDLL回路はロック状態となる。
【0070】
図16(b)は、ロック状態になったときのDLL回路の各節点のパルスを表す。ロックはずれ検出回路10からのリセットパルスN15は、Up節点の上昇信号とDn節点の下降信号が出ていないタイミングで、DFF13、14をリセットするので、位相比較器3は正常動作のままである。
図16(c)は、帰還クロック(FBCLK)が基準クロック(CLKIN)に対して遅れたときの動作を表す。ロックはずれ検出回路10からのリセットパルスN15は、Up節点の上昇信号とDn節点の下降信号が出ていないタイミングで、DFF13、14をリセットするので、位相比較器3は正常動作のままである。
【0071】
つぎに、実施形態5の擬似ロック検出回路20とCP6とLPF8の構成を図17を使って説明する。図中、以前に説明した部材と同一部材については同一符号を付する。擬似ロック検出回路20は、DFF23で構成される。DFF23のD節点に外部クロックT_1、そのCK節点に中間クロックT13を入力し、Q節点からの出力をCP6のpMOS61のゲートに接続する。
【0072】
図18は、擬似ロック検出回路20に関するタイミングチャートである。図18(a)は、正常ロック時のT_1,T0,T48,T13,N20の電圧波形を表す。このとき、T0,T48の立ち上がりエッジa,bが同時であり、T13(CK節点)のパルスの立ち上がり時は、T_1(D節点)はVdd (High)電位である。図17のDFF23は、RB節点にVdd電位が印加されセット状態なので、CK節点のパルス立ち上がり時のD節点の電位を、Q節点に出力する。よって、N20は、常にVdd電位であり、CP6のpMOS61はオフのままで、N1,N2の電位は、DLL回路のロック時の電位に保たれる。
【0073】
一方、図18の(b)は1周期遅れの擬似ロックが起こった場合のタイミングチャートである。本来、T0,T48の立ち上がりエッジa,bがロックされるべきであるが、T0のaより1周期遅れた立ち上がりエッジcと,T48の立ち上がりエッジbがロックされ擬似ロック状態に陥っている。この場合、T13(CK節点)のパルスの立ち上がり時にT_1(D節点)がGND (low)電位である。このため、N20(Q節点)はGND (low)電位となり、CP6内のpMOS61がオンしてN1,N2がVdd電位に持ち上げられる。すると、VCDL9の遅延時間が最小になりDLL回路は初期状態に戻る。
【0074】
実施形態5のロックはずれ検出方法では、擬似ロックが検出されDLL回路が初期状態に戻った場合でも、ロックはずれを検出できる。実施形態5のロックはずれ検出回路10は、DLL回路がロックはずれを起している状態になれば、位相比較器3をリセットするので、ロックはずれ状態から正常状態への復帰ができるからである。また、外部クロックをロックはずれ検出回路や擬似ロック検出回路に入力し、VCDLからの出力負荷を小さくしているので、VCDLからの出力の対称性がよい。このため、ロック時の基準クロックと帰還クロックの位相誤差を最小に抑えることができる。
【符号の説明】
【0075】
1、11:DLL回路、2:カウンタ制御回路、3:位相比較器、6:チャージポンプ(CP)、8:ローパスフィルタ(LPF)、9:電圧制御遅延線(VCDL)、10:ロックはずれ検出回路、12:立ち下がりエッジ検出回路、13、14、23:立ち上がりエッジトリガー型Dフリップフロップ、15:ANDゲート、16、19、21,34、35:NORゲート、17:チップ内部回路、18:データラッチ、20:擬似ロック検出回路、22、32、33、80:インバータ、30、31:デューティ比変換回路、50:単位遅延素子、51:制御電圧節点、52、53、55:n型チャンネルMOSトランジスタ、54、56、61:p型チャンネルMOSトランジスタ、62、63:定電流源、64、65:スイッチ、66:容量
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロック同期や多相クロック発生や逓倍等に用いる遅延同期ループ回路、特に遅延同期ループ回路のロックはずれ状態の防止技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遅延同期ループ回路(以下DLL回路と略す。DLL;Delay Locked Loop)は半導体集積回路チップ内のクロックの同期をとるために、電圧制御遅延線(以下VCDLと略す。VCDL;Voltage Controlled Delay Line)から出力された帰還クロックと、1クロック遅れた基準クロックと同期させる回路である。DLL回路の代表的な誤動作に、擬似ロックとロックはずれがある。擬似ロックとは、2クロック以上遅れた基準クロックとの帰還クロックが同期してしまう状態である。擬似ロックが起こると多相クロック発生や逓倍ができなくなる。特許文献1は、この擬似ロック防止について記載している。
【0003】
ロックはずれとは、DLL回路が基準クロックと、基準クロックから0クロック遅れた帰還クロックとを同期させようとする誤動作である。図13を参照してロックはずれについて説明する。図中、CLKINは基準クロック、FBCLKは帰還クロック、Upはチャージポンプ(以下CPと略す)出力を上昇させるための位相比較器から上昇信号、DnはCP出力を下降させるための位相比較器から下降信号を表す。CPは、UpとDnのパルス幅(パルスの時間的な幅)の差に応じてその出力電圧を上下させる。
【0004】
DLL回路では、基準クロック(CLKIN)の2クロック目の立ち上がりエッジbと、帰還クロック(FBCLK)の1クロック目の立ち上がりエッジcとを位相比較するのが、正常な位相比較器の動作である。しかし、電源投入時や、外部クロック信号の乱れにより、基準クロック(CLKIN)の1クロック目の立ち上がりエッジaと、帰還クロック(FBCLK)の1クロック目の立ち上がりエッジcとを、位相比較してしまうことがある。これがロックはずれである。
【0005】
この場合、帰還クロック(FBCLK)が基準クロック(CLKIN)より遅いと、位相比較器が判断している。このため、Upの上昇信号のパルス幅がDnの下降信号のパルス幅より広くなり、制御電圧はCPの出力できる最高電圧まで上昇してしまう。そして、帰還クロック(FBCLK)の遅延時間は、VCDLの最小遅延時間で固定される。しかし、この固定状態は、温度ばらつき、電源電圧ばらつき、製造ばらつきなどに連動し、遅延時間がばらつくためロック状態とは異なる。よって帰還クロックのジッタが大きくなり、チップにDLL回路を組み込んだことが意味をなさない。このため、DLL回路では、ロックはずれを防止する機構を組み込むことが望ましい。そのロックはずれ防止機構として、特許文献2と特許文献3の方法を説明する。
【0006】
特許文献2では、DLL回路とカウンタ制御回路(CNT)とを用いる。カウンタ制御回路(CNT)2は、基準クロック(CLKIN)を入力して、1クロックカウントした後、制御信号(S)を出力し、DLL回路1を起動する。これにより図13の基準クロック(CLKIN)のエッジbと、帰還クロック(FBCLK)のエッジcの位相比較ができ、ロックはずれが防止できる。
【0007】
特許文献3のロックはずれ防止機構では、ロックはずれに状態になるとチャージポンプ回路からの出力をローパスフィルタリングするローパスフィルタ(LPF)の出力線の電圧がある中間電圧(VR)より大きくなる。このため、電圧コンパレータを使って、出力線の電圧と中間電圧(VR)とを比較し、出力線の電圧が中間電圧(VR)より大きくなればリセット信号RSTを出して、この結果、位相比較器とLPFとがリセットされ、ロックはずれが防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−020711号公報
【特許文献2】特開2007−243877号公報
【特許文献3】特開平11−205102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2のカウンタを使ったロックはずれ防止方法は、半導体集積回路チップの電源投入時のVCDLの動作が特許文献2の記述通りに動けば有効である。しかし、外部クロック信号が擾乱したときもロックはずれを起すことがあり、この場合、カウンタ制御回路2は意味をなさず、特許文献2の方法では、ロックはずれからの脱出できない。また、DLL回路は通常擬似ロック検出回路を持つが、擬似ロック検出回路で擬似ロックを検出しDLL回路を初期状態に戻した場合のロックはずれの防止もできない。また、半導体集積回路チップの電源投入時は、VCDL内のインバータ制御節点の電位が不安定であり、VCDLから意図しないクロックが出力される。このため、電源投入時でも、ロックはずれを防止できない場合がある。
【0010】
特許文献3の方法は、ロックはずれの検出にアナログ回路である電圧コンパレータと、電圧コンパレータに入力する中間電圧(VR)を必要とする。電圧コンパレータはアナログ回路であるためレイアウトに大きな面積を必要とするうえ、回路規模が大きく論理回路に比べ消費電力が大きい。中間電圧(VR)を生成するためには、抵抗または容量が必要であり、これもまたレイアウトに大きな面積を必要とする。また、位相比較器3を、正しいタイミングでリセットするために複雑な回路が必要になる。
【0011】
このため、外部クロック信号が擾乱したとき、擬似ロックを検出し初期化したとき、電源を投入したとき、いずれの場合も確実にロックはずれを防止でき、レイアウトがコンパクトなDLL回路を提供することを本発明の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明は遅延同期ループ回路であって、入力クロックを、制御電圧の大きさに応じて遅延させて帰還クロックを出力する電圧制御遅延手段と、
前記帰還クロックと基準クロックとを比較して位相差を検出し、該位相差に応じて、前記制御電圧を上昇させるための上昇信号と該制御電圧を下降させるための下降信号とを出力する位相比較器と、
前記上昇信号と前記下降信号とに応じて前記制御電圧を決定し、前記電圧制御遅延手段に出力する制御電圧生成手段と、
前記基準クロックと、前記電圧制御遅延手段において前記入力クロックを遅延させた信号であって、かつ、前記帰還クロックよりも前に出力された第1の中間クロックとの論理和に基づき、前記位相比較器をリセットするリセット回路とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の遅延同期ループ回路は、外部クロック信号が擾乱したとき、擬似ロックを検出し初期化したとき、電源を投入したとき、いずれの場合も確実にロックはずれを防止できる。またかつ、論理回路のみでロックはずれ検出回路を構成しているため、消費電力が小さく、レイアウトがコンパクトである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態1のDLL回路の構成例を示すブロック図。
【図2】実施形態1のVCDL9の回路構成例を示す図。
【図3】実施形態1の位相比較器3とロックはずれ検出回路10の回路構成例を示す図。
【図4】実施形態1の立ち下がりエッジ検出回路12の回路構成例を示す図。
【図5】実施形態1の動作タイミングチャート。
【図6】実施形態1の擬似ロック検出回路20、CP6、LPF8の回路構成例を示す図。
【図7】実施形態1の擬似ロック解除動作を説明するタイミングチャート。
【図8】実施形態2のロックはずれ状態の解除を説明する動作タイミングチャート。
【図9】実施形態3のロックはずれ検出回路10の回路構成例を示す図。
【図10】実施形態3のロックはずれ状態の解除を説明する動作タイミングチャート。
【図11】実施形態4のDLL回路の構成例を示すブロック図。
【図12】実施形態4のロックはずれ状態の解除を説明する動作タイミングチャート。
【図13】従来技術のタイミングチャートである。
【図14】実施形態5のDLL回路の構成例を示すブロック図。
【図15】実施形態5の位相比較器3とロックはずれ検出回路10の回路構成例を示す図。
【図16】実施形態5の動作タイミングチャート。
【図17】実施形態5の擬似ロック検出回路20、CP6、LPF8の回路構成例を示す図。
【図18】実施形態5の擬似ロック解除動作を説明するタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照して発明の実施形態を説明する。
【0016】
[実施形態1]
実施形態1では、VCDLから帰還クロックの1/2の遅延時間を持つ中間クロックを出力させ、基準クロックと中間クロックの論理和を演算して論理和出力のパルス立ち下がり検出をし、位相比較器のリセット信号を作成する。
【0017】
図1は、実施形態1の遅延同期ループ回路(DLL回路)1の全体ブロック図である。N1はCP6からの出力節点であり、ローパスフィルタ(LPF)8に入力されている。N2はLPF8からの出力節点であり、電圧制御遅延線(VCDL)9の制御電圧が入力される。位相比較器3は、基準クロック(CLKIN)の2クロック目の立ち上がりエッジと、帰還クロック(FBCLK)の1クロック目の立ち上がりエッジとの位相を比較する。Upはチャージポンプ(CP)6の出力節点N1の電圧を上昇させる位相比較器3から上昇信号が出力される節点である。DnはCP6の出力節点N1の電圧を下降させる位相比較器3からの下降信号が出力される節点である。
【0018】
VCDL9は、入力節点T0に基準クロック(CLKIN)を受け、内部の単位遅延素子24個を通して節点T24から帰還クロック(FBCLK)を出力する。ここで節点T24は、24番目の遅延素子からの出力である。また、VCDL9は、節点N2の電圧が大きいほど、帰還クロック(FBCLK)の基準クロック(CLKIN)に対する遅延時間が小さくなるように設計されている。さらに、VCDL9は、節点T12から中間クロック(第1の中間クロック)をロックはずれ検出回路10に出力する。節点T12は、12番目の遅延素子からの出力である。また、VCDL9は、節点T4と節点T11から中間クロック(第2の中間クロック、第3の中間クロック)を擬似ロック検出回路20に出力する。節点T4とT11とは、それぞれ4番目と11番目の遅延素子からの出力である。
【0019】
ロックはずれ検出回路10は、節点T0の基準クロック(CLKIN)と節点T12の中間クロックからリセット信号を生成するリセット回路として機能し、節点N15を通して位相比較器3をリセットできる。擬似ロック検出回路20は、節点T4と節点T11の第2、第3の中間クロックからリセット信号を生成し、節点N20を通してCP6をリセットできる。
【0020】
図2はVCDL9のブロック内部の回路を表す。VCDL9の遅延制御について説明する。図中、50は単位遅延素子、51は制御電圧節点、52は定電流源を構成するn型チャンネルMOSトランジスタ、53、55はインバータを構成するn型チャンネルMOSトランジスタ、54、56はインバータを構成するpMOSトランジスタである。以下、n型チャンネルMOSトランジスタをnMOS、p型チャンネルMOSトランジスタをpMOSと省略する。
【0021】
インバータを構成するnMOS53とpMOS54の共通ゲート(N21)の電圧がGnd(例えば0V)からVdd(例えば1.8V)になると、インバータの出力節点N22の電圧はVddからGndに切り替わる。なお、N22は、nMOS53とpMOS54の共通ドレインである。これは、pMOS54がオンからオフに切り替わり、N22がVddから切り離される一方、nMOS53がオフからオンに切り替わり、nMOS53とnMOS52を通じてGndに接続されるからである。この切り替わりのタイミングで、nMOS52のソース(Gnd)からN19(nMOS52のドレインとnMOS53のソースとの共通節点)を通じてN22の寄生容量に電子が流れ、寄生容量に電子が蓄積されていく。
【0022】
制御電圧節点51の電圧を変えることにより、定電流源を構成するnMOS52が流す電流が制御される。すなわち、制御電圧節点51の電圧を小さくすれば、nMOS電流源52のソースからのドレインN19へ流れる電子数が少なくなり、nMOS53がオンであっても、N22の寄生容量に流れ込む電子数は少ない。このためインバータ(53、54)の出力節点N22の電圧がVddからGndに変化する立ち下がり遅延が大きくなる。同様に、インバータ(55、56)出力N23の立ち下がり遅延も大きくすることができる。この結果、単位遅延素子50の出力節点N23の入力節点N21に対するパルス遅延は、立ち上がりも立ち下がりも一定に保たれる。つまり、単位遅延素子50は、入力N21と出力N23のパルスのデューティ比(信号1周期に占めるVdd期間の割合)を一定に保ったまま、出力節点N23のパルスを制御された遅延時間だけ遅らせることができる。
【0023】
図2で示した実施形態1のVCDL9は、nMOS電流枯渇型VCDL(Current Starved VCDL)と呼ばれる。また、VCDL9は、図1に示したようにLPF8からの出力節点N2によって遅延時間の制御がされる。つまり、節点N2は、図3の制御電圧節51と接続されている。
【0024】
実施形態1のVCDL9は、基準クロック(CLKIN)と帰還クロック(FBCLK)の間に単位遅延素子50が24個ある構成となっている。そして、ロックはずれ検出回路10のために、12個目の単位遅延素子の出力節点T12から中間クロックがブロック外部に出力できる。また、擬似ロック検出回路20に、4個目の単位遅延素子の出力節点T4と、11個目の単位遅延素子の出力節点T11から第2、第3の中間クロックをブロック外部に出力できる。
【0025】
図3は、図1の位相比較器3とロックはずれ検出回路10のブロック内部の回路を表す。図中、12は立ち下がりエッジ検出回路、13、14は立ち上がりエッジトリガー型Dフリップフロップ(以下DFFと略す)、15はANDゲート、16、19はNORゲートである。以前に説明した部材と同一部材については同一符号を付する。ロックはずれ検出回路10は、NORゲート19と立ち下がりエッジ検出回路12からなる。NORゲート19は、節点T12と節点T0を入力とし、節点N14を出力としている。つまり、節点T24の1/2の遅延時間の節点T12の第1の中間クロックと、節点T0の基準クロックの論理和を演算し、その出力を反転させる構成をとっている。この出力が節点N14のパルスである。立ち下がりエッジ検出回路12は、節点N14のパルスを取り込み、N14のパルス立ち下がりエッジを検出した細いパルスを出力する。
【0026】
図3の位相比較器3は、DFF13、14、ANDゲート15、NORゲート16からなる。DFF13、14は、RB節点にVdd電位が印加されセット状態になっていれば、CK節点のパルスが立ち上がり時に、D節点の電位がQ節点に出力される。DFF13、14は、D節点がVdd電位に固定されているため、CK節点のパルスが立ち上がり時にQ節点からVdd電位を出力する。また、DFF13、14は、RB節点にGnd電位が印加されると、リセット状態となりQ節点からGnd電位を出力する。DFF13、14は、スタティック論理であるため、位相比較器3もやはりスタティック論理である。
【0027】
図4は、図3の立ち下がりエッジ検出回路12の詳細な回路図である。図中、21はNORゲート、22は3段インバータ、N16は3段インバータ22の出力節点である。3段インバータ22により、節点N16には、節点N14から遅延を持った反転パルスが出力される。よって、NORゲート21で、N14とN16のNORをとることによって、3段インバータ22の遅延時間分のパルス幅を持ち、N14のパルス立ち下がりを検出したパルスがN15に出力される。3段インバータ22は、奇数段であれば良く、N15に出力される細いパルスが、立ち下がりエッジ検出回路12の後段に伝わるように選択すればよい。
【0028】
図5(a)は、ロックはずれ状態から正常状態への脱出時の動作タイミイングチャートである。図3の位相比較器3とロックはずれ検出回路10の動作を図5を用いて説明する。図5中のT0、T24、Up、Dn、T12、N14、N15、N11、N17は、図3のそれぞれの節点の電圧波形を表す。図5(a)のように、T0とT24に基準クロック(CLKIN)と帰還クロック(FBCLK)が入ったとき、基準クロックの立ち上がりエッジbと帰還クロックの立ち上がりエッジcが同時になるように位相比較器3が動作すべきである。しかし、図5(a)の前半のタイミングでは点線で囲ったように位相比較器3が誤動作し、ロックはずれのパルスを出力している。このロックはずれは、電源投入時や外部クロックが乱れた場合、または擬似ロック検出で初期化したとき(遅延時間を最小とした場合)に起こる。
【0029】
つぎに、このロックはずれ状態から正常状態への脱出過程について説明する。図5(a)のように、NORゲート19がN14のようなパルスを出力する。そして、立ち下がりエッジ検出回路12が、N15の波形のように、N14のパルス立ち下がりエッジを検出した細いパルスを出力する。このように生成された節点N15のパルスが図3のNORゲート16に入力され、NORゲート16から図5(a)のN17のdのようなリセットパルスが出力される。そして、このN17のdのようなリセットパルスにより、DFF13、14がリセットされる。このため、図5(a)のeのようなT24の帰還クロックのパルス立ち上がりを検出して、図3のDFF14のQ節点がVdd電位となる。そして、fのようなT0の基準クロックの立ち上がりによりDFF13のQ節点がVdd電位になるまで、DFF14のQ節点はVdd電位が保たれ、その後Gnd電位となる。この結果、DFF14のQ節点につながった位相比較器3のDn節点には、時間eから時間fの間、下降信号が出力され、T24に出力される帰還クロック(FBCLK)は遅れる方向に向かう。つまり、ロックはずれ状態から脱出し正常状態に復帰したことになる。
【0030】
このように、位相比較器3のUp節点とDn節点に正常な上昇信号と下降信号が出力されることにより、図1のN1とN2の電位が下がり、帰還クロック(T24)の基準クロック(T0)への遅延時間が次第に大きくなる。そして、帰還クロック(T24)の基準クロック(T0)からの遅延時間が、ちょうど1周期分になったところでDLL回路1はロック状態となる。
【0031】
図5(b)は、ロック状態になったときのDLL回路1の各節点のパルスを表す。ロックしたときは、基準クロック(T0)と第1の中間クロック(T12)は、ちょうど半周期ずれ、図5(b)のN14のように、基準クロック(T0)と第1の中間クロック(T12)の立ち上がりと立ち下がり時に、細いパルスが出る可能性がある。しかし、その細いパルスを検出した図5(b)のN15、N17のパルスは、Up節点の上昇信号とDn節点の下降信号が出ていないタイミングで、DFF13、14をリセットするので、位相比較器3は正常動作のままである。
【0032】
図5(c)は、帰還クロック(FBCLK)が基準クロック(CLKIN)に対して遅れたときの動作を表すタイミングチャートである。この状態は、電源が揺れたり、外部から入力する基準クロックが擾乱したときなどに起こりうる。この場合、図5(c)の基準クロック(CLKIN)の立ち上がりエッジbに帰還クロック(FBCLK)の立ち上がりエッジcを同時にするため動作が起こる。すなわち、チャージポンプ6は、下降信号Dnより上昇信号Upのパルス幅を大きくして、VCDL9の遅延時間を小さくする。そして、NORゲート19は、基準クロック(T0)と中間クロック(T12)により、節点N14に図5(c)のようなパルスを出力する。すると、節点N15には、N14のパルス立ち下がりを検出したパルスが立ち上がる。節点N17は、NORゲート16により、dの時間にGnd電位になり、DFF13と14をリセットする。しかし、この時間は、上昇信号Upも下降信号DnもGndの状態であるため、上昇信号Upと下降信号DnとがVdd電位となるパルス幅に影響を与えない。このため、しばらくすると図5(b)に示すように、実施形態1のDLL1はロック状態に到達する。
【0033】
図6は、擬似ロック検出回路20、CP6、LPF8の回路図である。図6を用いて、図1の擬似ロック検出回路20とCP6とLPF8について説明する。擬似ロック検出回路20は、立ち上がりエッジトリガー型Dフリップフロップ(以下DFFと略す)23を有する。CP6は、pMOS61、定電流源62、63、スイッチ64、65を有する。LPF8は容量66を有する。CP6とLPF8とで、上昇信号と下降信号とに応じてVCDL9の制御電圧を決定し、制御電圧生成を行う。具体的には、CP6の出力節点N1とLPFの出力節点はN2は、Up節点に上昇信号が入力されるとその間スイッチ64がONして、定電流源62から定電流が容量66に供給され、その電位が大きくなる。その結果、VCDL9の遅延時間が短くなる。一方、Dn端子に下降信号が来るとスイッチ65がONして、定電流源63により定電流が容量66から引き抜かれ、N1とN2の電位が小さくなる。その結果、VCDL9の遅延時間が長くなる。そして、ロック状態になると、上昇信号と下降信号のパルス幅が同じになり、スイッチ64、65のオンの時間が同じになるので、節点N1とN2の電位は固定される。ここで、容量66は、LPF8として高周波ノイズを除去する機能も備えている。
【0034】
擬似ロック検出回路20は、DFF23で構成される。DFF23のD節点にT11の第3の中間クロック、そのCK節点にT4の第2の中間クロックを入力し、そのQN節点からの出力をCP6のpMOS61のゲートに接続する。図7は、擬似ロック検出回路20に関するタイミングチャートである。図7(a)は、正常ロック時のT0、T24、T11、T4、N20の電圧波形を表す。このとき、T0、T24の立ち上がりエッジa、bが同時であり、T4(CK節点)のパルスの立ち上がり時は、T11(D節点)はGnd電位である。図6のDFF23は、RB節点にVdd電位が印加されセット状態なので、CK節点のパルス立ち上がり時のD節点の電位を、Q節点に出力する。一方、QN節点には、Q節点の反転信号を出力する。よって、N20は、常にVdd電位であり、CP6のpMOS61はオフのままで、N1、N2の電位は、DLL回路1のロック時の電位に保たれる。
【0035】
図7(b)は、1周期遅れの擬似ロックが起こった場合のタイミングチャートである。本来、T0、T24の立ち上がりエッジa、bがロックされるべきであるが、T0のaより1周期遅れた立ち上がりエッジcと、T24の立ち上がりエッジbがロックされ擬似ロック状態に陥っている。この場合、T4(CK節点)のパルスの立ち上がり時にT11(D節点)がVdd電位である。このため、N20(QN節点)はGnd電位となり、CP6内のpMOS61がオンしてN1、N2がVdd電位に持ち上げられる。すると、VCDL9の遅延時間が最小になり、DLL回路1は初期状態に戻る。
【0036】
また、図7(c)は、2周期遅れの擬似ロックが起こった場合である。本来、T0、T24の立ち上がりエッジa、bがロックされるべきであるが、T0のaより2周期遅れた立ち上がりエッジdと、T24の立ち上がりエッジbがロックされている。この場合、T4(CK節点)のパルスの立ち上がり時にT11(D節点)がVdd電位である。このため、N20(QN節点)はGnd電位となり、pMOS61がオンしてN1、N2がVdd電位に持ち上げられる。すると、VCDL9の遅延時間が最小になり、DLL回路1が初期状態に戻る。
【0037】
このように擬似ロック検出回路20は、第3の中間クロック(T11)が立ち上がっている状態(オン状態)において第2の中間クロック(T4)が立ち上がった場合に、初期化信号としてN20をGnd電位とする。これにより擬似ロック検出回路20は、CP6を介してVCDL9の遅延時間を初期化する初期化回路として機能する。また、CP6では初期化信号の入力に応じて、制御電圧を該制御電圧が有する最大値(Vdd電位)に設定して初期化する。以上が、擬似ロック検出回路の説明である。
【0038】
実施形態1のロックはずれ防止方法では、擬似ロックが検出されDLL回路1が初期状態に戻った場合でも、ロックはずれを防止できる。実施形態1のロックはずれ検出回路10は、DLL回路1がロックはずれを起している状態になれば、位相比較器3をリセットするので、ロックはずれ状態から正常状態への復帰ができるからである。
【0039】
[実施形態1の変形例]
実施形態1では、VCDLが24個の単位遅延素子を持つとし、その入力節点T0を基準クロックとし、その出力節点T24を帰還クロックし、位相比較器で比較するとして説明した。しかし、VCDLの単位遅延素子の数は任意である。また、位相比較器が比較するVCDLからの出力クロックも任意に選べる。基準クロックは、VCDLへの入力クロックと同じである必要は無く、VCDLからの中間クロックでも良い。また、実施形態1では、帰還クロックの基準クロックからの遅延時間の1/2の遅延時間を持つ中間クロックと、基準クロックを論理和を演算するロックはずれ検出回路に入力すると説明している。しかし、厳格に基準クロックである必要は無く、その近傍のクロックを拾ってくれば良い。また、中間クロックも厳格に1/2の遅延時間を持つ中間クロックである必要は無く、その近傍のクロックを拾ってくればよい。基準クロックの近傍のクロックとは、望ましくは基準クロックから帰還クロックの遅延時間を1としたとき、その±1/5以内の遅延時間を持つクロックである。また、中間クロックとは、その1/2±1/5以内の遅延時間を持つクロックであるのが望ましい。
【0040】
また、実施形態1では、VCDLは図2のようなnMOS電流枯渇型VCDL(current starved VCDL)であるとして説明した。しかし、本発明は、pMOS電流枯渇型VCDL、nMOS−pMOS電流枯渇型VCDL、完全差動型VCDLなどいずれのVCDLにも適用できる。
【0041】
[実施形態2]
実施形態2のロックはずれ検出回路は、実施形態1から立ち下がりエッジ検出回路12を除去している。実施形態2のDLL回路の全体ブロック図は、立ち下がりエッジ検出回路12を除去した以外は実施形態1の図1と同様である。本実施形態では立ち下がりエッジ検出回路12がないので、NORゲート19の出力N15が直接にNORゲート16の入力に接続される。このため、実施形態2は、実施形態1に比べて回路がコンパクトになる効果がある。
【0042】
実施形態2の動作を図8のタイミングチャートを使って説明する。図8(a)は、ロックはずれ状態から正常状態への脱出時の動作を表す。タイミングチャート中のT0、T24、Up、Dn、T12、N15、N11、N17は、図3のそれぞれの節点の電圧波形を表す。図8(a)のように、T0とT24に基準クロック(CLKIN)と帰還クロック(FBCLK)が入ったとき、基準クロックの立ち上がりエッジbと帰還クロックの立ち上がりエッジcが同時になるように位相比較器3が動作すべきである。しかし、図8(a)の前半のタイミングでは点線で囲ったように位相比較器3が誤動作し、ロックはずれのパルスを出力している。
【0043】
実施形態2のロックはずれの脱出法について記述する。図8(a)のように、NORゲート19がN15のようなパルスを出力する。N15のパルスは、NORゲート16を通じ、dのようなリセットパルスを節点N17に生成する。このdのリセットパルスにより、DFF13、14がリセットされる。ここで、N17のリセットパルスが終わる時間dが、T0のパルス立ち上がり時間bに対して遅延が大きい方が望ましい。N17のパルス立ち上がりdの位置は、T0のパルス立ち上がりbの位置より2段のNORゲート19、16を介して決まる。このため、最速のNORゲートを使っても遅延が生じるので、最速のNORゲートを使って良い。しかし、実施形態2では、ロックはずれからの脱出を確実にするために、望ましくは2段のNORゲート19、16のいずれかもしくは両方を遅いNORゲートにする。また、望ましくは2段のNORゲート19、16のいずれかもしくは両方の出力に偶数段のインバータを挿入してN15またはN17のパルスの遅延を大きくする。
【0044】
以上の脱出動作の結果、図8(a)のeのようなT24の帰還クロックのパルス立ち上がりを検出して、図3のDFF14のQ節点の出力がVdd電位となる。そして、T12のgの立ち下がりに基づくN17のhの立ち下がりによりDFF14がリセットされ、DFF14のQ節点の出力がGnd電位となる。この結果、DFF14のQ節点につながった位相比較器3のDn節点には、時間eから時間hの間、下降信号が出力され、T24に出力されるFBCLKは遅れる方向に向かう。つまり、ロックはずれ状態から脱出し正常状態に復帰していくことになる。
【0045】
ここで、実施形態1でのDn節点の下降信号と、実施形態2でのDn節点の下降信号とを比較すると、実施形態2の下降信号のパルス幅の方が短いことがわかる。つまり、実施形態2の位相比較器は、実施形態1の位相比較器よりゲイン(=パルス幅/位相差)が小さい。このため、実施形態2のDLL回路は、実施形態1よりロックに時間がかかる。つまり、実施形態1のDLL回路1は、実施形態2に比べて回路規模が大きいものの、DLL回路のロックまでの時間が短い効果がある。
【0046】
図8(b)は、DLL回路1がロックしたときの各節点のパルスを表す。ロックしたときは、基準クロック(T0)と中間クロック(T12)は、ちょうど半周期ずれ、図8(b)のN18のように、基準クロック(T0)とT12のクロックの立ち上がりと立下り時に、細いパルスが出る可能性がある。しかし、その細いパルスを検出した図8(b)のN15、N17のパルスは、Up信号とDn信号が出ていないタイミングで、DFF13、14をリセットするので、位相比較器3は正常動作のままである。
【0047】
[実施形態3]
実施形態3は、実施形態1とほぼ同様であるが、ロック時に不用な細いパルスがロックはずれ検出回路から位相比較器に出力されないようにしている。実施形態3のDLL回路の全体ブロック図は、実施形態1の図1と同様である。また、位相比較器の構成も図3を使って説明した実施形態1と同じである。
【0048】
図9は、実施形態3のロックはずれ検出回路12の詳細な回路図である。図中、30、31はデューティ比変換回路、32、33はインバータである。以前に説明した部材と同一部材については同一符号を付する。図3の実施形態1のロックはずれ検出回路10との違いは、T0とT12からの入力を、それぞれをデューティ比変換回路30、31を通してNORゲート34に入力していることである。ここで、NORゲート34の表記を図3のNORゲート19を異ならせたのは、本発明の論理和は、否定論理積も含むからである。
【0049】
実施形態3の動作を図10のタイミングチャートを使って説明する。図10(a)は、ロックはずれ状態から正常状態への脱出動作を表すタイミングチャートである。タイミングチャート中のT0、T24、Up、Dn、T12、N18、N19、N15、N11、N17は、図9および図3同様の位相比較器3のそれぞれの節点の電圧波形を表す。図10(a)のように、T0とT24に基準クロック(CLKIN)と帰還クロック(FBCLK)が入ったとき、基準クロックの立ち上がりエッジbと帰還クロックの立ち上がりエッジcが同じになるように位相比較器3が動作すべきである。しかし、図10(a)の前半のタイミングでは点線で囲ったように位相比較器3が誤動作し、ロックはずれのパルスを出力している。
【0050】
実施形態3のロックはずれの脱出法について記述する。図9のようにVCDL9からの中間クロック(T12)と基準クロック(CLKIN;T0)が、それぞれ、デューティ比変換回路31、30に入力されている。デューティ比変換回路31、30は、入力側のインバータ32内のpMOSのチャンネル長(Lp)を大きく、出力側のインバータ33内のnMOSのチャンネル長(Ln)を大きく設計されている。この結果、デューティ比変換回路31、30にデューティ比50%のパルスが入力されても、出力は50%より大きく(例えば55%)になる。
【0051】
そして、デューティ比変換回路31、30の出力節点N19、N18は、NORゲート34に入力される。NORゲート34の出力節点N14以降の信号の流れは、図1や図3を使って説明した実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0052】
図10(b)は、DLL回路1のロック時の各節点のタイミングチャートである。ロック時は、基準クロック(T0)と中間クロック(T12)はちょうど半周期ずれ、実施形態1では、図5(b)のN14のように基準クロック(T0)と中間クロック(T12)の立ち上がりと立ち下がり時に、細いパルスが出る可能性があった。一方、実施形態3で、デューティ比変換回路31、30を組み込んだ結果、図10(b)の節点N14、N15の電圧波形に示されるように、ロック時はロックはずれ検出回路10からリセットパルスが出力されない。
【0053】
実施形態3では、ロックはずれ検出回路は、ロック時に位相比較器をリセットするパルスを出力しない。このため、位相比較器の選択にロックはずれ検出回路との信号交換の関係を考えなくても良く、設計を効率化できる効果がある。位相比較器には、図3で説明したようなスタティック論理を使っても良いし、ダイナミック論理を使っても良い。
【0054】
また、実施形態3のデューティ比変換回路31は必ずしも必要無い。DLL回路1のロック状態では、位相比較器3のUpとDnの節点に細いパルスが出ており、これらがAND15を通じて、N11に細いパルスが生成されている(図10(b))。デューティ比変換回路31が無ければ、T12の立ち下がりとT0の立ち上がりの間の時間、N15に細いパルスが生成される。しかし、N15に生成されるこの細いパルスは、N11の細いパルスとほぼ同時であり、N17の出力結果に違いは生まれないからである。
【0055】
[実施形態4]
実施形態4は、第1の中間クロックを帰還クロックの1/3の遅延時間を持つクロックとし、更に2/3の遅延時間を持つ第4の中間クロックをVCDLから出力させる。そして、基準クロックと第1の中間クロックと第4の中間クロックの3入力の論理和をとり、その論理和出力のパルス立ち下がり検出をして、位相比較器のリセット信号を作成する。
【0056】
図11は、実施形態4のDLL回路1'の全体ブロック図である。図中、以前に説明した部材と同一部材については同一符号を付する。VCDL9は、節点T8と節点T16から中間クロックをロックはずれ検出回路10に出力する。本実施形態では、ロックはずれ検出回路10の構成が実施形態1と異なる。具体的に、実施形態1では、NORゲート19が2入力NORゲートであったのに対し、本実施形態では3入力NORゲートを用いる。その他の構成は同一である。3入力NORゲートには図11のVCDL9の節点T0と節点T8と節点T16が入力される。
【0057】
図12(a)は、実施形態4のロックはずれ状態から正常状態への脱出時のタイミングチャートである。上述の3入力NORゲート35により、N14のような電圧波形が出力される。他は実施形態1と同様の動作なので、説明を省略する。図12(b)は、実施形態4のDLL回路11のロック時の各節点のタイミングチャートである。ロック時は、基準クロック(T0)と第1の中間クロック(T12)とがちょうど半周期ずれている。よって、実施形態1では図5(b)のN14のように基準クロック(T0)と第1の中間クロック(T12)の立ち上がりと立ち下がり時に、細いパルスが出る可能性があった。一方、実施形態4で、論理和に3入力NORゲート35を使った結果、図12(b)の節点N14、N15の電圧波形に示されるように、ロック時はロックはずれ検出回路10からリセットパルスが出力されない。
【0058】
実施形態4では、ロックはずれ検出回路は、ロック時に位相比較器をリセットするパルスを出力しない。このため位相比較器の選択にロックはずれ検出回路との信号交換の関係を考えなくても良く、設計を効率化できる効果がある。位相比較器には、上述のスタティック論理を使っても良いし、ダイナミック論理を使っても良い。
【0059】
実施形態4では、基準クロックと、帰還クロックの基準クロックからの遅延時間の1/3の遅延時間を持つ第1の中間クロックと、2/3の遅延時間を持つ第2の中間クロックとをロックはずれ検出回路に入力すると説明している。しかし、厳格に基準クロックである必要は無く、その近傍のクロックを拾ってくれば良い。また、中間クロックも厳格に1/3、2/3の遅延時間を持つ中間クロックである必要は無く、その近傍のクロックを拾ってくればよい。基準クロックの近傍のクロックとは、望ましくは基準クロックから帰還クロックの遅延時間を1としたとき、その±1/5以内の遅延時間を持つクロックである。また、第1の中間クロックは、1/3±1/5以内の遅延時間を持つクロックであるのが望ましい。第2の中間クロックは、2/3±1/5以内の遅延時間を持つクロックであるのが望ましい。
【0060】
また、実施形態4では、3入力論理和をとっていたが、本発明の考え方を使って、さらに多くの入力の論理和(例えば、4入力論理和、5入力論理和)をとって、ロックはずれ検出回路を構成しても良い。
【0061】
本発明のDLL回路をCMOSセンサなどの半導体チップ内に組み込むことにより、チップのクロック同期、チップ内の多相クロック発生やクロック逓倍などをすることができる。このため、サンプルホールドなどのクロックマージンを小さく設計することができ、ひいては高速の半導体チップを提供することができる。
【0062】
[実施形態5]
図14は、実施形態5のDLL回路の全体ブロック図である。図中、以前に説明した部材と同一部材については同一符号を付する。
【0063】
VCDL9は、内部に単位遅延素子50を49個を備え、入力節点T_1に外部クロックを受ける。VCDL9は、単位遅延素子50を通して節点T0から基準クロック(CLKIN)、T48から帰還クロック(FBCLK)をそれぞれ出力する。また、VCDL9は、節点N2の電圧が大きいほど、帰還クロック(FBCLK)の基準クロック(CLKIN)に対する遅延時間が小さくなるように設計されている。VCDL9は、中間クロックT13を擬似ロック検出回路20に、中間クロックT24をロックはずれ検出回路10に出力する。
【0064】
ロックはずれ検出回路10は、外部クロックT1と中間クロックT24からリセット信号を生成し、節点N15を通して位相比較器3をリセットできる。擬似ロック検出回路20は、外部クロックT1と中間クロックT13からリセット信号を生成し、節点N20を通してCP6をリセットできる。
【0065】
図15は、図14の位相比較器3とロックはずれ検出回路10のブロック内部の回路を表す。図中、以前に説明した部材と同一部材については同一符号を付する。ロックはずれ検出回路10は、NORゲート19と立ち下がりエッジ検出回路12とインバータ80からなる。インバータ80は外部クロックT_1を受け、NORゲート19に出力する。NORゲート19は、中間クロックT24とインバータ80出力を入力とし、節点N14を出力としている。つまり、帰還クロックT48の1/2の遅延時間の中間クロックT24と、基準クロック(CLKIN)の近傍の外部クロックT_1の論理和をとり、その出力を反転させる構成をとっている。この出力が節点N14のパルスである。
【0066】
立ち下がりエッジ検出回路12は、節点N14のパルスを取り込み、N14のパルス立ち下がりエッジを検出した細いパルスを出力する。立ち下がりエッジ検出回路12の構成は、図4で説明した実施形態1と同様である。
【0067】
図15の位相比較器3とロックはずれ検出回路10の動作を図16のタイミングチャートを使って説明する。図16(a)は、ロックはずれ状態から正常状態への脱出時の動作を表す。タイミングチャート中のT_1、T0,T48,Up,Dn,T24,N14,N15,N11,N17は、図14のそれぞれの節点の電圧波形を表す。図16(a)のように、T0とT48に基準クロック(CLKIN)と帰還クロック(FBCLK)が入ったとき、基準クロック(CLKIN)の立ち上がりエッジbと帰還クロック(FBCLK)の立ち上がりエッジcが同時になるように位相比較器3が動作すべきである。しかし、図16(a)の前半のタイミングでは点線で囲ったように位相比較器3が、ロックはずれのパルスを出力している。このロックはずれは、電源投入時や外部クロックが乱れた場合、または擬似ロック検出で初期化したときに起こる。
【0068】
つぎに、このロックはずれ状態から正常状態への復帰過程について説明する。図16(a)のように、NORゲート19がN14のようなパルスを出力する。そして、立ち下がりエッジ検出回路12が、N15の波形ように、N14のパルス立ち下がりエッジを検出した細いパルスを出力する。このように生成された節点N15のパルスが図15のNORゲート16に入力され、NORゲート16から図16(a)のN17のdのようなリセットパルスが出力される。そして、このN17のdのようなリセットパルスにより、DFF13,14がリセットされる。このため、図16(a)のeのようなT48の帰還クロックのパルス立ち上がりを検出して、図15のDFF14のQ節点がVdd電位となる。そして、fのようなT0の基準クロックの立ち上がりによりDFF13のQ節点がVdd電位になるまで、DFF14のQ節点はVdd電位が保たれ、その後Gnd電位となる。この結果、DFF14のQ節点につながった位相比較器3のDn節点には、時間eから時間fの間、下降信号が出力され、T48に出力される帰還クロック(FBCLK)は遅れる方向に向かう。つまり、ロックはずれ状態から脱出し正常状態に復帰したことになる。
【0069】
このように、位相比較器3のUp節点とDn節点に正常な上昇信号と下降信号が出力されることにより、図14のN1とN2の電位が下がり、帰還クロック(T48)の基準クロック(T0)への遅延時間が次第に大きくなる。そして、帰還クロック(T48)の基準クロック(T0)からの遅延時間が、ちょうど1周期分になったところでDLL回路はロック状態となる。
【0070】
図16(b)は、ロック状態になったときのDLL回路の各節点のパルスを表す。ロックはずれ検出回路10からのリセットパルスN15は、Up節点の上昇信号とDn節点の下降信号が出ていないタイミングで、DFF13、14をリセットするので、位相比較器3は正常動作のままである。
図16(c)は、帰還クロック(FBCLK)が基準クロック(CLKIN)に対して遅れたときの動作を表す。ロックはずれ検出回路10からのリセットパルスN15は、Up節点の上昇信号とDn節点の下降信号が出ていないタイミングで、DFF13、14をリセットするので、位相比較器3は正常動作のままである。
【0071】
つぎに、実施形態5の擬似ロック検出回路20とCP6とLPF8の構成を図17を使って説明する。図中、以前に説明した部材と同一部材については同一符号を付する。擬似ロック検出回路20は、DFF23で構成される。DFF23のD節点に外部クロックT_1、そのCK節点に中間クロックT13を入力し、Q節点からの出力をCP6のpMOS61のゲートに接続する。
【0072】
図18は、擬似ロック検出回路20に関するタイミングチャートである。図18(a)は、正常ロック時のT_1,T0,T48,T13,N20の電圧波形を表す。このとき、T0,T48の立ち上がりエッジa,bが同時であり、T13(CK節点)のパルスの立ち上がり時は、T_1(D節点)はVdd (High)電位である。図17のDFF23は、RB節点にVdd電位が印加されセット状態なので、CK節点のパルス立ち上がり時のD節点の電位を、Q節点に出力する。よって、N20は、常にVdd電位であり、CP6のpMOS61はオフのままで、N1,N2の電位は、DLL回路のロック時の電位に保たれる。
【0073】
一方、図18の(b)は1周期遅れの擬似ロックが起こった場合のタイミングチャートである。本来、T0,T48の立ち上がりエッジa,bがロックされるべきであるが、T0のaより1周期遅れた立ち上がりエッジcと,T48の立ち上がりエッジbがロックされ擬似ロック状態に陥っている。この場合、T13(CK節点)のパルスの立ち上がり時にT_1(D節点)がGND (low)電位である。このため、N20(Q節点)はGND (low)電位となり、CP6内のpMOS61がオンしてN1,N2がVdd電位に持ち上げられる。すると、VCDL9の遅延時間が最小になりDLL回路は初期状態に戻る。
【0074】
実施形態5のロックはずれ検出方法では、擬似ロックが検出されDLL回路が初期状態に戻った場合でも、ロックはずれを検出できる。実施形態5のロックはずれ検出回路10は、DLL回路がロックはずれを起している状態になれば、位相比較器3をリセットするので、ロックはずれ状態から正常状態への復帰ができるからである。また、外部クロックをロックはずれ検出回路や擬似ロック検出回路に入力し、VCDLからの出力負荷を小さくしているので、VCDLからの出力の対称性がよい。このため、ロック時の基準クロックと帰還クロックの位相誤差を最小に抑えることができる。
【符号の説明】
【0075】
1、11:DLL回路、2:カウンタ制御回路、3:位相比較器、6:チャージポンプ(CP)、8:ローパスフィルタ(LPF)、9:電圧制御遅延線(VCDL)、10:ロックはずれ検出回路、12:立ち下がりエッジ検出回路、13、14、23:立ち上がりエッジトリガー型Dフリップフロップ、15:ANDゲート、16、19、21,34、35:NORゲート、17:チップ内部回路、18:データラッチ、20:擬似ロック検出回路、22、32、33、80:インバータ、30、31:デューティ比変換回路、50:単位遅延素子、51:制御電圧節点、52、53、55:n型チャンネルMOSトランジスタ、54、56、61:p型チャンネルMOSトランジスタ、62、63:定電流源、64、65:スイッチ、66:容量
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力クロックを、制御電圧の大きさに応じて遅延させて帰還クロックを出力する電圧制御遅延手段と、
前記帰還クロックと基準クロックとを比較して位相差を検出し、該位相差に応じて、前記制御電圧を上昇させるための上昇信号と該制御電圧を下降させるための下降信号とを出力する位相比較器と、
前記上昇信号と前記下降信号とに応じて前記制御電圧を決定し、前記電圧制御遅延手段に出力する制御電圧生成手段と、
前記基準クロックと、前記電圧制御遅延手段において前記入力クロックを遅延させた信号であって、かつ、前記帰還クロックよりも前に出力された第1の中間クロックとの論理和に基づき、前記位相比較器をリセットするリセット回路と
を備えることを特徴とする遅延同期ループ回路。
【請求項2】
前記位相比較器は、
前記基準クロックと前記帰還クロックとの位相差が1周期分の位相差よりも大きい場合に、前記リセット回路によるリセットの後に前記上昇信号を出力して、前記電圧制御遅延手段における遅延を小さくし、
前記基準クロックと前記帰還クロックとの位相差が1周期分の位相差よりも小さい場合に、前記リセット回路によるリセットの後に前記下降信号を出力して、前記電圧制御遅延手段における遅延を大きくする
ことを特徴とする請求項1に記載の遅延同期ループ回路。
【請求項3】
前記電圧制御遅延手段では、前記制御電圧が下がるにつれて前記遅延が大きくなり、
前記第1の中間クロックは、前記帰還クロックの前記基準クロックに対する遅延時間のほぼ1/2の遅延時間を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の遅延同期ループ回路。
【請求項4】
前記電圧制御遅延手段において前記入力クロックを遅延させた信号であって、1周期の中で、前記帰還クロックよりも前に出力される第2の中間クロックと、該第2の中間クロックよりも後で前記帰還クロックよりも前に出力される第3の中間クロックとに基づき、
前記第3の中間クロックのオン状態において前記第2の中間クロックが立ち上がった場合に、初期化信号を前記制御電圧生成手段に出力する初期化回路をさらに備え、
前記制御電圧生成手段は前記初期化信号の入力に応じて、前記制御電圧を該制御電圧が有する最大値に設定して初期化することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の遅延同期ループ回路。
【請求項5】
前記リセット回路は、前記基準クロックと、前記第1の中間クロックとのデューティ比を1/2より上昇させるデューティ比変換回路を含み、デューティ比が変換された前記基準クロックと前記第1の中間クロックとにつき前記論理和を演算することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の遅延同期ループ回路。
【請求項6】
前記第1の中間クロックは、前記帰還クロックの前記基準クロックに対する遅延時間のほぼ1/3の遅延時間を有し、
前記リセット回路は前記論理和を、前記基準クロックと、前記第1の中間クロックと、前記帰還クロックの前記基準クロックに対する遅延時間のほぼ2/3の遅延時間を有する第4の中間クロックとを用いて演算する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の遅延同期ループ回路。
【請求項7】
前記基準クロックは、前記入力クロック、または、該入力クロックの近傍の信号であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の遅延同期ループ回路。
【請求項8】
前記入力クロックの近傍の信号は、前記入力クロックから前記帰還クロックの遅延時間を1とした場合に、該遅延時間の±1/5以内の遅延時間を前記入力クロックから有する信号であることを特徴とする請求項7に記載の遅延同期ループ回路。
【請求項9】
入力クロックを、制御電圧の大きさに応じて遅延させて基準クロック及び帰還クロックを出力する電圧制御遅延手段と、
前記帰還クロックと前記基準クロックとを比較して位相差を検出し、該位相差に応じて、前記制御電圧を上昇させるための上昇信号と該制御電圧を下降させるための下降信号とを出力する位相比較器と、
前記上昇信号と前記下降信号とに応じて前記制御電圧を決定し、前記電圧制御遅延手段に出力する制御電圧生成手段と、
前記入力クロックと、前記電圧制御遅延手段において前記入力クロックを遅延させた信号であって、かつ、前記帰還クロックよりも前に出力された第1の中間クロックとの論理和に基づき、前記位相比較器をリセットするリセット回路と
を備えることを特徴とする遅延同期ループ回路。
【請求項10】
前記位相比較器は、
前記基準クロックと前記帰還クロックとの位相差が1周期分の位相差よりも大きい場合に、前記リセット回路によるリセットの後に前記上昇信号を出力して、前記電圧制御遅延手段における遅延を小さくし、
前記基準クロックと前記帰還クロックとの位相差が1周期分の位相差よりも小さい場合に、前記リセット回路によるリセットの後に前記下降信号を出力して、前記電圧制御遅延手段における遅延を大きくする
ことを特徴とする請求項9に記載の遅延同期ループ回路。
【請求項11】
前記電圧制御遅延手段では、前記制御電圧が下がるにつれて前記遅延が大きくなり、
前記第1の中間クロックは、前記帰還クロックの前記基準クロックに対する遅延時間のほぼ1/2の遅延時間を有することを特徴とする請求項9又は10に記載の遅延同期ループ回路。
【請求項12】
前記電圧制御遅延手段において前記入力クロックを遅延させた信号であって、1周期の中で、前記帰還クロックよりも前に出力される第2の中間クロックと、前記入力クロックとに基づき、
前記第2の中間クロックのオン状態において前記入力クロックが立ち上がった場合に、初期化信号を前記制御電圧生成手段に出力する初期化回路をさらに備え、
前記制御電圧生成手段は前記初期化信号の入力に応じて、前記制御電圧を該制御電圧が有する最大値に設定して初期化することを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載の遅延同期ループ回路。
【請求項1】
入力クロックを、制御電圧の大きさに応じて遅延させて帰還クロックを出力する電圧制御遅延手段と、
前記帰還クロックと基準クロックとを比較して位相差を検出し、該位相差に応じて、前記制御電圧を上昇させるための上昇信号と該制御電圧を下降させるための下降信号とを出力する位相比較器と、
前記上昇信号と前記下降信号とに応じて前記制御電圧を決定し、前記電圧制御遅延手段に出力する制御電圧生成手段と、
前記基準クロックと、前記電圧制御遅延手段において前記入力クロックを遅延させた信号であって、かつ、前記帰還クロックよりも前に出力された第1の中間クロックとの論理和に基づき、前記位相比較器をリセットするリセット回路と
を備えることを特徴とする遅延同期ループ回路。
【請求項2】
前記位相比較器は、
前記基準クロックと前記帰還クロックとの位相差が1周期分の位相差よりも大きい場合に、前記リセット回路によるリセットの後に前記上昇信号を出力して、前記電圧制御遅延手段における遅延を小さくし、
前記基準クロックと前記帰還クロックとの位相差が1周期分の位相差よりも小さい場合に、前記リセット回路によるリセットの後に前記下降信号を出力して、前記電圧制御遅延手段における遅延を大きくする
ことを特徴とする請求項1に記載の遅延同期ループ回路。
【請求項3】
前記電圧制御遅延手段では、前記制御電圧が下がるにつれて前記遅延が大きくなり、
前記第1の中間クロックは、前記帰還クロックの前記基準クロックに対する遅延時間のほぼ1/2の遅延時間を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の遅延同期ループ回路。
【請求項4】
前記電圧制御遅延手段において前記入力クロックを遅延させた信号であって、1周期の中で、前記帰還クロックよりも前に出力される第2の中間クロックと、該第2の中間クロックよりも後で前記帰還クロックよりも前に出力される第3の中間クロックとに基づき、
前記第3の中間クロックのオン状態において前記第2の中間クロックが立ち上がった場合に、初期化信号を前記制御電圧生成手段に出力する初期化回路をさらに備え、
前記制御電圧生成手段は前記初期化信号の入力に応じて、前記制御電圧を該制御電圧が有する最大値に設定して初期化することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の遅延同期ループ回路。
【請求項5】
前記リセット回路は、前記基準クロックと、前記第1の中間クロックとのデューティ比を1/2より上昇させるデューティ比変換回路を含み、デューティ比が変換された前記基準クロックと前記第1の中間クロックとにつき前記論理和を演算することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の遅延同期ループ回路。
【請求項6】
前記第1の中間クロックは、前記帰還クロックの前記基準クロックに対する遅延時間のほぼ1/3の遅延時間を有し、
前記リセット回路は前記論理和を、前記基準クロックと、前記第1の中間クロックと、前記帰還クロックの前記基準クロックに対する遅延時間のほぼ2/3の遅延時間を有する第4の中間クロックとを用いて演算する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の遅延同期ループ回路。
【請求項7】
前記基準クロックは、前記入力クロック、または、該入力クロックの近傍の信号であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の遅延同期ループ回路。
【請求項8】
前記入力クロックの近傍の信号は、前記入力クロックから前記帰還クロックの遅延時間を1とした場合に、該遅延時間の±1/5以内の遅延時間を前記入力クロックから有する信号であることを特徴とする請求項7に記載の遅延同期ループ回路。
【請求項9】
入力クロックを、制御電圧の大きさに応じて遅延させて基準クロック及び帰還クロックを出力する電圧制御遅延手段と、
前記帰還クロックと前記基準クロックとを比較して位相差を検出し、該位相差に応じて、前記制御電圧を上昇させるための上昇信号と該制御電圧を下降させるための下降信号とを出力する位相比較器と、
前記上昇信号と前記下降信号とに応じて前記制御電圧を決定し、前記電圧制御遅延手段に出力する制御電圧生成手段と、
前記入力クロックと、前記電圧制御遅延手段において前記入力クロックを遅延させた信号であって、かつ、前記帰還クロックよりも前に出力された第1の中間クロックとの論理和に基づき、前記位相比較器をリセットするリセット回路と
を備えることを特徴とする遅延同期ループ回路。
【請求項10】
前記位相比較器は、
前記基準クロックと前記帰還クロックとの位相差が1周期分の位相差よりも大きい場合に、前記リセット回路によるリセットの後に前記上昇信号を出力して、前記電圧制御遅延手段における遅延を小さくし、
前記基準クロックと前記帰還クロックとの位相差が1周期分の位相差よりも小さい場合に、前記リセット回路によるリセットの後に前記下降信号を出力して、前記電圧制御遅延手段における遅延を大きくする
ことを特徴とする請求項9に記載の遅延同期ループ回路。
【請求項11】
前記電圧制御遅延手段では、前記制御電圧が下がるにつれて前記遅延が大きくなり、
前記第1の中間クロックは、前記帰還クロックの前記基準クロックに対する遅延時間のほぼ1/2の遅延時間を有することを特徴とする請求項9又は10に記載の遅延同期ループ回路。
【請求項12】
前記電圧制御遅延手段において前記入力クロックを遅延させた信号であって、1周期の中で、前記帰還クロックよりも前に出力される第2の中間クロックと、前記入力クロックとに基づき、
前記第2の中間クロックのオン状態において前記入力クロックが立ち上がった場合に、初期化信号を前記制御電圧生成手段に出力する初期化回路をさらに備え、
前記制御電圧生成手段は前記初期化信号の入力に応じて、前記制御電圧を該制御電圧が有する最大値に設定して初期化することを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載の遅延同期ループ回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−55482(P2011−55482A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165346(P2010−165346)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]