説明

運転支援システム

【課題】空調に限らず車両の挙動や車両の装備の作動状態を変更することによってエネルギー消費率にどの程度の変化があるかを運転者に提案する運転環境支援システムを提供する。
【解決手段】データ蓄積部14は、挙動取得部12で取得した走行データを走行履歴として蓄積し、操作取得部13で取得した操作データを操作履歴として経時的に蓄積する。エネルギー消費率算出部17は、最新の走行データ、最新の環境データおよび最新の作動状態からエネルギー消費率を算出する。提案エネルギー消費率算出部18は、走行履歴および操作履歴から、運転者の操作によって変化する提案エネルギー消費率を算出する。表示部19は、最新のエネルギー消費率と提案エネルギー消費率とを対比して表示する。これにより、運転者は、車両への操作をどの程度変更、あるいは装備の作動状態をどの程度変更するとエネルギー消費率がどのように変化するかを可視的に認識可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者による車両の運転を支援する運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両において、運転者による操作を支援してより快適な運転環境を提供することが広く考えられている(例えば、空調について特許文献1参照。)。これら運転環境の提供は、通常、例えばコンピュータなどによる自動制御を前提としている。
ところで、自動制御は、あくまでも運転者の意思を排除した制御が主眼となっている。例えば空調装置において、外気温および内気温がいずれも高いとき、制御装置は可能な限り短時間で運転者が希望する設定温度に到達するように制御を行う。この場合、温度変化以外の要素を考慮した制御はほとんど行われていない。
【0003】
しかしながら、近年では、環境意識の高まりにより、運転者は燃料の消費量に高い関心をもち始めている。また、電気自動車などの場合、運転者は電池の充電残量に高い関心を払う必要がある。そのため、従来のように単に最短時間での空調を目標とした制御は、燃料の消費量の増大につながり、運転者の理解を得られなくなりつつある。これに対し、燃料や電力の消費量の低減を優先して空調を行うと、運転者の不快感が増大する。つまり、燃料や電力の消費量の低減と快適性の確保とは、互いに相反する要素である。一方、運転者によっては、快適性を確保するためには燃料や電力の消費量を犠牲にしてもよいとの考え方、または快適性を犠牲にしてでも燃料や電力の消費量を抑えたいとの考え方が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−122316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、空調に限らず車両の挙動や車両の装備の作動状態を変更することによってエネルギー消費率にどの程度の変化があるかを運転者に提案する運転環境支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明では、運転情報蓄積手段は、挙動取得手段で取得した走行データを走行履歴として、および操作取得手段で取得した操作データを操作履歴として経時的に蓄積する。エネルギー消費率算出手段は、最新の走行データ、最新の環境データおよび最新の作動状態に基づいて、車両における最新の単位エネルギー当たりの走行可能距離をエネルギー消費率として算出する。これに対し、提案エネルギー消費率算出手段は、運転情報蓄積手段に蓄積されている走行履歴および操作履歴に基づいて、運転者の操作によって変化する車両の単位エネルギー当たりの走行可能距離を提案エネルギー消費率として算出する。すなわち、提案エネルギー消費率算出手段は、運転者が例えば加速や巡航速度など運転者が車両に入力する操作、または例えば空調装置の設定温度の変更や照明の点滅など装備の作動状態を変更したとき、過去の走行履歴および操作履歴に基づいて、車両の提案エネルギー消費率を算出する。報知手段は、エネルギー消費率算出手段で算出した最新の運転環境および最新の運転状態に基づくエネルギー消費率と、提案エネルギー消費率算出手段で算出した過去の履歴に基づく提案エネルギー消費率とを対比して報知する。これにより、運転者は、車両への操作をどの程度変更、あるいは装備の作動状態をどの程度変更するとエネルギー消費率がどのように変化するかを具体的に認識可能となる。これにより、運転者は、快適性とエネルギー消費率とを両立するための材料が得られる。したがって、空調に限らず車両の挙動や車両の装備の作動状態を変更することによってエネルギー消費率にどの程度の変化があるかを運転者に提案することができる。
【0007】
請求項2記載の発明では、走行経路案内手段は車両の走行経路を案内する。経路情報蓄積手段は、この走行経路案内手段が案内した走行経路を案内履歴として蓄積する。最新の運転状態や運転環境に基づいてエネルギー消費率を算出するエネルギー消費率算出手段は、走行経路案内手段が案内している走行経路を加味してエネルギー消費率を算出する。また、提案エネルギー消費率算出手段は、経路情報蓄積手段に蓄積されている案内履歴を用いて最新の走行経路を走破するのに必要な必要走破エネルギーを算出する。例えば、夏場に空調装置が冷房運転しているとき、案内している走行経路の前途に標高が高く気温が低い特定地点が含まれる場合がある。これは、案内履歴を参照することにより、容易に把握される。このような特定地点を通過する際に空調機器の運転に必要となるエネルギーは小さくなるのに対し、特定地点に到達するまで登坂が続く際に車両の走行のために必要となるエネルギーは大きくなる。このように、仮に走行距離が同一であっても、走行経路に応じてエネルギー消費率は相違する。そこで、提案エネルギー消費率算出手段は、蓄積された案内履歴を利用して走行経路案内手段が案内する走行経路の走破に必要な必要走破エネルギーを算出する。そして、提案エネルギー消費率算出手段は、この算出した必要走破エネルギーに基づいて提案エネルギー消費率を算出する。このように、案内履歴を用いて必要走破エネルギーを算出することにより、運転者は目的地に到達するためには車両の操作や装備の作動状態をどのようにすればよいかを認識可能となる。したがって、目的地への到達のために、快適性とエネルギー消費率とを両立するための材料を提供することができる。
【0008】
請求項3記載の発明では、提案後運転情報蓄積手段は、提案後走行履歴および提案後操作履歴を蓄積する。すなわち、提案後運転情報蓄積手段は、提案エネルギー消費率を運転者へ提案した後、運転者が車両や装備をどのように操作したかを提案後走行履歴および提案後操作履歴として蓄積する。そして、エネルギー消費率算出手段および提案エネルギー消費率算出手段は、いずれも提案後運転情報蓄積手段に蓄積した提案後走行履歴および提案後操作履歴に基づいてエネルギー消費率および提案エネルギー消費率を算出する。これにより、エネルギー消費率算出手段および提案エネルギー消費率算出手段は、運転者や車両の個性も加味してエネルギー消費率および提案エネルギー消費率を算出する。したがって、車両の走行距離が伸びるほど運転者や車両の個性が加味されていき、より精度の高い提案を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態による運転支援システムの構成を示すブロック図
【図2】一実施形態による運転支援システムの処理の流れを示す概略図
【図3】一実施形態による運転支援システムにおける具体例1の概念を示す模式図
【図4】図3に示す具体例1における提案画面の例を示す模式図
【図5】一実施形態による運転支援システムにおける具体例2の概念を示す模式図
【図6】一実施形態による運転支援システムにおける具体例3の概念を示す模式図
【図7】図6に示す具体例3における提案画面の例を示す模式図
【図8】一実施形態による運転支援システムにおける具体例4の概念を示す模式図
【図9】図8に示す具体例4における提案画面の例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、運転支援システムの一実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、図1に基づいて、運転支援システム10の構成について説明する。運転支援システム10は、車両に搭載され、制御装置11を備えている。車両は、ガソリンや軽油をエネルギー源とするエンジンシステム、蓄電池に蓄えられた電力をエネルギー源とするモータシステム、またはこれらを組み合わせたハイブリッドシステムのいずれかを搭載している。制御装置11は、図示しないCPU、ROMおよびRAMからなるマイクロコンピュータで構成されており、ROMに記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより、運転支援システム10の全体を制御する。運転支援システム10は、挙動取得部12、操作取得部13、データ蓄積部14、環境データ取得部15、作動状態取得部16、エネルギー消費率算出部17、提案エネルギー消費率算出部18、表示部19および走行経路案内手段としてのナビゲーション装置21を備えている。エネルギー消費率算出部17および提案エネルギー消費率算出部18は、制御装置11で実行されるコンピュータプログラムによってソフトウェア的に実現されている。なお、これらエネルギー消費率算出部17および提案エネルギー消費率算出部18は、ハードウェア的に実現してもよい。
【0011】
挙動取得部12は、運転支援システム10が搭載されている車両の挙動を走行データとして定期的に取得する。操作取得部13は、運転支援システム10が搭載されている車両に対し運転者が入力した操作を操作データとして定期的に取得する。挙動取得部12および操作取得部13は、車速センサ31、加速度センサ32、アクセル開度センサ33、ブレーキセンサ34および舵角センサ35などと接続している。車速センサ31は、車両の速度を検出し、速度に応じた電気信号を挙動取得部12および操作取得部13へ出力する。加速度センサ32は、車両の加速度を検出し、加速度に応じた電気信号を挙動取得部12および操作取得部13へ出力する。アクセル開度センサ33は、車両の運転者による図示しないアクセルペダルの踏み込み量を検出し、この踏み込み量に応じた電気信号を挙動取得部12および操作取得部13へ出力する。ブレーキセンサ34は、車両の運転者による図示しないブレーキペダルの踏み込み量を検出し、この踏み込み量に応じた電気信号を挙動取得部12および操作取得部13へ出力する。舵角センサ35は、車両の運転者による図示しないステアリングホイールの操作舵角を検出し、検出した操作舵角に応じた電気信号を挙動取得部12および操作取得部13へ出力する。なお、加速度センサ32で検出した車両の加速度を積分することにより車両の速度を検出し、車速センサ31を省略する構成としてもよい。また、加速度センサ32は、いわゆるジャイロセンサとして車両の進行方向に対する加速度を検出するだけでなく、車両の旋回方向の加速度を検出する構成としてもよい。
【0012】
挙動取得部12は、上述の各種センサから車両の速度、加速度あるいは旋回速度などの車両の挙動を取得する。また、操作取得部13は、上述の各種センサから車両に入力されたアクセルペダルやブレーキペダルの踏み込み量、あるいはステアリングホイールの操作舵角などの入力された操作を取得する。
上記した挙動取得部12および操作取得部13が情報を取得する上記の各種のセンサは例示である。そのため、挙動取得部12および操作取得部13は、上記したセンサだけでなく、車両に搭載されているエンジンやモータの回転数を検出する回転数センサ、エンジンに吸入される吸気の流量を検出する吸気量センサ、モータに印加する電圧若しくはモータを流れる電流を検出するセンサなど他のセンサから車両の挙動を取得してもよい。
【0013】
環境データ取得部15は、運転支援システム10を搭載する車両の内部および外部の環境に関するデータを環境データとして取得する。具体的には、環境データ取得部15は、外気温センサ41、内気温センサ42、湿度センサ43および日照センサ44などを有している。外気温センサ41は、車両の外部の気温を検出し、検出した温度に応じた電気信号を環境データ取得部15へ出力する。内気温センサ42は、車両の内部、すなわち車室内の気温を検出し、検出した温度に応じた電気信号を環境データ取得部15へ出力する。湿度センサ43は、車室内の湿度を検出し、検出した湿度に応じた電気信号を環境データ取得部15へ出力する。日照センサ44は、車室内へ入射する日光の照射量を検出し、検出した照射量に応じた電気信号を環境データ取得部15へ出力する。このように、環境データ取得部15は、各種センサから少なくとも温度を含む車両の内部および外部の環境に関する環境データを取得する。なお、環境データ取得部15が取得する環境データは、これら外気温、内気温、湿度および日照に限らない。
【0014】
作動状態取得部16は、運転支援システム10を搭載する車両の装備の作動状態を作動状態データとして取得する。車両は、装備として例えば空調装置51、オーディオ装置52および照明装置53などを備えている。空調装置51は、例えば図示しないヒートポンプ、ファンおよびヒータなどを有しており、車室内の温度を運転者が設定した設定温度に調整する。オーディオ装置52は、例えば図示しないCDあるいはDVDプレーヤ、テレビあるいはラジオチューナ、およびスピーカなどを有しており、車室内に音声や映像を提供する。照明装置53は、例えば図示しないヘッドランプ、フォグランプあるいは室内灯などを有しており、車両の外部および内部を照明する。作動状態取得部16は、これら空調装置51、オーディオ装置52および照明装置53などの各種装備の作動状態を作動状態データとして取得する。なお、車両の装備として示した空調装置51、オーディオ装置52および照明装置53ならびにこれらの構成部品はあくまでも例示である。
【0015】
データ蓄積部14は、特許請求の範囲の運転情報蓄積手段、経路情報蓄積手段および提案後運転情報蓄積手段に相当する。データ蓄積部14は、例えばHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Sorid State Drive)などの大容量記憶媒体を有しており、車両の各種データを蓄積する。データ蓄積部14は、挙動取得部12で取得された走行データを走行履歴として、および操作取得部13で取得された操作データを操作履歴として経時的に蓄積する。具体的には、データ蓄積部14は、例えば0.01秒や0.1秒など予め設定された時間間隔で挙動取得部12で取得した走行データおよび操作取得部13で取得した操作データを記憶する。また、データ蓄積部14は、環境データ取得部15で取得した環境データ、および作動状態取得部16で取得した作動状態データについても、走行データおよび操作データと同期して蓄積する。
【0016】
運転支援システム10は、上記に加え残量センサ61を備えている。残量センサ61は、例えば燃料や充電池の残量を検出する。すなわち、エンジンシステムを搭載する車両の場合、残量センサ61は燃料タンクに蓄えられている燃料の残量を検出する。また、モータシステムを搭載する車両の場合、残量センサ61は充電池の残量を検出する。残量センサ61は、検出した燃料の残量あるいは充電池の残量を、これに対応する電気信号として制御装置11へ出力する。
【0017】
ナビゲーション装置21は、位置検出部71、地図データ記憶部72、マップマッチング部73、経路案内部74および表示部19などを有している。位置検出部71は、例えばGPS(Global Positioning System)の人工衛星からの信号やジャイロセンサなどからナビゲーション装置21を搭載する車両の位置を検出する。なお、ナビゲーション装置21のジャイロセンサは、運転支援システム10に用いる加速度センサ32などと共用してもよい。地図データ記憶部72は、位置検出部71で検出した現在位置を示すための地図の基となる地図データ、および経路案内のために用いる地図データを記憶している。マップマッチング部73は、地図データ記憶部72に記憶されている地図データに基づく地図上に、位置検出部71で検出した車両の位置を特定する。経路案内部74は、車両の現在地から、運転者から入力された目的地までの経路を検索し、検索した経路に応じて車両を案内する。表示部19は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどを有しており、地図データに基づく地図や位置検出部71で検出した車両の現在位置などを表示する。また、表示部19は、車両の装備であるオーディオ装置52によって再生された映像を表示する。さらに、表示部19は、ナビゲーション装置21を構成するとともに、特許請求の範囲における運転支援システム10の報知手段を構成している。
【0018】
エネルギー消費率算出部17は、エネルギー消費率を算出する。エネルギー消費率は、車両における単位エネルギー当たりの走行可能距離である。例えば車両がガソリンや軽油を燃料とするエンジンを搭載する場合、このエネルギー消費率は、いわゆる燃費であり、単位燃料量(リットル)当たりの走行可能距離(km)である。また、例えば車両が電気で駆動されるモータを搭載する場合、このエネルギー消費率は、いわゆる電費であり、充電池の単位容量(kWh)当たりの走行可能距離(km)である。
【0019】
エネルギー消費率算出部17は、挙動取得部12で取得した最新の走行データ、操作取得部13で取得した最新の操作データ、環境データ取得部15で取得した最新の環境データ、および作動状態取得部16で取得した車両の装備の最新の作動状態データに基づいて車両におけるエネルギー消費率を算出する。挙動取得部12、操作取得部13、環境データ取得部15および作動状態取得部16は、いずれも予め設定された時間間隔で走行データ、操作データ、環境データおよび作動状態データを取得し、データ蓄積部14に蓄積する。エネルギー消費率算出部17は、これら各種データのうち最新すなわち時間的に最も新しいデータに基づいて、最新のエネルギー消費率を算出する。
【0020】
提案エネルギー消費率算出部18は、提案エネルギー消費率を算出する。提案エネルギー消費率算出部18は、データ蓄積部14に蓄積されている走行履歴および操作履歴に基づいて、提案エネルギー消費率を算出する。具体的には、任意の時点で車両が任意の走行状態にあり、かつ当該車両の装備が任意の作動状態にあるとき、車両の運転者が車両に対して入力する操作または装備の作動状態を変更すると、その車両におけるエネルギー消費率は変化する。提案エネルギー消費率算出部18は、このように車両に対し入力される操作または装備の作動状態の変更によって、当該車両のエネルギー消費率がどの程度変化するかを算出する。このとき、提案エネルギー消費率算出部18は、データ蓄積部14に蓄積されている走行履歴および操作履歴を参照する。提案エネルギー消費率算出部18は、算出したエネルギー消費率を提案エネルギー消費率として設定する。
【0021】
上述の表示部19は、提案エネルギー消費率算出部18で算出された提案エネルギー消費率を、エネルギー消費率算出部17で算出したエネルギー消費率と対比して表示する。すなわち、表示部19は、提案エネルギー消費率とエネルギー消費率とを対比して表示する。これにより、車両の運転者は、車両に対する入力をどのように変化させるとエネルギー消費率にどのような変化が生じるか、車両の装備の作動状態をどのように変化させるとエネルギー消費率にどのような変化が生じるかを可視的に認識することができる。
【0022】
上述のデータ蓄積部14は、特許請求の範囲の経路情報蓄積手段としても機能する。経路情報蓄積手段としてのデータ蓄積部14は、ナビゲーション装置21で案内された走行経路や、過去に走行した走行経路を案内履歴として経時的に蓄積する。すなわち、データ蓄積部14は、車両が任意の経路を走行するごと、あるいは車両がナビゲーション装置21で経路案内されるごとに、その走行経路の情報を案内履歴として蓄積する。
【0023】
データ蓄積部14は、さらに特許請求の範囲の提案後運転情報蓄積手段としても機能する。提案後運転情報蓄積手段としてのデータ蓄積部14は、表示部19に提案エネルギー消費率を表示した後に、挙動取得部12で取得した走行データを提案後走行履歴として、および操作取得部13で取得した操作データを提案後操作履歴として蓄積する。すなわち、データ蓄積部14は、表示部19を通して提案エネルギー消費率を運転者に提案した後、運転者による車両の運転すなわち車両の挙動や操作がどのように変化したかを蓄積する。これにより、提案エネルギー消費率が運転者に対し、その後の運転にどのように活用されているかが把握可能となる。運転者はそれぞれに個性を有しているため、運転支援システム10が提案する提案エネルギー消費率を各運転者がどの程度考慮するかは各運転者に依存する。そこで、各運転者における提案エネルギー消費率の活用を提案後走行履歴および提案後操作履歴として考慮することにより、提案エネルギー消費率算出部18は蓄積された提案後走行履歴および提案後操作履歴を次回の提案エネルギー消費率の算出に反映する。その結果、車両は、走行距離が伸びるほど、すなわち走り込むほど提案する提案エネルギー消費率の精度が高められる。
【0024】
次に、上記の構成による運転支援システム10の処理の流れについて説明する。
まず、運転支援システム10の基本的な処理の流れについて図2に基づいて説明する。
車両が始動すなわちイグニションスイッチあるいはメインスイッチが「オン」されると(S101)、制御装置11は各種のデータを取得する(S102)。具体的には、挙動取得部12は、走行データを取得する。同時に、操作取得部13は操作データを取得し、環境データ取得部15は環境データを取得し、作動状態取得部16は作動状態データを取得する。より具体的には、挙動取得部12は、走行データとして車速センサ31から車両の速度、および加速度センサ32から車両に加わる加速度を同時期に取得する。また、操作取得部13は、操作データとしてアクセル開度センサ33からアクセルペダルの踏み込み量、およびブレーキセンサ34からブレーキペダルの踏み込み量を同時期に取得する。さらに、環境データ取得部15は、環境データとして外気温センサ41から車両の外部の気温、内気温センサ42から車両の車室内の気温、湿度センサ43から車両の車室内の湿度、および日照センサ44から車室内に入射する日光の照射量を同時期に取得する。作動状態取得部16は、作動状態データとして、空調装置51の設定温度や風量などの作動状態、オーディオ装置52の音量や処理量などの作動状態、および照明装置53の各照明のオンまたはオフ状態あるいは消費電力などの作動状態を同時期に取得する。
【0025】
制御装置11は、S102において取得した走行データ、操作データ、環境データおよび作動状態データを、時間に関連づけながら時系列に沿ってデータ蓄積部14に蓄積する(S103)。すなわち、制御装置11は、走行データを時系列に沿った走行履歴としてデータ蓄積部14に蓄積し、操作データを時系列に沿った操作履歴としてデータ蓄積部14に蓄積する。
【0026】
エネルギー消費率算出部17は、S103において蓄積した各種データに基づいて、最新のエネルギー消費率を算出する(S104)。すなわち、エネルギー消費率算出部17は、経時的に取得してデータ蓄積部14に蓄積している各種データのうち、最新の走行データ、最新の操作データ、最新の環境データおよび最新の作動状態データに基づいて、車両における最新のエネルギー消費率を算出する。算出されたエネルギー消費率は、各種データと同様に、時系列に沿ったエネルギー消費率履歴としてデータ蓄積部14に蓄積される。
【0027】
制御装置11は、S102においてデータを取得、S103においてデータを蓄積、およびS104において最新のエネルギー消費率を算出すると同時に、提案エネルギー消費率を提案する時期にあるか否かを判断する(S105)。制御装置11は、次のように予め設定された判断条件のいずれかに該当すると、提案エネルギー消費率を提案する時期にあると判断する。
【0028】
条件1.最新のエネルギー消費率が大きいとき
条件2.外気温と内気温との関係から空調装置51の設定が適切でないとき
条件3.燃料または充電池の残量が所定値以下となったとき
条件4.運転者自身が提案エネルギー消費率を知りたいとき
上記の条件1は、S104において算出した最新のエネルギー消費率がデータ蓄積部14に蓄積されている過去のエネルギー消費率に比較して大きいときである。この場合、最新のエネルギー消費率が過去のエネルギー消費率に比較して大きくなると常に条件1に該当するとしてもよく、予め設定されたある期間継続して最新のエネルギー消費率が大きいとき条件1に該当するとしてもよい。例えば急加減速が多いとき、走行速度の幅が大きな波状運転になっているとき、あるいはアイドリング期間が長いときなどのように、運転者による車両の操作が通常より好ましくない場合、条件1に該当する。また、例えば空調装置51のファンの回転数が必要以上に高いときなども、運転者による車両の操作が通常より好ましくないとして条件1に該当する。
【0029】
上記の条件2は、空調装置51の設定温度がS102で取得した車両の外気温と内気温との温度差を考慮しても適切でないときである。例えば、外気温が30℃であり、内気温が24℃のとき、空調装置51の設定温度が20℃であるとき、空調装置51の設定温度を25℃程度にすることによりエネルギー消費率が改善することが考えられる。このように、空調装置51の設定温度が適切でないとき、エネルギー消費率の悪化を招くとして条件2に該当する。
【0030】
上記の条件3は、残量センサ61で検出した燃料または充電池の残量が所定値以下となったときである。燃料または充電池の残量が所定値以下になると、エネルギー消費率を改善することにより走行可能距離が延長する可能性がある。このように、燃料または充電池の残量が所定値以下になると、条件3に該当する。なお、条件3に該当するか否かの判断喜寿となる所定値は、車両の特性、燃料タンクや充電池の容量などを考慮して任意に設定することができる。
上記の条件4は、条件1から条件3に関わらず、運転者自身が提案エネルギー消費率を知りたいときである。運転者がよりエネルギー消費率の良好な運転を心がける場合、提案エネルギー消費率を知ることが役立つことが考えられる。このように、運転者の任意によって、条件4に該当するとしてもよい。
【0031】
提案エネルギー消費率算出部18は、S105において提案エネルギー消費率を提案する時期にあると判断すると(S105:Yes)、提案エネルギー消費率を算出する(S106)。提案エネルギー消費率算出部18は、データ蓄積部14に蓄積されている走行履歴および操作履歴に基づいて提案エネルギー消費率を算出する。
S106において提案エネルギー消費率が算出されると、表示部19は提案エネルギー消費率とS104で算出した最新のエネルギー消費率とを対比して表示する(S107)。このとき、表示部19は、どのような操作や装備の設定の変更を行うとエネルギー消費率がどの程度変化するかを可視的に表示する。この場合、最新のエネルギー消費率と提案エネルギー消費率とを対比して表示しなくてもよい。例えば最新のエネルギー消費率を基準値として、操作や入力の変更によってエネルギー消費率の値がどの程度変化するかを対比して表示してもよい。また、エネルギー消費率に代えて、エネルギー消費率から導かれる走行可能距離などを対比して表示してもよい。
【0032】
S107において提案エネルギー消費率を表示部19に表示した後、制御装置11は、挙動取得部12で取得された走行データを提案後走行履歴としてデータ蓄積部14に蓄積し、操作取得部13で取得された操作データを提案後操作履歴としてデータ蓄積部14に蓄積する(S108)。蓄積された提案後走行履歴および提案後操作履歴は、S106における次回の提案エネルギー消費率の算出に活用される。
【0033】
提案後走行履歴および提案後操作履歴が蓄積されると、車両の運転が継続している間、処理はS102へリターンし、S102以降の処理を繰り返す。また、S105において提案エネルギー消費率を算出する時期でないと判断されると(S105:No)、S102へリターンし、S102以降の処理を繰り返す。
【0034】
次に、上記で説明した運転支援システム10による運転支援の具体例を説明する。
(具体例1)
具体例1として、ガソリンを燃料とするエンジンを搭載した車両において、走行速度を提案する例について説明する。具体例1の概念図を図3に示す。
挙動取得部12は、走行データとして車両の速度を車速センサ31から取得し、車両の加速度を加速度センサ32から取得する。また、操作取得部13は、操作データとしてアクセルペダルの踏み込み量をアクセル開度センサ33から取得し、ブレーキペダルの踏み込み量をブレーキセンサ34から取得する。取得した走行データおよび操作データは、データ蓄積部14に蓄積される。制御装置11は、データ蓄積部14に蓄積された走行データおよび操作データから、過去平均の走行挙動や過去平均のエネルギー消費率を算出する。過去平均の走行挙動は、例えば過去平均のアクセル操作や過去平均の走行速度などを含んでいる。ここで、「過去平均」とは、図2におけるS101において車両が始動される前まで、すなわち前回の車両の運転終了までに蓄積されたデータの平均値を意味する。
【0035】
制御装置11は、取得した走行データおよび操作データから、現在の走行挙動や現在のエネルギー消費率を算出する。現在の走行挙動は、例えば現在の平均的なアクセル操作や現在の平均的な走行速度などを含んでいる。ここで、「現在」とは、図2におけるS101における車両の始動から最新の走行データおよび最新の操作データが取得されたときまで、すなわち今回の運転の開始から最新の時期までを意味する。さらに、制御装置11は、環境データとして車両外部の最新の気温を外気温センサ41から取得し、車室内の最新の温度を内気温センサ42から取得し、車室内の最新の湿度を湿度センサ43から取得する。
【0036】
これら蓄積された各種のデータおよび取得された各種のデータから、提案エネルギー消費率算出部18は提案エネルギー消費率を算出する。このとき、提案エネルギー消費率算出部18は、現在の走行挙動や現在のエネルギー消費率と過去に蓄積されたデータとを対比する。また、提案エネルギー消費率算出部18は、過去に蓄積された環境データに基づいて現在運転中の季節および天候を考慮するとともに、過去に蓄積された曜日データや時間帯データなども考慮し、さらに提案後走行履歴および提案後操作履歴から運転者の個性を総合的に考慮して、車両の平均速度に対するエネルギー消費率を算出する。すなわち、提案エネルギー消費率算出部18は、運転者が車両に対する入力、つまり平均速度についての操作を変更したとき、エネルギー消費率がどの程度変化するかを提案エネルギー消費率として表示部19に図4に示すような提案画面81を表示する。
【0037】
図4に示す提案画面81の場合、最新の走行データや操作データに基づく最新のエネルギー消費率に対し、例えば平均速度を「3km/h」減じたとき、提案エネルギー消費率算出部18は、提案エネルギー消費率が「0.3km/リットル」悪化すると算出する。同様に、提案エネルギー消費率算出部18は、平均速度を「5km/h」減じたとき、提案エネルギー消費率が「0.5km/リットル」悪化すると算出する。一方、提案エネルギー消費率算出部18は、平均速度を「3km/h」増したとき、提案エネルギー消費率が「0.5km/リットル」改善すると算出する。また、提案エネルギー消費率算出部18は、平均速度を「5km/h」増したとき、提案エネルギー消費率が「0.5km/リットル」悪化すると算出する。すなわち、図4の場合、最新のエネルギー消費率を基準値として、平均速度を変更すると提案エネルギー消費率の値がどの程度変化するかを示している。この場合、最新のエネルギー消費率を「○○km/リットル」と表示し、平均速度の変化に応じて変化する提案エネルギー消費率を「+△km/リットル」あるいは「−□km/リットル」などと表示してもよい。
【0038】
このように、提案エネルギー消費率算出部18は、運転者の車両に対する現在の入力を変更すると、最新のエネルギー消費率にどの程度の変化が生じるかを提案エネルギー消費率を含む提案画面81として表示部19に表示する。これにより、運転者は、図4に示すような表示部19の提案画面81を参考に、車両に対する入力を変更することができる。また、例えば車両は、必ずしも速度を減じればエネルギー消費率が改善するとは限らない。図4に示す提案画面81のように最新のエネルギー消費率と、車両に対する入力を変更したときの提案エネルギー消費率とを対比して表示部19に表示することにより、運転者はどの程度の入力をすれば、すなわちどの程度の速度で車両を走行させればエネルギー消費率が向上するのかを容易に認識することができる。図4に示す場合、平均速度を「3km/h」増すことにより、エネルギー消費率が「0.5km/リットル」改善することが認識される。
【0039】
さらに、制御装置11は、この提案エネルギー消費率を含む提案画面81を表示部19に表示した後、運転者がどのような操作を車両に入力し、車両がどのような挙動を示したかを提案後走行履歴および提案後操作履歴として蓄積する。これにより、提案エネルギー消費率算出部18は、蓄積された提案後走行履歴および提案後操作履歴も含めて提案エネルギー消費率を算出することができる。その結果、提案エネルギー消費率算出部18は、次回の提案エネルギー消費率の算出に際し、提案エネルギー消費率の提示に対する運転者の活用度合いも考慮する。したがって、より正確な提案エネルギー消費率の提案を図ることができる。
【0040】
(具体例2)
具体例2として、具体例1で説明した車両にさらにナビゲーション装置21のデータの利用も含めた例について説明する。具体例2の概念図を図5に示す。
車両にナビゲーション装置21を備える場合、データ蓄積部14は経路情報蓄積手段として、車両が過去に走行した経路や車両を案内した経路を蓄積している。制御装置11は、このデータ蓄積部14に蓄積された過去の案内履歴と、現在の車両の運転で走行している経路とを対比する。そして、制御装置11は、案内履歴と現在の経路との対比から、現在走行している経路が一般道であるのか高速道路であるのかなど、道路の属性を判断する。また、制御装置11は、過去の案内履歴と現在の経路とを対比して、現在の経路におけるエネルギー消費率を予測する。すなわち、過去の案内履歴において現在の経路と同一の走行経路が含まれているとき、過去の案内履歴におけるエネルギー消費率を参照して、現在の経路におけるエネルギー消費率を予測する。
【0041】
また、提案エネルギー消費率算出部18は、提案エネルギー消費率を算出するとき、過去の天候や時間帯だけでなく、ナビゲーション装置21から提供される走行経路の特性や案内履歴も参照して提案エネルギー消費率を算出する。これにより、車両が走行する経路の特性も含め、より精度の高い提案エネルギー消費率が算出される。なお、提案エネルギー消費率の算出にナビゲーション装置21から提供される走行経路の特性や案内履歴を参照する点以外は、具体例1と同様であるので説明を省略する。
【0042】
このような具体例2の場合、ナビゲーション装置21は車両の走行経路を案内する。データ蓄積部14は、このナビゲーション装置21が案内した走行経路を案内履歴として蓄積するとともに、過去に走行した経路も蓄積する。エネルギー消費率算出部17は、ナビゲーション装置21が現在案内している走行経路を加味してエネルギー消費率を算出する。また、提案エネルギー消費率算出部18は、データ蓄積部14に蓄積されている案内履歴を用いて現在案内している最新の走行経路を走破するのに必要な必要走破エネルギーを算出する。例えば夏場に空調装置51が冷房運転しているとき、案内している走行経路の前途に標高が高く気温が低い特定地点が含まれる場合がある。これは、案内履歴を参照することにより、容易に把握される。このような特定地点を通過する際に空調装置51の運転に必要となるエネルギーは小さくなるのに対し、特定地点に到達するまで登坂が続く際に車両の走行のために必要となるエネルギーは大きくなる。このように、仮に走行距離が同一であっても、走行経路に応じてエネルギー消費率は相違する。そこで、提案エネルギー消費率算出部18は、データ蓄積部14に蓄積された案内履歴を利用してナビゲーション装置21が案内する走行経路の走破に必要な必要走破エネルギーを算出する。そして、提案エネルギー消費率算出部18は、この算出した必要走破エネルギーに基づいて提案エネルギー消費率を算出する。このように、案内履歴を用いて必要走破エネルギーを算出することにより、運転者は目的地に到達するためには車両の操作や装備の作動状態をどのようにすればよいかを認識可能となる。
【0043】
(具体例3)
具体例3として、モータを搭載した車両において、空調装置の設定温度を提案する例について説明する。具体例の概念図を図6に示す。
挙動取得部12および操作取得部13による各種データの取得は、具体例1と同様であるので説明を省略する。また、制御装置11は、具体例1と同様に取得した各種のデータから、車両の現在の走行挙動や現在のエネルギー消費率を算出する。空調装置51は、環境データ取得部15で取得した最新の外気温および最新の内気温に基づいて、車室内の温度を設定温度である「26℃」に制御している。また、具体例1と同様に、制御装置11は、データ蓄積部14に蓄積された走行データおよび操作データから、過去平均の走行挙動や過去平均のエネルギー消費率を算出する。さらに、具体例2と同様にナビゲーション装置21を備える場合、データ蓄積部14は、経路情報蓄積手段として車両が過去に走行した経路や車両を案内した経路を蓄積している。そこで、制御装置11は、このデータ蓄積部14に蓄積された過去の案内履歴と、現在の車両の運転で走行している経路とを対比する。
【0044】
これら蓄積された各種のデータおよび取得された各種のデータから、提案エネルギー消費率算出部18は提案エネルギー消費率を算出する。このとき、提案エネルギー消費率算出部18は、現在の走行挙動や現在のエネルギー消費率と過去に蓄積されたデータとを対比する。また、提案エネルギー消費率算出部18は、ナビゲーション装置21の案内履歴なども考慮する。そして、提案エネルギー消費率算出部18は、運転者が装備である空調装置51の作動状態を変更、つまり空調温度の設定温度を変更したとき、エネルギー消費率がどの程度変化するかを提案エネルギー消費率から導き出した走行可能距離(km)の増減を図7に示す提案画面82として表示部19に表示する。
【0045】
この場合、最新の設定温度である「26℃」に対し、例えば設定温度を「25℃」としたとき、提案エネルギー消費率算出部18は、提案エネルギー消費率から導き出される走行可能距離が「6km」減少すると算出する。同様に、提案エネルギー消費率算出部18は、設定温度を「24℃」としたとき、走行可能距離が「15km」減少すると算出する。一方、提案エネルギー消費率算出部18は、設定温度を「27℃」としたとき、走行可能距離が「5km」増加すると算出する。また、提案エネルギー消費率算出部18は、設定温度を「28℃」としたとき、走行可能距離が「10km」増加すると算出する。
【0046】
このように、提案エネルギー消費率算出部18は、装備である空調装置51の作動状態すなわち設定温度を変更すると、最新のエネルギー消費率にどの程度の変化が生じるかを提案エネルギー消費率から導き出される走行可能距離の提案画面82として表示部19に表示する。これにより、運転者は、図7に示すような表示部19の提案画面82を参考に、装備の作動状態すなわち空調装置51の設定温度を変更することができる。例えば、運転者によって、走行距離が「10km」伸びるのであれば快適性を犠牲にして設定温度を「28℃」にしても構わないと判断したり、走行距離が「15km」の短縮ですむのであれば快適性を優先して設定温度を「24℃」にすると判断することが考えられる。本具体例では、空調装置51の設定温度に応じた走行可能距離を提案することにより、運転者は空調装置51の設定温度と提案された走行可能距離との関係から快適性と航続性能とを両立した判断が可能となる。また、ナビゲーション装置21と連動することにより、現在の走行経路の前途におけるエネルギー消費量も考慮して、提案エネルギー消費率から導き出される走行可能距離を把握することも可能である。その結果、運転者は、走行経路の途中における充電スタンドまでの距離や充電時間を含めた走行時間を総合的に判断して、快適性と航続性能とを両立することができる。
【0047】
(具体例4)
具体例4として、モータを搭載した車両において、空調装置の設定風量を提案する例について説明する。具体例4の場合、空調装置の設定風量の変更を提案する点で具体例3と異なる。したがって、具体例3との相違点を中心に説明する。具体例4の概念図を図8に示す。
具体例4の場合、空調装置51は、環境データ取得部15で取得した最新の外気温および最新の内気温に基づいて、車室内の温度を設定風量である「中」に制御している。そして、提案エネルギー消費率算出部18は、運転者が装備である空調装置51の作動状態を変更、つまり空調温度の設定風量を変更したとき、エネルギー消費率がどの程度変化するかを提案エネルギー消費率から導き出した走行可能距離(km)の増減を図9に示す提案画面83として表示部19に表示する。
【0048】
ここで、最新の設定風量である「中」に対し、例えば設定風量を「強」にしたとき、提案エネルギー消費率算出部18は、提案エネルギー消費率から導き出される走行可能距離が「5km」減少すると算出する。同様に、提案エネルギー消費率算出部18は、設定風量を「最強」としたとき、走行可能距離が「10km」減少すると算出する。一方、提案エネルギー消費率算出部18は、設定風量を「弱」としたとき、走行可能距離が「5km」増加すると算出する。また、提案エネルギー消費率算出部18は、設定風量を「微弱」としたとき、走行可能距離が「10km」増加すると算出する。
【0049】
このように、提案エネルギー消費率算出部18は、装備である空調装置51の作動状態すなわち設定風量を変更すると、最新のエネルギー消費率にどの程度の変化が生じるかを提案エネルギー消費率から導き出される走行可能距離の提案画面83として表示部19に表示する。これにより、運転者は、図9に示すような表示部19の提案画面83を参考に、装備の作動状態すなわち空調装置51の設定風量を変更することができる。本具体例では、空調装置51の設定風量に応じた走行可能距離を提案することにより、運転者は空調装置51の設定風量と提案された走行可能距離との関係から快適性と航続性能とを両立した判断が可能となる。また、ナビゲーション装置21と連動することにより、現在の走行経路の前途におけるエネルギー消費量も考慮して、提案エネルギー消費率から導き出される走行可能距離を把握することも可能である。その結果、運転者は、走行経路の途中における充電スタンドまでの距離や充電時間を含めた走行時間を総合的に判断して、快適性と航続性能とを両立することができる。
【0050】
(その他の具体例)
上記の具体例1から具体例4は、あくまでも運転支援システム10から提案する一部の具体例を示したものである。上記の他にも運転支援システム10は、次のような提案を行ってもよい。
例えば外気温が「36℃」であり、空調装置51の設定温度が「26℃」および設定風量が「中」であるとする。このとき、外気温と設定温度が大きいため、設定温度を上昇させても快適性は大きく低下しない。場合によっては、設定温度を「28℃」とし設定風量を「強」とした方が快適性が向上することも考えられる。この場合、空調装置51の設定温度を「26℃」から「28℃」に変更することにより走行可能距離が10km増加し、設定風量を「中」から「強」に変更することにより走行可能距離が5km減少するとする。そうすると、全体として走行可能距離は、5km増加することになる。このように、快適性を大きく損なうことなく走行可能距離の増加が見込まれる場合、提案エネルギー消費率算出部18は、変化する走行可能距離を表示部19に表示し、積極的に運転者に空調装置51の設定変更を提案してもよい。
【0051】
また、モータを搭載した車両において充電池の残量が予め設定した下限値を下回ると、提案エネルギー消費率算出部18は、提案エネルギー消費率に基づいて走行可能距離を算出し、運転者に空調装置51などの車両の装備の作動停止を促してもよい。さらに、モータを搭載した車両のナビゲーション装置21との連携において、提案エネルギー消費率算出部18は、検出した充電池の残量では経路案内の目的地に到達できないと判断したとき、運転者に空調装置51などの車両の装備の作動停止を促してもよい。
また、モータを搭載した車両のナビゲーション装置21との連携において、過去に走行した経路の外気温を蓄積しておいてもよい。提案エネルギー消費率算出部18は、蓄積した外気温のデータから走行経路の前途の気象環境を予め把握し、その前途の気象環境に応じた空調装置51の設定などを運転者に提案してもよい。
【0052】
さらに、上記の複数の具体例では、車両の走行状態または空調装置51の作動状態に基づいて提案エネルギー消費率を算出する例について説明した。しかし、提案エネルギー消費率算出部18は、空調装置51に限らず、オーディオ装置52や照明装置53の作動状態に基づいて提案エネルギー消費率を算出してもよい。例えば、提案エネルギー消費率算出部18は、オーディオ装置52の音量や表示部19に表示する表示の照度の変更に対して、提案エネルギー消費率を算出する構成としてもよい。また、提案エネルギー消費率算出部18は、照明装置53を構成するヘッドランプや室内灯の照度や点滅などの変更に対して、提案エネルギー消費率を算出する構成としてもよい。このように、提案エネルギー消費率算出部18は、車両の走行状態や車両の各種の装備に基づいて提案エネルギー消費率を算出することができる。
【0053】
以上説明した一実施形態では、データ蓄積部14は、挙動取得部12で取得した走行データを走行履歴として蓄積し、操作取得部13で取得した操作データを操作履歴として経時的に蓄積する。エネルギー消費率算出部17は、最新の走行データ、最新の環境データおよび最新の作動状態に基づいてエネルギー消費率を算出する。また、提案エネルギー消費率算出部18は、データ蓄積部14に蓄積されている走行履歴および操作履歴に基づいて、運転者の操作によって変化する提案エネルギー消費率を算出する。すなわち、提案エネルギー消費率算出部18は、運転者が例えば加速や巡航速度など運転者が車両に入力する操作、または例えば空調装置51の設定温度の変更、オーディオ装置52の設定の変更、あるいは照明装置53の点滅など装備の作動状態を変更したとき、過去の走行履歴および走行履歴に基づいて、提案エネルギー消費率を算出する。表示部19は、エネルギー消費率算出部17で算出した最新の運転環境および最新の運転状態に基づくエネルギー消費率と、提案エネルギー消費率算出部18で算出した過去の履歴に基づく提案エネルギー消費率とを対比して表示する。これにより、運転者は、車両への操作をどの程度変更、あるいは装備の作動状態をどの程度変更するとエネルギー消費率がどのように変化するかを可視的に認識可能となる。これにより、運転者は、快適性とエネルギー消費率とを両立するための材料が得られる。したがって、空調に限らず車両の挙動や車両の装備の作動状態を変更することによってエネルギー消費率にどの程度の変化があるかを運転者に提案することができる。
【0054】
また、一実施形態では、ナビゲーション装置21は車両の走行経路を案内する。データ蓄積部14は、このナビゲーション装置21が案内した走行経路を案内履歴として蓄積するとともに、過去に走行した経路も蓄積する。エネルギー消費率算出部17は、ナビゲーション装置21が現在案内している走行経路を加味してエネルギー消費率を算出する。また、提案エネルギー消費率算出部18は、データ蓄積部14に蓄積されている案内履歴を用いて現在案内している最新の走行経路を走破するのに必要な必要走破エネルギーを算出する。案内履歴を用いて必要走破エネルギーを算出することにより、運転者は目的地に到達するためには車両の操作や装備の作動状態をどのようにすればよいかを認識可能となる。したがって、目的地への到達のために、快適性とエネルギー消費率とを両立するための材料を提供することができる。
【0055】
さらに一実施形態では、データ蓄積部14は、提案後走行履歴および提案後操作履歴を蓄積する。すなわち、データ蓄積部14は、提案エネルギー消費率を運転者へ提案した後、運転者が車両や装備をどのように操作したかを提案後走行履歴および提案後操作履歴として蓄積する。そして、エネルギー消費率算出部17および提案エネルギー消費率算出部18は、いずれもデータ蓄積部14に蓄積した提案後走行履歴および提案後操作履歴に基づいてエネルギー消費率および提案エネルギー消費率を算出する。これにより、エネルギー消費率算出部17および提案エネルギー消費率算出部18は、運転者や車両の個性も加味してエネルギー消費率および提案エネルギー消費率を算出する。したがって、車両の走行距離が伸びるほど運転者や車両の個性が加味されていき、より精度の高い提案を行うことができる。
【0056】
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。例えば、上記実施形態では、報知手段として表示部19を例に説明した。しかし、報知手段は、表示部19のように視覚的に情報を伝達する手段に代えて、例えば音声により聴覚的に情報を伝達する手段であってもよい。具体的には、例えば表示部19に表示する情報を、車両に搭載したスピーカなどから音声で伝達する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0057】
図面中、10は運転支援システム、12は挙動取得部(挙動取得手段)、13は操作取得部(操作取得手段)、14はデータ蓄積部(運転情報蓄積手段、経路情報蓄積手段、提後運転情報蓄積手段)、15は環境データ取得部(環境データ取得手段)、16は作動状態取得部(作動状態取得手段)、17はエネルギー消費率算出部(エネルギー消費率算出手段)、18は提案エネルギー消費率算出部(提案エネルギー消費率算出手段)、19は表示部(報知手段)、21はナビゲーション装置(走行経路案内手段)、51は空調装置(装備)、52はオーディオ装置(装備)、53は照明装置(装備)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の挙動を走行データとして取得する挙動取得手段と、
前記車両の運転者により入力された操作を操作データとして取得する操作取得手段と、
前記車両の内部および前記車両の外部の少なくとも温度を含む環境データを取得する環境データ取得手段と、
前記挙動取得手段で取得した走行データを走行履歴として、および前記操作取得手段で取得した操作データを操作履歴として経時的に蓄積する運転情報蓄積手段と、
前記車両の装備の作動状態を作動状態データとして取得する作動状態取得手段と、
前記挙動取得手段で取得した最新の走行データ、前記操作取得手段で取得した最新の操作データ、前記環境データ取得手段で取得した最新の環境データ、および前記作動状態取得手段で取得した最新の作動状態データに基づいて、前記車両における最新の単位エネルギー当たりの走行可能距離を、エネルギー消費率として算出するエネルギー消費率算出手段と、
前記運転情報蓄積手段に蓄積されている前記走行履歴および前記操作履歴に基づいて、前記運転者が前記車両に入力する操作または前記装備の作動状態を変更したとき、前記車両における単位エネルギー当たりの走行可能距離を提案エネルギー消費率として算出する提案エネルギー消費率算出手段と、
前記提案エネルギー消費率算出手段で算出した前記提案エネルギー消費率を、前記エネルギー消費率算出手段で算出した前記エネルギー消費率と対比可能に報知する報知手段と、
を備える運転支援システム。
【請求項2】
前記車両の走行経路を案内する走行経路案内手段と、
前記走行経路案内手段で案内された走行経路を案内履歴として経時的に蓄積する経路情報蓄積手段と、をさらに備え、
前記エネルギー消費率算出手段は、前記走行経路案内手段が案内している走行経路を加味して前記エネルギー消費率を算出し、
前記提案エネルギー消費率算出手段は、前記経路情報蓄積手段に蓄積されている前記案内履歴を用いて前記走行経路案内手段が案内している最新の走行経路を走破するのに必要な必要走破エネルギーを算出し、前記必要走破エネルギーに基づいて前記提案エネルギー消費率を算出する請求項1記載の運転支援システム。
【請求項3】
前記報知手段で前記提案エネルギー消費率を報知した後に前記挙動取得手段で取得した前記走行データを提案後走行履歴として、および前記操作取得手段で取得した前記操作データを提案後操作履歴として蓄積する提案後運転情報蓄積手段をさらに備え、
前記エネルギー消費率算出手段は、前記提案後運転情報蓄積手段に蓄積した前記提案後操作履歴に基づいて前記エネルギー消費率を算出し、
前記提案エネルギー消費率算出手段は、前記提案後運転情報蓄積手段に蓄積した前記提案後操作履歴に基づいて前記提案エネルギー消費率を算出する請求項1または2記載の運転支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−128553(P2012−128553A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277945(P2010−277945)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】