説明

過熱判定回路及び過熱保護回路

【課題】コスト増加を抑えつつ、半導体素子の温度が最大耐熱温度を超える異常を正確に判定することが可能な過熱判定回路及びその過熱判定回路を備える過熱保護回路を提供することを目的とする。
【解決手段】半導体素子2近傍の雰囲気温度に応じた温度検出値V2を出力する温度検出部5と、半導体素子2のオフ時に半導体素子2近傍の雰囲気温度が正常時の雰囲気温度になるときの温度検出値V2を下限値とし、半導体素子2のオン時に半導体素子2の温度が半導体素子2の最大耐熱温度になるときの温度検出値V2を上限値とする閾値V4を、半導体素子2の出力電流に応じて変更する閾値出力部6と、温度検出値V2が閾値V4を超えると、異常と判定するコンパレータ7とを備えて過熱判定回路3を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の温度が最大耐熱温度を超える異常を判定する過熱判定回路及びその過熱判定回路を備える過熱保護回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の過熱判定回路として、例えば、半導体素子近傍の温度センサから出力される温度検出値が閾値を超えると、異常を判定するものがある。
このような過熱判定回路では、半導体素子がオンして半導体素子が発熱する状態になると、図3(a)に示すように、温度センサから出力される温度検出値が半導体素子の温度に対して応答遅れになるため、その応答遅れを考慮して閾値が設定される。例えば、温度センサとしてのダイオードから出力される温度検出値の変化率に応じて閾値が設定される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、半導体素子の出力電流が急に高くなったり、図3(b)に示すように、半導体素子近傍の雰囲気温度が正常時の雰囲気温度(半導体素子のオン時に半導体素子の温度が最大耐熱温度を超えないときの雰囲気温度範囲)よりも高い状態で半導体素子がオンになると、温度センサの応答遅れにより温度検出値が閾値を超える前に半導体素子の温度が最大耐熱温度を超えてしまい半導体素子が破損してしまうおそれがある。
【0004】
そこで、半導体素子近傍の雰囲気温度の異常を検出するための温度センサを追加することや最大耐熱温度が高い半導体素子を採用することも考えられるが、これらの構成ではコスト増大が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−237331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、コスト増加を抑えつつ、半導体素子の温度が最大耐熱温度を超える異常を正確に判定することが可能な過熱判定回路及びその過熱判定回路を備える過熱保護回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の過熱判定回路は、半導体素子近傍の雰囲気温度に応じた温度検出値を出力する温度検出手段と、前記半導体素子のオフ時に前記半導体素子近傍の雰囲気温度が正常時の雰囲気温度になるときの前記温度検出値を下限値とし、前記半導体素子のオン時に前記半導体素子の温度が前記半導体素子の最大耐熱温度になるときの前記温度検出値を上限値とする閾値を、前記半導体素子の出力電流に応じて変更し出力する閾値出力手段と、前記温度検出手段から出力される温度検出値が前記閾値出力手段から出力される閾値を超えると、異常と判定する異常判定手段とを備える。
【0008】
これにより、閾値が半導体素子の温度変化に応じて変更されるため、温度検出手段の応答遅れの影響を無くすことができる。そのため、半導体素子の出力電流が急に高くなったり、半導体素子近傍の雰囲気温度が正常時の雰囲気温度を超えると、すぐに温度検出値が閾値を超えるため、半導体素子の温度が最大耐熱温度を超える異常を正確に判定することができる。また、半導体素子近傍の雰囲気温度の異常を検出するための温度センサを追加したり、最大耐熱温度が高い半導体素子を採用したりする必要がないため、コスト増大を抑えることができる。
【0009】
また、本発明の過熱保護回路は、前記過熱判定回路と、前記異常判定手段により異常と判定されると、前記半導体素子を停止する駆動回路とを備える。
これにより、半導体素子の温度が最大耐熱温度を超える前において、半導体素子を停止させることができるため、過熱による半導体素子の破損を防止することができる。
【0010】
また、前記閾値出力手段は、一定電圧を分圧する複数の抵抗と、前記複数の抵抗により分圧された電圧を前記下限値として前記異常判定手段に出力する第1のダイオードと、前記半導体素子の出力電流により充電されるコンデンサと、前記コンデンサにかかる電圧を前記閾値として前記異常判定手段に出力する第2のダイオードと、前記コンデンサにかかる電圧を前記上限値にクランプするツェナーダイオードとを備えるように構成してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コスト増加を抑えつつ、半導体素子の温度が最大耐熱温度を超える異常を正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の過熱保護回路を示す図である。
【図2】本実施形態の過熱判定回路における温度検出値と閾値とを示す図である。
【図3】従来の過熱判定回路における温度検出値と閾値とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の実施形態の過熱保護回路を示す図である。
図1に示す過熱保護回路1は、半導体素子2の温度が最大耐熱温度を超える異常を判定する過熱判定回路3と、半導体素子2の駆動を制御する駆動回路4とを備えて構成される。なお、図1に示す半導体素子2はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であるが、半導体素子2の種類は特に限定されない。
【0014】
過熱判定回路3は、温度検出部5(温度検出手段)と、閾値出力部6(閾値出力手段)と、コンパレータ7(異常判定手段)とを備えて構成される。
駆動回路4は、半導体素子2のオン、オフを制御する。
【0015】
温度検出部5は、互いに直列接続されるサーミスタ8及び抵抗9により構成される。サーミスタ8と抵抗9は一定電圧V1を分圧し半導体素子2近傍の温度に対応した温度検出値V2をコンパレータ7のプラスの入力端子に入力する。なお、温度センサはサーミスタ8に限定されない。
【0016】
閾値出力部6は、抵抗10〜14と、ダイオード15(第1のダイオード)と、ダイオード16(第2のダイオード)と、ツェナーダイオード17と、コンデンサ18とを備えて構成される。抵抗10と抵抗11は互いに直列接続され、一定電圧V3を分圧する。抵抗12とコンデンサ18は互いに直列接続され、抵抗12には半導体素子2の出力電流が流れる。ツェナーダイオード17のカソードは抵抗13を介して抵抗12とコンデンサ18の接続点に接続され、ツェナーダイオード17のアノードはグランドに接続されている。ダイオード15のアノードは抵抗10、11の接続点に接続され、ダイオード15のカソードはダイオード16のカソードに接続されている。ダイオード16のアノードは抵抗12とコンデンサ18の接続点に接続されている。ダイオード15、16の接続点はコンパレータ7のマイナスの入力端子に接続されているとともに、抵抗14を介してグランドに接続されている。ダイオード15、16の接続点にかかる電圧は閾値V4としてコンパレータ7のマイナスの入力端子に入力される。また、半導体素子2の出力電流によりコンデンサ18が充電されるが、コンデンサ18にかかる電圧はツェナーダイオード17の降伏電圧にクランプされる。
【0017】
コンパレータ7は、プラスの入力端子に入力される温度検出値V2がマイナスの入力端子に入力される閾値V4よりも大きくなると、ハイレベルの保護停止信号を出力する。
駆動回路4は、コンパレータ7からハイレベルの保護停止信号が出力されると、すなわち、半導体素子2の温度が最大耐熱温度を超える異常を過熱判定回路3が判定すると、半導体素子2を停止する。
【0018】
半導体素子2のオフ時では、コンデンサ18は充電されないため、抵抗10、11により分圧される電圧に基づく閾値V4がコンパレータ7のマイナスの入力端子に入力される。
【0019】
一方、半導体素子2のオン時では、コンデンサ18が半導体素子2の出力電流により充電されてコンデンサ18にかかる電圧が半導体素子2の温度上昇と共に高くなり、そのコンデンサ18にかかる電圧に基づく閾値V4がコンパレータ7のマイナスの入力端子に入力される。
【0020】
例えば、半導体素子2のオフ時において半導体素子2近傍の雰囲気温度が正常時の雰囲気温度(半導体素子2のオン時に半導体素子2の温度が最大耐熱温度を超えないときの雰囲気温度範囲)になるときの温度検出値V2と、閾値V4とが互いに同じになるように抵抗10、11のそれぞれの抵抗値を設定する。これにより、図2(a)に示すように、閾値V4の下限値が設定され、半導体素子2のオフ時において温度検出値V2が閾値V4を超えると、半導体素子2がオンになる前に半導体素子2近傍の雰囲気温度が正常時の雰囲気温度よりも高くなったことを判定することができる。そのため、半導体素子2のオン時に半導体素子2の温度が最大耐熱温度を超える異常を事前に判定することができる。
【0021】
また、例えば、半導体素子2のオン時においてコンデンサ18にかかる電圧の上昇の傾きが温度検出部5で検出される温度上昇傾きと同じになるように抵抗12の抵抗値及びコンデンサ18の容量値を設定するものとする。これにより、図2(a)に示すように、半導体素子2のオン時において、閾値V4を半導体素子2の温度変化に応じて変更することができる。
【0022】
また、例えば、半導体素子2のオン時において半導体素子2の温度が半導体素子2の最大耐熱温度になるときの温度検出値V2と、閾値V4とが互いに同じ値になるようにツェナーダイオード17の降伏電圧を設定するものとする。これにより、図2(a)に示すように、閾値V4の上限値が設定され、半導体素子2のオン時において温度検出値V2が閾値V4を超えると、半導体素子2のオン時に半導体素子2の温度が最大耐熱温度を超える異常を判定することができる。
【0023】
このように、本実施形態の過熱判定回路3では、閾値出力部6により閾値V4が半導体素子2の温度変化に応じて変更されるため、サーミスタ8の応答遅れの影響を無くすことができる。これにより、図2(b)に示すように、半導体素子2の出力電流が急に高くなったり、図2(c)に示すように、半導体素子2近傍の雰囲気温度が正常時の雰囲気温度を超えると、すぐに温度検出値V2が閾値V4を超え、半導体素子2の温度が最大耐熱温度を超える異常を正確に判定することができる。また、半導体素子2近傍の雰囲気温度の異常を検出するための温度センサを追加したり、最大耐熱温度が高い半導体素子2を採用したりする必要がないため、コスト増大を抑えることができる。
【0024】
また、本実施形態の過熱保護回路1は、雰囲気温度異常時又は半導体素子2の出力異常時において、半導体素子2の温度が最大耐熱温度を超える前において、半導体素子2を停止させることができるため、過熱による半導体素子2の破損を防止することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 過熱保護回路
2 半導体素子
3 過熱判定回路
4 駆動回路
5 温度検出部
6 閾値出力部
7 コンパレータ
8 サーミスタ
9〜14 抵抗
15、16 ダイオード
17 ツェナーダイオード
18 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子近傍の雰囲気温度に応じた温度検出値を出力する温度検出手段と、
前記半導体素子のオフ時に前記半導体素子近傍の雰囲気温度が正常時の雰囲気温度になるときの前記温度検出値を下限値とし、前記半導体素子のオン時に前記半導体素子の温度が前記半導体素子の最大耐熱温度になるときの前記温度検出値を上限値とする閾値を、前記半導体素子の出力電流に応じて変更し出力する閾値出力手段と、
前記温度検出手段から出力される温度検出値が前記閾値出力手段から出力される閾値を超えると、異常と判定する異常判定手段と、
を備える過熱判定回路。
【請求項2】
請求項1に記載の過熱判定回路であって、
前記閾値出力手段は、
一定電圧を分圧する複数の抵抗と、
前記複数の抵抗により分圧された電圧を前記下限値として前記異常判定手段に出力する第1のダイオードと、
前記半導体素子の出力電流により充電されるコンデンサと、
前記コンデンサにかかる電圧を前記閾値として前記異常判定手段に出力する第2のダイオードと、
前記コンデンサにかかる電圧を前記上限値にクランプするツェナーダイオードと、
を備える過熱判定回路。
【請求項3】
半導体素子近傍の雰囲気温度に応じた温度検出値を出力する温度検出手段と、前記半導体素子のオフ時に前記半導体素子近傍の雰囲気温度が正常時の雰囲気温度になるときの前記温度検出値を下限値とし、前記半導体素子のオン時に前記半導体素子の温度が前記半導体素子の最大耐熱温度になるときの前記温度検出値を上限値とする閾値を、前記半導体素子の出力電流に応じて変更し出力する閾値出力手段と、前記温度検出手段から出力される温度検出値が前記閾値出力手段から出力される閾値を超えると、異常と判定する異常判定手段とを備える過熱判定回路と、
前記異常判定手段により異常と判定されると、前記半導体素子を停止する駆動回路と、
を備える過熱保護回路。
【請求項4】
請求項3に記載の過熱保護回路であって、
前記閾値出力手段は、
一定電圧を分圧する複数の抵抗と、
前記複数の抵抗により分圧された電圧を前記下限値として前記異常判定手段に出力する第1のダイオードと、
前記半導体素子の出力電流により充電されるコンデンサと、
前記コンデンサにかかる電圧を前記閾値として前記異常判定手段に出力する第2のダイオードと、
前記コンデンサにかかる電圧を前記上限値にクランプするツェナーダイオードと、
を備える過熱保護回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−9320(P2011−9320A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149290(P2009−149290)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】