説明

道路プリンタ

【課題】分解及び組み立てを容易に実施可能なシンプルな構成でありながら、塗布剤の吐出圧及び吐出量を自在に調整可能であり、適正な厚みを有する道路標示を形成可能な道路プリンタを提供する。
【解決手段】道路プリンタ10は、路面Rに塗布される道路標識用の塗布剤Pを圧送するための圧送装置50を備えており、圧送装置50から吐出幅可変装置100を経由して吐出された塗布剤Pを直接的あるいは間接的に路面Rに塗布する。圧送装置50は、一軸偏心ねじポンプ機構を備えたものであり、駆動機から動力を受けて偏心回転する雄ねじ型のロータと、内周面が雌ねじ型に形成されたステータとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路標示を施工するために用いる道路プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されている噴射式道路標示塗布装置、あるいは特許文献2に開示されている道路用ライン標示の施工装置等の装置が、道路標示を施工するために使用されている。
【0003】
特許文献1の噴射式道路標示塗布装置は、下方に塗布剤の吐出口を有するホッパーと、吐出口を開閉するための塗布剤吐出口シャッターと、塗布剤を噴射するために設けられた一対の回転体と、ホッパーの塗布剤供給口に連結された塗布剤収納ケースとを有する。この噴射式道路標示塗布装置は、所定量の塗布剤を塗布剤収納ケースからホッパー内に供給することによりホッパー内に準備される塗布剤の量を常に略一定に確保し、吐出圧を略一定に維持しようとするものである。
【0004】
また、特許文献2に開示されている道路用ライン標示の施工装置は、塗布剤の塗布厚を調整することにより、凹凸を有する道路標示を形成することができるようにしたものである。この道路用ライン標示の施工装置は、台車上に設けられた塗料タンクに付設されたシューの塗料供給口に、横移動する水平シャッターと上下移動する垂直シャッターを設けた構造とされている。この施工装置は、水平シャッターを開いて塗料を一定厚さに連続的に塗布し、次いで、垂直シャッターを下降させ、その先端刃口により予め路面に塗布された塗布剤を掻き取ることにより凹部を断続的に形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−140215号公報
【特許文献2】特開2000−144630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示されている噴射式道路標示塗布装置においては、塗布剤収納ケースからホッパーに向けて塗布剤を常時供給し、ホッパー内における塗布剤の残量を略一定に維持することにより、塗布剤の吐出圧を一定に維持するようにしている。しかしながら、塗布剤収納ケース内に準備されている塗布剤の残量が減少する等して、ホッパーに対する塗布剤の供給量と塗布のために噴射される塗布剤の噴射量とのバランスがひとたび崩れてしまうと、ホッパー内における塗布剤の残量が不均一になり、吐出圧が不安定になってしまう等の問題が生じうる。
【0007】
また、上記特許文献2に開示されている道路用ライン標示の施工装置においては、一旦路面に塗布された塗布剤を垂直シャッターにより掻き取ることより凹部を形成しようとするものであるため、凹部が形成された部分において塗布剤の表面や凹部をなす縁が粗く形成されてしまう等の問題が生じうる。凹部の表面あるいは縁が粗く形成されると、美観が損なわれるばかりか、路面を走行する車輪との間に生じる摩擦等の影響により塗布剤が剥がれやすくなる可能性がある。また、特許文献2の施工装置では、路面に塗布される塗布剤の厚みを2段階に調整できるものの、所定の厚みを無段階に調整できる訳ではない。そのため、施工現場等に応じて塗布剤の厚みを適宜調整することができないという問題がある。
【0008】
また、路面に塗布される塗布剤は、溶融させて使用されるものであり粘性が高い。そのため、道路標示塗布装置においては、容易に分解及び組み立てが可能であり、清掃等がしやすい構造であることが望まれる。しなしながら、上述した従来技術の塗布装置等は、装置構成が複雑であるため、清掃等のメンテナンスに相当の手間を要する。
【0009】
そこで、本発明は、分解及び組み立てを容易に実施可能なシンプルな構成でありながら、塗布剤の吐出圧及び吐出量を自在に調整可能であり、適正な厚みを有する道路標示を形成可能な道路プリンタの提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解消すべく提供される本発明の道路プリンタは、路面に塗布される道路標識用の塗布剤を圧送するための圧送装置を備えており、前記圧送装置の吐出部から吐出された塗布剤を直接的あるいは間接的に路面に塗布することにより路面上に道路標示をプリント可能であることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の道路プリンタは、圧送装置を用いて圧送された塗布剤を路面に塗布することにより道路標示を路面上にプリント可能とされている。また、圧送装置の動作制御を行うことにより、塗布剤の吐出量及び吐出圧を自在に調整することができる。従って、本発明の道路プリンタによれば、全体に亘って略均一の厚みとなるように路面に塗布剤を塗布する他、所定位置における塗布剤の厚みを他と相違させる等、塗布剤の厚みを自在に調整しつつ道路標示を形成することができる。なお、本発明の道路プリンタは、圧送装置から吐出された塗布剤を路面に対して直接的に塗布するものであっても、間接的に塗布するものであっても良い。
【0012】
また、本発明の道路プリンタは、圧送装置を主要な構成とするものであり、構造が極めてシンプルである。そのため、本発明の道路プリンタは、分解及び清掃等のメンテナンスを容易に実施することができる。
【0013】
ここで、道路標示の線幅を調整する場合において、塗布剤の塗布幅を調整できない場合には、所定の塗布幅のラインを複数、並列に形成する等の方策を講じる必要があり手間を要する。また、このようにラインを複数列に亘って並列に形成する場合には、各ラインの境界部分に隙間が形成されてしまう可能性がある。また、隙間が形成されないようにラインを並列に形成するために、各ラインの境界部分を重複させる等することが考えられる。しなしながら、このようにして道路標示を形成した場合には、隙間の有無にかかわらず見栄えが良くないという問題がある。また、ライン同士の間に隙間が形成されると、隙間に雨水等が溜まってしまうという問題がある。
【0014】
そこで、かかる知見に基づいて提供される上述した本発明の道路プリンタは、前記吐出部に、前記塗布剤の吐出幅を調整可能な吐出幅可変装置が設けられたものである。
【0015】
かかる構成とすることにより、道路標示を形成するために路面に塗布される塗布剤の厚みだけでなく、塗布剤の塗布幅も適宜調整することが可能となる。これにより、線幅が太い道路標示を形成する際に複数のラインを並べて形成する等の方策を別途講じる必要がなくなり、線幅の大小によらず容易に道路標示を形成することが可能である。従って、上述したように吐出幅可変装置を設けることにより、塗布剤の塗布作業を軽減し、作業効率を格段に向上させることが可能となる。
【0016】
また、上述したように吐出部に吐出幅可変装置を設ければ、ラインを複数列に亘って形成することにより線幅を調整する場合のように、各ラインの境界部分に隙間あるいは重なりが形成されることを防止できる。これにより、塗布剤の厚みが全幅に亘ってムラ無く、略均一の厚みとなるように塗布剤を塗布して道路標示を形成することが可能である。従って、本発明の道路プリンタによれば、見栄えの良い道路標示を形成することが可能となる。
【0017】
上述した道路プリンタに用いられる前記吐出幅可変装置は、吐出口が形成された吐出口形成部を有し前記吐出口を介して内外が連通した中空の外筒部と、前記外筒部の内部において前記外筒部の周壁に沿って回動可能とされた中空の内筒部とを有し、前記内筒部の周壁には、軸線方向の開口幅及び/又は軸線方向における開口位置が前記内筒部の周方向に変化するように形成された周部開口が、前記内筒部の内外を連通するように形成されており、前記内筒部の内部に前記塗布剤を導入可能であり、前記周部開口と前記吐出口とが重なることにより形成される連通領域から、前記内筒部の内部に導入されている前記塗布剤を吐出可能なものとすることができる。
【0018】
本発明において用いられる吐出幅可変装置は、内筒部の周壁に設けられた周部開口と、外筒部の吐出口形成部に設けられた吐出口とが重なることにより形成された連通領域から塗布剤を吐出することができる。また、本発明で用いられる吐出幅可変装置においては、周部開口の開口幅及び/又は位置が内筒部の周方向に変化しているため、内筒部を回動させることにより連通領域の幅及び/又は連通領域の位置を調整することができる。従って、本発明によれば、内筒部を回動させて連通領域の幅及び/又は位置を調整するだけで吐出幅を所望の大きさに調整すること、及び/又は塗布剤が吐出される位置を所望の位置に調整することが可能となり、吐出幅及び/又は吐出位置の変更による作業効率の低下等の問題を解消することができる。
【0019】
また、本発明において用いられる吐出幅可変装置は、内筒部を回動させることにより吐出幅等を変化させるものであるため、吐出幅等の変更に伴う内部容積の変化が殆ど発生しない。これにより、吐出幅可変装置から塗布剤を吐出する際の吐出圧の変動を最小限に抑制することができる。
【0020】
また、本発明の道路プリンタは、前記圧送装置が複数、並列に配置されており、前記塗布剤を吐出する前記圧送装置の基数を変更することにより、前記塗布剤の塗布幅、及び/又は塗布パターンを調整可能なものとすることも可能である。
【0021】
このような構成とした場合、塗布剤を吐出する圧送装置の基数を変更することにより塗布剤の塗布幅及び塗布パターンのいずれか一方又は双方を調整することができる。これにより、道路標示をなすラインの線幅が大小、道路標示の模様、形状等に応じて別途の方策を講じることなく道路標示を施工することが可能となる。従って、本発明によれば、塗布剤の塗布作業を軽減し、作業効率を格段に向上させることが可能となる。
【0022】
上述した本発明の道路プリンタは、位置を認識可能な位置認識装置と、前記塗布剤の塗布位置を移動させることが可能な移動装置とを備えており、前記位置認識装置の認識結果に基づき前記移動装置を誘導あるいは駆動することが可能なものであっても良い。
【0023】
かかる構成とすることにより、位置認識装置の認識結果に基づき移動装置を誘導あるいは駆動させ、道路標示を形成すべき位置に道路プリンタを移動させることができる。これにより、道路標示を容易かつ正確に位置決めした状態で形成することが可能となる。
【0024】
上述した本発明の道路プリンタは、前記塗布剤を加熱溶融させることが可能な加熱装置を備えているものであることが好ましい。
【0025】
かかる構成によれば、塗布剤を路面に塗布するだけでなく、塗布剤を加熱し溶融させることも可能となる。これにより、塗布剤を用いて道路標示を形成する作業をより一層簡便に行うことが可能となる。なお、加熱装置は、圧送装置に対して上流側、あるいは下流側のいずれに設けられていても良い。
【0026】
また、本発明の道路プリンタにおいて用いられる圧送装置は、回転容積式のポンプによって構成されていることが好ましい。
【0027】
かかる構成によれば、圧送装置による塗布剤の圧送量を精度良く調整し、道路標示を形成する塗布剤の厚みをムラ無く略均一なものとすることが可能となる。
【0028】
なお、圧送装置として用いる回転容積式ポンプとして、ロータリーポンプ、ベーンポンプ等を選択することが可能であるが、塗布剤の圧送量及び圧送圧の調整をより一層精度良く行うためには、一軸偏心ねじポンプ機構を備えたポンプを圧送装置として採用することが好ましい。
【0029】
すなわち、圧送装置は、動力を受けて偏心回転する雄ねじ型のロータと、内周面が雌ねじ型に形成されたステータとを有する一軸偏心ねじポンプ機構を備えたものであることが好ましい。
【0030】
上述したように一軸偏心ねじポンプ機構を備えたポンプを圧送装置として採用した場合には、雌ねじ型に形成されたステータ内において回転する雄ねじ型のロータの回転制御を行うことにより、塗布剤の吐出量及び吐出圧を自在に調整することができる。従って、上述した一軸偏心ねじポンプ機構を圧送装置に採用すれば、全体に亘って略均一の厚みとなるように路面に塗布剤を塗布する他、所定位置における塗布剤の厚みを他と相違させる等、塗布剤の厚みを自在に調整しつつ道路標示を形成することができる。
【0031】
また、上述した一軸偏心ねじポンプ機構は、ロータ及びステータを主要部材として構成されるものであり、構造が極めてシンプルである。これにより、圧送装置の分解及び清掃等のメンテナンスをより一層容易に実施することが可能となる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、分解及び組み立てを容易に実施可能なシンプルな構成でありながら、塗布剤の吐出圧及び吐出量を自在に調整可能であり、適正な厚みを有する道路標示を形成可能な道路プリンタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係る道路プリンタを示す側面図である。
【図2】図1の道路プリンタにおいて採用されている圧送装置を示す断面図である。
【図3】吐出幅可変装置を一部破断した状態を示す斜視図である。
【図4】(a)は図3に示す吐出幅可変装置の断面図であり、(b)は底面図である。
【図5】図3に示す吐出幅可変装置における内筒部の周壁と、外筒部に形成された吐出口との関係を示す説明図である。
【図6】制御装置の構成を示すブロック図である。
【図7】図1に示す道路プリンタによる道路標示の施工方法の流れを示すフローチャートである。
【図8】(a)〜(d)はそれぞれ図1に示す道路プリンタにより形成される道路標示の標示パターンの例を示すパターン図である。
【図9】図1に示す施工方法において実施される施工動作の流れを示すフローチャートである。
【図10】(a)〜(l)はそれぞれ図1に示す塗布装置による塗布パターンの例を示すパターン図である。
【図11】(a)〜(g)はそれぞれ内筒部に形成される周部開口の形状を変更することにより塗布可能な塗布パターンの例を示すパターン図である。
【図12】変形例に係る吐出幅可変装置における内筒部の周壁と、外筒部に形成された吐出口との関係を示す説明図である。
【図13】変形例に係る道路プリンタを構成する圧送装置及び塗布装置を示す側面図である。
【図14】(a)は変形例に係る道路プリンタにおける圧送装置の配置状態を示す正面図であり、(b)は(a)における圧送装置の前後方向への配置状態を示す側面図であり、(c),(d)は(a)に示すように圧送装置を配置した場合における塗布パターンの例を示すパターン図である。
【図15】(a)〜(d)はそれぞれ道路標示の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
続いて、本発明の一実施形態に係る道路プリンタ10について、図面を参照しつつ詳細に説明する。道路プリンタ10は、路面Rに塗布剤Pを塗布することにより、例えば図15(a)〜(d)に示すような道路標示を路面Rにプリント(施工)するための装置であり、移動装置20に対し、貯留容器30と、加熱装置40と、圧送装置50と、制御装置200とを搭載した構成とされている。また、圧送装置50には、吐出幅可変装置100が装着されている。
【0035】
移動装置20は、トラック等の自動車、カート、あるいは台車等によって構成されている。貯留容器30や圧送装置50等の道路プリンタ10の主要な構成部材は、移動装置20の荷台22に搭載されている。また、貯留容器30は、塗布剤Pを貯留するために設けられた中空の容器である。貯留容器30には、加熱装置40が併設されており、貯留容器30内に投入された塗布剤Pを加熱し、溶融させることができる。加熱装置40には、燃料の燃焼を燃焼させる燃焼装置、あるいは通電により発熱する電気ヒータ等を用いることができる。
【0036】
圧送装置50は、貯留容器30に貯留されている塗布剤Pを圧送するものであり、ステータ66及びロータ72を主要構成として形成される一軸偏心ねじポンプ機構55によって主要部が構成された、いわゆる回転容積型のポンプである。図2に示すように、圧送装置50は、ケーシング52の内部にステータ66、ロータ72、及び動力伝達機構78等を収容した構成とされている。ケーシング52は、金属製で筒状の部材であり、長手方向一端側に第一開口部54が設けられている。また、ケーシング52の外周部分には、第二開口部64が設けられている。第二開口部64は、ケーシング52の長手方向中間部分に位置する中間部60においてケーシング52の内部空間に連通している。
【0037】
第一開口部54及び第二開口部64は、それぞれ一軸偏心ねじポンプ機構55の吸込口および吐出口として機能する部分である。圧送装置50は、ロータ72を正方向に回転させることにより、第一開口部54を吐出口、第二開口部64を吸込口として機能させることができる。また、ロータ72を逆方向に回転させることにより、第一開口部54を吸込口、第二開口部64を吐出口として機能させることができる。本実施形態において、圧送装置50は、第一開口部54が吐出口(吐出部)として機能し、第二開口部が吸込口として機能する状態で使用される。
【0038】
ステータ66は、ゴム等の弾性体、又は樹脂等によって形成された略円筒形の外観形状を有する部材である。ステータ66の内周壁70は、n条で単段あるいは多段の雌ネジ形状とされている。本実施形態においては、ステータ66は、2条で多段の雌ねじ形状とされている。また、ステータ66の貫通孔68は、ステータ66の長手方向のいずれの位置において断面視しても、その断面形状(開口形状)が略長円形となるように形成されている。
【0039】
ロータ72は、金属製の軸体であり、n−1条で単段あるいは多段の雌ネジ形状とされている。本実施形態においては、ロータ72は、1条で偏心した雄ねじ形状とされている。ロータ72は、長手方向のいずれの位置で断面視しても、その断面形状が略真円形となるように形成されている。ロータ72は、上述したステータ66に形成された貫通孔68に挿通され、貫通孔68の内部において自由に偏心回転可能とされている。
【0040】
ロータ72をステータ66に対して挿通すると、ロータ72の外周壁174とステータ66の内周壁70とが両者の接線で密接した状態になり、ステータ66の内周壁70とロータ72の外周壁との間に流体搬送路76(キャビティ)が形成される。流体搬送路76は、ステータ66やロータ72の長手方向に向けて螺旋状に伸びている。
【0041】
流体搬送路76は、ロータ72をステータ66の貫通孔68内において回転させると、ステータ66内を回転しながらステータ66の長手方向に進む。そのため、ロータ72を回転させると、ステータ66の一端側から流体搬送路76内に流体を吸い込むと共に、この流体を流体搬送路76内に閉じこめた状態でステータ66の他端側に向けて移送し、ステータ66の他端側において吐出させることが可能である。本実施形態の一軸偏心ねじポンプ機構55は、ロータ72を正方向に回転させることにより使用され、第二開口部64から吸い込んだ粘性液を圧送し、第一開口部54から吐出することが可能とされている。
【0042】
動力伝達機構78は、駆動機96から上述したロータ72に対して動力を伝達するためのものである。動力伝達機構78は、動力伝達部80と偏心回転部82とを有する。動力伝達部80は、ケーシング52の長手方向の一端側に設けられている。また、偏心回転部82は、動力伝達部80とステータ取付部56との間に形成された中間部60に設けられている。偏心回転部82は、動力伝達部80とロータ72とを動力伝達可能なように接続する部分である。偏心回転部82は、従来公知のカップリングロッドや、スクリューロッドなどによって構成された連結軸88を備えている。そのため、偏心回転部82は、駆動機96を作動させることにより発生した回転動力をロータ72に伝達させ、ロータ72を偏心回転させることが可能である。
【0043】
上述した圧送装置50は、図1及び図2に示すように、吐出口として機能する第一開口部54を下方に向けた姿勢として移動装置20の荷台22の末端部分に搭載されている。また、吸込口として機能する第二開口部64は、荷台22に搭載されている貯留容器30に対して直接的、あるいは配管等を介して間接的に接続されている。そのため、圧送装置50を作動させることにより、貯留容器30に貯留されている塗布剤Pを第二開口部64から吸い込み、第一開口部54から下方(路面R)側に向けて吐出させることができる。
【0044】
圧送装置50の第一開口部54(吐出部)には、吐出幅可変装置100が接続されている。吐出幅可変装置100は、圧送装置50によって圧送させてきた塗布剤Pを所定の吐出幅で吐出するために設けられたものである。図2に示すように、吐出幅可変装置100は、上述した圧送装置50の第一開口部54側の端部に接続されている。図3及び図4に示すように、吐出幅可変装置100は、ケーシング110、及び内筒部130を備えている。
【0045】
ケーシング110は、中空であって筒状の外筒部112と、駆動機構設置部114とを有する。外筒部112は、内筒部130を内蔵する筒状の部分であり、吐出口116及び導入口118を備えている。駆動機構設置部114は、後に詳述するように駆動機構部150をなす部品が収容される部分である。
【0046】
外筒部112に設けられた吐出口116は、外筒部112の周壁120の一部をなす吐出口形成部122に設けられている。吐出口116は、スリット状であって直線的に延びる開口によって構成されており、外筒部112の内外を連通している。導入口118は、上述した圧送装置50の第一開口部54を接続するためのものであり、外筒部112の周壁120に設けられた導入口形成部124に形成されている。導入口118は、後に詳述する内筒部130に設けられた周部開口138に臨むように設けられている。
【0047】
内筒部130は、外筒部112の内側に形成された外筒内部空間126に収容されており、外径が内筒部130の内径と略同一の大きさを有する中空の筒体である。内筒部130は、一端側(基端130a側)及び他端側(接続端130b側)において軸受132,134によって回動可能なように軸支されている。内筒部130は、接続端130bがケーシング110の一端側に形成された駆動機構設置部114側に突出しており、駆動機構部150に接続されている。
【0048】
内筒部130の周壁136には、周部開口138が内外を連通するように形成されている。周部開口138は、外筒部112に設けられた導入口118に臨む(面する)位置に設けられており、圧送装置50によって圧送されてきた塗布剤Pを内筒部130内の内筒内部空間142内に導入することができる。図5に示すように、周部開口138は、開口幅d(内筒部130の母線方向への長さ)が内筒部130の周方向に連続的に変化するように形成されている。具体的には、周部開口138は、内筒部130を展開した状態において略二等辺三角形の開口形状を有する。また、周部開口138に対して内筒部130の周方向に外れた位置には、非開口部140が設けられている。また、図5に示すように、周部開口138の開口幅dは、いずれの部位においても外筒部112に設けられた吐出口116の開口幅sよりも小さい。
【0049】
図3、図4及び図5に示すように、周部開口138に対して基端130a側の位置、及び接続端130b側の位置には、内筒部130の全周に亘ってOリング144,146が設けられている。Oリング144,146は、内筒部130の周壁136と外筒部112の周壁120との間を液密状態とするためのものである。そのため、内筒部130の内筒内部空間142内に導入された塗布剤Pは、少なくともOリング144,146が設けられた位置よりも内筒部130の基端130a側及び接続端130b側の領域に漏出しない。
【0050】
図3及び図4に示すように、駆動機構部150は、モータによって構成された駆動機152と、駆動機152の回転軸に接続された第一傘歯歯車154と、内筒部130の接続端130b側に接続された第二傘歯歯車156とを有する。駆動機152は、ケーシング110の駆動機構設置部114内に向けて回転軸が突出するように設置されている。また、第一傘歯歯車154及び第二傘歯歯車156は、駆動機構設置部114内に収容されており、両者が噛合している。従って、駆動機152を作動させることにより、外筒部112内において内筒部130を回動させることができる。また、駆動機152の回転量及び回転方向を制御することにより、内筒部130の回転量の調整、及び回転方向の変更を行うことができる。
【0051】
吐出幅可変装置100は、図5中おいてハッチングを付して示すように、外筒部112に設けられた吐出口116と、内筒部130に設けられた周部開口138とが重なる部分に、両者が連通した連通領域148が形成される。また、駆動機152の回転量及び回転方向を調整し、吐出口116と周部開口138との相対位置を変化させることにより、連通領域148の幅D(以下、「吐出幅D」とも称す)を変化させることができる。本実施形態では、図3及び図5中の矢印A方向に内筒部130を回転させると連通領域148の吐出幅Dが漸次拡大し、これとは反対の矢印B方向に回転させると吐出幅Dが漸次縮小する。また、非開口部140が吐出口116と重なる位置まで内筒部130を回動させると、吐出口116が非開口部140によって閉鎖された状態、すなわち吐出幅Dがゼロになり塗布剤Pを吐出できない状態になる。
【0052】
制御装置200は、上述した移動装置20、圧送装置50、及び吐出幅可変装置100の動作制御を行うことにより、道路標示の施工制御を行うものである。制御装置200は、塗布制御装置210と、移動制御装置220と、標示パターンデータベース230とを備えている。また、制御装置200は、移動装置20、及び圧送装置50の他、別途設けられた位置認識装置250との間で情報通信を行うための入出力インターフェイス240を備えている。
【0053】
塗布制御装置210は、圧送装置50に設けられた駆動機96の出力調整を行い、ロータ72の回転制御を行うことにより、塗布剤Pの吐出量及び吐出圧を調整する塗布剤Pの供給制御を行うことができる。また、圧送装置50の第一開口部54に接続されている吐出幅可変装置100について、駆動機152の回転量及び回転方向を制御し、吐出口116と周部開口138との相対位置を変化させることにより吐出幅Dを調整する吐出幅調整制御を行うことができる。
【0054】
移動制御装置220は、道路プリンタ10の現在位置を示す位置データを位置認識装置250から取得し、この位置データに基づいて移動装置20を誘導あるいは駆動させることにより、所定の位置まで移動させることができる。位置認識装置250には、グローバル・ポジショニング・システム(Global Positioning System)用端末等を用いることができる。
【0055】
標示パターンデータベース230は、道路標示の施工パターンをデータベース化したものである。標示パターンデータベース230には、道路標示の形状、大きさ、塗布剤Pの厚み、線幅等のデータが登録されている。また、標示パターンデータベース230には、未登録の道路標示についての施工パターンを適宜登録することができる。
【0056】
道路標示の施工に際し、制御装置200は、図7に示すフローチャートに則って移動装置20、圧送装置50、及び吐出幅可変装置100の動作制御を行う。具体的には、制御装置200は、先ず、ステップ1−1において施工条件設定動作を実施する。さらに詳細に説明すると、ステップ1−1においては、制御装置200が標示パターンデータベース230から施工対象である道路標示の施工パターンを読み出す。これにより、施工しようとしている道路標示の形状、大きさ、塗布剤Pの厚み、線幅等のデータを導出する。その他、道路標示の施工位置等の施工条件を必要に応じて自動あるいは手動により制御装置200に設定する。
【0057】
上述したステップ1−1において施工条件の設定が完了すると、制御装置200は、ステップ1−2において施工準備動作を実行させる。具体的には、吐出幅可変装置100における吐出幅Dが導出された線幅のラインを形成するために適切な大きさになるように駆動機152の回転量及び回転方向を調整する。さらに、制御装置200は、位置認識装置250から取得した位置データ等に基づき、移動装置20を誘導あるいは自動運転させることにより、道路標示の施工開始位置まで移動装置20を移動させる。ステップ1−1及びステップ1−2において実行される施工条件設定動作、及び施工準備動作を構成する各動作は、全てが並行して実施されても良く、各動作が順を追って実施されても良い。
【0058】
ステップ1−1において施工準備動作が完了すると、ステップ1−3において施工動作が実施される。制御装置200は、移動装置20を動作制御することによる位置制御、及び塗布速度制御に加え、圧送装置50を制御することによる塗布剤の供給量制御、及び吐出幅可変装置100を制御することによる塗布剤の吐出幅制御をそれぞれ同期させることにより、所定の標示パターン通りの道路標示を形成する。具体的には、制御装置200は、位置認識装置250から取得した位置データ及び施工パターンに基づき、移動装置20を施工パターンに沿って誘導あるいは自動運転させることにより、位置制御及び塗布速度制御を行う。また、制御装置200は、圧送装置50の駆動機152の回転を調整ことにより供給量制御を行い、施工パターンに則って適切な吐出量及び吐出圧となるように塗布剤Pを吐出させる。さらに、吐出幅可変装置100の動作を調整することにより、塗布剤Pの吐出幅を調整する吐出幅制御を行う。
【0059】
さらに具体的には、例えば図8(a)に示す十文字型の標示パターンの道路標示を施工する場合には、図8(a)の標示パターンにおいて、始点Sから終点Eに至るまでの間に設けられた中間位置P1,P2において吐出幅Dの調整(変更)を行いつつ、塗布剤を塗布する。始点Sから中間位置P1までの区間においては、吐出幅DをD1に調整し、供給量制御を行いつつ、位置制御によって移動装置20を駆動させ、圧送装置50及び吐出幅可変装置100を移動させることにより塗布剤を路面Rに塗布する。その後、中間位置P1まで塗布が完了した時点で吐出幅DをD2に変更し、供給量制御及び位置制御の下、中間位置P2まで塗布を進める。中間位置P2まで塗布が進むと、再び吐出幅DをD1に変更し、供給量制御及び位置制御の下で終点Eまで塗布を進める。
【0060】
ステップ1−3において実施される施工動作を図9のフローチャートに従って説明すると、路面Rに対して塗布剤を塗布する場合は、先ずステップ2−1において、制御装置200は、駆動機152の回転量及び回転方向を調整し、吐出幅Dが塗布幅に合致した状態になるように内筒部130を回動させる。図8(a)の塗布パターンにより塗布する場合においては、吐出幅可変装置100が始点Sに存在している場合は、吐出幅DがD1に調整される。また、塗布剤の塗布が進行し、中間位置P1あるいは中間位置P2に到達した場合は、吐出幅DがD2あるいはD1に調整される。
【0061】
ここで、ステップ2−1において吐出幅Dの調整がなされると、塗布剤の吐出量が変化するため、吐出幅可変装置100に対して圧送装置50から供給される塗布剤の供給量についても調整する必要がある。具体的には、吐出幅Dを拡張した場合は、塗布剤の吐出量が増加するため、吐出幅可変装置100に対する塗布剤の供給量が増加するように圧送装置50におけるロータ72の回転速度を上昇させる必要がある。これとは逆に、吐出幅Dを縮小した場合は、塗布剤の吐出量が減少するため、ロータ72の回転速度を低下させ、塗布剤の吐出量が減少させる必要がある。そこで、ステップ2−1において吐出幅Dの調整が行われると、その後ステップ2−2において供給量制御の下、吐出幅可変装置100に対する塗布剤の供給量が調整される。
【0062】
制御フローがステップ2−3に進行すると、移動装置20の動作制御が実施され、標示パターンに則って道路プリンタ10(吐出幅可変装置100)が移動する。これにより、ステップ2−1において設定された吐出幅Dにより塗布剤が吐出され、路面に塗布される。
【0063】
ステップ2−3において吐出幅可変装置100が移動を開始した後、吐出幅可変装置100によって吐出幅Dを変更すべき位置、具体的には中間位置P1あるいは中間位置P2に到達したことが確認されると、制御フローがステップ2−1に戻される。制御フローがステップ2−1に戻ると、上述したステップ2−1〜ステップ2−3のフローに従って吐出幅Dを変更した上で塗布動作がなされる。
【0064】
一方、ステップ2−4において吐出幅可変装置100の位置が吐出幅変更位置(中間位置P1,P2)でないと判断された場合は、制御フローがステップ2−5に進められる。ステップ2−5においては、道路プリンタ10(吐出幅可変装置100)が終点Eに到達しているか否かが確認される。終点Eに到達していないことが確認された場合は塗布動作の途中であるため、制御フローがステップ2−3に戻され、引き続き塗布動作が継続される。一方、ステップ2−5において終点Eに到達していることが確認された場合は、制御フローがステップ2−6に進められ、塗布動作が停止状態とされる。具体的には、道路プリンタ10(吐出幅可変装置100)の移動、及び圧送装置50による塗布剤の供給が停止されると共に、吐出幅Dがゼロに切り替えられる。これにより、路面Rに対する塗布剤の塗布が完了し、一連の制御フローが完了する。
【0065】
上述したようにして、移動装置20、圧送装置50、及び吐出幅可変装置100の動作制御を行うことによりステップ1−3における施工動作が実施される。ステップ1−4において、道路標示の形成が完了したことが確認されると、一連の制御フローが完了する。
【0066】
上述したように、本実施形態の道路プリンタ10は、一軸偏心ねじポンプ機構55を備えた圧送装置50により路面Rに向けて塗布剤Pを圧送することにより、道路標識を形成することができる。また、圧送装置50を構成する一軸偏心ねじポンプ機構55は、ステータ66内において回転するロータ72の回転制御を行うことにより、塗布剤Pの吐出量及び吐出圧を自在に調整することができる。そのため、本実施形態の道路プリンタ10によれば、塗布剤Pの厚みを自在に調整しつつ道路標示を形成することが可能である。従って、道路プリンタ10によれば、全体に亘って略均一の厚みとなるように路面Rに塗布剤Pを塗布すること、及び所定位置における塗布剤Pの厚みを他と相違させること等により、所望の厚みを有する道路標示を形成することが可能となる。
【0067】
また、本実施形態の道路プリンタ10において用いられている圧送装置50は、ロータ72及びステータ66を主要部材として構成されるものであり、構造が極めてシンプルである。そのため、道路プリンタ10は、一軸偏心ねじポンプ機構55の分解及び清掃等のメンテナンスを容易に実施することができる。
【0068】
また、本実施形態の道路プリンタ10は、圧送装置50の吐出部に吐出幅可変装置100が設けられており、塗布剤Pの吐出幅を調整可能とされている。そのため、道路標示を形成するために路面Rに塗布される塗布剤Pの厚みだけでなく、塗布剤Pの塗布幅も適宜調整することが可能となる。またこれにより、線幅が太い道路標示を形成する際に複数のラインを並べて形成する等の方策を講じる必要がなくなり、線幅の大小によらず容易に道路標示を形成することが可能である。従って、吐出幅可変装置100を設けることにより、塗布剤Pの塗布作業を軽減し、作業効率を格段に向上させることが可能となる。
【0069】
さらに、吐出幅可変装置100により道路標示の線幅を調整可能とすることにより、線幅の大小にかかわらず単一のラインによって形成することが可能となる。これにより、従来技術において実施されているように、線幅の太い部分を構成する複数のラインの境界部分に隙間あるいは重なりが形成されることを防止できる。また、図8(a)のようにライン同士が交差する形状の道路標示を形成する場合であっても、交差部分において塗布剤が重複するように塗布されず、道路標示全体として略均一の厚みに塗布剤が塗布された状態になる。従って、吐出幅可変装置100を設けることにより、厚みが全幅に亘ってムラ無く、略均一の厚みとなるように塗布剤Pを塗布して道路標示を形成することが可能である。これにより、見栄えの良い道路標示を形成することが可能となる。
【0070】
また、上述した吐出幅可変装置100は、中空の外筒部112と、外筒部112の内部において回動可能とされた中空の内筒部130とを有し、内筒部130の周壁136において内筒部130の周方向に変化するように形成された周部開口138が、内筒部130の内外を連通するように形成されたものとされている。また、吐出幅可変装置100は、内筒部130を回動させることにより周部開口138と吐出口との重なりにより形成される連通領域148の幅を調整することができる。従って、道路プリンタ10においては、内筒部130を回動させて連通領域148の幅調整を行うだけで吐出幅を所望の大きさに調整することが可能であり、吐出幅の変更に伴う道路標示の作業効率の低下等の問題が生じない。また、吐出幅可変装置100は、内筒部130を回動させることにより吐出幅を変化させるものであり、吐出幅の変更に伴う内部容積の変化が殆ど発生しないため、吐出幅の変更に伴う吐出圧の変動を最小限に抑制することができる。
【0071】
本実施形態においては、圧送装置50の吐出側に外筒部112と内筒部130との相対回転により吐出幅を調整可能な吐出幅可変装置100を設けた構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、吐出幅可変装置100を他の機構により吐出幅を調整可能なものに代替させても良い。また、道路プリンタ10は、吐出幅可変装置100により塗布剤Pの吐出幅等を調整可能なものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、吐出幅可変装置100を設けない構成としても良い。
【0072】
また、道路プリンタ10は、吐出幅可変装置100を設けることにより塗布剤Pの吐出幅あるいは吐出パターンを調整可能としたものであるが、例えば図14に示すように圧送装置50を複数並列に配置し、塗布剤Pを吐出する圧送装置50の基数を変更することにより吐出幅、あるいは吐出パターンを調整可能なものとしても良い。なお、圧送装置50を複数並列配置する場合においては、設置スペース等の都合により、図14に示すように幅方向(左右方向)に隣接する圧送装置50の吐出口同士の間に隙間が形成される可能性がある。吐出口同士の間に隙間が形成されると、各圧送装置50から塗布剤を吐出させて形成されるライン同士の間に隙間が形成されてしまうことになる。そのため、このような不都合を解消すべく、図14(a)等に示すように、各圧送装置50の吐出口にアタッチメント190を取り付ける等して隙間が形成されないようにすることが望ましい。
【0073】
また、図14(b)に示すように、設置スペース等の都合により、圧送装置50を前後方向に位置をずらして配置せざるを得ない場合がある。すなわち、図14(a),(b)に示すように、前方側に配置した圧送装置50(以下、「圧送装置50a」とも称す)と、圧送装置50aに対して後方側に間隔xだけ離れた位置に配置した圧送装置50(以下、「圧送装置50b」とも称す)とを幅方向(左右方向)に交互に並べた状態にせざるを得ない場合がある。このような設置状態とした場合、圧送装置50a,50bのそれぞれから同時に塗布剤を噴射させると、道路標示の始端部分が凹凸形状になってしまう。同様に、道路標示の終端部分においても、圧送装置50a,50bのそれぞれについて、同時に塗布剤の噴射を終了させると、同様の凹凸が形成される。そのため、図14(a),(b)に示すように前後方向に位置ずれさせた状態で圧送装置50を配置する場合には、圧送装置50aから塗布剤を噴射させるタイミングを、圧送装置50bから塗布剤の噴射を開始するタイミングから、道路プリンタ10が間隔x分だけ移動した状態になるタイミングまで遅延させるよう、各圧送装置50a,50bの動作制御をすることが望ましい。同様に、圧送装置50bにおける塗布剤の噴射終了のタイミングを、圧送装置50aにおける噴射終了のタイミングから、道路プリンタ10が間隔x分だけ移動した状態になるタイミングまで遅延させるよう、各圧送装置50a,50bの動作制御をすることが望ましい。
【0074】
本実施形態において例示した道路プリンタ10は、圧送装置50から吐出された塗布剤Pを吐出幅可変装置100を介することにより間接的に路面Rに塗布するものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、吐出幅可変装置100を設けず、塗布剤Pを路面Rに対して直接的に塗布するものであっても良い。また、図14(a),(b)に示すように、吐出幅可変装置100を設ける代わりに別途準備したアタッチメント190等を圧送装置50に接続し、このアタッチメント190等を介して塗布剤Pを塗布することとしても良い。
【0075】
なお、本実施形態では、図8(a)に示す塗布パターンで塗布剤を塗布することにより道路標示を形成する場合を例に挙げて説明したが、道路プリンタ10は、吐出幅可変装置100の位置、移動装置20の移動速度等に応じ、塗布厚を考慮して塗布剤の吐出量を制御すると共に、吐出幅D等の調整を行うことにより、図8(a)の塗布パターンの他、図8(b)〜(d)に示す塗布パターン、図10(a)〜(l)に示す塗布パターン(模様)等、多様な塗布パターンにより塗布剤を路面Rに対してムラなく略均一の塗布厚で塗布し、道路標示を形成することが可能である。
【0076】
本実施形態の吐出幅可変装置100において外筒部112に形成されている吐出口116は、外筒部112の幅方向に直線的に延びるスリットによって形成されたものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、吐出口116に代えて、外筒部112の幅方向に断続的に設けられたスリット、傾斜するように形成されたスリット、湾曲部分を有するスリット、開口形状が円形、楕円形、矩形あるいは多角形の開口等を設けた構成としてもよい。かかる構成とすることにより、更に多様な形態で塗布剤を吐出することが可能となり、様々な塗布パターンによって塗布剤を塗布可能となる。
【0077】
また、吐出幅可変装置100において、内筒部130に形成されている周部開口138の開口形状についても、吐出口116と同様に上述したものに限定されず、塗布パターン等に応じて様々な形状に変更することが可能である。すなわち、周部開口138は、軸線方向の開口幅D及び軸線方向における開口位置が内筒部130の周方向に変化するように形成されたものであれば良く、開口形状や大きさについてはいかなるものであっても良い。具体的には、周部開口138の形状を、内筒部130の周壁136を展開した状態において所望する塗布パターンの形状となるように形成した場合、吐出幅可変装置100の移動及び内筒部130の回動を同期させることにより、例えば図11(a)〜(g)のような塗布パターン(模様)により塗布剤を路面Rに塗布することができる。更に詳細には、図12に示すような形状の周部開口138を周壁136に設けた場合は、塗布速度に同期させて内筒部130を回転させることにより連通領域148の幅及び位置が順次変化し、図11(g)のような塗布パターンで塗布剤を塗布することができる。
【0078】
また、道路プリンタ10は、圧送装置50とは別に塗布剤Pを塗布するための塗布装置を設け、この塗布装置を介して塗布剤Pを塗布する構成としても良い。具体的には、図13に示すように圧送装置50の下方に、並行に配置された一対のローラ182,184(回転体)を備えた塗布装置180を設け、ローラ182,184に対して上方から塗布剤Pを供給可能な構成としても良い。このような構成とした場合、図13に矢印で示すように一対のローラ182,184を相対回転させることにより、圧送装置50により上方から供給された塗布剤Pを下方に位置する路面Rに対して噴射させて塗布することが可能となる。
【0079】
道路プリンタ10において採用される圧送装置50は、一軸偏心ねじポンプ機構55を備えたものであればいかなるものであっても良い。具体的には、一軸偏心ねじポンプ機構55に加え、ポンプケーシングに連接されたフィーダケーシングと、フィーダケーシング内に投入されたものを撹拌しながらポンプケーシング内に押し込むための撹拌羽根を備えたもの(例えば、特開2007−126276号公報参照)のように、塗布剤Pをポンプケーシングに供給するための供給機構を備えたもの等としても良い。また、いわゆるツインロータ型の一軸偏心ねじポンプのように、本実施形態のステータ66のように雌ねじ型の挿通孔を有するアウターロータと、ロータ72のように雄ねじ型の軸体からなるインナーロータを有し、アウターロータ及びインナーロータの双方が回転することにより塗布剤Pを圧送可能なもの(例えば、特開2008−175199号公報参照)を圧送装置50として用いても良い。
【0080】
本実施形態の道路プリンタ10は、GPS等によって構成される位置認識装置250を備えており、この位置認識装置250の認識結果に基づいて移動装置20を誘導あるいは駆動させることにより、道路標示を形成可能とされている。そのため、道路プリンタ10によれば、道路標示を容易かつ正確に位置決めした状態で形成することが可能となる。なお、本実施形態においては、位置認識装置250を道路プリンタ10に搭載させた例を示したが、位置認識装置250を搭載していないものであっても良い。
【0081】
本実施形態の道路プリンタ10は、加熱装置40を備えており、塗布剤Pを加熱溶融させた状態で圧送装置50に供給する構成としている。従って、道路プリンタ10によれば、塗布剤Pを加熱溶融させる作業から路面Rに塗布するまでの一連の作業を一括して実施することができる。なお、本実施形態においては、加熱装置40によって加熱され溶融状態になった塗布剤Pを圧送装置50によって圧送する構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、圧送装置50の下流側に加熱装置40を設け、非溶融状態である塗布剤Pを圧送装置50により吐出させ、圧送装置50から吐出された塗布剤Pを加熱装置40によって溶融させた後に路面Rに塗布することとしても良い。
【0082】
なお、本実施形態の道路プリンタ10においては、圧送装置50として一軸偏心ねじポンプ機構55を備えた一軸偏心ねじポンプを採用した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、圧送装置50として従来公知のロータリーポンプ、ベーンポンプ、あるいはプランジャポンプ等、種々のポンプを採用することが可能である。なお、塗布剤の吐出量及び吐出圧を制御する観点からすると、一軸偏心ねじポンプ、ロータリーポンプ、あるいはベーンポンプ等の回転容積式ポンプが圧送装置50として適しており、そのうちでも一軸偏心ねじポンプが圧送装置50として最も適している。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の道路プリンタは、路面Rに塗布剤を塗布することにより道路標示を形成するために好適に利用することができる。本発明の道路プリンタは、一般道あるいは高速道路等に道路標示を施工する他、駐車場において駐車スペースを画定するためのラインを引く、あるいは各種案内等を路面に描く等の用途に用いることができる。
【符号の説明】
【0084】
10 道路プリンタ
20 移動装置
30 貯留容器
40 加熱装置
50 圧送装置
55 一軸偏心ねじポンプ機構
66 ステータ
72 ロータ
100 吐出幅可変装置
112 外筒部
116 吐出口
122 吐出口形成部
130 内筒部
138 周部開口
142 内筒内部空間
200 制御装置
210 塗布制御手段
220 移動制御手段
250 位置認識装置
P 塗布剤
R 路面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に塗布される道路標識用の塗布剤を圧送するための圧送装置を備えており、前記圧送装置の吐出部から吐出された塗布剤を直接的あるいは間接的に路面に塗布することにより路面上に道路標示をプリント可能であることを特徴とする道路プリンタ。
【請求項2】
前記吐出部に、前記塗布剤の吐出幅を調整可能な吐出幅可変装置が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の道路プリンタ。
【請求項3】
前記吐出幅可変装置が、
吐出口が形成された吐出口形成部を有し前記吐出口を介して内外が連通した中空の外筒部と、
前記外筒部の内部において前記外筒部の周壁に沿って回動可能とされた中空の内筒部とを有し、
前記内筒部の周壁には、軸線方向の開口幅及び/又は軸線方向における開口位置が前記内筒部の周方向に変化するように形成された周部開口が、前記内筒部の内外を連通するように形成されており、
前記内筒部の内部に前記塗布剤を導入可能であり、
前記周部開口と前記吐出口とが重なることにより形成される連通領域から、前記内筒部の内部に導入されている前記塗布剤を吐出可能であることを特徴とする請求項2に記載の道路プリンタ。
【請求項4】
前記圧送装置が複数、並列に配置されており、
前記塗布剤を吐出する前記圧送装置の基数を変更することにより、前記塗布剤の塗布幅、及び/又は塗布パターンを調整可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の道路プリンタ。
【請求項5】
位置を認識可能な位置認識装置と、
前記塗布剤の塗布位置を移動させることが可能な移動装置とを備えており、
前記位置認識装置の認識結果に基づき前記移動装置を誘導あるいは駆動することが可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の道路プリンタ。
【請求項6】
前記塗布剤を加熱し溶融させることが可能な加熱装置を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の道路プリンタ。
【請求項7】
前記圧送装置が、回転容積式のポンプによって構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の道路プリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−68046(P2013−68046A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208857(P2011−208857)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000239758)兵神装備株式会社 (76)
【Fターム(参考)】