説明

遠隔指示システム及び遠隔指示方法

【課題】 少ない計算量で被写体の形状に合ったアノテーション画像を投影できる遠隔指示システムを提供する。
【解決手段】 被写体200をビデオカメラ20により撮像させつつその撮像画像を遠隔端末100に送信すると共に、該遠隔端末100でなされた前記撮像画像に基づく指示に応じたアノテーション画像をプロジェクタ40により被写体200へ投影させ得るサーバ50を有する遠隔指示システム1であって、サーバ50は、被写体200のアノテーション画像201が投影される部分の三次元形状を計測し、計測した被写体200のアノテーション画像201が投影される部分の三次元形状に基づいて被写体200に投影するアノテーション画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔指示システム及び遠隔指示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遠隔会議システム等においては、遠隔側から実物体側へ向けて作業手順の指示等の各種指示を行う必要がある。このような、遠隔側から実物体側への指示を行うことができる遠隔指示システムとしては、例えば、実物体側に存在する対象物をビデオカメラで撮像しつつその撮像画像を遠隔端末に送信すると共に、遠隔端末において撮像画像に基づいて指示されたアノテーション画像(投影画像図形)を実物体側でプロジェクタにより対象物へ投影する技術が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、対象物の三次元形状を計測してその対象物の形状合ったアノテーション画像を投影する技術が提案されている。例えば、対象物の3次元形状を2組のカメラ/プロジェクタにて計測し、その計測結果に基づき、指示者が存する遠隔地のPCに対象物のCG画像を表示する。指示者が入力ツールを用いて物体の作業に関する指示を行った場合、その指示データはPCに送信され、指示データに応じた指示画像がプロジェクタによって対象物に投影される(特許文献2参照)。
【特許文献1】米国特許公開2004/0070674号公報
【特許文献2】特開2003−270719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載の技術では、対象物の三次元形状を全て取得しているため対象物の三次元形状計測のための計算量が多いという問題がある。また、対象物が回転する等のように対象物が移動する場合、対象物の三次元形状の計測に時間が掛かってしまうと、対象物にあったアノテーション画像の生成が対象物の移動に間に合わない。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、少ない計算量で対象物の形状に合ったアノテーション画像を投影できる遠隔指示システム及び遠隔指示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、対象物を撮像手段により撮像させつつその撮像画像を遠隔端末に送信すると共に、該遠隔端末でなされた前記撮像画像に基づく指示に応じたアノテーション画像を投影手段により前記対象物へ投影させ得る制御手段を有する遠隔指示システムであって、前記制御手段は、前記対象物の前記アノテーション画像が投影される部分の三次元形状を計測し、該計測した前記対象物の前記アノテーション画像が投影される部分の三次元形状に基づいて前記対象物に投影するアノテーション画像を生成することを特徴とする。
【0007】
本発明よれば、対象物のアノテーション画像が投影される部分の三次元形状だけを計測し、その三次元形状に合ったアノテーション画像を生成することにより、対象物のすべての3次元形状を計測する場合に比べて、計算量を少なくでき、計算時間を短縮できる。よって、少ない計算量で対象物に合ったアノテーション画像を投影できる。これにより、対象物が移動するような場合であっても、対象物の移動に合わせてアノテーション画像を投影できる。
【0008】
本発明の遠隔指示システムは、前記投影手段及び前記撮像手段に対する前記対象物の相対的な位置関係を変更する相対位置変更手段をさらに備え、前記制御手段は、前記相対位置変更手段による前記対象物の移動に合わせて前記投影手段の前記対象物に対するアノテーション画像の投影位置を変更する。本発明によれば、対象物が回転する等のように対象物が移動する場合でも、対象物の形状の取得に時間が掛からないため、対象物の移動にアノテーション画像を追随させることができる。
【0009】
前記制御手段は、前記対象物に投影されたアノテーション画像を利用して前記対象物の前記アノテーション画像が投影される部分の三次元形状を計測するとよい。本発明によれば、アノテーション画像を用いることにより形状を測定するために必要な画像を別途投影する必要がないため、システムを簡素化できる。
【0010】
前記制御手段は、前記アノテーション画像を前記対象物に一部分ずつ投影しながら前記対象物の前記アノテーション画像が投影される部分の三次元形状を測定するとよい。前記制御手段は、前記アノテーション画像が投影された対象物を撮像した撮像画像を用いて三角測量法により前記対象物の前記アノテーション画像が投影される部分の三次元形状を計測するとよい。
【0011】
前記制御手段は、前記投影手段により前記アノテーション画像を一部分ずつ前記対象物に投影していき、該投影されたアノテーション画像を前記撮像手段で撮像した撮像画像に基づいて前記対象物の前記アノテーション画像が投影される部分の三次元形状を計測するとよい。前記相対位置変更手段は、例えば前記対象物を回動させ得る回転ステージを含んで構成されている。
【0012】
前記制御手段は、前記相対位置変更手段による前記対象物の相対的な位置関係の変更が所定期間停止した後に前記投影手段の前記対象物に対するアノテーション画像の投影位置を変更するとよい。前記相対位置変更手段は、前記対象物を上下、左右及び斜めの方向の少なくともいずれかの方向に移動させることにより前記投影手段及び前記撮像手段に対する前記対象物の相対的な位置関係を変更するとよい。
【0013】
前記制御手段は、前記投影手段により前記アノテーション画像を前記対象物の幅方向、前記対象物の高さ方向及び前記アノテーション画像の最小幅の方向に前記アノテーション画像を一部分ずつ投影させるとよい。
【0014】
前記制御手段は、前記投影手段により前記アノテーション画像を一部分ずつ投影させる際に新たに投影する箇所を強調して投影させるとよい。本発明によれば、変化のあった箇所を特定の色で投影し、また変化のあった箇所の点を大きく投影するなどのように、変化のあった箇所を強調して表示することにより、画像処理において変化のあった箇所を抽出し易くなる。
【0015】
本発明は、対象物を撮像手段により撮像させつつその撮像画像を遠隔端末に送信すると共に、該遠隔端末でなされた前記撮像画像に基づく指示に応じたアノテーション画像を投影手段により前記対象物へ投影する遠隔指示方法であって、前記対象物の前記アノテーション画像が投影される部分の三次元形状を計測する計測工程と、前記計測した対象物の前記アノテーション画像が投影される部分の三次元形状に基づいて前記対象物に投影するアノテーション画像を生成する生成工程とを有する。
【0016】
本発明よれば、対象物のアノテーション画像が投影される部分の三次元形状だけを計測し、その三次元形状に合ったアノテーション画像を生成することにより、対象物のすべての3次元形状を計測する場合に比べて、計算量を少なくでき、計算時間を短縮できる。よって、少ない計算量で対象物に合ったアノテーション画像を投影できる。これにより、対象物が移動するような場合であっても、対象物の移動に合わせてアノテーション画像を投影できる。
【0017】
本発明の遠隔指示方法は、前記投影手段及び前記撮像手段に対する前記対象物の相対的な位置関係を変更する工程と、前記対象物の移動に合わせて前記投影手段の前記対象物に対するアノテーション画像の投影位置を変更する工程とをさらに有する。本発明によれば、対象物が回転する等のように対象物が移動する場合でも、対象物の形状の取得に時間が掛からないため、対象物の移動にアノテーション画像を追随させることができる。
【0018】
前記計測工程は、前記対象物に投影されたアノテーション画像を利用して前記対象物の前記アノテーション画像が投影される部分の三次元形状を計測するとよい。前記計測工程は、前記投影手段により前記対象物に一部分ずつ投影されたアノテーション画像を前記撮像手段で撮像した撮像画像に基づいて前記対象物の前記アノテーション画像が投影される部分の三次元形状を計測するとよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、少ない計算量で対象物の形状に合ったアノテーション画像を投影できる遠隔指示システム及び遠隔指示方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は、本発明の遠隔指示システムの一実施形態を示す構成図である。この遠隔指示システム1は、図1に示すように、被写体側装置10及び遠隔端末100等を備えており、被写体側装置10と遠隔端末100とはネットワーク300により相互に通信可能に接続されている。尚、図1においては、遠隔端末100を一台のみ示しているが、複数の遠隔端末100をネットワーク300を通じて被写体側装置10の後述するサーバ50へ接続可能である。
【0021】
被写体側装置10は、撮像手段としての第1ビデオカメラ20、第2ビデオカメラ30、投影手段としてのプロジェクタ40、制御手段としてのサーバ50、ハーフミラー60及び相対位置変更手段としての回転ステージ70等を有する。第1ビデオカメラ20及び第2ビデオカメラは、例えばCCDカメラで構成され、回転ステージ70上に置かれた被写体(対象物)200を撮像すると共に、その撮像画像の情報をサーバ50へ出力する。尚、第1ビデオカメラ20及び第2ビデオカメラ30は、ハーフミラー60を透過した画像を撮像する。
【0022】
プロジェクタ40は、例えば液晶プロジェクタ等で構成され、遠隔端末100でなされた撮像画像に基づく指示に応じたアノテーション画像を被写体200に投影する。またプロジェクタ40は、その光学系が、ハーフミラー60により第1ビデオカメラ20及び第2ビデオカメラ30と光学的な主点が略一致するように配置されている。このプロジェクタ40は、サーバ50から送信されたアノテーション画像をその光学系を通じハーフミラー60を介して被写体200へ投影する。尚、アノテーション画像には、線、文字、図形等のあらゆる形態の画像が含まれる。
【0023】
回転ステージ70は、サーバ50により制御され、その上面に置かれた被写体200を回動させることにより、第1ビデオカメラ20、第2ビデオカメラ30及びプロジェクタ40に対する被写体200の位置を変更する。サーバ50は、第1ビデオカメラ20、第2ビデオカメラ30、プロジェクタ40及び回転ステージ70の動作を制御すると共に、ネットワーク300を介して遠隔端末100との間で各種情報を授受する。また、サーバ50は、第1ビデオカメラ20が撮像した撮像画像を遠隔端末100へ送信すると共に、遠隔端末100でなされた撮像画像に基づく指示に応じたアノテーション画像をプロジェクタ40により被写体200へ投影させる。また、サーバ50は、回転ステージ70による被写体200の回動(移動)に合わせてプロジェクタ40の被写体200に対するアノテーション画像の投影位置を変更する制御を行う。
【0024】
遠隔端末100は、液晶表示装置及びCRT等からなる表示装置110、ネットワーク300に接続されたコンピュータ120、コンピュータ120に接続されたポインティングデバイス(マウス)130等を有する。表示装置110は、その表示画面に被写体側装置10から送信される画像を表示する。ポインティングデバイス130は、撮像画像が表示された表示画面においてポインタで各種ボタン等を操作することにより、被写体200へ投影するアノテーション画像に関する指示を形成すると共に、回転ステージ70の回動による被写体200の回動を指示するのに用いられる。
【0025】
次に、上記構成の遠隔指示システムの動作について図2ないし図4を参照して説明する。図2は被写体側装置10のサーバ50における処理の一例を示すフローチャートであり、図3は遠隔端末100のコンピュータ120における像形成における処理の一例を示すフローチャート、図4は遠隔端末100側の操作の一例を説明するための図である。
【0026】
図2に示すように、被写体側装置10側のサーバ50では、第1ビデオカメラ20の撮像画像の取り込みを開始し(ステップS11)、遠隔端末100のコンピュータ120から接続要求があるかを判断する(ステップS12)。そして、サーバ50は、コンピュータ120からの接続要求がある場合には、第1ビデオカメラ20の撮像画像をネットワーク300を通じて遠隔端末100のコンピュータ120へ伝送する(ステップS13)。
【0027】
次いで、サーバ50は、コンピュータ120から制御信号の送信があるか否かを判断する(ステップS14)。この制御信号は、アノテーション画像の描画に関する情報である描画信号及び回転ステージ70を回転させるための位置制御信号である。サーバ50は、上記の制御信号を受信した場合には、その制御信号の内容に応じて制御信号処理を行う(ステップS15)。
【0028】
一方、サーバ50は、上記の制御信号を受信しない場合には、コンピュータ120から切断要求があるかを判断し(ステップS16)、切断要求が無い場合には、ステップS13に戻って新たな撮像画像をネットワーク300を通じて遠隔端末100のコンピュータ120へ伝送し、切断要求があった場合には、第1ビデオカメラ20の撮像画像の伝送を停止する(ステップS17)。そして、サーバ50は、処理の終了要求があるかを判断し(ステップS18)、終了要求がない場合には、ステップS12に戻って上記の処理を繰り返し、終了要求があった場合には処理を終了する。
【0029】
次に、遠隔端末100の動作について説明する。先ず、図3に示すように、遠隔端末100のコンピュータ120は、サーバ50に対して接続要求を行う(ステップS21)。次いで、コンピュータ120は、接続が完了した後、例えば、図4に示すように、被写体側のサーバ50から伝送される撮像画像を表示装置110の表示画面111に表示する(ステップS22)。
【0030】
次いで、コンピュータ120は、表示装置110の表示画面111に表示した撮像画像に対する操作者からの注目領域の指示があるかを判断し(ステップS23)、注目領域の指示がある場合には、指示に応じた処理を行う(ステップS26)。具体的には、遠隔端末100の操作者は、図4に示すような表示装置110の表示画面111の画像を見ながら、表示されている画像にアノテーション画像を投影したい領域がある場合には、ポインティングデバイス130を操作して表示画面111上のポインタPtを移動させながら注目領域を指示する。注目領域は、アノテーション画像DRを投影する投影位置を規定する領域である。このとき、同時に、注目領域に投影するアノテーション画像に関する情報を指示する。
【0031】
例えば、ポインティングデバイス130を用いて表示画面111上に形成された各種ボタンBT等を操作することにより、描画された矩形や円などの図形情報、あらかじめ用意されたビットマップ画像、キーボードなどから入力したテキスト情報、ポインティングデバイス130の動作を反映するポインタ自体等である。そして、コンピュータ120は、ステップS26で特定された各種情報を描画情報としてサーバ50へ伝送する(ステップS27)。
【0032】
次いで、コンピュータ120は、遠隔端末100でなされた第1ビデオカメラ20の撮像画像に基づく操作者による指示が完了したかを判断し、(ステップS28)、終了した場合には、サーバ50に対して切断要求を行い(ステップS29)、処理を終了する。遠隔端末100の操作者による指示操作が終了していない場合には、ステップS22に戻って上記の処理を繰り返す。
【0033】
ここで、遠隔端末100の操作者が被写体200を回転させたい場合には、操作者は、例えば、図4に示すような表示画面111の画像を見ながら、画像内の被写体200においてアノテーション画像を投影したい領域が映し出される、あるいは、被写体200に対する視点が最適になるように、表示画面111に形成された、回転ステージ70を回転させるための回転用ボタンR1,R2を操作して、回転ステージ70の回転方向及び回転量を指示する。そして、コンピュータ120は、ステップS23において、注目領域の指示がない(アノテーション画像に関する指示がない)場合には、遠隔端末100の操作者により、被写体200の回転の指示がされると判断して被写体200の回転に関する処理をする(ステップS24)。
【0034】
次いで、コンピュータ120は、被写体200の回転に関する処理により得られた回転量情報(移動量情報)等を被写体側のサーバ50へ伝送する(ステップS25)。これにより、回転ステージ70が回転されて被写体200の回転位置が変更し、遠隔端末100の表示装置110には新たな撮像画像が表示される(ステップS22)。
【0035】
次に、被写体のアノテーション画像が投影される部分の三次元形状の測定方法について説明する。図5は、被写体のアノテーション画像が投影される部分の三次元形状を計測する際の処理フローチャートである。まず、第1ビデオカメラ20で被写体200を撮影する(ステップS31)。次いで、サーバ50は、第1ビデオカメラ20を介して撮影映像データを取り込み、撮影画像データをネットワーク300を介して遠隔端末100へ送信する(ステップS32)。
【0036】
次に、サーバ50は、遠隔端末100でアノテーション画像の描画が行われたかどうかを判断する(ステップS33)。サーバ50は、遠隔端末100でアノテーション画像の描画が行われたと判断した場合、遠隔端末100から取得したアノテーション画像データをプロジェクタ40の座標系に変換する(ステップS34)。ここで、第1ビデオカメラ20とプロジェクタ20は、予めキャリブレーションされており、第1ビデオカメラ20の映像座標とプロジェクタ40の映像座標との関係は測定されているため、第1ビデオカメラ20の映像座標からプロジェクタ40の映像座標へ変換を行うことができる。
【0037】
サーバ50は、被写体のアノテーション画像を投影する部分を特定するために、プロジェクタ40によりアノテーション画像201を一部分ずつ被写体200に投影していく(ステップS35)。ここでは、サーバ50は、プロジェクタ40によりアノテーション画像201を一画素ごと被写体200に投影する。図6は、アノテーション画像201を一部ずつ除々に被写体200に投影していく様子を示す図である。図6に示すように、アノテーション画像201は、時刻t1では同図(a)の位置まで投影され、時刻t2では同図(b)の位置まで投影され、時刻t3では同図(c)の位置まで投影される。このようにして、アノテーション画像201を一部ずつ除々に被写体200に投影していくことにより被写体200のアノテーション画像が投影される部分の形状を特定する。
【0038】
そして、サーバ50は、アノテーション画像をプロジェクタ40により投影している間、さらに第2ビデオカメラ30で被写体200を撮影する。サーバ50は、第1ビデオカメラ20及び第2ビデオカメラ30から得た撮影映像データに基づいて、三角測量の原理を用いて、被写体200のアノテーション画像が投影される部分の距離を求めながら、被写体200のアノテーション画像201が投影される部分の三次元形状を計測する(ステップS36)。
【0039】
図7は、新たに投影されたアノテーション画像部分の特定方法を説明するための図である。図7において第1ビデオカメラ20で撮影した撮影映像21と第2ビデオカメラ30で撮影した撮影映像31に黒丸で示した箇所は、アノテーション画像の新たに投影され、画像上で変化の起きた座標を示している。
【0040】
サーバ50は、第1ビデオカメラ20及び第2ビデオカメラ30で撮影された映像上で変化が起きた座標、すなわち新しく描画が行われた箇所を抽出する。第1ビデオカメラ20及び第2ビデオカメラ30は、予めキャリブレーションされており、位置関係および焦点距離が予め測定されている。そして、サーバ50は、第1ビデオカメラ20で撮影された撮影映像21及び第2ビデオカメラで撮影された撮影映像31の中で変化が起きた座標を特定し、三角測量の原理によって、第1ビデオビデオカメラ20に対するアノテーション画像201の三次元位置を測定する。これにより、アノテーション画像201が次第に投影されていくに従い、アノテーション画像201の三次元位置が計測される。
【0041】
次に、サーバ50は、遠隔端末100からの制御信号に基づいて遠隔端末100の利用者によって回転ステージ70が制御されたかどうかを判断し(ステップS37)、遠隔端末100の利用者によって回転ステージ70が制御された場合、回転ステージ70の回転を制御する制御信号に基づいて回転ステージ70の回転角を求め、求めた回転ステージ70の回転角からアノテーション画像の移動するべき3次元位置を計算する(ステップS38)。ここで、回転ステージ70の回転軸の第1ビデオカメラ20に対する位置は、予め測定されているため、回転ステージ70の回転角が分かれば計算によって回転ステージ70の回転後のアノテーション画像の3次元位置がどの位置になるかを計算できる。
【0042】
サーバ50は、アノテーション画像の移動すべき三次元位置に基づいて、プロジェクタ40の投影図形を計算して被写体200にアノテーション画像を投影する(ステップS39)。図8は、アノテーション画像の移動すべき三次元位置について説明するための図である。図8において、参照符号21は、模式的に示した第1ビデオカメラ20の撮影映像である。アノテーション画像201は、回転ステージ70の回転後は、新たなアノテーション画像202として投影される。
【0043】
具体的には、サーバ50は、第1ビデオカメラ20に対する回転後のアノテーション画像201の三次元位置と、第1ビデオカメラ20の焦点距離から、第1ビデオカメラ20の撮影映像21上の回転後のアノテーション画像を計算する。そして、サーバ50は、撮影映像21上の回転後のアノテーション画像をプロジェクタ40の座標に変換し、プロジェクタ40により回転後のアノテーション画像202を被写体200に投影する。これにより、被写体のすべての3次元形状を計測する場合に比べて、計算量を少なくでき、計算時間を短縮できる。よって、少ない計算量で被写体に合ったアノテーション画像を投影できる。これにより、被写体が移動するような場合であっても、被写体の移動に合わせてアノテーション画像を投影できる。
【0044】
図9は、被写体のアノテーション画像が投影される部分の三次元形状を計測する際の他の処理フローチャートである。S48のステップが組み込まれている点が図5の動作例と異なる。図9の動作例では、サーバ50は、回転ステージ70による被写体200の相対的な位置関係の変更が所定期間停止した後にプロジェクタ40の被写体200に対するアノテーション画像201の投影位置を変更する。これにより、回転中は処理を行わず、回転が終了したときに処理を行ってアノテーション画像の追随が可能となる。その他の処理は、ステップS41〜ステップS47がステップS31〜ステップS38に対応し、ステップS49〜ステップS411がステップS38〜ステップS310に対応する。
【0045】
図10は、回転ステージの移動方向を説明するための図であり、同図(a)は回転ステージ70が上下左右に平行移動する場合の例、同図(c)は傾きが制御できる回転ステージ70の場合の例である。回転ステージ70は、回転だけでなく、被写体200を上下、左右、又は斜めの方向に移動させることによりプロジェクタ40及び第1ビデオカメラ20、第2ビデオカメラ30に対する被写体200の相対的な位置関係を変更する。なお、サーバ50は、回転ステージ70の制御による3次元位置の移動情報を取得できるものとする。
【0046】
図11は、アノテーション画像の投影方法を説明する図であり、(a)はアノテーション画像を幅方向に除々に投影する場合の例、(b)はアノテーション画像201を被写体200の高さ方向に投影する場合の例、(c)はアノテーション画像201の最小幅の方向にアノテーション画像を除々に投影する場合の例、(d)はアノテーション画像の最小幅を説明する図である。サーバ50は、プロジェクタ40によりアノテーション画像201を被写体200の幅方向(同図(a))、被写体200の高さ方向(同図(b))又はアノテーション画像201の最小幅の方向(同図(c)(d))にアノテーション画像201を一部分ずつ投影させる。図11(c)のようにアノテーション画像の最小幅の方向へアノテーション画像の一部分ずつ投影させることで、被写体200のアノテーション画像201の投影される部分の三次元形状の計測時間を短縮できる。
【0047】
以上のように、本実施形態によれば、被写体200のアノテーション画像201が投影される部分の三次元形状だけを計測し、その三次元形状に合ったアノテーション画像を生成することにより、被写体200のすべての三次元形状を計測する場合に比べて、計算量を少なくできるため、計算時間を短縮できる。よって、少ない計算量で被写体に合ったアノテーション画像を被写体200に投影できる。これにより、被写体200が移動するような場合であっても、被写体200の移動に合わせて被写体200の同じ位置にアノテーション画像201を投影できる。
【0048】
また、本実施形態によれば、被写体200の位置を遠隔端末100側から変更した場合であっても、変更に合わせてアノテーション画像の投影位置が自動的に変更されるので、遠隔端末100からの操作性がさらに向上する。また、アノテーション画像201を被写体200に一部分ずつ投影しながら被写体200のアノテーション画像が投影される部分の三次元形状を測定することにより、別途被写体に三次元形状を計測するための光を投影する必要がなくなる。また、アノテーション画像201が投影された被写体200を撮像した撮像画像を用いて三角測量法により被写体200のアノテーション画像201が投影される部分の三次元形状を計測することにより、被写体200におけるアノテーション画像が投影された投影部分の三次元的座標位置を正確に検出できるので、被写体200の回転移動に伴うアノテーション画像の投影位置の修正が精密にできる。
【0049】
上記実施形態では、投影手段としてプロジェクタを用いた場合について説明したが、これに限定されるわけではなく、例えば、レーザ光等の光を被写体に照射して画像を形成することも可能である。
【0050】
上記実施形態では、相対位置変更手段として回転ステージを例に挙げて説明したが、これに限定されるわけではなく、例えば、ロボット等を相対位置変更手段として使用することも可能であるし、上記実施形態では、被写体を移動させる場合について説明したが、例えば、撮像手段としてのビデオカメラ及び投影手段としてのプロジェクタを移動させる構成とすることも可能である。
【0051】
上記実施形態では、回転ステージ70の回転を指示するために表示画面111上に回転用ボタンR1,R2を形成した場合について説明したが、これに限定されるわけではなく、キーボードを用いてもよいし、種々の方法を採用できる。
【0052】
上記実施形態では、遠隔端末100がサーバ50にネットワーク300により接続されている場合について説明したが、これに限定されるわけではなく、他の手段により遠隔端末100をサーバ50に接続することもできるし、また、遠隔端末100を被写体200の側に配置することも可能である。
【0053】
上記実施形態では、第1ビデオカメラ20の撮像画像のみをサーバ50から遠隔端末100へ配信する場合について説明したが、これに限定されるわけではなく、第2ビデオカメラ30の撮像画像も遠隔端末100へ配信する構成とすることも可能である。
【0054】
なお、本発明による遠隔指示方法は、被写体側装置10によって実現されている。また、サーバ50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を用いて実現されている。
【0055】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の遠隔指示システムの一実施形態を示す構成図である。
【図2】被写体側装置のサーバにおける処理の一例を示すフローチャートである。
【図3】遠隔端末のコンピュータにおける像形成における処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】遠隔端末側の操作の一例を説明するための図である。
【図5】被写体のアノテーション画像が投影される部分の三次元形状を計測する際の処理フローチャートである。
【図6】アノテーション画像を一部ずつ除々に被写体に投影していく様子を示す図である。
【図7】新たに投影されたアノテーション画像部分の特定方法を説明するための図である。
【図8】アノテーション画像の移動すべき三次元位置について説明するための図である。
【図9】被写体のアノテーション画像が投影される部分の三次元形状を計測する際の他の処理フローチャートである。
【図10】回転ステージの移動方向を説明するための図である。
【図11】アノテーション画像の投影方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0057】
1 遠隔指示システム
10 被写体側装置
20 ビデオカメラ
30 ビデオカメラ
40 プロジェクタ
50 サーバ
70 回転ステージ
100 遠隔端末
120 コンピュータ
200 被写体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を撮像手段により撮像させつつその撮像画像を遠隔端末に送信すると共に、該遠隔端末でなされた前記撮像画像に基づく指示に応じたアノテーション画像を投影手段により前記対象物へ投影させ得る制御手段を有する遠隔指示システムであって、
前記制御手段は、前記対象物の前記アノテーション画像が投影される部分の三次元形状を計測し、該計測した前記対象物の前記アノテーション画像が投影される部分の三次元形状に基づいて前記対象物に投影するアノテーション画像を生成することを特徴とする遠隔指示システム。
【請求項2】
前記投影手段及び前記撮像手段に対する前記対象物の相対的な位置関係を変更する相対位置変更手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記相対位置変更手段による前記対象物の移動に合わせて前記投影手段の前記対象物に対するアノテーション画像の投影位置を変更することを特徴とする請求項1に記載の遠隔指示システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記対象物に投影されたアノテーション画像を利用して前記対象物の前記アノテーション画像が投影される部分の三次元形状を計測することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の遠隔指示システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記アノテーション画像を前記対象物に一部分ずつ投影しながら前記対象物の前記アノテーション画像が投影される部分の三次元形状を測定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の遠隔指示システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記アノテーション画像が投影された対象物を撮像した撮像画像を用いて三角測量法により前記対象物の前記アノテーション画像が投影される部分の三次元形状を計測することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の遠隔指示システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記投影手段により前記アノテーション画像を一部分ずつ前記対象物に投影していき、該投影されたアノテーション画像を前記撮像手段で撮像した撮像画像に基づいて前記対象物の前記アノテーション画像が投影される部分の三次元形状を計測することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の遠隔指示システム。
【請求項7】
前記相対位置変更手段は、前記対象物を回動させ得る回転ステージを含むことを特徴とする請求項2から請求項6のいずれかに記載の遠隔指示システム。
【請求項8】
前記制御手段は、前記相対位置変更手段による前記対象物の相対的な位置関係の変更が所定期間停止した後に前記投影手段の前記対象物に対するアノテーション画像の投影位置を変更することを特徴とする請求項2から請求項7のいずれかに記載の遠隔指示システム。
【請求項9】
前記相対位置変更手段は、前記対象物を上下、左右及び斜めの方向の少なくともいずれかの方向に移動させることにより前記投影手段及び前記撮像手段に対する前記対象物の相対的な位置関係を変更することを特徴とする請求項2から請求項7のいずれかに記載の遠隔指示システム。
【請求項10】
前記制御手段は、前記投影手段により前記アノテーション画像を前記対象物の幅方向、前記対象物の高さ方向及び前記アノテーション画像の最小幅の方向に前記アノテーション画像を一部分ずつ投影させることを特徴とする請求項4又は請求項6に記載の遠隔指示システム。
【請求項11】
前記制御手段は、前記投影手段により前記アノテーション画像を一部分ずつ投影させる際に新たに投影する箇所を強調して投影させることを特徴とする請求項4又は請求項6に記載の遠隔指示システム。
【請求項12】
対象物を撮像手段により撮像させつつその撮像画像を遠隔端末に送信すると共に、該遠隔端末でなされた前記撮像画像に基づく指示に応じたアノテーション画像を投影手段により前記対象物へ投影する遠隔指示方法であって、
前記対象物の前記アノテーション画像が投影される部分の三次元形状を計測する計測工程と、
前記計測した対象物の前記アノテーション画像が投影される部分の三次元形状に基づいて前記対象物に投影するアノテーション画像を生成する生成工程と
を有することを特徴とする遠隔指示方法。
【請求項13】
前記投影手段及び前記撮像手段に対する前記対象物の相対的な位置関係を変更する工程と、
前記対象物の移動に合わせて前記投影手段の前記対象物に対するアノテーション画像の投影位置を変更する工程とをさらに有することを特徴とする請求項12に記載の遠隔指示方法。
【請求項14】
前記計測工程は、前記対象物に投影されたアノテーション画像を利用して前記対象物の前記アノテーション画像が投影される部分の三次元形状を計測することを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の遠隔指示方法。
【請求項15】
前記計測工程は、前記投影手段により前記対象物に一部分ずつ投影されたアノテーション画像を前記撮像手段で撮像した撮像画像に基づいて前記対象物の前記アノテーション画像が投影される部分の三次元形状を計測することを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の遠隔指示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−198870(P2007−198870A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−17020(P2006−17020)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】