説明

遠隔監視故障時通報代行システム

【課題】遠隔監視に関する故障が生じたときに、遠隔監視装置への通報を代行して、ビル設備の異常状態の存在の識別を外部環境状況に合わせて可能とすることである。
【解決手段】遠隔監視故障時通報代行システム10は、停電時に緊急電力を供給できるバックアップ電源16と、エレベータのかご8の緊急ボタン14が押されたことを異常信号として公衆回線20を介して遠隔監視装置22に通報する異常発生通報装置18と、異常発生通報装置18が異常信号を通報できない場合に、これに代行して異常発生信号を出力するものとして建物4の屋上等に設けられる異常発生信号手段としての発音装置30、発光装置32、無線送信装置34と、建物4の外部環境状況を検出するセンサ36と、外部環境状況に対応して異常発生信号出力手段の出力レベルを変更する制御装置50を含んで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遠隔監視故障時通報代行システムに係り、特に、建物に設置されるビル設備が異常であることを検出して遠隔監視装置に公衆回線を用いて異常発生を通報する通信経路が故障したときにこれに代行して異常発生を知らせる遠隔監視故障時通報代行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物には、エレベータ、エスカレータ、空調施設、電力供給施設、水供給施設、防火装置等の様々なビル設備が設けられる。これらのビル設備のメンテナンス等は、保守技術者がその建物に常駐する他に、これらのビル設備のそれぞれに異常検出装置を設け、公衆回線でビル設備保守管理会社等の遠隔監視装置に接続して監視を行うシステムが取られることがある。公衆回線としては、公衆電話回線、公衆に開放された無線回線等が用いられるが、例えば、地震等の場合に、公衆回線が寸断されて、建物のビル設備から遠隔監視装置に異常信号が送信できないことが起こる。また、公衆回線が寸断されない場合でも、広域災害等では、公衆回線の輻輳が著しくなり、建物のビル設備から遠隔監視装置への接続に時間がかかる場合が多い。
【0003】
このような場合に、例えば、エレベータが緊急停止したままでエレベータかごの中にユーザが孤立することが生じえるが、その異常状態を遠隔監視装置が検知できない。また、広域災害の場合に、ビル設備保守管理会社の保守技術者(Field Engineer:FE)が現場に急行して緊急巡回を行うことが行われるが、異常状態がどの建物のどのビル設備に生じているかが不明のため、異常状態のビル設備への到着に時間がかかり、例えば、エレベータかご内に孤立しているユーザの救助等に時間がかかることがある。
【0004】
このような事態に対処するため、例えば、特許文献1には、災害管理装置として、救出連絡を受けてもその対象の住居等の探索に手間取ることを解消するため、建物の外部に発光体を設け、その建物に設けられる災害管理サーバが救助レベルに応じて発光体の点灯、点滅の強弱を制御して発光させることが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−156793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術によれば、発光体の点灯によって、FEが異常状態の建物等を迅速に識別することが期待される。しかしながら、日中では発光体の点灯が識別することが困難
なことも生じ、異常状態のビル設備の存在の識別に時間がかかることがある。
【0007】
本発明の目的は、遠隔監視に関する故障が生じたときに、遠隔監視装置への通報を代行して、ビル設備の異常状態の存在の識別を外部環境状況に合わせて可能とする遠隔監視故障時通報代行システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る遠隔監視故障時通報代行システムは、建物に設置されるビル設備に備えられ、そのビル設備が異常であることを検出して異常信号を出力する異常検知手段と、建物に備えられ、異常検知手段によって異常信号が出力されると、予め定められた遠隔監視装置に公衆回線を用いて異常発生を通報する異常発生通報装置と、異常発生通報装置が遠隔監視装置に通報不能状態であることを検出して通報不能状態信号を出力する通報不能検出手段と、建物に備えられ、異常検知手段によって異常信号が出力され、かつ、通報不能検出手段によって通報不能状態信号が出力されるときに、異常発生通報装置の通報に代わって、異常発生信号を出力する異常発生信号出力手段と、異常発生信号の出力に対する建物の外部環境状況を検出する環境状況検出手段と、検出された外部環境状況に応じて、異常発生信号出力手段の出力レベルを変更する出力レベル変更手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る遠隔監視故障時通報代行システムにおいて、異常発生信号出力手段は、建物の外部から識別可能な異常発生信号を出力し、出力レベル変更手段は、外部環境状況に関連する異常発生信号の識別程度に応じて、異常発生信号出力手段の出力レベルを変更することが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る遠隔監視故障時通報代行システムにおいて、異常発生信号出力手段は、建物の外部に設けられる発音装置または発光装置を用いて異常発生信号を出力し、出力レベル変更手段は、外部環境状況に関連する異常発生信号の識別程度に応じて、発音装置の発音強度の変更または発光装置の発光強度の変更を行うことが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る遠隔監視故障時通報代行システムにおいて、異常発生信号出力手段は、予め定めた内容の無線信号を異常発生信号として出力する無線送信手段であり、携帯型の受信手段であって、異常発生信号出力手段が出力する異常発生信号を受信する異常発生信号受信手段を備え、出力レベル変更手段は、外部環境状況に関連する異常発生信号の受信状況に応じて、無線信号の送信強度の変更を行うことが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る遠隔監視故障時通報代行システムにおいて、異常発生信号出力手段は、異常発生信号を出力した後、異常発生信号受信手段からの受信通知を取得するまで、予め定めた時間間隔で送信を継続することが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る遠隔監視故障時通報代行システムにおいて、異常発生信号出力手段は、異常発生信号を出力した後、その出力を停止することができる停止手段を備えることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る遠隔監視故障時通報代行システムにおいて、停電時に異常発生信号発生装置の作動をバックアップするバックアップ電源を備えることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る遠隔監視故障時通報代行システムにおいて、ビル設備は、建物に設置されたエレベータであって、異常検知手段は、エレベータかご内においてユーザによって緊急ボタンが操作されたことを検知する手段であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
上記構成により、遠隔監視故障時通報代行システムは、建物に設置されるビル設備が異常であることを検出されると、予め定められた遠隔監視装置に公衆回線を用いて異常発生を通報する。ここで異常発生通報装置が遠隔監視装置に通報不能状態であるときには、異常発生通報装置の通報に代わって、異常発生信号を出力する。このとき、異常発生信号の出力に対する建物の外部環境状況を検出し、検出された外部環境状況に応じて、異常発生信号出力手段の出力レベルを変更する。これにより、外部環境に対応して、異常状態の存在の識別が可能となる。
【0017】
また、遠隔監視故障時通報代行システムにおいて、建物の外部から識別可能な異常発生信号を出力し、その際に、外部環境状況に関連する異常発生信号の識別程度に応じて、異常発生信号出力手段の出力レベルを変更する。これにより、外部環境に対応して、異常状態の存在の識別が容易になる。
【0018】
また、遠隔監視故障時通報代行システムにおいて、建物の外部に設けられる発音装置または発光装置を用いて異常発生信号を出力し、その際に、外部環境状況に関連する異常発生信号の識別程度に応じて、発音装置の発音強度の変更または発光装置の発光強度の変更を行う。例えば、日中は発音装置を用い、環境の騒音程度等に応じて発音強度を変更し、夜間には発光装置を用い、環境の暗さ等に応じて発光強度を変更することにより、外部環境に適切に対応して、異常状態の存在の識別が容易になる。
【0019】
また、遠隔監視故障時通報代行システムにおいて、予め定めた内容の無線信号を異常発生信号として出力し、この異常発生信号を携帯型の無線受信装置で受信するものとし、その際に、外部環境状況に関連する異常発生信号の受信状況に応じて、無線信号の送信強度の変更を行う。例えば、災害状況によって無線受信状態が低下している状況、あるいはビル街、山間部等の場合には、受信感度等に応じて無線信号の送信強度の変更を行うことで、異常状態の存在の識別が容易になる。受信感度の検出にはモニタ受信装置を用いてもよく、あるいは、無線受信装置から受信通知を受け取ることを検出し、受信通知を受け取るまで、時間経過とともに送信強度を次第に高くするものとしてもよい。
【0020】
また、遠隔監視故障時通報代行システムにおいて、異常発生信号を出力した後、異常発生信号受信手段からの受信通知を取得するまで、予め定めた時間間隔で送信を継続するので、異常状態の存在の識別活動を継続的に行うことができる。
【0021】
また、遠隔監視故障時通報代行システムにおいて、異常発生信号を出力した後、その出力を停止することができる停止手段を備えるので、例えば、異常処理が終了すれば、異常発生信号の出力を停止し、それに要する電力等を抑制することができる。
【0022】
また、遠隔監視故障時通報代行システムにおいて、停電時に異常発生信号発生装置の作動をバックアップするバックアップ電源を備えるので、停電時、特に暗闇となっている状況の下でも、異常状態の存在の識別が容易となる。
【0023】
また、遠隔監視故障時通報代行システムにおいて、ビル設備は、建物に設置されたエレベータであって、異常検知手段は、エレベータかご内においてユーザによって緊急ボタンが操作されたことを検知する手段である。これによって、エレベータかごの中にユーザが孤立している状態であることの識別が容易にでき、孤立するユーザの救助を迅速に行うことが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、ビル設備としてエレベータを説明するが、これ以外のビル設備であってもよい。例えば、エスカレータ、空調施設、電力供給施設、水供給施設、防火装置等であってもよい。また、異常信号として、地震発生で緊急停止したエレベータかご内においてユーザによって緊急ボタンが操作されたことを検知する信号を説明するが、地震発生のときでなくても構わない。また、ビル設備がエレベータの場合であっても、これ以外の異常を検出する信号であってもよい。例えば、エレベータの運行異常を検出する信号であってもよい。また、ビル設備がエレベータ以外の場合には、勿論、そのビル設備に対応する異常検出信号であってよい。また、地震計、風速計、雨量計、漏電検出計等の検出する信号を第1次的な異常信号とすることもできる。
【0025】
また、異常発生信号出力手段としては、発音装置、発光装置、無線送信装置の3つが備えられるものとして説明するが、勿論、これらの中の1種類または2種類が備えられるものとしてもよく、同種類のものが複数台備えられるものとしてもよい。また、異常発生信号出力手段としては、1つの建物単位で設けられるものとして説明するが、複数台のビル設備のそれぞれに対応付けて異常発生信号手段を設けるものとしてもよい。
【0026】
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0027】
図1は、遠隔監視故障時通報代行システム10の構成を示す図である。図1では、地震が発生して大地2が揺れ、これによって建物4が揺れて、地震計12がこれを感知して建物4のエレベータを緊急停止させ、昇降路6内にエレベータのかご8が停止したままとなり、エレベータのかご8の中のユーザによって、かご内の緊急ボタン14が押された状況を想定して、遠隔監視故障時通報代行システム10の様子が示されている。
【0028】
遠隔監視故障時通報代行システム10は、停電時でも各要素が作動するように緊急電力を供給できるバックアップ電源16と、図1の場合には、エレベータのかご8の緊急ボタン14が押されたことを検知してこれを異常信号が検出されたとして、公衆回線20を介して遠隔監視装置22に通報する異常発生通報装置18と、異常発生通報装置18が異常信号を送信できない場合に、これに代行して異常発生信号を出力するものとして建物4の屋上等に設けられる異常発生信号手段である発音装置30、発光装置32、無線送信装置34と、建物4の外部環境状況を検出するセンサ36と、これらの各要素の動作を全体として制御する制御装置50を含んで構成される。
【0029】
また、図1には、遠隔監視故障時通報代行システム10を構成するものとして、異常発生信号を認識して異常発生現場に急行するビル設備保守管理会社の保守技術者(FE)40と、保守技術者(FE)40が携行する携帯型受信装置である異常発生信号受信装置42が示されている。
【0030】
図2は、制御装置50を中心として、遠隔監視故障時通報代行システム10をブロック図で示したものである。
【0031】
地震計12は、建物4の揺れを検知する加速度計で、ビル設備の運転に危険等がある場合に、これらのビル設備の運転を自動的に緊急停止させる緊急停止信号を出力する機能を有する。地震計12は、建物4の揺れを検出するのに適した場所に設置され、図1の例では、エレベータの昇降路6の中に設けられている。
【0032】
緊急ボタン14は、かご8内の異常を外部に知らせるために、上記のようにエレベータのかご8の中に設けられ、ユーザによって操作されるボタンである。緊急ボタン14が押されると、制御装置50によってその検出信号が異常信号として扱われ、異常信号は、異常発生通報装置18、公衆回線20を介し、その建物4のエレベータの保守を担当するビル設備保守管理会社の遠隔監視装置22に伝送される。
【0033】
公衆回線20は、有線電話回線であるが、これ以外に、公衆に開放されている無線回線、例えば、携帯電話回線であってもよい。
【0034】
遠隔監視装置22は、各ビル設備からの各種状態信号を取得して、各ビル設備の状態を監視する装置で、上記のように、そのビル設備の保守を担当するビル設備保守管理会社に設けられる。もっとも、大規模なビルのように、その建物4の中にそのビル設備保守管理会社の事務所がある場合等においては、その建物4の中に遠隔監視装置22が設けられるものとしてもよい。
【0035】
遠隔監視装置22に伝送される各ビル設備からの各種状態信号には、ビル設備が設けられる建物4の識別情報、ビル設備の識別情報が含まれる。異常信号がエレベータのかご8からの緊急ボタン14が押されたことを検出する信号の場合には、建物4を識別する建物番号、エレベータのかご8を識別するエレベータ号機番号、緊急ボタン14が押されたことを示す信号識別番号等が含まれる。
【0036】
異常発生通報装置18は、各種ビル設備と遠隔監視装置22との間に設けられ、各種ビル設備から予め設定された異常信号が出力されると、これを取得して、遠隔監視装置22に公衆回線20を介して異常発生を自動的に通報する機能を有する自動発報装置である。
【0037】
発音装置30は、制御装置50の制御の下で、異常発生通報装置18が通報を正常に行なえないときに、これに代わって、異常発生信号として、予め定められた音を出力する異常発生信号出力手段である。かかる発音装置30としては、サイレン、ブザー、ベル等の他、音声を出力できるスピーカ等を用いることができる。
【0038】
発光装置32は、発音装置30と同様に、制御装置50の制御の下で異常発生信号を出力する機能を有する装置である。ここでは、音ではなく、予め定められた光を出力する。かかる発光装置32としては、サーチライト、ランプ、発光ダイオード、ネオン管等を用いることができる。
【0039】
無線送信装置34は、発音装置30、発光装置32と同様に、制御装置50の制御の下で異常発生信号を出力する機能を有する異常発生信号出力手段である。ここでは、音、光ではなく、予め定められた無線信号を出力する。無線信号としては、各ビル設備からの各種状態信号を含むことができる。かかる無線送信装置34としては、アンテナと、予め定められた周波数帯で予め定められた無線出力強度範囲内で無線信号を送信できる無線送信回路を含んで構成することができる。なお、無線送信装置34は、異常発生信号の出力を開始した後、異常発生信号受信装置42からの受信通知を取得するまで、予め定めた時間間隔で送信を継続するものとできる。これによって、消費電力を抑制しながら送信を継続できる。
【0040】
異常発生信号受信装置42は、図1で説明したように、保守技術者(FE)40が携行する携帯型の異常発生信号受信手段である。この異常発生信号受信装置42は、無線送信装置34から送信される異常発生信号を受信できる受信回路と、受信した情報を表示データに変換する信号処理回路と、変換された表示データを表示するディスプレイ等を含んで構成される。かかる異常発生信号受信装置42としては、保守技術者(FE)40にとって扱いやすく特化した仕様の無線受信器、あるいは、特化した仕様を盛り込んだ携帯電話を用いることができる。
【0041】
上記のように、無線送信装置34から送信される無線信号には各ビル設備の各種状態信号を含むので、ディスプレイには、その情報が表示される。図1の例では、建物番号、エレベータ号機番号、緊急ボタン14が押されたことを示す信号識別番号等が表示される。これによって、保守技術者(FE)40は、エレベータのかご内にユーザが閉じ込められていることを知り、また、ユーザが閉じ込められているエレベータのかご8が、どの建物のどのエレベータ号機かを直ちに認識することができる。
【0042】
センサ36は、異常発生信号の出力に対する建物4の外部環境状況を検出する機能を有する環境状況検出手段である。センサ36は、発音装置30、発光装置32、無線送信装置34のそれぞれの出力に対する建物4の外部環境状況を検出するので、3種類の測定器を組み合わせたものである。
【0043】
発音装置30に対する外部環境状況検出としては、建物4の周囲の騒音レベルを検出するものとできる。この場合のセンサ36としては、騒音計を用いることができる。発光装置32に対する外部環境状況検出としては、建物4の周囲の明るさレベルを検出するものとできる。この場合のセンサ36としては、照度計を用いることができる。無線送信装置34に対する外部環境状況検出としては、建物4の周囲の無線受信感度レベルを検出するものとできる。この場合のセンサ36としては、モニタ受信装置を用いて、これによって無線受信感度を検出するものとできる。あるいは、異常発生信号受信装置42からの受信通知を受け取ることを検出し、検出できないときは建物4の周囲の無線受信感度レベルが低いものとすることができる。
【0044】
図1で示されているバックアップ電源16は、遠隔監視故障時通報代行システム10を構成する要素で建物4に設けられるものに、停電時に緊急電力を供給する機能を有する緊急電源(Urgent Power Supply:UPS)である。例えば、発音装置30、発光装置32、無線送信装置34、センサ36に緊急電力を供給する機能を有する。かかるバックアップ電源16としては、停電時に自動的に通常電源と切り換わることができる適当な発電装置、蓄電装置等を用いることができる。
【0045】
図2の制御装置50は、上記のように、遠隔監視故障時通報代行システム10を構成する各要素の動作を全体として制御する機能を有する。かかる制御装置50としては、適当な制御回路、またはコンピュータを用いることができる。制御装置50は、切替制御部52と出力制御部54を含んで構成される。
【0046】
切替制御部52は、異常発生通報装置18が異常信号を通報できないときに、異常信号発生手段である発音装置30、発光装置32、無線送信装置34によって異常発生信号を出力するように切り換える機能を有する。切替制御部52は、建物4に設置されるビル設備が異常であることを検出して異常信号を出力する異常検知モジュール56と、異常発生通報装置18が遠隔監視装置22に通報不能状態であることを検出して通報不能状態信号を出力する通報不能検出モジュール58と、異常信号が出力され、かつ、通報不能状態信号が出力されるときに、異常発生通報装置18の通報に代わって、発音装置30、発光装置32、無線送信装置34によって異常発生信号を出力する異常発生信号出力モジュール60を含んで構成される。
【0047】
出力制御部54は、異常信号発生手段である発音装置30、発光装置32、無線送信装置34の動作を制御する機能を有する。出力制御部54は、異常発生信号の出力に対する建物4の外部環境状況を検出する環境状況検出モジュール62と、検出された外部環境状況に応じて、異常発生信号出力手段の出力レベルを変更する出力レベル変更モジュール64と、無線送信装置34の動作を制御するために異常発生信号受信装置42からの受信通知を取得する受信通知取得モジュール66と、保守技術者(FE)40による異常処理が終了したときに出力停止スイッチ38の操作を検出して異常信号発生手段の出力を停止する出力停止処理モジュール68を含んで構成される。出力停止スイッチ38としては、例えば、保守技術者(FE)40の手動操作によって発音装置30、発光装置32、無線送信装置34の作動を止めるスイッチを用いることができる。
【0048】
これらの機能はソフトウェアによって実現でき、具体的には、遠隔監視故障時通報代行処理プログラムを実行することで実現できる。これらの機能の一部をハードウェアで実現するものとしてもよい。
【0049】
上記構成の作用、特に制御装置50の各機能について、図3のフローチャートを用いて詳細に説明する。図3のフローチャートは、建物4のビル設備から異常信号が出力され、さらに異常発生通報装置18に関連する故障が生じたときに、異常状態を処理する手順を示すフローチャートである。図3の手順は、制御装置50の機能によって実行される手順の他に、異常発生信号を認識した保守技術者(FE)40によって行われる手順も含まれる。図3では、制御装置50によって実行される手順を実線枠で示し、保守技術者(FE)40によって行われる手順を破線枠で示してある。実線枠で示される各手順は、遠隔監視故障時通報代行処理プログラムの各処理手順に対応する。
【0050】
図3において、通常状態(S10)から異常検出(S12)が行われると、S14以下の手順が行われる。異常検出の工程は、制御装置50の異常検知モジュール56の機能によって実行される。具体的には、エレベータのかご8に設けられる緊急ボタン14がユーザによって操作されたことを検出して、異常信号が出力される。
【0051】
異常信号が出力されると異常発生通報を発報する通報指令が出される(S14)。具体的には、異常信号が出力されたことを取得し、異常発生通報装置18に対し、公衆回線20を経由して異常発生を遠隔監視装置22に通報する指示が伝送される。
【0052】
そして、通報が不能であるか否かが判断される(S16)。この工程は、制御装置50の通報不能検出モジュール58の機能によって実行される。通報が不能であるとは、異常発生通報装置18そのものに故障がある場合、公衆回線20が寸断されて通報がそこで断絶する場合、遠隔監視装置22に故障がある場合の他に、公衆回線20が輻輳して、異常発生の通報が予め定めた時間内に遠隔監視装置22に到達しない場合等が含まれる。通報が不能であるか否かは、遠隔監視装置22に対して、通報受信のときには受信通知を送信することを要求するものとし、予め定めた時間内に受信通知が戻ってこないときに、通報が不能であると判断するものとできる。予め定めた時間としては、例えば5秒等を設定することができる。
【0053】
通報が不能であるとは判断されないときは、正常に遠隔監視装置22が異常発生の通報を受信する(S40)。この場合には、遠隔監視装置22が異常発生の通報に含まれる情報を分析し、必要に応じ保守技術者(FE)40に異常発生の現場に急行する指示を発行する。異常発生の通報には、ビル設備の各種状態信号を含む。ここでは、異常発生が生じた建物番号、エレベータ号機番号、緊急ボタン14が押されたことを示す信号識別番号等が、異常発生の通報に含まれる情報である。これらの情報に基づく保守技術者(FE)40に対する現場急行指令を自動的に行うものとできる。
【0054】
例えば、予め保守技術者(FE)40の担当分野のデータ、時間帯と所在位置との関係データ等をデータベースに逐次記憶させておき、異常発生の通報に含まれる情報との照合を予め定めた手順で実行する。これによって、異常発生の現場に急行できる保守技術者(FE)40の特定を行い、保守技術者(FE)40の携行する携帯電話等を介して、異常発生の現場に関する情報を自動的に送信するものとできる。そこで保守技術者(FE)40は異常発生の現場に急行する。現場到着(S30)の後の手順については後述する。
【0055】
S16において通報が不能であると判断されると、公衆回線20を介した遠隔監視装置22への通報のリダイアルを続けることとし、さらに、異常発生信号出力への切替が行われる(S18)。そして、異常発生信号が出力される(S20)。この工程は、制御装置50の異常発生信号出力モジュール60の機能によって実行される。具体的には、異常発生信号出力手段である発音装置30、発光装置32、無線送信装置34に対し、予め定めた内容の異常発生信号を出力する指令が与えられる。
【0056】
異常発生信号出力手段としては、発音装置30、発光装置32、無線送信装置34の3種類が設けられているが、これら3つを平行して用いることもできるが、例えば、日中の明るいときに発光装置32を用いても余り効果的ではない。逆に暗闇の中で発音装置30を用いても建物4を特定して認識することが困難である。無線送信装置34は、日中でも暗闇でも有効と考えることができる。また、発光装置32は、保守作業者(FE)40によって視認されるにはある程度の発光強度が必要で、その消費電力が大きくなることが考えられる。その観点からは、発音装置30を優先して用い、発音装置30では効果が薄いときに発光装置32を用いることがよい。これらのことから、発音装置30、発光装置32、無線送信装置34の3種類の用い方についてその決定方法を予め定めておき、その決定方法に従って、用いる異常発生信号出力手段を特定することが好ましい。
【0057】
用いる異常発生信号出力手段が特定されると、次に環境状況の検出が行われる(S22)。この工程は、制御装置50の環境状況検出モジュール62の機能によって実行される。具体的には、特定された異常発生信号出力手段の種類に応じて、センサ36が建物4の外部環境状況を検出する。上記のように、発音装置30については騒音レベル、発光装置32については照度レベル、無線送信装置34については無線感度レベルが検出される。
【0058】
そして、異常発生信号出力手段の出力レベルの設定が行われ(S24)、検出された環境状況のデータと比較して、設定された出力レベルが、建物4の外部環境状況の下で十分か否かが判断される(S26)。設定された出力レベルが不十分のときは、出力レベルの再設定が行われ、外部環境状況に応じて最適となるように出力レベルが変更される。これらの工程は、制御装置50の出力レベル変更モジュール64の機能によって実行される。例えば、建物4の周囲の騒音レベルが大きいときは、発音装置30の発音強度が大きくなるように変更され、建物4の周囲の明るさが明るいときは、発光装置32の発光強度が大きくなるように変更される。建物4の周囲の無線受信感度が悪い場合には、無線送信装置34の無線信号送信強度が大きくなるように変更が行われる。
【0059】
このように、建物4の外部環境状況に対応して、発音装置30の発音強度、発光装置32の発光強度、無線送信装置34の無線送信強度の変更が行われる。これによって、巡回等で現場近くにいる保守作業者(FE)40は、建物4の屋上等に設けられる発音装置30からの発音を聞き、発光装置32からの発光を視認し、無線送信装置34からの情報を異常発生信号受信装置42によって受信してそのディスプレイ上で視認することによって、異常発生の現場を容易に検知することができる(S28)。
【0060】
これによって、保守作業者(FE)40は異常発生の現場、上記の例では、ユーザが閉じ込められているエレベータのかご8のところに迅速に到着することができる(S30)。
S16において通報が不能であると判断されないときに、遠隔監視装置22が異常発生の通報を受信(S40)し、これによって保守作業者(FE)40に現場急行の指令が発行されたときも、このS30の工程の状態となる。
【0061】
そして、保守技術者(FE)40は、異常回復処理を行う(S32)。上記の場合、エレベータのかご8からユーザを救助する。そして、一連の異常回復処理を済ませると、終了処理を行う(S34)。上記の例では、エレベータに異常が発生していないか等の点検確認を行って正常のときに保守作業の終了処理を行う。そして、図2で説明した出力停止スイッチ38を操作して、異常発生信号出力手段の出力停止を行う(S36)。この工程は、制御装置50の出力停止処理モジュール68の機能によって実行される。場合によっては、S32の異常回復処理が完了した直後にS36を行うものとしてもよく、S30の現場到着と共にS36を行うものとしてもよい。
【0062】
なお、無線送信装置34が、異常発生信号受信装置42からの受信通知を取得したときは異常発生信号の送信を停止する設定としてもよい。この手順は、制御装置50の受信通知取得モジュール66の機能によって実行される。このような設定を行って、保守作業者(FE)40が異常発生の現場に到着する前に既に異常発生信号の出力が停止しているときは、無線送信装置34に対するS36の工程を省略することができる。
【0063】
そして、異常発生通報装置18の通報リダイアルを停止する(S38)。これによって、異常発生信号が出力され、かつ異常発生通報装置18による通報が不能のときの異常状態の処理が終了する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る実施の形態における遠隔監視故障時通報代行システムの構成を示す図である。
【図2】本発明に係る実施の形態において、制御装置を中心とした遠隔監視故障時通報代行システムのブロック図である。
【図3】本発明に係る実施の形態において、建物のビル設備から異常信号が出力され、さらに異常発生通報装置に関連する故障が生じたときに、異常状態を処理する手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
2 大地、4 建物、6 昇降路、8 エレベータのかご、10 遠隔監視故障時通報代行システム、12 地震計、14 緊急ボタン、16 バックアップ電源、18 異常発生通報装置、20 公衆回線、22 遠隔監視装置、30 発音装置、32 発光装置、34 無線送信装置、36 センサ、38 出力停止スイッチ、40 保守技術者(FE)、42 異常発生信号受信装置、50 制御装置、52 切替制御部、54 出力制御部、56 異常検知モジュール、58 通報不能検出モジュール、60 異常発生信号出力モジュール、62 環境状況検出モジュール、64 出力レベル変更モジュール、66 受信通知取得モジュール、68 出力停止処理モジュール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に設置されるビル設備に備えられ、そのビル設備が異常であることを検出して異常信号を出力する異常検知手段と、
建物に備えられ、異常検知手段によって異常信号が出力されると、予め定められた遠隔監視装置に公衆回線を用いて異常発生を通報する異常発生通報装置と、
異常発生通報装置が遠隔監視装置に通報不能状態であることを検出して通報不能状態信号を出力する通報不能検出手段と、
建物に備えられ、異常検知手段によって異常信号が出力され、かつ、通報不能検出手段によって通報不能状態信号が出力されるときに、異常発生通報装置の通報に代わって、異常発生信号を出力する異常発生信号出力手段と、
異常発生信号の出力に対する建物の外部環境状況を検出する環境状況検出手段と、
検出された外部環境状況に応じて、異常発生信号出力手段の出力レベルを変更する出力レベル変更手段と、
を備えることを特徴とする遠隔監視故障時通報代行システム。
【請求項2】
請求項1に記載の遠隔監視故障時通報代行システムにおいて、
異常発生信号出力手段は、建物の外部から識別可能な異常発生信号を出力し、
出力レベル変更手段は、外部環境状況に関連する異常発生信号の識別程度に応じて、異常発生信号出力手段の出力レベルを変更することを特徴とする遠隔監視故障時通報代行システム。
【請求項3】
請求項2に記載の遠隔監視故障時通報代行システムにおいて、
異常発生信号出力手段は、建物の外部に設けられる発音装置または発光装置を用いて異常発生信号を出力し、
出力レベル変更手段は、外部環境状況に関連する異常発生信号の識別程度に応じて、発音装置の発音強度の変更または発光装置の発光強度の変更を行うことを特徴とする遠隔監視故障時通報代行システム。
【請求項4】
請求項1に記載の遠隔監視故障時通報代行システムにおいて、
異常発生信号出力手段は、予め定めた内容の無線信号を異常発生信号として出力する無線送信手段であり、
携帯型の受信手段であって、異常発生信号出力手段が出力する異常発生信号を受信する異常発生信号受信手段を備え、
出力レベル変更手段は、外部環境状況に関連する異常発生信号の受信状況に応じて、無線信号の送信強度の変更を行うことを特徴とする遠隔監視故障時通報代行システム。
【請求項5】
請求項4に記載の遠隔監視故障時通報代行システムにおいて、
異常発生信号出力手段は、異常発生信号を出力した後、異常発生信号受信手段からの受信通知を取得するまで、予め定めた時間間隔で送信を継続することを特徴とする遠隔監視故障時通報代行システム。
【請求項6】
請求項1に記載の遠隔監視故障時通報代行システムにおいて、
異常発生信号出力手段は、異常発生信号を出力した後、その出力を停止することができる停止手段を備えることを特徴とする遠隔監視故障時通報代行システム。
【請求項7】
請求項1に記載の遠隔監視故障時通報代行システムにおいて、
停電時に異常発生信号発生装置の作動をバックアップするバックアップ電源を備えることを特徴とする遠隔監視故障時通報代行システム。
【請求項8】
請求項1に記載の遠隔監視故障時通報代行システムにおいて、
ビル設備は、建物に設置されたエレベータであって、
異常検知手段は、エレベータかご内においてユーザによって緊急ボタンが操作されたことを検知する手段であることを特徴とする遠隔監視故障時通報代行システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−20659(P2010−20659A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182253(P2008−182253)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】