説明

遮光フィルム

【課題】リードフレームとの接着性が良好でかつ耐熱性に優れる遮光フィルムを提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、カーボンブラック(C)及びパラビニルフェノールのホモポリマ(D)を含有してなる遮光フィルム、上記成分の他に、フィラー(E)を含有してなる遮光フィルムであり、上記成分のうち熱硬化性樹脂(A)は、エポキシ樹脂とフェノール樹脂が好ましく、熱可塑性樹脂(B)は、熱硬化性樹脂(A)と反応しうる置換基を側鎖に有するアクリルゴムが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロニクス材料として好適な遮光フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス用途に用いられる発光ダイオード表示装置として、その製造方法が幾つか提案されている。その中で、電子部品の成形容器に、リードフレームを組み付けた後、樹脂を注型して発光ダイオード表示装置を製造する方法などがある。
これらの方法は、リードフレームの背面に紙材又はプラスチックシートを吸光材とし密着固定することで光の漏洩が阻止され、発光ダイオード表示装置の誤動作を防止する効果がある。
【0003】
また、リードフレームの背面に吸光材を密着固定することで樹脂を注入する際、樹脂のブリードアウトを防止することが出来る(特許文献1参照)。
しかし、これらの方法では確かに遮光性、ブリードアウトについては向上するものの、リードフレームと吸光材の接着性向上効果及び吸光材自体の耐熱性が十分であるとは言いがたい。
【特許文献1】特公平7−92642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、リードフレームとの接着性が良好でかつ耐熱性に優れる遮光フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、熱硬化性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、カーボンブラック(C)及びパラビニルフェノールのホモポリマ(D)を含有してなる遮光フィルムに関する。
また、本発明は、上記成分の他に、フィラー(E)を含有してなる遮光フィルムに関する。
また、本発明は、熱硬化性樹脂(A)が、エポキシ樹脂とフェノール樹脂からなる前記の遮光フィルムに関する。
【0006】
また、本発明は、熱可塑性樹脂(B)が、熱硬化性樹脂(A)と反応しうる置換基を側鎖に有するアクリルゴムである前記の遮光フィルムに関する。
また、本発明は、遮光フィルムを構成する層の部分の少なくとも1層が支持フィルムであり、全厚みが10〜300μmである前記の遮光フィルムに関する。
さらに、本発明は、支持フィルムが、ポリイミドである前記の遮光フィルムに関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の遮光フィルムは、各種リードフレームとの接着力及び耐熱性に優れており、また透過率が低く遮蔽効果が高い結果を示しており、エレクトロニクス材料、発光ダイオード表示装置用材料として工業的に極めて利用価値が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の遮光フィルムは、熱硬化性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、カーボンブラック(C)及びパラビニルフェノールのホモポリマ(D)若しくは熱硬化性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、カーボンブラック(C)、パラビニルフェノールのホモポリマ(D)及びフィラー(E)を必須成分とする。
【0009】
本発明に用いられる熱硬化性樹脂(A)としては、例えば、ビスマレイミド樹脂、シアネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられ、1種又は2種以上併用して使用することができる。こられの樹脂のうち、エポキシ樹脂、フェノール樹脂が好ましい。
【0010】
また、熱可塑性樹脂(B)としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等が挙げられる。その他に、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム(EPラバー)、アクリルゴム等を任意に使用することができる。
【0011】
これらの樹脂のうち、熱可塑性樹脂(B)が、熱硬化性樹脂(A)と反応しうる置換基を側鎖に有するアクリルゴムが好ましい。
換基としては、ビニル基、アリル基、フェノール基、グリジシル基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0012】
また、カーボンブラック(C)としては、分散性を考慮し、平均粒子径が1μm以下のものを使用することが好ましい。その配合量としては、遮光フィルム(支持フィルムを除く)100重量部に対し、遮光性の関係から、0.5〜20重量部が好ましく、3〜15重量部がより好ましく、5〜10重量部がさらに好ましい。
【0013】
パラビニルフェノールのホモポリマ(D)の配合量は、分散性、遮光性を考慮し、遮光フィルム(支持フィルムを除く)100重量部に対し、0.5〜20重量部が好ましく、3〜15重量部がより好ましく、5〜10重量部が更に好ましい。
【0014】
フィラー(E)としては、シリカ、アルミナ、マイカ、酸化チタン、ジルコニア、珪酸カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、炭酸カルシウム、炭化珪素、窒化ホウ素、銀粉、金粉、銅粉、ニッケル粉等の無機フィラーが挙げられる。これらのうち、シリカをベースとしたフィラーが好ましい。
【0015】
また、フィラー(E)の配合量は、遮光フィルム(支持フィルムを除く)100重量%に対し、70重量%以下が好ましい。無機フィラーの配合量が70重量%を超えると、接着性が低下する傾向がある。
【0016】
本発明に用いられる支持フィルムとしては、ポリイミド、ポリアミド、ポリサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等の絶縁性耐熱性樹脂フィルムが挙げられる。これらのうち、耐熱性、電気特性を考慮するとポリイミドフィルムが好ましい。
【0017】
支持フィルムの厚さは、5〜200μmが好ましく、20〜75μmがさらに好ましい。
これらの支持フィルムは、表面を処理して用いることが好ましい。
支持フィルムの表面処理方法としては、サンドマット加工、化学処理、プラズマ処理、コロナ処理等があるが、密着性を考慮すると、プラズマ処理、化学処理が好ましい。
【0018】
また、本発明における遮光フィルムには、これら以外に、カップリング剤、充填剤、安定剤、顔料、界面活性剤、溶剤、硬化促進剤等を目的に応じて含んでいてもよい。
さらに、必要に応じて遮光フィルムを保護する目的で、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のカバーフィルムを使用することができる。
【0019】
支持フィルム上に遮光層を形成する方法としては、特に制限はないが、遮光層となる樹脂組成物を有機溶剤に溶解して作製したワニスを支持フィルム上に塗工した後、加熱処理して溶剤の除去をすることで、片面又は両面に遮光層を形成したフィルムにすることができる。
【0020】
上記有機溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、m−クレゾール、ピリジン、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチルセロソルブアセテート、トルエン等が挙げられ、これらは単独又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0021】
塗工方法は特に制限はないが、例えば、ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、バーコート、コンマコート等が挙げられる。支持フィルム上に形成される遮光層の厚さとしては、1〜100μmが好ましく、10〜30μmがさらに好ましい。遮光層の厚さが1μm未満では、接着性が劣る傾向があり、100μmを超えるものでは、生産性が劣る傾向がある。
【0022】
このようにして得た遮光フィルムは、図1に示すような構成となる。この遮光フィルムは、リードフレームとの接着性が良好な遮光フィルムとして使用することができる。図1において1は支持フィルム及び2は遮光層である。
本発明の遮光フィルムを接着する際、使用されるリードフレームの材質としては特に制限はなく、銅、アルミ合金、鉄−ニッケル合金等が挙げられる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の例に制限するものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を意味する。
【0024】
実施例1
熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂(東都化成(株)製、商品名YDCN−703)13.0部、フェノール樹脂(三井化学(株)製、商品名XLC−LL)11.0部、熱可塑性樹脂であるグリジシル基含有アクリルゴム(ナガセケムテック(株)製、商品名HTR860P−3)65.0部、カーボンブラック10.0部、パラビニルフェノールのホモポリマ10.0部、カップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカ(株)製、商品名A−189)0.5部、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカ(株)製、商品名A−1160)1.0部、硬化促進剤として、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール(四国化成(株)製、商品名2PZ−CN)0.025部及びフィラー(日本アエロジル(株)製、商品名R972V)7.0部からなる組成物を用い、これらを有機溶剤シクロヘキサノンに溶解した。
【0025】
次に、これらをビーズミルで混合し、不揮発分が15%になるようにワニスを作製した。このワニスを用いて、化学処理したポリイミドフィルム50μm(宇部興産(株)製、商品名ユーピレックスSGA)の片面に塗布した後、90℃で5分、さらに120℃で5分間乾燥して厚さ80μmの遮光フィルムを得た。
【0026】
実施例2
熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂(東都化成(株)製、商品名YDCN−703)5.0部、同エポキシ樹脂(東都化成(株)製、商品名YD8125)14.0部、フェノール樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、商品名LF2882)12.0部、熱可塑性樹脂であるグリジシル基含有アクリルゴム(ナガセケムテック(株)製、商品名HTR860P−3)68.0部、カーボンブラック10.0部、パラビニルフェノールのホモポリマ10.0部、カップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカ(株)製、商品名A−189)0.5部、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカ(株)製、商品名A−1160)1.0部及び硬化促進剤として、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール(四国化成(株)製、商品名2PZ−CN)0.2部からなる組成物を用い、これらを有機溶剤シクロヘキサノンに溶解した。
【0027】
次に、これらをビーズミルで混合し、不揮発分が15%になるようにワニスを作製した。このワニスを用いて、化学処理したポリイミドフィルム50μm(宇部興産(株)製、商品名ユーピレックスSGA)の片面に塗布した後、90℃で5分、さらに120℃で5分間乾燥して厚さ80μmの遮光フィルムを得た。
【0028】
実施例3
熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂(東都化成(株)製、商品名YDCN−703)13.0部、フェノール樹脂(三井化学(株)製、商品名XLC−LL)11.0部、熱可塑性樹脂であるグリジシル基含有アクリルゴム(ナガセケムテック(株)製、商品名HTR860P−3)65.0部、カーボンブラック10.0部、パラビニルフェノールのホモポリマ10.0部、カップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカ(株)製、商品名A−189)0.5部、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカ(株)製、商品名A−1160)1.0部、硬化促進剤として、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール(四国化成(株)製、商品名2PZ−CN)0.025部及びフィラー(日本アエロジル(株)製、商品名R972V)7.0部からなる組成物を80%用い、さらに、熱可塑性樹脂であるポリアミドイミド樹脂〔日立化成工業(株)製、商品名HIMAL(Tg150℃)〕20%を用い、これらを有機溶剤シクロヘキサノンに溶解した。
【0029】
次に、これらをビーズミルで混合し、不揮発分が15%になるようにワニスを作製した。
このワニスを用いて、化学処理したポリイミドフィルム50μm50um(宇部興産(株)製、商品名ユーピレックスSGA)の片面に塗布した後、90℃で5分、更に120℃で5分間乾燥して厚さ80μmの遮光フィルムを得た。
【0030】
比較例1
カーボンブラック及びパラビニルフェノールのホモポリマを用いない以外は、実施例1と同様の材料を使用し、実施例1と同様の工程を経て、厚さ80μmの遮光フィルムを得た。
【0031】
比較例2
パラビニルフェノールのホモポリマを用いない以外は、実施例1と同様の材料を使用し、実施例1と同様の工程を経て、厚さ80μmの遮光フィルムを得た。
【0032】
次に、各実施例及び各比較例で得た遮光フィルムの特性を下記に示す方法で評価し、その結果を表1に示す。
(接着力)
遮光フィルムを10×50mmの寸法に切り出し、切り出した遮光フィルムを圧着プレスで、圧着温度180℃、圧力1.5MPa及び圧着時間0.5secの条件で銅リードフレームと鉄−ニッケル合金リードフレームの2種類のリードフレームにそれぞれ接着した。これを室温にて90°ピール強度の測定を行った。
また、上記と同じ条件で2種類のリードフレームと接着した遮光フィルムを170℃、1時間熱処理したものを用い、室温にて90°ピール強度の測定を行った。
【0033】
(透過率)
遮光フィルムを100×100mmの寸法に切り出し、切り出した遮光フィルムを日本分光製V−570で、25℃の条件で測定した。なお、測定波長は200〜2500nmである。
【0034】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の半導体用接着フィルムの実施態様を示す断面図であり、(a)は支持フィルムの片面に遮光層を積層した図及び(b)は支持フィルムの両面に遮光層を積層した図である。
【符号の説明】
【0036】
1 支持フィルム
2 遮光層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、カーボンブラック(C)及びパラビニルフェノールのホモポリマ(D)を含有してなる遮光フィルム。
【請求項2】
上記成分の他に、フィラー(E)を含有してなる遮光フィルム。
【請求項3】
熱硬化性樹脂(A)が、エポキシ樹脂とフェノール樹脂からなる請求項1又は2記載の遮光フィルム。
【請求項4】
熱可塑性樹脂(B)が、熱硬化性樹脂(A)と反応しうる置換基を側鎖に有するアクリルゴムである請求項1、2又は3記載の遮光フィルム。
【請求項5】
遮光フィルムを構成する層の部分の少なくとも1層が支持フィルムであり、全厚みが10〜300μmである請求項1、2、3又は4記載の遮光フィルム。
【請求項6】
支持フィルムが、ポリイミドである請求項5に記載の遮光フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2007−211084(P2007−211084A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−30882(P2006−30882)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】