説明

遮断弁

【課題】遮断弁におけるフロートの浮沈動作の円滑化を確保する。
【解決手段】インナーフロート80は、環状突起84をアウターフロート60が有する貫通孔66に入り込ませた上で、環状突起84を係合腕部68の上端に係合させ、アウターフロート60と一体化する。係合腕部68は、フロート下端側の開口側周縁部72から貫通孔66の下端に到るまで延在し、端部周壁面69を傾斜面とする。よって、係合腕部68が開口側周縁部72を起点にフロート外周側に変形しても、この係合腕部68は、弁室42においてフロート浮沈動作を案内する凸条43と接触しにくくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロートの浮沈に応じて流体流路を開閉する遮断弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タンク内の燃料蒸気をタンク外に排出するいわゆる燃料遮断弁では、タンク内の燃料液位に応じて浮沈するフロートにより流体流路(蒸気流路)を開閉することから、フロートが重要視され、種々提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2007−30806号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献では、その図9に示されているようにフロートをアウターフロートとその内部のインナーフロートで構成し、フロート下端側でアウターフロートとインナーフロートとを係合させている。この場合、アウターフロートに設けた貫通孔にインナーフロートの爪を入り込ませることで、両フロートは係合されている。
【0005】
ところで、燃料遮断弁のフロートは、タンク内の燃料或いはその蒸気に晒されることで膨潤し、その膨潤の程度によっては、フロート下端側において外周側に開くことが有り得る。特に、貫通孔を形成したアウターフロートとでは、貫通孔下端側のフロート周壁がその周辺のフロート周壁から区切られるので、この区切られた範囲のフロート周壁が外周側に開き易い。フロートは、ケーシング内のフロート浮沈領域において上下に摺動するよう、通常、ケーシング内壁、或いはケーシング内壁に設けた案内リブ等により案内されている。よって、フロート下端側での外周側への開きによりフロートが不用意にケーシング内壁や案内リブに接触すると、フロートの浮沈動作に影響し、場合によっては回路開閉タイミングのズレが危惧される。
【0006】
本発明は、上記従来の技術の問題を解決するものであり、フロートの浮沈動作の円滑化を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的の少なくとも一部を達成するために、本発明では、以下の構成を採用した。
【0008】
[適用1:遮断弁]
流体流路を開閉する遮断弁であって、
フロート浮沈領域を内部に形成し、該フロート浮沈領域においてフロートの摺動案内する案内部を有するケーシングと、
前記案内部に案内されつつ前記フロート浮沈領域で浮沈して前記流体流路を開閉し、フロート下端側を開口させた有底孔と、該有底孔の開口側において周壁が薄肉とされた薄肉部と、該薄肉部と干渉して周壁を貫通する貫通孔とを有するアウターフロートと、
該貫通孔の内部において、前記貫通孔の下端側の前記薄肉部の上端から上方内径側に向けて突出し、先端部が前記アウターフロートの内周壁より外径側に位置するアウター側係合腕部と、
前記アウターフロートの有底孔に挿入されるインナーフロートと、
該インナーフロートの外周に凸に形成され、前記インナーフロートが前記有底孔に挿入されると、前記アウター側係合腕部を弾発させつつ前記貫通孔に入り込んで前記アウター側係合腕部の前記先端部に係合するインナー側係合部とを備える
ことを要旨とする。
【0009】
上記構成の遮断弁では、アウターフロートの有底孔にインナーフロートを挿入することで、アウター・インナーの両フロートが一体となったフロートとする。このアウター・インナーの両フロートの一体化は、インナーフロートの外周に凸に形成されたインナー側係合部がアウター側係合腕部を弾発させつつアウターフロートの貫通孔に入り込んでアウター側係合腕部の端部に係合することでなされる。アウター側係合腕部は、貫通孔の内部において、貫通孔の下端側の薄肉部の上端から上方内径側に向けて突出し、その先端部をアウターフロートの内周壁より外径側に位置させて傾斜している。よって、仮にこのアウター側係合腕部が薄肉部上端を起点としてフロート外周側に膨潤等により変形しても、上記のように傾斜している都合上、アウター側係合腕部をケーシングのフロート浮沈領域においてフロートを摺動案内する案内部に接触しないようにできる。この結果、上記構成の遮断弁によれば、アウター・インナーの両フロートが一体となったフロートの浮沈動作の円滑化を確保できる。
【0010】
しかも、こうした円滑化を確保するに当たり、上記構成の遮断弁では、アウター・インナーの両フロート、もしくは一方のフロートの厚肉化を必要としないので、次の利点がある。フロート等は樹脂成形品とすることが一般的であり、こうした樹脂成形品の厚肉化は、金型内での樹脂のヒケの回避等の対処のため、生産性の低下をもたらす。しかしながら、フロートの厚肉化を必要としない上記構成の燃料弁によれば、フロートの浮沈動作の円滑化と生産性の向上とを両立できる。
【0011】
上記した遮断弁は、次のような態様とすることができる。例えば、前記アウターフロートは、前記ケーシングの案内部に案内される被案内周壁部をアウタフロート外周壁に環状に突出して備え、該被案内周壁部を前記貫通孔より下端側で前記有底孔の開口側のアウターフロート周壁とアウターフロート上端側のアウタフロート周壁とに離間して備える。こうすれば、フロートの浮沈動作を、アウターフロートにおいて離間した被案内周壁部としての貫通孔下端側のアウターフロート周壁とアウターフロート上端側のアウタフロート周壁とで確保した上で、ケーシングの案内部へのアウター側係合腕部の接触回避の実効性を高めることができる。よって、フロート浮沈動作のより一層の安定確保を図ることができる。
【0012】
また、前記アウター側係合腕部を、前記離間した前記被案内周壁部の間のアウタフロート周壁の外周壁面よりフロート内径側で前記薄肉部の上端から突出するようにでき、こうすれば、ケーシングの案内部へのアウター側係合腕部の接触回避の実効性が高まり、フロート浮沈動作の安定確保を点から望ましい。
【0013】
更に、前記アウター側係合腕部を、前記離間した前記被案内周壁部の間のアウタフロート周壁の肉厚より薄肉で前記薄肉部の上端から突出するようにでき、こうすれば、有底孔へのインナーフロートの挿入の際のアウター側係合腕部の弾発が容易となり、インナーフロートの組み付け性が高まる。
【0014】
インナーフロートの側において、前記インナー側係合部をインナーフロートの外周回りに凸とされた環状突起とでき、こうすれば、インナーフロートの外周回りの位置決めが不要となるので、インナーフロートの組み付け性が高まる。
【0015】
そして、前記ケーシングを燃料タンクの内部に位置させてタンク上部に装着され、タンク内の燃料蒸気をフロート浮沈に応じた前記流体流路の開閉を経てタンク外に排出するようにすれば、燃料ダンク内の燃料蒸気を排出する燃料遮断弁とできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以上説明した本発明の構成・作用を一層明らかにするために、以下本発明の好適な実施例について説明する。図1は本発明の一実施の形態にかかる燃料遮断弁10を縦断面視して示す断面図、図2は図1における2−2線断面に沿って燃料遮断弁10の要部を横断面視しつつ一部拡大視して示す説明図、図3はフロート50を分解視して示す説明図である。
【0017】
図示するように、燃料遮断弁10は燃料タンクFTの上部に装着される。燃料タンクFTは、その表面がポリエチレンを含む複合樹脂材料から形成されており、そのタンク上壁FTaの取付穴FTbを燃料遮断弁10の装着孔とする。取付穴FTbへの装着に当たり、燃料遮断弁10は、上蓋20の下端部21をタンク上壁FTaに熱溶着され、後述のケーシング40を燃料タンクFTの内部に位置させる。燃料遮断弁10は、車両の傾斜時や揺動時に燃料タンクFT内の燃料がキャニスタへの流出を規制するものである。
【0018】
燃料遮断弁10は、タンク外に位置する上蓋20と、有底のケーシング40と、フロート50と、スプリング90とを備え、上蓋20の下端にケーシング40を嵌合して固定させている。本実施例では、スプリング90を除く上記の構成材を樹脂成形品として備える。
【0019】
上蓋20は、図示しないキャニスタからの配管の接続管部22を側方に突出して備え、接続管部22の内部から上蓋20の下方に至るまでを蓋側通路24とする。この蓋側通路24は、上蓋20のほぼ中央位置のテーパ状の弁座凹所25を経て、後述のケーシング40の弁室42と連通する。よって、蓋側通路24は、燃料タンクFT、詳しくはタンク内部と外部のキャニスタとを、弁座凹所25を経て接続する。この他、上蓋20は、後述のケーシング40との固定のため、下端部21の内側に等ピッチで固定片26を下方に向けて突出させている。
【0020】
ケーシング40は、上端が解放された有底の筒状体とされ、筒状体内部をフロート浮沈領域の弁室42とし、当該弁室には上下に延びる凸条43を等ピッチで備える。この凸条43は、弁室42の内周回りの接触面積を減らしつつフロートの浮沈動作、即ちフロートの摺動を案内する。また、ケーシング40は、弁室42の底板に複数の貫通孔44を等ピッチで備え、底板上面中央にはスプリング保持用の突起46を備える。貫通孔44は、弁室42への燃料タンクFT内の燃料流入孔となる。この他、ケーシング40は、上端開口側の外周に周壁に沿って突出した蓋保持片47を上蓋20の固定片26のピッチに合わせて備え、当該保持片とケーシング周壁とで固定用凹所48を形成する。この固定用凹所48に上蓋20の固定片26を挿入することで、ケーシング40は上蓋20と一体となり、上蓋20の図示しない抜止片により、ケーシング40の抜止が図られている。なお、ケーシング40は、上端開口側の周壁に小径の図示しない通気口を備え、当該通気孔を経て弁室42内の燃料蒸気を通気させる。
【0021】
フロート50は、ケーシング40の弁室42に収容され、当該弁室内の燃料液位により増減する浮力を受けて浮沈し、上記した弁座凹所25を開閉する。そして、このフロート50は、アウターフロート60とインナーフロート80とを備え、アウターフロート60にインナーフロート80を収容して構成されている。アウターフロート60は、開口側が下方に向いた有底のカップ形状をなし、下方に開口した有底孔である収容室62と、この収容室62の天井壁中央から上向きに突出した開閉凸部64とを備える。アウターフロート60は、ケーシング40の凸条43に案内されつつ弁室42のフロート浮沈領域で浮沈して、弁座凹所25への開閉凸部64の入り込みによる蓋側通路24の閉塞と、弁座凹所25からの開閉凸部64の離脱による蓋側通路24の開放とを行う。この他、アウターフロート60は、以下の構成を備える。図4は図3における4−4線断面に沿ってアウターフロート60を縦断面視して示す断面図、図5は図3における矢印A方向からアウターフロート60を側面視して示す側面図、図6はアウターフロート60の下端要部を拡大視して示す説明図である。
【0022】
図示するように、アウターフロート60は、収容室62をインナーフロート80が隙なく収容できるよう形成して備え、収容室62の下端開口を拡張開口63とし、拡張開口63と収容室62とを傾斜部63aにて繋いでいる。拡張開口63は、後述するインナーフロート80が有する環状突起84の外径より大径に形成されており、収容室62の開口側において周壁が薄肉とされた薄肉部となる。インナーフロート80は、その上端側から図3の矢印で示すようにアウターフロート60の収容室62に隙なく収容される。アウターフロート60とインナーフロート80の係合・一体化については後述する。
【0023】
また、アウターフロート60は、収容室62の外周壁を、収容室天井側および下端側のフロート上端側周縁部70と開口側周縁部72と、この両周縁部の間の周壁部74とに区画する。そして、アウターフロート60は、フロート上端側周縁部70と開口側周縁部72とを、アウタフロート外周壁に環状に突出させてケーシング40の凸条43に案内される被案内周壁部とし、周壁部74を両周縁部より小径としている。
【0024】
この他、アウターフロート60は、収容室62の下端側に、貫通孔66と係合腕部68とを備える。この貫通孔66と係合腕部68は、開閉凸部64の周壁回りに180度のピッチで形成されている。貫通孔66は、弁室42の周壁、即ちアウターフロート周壁を上記した薄肉部としての拡張開口63と干渉して貫通形成されている。本実施例では、拡張開口63の下端側を上記した開口側周縁部72とするので、貫通孔66の下端は開口側周縁部72の上端となる。係合腕部68は、貫通孔66の内部において、当該貫通孔の下端側の拡張開口63の上端、即ち開口側周縁部72の上端から上方内径側に向けて突出し、先端部をアウターフロート60内周壁、即ち収容室62の内周壁より外径側に位置させて傾斜している。つまり、この係合腕部68は、開口側周縁部72を起点として弾発変形可能な弾発片として形成されている。本実施例では、この係合腕部68を、開口側周縁部72から傾斜した端部周壁面69を有するように開口側周縁部72から傾斜させて形成した。また、傾斜面とされた端部周壁面69が、フロート上端側周縁部70と開口側周縁部72の両周縁部より小径の周壁部74の周壁面よりフロート内径側に位置するよう、係合腕部68を開口側周縁部72から形成した。しかも、この係合腕部68を、開口側周縁部72および周壁部74の肉厚より薄肉で開口側周縁部72から貫通孔66の内部に延在するよう形成した。
【0025】
インナーフロート80は、中央に貫通孔82を備えた円柱状をなし、この貫通孔82は、その下端側でテーパ面83とされ、スプリング90を収容する。また、インナーフロート80は、その下端側の外周壁に環状突起84を備え、アウターフロート60の収容室62に収容されて環状突起84がアウターフロート60の係合腕部68に係合することで、アウターフロート60と一体となる。つまり、インナーフロート80がアウターフロート60の収容室62に図3に示すように挿入されると、インナーフロート80の環状突起84は、係合腕部68を弾発させつつ貫通孔66に入り込む。こうなると、係合腕部68は元の位置に復帰するので、環状突起84は係合腕部68の先端部に係合し、アウターフロート60とインナーフロート80とが一体となったフロート50となる。
【0026】
上記の構成材から燃料遮断弁10を得るには、まず、上記したようにアウターフロート60にインナーフロート80を収容して両フロートを一体とさせ、フロート50を形成する。次いで、ケーシング40の突起46にスプリング90を保持した上で、このスプリング90がインナーフロート80の貫通孔82に入り込むようにして、フロート50を弁室42に収容させる。その後、ケーシング40に上蓋20を装着して両者を固定する。こうして得られた燃料遮断弁10では、スプリング90は、突起46にて下端側で支えられてその付勢力をアウターフロート60を介してフロート50に常時及ぼす。
【0027】
以上説明した本実施例の燃料遮断弁10では、燃料タンクFTに燃料が供給されて燃料液位が所定液位に達すると、弁室42の内部に、ケーシング40の底面の貫通孔44から流入した燃料により、フロート50は浮力を受けて上昇する。フロート50の上昇により、その頂上の開閉凸部64が弁座凹所25の内周壁に当接する。これにより、蓋側通路24は閉鎖されるので、燃料遮断弁10は、燃料タンクFTを外部(キャニスタ)に対して遮断し、燃料タンクFTから外部への燃料流出を防止する。このフロート上昇の際には、スプリング90もフロート50に付勢力を及ぼすので、フロート50は速やかに上昇して、蓋側通路24を高い応答性で閉鎖できる。
【0028】
車両の揺動や傾斜などにより弁室42に燃料が流入した後に弁室42から燃料が燃料タンク内に戻り、弁室42内の燃料液位が下がると、液位低下の分だけフロート50に作用する浮力は低減する。フロート50にはスプリング90の付勢力が上記したように常時作用しているので、フロート50の降下は、燃料液位の低下に遅延して起きる。これにより、弁座凹所25からの開閉凸部64の離脱による蓋側通路24の解放は、燃料液位が十分下がってから起きるので、燃料タンクFTから外部への不用意な燃料流出を防止でき、蓋側通路24の解放後には、燃料蒸気を蓋側通路24から外部のキャニスタに送ることができる。
【0029】
上記したようにフロート50の浮沈に応じて蓋側通路24を開閉する燃料遮断弁10は、アウターフロート60とインナーフロート80とを一体化させるに当たり、インナーフロート80の環状突起84をアウターフロート60の貫通孔66に入り込ませた上で、係合腕部68の先端部に係合させる。この係合腕部68は、アウターフロート60の弁室42へのインナーフロート80の挿入の過程で、一旦は、フロート外周側に環状突起84により弾発するものの、貫通孔66への環状突起84の入り込みと共に元の位置に復帰し、上記した環状突起84と係合腕部68の係合をもたらす。そして、燃料遮断弁10は、環状突起84と係合腕部68との係合を経て一体化させたフロート50、即ちインナーフロート80とアウターフロート60とを、蓋側通路24の閉鎖状態において燃料液位下に置く。アウター・インナーの両フロートは、樹脂製であることから車両燃料であるガソリンに浸かることで或いはガソリン蒸気に晒されることで膨潤を起こす。
【0030】
こうした膨潤の影響を受け、弾発片たる係合腕部68が開口側周縁部72を起点としてフロート外周側に変形しても、本実施例の燃料遮断弁10では、以下に説明するように、フロート50の円滑な浮沈動作を確保できる。係合腕部68は、図3や図4に示すように、貫通孔66の内部において開口側周縁部72から上方内径側に向けて突出してアウターフロート周壁をなすものの、その先端部を収容室62の内周壁より外径側に位置させて傾斜している。よって、端部周壁面69は、その全域が、開口側周縁部72の側から傾斜した傾斜面となり、図6に示すように、開口側周縁部72の外周と係合腕部68の先端との間には逃げRが形成される。このため、開口側周縁部72から傾斜して延びた係合腕部68が開口側周縁部72を起点として図6の矢印Tで示すようにフロート外周側に変形しても、端部周壁面69が傾斜面である都合上、上記した逃げRが存在する限りにおいては、係合腕部68は、開口側周縁部72の外周より外側には出ない。しかも、端部周壁面69の全域が開口側周縁部72から傾斜していることから、上記の逃げRを大きくできる。このことは、膨潤等により係合腕部68にフロート外周側への変形が起きても、係合腕部68をケーシング40のフロート浮沈領域(弁室42)においてフロートの摺動案内となる凸条43に接触しないようにできることを意味する。この結果、本実施例の燃料遮断弁10によれば、アウター・インナーの両フロートが一体となったフロート50の浮沈動作の円滑化を確保できる。
【0031】
しかも、こうしたフロート浮沈動作の円滑化を確保するに当たり、本実施例の燃料遮断弁10では、一体化されるアウターフロート60とインナーフロート80の両フロート、もしくは一方のフロートの厚肉化を必要としない。樹脂成形品では、厚肉化は金型内での樹脂のヒケの回避等の対処のため生産性の低下をもたらすが、本実施例の燃料遮断弁10では、上記したようにフロートの厚肉化を必要としない。このため、本実施例の燃料遮断弁10によれば、フロートの浮沈動作の円滑化と生産性の向上とを両立できる。
【0032】
また、本実施例では、アウターフロート60において、弁室42の開口側周縁部72とフロート上端側周縁部70とをケーシング40の凸条43に案内される被案内周壁部としつつ、フロート上端側周縁部70と開口側周縁部72との間の周壁部74を小径とした。その上で、係合腕部68の端部周壁面69の全域を、図6に示すように周壁部74の周壁面よりフロート内径側に位置させた。このため、本実施例の燃料遮断弁10によれば、フロートの浮沈動作を、周壁部74とフロート上端側周縁部70とで確保した上で、凸条43への係合腕部68の接触を高い実効性で回避できる。よって、本実施例の燃料遮断弁10によれば、フロート浮沈動作をより一層安定して確保できる。
【0033】
更に、本実施例では、係合腕部68を、開口側周縁部72や周壁部74の肉厚より薄肉とした上で、薄肉のまま、開口側周縁部72から貫通孔66の内部において延在させた。よって、弁室42へのインナーフロート80の挿入の際においては、環状突起84による係合腕部68の弾発が容易となり、インナーフロート80の組み付け性が高まる。
【0034】
加えて、本実施例では、アウターフロート60の係合腕部68の係合対象を環状突起84としたので、インナーフロート80の外周回りの位置決めが不要となる。よって、インナーフロート80の組み付けはより容易となる。
【0035】
次に変形例について説明する。図7は変形例の係合腕部68Aを拡大して示す説明図である。図示するように、この変形例では、係合腕部68Aは貫通孔66の内部において先端部の側で上方内径側に向けて突出して端部周壁面69Aを傾斜させている点に特徴がある。そして、この変形例にあっても、図中の矢印Tで示すように係合腕部68Aが変形しても、係合腕部68Aの外周壁部位を開口側周縁部72の外側に出難くできるので、その分だけ、凸条43への係合腕部68Aを接触し難くして、フロート浮沈動作を安定確保できる。
【0036】
以上、本発明の実施の形態を実施例にて説明したが、本発明は上記した実施例や変形例の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様にて実施することが可能である。例えば、燃料遮断弁10を、燃料タンクFTにおいて燃料蒸気をタンク外に排出する遮断弁として説明したが、フロートの浮沈に応じて流路を開閉するものであれば、燃料タンクに限らず他の用途に用いることもできる。また、流路開閉を、弁座凹所25への開閉凸部64の入り込みと離脱で行う構成としたが、環状突起であるいわゆるリップを弁座とし、ゴム等のシール部材を装着した弁体をアウターフロート60に設け、この弁体をフロート浮沈に応じて弁座に着脱させる構成とすることもできる。
【0037】
上記実施例では、フロート50、詳しくはアウターフロート60の浮沈案内(摺動案内)を弁室42の周壁回りに等ピッチに設けた凸条43にて行ったが、弁室42の内周壁そのものでアウターフロート60の浮沈案内するようにすることもできる。また、アウターフロート60の外周壁の側に凸条を設け、弁室42を円筒状の内壁とすることもできる。
【0038】
また、インナーフロート80において外周回りに環状突起84を形成したが、アウターフロート60の貫通孔66に入り込む範囲についてだけインナーフロート80の外周から凸の凸条とすることもできる。この場合には、アウターフロート60では、拡張開口63を収容室62の内周周りに形成できるほか、インナーフロート80の外周の凸条に合わせて拡張開口63を凹条とすることもできる。更には、係合腕部68を開口側周縁部72から貫通孔66の下端側に延在させるに当たり、端部周壁面69が湾曲して傾斜するようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる燃料遮断弁10を縦断面視して示す断面図である。
【図2】図1における2−2線断面に沿って燃料遮断弁10の要部を横断面視しつつ一部拡大視して示す説明図である。
【図3】フロート50を分解視して示す説明図である。
【図4】図3における4−4線断面に沿ってアウターフロート60を縦断面視して示す断面図である。
【図5】図3における矢印A方向からアウターフロート60を側面視して示す側面図である。
【図6】アウターフロート60の下端要部を拡大視して示す説明図である。
【図7】変形例の係合腕部68Aを拡大して示す説明図である。
【符号の説明】
【0040】
10…燃料遮断弁
20…上蓋
21…下端部
22…接続管部
24…蓋側通路
25…弁座凹所
26…固定片
40…ケーシング
42…弁室
43…凸条
44…貫通孔
46…突起
47…蓋保持片
48…固定用凹所
50…フロート
60…アウターフロート
62…収容室
63…拡張開口
63a…傾斜部
64…開閉凸部
66…貫通孔
68…係合腕部
68A…係合腕部
69…端部周壁面
69A…端部周壁面
70…フロート上端側周縁部
72…開口側周縁部
74…周壁部
80…インナーフロート
82…貫通孔
83…テーパ面
84…環状突起
90…スプリング
FT…燃料タンク
FTa…タンク上壁
FTb…取付穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流路を開閉する遮断弁であって、
フロート浮沈領域を内部に形成し、該フロート浮沈領域においてフロートの摺動案内する案内部を有するケーシングと、
前記案内部に案内されつつ前記フロート浮沈領域で浮沈して前記流体流路を開閉し、フロート下端側を開口させた有底孔と、該有底孔の開口側において周壁が薄肉とされた薄肉部と、該薄肉部と干渉して周壁を貫通する貫通孔とを有するアウターフロートと、
該貫通孔の内部において、前記貫通孔の下端側の前記薄肉部の上端から上方内径側に向けて突出し、先端部が前記アウターフロートの内周壁より外径側に位置するアウター側係合腕部と、
前記アウターフロートの有底孔に挿入されるインナーフロートと、
該インナーフロートの外周に凸に形成され、前記インナーフロートが前記有底孔に挿入されると、前記アウター側係合腕部を弾発させつつ前記貫通孔に入り込んで前記アウター側係合腕部の前記先端部に係合するインナー側係合部とを備える
遮断弁。
【請求項2】
請求項1に記載の遮断弁であって、
前記アウターフロートは、前記ケーシングの案内部に案内される被案内周壁部をアウタフロート外周壁に環状に突出して備え、該被案内周壁部を前記貫通孔より下端側で前記有底孔の開口側のアウターフロート周壁とアウターフロート上端側のアウタフロート周壁とに離間して備える
遮断弁。
【請求項3】
前記アウター側係合腕部は、前記離間した前記被案内周壁部の間のアウタフロート周壁の外周壁面よりフロート内径側で前記薄肉部の上端から突出している請求項2に記載の遮断弁。
【請求項4】
前記アウター側係合腕部は、前記離間した前記被案内周壁部の間のアウタフロート周壁の肉厚より薄肉で前記薄肉部の上端から突出している請求項3に記載の遮断弁。
【請求項5】
前記インナー側係合部は、インナーフロートの外周回りに凸とされた環状突起である前記請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の遮断弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−70029(P2010−70029A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239171(P2008−239171)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】