説明

部品の取付構造

【課題】部品及びクリップを簡単に成形でき、部品にクリップを簡単に固定することができる部品の取付構造を提供する。
【解決手段】この取付構造は、クリップ30を介して部品1を被取付部品5に固定するもので、部品1は、取付方向に開口する枠状の取付座10を有し、クリップ30は、頭部31と、軸部33と、第1フランジ部35と、第2フランジ部37と、係止脚40とを有している。更に軸部33外周に装着されるプッシュナット50を備え、このプッシュナット50は、軸部33が挿入される軸孔53と、この軸孔53の周縁の一部を切離してなる軸部53の挿入部と、取付座10内周に係合する係合爪57とを有している。そのため、軸部33外周にプッシュナット50を装着後、クリップ30を取付座10に挿入するだけで、クリップ30を部品1に固定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車の内装部品等の部品を、車体パネル等の被取付部品に固定するために用いられる部品の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内装部品等の部品を車体パネル等の被取付部品に取付けるものとして、下記特許文献1には、ポケット部が形成されたドア内装ボードを、クリップを介して車体パネルに取付ける構造が開示されている。ドア内装ボードにはクリップを取付けるためのクリップ座が形成され、該クリップ座はボード裏面に沿った方向に開口した箱状をなしており、また、クリップ座を構成する壁部には、クリップの軸部を挿入可能な保持溝が形成されている。そして、クリップの軸部を保持溝に挿入することにより、クリップ座を介してドア内装ボードにクリップを取付け、その後、クリップの取付け部を、車体パネルに形成された取付孔に挿入して嵌合させることにより、ドア内装ボードを車体パネルに固定することができる。
【0003】
また、下記特許文献2には、ボス部を有する部品を取付孔が穿設されたパネルに固定するクリップが開示されている。該クリップは、取付孔に係着する脚部と、プッシュナットを収納する収納空洞を有する頭部とを備え、頭部上方には、前記ボス部を収納空洞内に挿通させる挿通孔が形成されている。また、プッシュナットは、ボス部が挿入される内孔を有していると共に、該内孔の周縁からボス部の外周面に食い込む爪が設けられている。更に、プッシュナットの外径は、それを収納する収納空洞の内径よりも小さく形成され、収納空洞内でプッシュナットが移動可能となっている。
【0004】
そして、プッシュナットを収納したクリップの頭部上方から挿通孔を通して、ボス部を内孔に差し込むと、内孔周縁に設けた爪がボス部に食い込んでプッシュナットがボス部に固定され、プッシュナットを介して部品にクリップが固定される。更に、クリップの脚部を取付孔に挿入して嵌合させることにより、部品を被取付部品に固定することができる。このとき、プッシュナットの外径は、それを収納する収納空洞の内径よりも小さく形成され、収納空洞内でプッシュナットが移動することにより、クリップの部品に対する取付位置を多少ずらせるようになっているので、部品に取付けられたクリップと、被取付部品に設けられた取付孔との位置ずれを吸収することができる。
【特許文献1】特開平8−216688号公報
【特許文献2】特開2002−130233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、板状のドア内装ボードに、ボード裏面に沿った方向に開口する箱状のクリップ座が設けられているので、ドア内装ボードやクリップ座等の外部形状を成形する型枠とは別に、クリップ座の内部形状を成形するため、前記型枠の型割方向とは異なる方向にスライドするスライド枠が必要となり、型枠構造が複雑となる。また、スライド枠を所定距離スライドさせる直線部分が必要となり、ドア内装ボードのデザインに制約が生じる。更に、スライド枠の厚さをある程度確保しなければ、クリップ座の内部形状を成形できないため、その厚さ分だけクリップ座を高く形成する必要があり、ドア内装ボードの厚みが増すこととなる。
【0006】
また、上記特許文献2では、プッシュナットが収納空洞内で大きく変位して、クリップの挿通孔とプッシュナットの内孔との位置ずれが大きいと、ボス部をプッシュナットの内孔に挿入しにくくなることがあった。その場合には、内孔が挿通孔に整合するように予めプッシュナットを移動させる必要があるため、クリップの取付けに手間がかかるという問題があった。また、頭部にはプッシュナットを収納する収納空洞が形成されているので、クリップ成形用の型枠構造が複雑となるという不利点もあった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、部品及びクリップを比較的簡単に成形できると共に、部品にクリップを簡単に固定することができる、部品の取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1は、所定の部品を、該部品を取付けるべき被取付部品の取付孔に、クリップを介して固定する部品の取付構造において、前記部品は、その取付方向に開口する枠状壁からなる取付座を有し、前記クリップは、前記取付座に挿入可能な頭部と、該頭部から延出する軸部と、前記頭部に対して所定の間隙を設けて前記軸部外周に形成された第1フランジ部と、この第1フランジ部から前記頭部と反対側に更に伸びる前記軸部外周に形成され、前記被取付部品の前記取付孔周縁に当接する第2フランジ部と、この第2フランジ部から前記頭部と反対側に延出され、前記被取付部品の取付孔に挿入される係止脚とを有しており、前記取付構造は、前記クリップの前記頭部と前記第1フランジ部との間の軸部外周に装着されるプッシュナットを更に備えており、このプッシュナットは、中心部に形成された、前記軸部が挿入される軸孔と、この軸孔の周縁の一部を切離してなる前記軸部の挿入部と、外周に形成された、前記取付座内周に係合する係合爪とを有していることを特徴とする部品の取付構造を提供するものである。
【0009】
上記発明によれば、プッシュナットの挿入部を通してクリップの軸部を軸孔に挿入することにより、プッシュナットをクリップの頭部と第1フランジ部との間の軸部外周に装着し、その状態でクリップの頭部及びプッシュナットを部品の取付座に挿入することにより、プッシュナットの係合爪が取付座の内周に係合して、クリップを部品に固定することができる。このように、クリップの頭部及びプッシュナットを部品の取付座に挿入するだけの簡単な操作でクリップを部品に固定できる。
【0010】
更に、クリップの係止脚を被取付部品の取付孔に挿入することにより、係止脚が取付孔の裏面側周縁に係合して固定される。したがって、部品にプッシュナットを介して予めクリップを取付けておくことにより、該クリップの係止脚を被取付部品の取付孔に挿入するという簡単な操作で、部品を被取付部品に固定することができる。
【0011】
また、取付座は、部品の取付方向に開口した凹状をなしているので、部品の型抜き方向と合わせやすくなり、型枠とは別のスライド枠が不要となる。このため、型枠構造を簡単にすることができ、部品のデザインの自由度を高めることもできる。
【0012】
更に、取付座は、プッシュナットの係合爪が嵌合する程度の高さがあればよいので、部品の厚みを薄くすることができ、部品の取付位置の自由度を高めることができる。また、クリップの軸部外周にプッシュナットを装着するようになっていて、クリップにプッシュナットを収納する構造が不要となるので、クリップ成形用の型枠を比較的簡単な構造とすることができる。
【0013】
本発明の第2は、前記第1の発明において、前記プッシュナットを前記軸部外周に装着した状態で、前記プッシュナットの軸孔内周と、前記クリップの軸部外周との間に、所定の間隙が設けられている部品の取付構造を提供するものである。
【0014】
上記発明によれば、部品の取付座の位置と、被取付部品の取付孔の位置とが、寸法誤差等によって若干ずれたとしても、プッシュナットの軸孔内周とクリップの軸部外周との間に形成された上記間隙の分だけ、クリップを部品に対して移動させることができるので、クリップの係止脚を被取付部品の取付孔に挿入することができる。
【0015】
本発明の第3によれば、前記第1又は第2の発明において、前記プッシュナットの軸孔の内周には、軸方向に折曲された襟部が設けられており、この襟部におけるプッシュナットの厚さが、前記第1フランジ部及び前記第2フランジ部の間隙に適合している部品の取付構造を提供するものである。
【0016】
上記発明によれば、プッシュナットの軸孔内周部の厚さを襟部によって厚くすることができるので、クリップの頭部と第1フランジ部との間隙が比較的広いものにもガタ付きなく適合させることができ、既存のクリップにも適用することが可能となる。
【0017】
本発明の第4は、前記第1〜3の発明のいずれか1つにおいて、前記取付座は、前記部品に複数個設けられており、そのうちの少なくとも一つの取付座の内底面には、前記クリップの頭部が嵌合する嵌合凹部が設けられている部品の取付構造を提供するものである。
【0018】
上記発明によれば、嵌合凹部が設けられた取付座にクリップを挿入する際、クリップの頭部を嵌合凹部に嵌合させることにより、そのクリップを部品に対して遊びなく固定することができる。こうして、部品に対して遊びなく固定されたクリップを被取付部品の所定の取付孔に挿入することにより、その部位を、部品を被取付部品に固定する際の基準位置とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の部品の取付構造によれば、クリップの頭部と第1フランジ部との間の軸部外周にプッシュナットを装着し、その状態でクリップの頭部及びプッシュナットを部品の取付座に挿入するという簡単な操作でクリップを部品に固定できる。更に、クリップの係止脚を取付孔に挿入すると、係止脚が取付孔の裏面側周縁に係合して固定されるので、部品を被取付部品に固定できる。
【0020】
また、取付座は、部品の取付方向に開口しているので、部品の型抜き方向と合わせやすくなり、型枠とは別のスライド枠が不要となり、型枠構造を簡単にでき、部品のデザインの自由度を高めることもできる。更に、取付座は、プッシュナットの係合爪が嵌合する程度の高さがあればよいので、部品の厚みを薄くでき、部品の取付位置の自由度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図1〜7を参照して本発明の部品の取付構造の一実施形態について説明する。
【0022】
この部品の取付構造(以下、「取付構造」という)は、合成樹脂からなる内装部品(例えば、ガーニッシュやトリムボード)等の部品1にプッシュナット50を介してクリップ30を固定し、該クリップ30を車体パネル等の被取付部品5に形成された取付孔6に挿入することにより、クリップ30を介して被取付部品5に部品1を固定するものである。
【0023】
図1に示すように、部品1の裏面には取付座10が設けられている。この取付座10は、部品1の裏面から所定長さで円筒状に立設し、その先端部が開口した枠状壁12をなしている。なお、取付座10は、部品1の裏面の複数箇所に設けられており、各取付座10の先端部によって規定される面が、取付面Pをなしている(図5,10参照)。また、取付座10の内側には、2枚の板状片が直交して、軸方向に見たとき略十字状をなすリブ14が、部品1の裏面から枠状壁12の深さ方向途中まで延設されている(図5〜7参照)。
【0024】
取付座10の先端部は、取付面Pに対してほぼ垂直な方向に開口して、所定深さの凹部16が形成されており、部品1の型抜き方向と同一方向に型抜き可能となっている。なお、取付座10は、上記形状に限らず、被取付部品5に対して部品1を取付ける際に、部品1の取付方向に開口した形状であれば良い。そして、この凹部16内に、後述するクリップ30の頭部31及びクリップ30の軸部33外周に装着されるプッシュナット50が挿入されると共に、凹部16の底部である前記リブ14の先端にクリップ30の頭部31が突き当たって、クリップ30の軸方向の位置決めがなされる。また、凹部16は、後述するクリップ30の第1フランジ部35を受け入れ可能であると共に、後述するプッシュナット50の係合爪57が、その軸方向のほぼ中間位置に係合する程度の深さで形成されている。
【0025】
なお、この実施形態では、取付座10の枠状壁12が円筒状をなしているが、矩形状等であってもよく、また、枠状壁が軸方向に沿ったスリットによって複数に分割されていてもよい。また、枠状壁12は、部品1の裏面から突出した壁である必要はなく、例えば、部品1の裏面から、部品1の厚さ方向に対して所定深さの凹部を設けて、その内周を枠状壁としてもよい。
【0026】
次に、部品1の取付座10に固定されると共に、被取付部品5の取付孔6に挿入されるクリップ30について説明すると、このクリップ30は、部品1と同様に合成樹脂で形成されており、前記取付座10の凹部16内に挿入される略円板状の頭部31と、該頭部31の下面中央から所定長さで伸び、後述するプッシュナット50の軸孔53に挿入される軸部33と、前記頭部31に対して所定の間隙C1(図5参照)を設けて軸部33外周に形成された第1フランジ部35とを有している。頭部31の上面中央には、軸部33の軸心に沿って所定深さで形成された肉抜き穴32が形成されている。
【0027】
図5を併せて参照すると、前記第1フランジ部35は、軸部33外周から斜め上方に向かって環状に広がると共に、その頂部から斜め下方に向かって環状に広がって、断面が山形に屈曲した形状をなしていて、その頂部が環状の突部35aをなしている(図2(c)参照)。なお、前記の頭部31と第1フランジ部35との間隙C1は、この実施形態の場合、第1フランジ部35の突部35aと、頭部31下面との距離を意味し、該間隙C1は、後述するプッシュナット50の板体51の板厚に適合する距離となっている(図5参照)。その結果、頭部31の下面が後述するプッシュナット50の軸孔53の表側周縁に当接すると共に、第1フランジ部35の突部35aが同軸孔53の裏側周縁に弾性的に当接するようになっている。
【0028】
第1フランジ部35の下面中央からは、前記軸部33が拡径して頭部31とは反対側に更に伸びており、この軸部33の下端部外周から、頭部31とは反対側に向かって斜め下方に傘状に広がる第2フランジ部37が形成されている。この第2フランジ部37は、被取付部品5の取付孔6の表側周縁に弾性的に当接し、クリップ30のガタツキ等を抑制する。
【0029】
なお、前記の頭部31、第1フランジ部35及び第2フランジ部37の各外径は、いずれも取付座10の凹部16の内径D1(図5参照)よりも小さく形成され、凹部16内に挿入可能となっている。
【0030】
更に、第2フランジ部37の下面からは、前記頭部31と反対側に向かって、被取付部品5の取付孔6に挿入される係止脚40が延設されている。図2(a),(b)を参照すると、この係止脚40は、第2フランジ部37の下面から垂設された柱部41と、該柱部41の外周に、所定の空隙43を介して、丸く膨らんで形成された複数の係止片45とを有している。また、各係止片45の基端部は窄まった形状をなしている共に、中間部は被取付部品5の取付孔6の内径よりもやや拡径し、更に、その先端部には、取付孔6の裏側周縁に係合する段状の係止段部45aが形成されている。各係止片45は、その内側に形成された空隙43によって、取付孔6に挿入される際に、その内周に押圧されて撓むようになっている。なお、この実施形態では、丸く膨らんだ係止脚40が採用されたが、錨足状の係止脚としてもよく、特に限定されるものではない。
【0031】
そして、本発明の取付構造においては、上述したクリップ30を、部品1の取付座10に固定するための、金属製のプッシュナット50を更に備えている。
【0032】
図3を参照すると、このプッシュナット50は、中心部に前記クリップ30の軸部33が挿入される軸孔53が形成された板体51を有しており、該板体51には、軸孔53の周縁の一部を切離して挿入部55が形成されていて、板体51は略C字状をなしている。
【0033】
図4に示すように、軸孔53の内径D2は、クリップ30の、頭部31と第1フランジ部35との間の軸部33の外径D3よりも大きく形成されている。その結果、軸孔53内に軸部33が挿入された状態で、軸孔53内周と、クリップ30の軸部33外周との間に、所定の間隙が形成されることとなり、軸孔53内で軸部33が移動可能となっている。
【0034】
また、板体51に形成された前記挿入部55は、板体51の外周縁から半径方向内方に向かって次第に幅狭となるテーパ状溝部55aと、該テーパ状溝部55aの終端部から前記軸孔53に向かって直線状に一定幅で伸び、軸孔53に連通する直線状溝部55bとから形成されている。前記テーパ状溝部55aは、クリップ30の軸部33を軸孔53内に挿入する際に、軸部33をガイドして挿入性を高めている。また、前記直線状溝部55bの幅D4は、クリップ30の軸部33の外径D3よりもやや小さく形成されており、軸孔53内に挿入された軸部33を抜け止めする役割をなしている。
【0035】
そして、プッシュナット50の外周には、部品1の取付座10内周に係合する係合爪57が形成されている。図3(a),(b)を参照して説明すると、板体51の外周に沿って所定間隔を設けて、半径方向外方に向けてV字状に開いたスリット58が複数個形成されていて、これら複数のスリット58により分離された、板体51の外周部を斜め外方に折曲させることにより、複数の係合爪57が形成されている。
【0036】
また、プッシュナット50の最大外径、すなわち、軸孔53の中心に対して対向する係合爪57,57の先端部同士の間隔D5(図5参照)は、前記取付座10の凹部16の内径D1よりも大きくなるように形成されている。そのため、図6に示すように、プッシュナット50が取付座10の凹部16内に挿入されたときに、各係合爪57が凹部16内周に食い込むようになっている。なお、図5に示すように、プッシュナット50の各係合片57は、取付座10への挿入方向に対して遠ざかる方向に傾斜して配置されるので、凹部16内周に挿入しやすく、かつ、各係合爪57が凹部16内周に食い込んだ後は、取付座10からクリップ30を引離す力が作用しても、各係合爪57の先端部が凹部16内周に引っ掛かるので外れにくくなっている。
【0037】
また、各係合爪57は、板体51の水平面に対して、30〜60°の角度θで傾斜している(図3(b)参照)。このように、角度θを設定したことにより、プッシュナット50を取付座10の凹部16内周に挿入しやすく、かつ、凹部16内周に食い込みやすくし、更に、プッシュナット50が取付座10から外れにくくすることができる。
【0038】
なお、この実施形態では、各係合爪57はスリット58を介して形成されているが、板体51の外周から所定間隔で斜め外方に突出する複数の突起を形成してもよく、係合爪57の形状は、特に限定されるものではない。
【0039】
次に、上記構成からなる本発明の取付構造を用いて、被取付部品5に部品1を固定する手順について説明する。
【0040】
まず、クリップ30の、頭部31と第1フランジ部35との間の軸部33外周に、プッシュナット50を装着させる。すなわち、図1に示すように、係合爪57の先端を下方に向けた状態で、挿入部55を軸部33に整合させて、クリップ30をプッシュナット50に対して押し込んでいく。
【0041】
すると、クリップ30の軸部33が、プッシュナット50のテーパ状溝部55aにガイドされて、直線状溝部55bに挿入され、直線状溝部55bを押し広げつつ、更に奥方に挿入される。そして、軸部33が軸孔53に至ると、直線状溝部55bが弾性復帰して、軸部33が抜け止めされる。それと共に、クリップ30の頭部31の下面が、プッシュナット50の軸孔53の表側周縁に当接し、第1フランジ部35の環状の突部35aが軸孔53の裏側周縁に当接して、軸方向にずれないように位置決めされて、プッシュナット50が頭部31及び第1フランジ部35により挟み込まれる。こうして、プッシュナット50が軸方向に位置決めされ、かつ、軸方向に直交する方向に抜け止めされた状態で、図5に示すように、クリップ30の軸部33外周にプッシュナット50が装着される。
【0042】
なお、この実施形態では、第1フランジ部35の上方に環状の突部35aが形成されているので、プッシュナット50の板体51の肉厚寸法がばらついていても、前記突部35aが軸孔53の裏側周縁に弾性的に当接するので、プッシュナット50のガタツキ等を抑えて、軸部33外周に安定して装着できるようになっている。
【0043】
上記状態でクリップ30の頭部31を取付座10の凹部16内周に挿入していく。すなわち、クリップ30の頭部31が、凹部16の底部である十字状のリブ14に突き当たるまで押し込む。すると、プッシュナット50の各係合爪57が、凹部16内周に押圧されて内側に若干撓みつつ、クリップ30が凹部16の奥側へ押し込まれていく。このとき、プッシュナット50は金属製で、合成樹脂製の取付座10よりも硬質であって、かつ、係合爪57,57の先端部同士の間隔D5が、凹部16の内径D1よりも大きく形成されているため、凹部16内周に係合爪57の先端部が食い込み、これにより係合爪57が凹部16内周に係合して、クリップ30を部品1に固定することができる(図6参照)。
【0044】
このように、プッシュナット50を軸部33に装着した後、クリップ30の頭部31及びプッシュナット50を、部品1の取付座10に挿入するだけの簡単な操作でクリップ30を部品1に固定することができる。
【0045】
そして、部品1に固定されたクリップ30の係止脚40を、被取付部品5の取付孔6に挿入し、取付座10の枠状壁12の下端が、被取付部品5の表面に突き当たるか、又は近接するまで押し込む。すると、取付孔6の内周に各係止片45が押圧されて内側に撓み、係止段部45aが取付孔6の裏側に至ると、各係止片45が弾性復帰して取付孔6の裏側周縁に係止段部45aが係合し、それと共に第2フランジ部37が取付孔6の表側周縁に弾性的に当接し、両者により被取付部品5が挟み込まれて、被取付部品5にクリップ30が固定される。こうして、クリップ30を介して被取付部品5に部品1が固定される(図7参照)。
【0046】
このように、部品1にプッシュナット50を介して予めクリップ30を取付けておくことにより、クリップ30の係止脚40を被取付部品5の取付孔6に挿入するという簡単な操作で、部品1を被取付部品5に固定することができる。
【0047】
また、部品1に固定されたクリップ30の係止脚40を、被取付部品5の取付孔6に挿入していく際に、取付座10の位置と取付孔6の位置とが寸法誤差等によって若干ずれたとしても、前述したように、プッシュナット50の軸孔53内周と、クリップ30の軸部33外周との間に、所定の間隙が設けられていて、この間隙の分だけ、クリップ30を部品1に対して移動できるので、係止脚40を取付孔6に挿入可能な位置まで変位させることにより、係止脚40を取付孔6に挿入することが可能となる。
【0048】
更に、取付座10は、部品1の取付方向に開口した凹状をなしているので、部品1の型抜き方向と合わせやすくなり、型枠とは別のスライド枠が不要となる。このため、型枠構造を簡単にすることができ、部品1のデザインの自由度を高めることもできる。
【0049】
また、取付座10は、プッシュナット50の係合爪57が嵌合する程度の高さがあればよいので、部品1の厚みを薄くすることができ、部品1の取付位置の自由度を高めることができる。また、クリップ30の軸部33外周にプッシュナット50を装着することにより、クリップ30にプッシュナット50を収納する構造が不要となるので、クリップ成形用の型枠を比較的簡単な構造とすることができる。
【0050】
図8及び図9には、本発明の取付構造の他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0051】
この実施形態では、前記実施形態と比べてプッシュナット50の形状が異なっている。すなわち、この実施形態におけるプッシュナット50aは、板体51に形成された軸孔53の内周に、軸方向に折曲された襟部59が設けられている。
【0052】
具体的には、図8に示すように、軸孔53の内周に沿って所定間隔を設けて、半径方向内方にV字状に開いたスリット58aが複数個形成されていて、これらのスリット58aによって分離された短冊状片を、軸方向に向けて斜めに折曲させることにより、襟部59が形成されている。また、プッシュナット50aが装着されるクリップ30aも、前記実施形態のクリップ30とは異なっている。すなわち、この実施形態のクリップ30aは、その頭部31と第1フランジ部35との間隙C2(図9参照)が、前記実施形態のクリップ30の頭部31と第1フランジ部35との間隙C1よりも広く形成されている。
【0053】
また、前記プッシュナット50aは、その襟部59におけるプッシュナット50aの厚さTが(板体51から襟部59の先端部までの距離、図9参照)、クリップ30aの頭部31と第1フランジ部35との間隙C2に適合するように形成されている。
【0054】
この実施形態によれば、プッシュナット50aの軸孔53内周部の厚さを襟部59によって厚くすることができるので、クリップ30aの頭部31と第1フランジ部35との間隙が比較的広いものにもガタ付きなく適合させることができ、既存のクリップにも適用することが可能となる。
【0055】
図10には、本発明の取付構造の更に他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0056】
この実施形態では、部品1に複数個の取付座10が形成され、そのうちの少なくとも一つの取付座10aの形状が異なっている。すなわち、この取付座10aは、内周に形成された十字状のリブ14aの下端面中央部に、クリップ30の頭部31が嵌合する嵌合凹部17が形成されている。なお、各クリップ30の取付高さを一定にするため、この嵌合凹部17の底面は、他の取付座10の凹部16の底面と、同一高さとなるように形成されている。
【0057】
そして、この実施形態によれば、嵌合凹部17が設けられた取付座10にクリップ30を挿入する際に、クリップ30の頭部31を嵌合凹部17に嵌合させることにより、そのクリップ30を部品1に対して遊びなく固定することができる。こうして、部品1に対して遊びなく固定されたクリップ30を被取付部品5の所定の取付孔6に挿入することにより、その部位を、部品1を被取付部品5に固定する際の基準位置とすることができる。その結果、部品1を被取付部品5に固定する際の基準位置が一定となるため、被取付部品5に対する部品1の取付け位置が大きくばらつくことが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の部品の取付構造の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】同取付構造を構成するクリップを示しており、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は平面図である。
【図3】同取付構造を構成するプッシュナットを示しており、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A矢視線における断面図である。
【図4】同取付構造のクリップの軸部と、プッシュナットとの関係を示す平面図である。
【図5】同取付構造において、プッシュナットを装着したクリップを取付座に挿入する状態を示す断面図である。
【図6】同取付構造において、部品に固定されたクリップを被取付部品に挿入する状態を示す断面図である。
【図7】同取付構造において、クリップを介して被取付部品に部品を固定した状態を示す断面図である。
【図8】本発明の部品の取付構造の他の実施形態を示す斜視図である。
【図9】同取付構造において、プッシュナットをクリップに装着した状態を示す断面図である。
【図10】本発明の部品の取付構造の更に他の実施形態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0059】
1 部品
5 被取付部品
6 取付孔
10 取付座
12 枠状壁
17 嵌合凹部
30 クリップ
31 頭部
33 軸部
35 第1フランジ部
37 第2フランジ部
40 係止脚
50 プッシュナット
53 軸孔
57 係合爪
P 取付面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の部品を、該部品を取付けるべき被取付部品の取付孔に、クリップを介して固定する部品の取付構造において、
前記部品は、その取付方向に開口する枠状壁からなる取付座を有し、
前記クリップは、前記取付座に挿入可能な頭部と、該頭部から延出する軸部と、前記頭部に対して所定の間隙を設けて前記軸部外周に形成された第1フランジ部と、この第1フランジ部から前記頭部と反対側に更に伸びる前記軸部外周に形成され、前記被取付部品の前記取付孔周縁に当接する第2フランジ部と、この第2フランジ部から前記頭部と反対側に延出され、前記被取付部品の取付孔に挿入される係止脚とを有しており、
前記取付構造は、前記クリップの前記頭部と前記第1フランジ部との間の軸部外周に装着されるプッシュナットを更に備えており、
このプッシュナットは、中心部に形成された、前記軸部が挿入される軸孔と、この軸孔の周縁の一部を切離してなる前記軸部の挿入部と、外周に形成された、前記取付座内周に係合する係合爪とを有していることを特徴とする部品の取付構造。
【請求項2】
前記プッシュナットを前記軸部外周に装着した状態で、前記プッシュナットの軸孔内周と、前記クリップの軸部外周との間に、所定の間隙が設けられている請求項1記載の部品の取付構造。
【請求項3】
前記プッシュナットの軸孔の内周には、軸方向に折曲された襟部が設けられており、この襟部におけるプッシュナットの厚さが、前記第1フランジ部及び前記第2フランジ部の間隙に適合している請求項1又は2記載の部品の取付構造。
【請求項4】
前記取付座は、前記部品に複数個設けられており、そのうちの少なくとも一つの取付座の内底面には、前記クリップの頭部が嵌合する凹部が設けられている請求項1〜3のいずれか1つに記載の部品の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−89006(P2008−89006A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267673(P2006−267673)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】