説明

部品内蔵基板の製造方法

【課題】生産性の良好な部品内蔵基板を得る。
【解決手段】フィルム貼り付け工程41aでは、大判配線基板45の上面あるいは大判配線基板46の下面または大判配線基板45の上面と大判配線基板46の下面の双方に剥離可能な粘着性フィルム47を貼り付ける。この工程の後の樹脂部形成工程42では、大判配線基板45と大判配線基板46との間に樹脂部35を形成する。そしてこの工程の後の切除工程43では、除去部を切除し、大判配線基板45、46から配線基板32、36を切り離すと同時に、除去部に対応した位置の粘着性フィルム47も切除する。そしてこの工程の後の剥離工程44で、粘着性フィルム47と樹脂部とを同時に除去することにより部品内蔵基板を製造するので、生産性の良好な部品内蔵基板を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に電子部品が実装され、これらの電子部品が樹脂によって封止された部品内蔵基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来の部品内蔵基板1について図面を用いて説明する。図12は、従来の部品内蔵基板1の断面図である。従来の部品内蔵基板1において、配線基板2の上面側には電子部品3aが実装されている。この配線基板2の上方には配線基板4が設けられ、配線基板4と配線基板2とが対向するように配置される。これらの配線基板4と配線基板2との間には、電子部品3aが埋設された樹脂部5が形成されている。なお、この樹脂部5は、熱硬化性の樹脂によって形成されている。基材部6は、配線基板2と配線基板4との間で、樹脂部5を囲うように設けられている。
【0003】
そしてこのような従来の部品内蔵基板1において、配線基板2と配線基板4との間の接続は、スルーホール7によって行われる。そのためにスルーホール7は、基材部6に対応する位置に形成され、配線基板2、配線基板4および基材部6を貫通して形成される。
【0004】
次にこのような部品内蔵基板1の製造方法について、図面を用いて説明する。図13は、従来の部品内蔵基板1の製造フローチャートである。実装工程11では、配線基板2の上面に、電子部品3aを装着する。なお、この工程における配線基板2の上面は、予め配線パターンや、電子部品3aを実装するためのパッドや、配線基板2の上下面を接続するスルーホール(図示せず)などが形成されている。一方、配線基板2の下面側の全面には、銅箔が形成されている。つまり配線パターンが未形成な状態としてある。
【0005】
図14は従来における積層工程の部品内蔵基板の断面図である。図13、図14において積層工程12は、実装工程11の後で、配線基板2上に複数枚のプリプレグ13を積層し、さらにこの積層されたプリプレグ13の上に配線基板4を積層する工程である。ここで、プリプレグ13には、孔加工工程14において、電子部品3aに対応する位置に予め孔14aが形成されている。そしてこの積層工程12では、電子部品3aがこの孔14a内に配置されるように、プリプレグ13が積層される。なお、この工程における配線基板4の下面は、予め配線パターンや、配線基板4の上下面を接続するスルーホール(図示せず)などが形成されている。一方、配線基板4の上面側の全面には、銅箔が形成されている。つまり配線パターンが未形成な状態としてある。
【0006】
樹脂部形成工程15は、積層工程12で積層された状態で、加熱するとともに、その上下から圧縮することで、樹脂部5と基材部6とを形成する工程である。加熱されて流動可能な状態にまで軟化したプリプレグ13の樹脂が、圧縮力によって孔14a内に流入する。そして、さらに加熱を続けることにより、熱硬化性樹脂である樹脂が硬化する。そしてこの樹脂部形成工程15によって、孔14a内が硬化した樹脂で充満し、電子部品3aが埋設された樹脂部5が形成されると同時に、プリプレグ13の基材同士が樹脂によって接着されることにより、基材部6が形成されることとなる。
【0007】
ここで、樹脂部形成工程15における圧縮により、樹脂は孔14a内へ流入するのみでなく、配線基板2の外側へも溢れ出す。そこで図13において切除工程16は、樹脂部形成工程15の後で、配線基板4の外方向へと溢れ出した不要な樹脂を切除する工程である。
【0008】
そしてこのような方法によって、上下面に銅箔を有した状態の部品内蔵基板1が完成する。そしてこの後は、通常のプリント基板の製造工程によって、スルーホール7や上下面の配線パターンなどの形成が行われる。つまり、スルーホール形成工程17では、配線基板2、配線基板4および基材部6を貫通するビア孔をドリル加工などによって形成し、その後でこのビア孔の内周面に銅めっきを行うことで、配線基板2と配線基板4との間を接続するスルーホール7を形成する。そして配線パターン形成工程18では、スルーホール形成工程17の後で、エッチング処理などによって、不要箇所の銅箔を除去し、部品内蔵基板1の上下面に所要の形状の配線パターンを形成することで、部品内蔵基板1が完成する。
【0009】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−158770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら従来の部品内蔵基板の製造方法において、プリプレグ13は非常に軟らかく(ふにゃふにゃな状態)、積層工程12においてこのような軟らかいプリプレグ13を何枚も積層するには工数がかかる。特に従来の製造方法では、電子部品3aが孔14a内に収まるように、位置精度良くプリプレグ13を積層する必要があるため、自動化なども難しくなる。また、部品内蔵基板1の完成には、樹脂部形成工程15の後で、配線基板2と配線基板4との間を接続するスルーホール形成工程17や、配線パターン形成工程18などのような後工程が必要となる。これにより従来の部品内蔵基板1の製造方法では、部品内蔵基板1の製造に工数がかかり、生産性が悪く、部品内蔵基板1の製造コストも大きくなるという課題を有していた。
【0012】
そこで本発明は、この問題を解決したもので、安価な部品内蔵基板を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するために、樹脂部を形成する工程は、第1の大判配線基板の下面と第2の大判配線基板の上面のうちの少なくともいずれか一方に剥離可能な粘着性フィルムを貼り付ける工程の後に設けられる。そしてこの樹脂部を形成する工程の後で、前記第1と第2の大判配線基板の除去部を切除して、前記第1と第2の大判配線基板から前記第1と第2の配線基板を切り離すと同時に、この除去部に対応した位置の前記粘着性フィルムも切除する。そしてこの工程の後で、前記粘着性フィルムを除去することにより、前記樹脂部を形成する工程において前記粘着性フィルム上に形成された樹脂も同時に除去するものである。これにより所期の目的を達成することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によれば、少なくとも両面に導体層が形成された第1の配線基板と、この第1の配線基板の上方に配置された第2の配線基板と、前記第1の配線基板の上面と前記第2の配線基板の下面のうちの少なくともいずれか一方に実装された電子部品と、これら第1と第2の配線基板との間を電気的に接続する接続体と、前記第1と第2の配線基板の間に設けられ、前記接続体と前記電子部品が埋設された樹脂部とを備えた部品内蔵基板の製造方法において、少なくとも第1と第2の大判配線基板のいずれか一方へ前記電子部品を装着するとともに、前記第1と第2の大判配線基板のいずれか一方へ前記接続体を装着する工程と、この工程の後で前記第1と第2の大判配線基板を前記電子部品が内側を向くような方向で搭載し、これらの第1と第2の大判配線基板の間を前記接続体を介して接続する工程と、その後で少なくとも前記第1と第2の大判配線基板の間に樹脂を充填し、前記電子部品が前記樹脂で埋設された前記樹脂部を形成する工程と、この工程の後で前記第1と第2の大判配線基板に設けられた除去部を切除し、前記第1と第2の大判配線基板から前記第1と第2の配線基板を切り離す工程とを備え、少なくとも前記樹脂部を形成する工程の前には、前記第1の大判配線基板の下面と前記第2の大判配線基板の上面のうちの少なくともいずれか一方に剥離可能な粘着性フィルムを貼り付ける工程を設けるとともに、前記除去部を切除する工程の後には、前記粘着性フィルムを除去する工程とを設け、前記樹脂部を形成する工程では、前記樹脂で前記粘着性フィルムが覆われるとともに、前記除去部を切除する工程では、前記除去部に対応する位置における前記粘着性フィルムも同時に切除され、前記粘着性フィルムを除去する工程では、前記粘着性フィルムと前記粘着性フィルムを覆う樹脂とを同時に除去するものであり、これにより容易に樹脂部を形成でき、また別途第1と第2の配線基板を接続する工程も不要となる。したがって、生産性が良好な部品内蔵基板の製造方法を実現でき、安価な部品内蔵基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)実施の形態1における部品内蔵基板の断面図、(b)同、部品内蔵基板の要部拡大断面図
【図2】同、部品内蔵基板の製造フローチャート
【図3】同、組み立て工程における部品内蔵基板の側面図
【図4】同、樹脂部形成工程における部品内蔵基板の断面図
【図5】同、切除工程における部品内蔵基板の断面図
【図6】同、剥離工程における部品内蔵基板の側面図
【図7】同、樹脂部形成装置の概略断面図
【図8】同、樹脂部形成工程の製造フローチャート
【図9】同、軟化工程における樹脂部形成装置の断面図
【図10】同、浸漬工程における樹脂部形成装置の断面図
【図11】同、圧縮流入工程における樹脂部形成装置の断面図
【図12】従来の部品内蔵基板の断面図
【図13】同、部品内蔵基板の製造フローチャート
【図14】同、積層工程の部品内蔵基板の断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本実施の形態における部品内蔵基板の製造方法について説明する。
【0017】
(実施の形態1)
以下本実施の形態における部品内蔵基板31について図面を用いて説明する。図1(a)は、本実施の形態における部品内蔵基板31の断面図であり、図1(b)は、同、部品内蔵基板31の要部拡大断面図である。図1(a)、図1(b)において、配線基板32の上面には、配線パターン32aが配線されており、この配線パターン32a上に電子部品3aが実装されている。一方配線基板32の下面には、配線パターン32bが形成されている。なお、本実施の形態では、配線基板32は厚みが0.5mmの4層基板であり、電子部品3aは半導体素子やチップ部品が含まれている。なお、半導体はフェイスダウンにて配線基板32へフリップチップ実装されている。
【0018】
樹脂部35には、電子部品3aが埋設されている。本実施の形態において、樹脂部35の樹脂35a(図2に示す)には、熱硬化性樹脂のエポキシ樹脂が用いられている。ここで、樹脂部35の上面(配線基板32の上方)には配線基板36が設けられ、配線基板36と配線基板32とが対向するように配置されている。この構成により、配線基板32と配線基板36との間に樹脂部35が形成されることとなる。ここで、配線基板36の上面には配線パターン36aが形成されている。本実施の形態において、配線基板36には、厚みが0.1mmの両面基板が用いられており、したがって、価格が安価であるので、低価格な部品内蔵基板31を実現できる。
【0019】
なお、本実施の形態において、電子部品3aは配線基板32に装着されているが、これは配線基板36側へ装着してもよい。ただしその場合には電子部品3aが実装される配線基板36の厚みを、配線基板32よりも厚くしておくことが望ましい。
【0020】
本実施の形態においてスペーサ37(接続体の一例として用いた)の一方の端部が配線基板36へ固定されるとともに、他方端が配線基板32へ固定されている。本実施の形態におけるスペーサ37は四角柱形状であるが、これは円柱形状などのように上下面に平坦部を有した形状であれば良い。なお、このスペーサ37も、電子部品3aと同様に樹脂部35内に埋設されている。ただし、スペーサ37の高さは配線基板32に装着された電子部品3aの高さより高くしておく。つまり、電子部品3aと配線基板36との間にも樹脂部35が介在している。そして、本実施の形態において配線基板32と配線基板36において、スペーサ37が装着される位置には、それぞれ接続パッド32cと接続パッド36bとが形成されており、スペーサ37と接続パッド32cやスペーサ37と接続パッド36bとがはんだ38によって接続される。そしてこれにより、配線基板32(電子部品3aなどで形成される電子回路)と配線基板36とがスペーサ37を介して電気的に接続される。なお、配線基板32や配線基板36の上下面はそれぞれスルーホール(図示せず)などによって接続されている。
【0021】
なお、本実施の形態におけるスペーサ37は樹脂製であり、スペーサ37の上下面にはそれぞれ接続パッド37aが形成されている。これにより、接続パッド32cと接続パッド37aとの間や、接続パッド36bと接続パッド37aとの間が、はんだ38によって接続される。なお、スペーサ37の上下の接続パッド37a同士は、導電体(例えばスルーホール)によって電気的に接続されている。ここで本実施の形態では、樹脂製のスペーサ37を用いたが、これには金属片(例えば、黄銅などの金属板を切断して形成)や銅などによる金属製のボールなどを用いてもかまわない。このように導電性の金属片やボールは、非常に安価であるので、安価な部品内蔵基板31を得ることができる。ここで、部品内蔵基板31の4側面には切断面39が形成されている。
【0022】
次に本実施の形態における部品内蔵基板31の製造方法について、図面を用いて説明する。図2は本実施の形態における部品内蔵基板の製造フローチャートである。図2において、図1と同じものには同じ符号を用いており、その説明は簡略化している。部品内蔵基板31の製造方法には、組み立て工程41、樹脂部形成工程42、切除工程43、剥離工程44とを含み、図2に示した順序で行われる。なおここでは、電子部品3aが配線基板32側に実装される場合を代表として説明し、電子部品3aが配線基板36側に実装される場合の説明は割愛している。ただし、電子部品3aが配線基板36側へ実装される場合には、以下の説明において、配線基板32と配線基板36とが入れ替わることとなる。
【0023】
図3は、組み立て工程における部品内蔵基板の側面図である。なお、図3において図1や図2と同じものには、同じ符号を用いており、その説明は簡略化している。図2、図3において大判配線基板45は、配線基板32と除去部45a(図5に示す)とを有している。一方大判配線基板46は、配線基板36と除去部46a(図5に示す)とを有している。なお、除去部45aは配線基板32の外周に連結され、除去部46aは配線基板36の外周に連結されている。
【0024】
まず組み立て工程41は、大判配線基板45と大判配線基板46との間をスペーサ37を介して電気的に接続する工程である。ここで、スペーサ37は一箇所へ集中させず、離散的に配置しておくとよい。本実施の形態では、大判配線基板45および大判配線基板46とスペーサ37との間は、リフローはんだ付けによって接続している。このとき、大判配線基板45(配線基板32)と大判配線基板46(配線基板36)とは、電子部品3aが部品内蔵基板31において内側を向く方向で配置される。ここで本実施の形態における配線基板32には、あらかじめ配線パターン32bが配線され、この配線パターン32bは接続パッド32cや配線パターン32aとスルーホール(図示せず)などによって接続されている。一方配線基板36にも、あらかじめ配線パターン36aが形成され、この配線パターン36aと接続パッド36bともスルーホール(図示せず)などによって接続されている。したがってこの工程において、大判配線基板45と大判配線基板46とは、配線パターン32bや配線パターン36aがともに外側となるように配置されることとなる。
【0025】
図4は、樹脂部形成工程における部品内蔵基板の断面図である。図4において、図1から図3と同じものには、同じ符号を用いており、その説明は簡略化している。図2に示したように、樹脂部形成工程42は組み立て工程41の後で行われる。この樹脂部形成工程42では、大判配線基板45と大判配線基板46との間に軟化させた熱硬化性の樹脂35aを充填した後に、この樹脂35aを加熱して硬化させることによって、樹脂部35を形成する工程である。ここで、スペーサ37は離散的に実装されているので、樹脂部形成工程42において樹脂35aは、スペーサ37同士の間を通り、大判配線基板45と大判配線基板46(配線基板36と配線基板32)との間に容易に充填されることとなる。本実施の形態では、後述する樹脂部形成装置51(図7に示す)を用いて樹脂部35を形成する方法を用いている(これについては、後に詳しく説明する)が、これはトランスファ成形や真空印刷などによる成形方法などを用いてもかまわない。
【0026】
図5は、切除工程における部品内蔵基板の断面図である。図5において、図1から図4と同じものには、同じ符号を用いており、その説明は簡略化している。切除工程43は、図2に示すように樹脂部形成工程42の後で行われる。この切除工程43では、図5に示すように不要となる除去部45aや除去部46aを切除する工程である。このとき、除去部45aと除去部46aとの間や、大判配線基板45(あるいは大判配線基板46)の外側に形成された不要な樹脂部35bも同時に切除されて、樹脂部35と不要な樹脂部35bとが切り離される。そしてこれによって、大判配線基板45、大判配線基板46から配線基板32、配線基板36がそれぞれ切り離され、部品内蔵基板31の側面に切断面39が形成される。これによって、所望のサイズと形状へと加工され、部品内蔵基板31の外形が形成される。
【0027】
なお、この切除工程43において、不要な部分を切除するための切断工具としては、ダイシング歯やプレス金型などが用いられる。そして、配線基板32や配線基板36においてこれらの切断工具で切断される位置(領域)は、銅箔の不形成部としておくことが望ましい。これにより、切断工具が銅箔を切断しないので、切断工具の寿命が長くできる。また、部品内蔵基板31の側面(切断面39)に銅箔のバリなどを発生しにくくできる。
【0028】
ここで本来樹脂部形成工程42では、配線基板32と配線基板36との間に樹脂部35が形成されれば良い。しかし、一般的にこのような樹脂部形成工程42では、大判配線基板45の配線パターン32b側(あるいは大判配線基板46の配線パターン36a側)にも樹脂35aが付着し、配線パターン32b(あるいは配線パターン36a)が樹脂35aによって覆われてしまう。あるいは配線パターン32b側と配線パターン36a側の双方に樹脂35aが付着し、配線パターン32bや配線パターン36aが樹脂35aによって覆われてしまうこともある。
【0029】
そこで本発明では、樹脂部形成工程42において配線パターン32bや配線パターン36aが樹脂35aで覆われるのを防ぐために、樹脂部形成工程42の前に配線パターン32bまたは配線パターン36aあるいは配線パターン36aと配線パターン32bの双方の上に、剥離可能な粘着性フィルム47(低粘着フィルムあるいは再剥離フィルムとも言う)を貼り付ける。つまり、樹脂部形成工程42において、配線パターン32b側のみが樹脂35aで覆われるのであれば、配線パターン32b側のみに粘着性フィルム47を貼り付ければよい。逆に、配線パターン36a側のみが樹脂35aで覆われるのであれば、配線パターン36a側のみに粘着性フィルム47を貼り付ければよい。そして、配線パターン32b、配線パターン36aともに樹脂35aで覆われるのであれば、配線パターン32b、配線パターン36aが形成された面の双方に粘着性フィルム47を貼り付ける。
【0030】
このとき粘着性フィルム47は貼り付けられる配線基板32(あるいは配線基板36)より大きくしてある。すなわち、粘着性フィルム47は、配線基板32の配線パターン32b側(あるいは配線基板36の配線パターン36a側)の全面を覆い、さらに配線基板32(あるいは配線基板36)から除去部45a(あるいは除去部46a)へとまたがって(延在して)いる。本実施の形態において、粘着性フィルム47の大きさは、貼り付けられる大判配線基板45(あるいは大判配線基板46)とほほ同じ大きさとしている。
【0031】
ここで、粘着性フィルム47は、基材と、この基材上に塗布された低粘着力の粘着剤とから構成されたものであり、粘着剤は組み立て工程41や樹脂部形成工程42において熱が加わった後でも硬化することなく、剥離可能な程度の粘着性を維持できるものである。また、本実施の形態において、粘着性フィルム47の基材には可撓性を有する基材を用いておくことが望ましい。さらに、なおこの粘着性フィルム47(基材)には、組み立て工程41や樹脂部形成工程42などで熱が加えられるので、耐熱性を有するPETなどが用いられる。
【0032】
しかし、粘着性フィルム47を貼り付けた状態で樹脂部形成工程42を行うと、粘着性フィルム47が樹脂35aによって覆われてしまい(樹脂部35cが形成され)、粘着性フィルム47を剥がすことができなくなる。なお、このとき、樹脂部35cの厚みはなるべく薄くすることが望ましい。そこで本発明では、粘着性フィルム47を配線基板32(あるいは配線基板36)より大きくし、配線基板32から除去部45aへまたがるような大きさとしている。これにより、切除工程43では、除去部45a(あるいは除去部46a)に対応する位置の粘着性フィルム47や樹脂部35cも切除される。
【0033】
図6は、剥離工程における部品内蔵基板の側面図である。図6において、図1から図5と同じものには、同じ符号を用い、その説明は簡略化している。図2に示したように、剥離工程44は、切除工程43の後に行われる。この剥離工程44は、図6に示すように粘着性フィルム47を配線基板32(あるいは配線基板36)から除去する。ただし、このとき粘着性フィルム47上の不要な樹脂部35cも同時に除去する。これにより、配線パターン32b(あるいは配線パターン36a)が露出し、部品内蔵基板31が完成する。ここで切除工程43での切除された状態では、粘着性フィルム47と配線基板32(あるいは配線基板36)との間が、剥離可能な粘着剤によって接着されている。したがって、剥離工程44では、配線基板32(あるいは配線基板36)から粘着性フィルム47を剥がせば、粘着性フィルム47や不要な樹脂部35cを容易に除去することができる。なお、本実施の形態における粘着性フィルム47は可撓性を有するので、粘着性フィルム47の端を指などでつまんで、引き剥がせば簡単に粘着性フィルム47を剥がすことができるので、さらに容易に粘着性フィルム47や不要な樹脂部35cを除去できる。
【0034】
以上のような製造方法を用いれば、プリプレグ13を積層することなく樹脂部35を容易に形成できるので、たとえば、トランスファ成形や真空印、さらには本実施の形態で示した成形方法などのように生産性の良好な成形方法を用いて部品内蔵基板31を得ることができるので、安価な部品内蔵基板31を得ることができる。さらに配線基板32と配線基板36との間は、スペーサ37によって電気的に接続されているので、従来のように別途この間を接続するスルーホール7を形成する必要もない。したがって、さらに生産性が良く、安価な部品内蔵基板31を実現できる。
【0035】
それでは次に、本実施の形態における組み立て工程41について詳細に説明する。組み立て工程41には、フィルム貼り付け工程41aと、実装工程41bと、接続工程41cとを含んでいる。本実施の形態では、図2に示すように、配線パターン32b(あるいは配線パターン36a)に粘着性フィルム47を貼り付けるフィルム貼り付け工程41aを最初に行っている。これにより、実装工程41bよりも前に粘着性フィルム47が貼り付けられているので、実装工程41b以降の各工程において、粘着性フィルム47によって配線パターン32bを保護することができ、配線パターン32bの汚れ、傷や断線などを生じにくくできる。
【0036】
実装工程41bは、フィルム貼り付け工程41aの後で、大判配線基板45(あるいは大判配線基板46)において、電子部品3aを装着する配線パターンや接続パッド32cが形成された面側(図1において配線基板32の上面あるいは配線基板36の下面)へクリーム状のはんだ38を塗布し、部品装着機などにより電子部品3aを実装する。本実施の形態では、配線パターン32aや接続パッド32cにクリーム状のはんだ38が印刷されて、配線パターン32a上に電子部品3aが装着され、接続パッド32c上にスペーサ37が実装される。そしてリフロー加熱を行うことにより、配線基板32に電子部品3aやスペーサ37が接続される。なお本実施の形態では、電子部品の実装工程41bにおいて、電子部品3aの実装と同時にスペーサ37も装着されるので、非常に生産性が良好である。
【0037】
接続工程41cは実装工程41bの後で、配線基板36と配線基板32とを接続する工程である。具体的には、配線基板36の接続パッド36bにクリーム状のはんだ38を塗布し、その後でスペーサ37が装着された配線基板32を装着し、加熱することにより、配線基板32と配線基板36との間がスペーサ37を介して電気的に接続されるようにする(このようして組み立て工程41が完了したものを、以降組み立て済み部品内蔵基板31aという)。
【0038】
なおこのとき、部品内蔵基板31のそりを小さくするために、接続工程41cにおいて大判配線基板46への大判配線基板45の搭載や、はんだ付け(加熱)は金属製のパレット49上で行われる。ここで大判配線基板46が載置されるパレット49の底面は平坦になっている。ここで、大判配線基板46はこのパレット49の底面上に、接続パッド36bが上側となる向きで搭載される。そしてこの大判配線基板46上に、スペーサ37を搭載済みの大判配線基板45が、スペーサ37(接続パッド37a)と接続パッド36bとが対向する(電子部品3aが内側を向く)向きで搭載される。このようにパレット49に搭載された状態で、大判配線基板46と大判配線基板45とは、加圧体48により大判配線基板45の上側から加圧される。そして、この加圧状態のままで加熱され、大判配線基板46と大判配線基板45とはスペーサ37を介して接続される。このようにすることで、大判配線基板45と大判配線基板46とをパレット49の平面に沿わせ、大判配線基板45や大判配線基板46(部品内蔵基板31)のそりを小さくできる。
【0039】
なお本実施の形態において加圧体48は、大判配線基板45の上側に搭載する金属製の重しであり、この重しの下面も平坦となっている。そして、この重しを搭載した状態で、リフロー炉へ投入して、加熱を行っている。なお、本実施の形態においてスペーサ37は樹脂製であるので、このスペーサ37の樹脂部分がストッパとしての役割も果たし、大判配線基板45と大判配線基板46との間の間隔が小さくならないように規制している。また、スペーサ37として、リフロー加熱によって溶融しないような金属製のボールや金属片などを用いた場合にも同様の効果を有することとなる。
【0040】
また本実施の形態において、配線基板36には両面(あるいは多層)基板を用いているので、配線基板36の下面側にも電子部品(図示せず)を装着できる。これにより、さら小型の部品内蔵基板31を実現できることとなる。そしてこれは、接続工程41cにおいて、配線基板36へ配線基板32を搭載する前に、配線基板36へ電子部品を装着しておくことで実現できる。なおこの場合、大判配線基板46へ電子部品を装着し、大判配線基板45を搭載した後に、電子部品と大判配線基板45(スペーサ37)とを同時にリフローはんだ付けすれば、非常に生産性が良好である。もちろん、接続工程41cの前に大判配線基板46に電子部品を実装する工程を設け、大判配線基板45へ電子部品をあらかじめリフローはんだ付けしておいてもかまわない。なお本実施の形態における接続工程41cでは、実装工程41bでスペーサ37を配線基板32へ実装したが、これはあらかじめ配線基板36の所定の位置へスペーサ37を固定しておいても良い。
【0041】
本実施の形態では、組み立て工程41の最初にフィルム貼り付け工程41aを行った。この場合、粘着性フィルム47の粘着剤には、部品内蔵基板31の完成までに少なくとも3回の熱履歴が加わることとなる。そこでこのような繰り返しの加熱によって、粘着剤の粘着力が劣化するような場合がある。これは、たとえば、はんだ38に高融点のはんだを用いた場合や、樹脂35aに融点の高い樹脂を用いた場合に発生しやすくなる。このような場合、最悪樹脂部形成工程42において、粘着性フィルム47の周縁部などが剥離し、この部分に樹脂35aが付着してしまうことが考えられる。そこでこのような剥離の発生を少なくするためには、フィルム貼り付け工程41aを接続工程41cと樹脂部形成工程42との間に行うとよい。これによれば、粘着性フィルム47にかかる熱履歴を1回とできるので、樹脂部形成工程42において粘着性フィルム47のはく離が発生しにくくなる。いずれにしても、フィルム貼り付け工程41aは少なくとも樹脂部形成工程42より前に行えばよいわけであるので、フィルム貼り付け工程41aを実装工程41bと接続工程41cの間に行っても良く、この場合にも粘着剤に加わる熱履歴を減らすことができる。そしてこのように、フィルム貼り付け工程41aを実装工程41bより後で行う場合、樹脂部形成工程42での粘着性フィルム47の剥がれを防止するために、粘着性フィルム47を貼り付ける前に洗浄などを行うことが望ましい。
【0042】
次に本実施の形態において用いた樹脂部形成工程42について、図面を用いて詳細に説明する。最初に本実施の形態の樹脂部形成工程42において、樹脂部35を形成するために用いる樹脂部形成装置51について説明する。図7は、本実施の形態における樹脂部形成装置の概略断面図であり、図8は本実施の形態における樹脂部形成工程の製造フローチャートであり、図9は軟化工程における樹脂部形成装置の断面図である。これらの図7から図9において、図1から図6と同じものには同じ符号を用い、その説明は簡略化している。なお図7、図9において、組み立て済み部品内蔵基板31aが樹脂部形成装置51に設置された状態で、組み立て済み部品内蔵基板31aの上側となる面を、以降の実施の形態では、設置状態での上面という。逆に、組み立て済み部品内蔵基板31aが樹脂部形成装置51に設置された状態において、組み立て済み部品内蔵基板31aの下側となる面を、以降の実施の形態では、設置状態での下面という。
【0043】
搭載部52は、組み立て済み部品内蔵基板31aが搭載されるものであり、搭載部52の搭載面(下面)に組み立て済み部品内蔵基板31aを吸着する構成である。具体的には、設置状態での上面が、搭載部52によって直接吸着されるので、設置状態での上面と搭載部52との間には隙間がなく、樹脂35aが浸入しない。これにより設置状態での上面には樹脂35aが付着することがないので、設置状態での上面には粘着性フィルム47を貼り付ける必要はない。これにより、フィルム貼り付け工程41aでは、設置状態での上面側に粘着性フィルム47を貼り付ける必要がなく、一方にのみ粘着性フィルム47を貼り付ければよい。フィルム貼り付け工程41aでの粘着性フィルム47の貼り付け工数を短くできるので、生産性が良好となる。つまり、本実施の形態における樹脂部形成工程42では、フィルム貼り付け工程41aでは、大判配線基板45と大判配線基板46との少なくともいずれか一方にのみ粘着性フィルム47を貼り付ければよい。そして、組み立て済み部品内蔵基板31aは、粘着性フィルム47が貼り付けられた側が下方を向く方向で搭載部52へ搭載されることとなる。
【0044】
本実施の形態においては、配線パターン32b上と配線パターン36a上のいずれの側の面に粘着性フィルム47を貼り付けてもかまわない。ここでは、大判配線基板46の配線パターン36a側を搭載部52へ装着する場合を代表として説明する。つまりこの場合、組み立て済み部品内蔵基板31aは、配線パターン32b側の面が搭載状態での上面となり、配線パターン36a側の面が搭載状態での下面となるように、搭載部52へ載置される。つまりは、組み立て済み部品内蔵基板31aは、大判配線基板45が下方を向く方向で載置されることとなる。したがって、本実施の形態におけるフィルム貼り付け工程41aでは、大判配線基板46の配線パターン36a側には粘着性フィルム47を貼り付けず、大判配線基板45の配線パターン32b側に対してのみ、粘着性フィルム47を貼り付ける。
【0045】
なお、ここでは、配線パターン36a側を搭載部52へ装着したが、これは配線パターン36a側に粘着性フィルム47を貼り付け、配線パターン32b側が装着状態での上側となるように、組み立て済み部品内蔵基板31aを搭載部52へ搭載してもよい。なおこの場合、配線パターン32b側には粘着性フィルム47を貼り付けなくてもよい。そして、これらいずれの場合においても、搭載状態で上側となる配線パターン(32bあるいは36a)の汚れ・欠損などを防止したい場合には、搭載状態で上側となる配線パターン(32bあるいは36a)に対しても粘着性フィルム47を貼り付けるとよい。
【0046】
搭載部52の下方には、上方に開口部を有し、樹脂35aが投入される空間を有した樹脂槽53が設けられている。ここで、樹脂槽53は上下方向へと可動する。また、樹脂槽53の底部53aは、樹脂槽53全体の動きとは独立して、単独に垂直方向(図9の矢印方向)へ可動できる構造となっている。そしてこれら搭載部52や樹脂槽53には加熱手段(図示せず)が設けられており、これらによって樹脂35a(さらには配線基板36、配線基板32)を加熱する。また、樹脂部形成装置51にはコンプレッサ(図示せず)などが設けられ、樹脂槽53内や樹脂槽53と搭載部52との間の空気を吸引することで、樹脂部35の形成をほぼ真空状態下で行うことができるようになっている。これにより溶融した樹脂35aを脱泡し、樹脂部35中のボイドを防止できる。
【0047】
次に上記のような樹脂部形成装置51を用いた場合の樹脂部形成工程42について、図8の工程の順序に従って、詳細に説明する。図8、図9において、軟化工程61は組み立て工程41の後で、組み立て済み基板31aを所定の方向にて搭載部52へ搭載するとともに、樹脂槽53内へ非流動状態(未溶融の固体またはゲル状)の樹脂35aを投入し、加熱して樹脂35aを流動可能な状態となるまで軟化させる工程である。ここで、組み立て済み部品内蔵基板31aを搭載部52へ搭載する方向は、上でも説明したように、大判配線基板45が下方を向く方向で搭載される。そしてこの工程では、この処理と並行して、樹脂35aと搭載部52(配線基板36と配線基板32や配線基板32と樹脂35a)との間の空間54の空気が吸引される。この吸引は空間54がほぼ真空状態となるまで行われ、樹脂35aが完全に溶融を完了した後に止められる。なお本実施の形態における樹脂槽53や搭載部52は予め樹脂35aが溶融する温度にまで加熱しているので、短時間に樹脂35aを軟化させることができる。
【0048】
また本実施の形態において、樹脂槽53へ投入前の樹脂35aは粒状であり、計量容器などによって計量された所定量の樹脂35aが樹脂槽53へと投入される。ここで樹脂35aは、第1の温度範囲内では流動性を有せず、この第1の温度より高い第2の温度範囲内では流動性を生じ、この第2の温度より高い温度で硬化する熱硬化性樹脂を用いる。このように樹脂35aを樹脂槽53へ投入する段階で、樹脂35aは粒状であるので、精度良く計量することができる。また、計量や投入の自動化も容易である。
【0049】
発明者らはこの樹脂部形成装置51を用いて、以下のような手順で軟化工程61を行った。予め加熱手段によって搭載部52と樹脂槽53との温度を樹脂35aが溶融する(流動性を生じる)温度以上であり、樹脂35aが硬化する温度範囲未満の温度(第2の温度範囲)となるように加熱しておく。本実施の形態における樹脂35aは、約140℃未満の温度では流動性が小さく、約140℃から約175℃において最も軟化して流動性を生じ、それを超える温度で硬化する(第3の温度範囲)エポキシ系の熱硬化性樹脂を用いている。したがって本実施の形態では、搭載部52と樹脂槽53との温度を第2の温度範囲上限の175℃に設定している。
【0050】
図8において、浸漬工程62は軟化工程61の後で、流動可能な状態に溶融した樹脂35aの中に、電子部品3aを浸漬し、配線基板36の下面を溶融した樹脂35aの液面へと接触させる工程である。そしてこの工程は、例えば以下のようにして行われる。
【0051】
図10は、本実施の形態の浸漬工程における樹脂部形成装置の断面図である。図10において、樹脂槽53と底部53aとをほぼ同じ速度で上方(図9矢印方向)へ移動させて、大判配線基板46の外周部(除去部46aの外周部)が、樹脂槽53と搭載部52との間に挟まれるようにする。そのために、本実施の形態では、組み立て済み部品内蔵基板31aを樹脂部形成装置51へ設置した状態で上側となる大判配線基板(この説明中では大判配線基板46)は、設置した状態で下側となる大判配線基板(この説明の中では大判配線基板45)よりも大きくしている。
【0052】
つまり、この代表説明において、大判配線基板46の外周部は、大判配線基板45の4辺方向において、大判配線基板45の外周部から突出させることとなる。したがって、この大判配線基板46の突出部分(外周部)が、樹脂槽53と搭載部52との間に挟まれ、樹脂槽53の開口部は大判配線基板46によって塞がれることとなる。そしてこのとき、大判配線基板45は樹脂槽53の開口部より小さくし、樹脂槽53内に収まる程度の大きさとしておくことで、大判配線基板45は樹脂槽53内に収容される。なおこの代表例では、大判配線基板46を設置状態で上側としたが、これは大判配線基板45を設置状態で上側となるように配置してもよい。ただしこの場合、大判配線基板45によって開口部が塞がれ、大判配線基板46が樹脂槽53へ収容されるようにする。なおこの場合、粘着性フィルム47は少なくとも配線パターン36a側へ貼り付けることとなる。
【0053】
なおこのとき、樹脂槽53と大判配線基板46の下面との間に隙間が生じないようにすることが必要であり、そのために樹脂槽53において、大判配線基板46の下面と当接する箇所にはゴムパッキン(図示せず)などが設けられる。そして、樹脂槽53は規定の位置(樹脂槽53が大判配線基板46と当接する位置)まで上昇した後に停止する。なおこの状態では、図10に示すように樹脂35aの液面は、大判配線基板46の下面とはまだ接触しないようにしてある。これにより、樹脂35aが樹脂槽53から溢れ出すことを少なくできる。
【0054】
ただしこのとき、樹脂部形成装置51へ搭載された状態における下側の大判配線基板(この代表例では、大判配線基板45)に電子部品3aが実装されている場合、電子部品3aと搭載された状態における下側の大判配線基板との間の隙間が樹脂35aの液面より下となる(電子部品3aと搭載された状態における下側の大判配線基板との間の隙間が樹脂35a内に浸漬される)ようにすることが望ましい。この理由についても代表例を用いて説明する。これは、少なくとも電子部品3aと大判配線基板45との間の隙間が樹脂35a内に浸漬されるようにすることで、樹脂35aを電子部品3aと大判配線基板45(配線基板32)との間などの狭い隙間へ入り込ませるためである。そしてこれによって、後述する圧縮流入工程63において、電子部品3aと大判配線基板45(配線基板32)との間の非常に狭い隙間へ、樹脂35aを確実に充填させることができることとなる。なお、本実施の形態における浸漬工程62では、電子部品3aの上面が樹脂35aで覆われる程度まで浸漬している。
【0055】
ただし、樹脂部形成装置51へ搭載された状態における上側の大判配線基板(この代表例では、大判配線基板46)に電子部品3aが実装されている場合、電子部品3aは樹脂35aの液面と接触させておくことが望ましい。これは、樹脂35aの表面張力によって、樹脂35aが電子部品3aの側面に沿って這い上がることや、あるいはその一部が、電子部品3aと上側の大判配線基板(大判配線基板46)との間の狭い隙間へ入り込むことが発生し、後の圧縮流入工程63において樹脂35aが電子部品3aと上側の大判配線基板(大判配線基板46)との間の非常に狭い隙間へ充填され易くなるためである。
【0056】
そして浸漬工程62では、樹脂槽53の移動が停止した後も、底部53aはさらに上方へと移動を続ける。これによって、樹脂35aの液面と大判配線基板46の下面とが接触することとなる。なお、この浸漬工程62において、樹脂35aを大判配線基板45(配線基板32)と大判配線基板46(配線基板36)との間の隙間へ充填することが必要である。そこで、本実施の形態では、配線基板32と樹脂槽53との間に樹脂35aが流れ込むための通路(隙間)が設けられている。これにより、大判配線基板45の側面と樹脂槽53の内面との間の通路を通って、樹脂35aが大判配線基板45と大判配線基板46との間に流れ込むこととなる。
【0057】
さらに、スペーサ37を離散的配置することにより、樹脂はスペーサ37同士の間の隙間を通り、大判配線基板45と大判配線基板46との間に樹脂35aがスムーズに充填される。このように浸漬工程62では、大判配線基板45が浸漬されるだけであるので、樹脂35aの流れが小さく、樹脂35aによる大判配線基板45や、電子部品3aへのストレスも小さくできる。したがって、電子部品3a自身の破壊や、電子部品3aと配線基板32(あるいは配線基板36)間の接続が破壊しにくくできる。さらには、場所による樹脂35aに含まれるフィラーの密度などの差(樹脂35aの組成の差)が生じにくくできる。したがって、大判配線基板45(配線基板32)や大判配線基板46(配線基板36)の反りなども小さくできるので、そりの小さな部品内蔵基板31を実現できる。
【0058】
図11は、圧縮流入工程63における樹脂部形成装置51の断面図である。浸漬工程62において大判配線基板46の下面と樹脂35aとが接触するので、図11に示すように、浸漬工程62が完了すれば、一見樹脂35aの充填は完了したように見える。ところが、電子部品3aと大判配線基板45(あるいは大判配線基板46)の間の隙間は非常に狭いため、中には樹脂35aが充填されていない箇所(未充填の隙間49)も存在している。
【0059】
そこで、浸漬工程62の後で圧縮流入工程63を行なう。この圧縮流入工程63では底部53aによって樹脂35aに対し上方へと(図9矢印方向へ)加重を加え、樹脂35aを圧縮し、この圧力によって未充填の隙間49へ樹脂35aを強制的に流入させる。このとき、樹脂槽53と大判配線基板46とで囲まれた空間は、大判配線基板45(あるいは大判配線基板46)と電子部品3aとの間の隙間の未充填の隙間49を除き、樹脂35aによって埋まっている。従って、樹脂35aを圧縮しても底部53aはほとんど上昇することはなく、樹脂35aの圧力のみが上昇することとなる。そして、この圧力が規定値となるまで加圧を続け、その圧力になったときに底部53aの移動を停止し、その圧力を規定時間だけ維持する。なお、この圧縮流入工程63において樹脂35aの温度は、第2の温度範囲内とすることが重要である。これにより、未充填の隙間49へ確実に樹脂35aを充填させることができる。
【0060】
粘着性フィルム47は後ほど剥がすものであるので、本来は圧縮流入工程63において、粘着性フィルム47と底部53aとの間には樹脂35aがないことが望ましい。しかし、そのためには、底部53aと粘着性フィルム47との間の距離を0とすることが必要となる。しかしながら実際には、はんだ38の供給量、粘着性フィルム47の厚み、スペーサ37の高さ、大判配線基板45や大判配線基板46の厚みなどにはばらつきがあり、組み立て済み部品内蔵基板31aの高さにはばらつきが存在する。したがって最悪時、底部53aが組み立て済み部品内蔵基板31aへ当たり、底部53aによる圧縮力が、大判配線基板45や大判配線基板46に加わり、スペーサ37と大判配線基板45(あるいは大判配線基板46)との間を接続するはんだや、大判配線基板45あるいは大判配線基板46自身などにクラックが発生する可能性がある。そこで、本実施の形態では圧縮流入工程63において、底部53aが組み立て済み部品内蔵基板31a(大判配線基板45)に当たらないようにしている。つまり、粘着性フィルム47と底部53aとの間に樹脂35aを残すことで、底部53aの圧縮力が直接大判配線基板45へ加わることを防ぐことができ、信頼性の高い部品内蔵基板31を得ることができる。そして、この粘着性フィルム47と底部53aとの間の樹脂35aが、後述する硬化工程64で硬化することによって樹脂部35cが形成されることとなる。
【0061】
なお、本実施の形態において電子部品3aと大判配線基板45(あるいは大判配線基板46)との接続ははんだであり、錫、銀系の鉛フリーはんだを用いている。本実施の形態におけるはんだの融点は約200℃である。このようにはんだの融点が第2の温度範囲より高いはんだを用いている。したがって、圧縮流入工程63(あるいは浸漬工程62)においてはんだが溶融することもないので、電子部品3aと大判配線基板45(あるいは大判配線基板46)の電気的接続が外れたりしにくくできる。
【0062】
硬化工程64は、圧縮流入工程63の後で、樹脂35aの温度が第2の温度範囲を超える温度(第3の温度範囲)となるまでさらに加熱する。これによって、樹脂35aが硬化し、配線基板32と配線基板36との間の樹脂部35や、除去部46aと除去部45aとの間の樹脂部35bが形成される。さらに、粘着性フィルム47と底部53aとの間に樹脂部35cが形成される。なお、少なくとも樹脂35aの流動性がなくなるまでの間は、この硬化工程64においても圧縮流入工程63で加えられた圧力を維持する。これにより、確実に電子部品3aと配線基板32との間の隙間に、ボイドなどが残りにくくできる。
【0063】
以上のような本実施の形態における樹脂部形成工程42を用いれば、トランスファ成形のように、狭い隙間へ溶けた樹脂35aを流し込む必要がない。これにより、配線基板32と配線基板36との間の樹脂部35を形成するために、配線基板32や配線基板36(組み立て済み部品内蔵基板31a)に対して加わるストレスを小さくできる。したがって、部品内蔵基板31の傾きや変形などを小さくできる。
【0064】
さらにこのような方法によって、電子部品3aと配線基板36との間の間隔が小さくとも、その間に樹脂35aを容易に充填できる。従って、電子部品3aと配線基板36との間における樹脂部35の厚みが薄くても、確実に樹脂部35を形成できることとなり、安価な薄型の部品内蔵基板31を得ることができる。
【0065】
また、圧縮流入工程63で圧力を加えるので、電子部品3aと配線基板32との間の非常に狭い隙間にも確実に樹脂35aを充填できる。さらにまた、電子部品3aには、圧縮流入工程63においてのみ圧力が加わるので、電子部品3aへかかる応力を小さくできる。したがって、電子部品3aや配線基板32の変形が小さくなる。
【0066】
また、浸漬工程62では配線基板32や電子部品3aが樹脂35aに浸漬されるのみであり、圧縮流入工程63で樹脂35aに流れが発生するので、樹脂35aの流れる距離は、トランスファ成形に比べて非常に短い。したがって、硬化後において樹脂35aの流れの不均一さなどによる内部応力も小さくできる。これによって、さらに電子部品3a、配線基板32や樹脂部35自身の歪(変形)などを小さくできる。
【0067】
特に本実施の形態では電子部品3aには集積回路を含み、これらは配線基板32へフェイスダウンにてフリップチップ実装しているので、電子部品3aと配線基板32との間が非常に近くなる。したがって、電子部品3aに形成された回路と配線基板32との間には大きな浮遊容量を持つこととなり、特にこの浮遊容量のばらつきは、集積回路に構成された回路の特性に大きな影響を与えることがある。特に、部品内蔵基板31が高周波装置であり、配線基板32上や集積回路に高周波回路が形成される場合には、特にこの浮遊容量による影響が重要となる。
【0068】
またこのような集積回路は、はんだバンプなどにより配線基板32へ接続される以外に、圧接により配線基板32と接続されているようなものがある。そして特にこのような場合、集積回路や配線基板32の歪を小さくできるので、圧接力が小さくなりにくくできる。したがって、集積回路と配線基板32との間の接続信頼性の高い部品内蔵基板31を実現できる。
【0069】
そしてこのような部品内蔵基板31上に回路を形成するような場合、集積回路の歪を小さくすることは、非常に重要である。これは、実装工程41bにおける特性の検査において、合格範囲と判断したものにおいても、集積回路や配線基板32や樹脂部35自身の歪が大きいと、上記理由などによって、樹脂部35を形成した後に不合格となる恐れがあるためである。そして、樹脂部35が形成された後においては、修理することが非常に困難であるので、廃棄する以外に方策はなく、歩留まりが非常に悪化することとなる。そこで、以上のような製造方法を用い、樹脂35aの流れる距離を小さくすることで、樹脂35a内部に残る残留応力を小さくし、集積回路、配線基板32や樹脂部35自身などにかかる応力を小さくする。これにより、樹脂部35形成後での特性のばらつきを小さくでき、歩留まりの良好な部品内蔵基板31を実現できる。そしてこれは、特に部品内蔵基板31内に高周波回路が形成される場合には、顕著となる。
【0070】
さらに加えて、この残留応力を小さくすることは、部品内蔵基板31の特性の長期信頼性にも大きな影響を及ぼす。つまり、温度変化などによって、樹脂部35や配線基板32に伸縮が生じ、樹脂部35内の内部応力の分布が変化すると考えられる。これにより、集積回路や配線基板32や樹脂部35などの歪量が変化し、その結果集積回路と配線基板32との間の浮遊容量の値が製造段階の値より変化することが考えられる。また、集積回路が圧接により配線基板32へ接続されている場合には、温度変化により圧接力が変化することも考えられる。そこで、上記製造方法により、内部応力を小さくできるので、温度変化などに対しても長期にわたり安定した特性を維持できる部品内蔵基板31を実現できる。
【0071】
そしてもちろん、圧縮流入工程63で樹脂35aを強制的に隙間へ充填するので、印刷法やポッティングなどによる方法に比べ、電子部品3aと配線基板32との間にも確実に樹脂35aを充填できることは言うまでもない。したがって、非常に信頼性も良好な部品内蔵基板31を実現できる。
【0072】
そして以上のように、加圧による圧縮圧力が加わっても、電子部品3aが破壊することを少なくできる。また電子部品3aが集積回路素子である場合、その集積回路素子の変形も小さくできるので、集積回路の厚みも薄くすることができる。したがって、従来のトランスファ成形に比べて薄型の部品内蔵基板31を実現できる。
【0073】
本実施の形態における部品内蔵基板31は配線基板32と配線基板36の2層であったが、配線基板32と配線基板36との間に少なくとも1層以上の中間層配線基板を設け、3層以上としてもかまわない。この場合でも、実装工程41bで中間層配線基板へも電子部品3aやスペーサ37を実装し、その後で組み立て工程41でそれらを接続することで、容易に組み立て済み部品内蔵基板31aを完成できる。たとえば、本代表例であれば接続工程41cにおいて、中間配線基板にもクリーム状のはんだ38を塗布し、大判配線基板46、中間配線基板、大判配線基板45の順で搭載した状態でリフローはんだ付けする。
【0074】
ただし、この場合の中間配線基板も樹脂部形成装置51へ搭載された状態において上側となる大判配線基板(大判配線基板46)より小さくし、樹脂槽53内に収容される大きさとすることが重要である。そしてこの場合に、中間配線基板の外周が配線基板32(あるいは配線基板36)の外周から突出しないようにしておくとよい。つまり、切除工程43における切断工具が、中間配線基板を切断しないようにしておく。これにより切断工具がガラス基材を切断しないので、切断工具の寿命が長くできる。また、部品内蔵基板31の側面(切断面39)に中間配線基板が露出しないので、部品内蔵基板31の側面(切断面39)にガラス基材のバリなどを発生しにくくできる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明にかかる部品内蔵基板の製造方法は、安価な部品内蔵基板を製造できるという効果を有し、特に小型、薄型化が要求される機器に用いると有用である。
【符号の説明】
【0076】
3a 電子部品
31 部品内蔵基板
31a 組み立て済み部品内蔵基板
32 配線基板
35 樹脂部
35b 樹脂部
35c 樹脂部
36 配線基板
37 スペーサ
41 組み立て工程
41a フィルム貼り付け工程
41b 実装工程
41c 接続工程
42 樹脂部形成工程
43 切除工程
44 剥離工程
45 大判配線基板
45a 除去部
46 大判配線基板
46a 除去部
47 粘着性フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも両面に導体層が形成された第1の配線基板と、この第1の配線基板の上方に配置された第2の配線基板と、前記第1の配線基板の上面と前記第2の配線基板の下面のうちの少なくともいずれか一方に実装された電子部品と、これら第1と第2の配線基板との間を電気的に接続する接続体と、前記第1と第2の配線基板の間に設けられ、前記接続体と前記電子部品が埋設された樹脂部とを備えた部品内蔵基板の製造方法において、少なくとも第1と第2の大判配線基板のいずれか一方へ前記電子部品を装着するとともに、前記第1と第2の大判配線基板のいずれか一方へ前記接続体を装着する工程と、この工程の後で前記第1と第2の大判配線基板を前記電子部品が内側を向くような方向で搭載し、これらの第1と第2の大判配線基板の間を前記接続体を介して接続する工程と、その後で少なくとも前記第1と第2の大判配線基板の間に樹脂を充填し、前記電子部品が前記樹脂で埋設された前記樹脂部を形成する工程と、この工程の後で前記第1と第2の大判配線基板に設けられた除去部を切除し、前記第1と第2の大判配線基板から前記第1と第2の配線基板を切り離す工程とを備え、少なくとも前記樹脂部を形成する工程の前には、前記第1の大判配線基板の下面と前記第2の大判配線基板の上面のうちの少なくともいずれか一方に剥離可能な粘着性フィルムを貼り付ける工程を設けるとともに、前記除去部を切除する工程の後には、前記粘着性フィルムを除去する工程とを設け、前記樹脂部を形成する工程では、前記樹脂で前記粘着性フィルムが覆われるとともに、前記除去部を切除する工程では、前記除去部に対応する位置における前記粘着性フィルムも同時に切除され、前記粘着性フィルムを除去する工程では、前記粘着性フィルムと前記粘着性フィルムを覆う樹脂とを同時に除去する部品内蔵基板の製造方法。
【請求項2】
前記接続体を装着する工程では、前記接続体は前記第1もしくは第2の配線基板において離散的に配置される請求項1に記載の部品内蔵基板の製造方法。
【請求項3】
前記粘着性フィルムは可撓性を有し、前記粘着性フィルムを除去する工程では、前記粘着性フィルムを引き剥がす請求項2に記載の部品内蔵基板の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂部を形成する工程では、前記第1と第2の配線基板のうちで前記粘着性フィルムが貼り付けられた側の配線基板が下側となる向きで配置し、前記粘着性フィルムが貼り付けられた側の配線基板の下方に設けられた樹脂槽へ投入された非流動状態の前記樹脂が流動可能となるまで軟化させ、その後で前記粘着性フィルムが貼り付けられた側の配線基板と前記電子部品と前記粘着性フィルムとを前記軟化した樹脂へ浸漬するとともに、上側に配置された配線基板の下面を前記樹脂の液面へ接触させ、その後で前記樹脂を圧縮するとともに加熱して前記樹脂を硬化させて前記樹脂部を形成する請求項3に記載の部品内蔵基板の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂部を形成する工程において、前記第1と第2の配線基板のうちで上側に配置された配線基板の外周部は、下側に配置された配線基板の4辺における外周部から突出し、前記上側に配置された配線基板が前記樹脂槽の開口部を塞ぐとともに、前記粘着性フィルムが貼り付けられた側の配線基板と前記電子部品と前記粘着性フィルムとが前記樹脂槽内に収容される請求項4に記載の部品内蔵基板の製造方法。
【請求項6】
電子部品と接続体とはともに前記第1と第2の配線基板のいずれか一方に装着される請求項4に記載の部品内蔵基板の製造方法。
【請求項7】
配線基板へ電子部品を実装する工程では、第1と第2の配線基板に前記電子部品が装着される請求項4に記載の部品内蔵基板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−195397(P2012−195397A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57499(P2011−57499)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】