説明

部品実装機および部品実装方法

【課題】効率的に部品の基板への実効的な固定力と接合性とを確保し、かつ、高密度な部品実装を実現するための部品実装機および部品実装方法を提供すること。
【解決手段】接着剤を塗布する塗布部5と、塗布部5により塗布される接着剤の量である塗布量Vを、V1>V≧V2を満たす量に制御する塗布量制御部28と、部品を、部品と基板との間に接着剤が介在した状態で基板に装着するノズル3とを備え、V1およびV2は、部品が基板に接合された場合の部品と基板との位置関係における、バンプ面の周縁から基板に向かって直線的に伸ばした仮想の面である境界面と、部品と、基板とで囲まれる空間領域の容量であり、V1は、境界面と基板とのなす部品側の角度が、接着剤の所定の加熱温度における基板に対する接触角と等しい状態での空間領域の容量であり、V2は、境界面がバンプと交わることなく接している状態での空間領域の容量である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子等の部品を基板に実装する部品実装機および部品実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子等の部品の回路面を下にして、回路面の電極上に並べられたはんだや金等で形成された突出状の端子であるバンプを基板の電極に接続し部品と基板との電気的な接続を行う実装方式がある。
【0003】
この実装方式はフリップチップ実装方式と呼ばれ、フリップチップ実装方式を採用する工法として、例えばC4(Controlled Collapse Chip Connection)と呼ばれる工法が存在する。
【0004】
図24は、C4工法の工程を示す工程図である。図24に示すように、C4工法では、基板の電極上にプリコートされたはんだが形成され、部品にははんだのバンプが形成されている。また、部品のはんだバンプにフラックスが転写され、基板上の電極の上に部品のバンプが接触する位置に装着される。
【0005】
さらに、リフローによりはんだが加熱され溶解することにより部品と基板とが接合され、その後、熱硬化性樹脂である接着剤が部品と基板との間に充填される。つまり、部品と基板との間が封止される。
【0006】
この状態で再度熱が加えられ、接着剤が硬化することで部品が基板に固定され、部品と基板との接合信頼性が向上される。なお、この接着剤はアンダーフィル、またはアンダーフィル剤とも呼ばれる。
【0007】
図25は、接着剤が部品と基板との間に充填される様子を示す図である。
接着剤の充填は、キャピラリーアンダーフィル方式で行われる。キャピラリーアンダーフィル方式とは、部品と基板とを接合した後に、毛細管現象を利用し、部品の周縁部から部品と基板との間に接着剤を浸透させる方式である。
【0008】
そのため、基板に複数の部品を混載する場合、図25(A)に示すように、接着剤を充填する対象となる部品以外の部品(図ではドットが付された矩形で表現されている。)に接着剤が付着する可能性がある。
【0009】
従って、従来の工法においては、図25(B)に示すように、接着剤の流し込みのための領域を確保するため、および、他の部品への接着剤の付着を防止するために各部品はある程度の間隔を置いて基板上に配置されることとなる。
【0010】
また、部品ではなく基板に接着剤を塗布して部品を基板に装着する工法に関する技術も開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
図26は、基板に接着剤を塗布して部品を基板に実装する工法の工程を示す工程図である。
【0012】
この工法によれば、(1)接着剤が基板に塗布され、(2)部品のバンプの存在する面(以下、「バンプ面」という。)が下向きにされ、部品と基板とが圧着される。その後、部品は基板方向へ加圧されながら加熱され部品が基板に固定される。
【0013】
なお、このように接着剤を基板に塗布した後に部品と基板とを接合する方式をノーフローアンダーフィル方式という。
【0014】
この工法において、部品の基板への固定に適した量の接着剤を、例えば図27(A)に示すように、部品の幅と同等の幅(W1)で基板に塗布した場合、実装後の部品の周縁部に接着剤が行き渡らないことがある。
【0015】
そのため、図27(A)の場合よりも少し多い量の接着剤を、図27(B)に示すように、部品の幅より広い幅(W2)で基板に塗布することで、部品の周縁部まで接着剤を行き渡らせることができ、部品を基板により安定的に固定することができる。
【特許文献1】特許第2830852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
近年では、電子機器の小型化や機能向上が一般消費者および産業界から求められており、基板上への高密度な部品実装が望まれている。
【0017】
しかしながら、上述の第1の従来技術であるC4工法においては、図25(B)を用いて述べたように、部品間の間隔をある程度確保する必要があり、高密度な部品実装を実現することが難しい。
【0018】
さらに、部品と基板との隙間の毛細管現象を利用して接着剤を浸透させるため、特に、バンプの数が多い場合などにその浸透に時間が掛かるという問題もある。
【0019】
また、部品の1辺または隣接する2辺から接着剤を流し込むため、接着剤が部品と基板との間に均等に浸透しない場合がある。この場合、接着剤による部品の基板への固定力が低下することとなる。
【0020】
ここで、接着剤の浸透の速度および均一性を向上させるために、部品実装機に、接着剤の濡れ性を向上させるための、基板全体を加熱する基板ヒータを備えることが一般的に行われている。
【0021】
しかし、この場合、接着剤を貯留する容器(シリンジまたはカートリッジ等)および接着剤を基板の上から塗布するノズルが、加熱されている基板の上に位置することになる。また、接着剤の一回の流し込みに30秒以上かかる場合や、一つの部品に2回以上塗布する場合もあるため、これら容器および塗布ノズルも加熱されることになる。
【0022】
そのため、基板ヒータのみならず、これら容器および塗布ノズルを冷却する冷却ユニットも必要となる。従って、部品実装に係る装置全体の構造が複雑なものとなる。
【0023】
また、上述の第2の従来技術である、接着剤が塗布された基板に部品を実装する工法においては、図27(B)を用いて述べたように、部品の基板への固定の確実性を高めるために、接着剤の基板への塗布幅を部品の幅に対してある程度広くする必要がある。そのため、毛細管現象を利用した従来の工法と同様に、高密度な部品実装を実現することが難しい。
【0024】
また、このように、接着剤の基板への塗布幅をある程度広くするということは、1つの部品の基板への実装に必要な接着剤の量が多くなることを意味する。これにより、部品実装基板1枚あたりの生産コストが増加し、また、部品実装基板の重量も増加することとなる。
【0025】
また、上述の第2の従来技術では、部品を基板に装着する場合1個ずつ加圧力を調整しながら加熱して装着するため、基板1枚あたりの部品実装に要する時間が長くなるという問題もある。
【0026】
この問題を解決するために、例えば、基板に装着された部品が5個ある場合、5個の部品をそれぞれの位置で押さえる5本の押圧ノズルを設け、5個の部品を一括して加熱することが考えられる。
【0027】
しかし、この場合、5本の押圧ノズルを精度良く位置決めし、一定の力で押し、5本とも均一な温度で加熱することは極めて困難である。従って、仮にこのような構成で加熱圧着した場合であっても、押圧ノズルの位置ずれ等による接合不良が生じることは避けられない。
【0028】
また、この問題を解決するために、接着剤が塗布された基板に複数の部品を装着した後に、一括して加熱する工法も開発されている。
【0029】
しかし、この工法においては、加熱時に部品を押圧しないため、加熱時の部品に働く基板方向の力は部品の自重のみである。そのため、バンプの高さのばらつきの影響等により、接合不良が多発し、量産での実用化はなされていない。
【0030】
本発明は、上記課題を考慮し、フリップチップ実装方式を採用する部品実装機および部品実装方法であって、効率的に部品の基板への実効的な固定力と接合性とを確保し、かつ、高密度な部品実装を実現するための部品実装機および部品実装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記目的を達成するために、本発明の部品実装機は、突出状の端子であるバンプを有する部品を基板に実装する部品実装機であって、部品のバンプを有する面であるバンプ面、および前記基板の少なくともいずれか一方に接着剤を塗布する塗布手段と、前記塗布手段により塗布される接着剤の量である塗布量Vを、V1>V≧V2を満たす量に制御する塗布量制御手段と、前記部品を、前記部品と前記基板との間に前記接着剤が介在した状態で前記基板に装着する装着手段とを備え、前記部品と前記基板とは、前記部品が前記基板に実装された後に所定の加熱温度で加熱されることにより接合されるものであり、前記V1およびV2は、前記部品が前記基板に接合された場合の前記部品と前記基板との位置関係における、前記バンプ面の周縁から前記基板に向かって直線的に伸ばした仮想の面である境界面と、前記部品と、前記基板とで囲まれる空間領域の容量であり、前記V1は、前記境界面と前記基板とのなす前記部品側の角度が、前記接着剤の前記所定の加熱温度における前記基板に対する接触角と等しい状態での前記空間領域の容量であり、前記V2は、前記境界面が前記バンプと交わることなく接している状態での前記空間領域の容量である。
【0032】
このように、本発明の部品実装機は、接着剤の塗布量Vを、V1>V≧V2を満たす量に制御する手段を備えている。このような量の接着剤が部品と基板との間に介在した状態で部品が基板に装着されると、接着剤は、部品と基板との間の表面を内側に凸の曲面形状にしながら、基板に対する接触角が所定の加熱温度での自然な接触角になるまで濡れ拡がる。
【0033】
つまり、部品と基板とに密着した状態の接着剤は内圧が減少し、部品に対して自重以外の押し下げ力を与えることができる。これにより、部品が実装された基板が加熱された場合に、部品と基板との実効的な接合性を確保することができる。
【0034】
また、塗布量Vは、少なくともバンプを含むバンプ面を覆うことのできる量であるため、部品と基板との実効的な固定力は担保される。
【0035】
さらに、このような範囲の塗布量であれば、接着剤が部品から不要にはみ出すことがないため、高密度な部品実装が可能となる。
【0036】
また、本発明の部品実装機は、前記塗布手段は、前記バンプ面が上向きの状態で、前記バンプ面に上方から前記接着剤を塗布し、前記部品実装機はさらに、前記塗布手段により前記接着剤が塗布された前記部品の上下を反転させる反転手段を備え、前記装着手段は、前記反転手段により反転された前記部品を、前記部品の下に位置する基板に装着するとしてもよい。
【0037】
このように、部品のバンプ面の上から接着剤を塗布し、反転して基板に装着することにより、接着剤のバンプ面への塗布時、および、部品の基板への装着時において、接着剤は、下に凸の形状でバンプ面および基板の表面に接触することになる。
【0038】
これにより、接着剤は、バンプ面の中央付近、および基板上の当該部品が装着される領域の中央付近から外側の方向へ空気を押し出しながら拡がっていく。この拡がりの際、接着剤に作用する重力が空気を外側に押し出す力として効果的に作用する。従って、接着剤と部品との間、および接着剤と基板との間の双方において気泡の残存を抑えることができる。
【0039】
気泡の残存を抑えることで、加熱時の気泡の膨張による部品の持ち上げ等の不具合の発生を抑えることができ、部品と基板とをより確実に接合させることができる。
【0040】
また、個々の部品に接着剤を塗布し、接着剤が塗布された部品を即座に基板に装着することができる。これにより、例えば、接着剤への異物の付着および混入の可能性を低くすることができる。
【0041】
さらに、バンプ面に接着剤を塗布し、基板に装着するため、基板上において、接着剤塗布のための部品間の領域を確保することが不要である。このことによっても高密度な部品実装が可能となる。
【0042】
更に、本発明は、本発明の部品実装機における特徴的な構成部が行う動作をステップとする方法として実現したり、それらのステップを含むプログラムとして実現したり、そのプログラムが格納されたCD−ROM等の記憶媒体として実現したり、集積回路として実現することもできる。プログラムは、通信ネットワーク等の伝送媒体を介して流通させることもできる。
【発明の効果】
【0043】
本発明は、接着剤の塗布量を所定の範囲内の量に制御することで、部品と基板との実効的な固定力と接合性とを確保することができる。つまり、効率的な手法によりこのような効果を生み出すことができる。
【0044】
また、無駄のない量の接着剤で部品を基板に安定的に固定することができ、部品から接着剤が不要にはみ出すことがない。そのため、高密度な部品実装が可能となる。
【0045】
また、接着剤の塗布量が少なくて済むため、部品実装基板の生産コストおよび重量を不要に増加させることがない。
【0046】
このように、本発明は、効率的に部品の基板への実効的な固定力と接合性とを確保し、かつ、高密度な部品実装を実現するための部品実装機および部品実装方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
まず、図1および図2を用いて、実施の形態の部品実装機1の構成を説明する。
【0048】
図1は、実施の形態の部品実装機1の概観を示す斜視図である。
図1に示す、部品実装機1は、フリップチップ実装方式により半導体素子等の部品を基板に実装する部品実装機である。
【0049】
部品実装機1は、移載部2と、ビーム9と、部品供給部22と、コンベア30とを備える。
【0050】
ビーム9は、自身がX軸方向に移動するとともに移載部2をY軸方向に移動させる構成部である。
【0051】
移載部2は、部品の吸着および基板への装着等を行う構成部であり、ノズル3が2つ取り付けられたヘッド4と、移動台6と、塗布部5とタンク5aとを有する。
【0052】
ノズル3は、本発明の部品実装機における装着手段の一例であり、部品20の吸着および吸着した部品20の基板23への装着を行う構成部である。
【0053】
2つのノズル3は、互いに逆方向に向いてヘッド4に取り付けられており、一方のノズル3が上向きにされると同時に他方のノズル3が下向きにされる位置関係にある。また、交互に部品20の吸着等の動作を行うことができる。なお、ノズル3はヘッド4に対しZ軸方向に平行に移動することで、部品供給部22からの部品20の吸着と、基板23への部品20の装着を行う。
【0054】
移動台6は、ビーム9にY軸方向に平行に移動可能にビーム9に取り付けられている。また、移動台6には、ヘッド4と、塗布部5と、タンク5aとが取り付けられている。移動台6は、ヘッド4をθ軸を中心に反転させる機能を有している。
【0055】
この構成により、ヘッド4はXY平面を移動することができ、かつ、θ軸を中心に反転することができる。また、ノズル3は、ヘッド4の移動および反転に伴い移動し反転する。
【0056】
塗布部5は、ノズル3に吸着され反転された部品20に接着剤を塗布する構成部である。接着剤はタンク5aから補充される。
【0057】
また、塗布部5により部品20に塗布される接着剤の量、つまり接着剤の塗布量は、塗布量制御部(図1に図示せず)により制御されている。塗布量制御部が塗布量をどのような量に制御するか、および、その塗布量の接着剤が発する効果については図5〜図10を用いて後述する。
【0058】
部品供給部22は、移載部2に部品20を供給する構成部である。複数の部品20が、それぞれバンプ面を下にして部品供給部22に置かれている。
【0059】
コンベア30は、部品を実装する対象である基板23を移送する構成部である。基板23は、移載部2により部品20が装着されると、コンベア30により、部品実装機1に連結された下流の装置、例えばリフロー炉へ搬送され投入される。または、基板23は、コンベア30により部品実装機1から排出された後に、別途設けられたリフロー炉等へ運ばれ投入される。
【0060】
リフロー炉に投入された基板23は加熱され、部品20は基板23に接合され、固定される。
【0061】
具体的には、リフロー炉において、接着剤と、部品20のバンプおよび基板23の電極上に形成されたプリコート部24の少なくとも一方を構成するはんだとが加熱される。
【0062】
加熱により、はんだが溶解し部品20上の電極とその電極に対応する基板23上の電極とがはんだを通して接合される。
【0063】
また、この接合とともに、後述する塗布部5により部品20に塗布された接着剤が硬化し部品が基板に固定される。
【0064】
なお、本実施の形態において塗布部5が部品に塗布する接着剤は、部品に塗布され反転された時点では、部品から落下しない粘度と濡れ性とを有している。
【0065】
具体的に、本実施の形態の部品実装機1に使用する接着剤の粘度は、0.001パスカルセカンド(Pa・s)〜200Pa・sの範囲に含まれる値であればよい。
【0066】
さらに、粘度が0.1Pa・s〜3Pa・sの範囲内であれば、部品実装機1に使用する接着剤として、より適している。さらに、0.5Pa・s〜1Pa・sの範囲内であれば、部品実装機1に使用する接着剤として最適である。
【0067】
また、接着剤の濡れ性については、室温において接着剤が部品のバンプ面に滴下された場合、接着剤と部品のバンプ面との接触角が90度以下となる濡れ性を有していればよい。
【0068】
なお、ここでいう「接触角」とは、固体と液体とが接する点における液体表面に対する接線がなす角であり、液体を含む方の角度で定義される。また、このような固体と液体との接触角は液体の固体に対する濡れ性に関係することから「濡れ角」とも呼ばれる。
【0069】
部品実装機1に使用する接着剤として最適な熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂等がある。
【0070】
このように、少なくとも0.001Pa・s〜200Pa・sの範囲に含まれる粘度の熱硬化性樹脂であれば、部品を基板に固定する接着剤として部品実装機1で使用することが可能である。つまり、部品実装機1は、様々な種類の熱硬化性樹脂を接着剤として使用することが可能なことにより、無駄なコストの発生を抑えることができる。
【0071】
図2は、部品実装機1の機能的な構成の概要を示す機能ブロック図である。なお、図2において上記の部品供給部22等の部品実装機が本来備える構成については省略し、本発明の特徴的な構成について図示および説明を行う。また、2つのノズル3は機能的には同じであるため1つのノズル3についてのみ図示および説明を行う。
【0072】
図2に示すように、ビーム9、塗布部5、移動台6、およびコンベア30は実装制御部10により制御される。また、ノズル3の部品の吸着等の動作も、移動台6を介して実装制御部10により制御される。
【0073】
また、移動台6は、ヘッド4を反転させる反転部7を有している。反転部7は、実装制御部10の制御に従い、2つのノズル3の一方が下向きに、他方が上向きになる位置にヘッド4を反転させる。
【0074】
また、上述のように、塗布部5による部品に対する接着剤の塗布量は、塗布量制御部28により制御される。
【0075】
なお、実装制御部10および塗布量制御部28の動作は、例えば、中央演算装置(CPU)、記憶装置、および情報の入出力を行うインターフェース等を有するコンピュータにより実現することができる。
【0076】
次に、図3および図4を用いて、部品実装機1の動作について説明する。
図3は、部品実装機1における部品実装に係る工程の流れを示すフロー図であり、図4は、図3に示す工程の概要を図示した工程図である。
【0077】
なお、図3は、1つのノズル3に着目し、そのノズル3が部品を吸着し基板に装着する動作の流れを示すフロー図である。2つのノズル3が交互に部品の吸着等を行う動作については図15を用いて後述する。
【0078】
図3に示すように、まず、ノズル3が部品供給部22に置かれた部品20を吸着する(S1)。この状態では、ノズル3に吸着された部品20のバンプ面は下を向いている。その後、反転部7がヘッド4を反転させることにより、部品を吸着した状態のノズルが上向にされ、部品の上下が反転される。つまり、バンプ面が上向きとなる(S2)。
【0079】
塗布量制御部28は、塗布部5により部品20のバンプ面へ塗布される接着剤の塗布量を所定の塗布量に制御する(S3)。
【0080】
塗布部5は、塗布量制御部28の制御に従った量の接着剤を、バンプ面の上方から塗布する(S4)。
【0081】
接着剤が塗布された部品20は、反転部7がヘッド4を反転させることにより上下が反転し、接着剤が塗布されたバンプ面が下向きとなる(S5)。
【0082】
バンプ面を下向きにされた部品20は、ノズル3が下降することにより下方にある基板23に装着される(S6)。これにより部品20のバンプ部と基板23の電極部とは位置合わせされた状態になる。
【0083】
部品20が装着された基板23は、コンベア30によって移送される。その後、リフロー炉によって加熱され、はんだが溶解した後に固化することで部品20と基板23とが接合される。また、接着剤が硬化する。
【0084】
なお、接着剤の硬化に必要な温度は接着剤の種類により異なるが、おおよそ150℃〜240℃程度である。
【0085】
また、はんだのリフローに必要な温度ははんだの種類により異なるが、おおよそ130℃〜230℃程度である。このような中で、はんだが溶けた後で接着剤が硬化するような接着剤を選ぶと同時に、リフローの温度プロファイルを決定した場合には、接着剤の硬化およびはんだのリフローが一度の加熱で可能である。
【0086】
上記工程を図4を用いて簡単に説明すると、図4に示すように、(1)部品20のバンプ21が存在するバンプ面を上向きにして塗布量制御部28により制御された所定の量だけ接着剤を塗布する。また、この塗布は、バンプ面の中央の上方から行われ、図に示すように、接着剤は中央付近を頂点とする山型に形成される。
【0087】
(2)部品を反転する。これにより、接着剤が塗布されたバンプ面は下向きとなり、基板23の、電極上に形成されたプリコート部24を有する面と対向する。(3)部品20を吸着しているノズル3により、部品20が基板23に装着される。
【0088】
部品20が装着された基板23は、リフロー炉で加熱されることで、はんだのリフローと接着剤の硬化とが同時に行われる。
【0089】
ここで、部品実装機1において塗布部5が部品20に塗布する接着剤の所定の塗布量とは、自重以外の押し下げ力を部品20に与える効果を生じる量である。
【0090】
そのため、部品実装機1において部品20が装着された基板23が、リフロー炉において加熱された場合、より安定的に部品20のバンプと基板23の電極とが接合されることとなる。
【0091】
そこで、次に、塗布部5が部品に接着剤を塗布する塗布量およびその効果について図5〜図9を用いて説明する。
【0092】
塗布量制御部28は、上述のように塗布量を制御する処理部である。塗布量制御部28により塗布部5が1つの部品に塗布する塗布量Vは、具体的には下記の(式1)を満たす値として求められる値である。
V1≧V>V2 (式1)
【0093】
これらV1およびV2について、図5を用いて説明する。
【0094】
図5は、部品実装機1において塗布部5が部品に塗布する接着剤の塗布量を説明するための図である。なお、図5(A)〜図5(C)ともに、部品が基板に接合された場合の部品20と基板23との位置関係における、部品20および基板23を側面から見た図である。
【0095】
図5(A)および図5(B)に示すように、V1およびV2は、部品20が基板23に接合された場合の部品20と基板23との位置関係における、バンプ面の周縁から基板23に向かって直線的に伸ばした境界面と、部品20と、基板23とで囲まれる空間領域の容量として規定される。
【0096】
なお、上記の「境界面」とは、V1およびV2を規定するための接着剤と大気との仮想的な境界面である。
【0097】
例えば、バンプ面の形状がn角形である場合、n個の辺のそれぞれから基板23に向かって直線的に伸ばした面により境界面が形成される。
【0098】
また、このように仮想される境界面と部品20と基板23とで閉じた空間領域が形成され、その空間領域の容量でV1およびV2は規定される。つまり、この空間領域に充填可能な容量としてV1およびV2は規定される。
【0099】
具体的にV1について説明すると、V1は、図5(A)に示すように、境界面と基板23とのなす部品20側の角度がαとなる状態での空間領域の容量である。
【0100】
この角度αは、リフロー炉で加熱される際の加熱温度における接着剤の基板23に対する自然な接触角である。以下、αを「自然角α」とも呼ぶ。
【0101】
また、V2について説明すると、V2は、図5(B)に示すように、境界面がバンプ21と交わることなく接している状態での空間領域の容量である。言い換えると、接着剤が全てのバンプ21を含むバンプ面を覆うことができ、かつ、接着剤の表面積(部品20および基板に接触している面も含む。)が最小となる量である。また、このときの境界面と基板23とがなす角をγとする。
【0102】
部品実装機1では、このようにして求められる、V1≧V>V2を満たす量であるVの接着剤を部品に塗布する。
【0103】
また、塗布量Vに対応する、境界面と基板23とのなす角をβとし、V1≧V>V2を境界面と基板23とのなす角で表現すると、α>β≧γとなる。
【0104】
これらV1およびV2は、部品の幅等の各種のサイズ等の幾何学的条件から算出してもよく、なんらかの流動体を用いて実測することにより求めても良い。
【0105】
本実施の形態においては、塗布量制御部28は、例えば、図5(C)に示すように、接合後の部品20と基板23との隙間の容量に相当する量の接着剤を塗布するように塗布部5を制御する。
【0106】
つまり、境界面と基板23とのなす角βが略90度となるような塗布量を塗布するように塗布部5を制御する。この場合の塗布量Vは、当然にV1≧V>V2を満たす量である。
【0107】
また、接合後の部品20と基板23との隙間の容量に相当する量は、部品20の各部位のサイズ等から簡易に算出することができる。
【0108】
図6は、接合後の部品20と基板23との隙間の容量に相当する量の簡易な求め方を説明するための図である。
【0109】
図6に示すように、部品20の長さをL1、幅をL2、部品20と基板23との距離をL3、バンプ21の1つあたりの体積をBとする。
【0110】
なお、L3は、部品20が基板23に接合された場合の距離であり、例えば、実測することで求められる。また、L3を実測ではなく、例えば、バンプ21の高さそのままの値をL3として用いてもよい。または、バンプ21の高さから所定の値を引いた値をL3として用いてもよい。
【0111】
このように、L1、L2、L3、およびBを定義し、部品20における全てのバンプ21の体積の合計をΣBと表すとすると、塗布量Vは、下記の(式2)により求められる。
V=L1×L2×L3−ΣB (式2)
【0112】
つまり、バンプ21がないとした場合の部品20と基板23との隙間の体積から部品20が有するバンプ21の体積の総和を引くことで、塗布量Vを求めることができる。
【0113】
なお、基板23側の電極が比較的大きく、その体積が無視できない場合は、1つの部品20のバンプ21と接合する基板23側の電極の体積の総和を求め、(式2)の右辺から引けばよい。
【0114】
塗布量制御部28は、このようにして求められた塗布量Vを所定の記憶領域に記憶しており、塗布部5に対し、塗布量Vの接着剤を部品20に塗布するように制御する。
【0115】
このように塗布量を制御された接着剤は、部品20に塗布され、部品20が基板23に装着されることにより基板23上を濡れ拡がる。
【0116】
以下に、接着剤の濡れ拡がりによる形状の変化について具体的に説明する。上記の(式1)を満たす塗布量Vの接着剤を部品20に塗布し、基板23に装着した後に加熱工程を経て部品20と基板23とを接合した場合を想定する。
【0117】
この場合、接着剤の基板23に対する接触角をδとすると、部品20を基板23に装着した後に、接着剤は基板23上を濡れ拡がり始める。そして、遅くとも加熱工程では、δは自然角であるαに近づく。
【0118】
つまり、上記の(式1)を満たす塗布量Vの接着剤を部品20に塗布し、基板23に装着した場合、接着剤は、図7に示すように、次第に基板23上に濡れ拡がることとなる。
【0119】
図7は、本実施の形態における、接着剤の基板23上の濡れ拡がり方を示す概要図である。
【0120】
図7に示すように、本実施の形態の部品実装機1は、(1)部品20のバンプ面に上記の(式1)を満たす塗布量Vの接着剤を塗布する。例えば、図5(C)を用いて説明した接合後の部品20と基板23との隙間の容量に相当する量の接着剤を塗布すると想定する。
【0121】
(2)部品20を反転し、基板23に装着する。装着直後には、接着剤の基板23に対する接触角δは自然角αよりも大きな角度である。
【0122】
(3)部品20の基板23への装着後、接着剤は基板23上を濡れ拡がり始め、(4)部品20の基板23への装着からリフロー炉における加熱工程を経るまでの間に、接触角δが自然角αに近づく。また、接着剤の部品20と基板23との間の表面は内側に凸の曲面形状となる。
【0123】
このように、本実施の形態の部品実装機1は、部品20と基板23との接合の前に部品20に接着剤を塗布し、部品20を基板23に装着する。装着後、接着剤は基板23上を濡れ拡がり、基板23に対する接触角が自然角と等しいところまで拡がろうとする力が働き、接触角が自然角と等しくなる所で濡れ拡がりの力はバランスが取れることになる。
【0124】
ここで、部品20の基板23に対する固定力を向上させるためには、図27(B)を用いて述べたように、接着剤の塗布量を増やすことがまず考えられる。
【0125】
しかし、接着剤の塗布量を必要以上に増やすと、高密度な部品実装は不可能となるばかりでなく、部品20に対して、接着剤の表面張力を要因とする基板23とは反対方向の力が働くこととなる。
【0126】
具体的には、部品と基板とが加熱により接合される時に、接着剤の部品と基板との間の表面形状が外側に凸である場合、表面張力が液状の接着剤に内部圧力を発生させることになる。そのために部品は、基板とは離れる方向の力を受けながら基板に接合されることを意味する。
【0127】
つまり、部品は、基板との接合を不確実なものとする方向の力を受けながら基板に対する接合工程を経ることになり、これは接合不良発生の要因ともなる。
【0128】
そのため、本発明の実施の形態の部品実装機1は、塗布量Vを上記のV1未満の量に制御する。これにより、接着剤の表面の上端はバンプ面の周縁に位置しつつ、接着剤の基板23に対する接触角を、自然角αより大きい状態から自然角αに変化させることができる。
【0129】
つまり、接着剤の表面形状に着目すると、接着剤の部品20と基板23との間の表面が内側に凸の曲面形状に変化しながら部品20と基板23とが接合されることになる。
【0130】
これは、表面張力が液状の接着剤に負の内部圧力として働くことになり、その結果、部品20と基板23との隙間を狭くする方向に表面張力が作用している状態で、部品20と基板23とが接合されることを意味する。つまり、接着剤に密着し向かい合って存在する部品20と基板23とは、互いに近づく方向に、接着剤から力を受けながら接合される。
【0131】
言い換えると、部品20は、見かけ上、接着剤が基板上を濡れ拡がることを要因とする押し下げ力を受けながら基板23と接合される。
【0132】
このように、部品実装機1は、塗布量VをV1以下の量に制御することにより、自重以外の押し下げ力を部品20に与えることができる。これにより部品20と基板23との接合をより確実に行わせることができる。
【0133】
また、本発明の実施の形態の部品実装機1は、塗布量Vを上述のV2より多い量に制御する。このV2は、全てのバンプを含むバンプ面を覆うことのできる量である。従って、部品20に自重以外の押し下げ力を与える効果は発揮され、かつ、実効的な固定力は確保される。
【0134】
また、接着剤の部品20からのはみ出し量に着目すると、塗布量Vは、上述のV1よりも少ない量であるため、図8に示すように、部品20から接着剤がはみ出す距離をL3/tanα以内に収めることができる。そのため、部品の基板への高密度な実装が可能となる。
【0135】
ここで、上述の押し下げ力のおおよその値を、接着剤の表面張力を用いた計算から求めることができる。
【0136】
以下、図9および図10を用いて、接着剤の濡れ拡がりによる押し下げ力の計算例について説明する。
【0137】
図9に示すように、液体の固体に対する接触角は、液体、固体、気体の相互間の界面張力のつりあいにより説明される。なお、一般に、表面張力とは、自身が液相で相手が気相のときの両者間ではたらく界面張力のことを意味している。
【0138】
図9に示すように、固体気体間の界面張力をfa、液体気体間の界面張力をfb、固体液体間の界面張力をfcとし、液体の濡れ拡がり完了後の接触角をαとすると下記の(式3)が成り立つ。
fa−fc=fbcosα (式3)
【0139】
つまり、液体の外部方向の力“fa−fb”が働くことにより、接着剤の表面張力による液体の内部方向の力“fbcosα”が相殺され、接触角がαに保たれていることを意味する。
【0140】
ここで、部品実装機1において、部品20が基板23に装着された後のある瞬間の接着剤の基板23に対する接触角をδとする。
【0141】
図10(A)は、接着剤の基板23に対する接触角がδである状態の部品20および基板23の側面からの概要図である。また、図10(B)は、接着剤の濡れ拡がりによる押し下げ力を算出するための想定値を示す図である。
【0142】
δは自然角αより大きな角度であり、接着剤には、見かけ上、接触角δをαに近づけようとする力(fδ)が働くことになる。この力は、基板23に平行な方向であるが、接着剤は液体であり、その表面張力、粘性および流動性により、接着剤に密着している部品20を押し下げる力(F)として働くことになる。
【0143】
以下に、この見かけ上の押し下げ力Fがおおよそどれくらいの値になるかを、具体的な計算例を挙げて説明する。
【0144】
図10(B)に示すように長さL1および幅L2ともに4mmであり、重量が29.6mgfである部品20を、基板23に接合する場合を想定する。
【0145】
また、一般的に使用されているエポキシ樹脂の表面張力は0.045mN/mm程度である。そこで、アンダーフィルに使用する接着剤として、フッ素系界面活性剤を約0.2%添加したビスフェノールA型エポキシ樹脂を想定して用い、また、環境温度は約25℃であると想定する。この場合、接着剤の表面張力fbは、約0.029mN/mmである。また、この接着剤の基板23に対する自然角αは45度であると想定する。
【0146】
ここで、fδは、接着剤の外部方向の力であり、以下の(式4)が成り立つ。
fδ=fbcosα (式4)
【0147】
上記の各物性値および(式4)から、fδを求めると以下のように求まる。
【0148】
fδ=0.020506mN/mm (式5)
【0149】
つまり、部品の外周部に長さ1mm当たり、外側に向けて約0.0205mNの張力が働くことになる。
【0150】
このfδに、部品20の外周長さ(2×(L1+L2))を乗じた力が接着剤にかかることになる。その力をFとする。
【0151】
F=0.328098mN (式6)
【0152】
ここで、上記の力程度では体積は一定としてよいので、上記の力Fが部品の押し下げ力として働くことになる。
【0153】
これを重量単位系に変換すると押し下げ力Fは(式7)のように表される。
F=33.5mgf (式7)
【0154】
従って、部品20は、接着剤が濡れ拡がることによる押し下げ力として、おおよそ自重と同程度の力を受けることになる。
【0155】
また、上記計算結果は、約25℃の環境での計算結果である。そのため、リフロー炉で加熱された場合は、条件が変化すると考えられる。しかし、キャピラリーアンダーフィル方式の場合でも、加熱することで隙間への充填速度を早くしていることから、加熱により粘度が低下すると同時に、空気と接着剤の界面張力は低下しても、基板と接着剤間の界面張力は、温度によって大きく変化はしないと考えられる。つまり、押し下げ力Fの変化も小さいと考えてよいことになる。
【0156】
このように、本発明の実施の形態の部品実装機1では、部品と基板との間に介在させる接着剤の量を、V1>V≧V2を満たす量であるVに制御する。言い換えると、部品と基板とを接合した後の、部品と基板との間の接着剤の表面が内側に凸の曲面形状となる量に制御する。
【0157】
これにより、上述のように、基板に装着された部品には自重以外の接着剤の濡れ拡がりによる押し下げ力が働くことになる。
【0158】
これにより、例えば、部品を装着した基板をリフロー炉で加熱する場合、部品をノズル等で加圧することなく、実効的な接合性を確保することができる。
【0159】
また、このように、部品を加圧するノズルが不要であるため、1枚の基板に装着された複数の部品を一括して加熱することができる。さらには、それぞれ複数の部品が装着された複数の基板を一括して加熱することができる。
【0160】
従って、例えば、図26に示した、部品を加圧しながら加熱する工程を有する従来の工法よりも、効率よく部品実装基板の生産を行うことができる。
【0161】
また、上述のように、接着剤の量は、全てのバンプを含むバンプ面を覆うことのできる量であるV2以上である。従って、接合性だけでなく実効的な固定力も確保されることになる。
【0162】
また、接着剤の部品からのはみ出し量を抑えることができ、基板への高密度な部品実装が可能となる。
【0163】
また、本発明の実施の形態の部品実装機1では、図3および図4を用いて説明したように、部品のバンプ面を上向きにして接着剤をバンプ面に塗布している。また、接着剤が塗布された部品を下向きにして基板に装着している。
【0164】
このことによって、部品の基板に対する固定力と接合性とを向上させることができる。
具体的には、部品実装機1は、このような工程で動作することにより、接着剤と部品および接着剤と基板との間に気泡を残存し難くすることができる。その結果として、部品の基板に対する固定力と接合性とを向上させることができる。
【0165】
以下に、上述の第2の従来技術のように基板に接着剤を塗布する場合と、部品のバンプ面を上向きにして接着剤を塗布する場合との気泡発生の違いについて説明する。
【0166】
まず、基板に接着剤を塗布して部品を装着する場合の部品と接着剤との間の気泡発生のメカニズムと、気泡を要因とする部品と基板との接合不良の発生について図11を用いて説明する。
【0167】
図11は、接着剤を基板に塗布して部品を基板に装着することにより、部品と接着剤との間に気泡が残存する様子を示す模式図である。
【0168】
図11の(1)に示すように、接着剤の基板上の塗布高さ(h)は、部品のバンプ高さ(H)より大きくする必要がある。つまり、h>Hとなるように接着剤を基板に塗布する必要がある。
【0169】
そこで、その塗布高さを維持するために、接着剤の粘度を高くし基板上に濡れ拡がりにくくする必要がある。具体的には、このようなノーフローアンダーフィル方式に用いられる接着剤の粘度はおおよそ20Pa・s〜140Pa・s程度である。
【0170】
従って、基板上の接着剤の曲率半径Rと接着剤のバンプ面に対する濡れ性との関係から、部品と基板との位置関係が、図11の(2)に示す状態から(3)に示す状態へ瞬時に移行した場合、部品のバンプ近傍に気泡が残存し易くなる。
【0171】
これは、接着剤の濡れ性が低く、かつ、曲率半径Rが大きいことから、接着剤が、バンプ面を不完全に濡らしながら拡がるためである。言い換えると、接着剤が、接着剤とバンプ面との間に存在する空気を外側に完全には押し出すことができないままに拡がるためである。
【0172】
この状態で加熱すると、残存した気泡が熱により膨張し、部品には、上方向の力が加えられる傾向となる。なお、空気の熱膨張係数は、接着剤の約100倍である。また、上述のように、部品に働く基板方向の力は部品の自重のみである。
【0173】
これにより、半導体チップ等の部品のバンプには、高さのばらつきがあることから、高さの低いバンプは、リフローによりバンプが溶解しても基板の電極とは接触せず接合されにくい傾向となる。結果として部品と基板とは不完全な接合状態となる。
【0174】
そのため、部品実装基板の生産において、このような工程を採用する場合、上述のように、部品をノズル等で押圧しながら加熱することで、接合不良を発生させないようにする必要がある。
【0175】
次に、本実施の形態の部品実装機1において、部品に接着剤を塗布することにより、部品と接着剤との間の気泡の発生を抑制できるメカニズムについて説明する。
【0176】
図12は、塗布部5から接着剤が吐出される際の接着剤の形状を示す図である。
図12に示すように、接着剤は、塗布部5の先端部から吐出されると、表面張力により球状になる。または、少なくとも接着剤の下端は下に凸の曲線状になる。
【0177】
下に凸の曲線状となった接着剤は水平な平面上に垂らされると、最初に平面に接した点を中心に、図13に示すように外側に空気を押し出しながら当該平面へ拡がることになる。
【0178】
つまり、ある粘度および濡れ性の接着剤を使用することを想定すると、このように、部品のバンプ面に上から接着剤を塗布する場合の、接着剤がバンプ面に接触する際の接着剤の曲率半径は、図11に示した、接着剤が塗布された基板に部品を装着する場合よりも小さなものとなる。
【0179】
そのため、接着剤は、バンプ面を濡らしながら拡がっていき易くなり、部品と接着剤との間に気泡が残存し難くなる。
【0180】
また、接着剤には重力(G)により鉛直下方向きに力が加えられる。つまり、接着剤の自重が、平面と接着剤との間の空気を外側に押し出す力として効果的に接着剤に作用することになる。従って、このことによっても部品と接着剤との間に気泡が残存し難くすることができる。
【0181】
さらに、接着剤が塗布された部品を反転し、下方の基板に装着するため、接着剤と基板との間の気泡の発生も抑えることができる。
【0182】
具体的に説明すると、塗布が完了した後のバンプ面上の接着剤の形状は上述のように中央付近を頂点とする山型の形状となる。そのため、バンプ面を下向きにして部品を基板に装着する際、最初に山型の接着剤の頂点部分が基板に接触する。
【0183】
ここで、接着剤の粘性が低い、または表面張力が弱い等の理由により、塗布が完了した後のバンプ面上の接着剤が平面に近いような状態になった場合を想定する。このような場合であっても、部品が反転されると、接着剤は、重力により中央付近を下向きの頂点とする山型となる。
【0184】
つまり、部品が基板に近接してくるに従い、部品と基板との間の接着剤は、バンプ面中央の直下付近から図13に示すように外側に空気を押し出しながら拡がっていく。この接着剤の拡がりに対しても、当然に重力が影響することになる。
【0185】
すなわち、部品20と基板23との間の接着剤が基板23上に拡がる際、部品の重量およびノズル3から下向きに受ける装着時の力だけでなく、接着剤の自重が、基板23と接着剤との間の空気を外側へ押し出す力として効果的に作用し、基板23と接着剤との間に気泡が残存し難くすることができる。
【0186】
さらに、塗布量は、上述のように、V1とV2との間の量である。これにより、接着剤が部品20の直下から不要にはみ出すことを防ぐことができる。
【0187】
図14は、部品20の基板23への装着の際に接着剤が基板23上を拡がる様子を示す図である。
【0188】
図14に示すように、部品20が基板23へ接近するに伴い、接着剤は、部品20の中央の直下付近から外側へ向かって拡がる。
【0189】
また、図5(B)を用いて説明したように、部品実装機1は、少なくとも、全てのバンプを含むバンプ面を覆うだけの量の接着剤を塗布する。そのため、図14に示すように、部品20のバンプ面の周縁部まで接着剤が行き渡っている状態で部品20を基板23に装着することが可能となる。この場合、接着剤の粘性によりバンプ面の周縁部から接着剤が垂れ落ちることなく、周縁部まで接着剤が行き渡ったままの状態で部品20が基板23に装着される。
【0190】
つまり、図27(A)に示したように、基板側に部品の幅と同等の幅に接着剤を塗布した場合と異なり、図14に示すように、部品20の周縁部まで接着剤で固定できる。すなわち、部品20の基板23への固定に必要最小限の量の接着剤で、部品20を基板23に効率的かつ安定的に固定することが可能となる。
【0191】
また、部品を基板に装着した後に接着剤を流し込むキャピラリーアンダーフィル方式ではない。そのため、1つの基板に複数の部品を実装する場合、図25(B)に示すような、各部品の間に接着剤の流し込みのための領域を確保する必要がない。
【0192】
従って、本実施の形態の部品実装機1で1つの基板に複数の部品を実装する場合、または、他の部品が実装済みの基板に部品を実装する場合、基板上の各部品を従来より近接させることができる。このことによっても高密度な部品実装が可能となる。
【0193】
なお、塗布量制御部28による制御の結果、塗布部5により部品に塗布される接着剤の量は、具体的な数値としては、部品が通常の2mm×2mm〜20mm×20mm程度の大きさのベアチップであれば、0.4マイクロリットル(μl)〜120μl程度である。
【0194】
また、大きいもので、60mm×60mm程度の大きさのBGA(Ball Grid Array)であれば、3600μl程度である。
【0195】
ここで、接着剤の粘度は、周囲の温度等の環境により変化する。そのため、ある部品に対して上述のようにして決定された量だけ接着剤を塗布した場合であっても、周囲の環境によってバンプ面上の接着剤の拡がり方にも変化が生じる。
【0196】
図15は、バンプ面に塗布された接着剤の状態の例を示す図である。
図15(A)および図15(B)は接着剤がバンプ面に塗布され拡がった状態の例を示す図であり、図15(C)はバンプ面の周縁部で接着剤が止まっている状態を示す図である。
【0197】
例えば、ある部品に対して、V1>V≧V2を満たす量だけ接着剤を塗布した場合、図15(A)に示すように、バンプ面の全域に接着剤が拡がることがある一方、図15(B)に示すように、バンプ面の全域には接着剤が拡がらないこともある。
【0198】
しかしながら、部品20上の接着剤は、図15(C)に示すように、バンプ面の周縁部で表面張力により接着剤は止まることになる。もちろん、大量の接着剤を塗布すれば接着剤がバンプ面からこぼれることになるが、上述のように、接着剤の塗布量Vは、図5(A)および図5(B)を用いて説明したように、V1>V≧V2を満たす量とするため、バンプ面からこぼれ落ちるほどの量になることはない。
【0199】
そのため、粘度の低い、つまり、濡れ拡がり易い接着剤を使用することができる。例えば、キャピラリーアンダーフィル方式で使用する接着剤と同等の粘度(0.65Pa・s〜8.0Pa・s程度)と濡れ性とを持つ接着剤を使用することができる。
【0200】
ここで、図25(A)、図25(B)および図26に示すように、基板上に接着剤を塗布する場合には、部品の固定に必要な量だけ基板上に接着剤を塗布したとしても、周囲の環境によっては、必要以上に基板上に拡がることがある。
【0201】
しかしながら、本実施の形態の部品実装機1のように、部品に接着剤を塗布する場合は、接着剤の表面張力により、部品の周縁部で接着剤が止められる。また、その状態で、部品を反転して基板に装着した場合であっても、接着剤の塗布量は、上述のように、V1とV2との間の量であり、また、接着剤の表面張力の影響もあり、図14に示したように、部品から不要にはみ出すことはない。
【0202】
つまり、本実施の形態の部品実装機1は、1つの部品をコンパクトに基板に実装することができる。
【0203】
また、本実施の形態の部品実装機1によって部品が装着された基板に対しては、上述のように、リフローと硬化とを同時に行うことができる。つまり、部品が装着された状態の基板に対する加熱は1回だけ行えばよい。
【0204】
従って、例えば、図24に示したC4工法と比較すると、部品実装に係る工程が少なくて済むとともに、熱による部品および基板の損傷の可能性が低くなることになる。
【0205】
また、バンプ面に接着剤が塗布された部品の上下を反転すると、バンプ面の接着剤は、中央付近を下向きの頂点とする山型となる。従って、部品が基板に装着される際、部品と基板とが平行を保ちながら近接していくと、接着剤は最初に基板上の部品の中央の直下付近に接触し、次第にその接触地点から外側へ拡がっていく。
【0206】
この接着剤の拡がりの際、接着剤の自重が、接着剤と基板との間の気泡を外側へ押し出す力として効果的に作用する。従って、接着剤と基板との間に気泡が残存しにくくなる。
【0207】
また、部品と基板との隙間には、部品の中央付近の直下から周縁部に向かってほぼ均等に接着剤が行き渡るようにして拡がっていく。従って、図25(A)および、図25(B)に示したような、部品の1辺または2辺から接着剤を流し込む場合に比べると、接着剤の偏りが起こり難くなる。このことによっても、部品と基板とが安定的に固定されることになる。
【0208】
また、部品実装機1は、部品ごとに接着剤を塗布し、接着剤を塗布した部品を即座に基板へ装着する。そのため、例えば、ウェハの段階で接着剤を塗布した後に、個々の半導体素子に切り分ける工程を含む工法と比較すると、切り分けによる粉塵の発生などが無いので、接着剤への異物の付着および混入の可能性をほぼ無くすことが可能となる。
【0209】
また、室温では固形となるような接着剤を用いる必要がないので、例えば、部品の基板への装着を確実なものとするために、装着前に接着剤に熱を加えて溶かすといった工程を要しない。
【0210】
このように本実施の形態の部品実装機1は、バンプ面を上向きにして接着剤を塗布し、部品を反転して基板に装着することにより、接着剤と部品および基板との気泡の発生を抑制することができる。これにより、部品の基板に対する固定力と接合性とを向上させることができる。
【0211】
次に、図16を用いて、部品実装機1が2つのノズル3を使用し、1つのノズル3のみを使用する場合より効率的な部品の基板への実装を行う場合について説明する。
【0212】
図16は、本実施の形態の部品実装機1が2つのノズル3を使用して部品を基板に実装する工程を示す工程図である。
【0213】
なお、2つのノズル3の一方をノズルAとし、他方をノズルBとする。また、ノズルAにより吸着される部品を部品aとし、ノズルBにより吸着される部品を部品bとする。また、ノズルAにより部品aを装着される基板を基板κとし、ノズルBにより部品bを装着される基板を基板ωとする。これらは図中では、単に、A、B、a、b、κ、およびωと表示されている。
【0214】
図16に示すように、(1)ノズルAが部品aを吸着する。(2)ヘッド4が反転し、ノズルBが下向きとなり、部品bを吸着する。(3)この状態では、部品aのバンプ面が上向きであり、塗布部5により部品aのバンプ面に接着剤が塗布される。
【0215】
(4)ヘッド4が反転し、部品bのバンプ面が上向きとなるとともに、部品aの上下が反転し、バンプ面が基板κと対向する位置に来る。この状態で塗布部5により部品bのバンプ面に接着剤が塗布される。また、ノズルAにより部品aが基板κに装着される。
【0216】
(5)部品aが装着された基板κは、コンベア30によってリフロー炉へ移送され加熱される。つまり、はんだのリフローおよび接着剤の硬化の処理がなされる。これにより、基板κに対する部品aの接合作業が終了する。また、部品bのバンプ面に接着剤が塗布され、かつノズルAにより部品aが基板κに装着された後に、ノズルBが下向きにされる。さらに、ノズルBにより部品bが基板ωに装着される。
【0217】
部品bが装着された基板ωは、コンベア30によってリフロー炉へ移送され、はんだのリフローおよび接着剤の硬化の処理がなされる。
【0218】
なお、リフロー炉で基板ωに対する加熱工程が行われている際、ノズルAおよびノズルBには部品が吸着されていない。そのため、実装制御部10は、ノズルAおよびノズルBを備えるヘッド4を部品供給部22へ移動させ、ノズルAおよびノズルBに次の部品の吸着を行わせる。つまり、上記の(1)の工程から始まる一連の工程が開始される。
【0219】
部品実装機1は、上記の(1)〜(5)の工程を繰り返すことで、複数の基板に対する部品の装着を順次行うことができる。
【0220】
このように、部品実装機1において2つのノズル3を用いた場合、1つのノズル3のみを使用する場合より効率的に部品の基板への接合を進めることができる。
【0221】
具体的には、部品実装機1において、1つのノズル3のみを使用する場合、例えば、ノズルAのみを使用する場合、基板κに部品aを接合するためには、上記説明および図16に示す(1)部品aの吸着、(3)部品aへの接着剤の塗布、(4)部品aの基板κへの装着、(5)リフローおよび硬化、の4つの工程を行う必要がある。つまり、ノズルAだけで2つの部品のそれぞれを2つの基板に接合するためには、8つの工程を行う必要がある。
【0222】
しかし、2つのノズル3を用いた場合は、上記説明のように(1)〜(5)の工程と、(5)の工程で部品が装着された基板を加熱する工程の計6つの工程で2つの部品のそれぞれを2つの基板に接合することができる。つまり、部品実装機1は、2つのノズル3を使用することにより、1つのノズル3のみを使用する場合よりも効率的に部品の基板への接合を進めることができる。
【0223】
なお、上記説明において、(2)と(3)の工程は同時に行ってもよい。つまり、ノズルBが部品bを吸着する際に、反転されバンプ面が上向きとなっている部品aに接着剤を塗布してもよい。
【0224】
図1に示すように、本実施の形態の部品実装機1において、ヘッド4と塗布部5とはともに、移動台6に取り付けられており移動台6の移動に伴って移動する。
【0225】
従って、ノズルBが部品bを吸着する際に、塗布部5は部品aに接着剤を塗布することができる。
【0226】
また、この場合、部品aに接着剤が塗布された後に、ヘッドは基板の上方の位置に移動するが、移動しながら部品aのバンプ面を下向きにするための反転を行ってもよい。または、移動しながら部品aへの接着剤の塗布を行い、塗布の完了後に反転させてもよい。
【0227】
ここで、部品への接着剤の塗布後、または、部品へ接着剤を塗布しながらの当該部品の移動は、接着剤の塗布状態に影響を与えると考えられる。しかしながら、接着剤の粘性が低い等の理由により、接着剤が部品からこぼれる等の実質的な問題がなければ、このように、さらに、工程を圧縮することができ、より効率的に部品の基板への実装を行うことができる。
【0228】
このように、本実施の形態の部品実装機1は、部品の吸着および部品の基板への装着を行うノズルを2つ使用することにより、部品の基板への実装をさらに効率的に行うことができる。
【0229】
さらに、部品実装機1は、3つ以上のノズル3を使用してもよい。例えば、ヘッド4が、図1に示すθ軸回りに放射上に3つ以上のノズル3が取り付けられる形状であればよい。また、実装制御部10が、各構成部に対し、部品の吸着および接着剤の塗布等を部品ごとに順次行うように制御すればよい。
【0230】
なお、本実施の形態において、予め求められた塗布量Vが塗布量制御部28に記憶されており、塗布部5は、塗布量制御部28の制御の下で、塗布量制御部28に記憶されている塗布量Vの接着剤を部品20に塗布するとした。
【0231】
しかしながら、例えば、塗布量制御部28が、部品20の各種のサイズ、バンプの個数等の部品情報を取得し、それら情報に基づいて塗布量Vを算出してもよい。この場合、例えば、塗布量制御部28が、部品情報を取得する処理部と、部品情報に基づいて数値演算を行う処理部とを有していればよい。
【0232】
さらに、このような処理部を有する塗布量制御部28が、例えばユーザ入力等から図6の説明で述べた、L1、L2、L3、B、およびバンプの個数を含む部品情報を取得し、(式2)を用いてVを算出すればよい。
【0233】
これにより、例えば上記L1等の数値がカタログ等から判明している場合、ユーザは、部品実装機1に各種の数値を入力するだけで、部品実装機1に、上述の接着剤の濡れ拡がりによる部品押し下げ効果を伴う部品実装を行わせることができる。
【0234】
また、部品への接着剤の塗布量を、接着剤の塗布状態に基づいて制御してもよい。
図17は、部品上に山型に形成された接着剤の高さに基づいて部品への接着剤の塗布量を制御するための構成の概要を示す概要図である。
【0235】
図17(A)は、当該構成をX軸方向から見た場合の概要図であり、図17(B)は、当該構成をY軸方向から見た場合の概要図である。
【0236】
図17(A)に示すように、移動台6に、光電管26を有する検出部25が備えられている。また、光電管26の正面の位置に光線を光電管26に向けて照射する照射部26aが設置されている。
【0237】
光電管26は、光センサの一種であり、検出部25は、照射部26aから照射される光線が接着剤の頂点付近に遮断され、途切れることで部品20上に山型に形成されている接着剤の高さが所定の高さになったことを検出することができる。
【0238】
つまり、検出部25は、実際に山型の頂点の高さを計測しているのではない。しかし、その頂点の近傍の高さを接着剤の高さとして扱うことで、塗布部5から継続的に吐出され、山型に形成される接着剤の高さが所定の高さになったことを検出することができる。
【0239】
光電管26のX軸方向の位置は、図17(B)に示すように、塗布部5の先端部の中心を通るZ軸方向に平行な直線上からずらした位置にする。また、光電管26のZ軸方向の位置は、接着剤の塗布量が、部品20に最適な塗布量、例えば、上述の(式2)により求められたVと等しくなる接着剤の山の高さと同等な位置にする。この部品20に最適な塗布量となる接着剤の山の高さをHpとする。
【0240】
このHpは、塗布量Vの接着剤を部品20に塗布し、その接着剤の山の高さを実測することで求めてもよい。また、塗布量Vと、接着剤の部品20への塗布時の形状とから計算により求めてもよい。
【0241】
この構成により、部品20に塗布されている接着剤の山の高さがHpに達すると、照射部26aから照射される光線26bは接着剤に遮られ、光電管26は、光線26bを受けることができなくなる。検出部25は、これにより、部品20に塗布されている接着剤の山の高さがHpに達したことを検出することができる。
【0242】
そのため、この検出の時点で塗布部5からの接着剤の吐出を止めれば、部品20上の接着剤の山の高さはほぼHpとなる。従って、部品20に適した接着剤の塗布量となる。
【0243】
部品実装機1は、さらに、光電管26と照射部26aとの組をZ軸方向に複数備えることにより、大きさの異なる複数種の部品に対応して、それぞれの部品に適した量の接着剤を塗布することができる。
【0244】
また、部品に塗布されている山型の接着剤の高さではなく、接着剤の形状に基づいて、部品への接着剤の塗布量を制御してもよい。
【0245】
図18は、部品上の接着剤の形状に基づいて部品への接着剤の塗布量を制御するための構成の概要を示す概要図である。
【0246】
図18(A)は、当該構成をX軸方向から見た場合の概要図であり、図18(B)は、当該構成をY軸方向から見た場合の概要図である。
【0247】
図18(A)に示すように、移動台6に、カメラ27を有する検出部25が備えられている。具体的には、部品20に塗布されている接着剤の山の形状を撮像することができる位置にカメラ27を設置する。
【0248】
検出部25は、部品20に塗布されている接着剤の山型の形状をカメラ27に撮像させることにより、当該形状が所定の形状に達したことを検出することができる。
【0249】
例えば、上述の(式2)により求められた塗布量Vの接着剤を部品20に塗布し、その形状を測定することで、部品20に適した塗布量となる接着剤の形状を特定することができる。
【0250】
このようにして特定された形状が、例えば、図18(B)に点線で示される形状27aであると想定する。この場合、塗布部5から吐出される接着剤の形状は、徐々に形状27aに近づいてくる。
【0251】
検出部25は、カメラ27によって撮像された接着剤の山型の形状の底辺以外の輪郭線と、形状27aの点線部分とを比較する。この比較により、例えば、形状27aの点線部分の長さの90%において当該輪郭線の方が点線よりも外側に位置した場合、又は、カメラ27によって撮像された接着剤の山型の形状の面積が、部品20のバンプ面と形状27aの点線部分とで囲まれた部分の面積の90%になった場合、検出部25は、塗布中の接着剤の形状が形状27aに達したと検出する。
【0252】
そのため、この検出の時点で塗布部5からの接着剤の吐出を止めれば、部品20上の接着剤の形状は形状27aとほぼ同じになる。従って、部品20に適した接着剤の塗布量となる。
【0253】
なお、部品20に適した接着剤の塗布量に対応する形状は、接着剤の部品への塗布時の温度等に応じて接着剤の粘度が変化することにより、異なってくる。そのため、温度に応じた複数の形状を部品実装機1が記憶しておき、その温度に応じて、検出部25が、部品20に適した接着剤の塗布量に対応する形状を選択してもよい。
【0254】
このように、本実施の形態の部品実装機1は、部品に塗布されている接着剤の山の高さや形状等の接着剤の塗布状態を検出する検出部25を備えることにより、塗布状態に基づいて、部品への接着剤の塗布量VをV1>V≧V2を満たす量に制御することができる。
【0255】
図19は、接着剤の塗布状態を検出する検出部25を備える部品実装機1の機能的な構成の概要を示すブロック図である。
【0256】
図19に示す部品実装機1は、図2に示す部品実装機1が備える各構成部に加え、検出部25を備える。
【0257】
検出部25は、上述のように、光電管26またはカメラ27を有しており、部品に塗布されている接着剤の高さが所定の高さに達したこと、または、接着剤の形状が所定の形状の近傍に達したことを検出することができる。つまり、部品に塗布中の接着剤の量が部品に適した量になったことを検出することができる。
【0258】
塗布量制御部28は、検出部25を利用して塗布量を制御する。具体的には、検出部25から、部品に適した塗布量になったことを示す信号を受け取り、塗布部5に対し接着剤の吐出を止める制御を行う。
【0259】
なお、塗布の開始のタイミングは、例えば、実装制御部10によって制御され、塗布量制御部28に通知される。または、塗布量制御部28によって制御され、実装制御部10に通知される。
【0260】
このような構成により、部品実装機1は、部品への接着剤の塗布量Vを塗布状態に基づいて、V1>V≧V2を満たす量に制御することが可能となる。
【0261】
また、本実施の形態において、塗布部5が行う接着剤の部品への塗布は、バンプ面の中央の上方から行われるとした。
【0262】
しかしながら、塗布部5が行う接着剤の部品への塗布は、バンプ面の中央の上方からでなくてもよく、中央付近の上方からであればよい。
【0263】
図20は、部品のバンプ面上の接着剤の塗布位置の例を示す図である。
図20(A)〜図20(C)の各図において、点線の円はバンプ面の中央付近の領域を表し、その領域内にある斜線が付された円は接着剤の塗布位置を表している。また、その領域の周囲にある8つの白丸はバンプを表現している。
【0264】
図20(A)に示すように、バンプ面の中央上方から接着剤の塗布を行った場合、バンプ面の中央から均等に接着剤が拡がる。また、図20(B)および図20(C)に示すように、バンプ面の中央からややずれた位置の上方から接着剤の塗布を行った場合、塗布位置に最も近いに辺に接着剤が到達した後に、残りの辺に接着剤が到達することになる。
【0265】
このように、拡がり方に違いはあるものの、いずれの場合も、接着剤の塗布量Vは、図5(A)および図5(B)を用いて説明したように、V1>V≧V2を満たす量であり、かつ接着剤の表面張力の影響もあり、バンプ面から接着剤がこぼれ落ちることはない。
【0266】
また、図20(B)および図20(C)に示すように正確にはバンプ面の中央ではない位置にから接着剤を塗布した場合であっても、バンプ面上に形成される接着剤の山の形状は、中央付近を頂点とする山型となる。
【0267】
また、バンプ面が上向きの状態では、接着剤の形状が平面に近いような、つまり、盛り上がりが明確に分からないような状態であっても、部品の基板への装着時には部品は反転され、接着剤は重力の影響を受け、中央付近を下向きの頂点とする山型の形状となる。
【0268】
そのため、上述のように、部品を基板に装着する際には、部品の中央直下付近から基板と部品との隙間に存在する空気を外側に押し出しながら接着剤が拡がっていくことになる。また、重力が空気を外側に押し出す力として効果的に作用する。
【0269】
なお、図20(A)〜図20(C)に示すバンプ面の中央付近の領域の形状およびバンプ面に対する大きさの比率は一例であり、これら形状および比率は部品のバンプ面の形状、濡れ性、および接着剤の粘度等により変わってくる。つまり、接着剤の塗布位置の許容範囲は実験値、理論値等により決定すればよい。
【0270】
また、本実施の形態の部品実装機1は、図3および図4を用いて説明したように、部品に接着剤を塗布して反転し、基板に装着するという機能上および工法上の特徴を有する。この部品実装機1の特徴は、様々な工法に適用することができる。
【0271】
例えば、図24を用いて説明したC4工法に上記工法上の特徴を適用することもできる。
【0272】
図21は、C4工法に部品実装機1の工法上の特徴を適用した例を示す工程図である。
図21に示すように、(1)部品20のバンプ面にV1>V≧V2を満たす量Vの接着剤が塗布される。また、基板23の電極上に形成されているプリコート部にフラックスが塗布される。(2)部品20は反転され、基板23に装着される(3)加熱によりリフローおよび硬化が行われる。
【0273】
なお、酸無水物等の、フラックスと同じ機能がある硬化剤を含む接着剤を使用する場合は、上記(1)の工程においてフラックスの塗布工程は不要である。
【0274】
このような工程によっても、効率的かつ安定的に部品20が基板23に固定される。また、基板に複数の部品が装着されている場合であっても一括してリフローすることができる。
【0275】
同様に、半導体素子に形成された金バンプと、基板の電極上に形成された金部とを超音波により加振しながら金属接合する、いわゆる金−金接合に上記工法上の特徴を適用することができる。
【0276】
つまり、部品実装機1は、超音波を発生する超音波発生器を備えることで超音波を利用した部品実装を行うことができる。
【0277】
図22は、部品実装機1が超音波発生器35を備え、金−金接合を行う工程を示す工程図である。
【0278】
図22に示すように、(1)半導体素子である部品20上には金バンプ21aが形成されており、塗布部5によりバンプ面にV1>V≧V2を満たす量Vの接着剤が塗布される。(2)部品20は反転され、電極上に金部24aが形成された基板と対向する位置に来る。(3)部品20は超音波発生器35により振動を加えられながら加圧され、金バンプ21aと金部24aとが接合される。(4)加熱により接着剤が硬化する。
【0279】
このように、超音波による振動を利用して金−金接合を行う実装工法にも、部品に接着剤を塗布して反転し、基板に装着するという部品実装機1が実施する工法上の特徴を適用することができる。
【0280】
ここで、このように、部品を加振しながら加圧する場合、加振および加圧するノズルの先端に接着剤が付着すると、例えば、ノズル先端に付着した接着剤が硬化すると、その後に加振および加圧の対象となる部品を傷つけることがある。
【0281】
しかし、本実施の形態の部品実装機1では、上述のように、接着剤の塗布量VをV1>V≧V2を満たす量に制御している。つまり、接着剤が部品から不要にはみ出すことを防ぐことができる。さらに、接着剤に気泡を混入させない状態で塗布が可能となり、加熱時に気泡が膨張し、部品の横から接着剤が出てくることを無くすことができる。
【0282】
そのため、このように、加振しながら加圧する場合に、加圧するノズルに接着剤が付着することを防ぐことができる。すなわち、ノズルに付着した接着剤による不具合の発生を防ぐことができる。
【0283】
なお、超音波による振動を利用して金−金接合を行う実装工法を実施する場合、基板の電極上に金部24aを形成する代わりに、電極自身を金で形成してもよい。
【0284】
また、本実施の形態の部品実装機1は、部品のバンプ面に大気圧プラズマを照射するプラズマ発生器を備えてもよい。部品のバンプ面にプラズマ処理を行うことで、バンプ面の接着剤に対する親和性が向上し、接着剤が濡れ拡がり易くなる。
【0285】
図23は、部品実装機1がプラズマ発生器を備え、部品を基板に実装する工程を示す工程図である。
【0286】
図23に示すように、(1)ノズル3に吸着された部品20のバンプ面が、プラズマ発生器36によりプラズマ処理される。(2)部品20は反転され、塗布部5によりバンプ面にV1>V≧V2を満たす量Vの接着剤が塗布される。(3)部品20は反転され、基板23に装着される(4)加熱によりリフローおよび硬化が行われる。
【0287】
なお、プラズマ発生器36により発生させるプラズマは、少なくとも酸素ガスを含むガスにより発生させたプラズマであれば好適である。
【0288】
このように、C4工法、超音波を利用した実装工法、および、プラズマを利用した実装工法にも、部品に接着剤を塗布して反転し、基板に装着するという部品実装機1が実施する工法上の特徴を適用することができる。
【0289】
また、例えば、上述のように、部品の電極上のバンプの素材、およびプリコート部の素材またはプリコートがされない場合の電極自身の素材がともに金である場合のみならず、バンプの素材がはんだであり、かつ、基板上にプリコート部がなく電極上に直接プリフラックスされる場合、バンプおよびプリコート部がともにはんだである場合、バンプが金ワイヤバンプまたは金メッキバンプであり、基板の電極上に形成されたプリコート部の素材がPbフリーはんだである場合など、各種組み合わせにおいて、上記工程の実施ができる。
【0290】
なお、はんだの種類は上記のPbフリーのほか、共晶、高Pb等があるが、これらはんだの種類がどのようなものであっても、上記工程の実施が妨げられることはない。
【0291】
このように、部品実装機1が実施する工法上の特徴である、部品に接着剤を塗布して反転し、基板に装着するという工程の適用の可否は、実装工法、部品と基板との接合態様、接着剤の種類、および付加的な処理内容等に依存せず、部品と基板との間の接着剤を硬化させることで部品を基板に固定する工程を含む全ての工法に適用できる。
【0292】
すなわち、これら全ての工法において、効率的かつ安定的に部品を基板に固定するという効果が発揮される。
【0293】
ここで、基板の電極またはプリコート部、および部品のバンプの少なくとも一方の素材がはんだであれば、はんだのリフローにより部品と基板とが接合される。そのため、このリフローの際に部品に基板方向の力を与えることは、部品と基板との接合性を向上させる効果をもたらす。
【0294】
従って、上述の、塗布量VをV1>V≧V2を満たす量に制御することによる、部品に自重以外の押し下げ力を与える効果は、このように、基板の電極またはプリコート部、および部品のバンプの少なくとも一方の素材がはんだである場合に、最も顕著に発揮される。
【0295】
また、本実施の形態における部品実装機1は、部品のバンプ面に接着剤を塗布した後に部品を基板に装着するとした。
【0296】
しかしながら、塗布量制御部28により制御された量の接着剤を部品のバンプ側と基板側の両方に分けて塗布した後に、部品を基板に装着してもよい。
【0297】
例えば、基板側に形成してあるはんだプリコートの厚みが厚く、基板の凹凸が大きい場合などである。
【0298】
この場合基板側にも塗布することで、気泡の混入を無くすことができ、効果がある。
また、塗布量制御部28により制御された量の接着剤を基板に塗布した後に、部品を基板に装着してもよい。
【0299】
例えば、室温程度では、基板に対する接触角が大きく、例えば90度前後の値で、且つ粘度が高く先端が突き出る形状であり、部品装着後も接触角が自然角αより大きい状態を保つような接着剤であり、かつ、リフロー炉における加熱温度では接触角が自然角αに近づくような接着剤を使用した場合を想定する。
【0300】
この場合、室温での部品の基板への装着後から加熱前までの間には、部品と基板との間の接着剤の表面は、図7に示すような内側に凸の形状にならないことも考えられる。
【0301】
しかし、バンプ面の周縁にまで接着剤が行き渡った状態で、かつ、接着剤の基板への塗布量VがV1≧V>V2を満たしていれば、加熱されている間に、部品と基板との間の接着剤の表面が内側に凸の形状に変化していき、接触角が次第に自然角αに近づいていくことになる。
【0302】
すなわち、この過程において、部品には接着剤の濡れ拡がりによる押し下げ力が働くことになり、部品と基板との接合をより確実なものとすることができる。
【0303】
つまり、部品実装機1は、部品のバンプ面および基板の少なくともいずれか一方に接着剤を塗布すればよい。
【0304】
また、本実施の形態において用いた接着剤は、少なくとも0.001Pa・s〜200Pa・sの範囲に含まれる粘度の熱硬化性樹脂であるとした。
【0305】
しかしながら、接着剤の粘度が上記範囲に含まれているか否かに関わらず、部品実装機1が接着剤の粘度に応じた処理を行ってもよく、その処理のための構成部を備えても良い。
【0306】
例えば、部品へ接着剤を塗布した後に部品を反転させる際、接着剤の粘度が低いため、慣性または遠心力により接着剤が部品からこぼれる可能性がある場合、粘度を向上させるために接着剤を冷却する構成部を有しても良い。また、反転部7が反転の速度を遅くしてもよい。
【0307】
また、上記冷却を行う構成部は、冷風等により積極的に冷却してもよく、室温により部品上の接着剤が所定の温度に低下するまで部品を反転させないことにより冷却してもよい。
【0308】
また、例えば、粘度が高く、部品のバンプ面または基板上での濡れ拡がりが悪い場合、粘度を低下させるために接着剤を加熱する構成部を有してもよい。この加熱を行う構成部は、温風等により積極的に加熱してもよく、室温により部品上の接着剤が所定の温度に上昇するまで部品を反転させないことにより加熱してもよい。
【0309】
なお、接着剤を冷却または加熱する場合、接着剤が塗布された部品が反転されるまでに冷却または加熱を行えばよい。
【0310】
さらに、部品のバンプ面または基板上での濡れ拡がりを良くするために、塗布部5が移動しながら接着剤を吐出することで、部品のバンプ面の形状に合わせた描画塗布を行ってもよい。
【0311】
描画塗布の例としては、「×」、「*」等である。またその他の形状であっても、バンプ面に塗布した際に接着剤に囲まれた領域がない形状であればよい。つまり、接着剤が基板の表面を拡がる際に、バンプ面の中央付近から外側に向かって空気を押し出し易い形状であればよい。
【0312】
また、部品実装機1は、機能的な構成として移動台6に反転部7を備え、反転部7がヘッド4を反転させ、部品を吸着しているノズル3の上下を反転させることにより、部品の上下を反転させるとした。しかしながら、他の手段により部品を反転させてもよい。
【0313】
例えば、ヘッド4が反転するためのモータ等を備えることでヘッド4自体が反転する機能を有しても良い。つまり、接着剤が塗布された部品を基板に装着する際に部品の上下を反転させる機能を部品実装機1が有していればよい。
【0314】
また、部品実装機1において部品が装着された基板は、リフロー炉へ搬送され、加熱されるとした。しかしながら、部品実装機1がはんだのリフローおよび接着剤の硬化を行う構成部を備えていてもよい。
【0315】
例えば、ノズル3に加熱機能を持たせ、ノズル3に、はんだのリフローおよび接着剤の硬化を行わせてもよい。
【0316】
また、塗布部5およびタンク5aは移動台6に取り付けられており、移動台6の移動に伴って移動するとした。この構成により、例えば、図16を用いて述べたように、一方のノズル3が部品供給部22から部品を吸着している際に、塗布部5は、他方のノズル3に吸着されている部品に接着剤を塗布することができる。しかしながら、移動台6に取り付けられていなくてもよい。
【0317】
塗布部5およびタンク5aは、上向きにされた状態のバンプ面に接着剤を塗布することができれば、部品実装機1においてどのような位置に取り付けられていてもよい。
【0318】
また、部品供給部22では、複数の部品20は、それぞれバンプ面を下にして置かれているとした。しかしながら、複数の部品20は、それぞれバンプ面を上にして置かれていてもよい。この場合、部品供給部22から部品20のバンプ面を吸着保持し、反転させるユニットを設け、そのユニットに反転させた部品20の電極面でない面をノズル3により吸着してもよい。
【0319】
また、ノズル3が2つ取付けられたヘッド4において、ノズル3はヘッド4に対しZ軸方向に平行に移動するように構成されているとした。しかしながら、ヘッド4に対してノズル3が移動できないように構成し、ヘッド4全体が移動台6に対してZ軸方向に移動できるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0320】
本発明は、半導体素子等の部品を基板に実装する部品実装機に適用できる。特に、部品と基板との間の接着剤を硬化させることで部品を基板に固定する工法を採用する部品実装機および部品実装方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0321】
【図1】実施の形態の部品実装機の概観を示す斜視図である。
【図2】実施の形態の部品実装機の機能的な構成の概要を示す機能ブロック図である。
【図3】実施の形態の部品実装機における部品実装に係る工程の流れを示すフロー図である。
【図4】図3に示す工程の概要を図示した工程図である。
【図5】(A)は、実施の形態におけるV1を説明するための図であり、(B)は、実施の形態におけるV2を説明するための図であり、(C)は、実施の形態における、V1≧V>V2を満たす塗布量Vの一例を説明するための図である。
【図6】接合後の部品と基板との隙間の容量に相当する量の簡易な求め方を説明するための図である。
【図7】実施の形態における、接着剤の基板上の濡れ拡がり方を示す概要図である。
【図8】実施の形態の部品実装機が部品を基板に装着した場合の、接着剤の部品からのはみ出し距離の最大値を示す図である。
【図9】液体の固体に対する接触角を説明するための図である。
【図10】(A)は、接着剤の基板に対する接触角がδである状態の部品および基板の側面からの概要図であり、(B)は、接着剤の濡れ拡がりによる押し下げ力を算出するための想定値を示す図である。
【図11】接着剤を基板に塗布して部品を基板に装着することにより、部品と接着剤との間に気泡が残存する様子を示す模式図である。
【図12】塗布部から接着剤が吐出される際の接着剤の形状を示す図である。
【図13】接着剤が空気を押し出しながら面上を拡がる様子を示す模式図である。
【図14】部品の基板への装着の際に接着剤が基板上を拡がる様子を示す図である。
【図15】(A)は、接着剤がバンプ面に拡がった状態の一例を示す図であり、(B)は、接着剤がバンプ面に拡がった状態の他の一例を示す図であり、(C)はバンプ面の周縁部で接着剤が止まっている状態を示す図である。
【図16】本実施の形態の部品実装機が2つのノズルを使用して部品を基板に実装する工程を示す工程図である。
【図17】(A)は、部品上に山型に形成された接着剤の高さに基づいて部品への接着剤の塗布量を制御するための構成をX軸方向から見た場合の概要図であり、(B)は、当該構成をY軸方向から見た場合の概要図である。
【図18】(A)は、部品上の接着剤の形状に基づいて部品への接着剤の塗布量を制御するための構成をX軸方向から見た場合の概要図であり、(B)は、当該構成をY軸方向から見た場合の概要図である。
【図19】接着剤の塗布状態を検出する検出部を備える部品実装機の機能的な構成の概要を示すブロック図である。
【図20】(A)は、部品のバンプ面上の接着剤の塗布位置の第1の例を示す図であり、(B)は、当該位置の第2の例を示す図であり、(C)は、当該位置の第3の例を示す図である。
【図21】C4工法に本実施の形態の部品実装機の工程上の特徴を適用した例を示す工程図である。
【図22】本実施の形態の部品実装機が超音波発生器を備え、金−金接合を行う工程を示す工程図である。
【図23】本実施の形態の部品実装機がプラズマ発生器を備え、部品を基板に実装する工程を示す工程図である。
【図24】従来のC4工法の工程を示す工程図である。
【図25】(A)は、従来のC4工法において、接着剤が部品に付着する様子を示す図であり、(B)は、接着剤の流し込みのために確保された領域から接着剤が流し込まれている様子を示す図である。と基板との間に充填される工程を示す図である。
【図26】基板に接着剤を塗布して部品を基板に実装する従来の工法の工程を示す工程図である。
【図27】(A)は、図26に示す工法における接着剤の塗布幅の一例を示す図であり、(B)は、図26に示す工法における接着剤の塗布幅の他の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0322】
1 部品実装機
2 移載部
3 ノズル
4 ヘッド
5 塗布部
5a タンク
6 移動台
7 反転部
9 ビーム
10 実装制御部
20 部品
21 バンプ
21a 金バンプ
22 部品供給部
23 基板
24 プリコート部
24a 金部
25 検出部
26 光電管
26a 照射部
27 カメラ
28 塗布量制御部
30 コンベア
35 超音波発生器
36 プラズマ発生器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
突出状の端子であるバンプを有する部品を基板に実装する部品実装機であって、
部品のバンプを有する面であるバンプ面、および前記基板の少なくともいずれか一方に接着剤を塗布する塗布手段と、
前記塗布手段により塗布される接着剤の量である塗布量Vを、V1>V≧V2を満たす量に制御する塗布量制御手段と、
前記部品を、前記部品と前記基板との間に前記接着剤が介在した状態で前記基板に装着する装着手段とを備え、
前記部品と前記基板とは、前記部品が前記基板に実装された後に所定の加熱温度で加熱されることにより接合されるものであり、
前記V1およびV2は、前記部品が前記基板に接合された場合の前記部品と前記基板との位置関係における、前記バンプ面の周縁から前記基板に向かって直線的に伸ばした仮想の面である境界面と、前記部品と、前記基板とで囲まれる空間領域の容量であり、
前記V1は、前記境界面と前記基板とのなす前記部品側の角度が、前記接着剤の前記所定の加熱温度における前記基板に対する接触角と等しい状態での前記空間領域の容量であり、
前記V2は、前記境界面が前記バンプと交わることなく接している状態での前記空間領域の容量である
部品実装機。
【請求項2】
前記塗布手段は、前記バンプ面が上向きの状態で、前記バンプ面に上方から前記接着剤を塗布し、
前記部品実装機はさらに、
前記塗布手段により前記接着剤が塗布された前記部品の上下を反転させる反転手段を備え、
前記装着手段は、前記反転手段により反転された前記部品を、前記部品の下に位置する基板に装着する
請求項1記載の部品実装機。
【請求項3】
前記塗布量制御手段は、
前記部品のサイズおよびバンプの数を含む部品情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記部品情報に基づき、前記部品と前記基板とが接合された場合の、前記部品と前記基板との隙間の容量に相当する量を算出する演算手段とを有し、
前記塗布量Vを前記演算手段により算出された量とすることで、前記塗布量VをV1>V≧V2を満たす量に制御する
請求項1記載の部品実装機。
【請求項4】
さらに、
前記塗布手段により前記接着剤の塗布が開始された後に前記バンプ面に塗布されている前記接着剤の形状が所定の形状になったことを検出する検出手段を備え、
前記塗布量制御手段は、前記検出手段により前記接着剤の形状が所定の形状になったことが検出された場合、前記塗布手段に前記接着剤の塗布を停止させることで、前記塗布量VをV1>V≧V2を満たす量に制御する
請求項1記載の部品実装機。
【請求項5】
さらに、
前記塗布手段により前記接着剤の塗布が開始された後に前記バンプ面に塗布されている前記接着剤の高さが所定の高さになったことを検出する検出手段を備え、
前記塗布量制御手段は、前記検出手段により前記接着剤の高さが所定の高さになったことが検出された場合、前記塗布手段に前記接着剤の塗布を停止させることで、前記塗布量VをV1>V≧V2を満たす量に制御する
請求項1記載の部品実装機。
【請求項6】
突出状の端子であるバンプを有する部品を基板に実装する方法であって、
部品のバンプを有する面であるバンプ面、および前記基板の少なくともいずれか一方に接着剤を塗布する塗布ステップと、
前記塗布ステップにおいて塗布される接着剤の量である塗布量Vを、V1>V≧V2を満たす量に制御する塗布量制御ステップと、
前記部品を、前記部品と前記基板との間に前記接着剤が介在した状態で前記基板に装着する装着ステップとを含み、
前記部品と前記基板とは、前記部品が前記基板に実装された後に所定の加熱温度で加熱されることにより接合されるものであり、
前記V1およびV2は、前記部品が前記基板に接合された場合の前記部品と前記基板との位置関係における、前記バンプ面の周縁から前記基板に向かって直線的に伸ばした仮想の面である境界面と、前記部品と、前記基板とで囲まれる空間領域の容量であり、
前記V1は、前記境界面と前記基板とのなす前記部品側の角度が、前記接着剤の前記所定の加熱温度における前記基板に対する接触角と等しい状態での前記空間領域の容量であり、
前記V2は、前記境界面が前記バンプと交わることなく接している状態での前記空間領域の容量である
部品実装方法。
【請求項7】
前記塗布ステップでは、前記バンプ面が上向きの状態で、前記バンプ面に上方から前記接着剤を塗布し、
前記部品実装方法はさらに、
前記塗布ステップにおいて前記接着剤が塗布された前記部品の上下を反転させる反転ステップを含み、
前記装着ステップでは、前記反転ステップにおいて反転された前記部品を、前記部品の下に位置する基板に装着する
請求項6記載の部品実装方法。
【請求項8】
前記塗布量制御ステップは、
前記部品のサイズおよびバンプの数を含む部品情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにおいて取得された前記部品情報に基づき、前記部品と前記基板とが接合された場合の、前記部品と前記基板との隙間の容量に相当する量を算出する演算ステップとを含み、
前記塗布量制御ステップでは、
前記塗布量Vを前記演算ステップにおいて算出された量とすることで、前記塗布量VをV1>V≧V2を満たす量に制御する
請求項6記載の部品実装方法。
【請求項9】
さらに、
前記塗布ステップにおいて前記接着剤の塗布が開始された後に前記バンプ面に塗布されている前記接着剤の形状が所定の形状になったことを検出する検出ステップを含み、
前記塗布量制御ステップでは、前記検出ステップにおいて前記接着剤の形状が所定の形状になったことが検出された場合、前記塗布ステップにおける前記接着剤の塗布を停止させることで、前記塗布量VをV1>V≧V2を満たす量に制御する
請求項6記載の部品実装方法。
【請求項10】
さらに、
前記塗布ステップにおいて前記接着剤の塗布が開始された後に前記バンプ面に塗布されている前記接着剤の高さが所定の高さになったことを検出する検出ステップを含み、
前記塗布量制御ステップでは、前記検出ステップにおいて前記接着剤の高さが所定の高さになったことが検出された場合、前記塗布ステップにおける前記接着剤の塗布を停止させることで、前記塗布量VをV1>V≧V2を満たす量に制御する
請求項6記載の部品実装方法。
【請求項11】
突出状の端子であるバンプを有する部品を基板に実装するためのプログラムであって、
部品のバンプを有する面であるバンプ面、および前記基板の少なくともいずれか一方に接着剤を塗布する塗布ステップと、
前記塗布ステップにおいて塗布される接着剤の量である塗布量Vを、V1>V≧V2を満たす量に制御する塗布量制御ステップと、
前記部品を、前記部品と前記基板との間に前記接着剤が介在した状態で前記基板に装着する装着ステップとをコンピュータに実行させるためのプログラムであり、
前記部品と前記基板とは、前記部品が前記基板に実装された後に所定の加熱温度で加熱されることにより接合されるものであり、
前記V1およびV2は、前記部品が前記基板に接合された場合の前記部品と前記基板との位置関係における、前記バンプ面の周縁から前記基板に向かって直線的に伸ばした仮想の面である境界面と、前記部品と、前記基板とで囲まれる空間領域の容量であり、
前記V1は、前記境界面と前記基板とのなす前記部品側の角度が、前記接着剤の前記所定の加熱温度における前記基板に対する接触角と等しい状態での前記空間領域の容量であり、
前記V2は、前記境界面が前記バンプと交わることなく接している状態での前記空間領域の容量である
プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2008−91724(P2008−91724A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272254(P2006−272254)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】