説明

部品実装装置

【課題】複数の異なる波長の光の反射光を波長毎に分離可能な撮像カメラを用い、部品の位置、形状、及び傾きを高精度で検出する。
【解決手段】作業ヘッド20に吸着された部品24に緑色光を照射する第1の照明部26と、緑色の光とは異なる波長の赤色光を照射する第2の照明部28と、第1と第2の照明部から略同時に照射された緑と赤の反射光を取り込み、各反射光を波長毎に分離して画像信号を出力する撮像カメラ22と、撮像カメラ22から出力された画像信号を波長毎に分離して画像処理し、作業ヘッド20の中心軸に対する部品24の位置、形状、及び傾きを演算する制御部50を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品等の部品を基板に実装する際に、該部品の位置検出等を行う撮像装置を備えた部品実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に電子部品を実装する部品実装装置には、部品実装の高密度化等を背景として高精度かつ高速化が要求されている。このため、装置側において、実装される電子部品の位置や傾き等を正確に把握する必要がある。
【0003】
このような部品実装装置として、従来、例えば特許文献1に開示された技術が公知である。この従来技術では、吸着ノズルに保持された部品の傾きを検出する光を照射する第1照明部と、前記部品の回転を検出する光を照射する第2照明部と、第1照明部及び第2照明部からの反射光を撮像するカメラとを備えている。
【0004】
そして、カメラの中心軸と吸着ノズルの中心軸が一致したときに、第1及び第2照明部をともに作動させて、その反射光によりカメラにて電子部品を撮像し、該電子部品の傾きと傾斜を検出するようにしている。
【特許文献1】特開2004−170288号公報(第6−7頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した特許文献1に開示された技術によれば、第1照明部の第1光による部品撮像と第2照明部の第2光による部品撮像とをカメラで行い、これらの部品撮像に基づいて電子部品の傾き、及び形状と回転状態を求めている。
【0006】
しかしながら、前記カメラでは、第1照明部と第2照明部から照射した光の反射光を区別することが困難であり、反射光同士の干渉等により鮮明な部品画像を得ることは難しかった。
【0007】
このため、特許文献1では、より正確かつ鮮明な部品情報を得るために、例えば、電子部品の移動中に第1照明部と第2照明部を所定のタイミングで点灯させて、個別に画像情報を得る等の必要性も生じている。
【0008】
本発明は、斯かる課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、複数の異なる波長の光の反射光を波長毎に分離可能な撮像装置を用い、部品の位置、形状、及び傾きを高精度で検出可能な電子部品実装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、部品を着脱自在に保持する作業ヘッドを備え、該作業ヘッドに保持された部品を基板に実装する部品実装装置において、
前記作業ヘッドに保持された前記部品に第1の光を照射する第1の照明部と、
前記作業ヘッドに保持された前記部品に、前記第1の光とは異なる波長の第2の光を照射する第2の照明部と、
前記第1と第2の照明部から略同時に照射された前記第1と第2の光の反射光を夫々取り込み、該夫々の反射光を波長毎に分離して画像信号を出力する撮像装置と、
該撮像装置から出力された画像信号を夫々の波長毎に分離して画像処理し、前記作業ヘッドに対する前記部品の位置、形状、及び傾きを演算する制御部と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の照明部からの異なる波長の光による反射光を波長毎に分離可能な撮像装置を用い、各照明部ごとの反射画像を同時に得ることで、部品の形状、位置、及び傾斜を高精度で検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
図1は、電子部品実装装置の外装カバーを外した外観斜視図である。
同図において、電子部品実装装置(以下、装置本体という)10は、基台11を備え、この基台11の内部に及び上部には各種の装置が配設されている。
【0012】
基台11の上部には、中央に、固定と可動の1対の平行な基板案内レール12a,12bが基板の搬送方向(X軸方向)に水平に延設されている。これらの基板案内レール12a,12bの下部に接するように不図示のループ状のコンベアベルトが走行自在に配設されている。このコンベアベルトは、ベルト駆動モータにより駆動され、基板搬送方向に走行し、基板を下方から支持しながら搬送する。
【0013】
また、1対の基板案内レール12a,12bを跨いで、基板の搬送方向(X軸方向)と略直交方向(Y軸方向)に延設された1対の平行な固定レール13a,13bが配設されている。この固定レール13a,13bに長尺の移動レール14が滑動自在に係合し、この移動レール14に、基板に部品を搭載する作業を行う作業塔15が滑動自在に懸架されている。この作業塔15には作業ヘッド20が配設されている。
【0014】
基台11上には、中央制御部からの指示により正逆両方向に自在に回転するY軸方向駆動サーボモータが配設されている。これにより、移動レール14が駆動伝達系を介して固定レール13a,13bに沿ってY軸方向に進退する。この移動レール14には、可撓性のケーブル16が連結されている。
【0015】
また、移動レール14には、中央制御部からの指示により正逆両方向に自在に回転するX軸方向駆動サーボモータが配設されている。これにより、他の駆動伝達系を介して作業塔15が固定レール13a,13b上をX軸方向に自在に移動する。この作業塔15には、可撓性のケーブル17が連結されている。
【0016】
作業塔15は、ケーブル16、17を介して中央制御部に接続され、これにより、例えば作業塔15から中央制御部に基板上の作業すべき目標位置等の認識用データ(画像データ)が送信される。
【0017】
基台11上の前部と後部に夫々部品カセット台18a,18bが配設されている。また、例えば前部の部品カセット台18aと固定の基板案内レール12aとの間に、後述する撮像カメラ22が配設されている。
【0018】
図2は、本実施形態の電子部品実装装置10の要部の制御ブロック図である。
同図において、電子部品実装装置10は、前述した作業ヘッド20を移動制御する制御用CPU30と、この制御用CPU30によって制御される照明制御装置32、及び画像処理装置34等を備えている。制御用CPU30には、該制御用CPU30へのデータ入力用のキーボードマウス36、及び制御用CPU30からの出力データに基づき、キーボードマウス36からの入力情報を画像表示するモニター38が接続されている。
【0019】
作業ヘッド20は、モータドライバ40とX軸モータ41を介してX軸方向に移動制御可能であると共に、モータドライバ42とY軸モータ43を介してY軸方向に移動制御可能となっている。また、作業ヘッド20には、モータドライバ44によって制御されるZ軸モータ45と、モータドライバ46によって制御されるθ軸モータ47が内蔵されている。これにより、作業ヘッド20はXY平面と直交するZ軸方向に移動制御可能であると共に、XY平面内で回転制御可能となっている。
【0020】
なお、作業ヘッド20の下部にはノズル21が取り付けられていて、このノズル21の先端にて電子部品24が吸着される。
照明制御装置32は、後述する第1照明部26と第2照明部28を制御するものであり、ノズル21に吸着された電子部品24に照射される光量制御等を行う。
【0021】
画像処理装置34は、撮像カメラ22から出力された緑色の画像信号を取り込む第1の画像取り込み部48と、赤色の画像信号を取り込む第2の画像取り込み部49、及びこれら第1と第2の画像取り込み部48,49からの信号を取り込んで画像処理し、その結果を制御用CPU30に送信する画像処理演算用CPU50を備えている。
【0022】
図3は、作業ヘッド20の下部に取り付けられたノズル21と、基台11上に配置された撮像カメラ22との位置関係を示す図である。
撮像カメラ22には、作業ヘッド20との対向側に受光レンズ23が設けられている。この撮像カメラ22には、カラー撮像素子を使用し、赤、緑、青の個別の画像出力を備えている。
【0023】
ノズル21は、電子部品24を真空吸着する機能を有する。ノズル21と撮像カメラ22との間には、第1照明部26と第2照明部28が配設されている。第1照明部26は、ベース板126と、該ベース板126の中央に穿設された穴126aを有し、この穴126aの中心はノズル21の中心軸Oと一致している。この穴126aは、電子部品24の反射光を撮像カメラ22が取り込めるようにするために設けられている。
【0024】
ベース板126には、例えば緑色の光を照射する光学素子27が配設されている。本実施形態では、光学素子27から、ノズル21の中心軸Oに対し斜め方向から緑色の光が照射される。このように、電子部品24に光を斜め方から照射することにより、撮像カメラ22には、電子部品24の形状と位置情報(回転を含む)を得るための反射画像が取り込まれる。
【0025】
例えば、図4(a)は、ノズル21の中心軸Oに対し電子部品24が正しい位置関係で吸着された状態を示している。また、図4(b)は、ノズル21の中心軸Oに対し電子部品24がズレ量xだけ偏移して吸着された状態を示している。
【0026】
また、第2照明部28は、ベース板128と、該ベース板128の中央に穿設された穴128aを有し、この穴128aの中心はノズル21の中心軸Oと一致している。この穴128aは、電子部品24の反射光を撮像カメラ22が取り込めるようにするために設けられている。
【0027】
ベース板128には、例えば赤色の光を照射する光学素子29が配設されている。この光学素子29から、ノズル21の中心軸Oに対し略平行に赤色の光が照射される。このように、ノズル21の中心軸Oと略平行に光を照射することにより、撮像カメラ22には、電子部品24が正常な傾斜で吸着されているか否かの判別情報を得るための反射画像が取り込まれる。
【0028】
すなわち、例えば図4(a)に示すように、電子部品24がノズル21に傾きがない正常な状態で吸着されている場合は、撮像カメラ22には強い正反射の光が取り込まれ、正常な状態の電子部品24の画像が得られる。一方、図4(c)に示すように、電子部品24がノズル21の中心Oに対し傾いて吸着されている異常な場合は、反射光の強さが違うことにより画像に明暗が生じたり、画像の大きさが小さくなったりして、電子部品24が傾いて吸着されていることが判別される。
【0029】
なお、第1照明部26と第2照明部28の光の色を変えているのは、波長が異なる反射光を用いることで、画像解析をし易いようにするためである。
次に、図5のフローチャートに基づき、図2及び図3を参照しながら本実施形態の作用を説明する。
【0030】
S51で、作業ヘッド20のノズル21に電子部品24を吸着し、この吸着した電子部品24を撮像カメラ22の真上の所定高さ位置に移動させる。次に、S52で、緑色の第1照明部26と赤色の第2照明部28の光学素子27,29を同時に点灯させ、夫々の反射光は電子部品24で反射される。そして、これらの反射光の画像が撮像カメラ22にて同時に撮像される。撮像カメラ22には、カラーカメラを用い、このカメラは、赤、緑、青の光に対して取り込んだ画像を別個に同時に出力することができる。
【0031】
次いで、S53〜S55では、撮像カメラ22から、第1照明部26からの反射光である緑色成分の画像が出力され、その画像は画像処理装置34の第1の画像取り込み部48で取り込まれる。ここで取り込まれた画像は、画像処理演算用CPU50で画像処理され、ここでノズル21の中心Oに対する電子部品24の位置情報が求められる。そして、S59に進む。
【0032】
一方、S56〜S58では、撮像カメラ22から、第2照明部28からの反射光である赤色成分の画像が出力され、その画像は画像処理装置34の第2の画像取り込み部49で取り込まれる。ここで取り込まれた画像は、画像処理演算用CPU50で画像処理され、ここでノズル21の中心Oに対する電子部品24の傾き情報が求められる。そして、S59に進む。
【0033】
S59では、電子部品24の傾き情報に基づき、該電子部品24の傾きが正常な範囲か否かが判断される。そして、正常(Yes)ならS60に進んで、吸着した電子部品24の位置情報から、該電子部品24が基板に対して所望の位置になるようにノズル21をXY平面内で回転又は移動させて基板に装着する。
【0034】
また、S59で、若しも吸着された電子部品24の傾きが正常でなければ(No)、S61に進んで、電子部品24を基板に装着しない処理(例えば廃棄処分)を行い、更にS62で電子部品24の傾きが正常でない旨のメッセージを、モニター38に出力する。
【0035】
本実施の形態によれば、複数の照明部26,27の光の波長を変えて、かつ撮像カメラ22としてカラーカメラを用いることにより、異なる照明部ごとの画像を同時に得ることができるようになり、電子部品24の形状、位置情報、及び傾斜情報を高速に得ることができる。
【0036】
なお、単板カラーカメラの場合は、撮像素子に赤、緑、青の画素を用意しなくてはいけないので、単色光での画像はモノクロカメラより解像度が落ちることになる。そこで、この場合は、複数の波長の反射光をカラーカメラによりカメラ内部で分離して画像を得るのではなく、反射光がカメラに入射される前に該反射光をカラーフィルターで各照明部の波長に分離してから、複数のモノクロカメラで同時に撮像しても良い。また、第1照明部26と第2照明部28に用いられる光源は、LEDでもレーザー発信器でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る電子部品実装装置の外装カバーを外した外観斜視図である。
【図2】本実施の形態の制御ブロック図である。
【図3】電子部品実装装置の要部の正面図である。
【図4】(a)は、電子部品がノズルに正常に吸着された状態を示す図、(b)は、電子部品がノズルに偏倚して吸着された状態を示す図、(c)は、電子部品がノズルに傾斜して吸着された状態を示す図である。
【図5】本実施の形態の制御フローチャートを示す図である。
【符号の説明】
【0038】
10 電子部品実装装置
20 作業ヘッド
21 ノズル
22 撮像カメラ
24 電子部品
26 第1照明部
27 光学素子
28 第2照明部
29 光学素子
30 制御用CPU
32 照明制御装置
34 画像処理装置
50 画像処理演算用CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を着脱自在に保持する作業ヘッドを備え、該作業ヘッドに保持された部品を基板に実装する部品実装装置において、
前記作業ヘッドに保持された前記部品に第1の光を照射する第1の照明部と、
前記作業ヘッドに保持された前記部品に、前記第1の光とは異なる波長の第2の光を照射する第2の照明部と、
前記第1と第2の照明部から略同時に照射された前記第1と第2の光の反射光を夫々取り込み、該夫々の反射光を波長毎に分離して画像信号を出力する撮像装置と、
該撮像装置から出力された画像信号を夫々の波長毎に分離して画像処理し、前記作業ヘッドに対する前記部品の位置、形状、及び傾きを演算する制御部と、を備えている、
ことを特徴とする部品実装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−201038(P2007−201038A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15948(P2006−15948)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(000178022)山形カシオ株式会社 (65)
【Fターム(参考)】