説明

配線回路部材

【課題】肉眼では認識できないほどの線幅が狭い配線回路を密着性よく形成してなる、カールの発生が少なく、かつ意匠性の高い配線回路部材を提供する。
【解決手段】耐熱性支持基材の少なくとも一方の面に、平均粒子径1〜100nmの導電性金属系粒子を含む分散液をインクジェット記録方式で印刷し、焼成することにより形成された幅200μm以下の配線からなる配線回路を有する配線回路部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線回路部材に関する。さらに詳しくは、本発明は、肉眼では認識できないほどの線幅が狭い配線回路が密着性よく形成されてなる、カールの発生が少なく、かつ意匠性の高い、自動車用アンテナシートなどに好適に用いられる配線回路部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ラジオ電波、テレビ電波などの電波を受信するために、自動車の屋根にロッドアンテナが取り付けられていた。このロッドアンテナは、一時ガラスに直接印刷されたプリントアンテナに切り代わったが、近年、ガラスへの直接印刷ではなく、オフラインでアンテナ配線を設けたシートを、自動車の窓ガラスに装着する方法が開発されている。
このアンテナシートには、銅箔を抜き加工やエッチング加工したもの、あるいは樹脂製シートに導電性ペーストをスクリーン印刷方式で印刷したものなどがあるが、これらは、それぞれ下記の欠点を有している。
すなわち、銅箔を抜き加工したものは、銅箔の廃材が大量に発生するし、エッチング加工では、操作が煩雑でコスト高となる。また、導電性ペーストのスクリーン印刷方式では、線幅を200μm以下に狭くすることができず、その結果アンテナ配線が肉眼で明瞭に認識されることから、意匠性が悪い。
【0003】
例えば、特許文献1には、銅箔などの導体層の一方の面に粘着剤層を介して剥離シートが設けられた導電体シートを打ち抜くことにより、所定パターンの配線部を形成した貼付回路シートの製造方法が開示されている。しかしながら、この方法においては、前述したように廃棄する材料が多いといった欠点があった。
また、特許文献2には、透明な基材シートの表面に、銀などを主成分とする導電性ペーストをスクリーン印刷により、アンテナ形状のパターンに印刷してなるアンテナシートが開示されている。この導電性ペーストのスクリーン印刷により、配線を形成する方法は、必要な部分のみに導電性材料を印刷するため、導電性材料のロスが少ないといった長所を有している。しかし、導電性ペーストには、バインダー樹脂や分散樹脂が含まれていることから、電気抵抗率が高く、またスクリーン印刷方式では線幅を狭くすることができないといった欠点があった。
このような欠点を改良するために、特許文献3には、スクリーン印刷により銀ペーストを印刷して形成した配線を、電気めっきにより体積固有抵抗率が8.0×10-10Ω・cm以下の金属で被覆することにより、体積固有抵抗率を1/4に減少させる技術が開示されている。しかし、スクリーン印刷で形成できる配線の幅は0.2mm〜1.5mm程度であり、肉眼で認識できないレベルに至っていない。
一方、特許文献4では、導電性ペーストに含まれるバインダー樹脂や分散樹脂を取り除く手段として、焼結(焼成)する手段が開示されている。
しかし、通常の樹脂製基材シートを用いた場合、焼成する際に、該基材がカールしてしまうといった欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−336698号公報
【特許文献2】特開2001−119219号公報
【特許文献3】特開2007−267185号公報
【特許文献4】特開2002−16417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情のもとで、肉眼では認識できないほどの線幅が狭い配線回路を密着性よく形成してなる、カールの発生が少なく、かつ意匠性の高い自動車用アンテナシートなどに用いる配線回路部材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、耐熱性支持基材の少なくとも一方の面に、特定の範囲の粒子径を有する導電性金属系粒子を含む分散液をインクジェット記録方式で印刷し、焼成することにより形成された、ある値以下の幅をもつ配線からなる配線回路を有する配線回路部材により、その目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1]耐熱性支持基材の少なくとも一方の面に、平均粒子径1〜100nmの導電性金属系粒子を含む分散液をインクジェット記録方式で印刷し、焼成することにより形成された幅200μm以下の配線からなる配線回路を有することを特徴とする配線回路部材、
[2]耐熱性支持基材が、JIS K 7206に準じて測定されるビカット軟化温度150℃以上のプラスチックシートである上記[1]項に記載の配線回路部材、
[3]プラスチックシートが、全光線透過率70%以上の透明プラスチックシートである上記[2]項に記載の配線回路部材、
[4]幅200μm以下の配線の厚さが0.1〜10μmである上記[1]〜[3]項のいずれかに記載の配線回路部材、
[5]焼成温度が130〜250℃である上記[1]〜[4]項のいずれかに記載の配線回路部材、
[6]導電性金属系粒子が、金、銀、銅及び錫ドープ酸化インジウム(ITO)粒子の中から選ばれる少なくとも1種である上記[1]〜[5]項のいずれかに記載の配線回路部材、
[7]耐熱性支持基材が、ポリエチレンテレフタレートシート又はポリエチレンナフタレートシートである上記[2]〜[6]項のいずれかに記載の配線回路部材、
[8]耐熱性支持基材の配線回路が形成される面にプライマー層が形成されてなる上記[1]〜[7]項のいずれかに記載の配線回路部材、
[9]少なくとも片面に粘着剤層を有する上記[1]〜[8]項のいずれかに記載の配線回路部材、及び
[10]自動車窓ガラスの内側面に貼付される自動車用アンテナシートとして用いる上記[1]〜[9]項のいずれかに記載の配線回路部材、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、肉眼では認識できないほどの線幅が狭い配線回路を密着性よく形成してなる、カールの発生が少なく、かつ意匠性の高い配線回路部材を提供することができる。この配線回路部材は、特に自動車用アンテナシートとして好適に用いられる。
前記配線回路は、導電性金属系粒子を含む分散液を用いてインクジェット記録方式で印刷し、焼成することにより形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の配線回路部材は、耐熱性支持基材の少なくとも一方の面に、平均粒子径1〜100nmの導電性金属系粒子を含む分散液をインクジェット記録方式で印刷し、焼成することにより形成された幅200μm以下の配線からなる配線回路を有することを特徴とする。
[耐熱性支持基材]
本発明の配線回路部材における支持基材としては、後述のようにインクジェット記録方式で印刷し、焼成して配線回路を形成する際、この焼成温度に耐えて、カールなどの発生が抑制される耐熱性を有するものが用いられる。
当該耐熱性支持基材としては、JIS K 7206に準じて測定されるビカット軟化温度が150℃以上のプラスチックシートを用いることが好ましい。
<ビカット軟化温度(JIS K 7206)>
加熱装置中に、規定された寸法の試験片を据え、中央部に直径1mmの針をのせ、針の上部に10Nの荷重を加えた状態で加熱装置の温度を(50±5℃)/hの速度で昇温し、針が1mm侵入した時の温度をビカット軟化温度(Vicat Softening Temperature、VST)とする。
また、本発明の配線回路部材を自動車用アンテナシートなどとして用いる場合には、該配線回路部材が自動車の窓ガラスに貼着されるので、窓ガラスの視認性を得るために透明性を有するものが用いられる。本発明においては、耐熱性支持基材として、全光線透過率70%以上の透明プラスチックシートを用いることが好ましい。
なお、全光線透過率は、JIS K7361−1に準拠して測定することができる。
【0009】
このような耐熱性及び透明性を有する支持基材としては、例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂などのプラスチックシートを用いることができ、インクジェット記録方式で印刷後の焼成処理における温度に応じて適宜選択すればよい。このプラスチックシートは、前記焼成処理時のカール発生などを抑制するためにアニール処理したものを用いることができる。また、耐候性を有するものが好ましく、したがって、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤などを含有させたものが好ましい。
このプラスチックシートの厚さに特に制限はないが、通常38〜250μm程度、好ましくは75〜200μmである。
また、このプラスチックシートは、後述のようにインクジェット記録方式により、その表面に設けられる印刷層との密着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法はプラスチックシートの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。
また、前記密着性を向上させる目的で、プラスチックシートの片面又は両面に、直接にプライマー層を設けてもよいし、前記表面処理を施した面にプライマー層を設けてもよい。このプライマー層を構成するプライマーとしては、例えばアクリル系、ウレタン系、ポリエステル系などを用いることができる。プライマー層の厚さは、通常0.05〜0.3μm程度、好ましくは0.01〜0.2μmである。
【0010】
[導電性金属系粒子を含む分散液]
本発明の配線回路部材においては、前記耐熱性支持基材の少なくとも一方の面に、導電性金属系粒子を含む配線回路が形成されているが、配線回路は、導電性金属系粒子及び所望により分散剤を含む分散液を用いてインクジェット記録方式で印刷し、焼成することにより形成することができる。
(導電性金属系粒子)
当該分散液に含まれる導電性金属系粒子としては、導電性を有する金属系粒子であればよく、特に制限されず、例えば金、銀、銅、パラジウム、錫などの金属粒子、錫ドープ酸化インジウム(ITO)やアンチモンドープ酸化錫(ATO)などの金属酸化物粒子などを挙げることができる。これらの導電性金属系粒子は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの導電性金属系粒子の中では、性能の観点から、金、銀、銅及びITO粒子が好ましい。
当該導電性金属系粒子の平均粒子径は、1〜100nmであることを要する。平均粒子径が上記の範囲にあれば、インクジェット記録方式で印刷することができるとともに、比抵抗の小さい配線回路を得ることができる。また、粒子径がこのように小さいことにより、その融点よりも低い温度で焼結させることができる。好ましい平均粒子径は1〜30nmの範囲である。
なお、前記平均粒子径はレーザ回折・散乱法により測定することができる。
【0011】
(分散剤)
当該分散液に含むことのできる分散剤としては、例えばアルキルアミン、カルボン酸アミド及びアミノカルボン酸塩などの中から選ばれる少なくとも1種を用いることができるが、特に炭素数4〜20、好ましくは8〜18の主骨格をもつアルキルアミンが、分散剤としての性能及び取り扱い性の観点から好ましい。このアルキルアミンとしては、例えばオクチルアミン、ドデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミンなどの第1級アミン、ジドデシルアミン、ジステアリルアミンなどの第2級アミン、ドデシルジメチルアミン、ジドデシルモノメチルアミン、ステアリルジメチルアミンなどの第3級アミンなどを挙げることができる。
カルボン酸アミドやアミノカルボン酸塩としては、例えばステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、オレイン酸ジエタノールアミド、オレイルアミノエチルグリシンなどを挙げることができる。
これらの分散剤の含有量は、前記導電性金属系粒子に対して、通常0.1〜10質量%程度、好ましくは0.2〜7質量%である。前記分散剤が0.1質量%以上であると、導電性金属系粒子が凝集しにくく、分散安定性が良好となり、また10質量%以下であれば、分散液が適度の粘度を有し、インクジェット記録方式用として用いることができる。
【0012】
(分散液の性状)
当該分散液は、水系、有機溶媒系のいずれであってもよく、また、溶媒としては、例えば炭素数5〜20の非極性炭化水素溶媒、あるいは水や、炭素数15以下のアルコール系溶媒などを用いることができる。
当該分散液は、インクジェット記録方式に用いられるため、その粘度は、室温(23℃)にて、1〜100mPa・sであることが好ましく、1〜20mPa・sであることがより好ましい。また、導電性金属系粒子の濃度は、通常30〜80質量%程度、好ましくは40〜70質量%である。
このような性状を有する分散液を用い、インクジェット記録方式で、前述した支持基材の表面に印刷し、焼成することにより、導電性ペーストを用いるスクリーン印刷方式と異なり、幅の狭い配線回路を容易に形成することができる。
【0013】
[配線回路]
本発明の配線回路部材において、耐熱性支持基材の少なくとも一方の面に形成される配線回路は、線幅が200μm以下である。
当該配線回路の線幅が200μmを超えると肉眼で認識し得るようになり、意匠性が低下する。好ましい幅は100μm以下、より好ましくは50μm以下である。その下限については、配線回路としての機能を発揮し得るのであれば特に制限はないが、通常10μm程度である。また、当該配線の厚さは、所望の比抵抗によって適宜選定されるが、通常0.1〜10μm程度である。
【0014】
前記分散液中の導電性金属系粒子は、その表面に分散剤からなる被覆層を有し、粒子同士が凝集することなく、均質に分散している。したがって、本発明においては、この分散液をインクジェット記録方式により、耐熱性支持基材上に印刷したのち、焼成処理を行うことで、分散剤を除去するとともに、導電性金属系粒子同士を融合・融着させて、比抵抗の小さい配線回路を形成することができる。
焼成処理は、通常130〜250℃の範囲の温度の中から、分散剤の種類や導電性金属系粒子の被覆状態などに応じて、適宜選定することができる。この際、耐熱性支持基材としては、この焼成処理における温度に耐える耐熱性を有する基材を選択することが肝要であり、これによりカールの発生などを抑制することができる。
焼成時間は、焼成温度などにより左右され、一概に決めることはできないが、通常15〜180分間程度、好ましくは20〜120分間程度である。
このようにして形成された配線回路の比抵抗は、使用した導電性金属系粒子の種類にもよるが、通常1〜20μΩ・cm程度、好ましくは2〜10μΩ・cm、より好ましくは3〜8μΩ・cmである。
【0015】
(保護層)
本発明の配線回路部材においては、耐熱性支持基材の配線回路が形成された側の表面に、耐傷付き性、配線回路の耐剥離性、耐汚染性など付与するために、必要に応じ、保護層としてクリア樹脂層を設けることができる。このクリア樹脂層を形成する材料は、透明なラミネート材であればよく、特に制限されず、例えばアクリル樹脂、アイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、活性エネルギー線硬化樹脂などを用いることができる。当該保護層の厚さは、通常0.1〜10μm程度である。
【0016】
[粘着剤層]
本発明の配線回路部材においては、例えば自動車用アンテナシートとして用いる場合には、自動車窓ガラスの内側表面に貼付するための粘着剤層を、一方の面に設けることができる。
本発明の配線回路部材を自動車窓ガラスの内側に貼付するための粘着剤層は、前記配線回路が支持基材の一方の面に設けられている場合は、通常その反対側の面に設けられる。
前記粘着剤層を構成する粘着剤としては特に制限はなく、従来マーキング用粘着シートなどの粘着剤層に慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。例えばアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤及びポリエステル系粘着剤などを用いることができる。これらの粘着剤は、エマルション型、溶剤型、無溶剤型のいずれであってもよい。粘着剤層の厚さは、通常1〜30μm、好ましくは5〜20μm程度である。
前記各種の粘着剤の中では、耐候性などの面から、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0017】
このアクリル系粘着剤を用いて形成された粘着剤層は、重量平均分子量50万〜200万程度、好ましくは70万〜170万のアクリル系樹脂を含み、かつポリイソシアネート化合物などの架橋剤で架橋処理されたアクリル系粘着剤からなる層であることが好適である。また、該粘着剤層には、再剥離性の機能を付与してもよい。重量平均分子量が上記範囲にあれば、粘着力及び保持力のバランスがとれた粘着剤層を形成することができる。
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
このアクリル系粘着剤には、所望により粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、シランカップリング剤、充填剤などを添加することができる。
【0018】
(剥離シート)
本発明においては、前記粘着剤層に剥離シートを貼付することができる。この剥離シートとしては、例えばグラシン紙、コート紙、上質紙などの紙基材、これらの紙基材にポリエチレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルムに、剥離剤を塗布したものなどが挙げられる。剥離剤としては、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系などを用いることができるが、これらの中で、安価で安定した性能が得られるシリコーン系が好ましい。該剥離シートの厚さについては特に制限はないが、通常20〜250μm程度である。
このように粘着剤層に剥離シートを貼付する場合には、該剥離シートの剥離剤層面に粘着剤を塗布して、所定の厚さの粘着剤層を設けたのち、これを配線回路部材の一方の面に貼付し、該粘着剤層を転写し、剥離シートはそのまま貼り付けた状態にしておいてもよい。
【0019】
このようにして得られた本発明の配線回路部材は、肉眼では認識できないほどの線幅が狭い配線回路が密着性よく形成されており、カールの発生が少なく、意匠性の高いものである。
本発明の配線回路部材は、自動車用アンテナシートとして好適であり、ラジオ電波やテレビ電波などの電波受信用として、自動車の窓ガラス、特にフロントガラスの内側面に、貼付することができる。
【実施例】
【0020】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
耐熱性透明基材シートとして、厚さ125μmのポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム[帝人デュポンフィルム社製、商品名「テオネックスQ65FA」、ビカット軟化温度190℃、全光線透過率87%、JIS C 2151にもとづく200℃、10分後の寸法変化率が0.1%]の片面に、銀インク[アルバックマテリアル社製、商品名「S−Agナノメタルインク」高温焼成タイプ、銀粒子の平均粒径4nm、23℃粘度10mPa・s]を、インクジェットプリンタ[アルバック社製、機種名「ID225D」]により印刷し、200℃で2時間焼成処理して、線幅30μm、厚さ1.5μmのアンテナ配線回路を形成することにより、アンテナシートを作製した。
このアンテナシートについて、意匠性、環境への影響及び比抵抗を、下記に示す方法に従って評価した。その結果を第1表に示す。
(1)意匠性
上記アンテナシートを、自動車フロントガラスに用いる合わせガラスに貼付し、70cm離れた場所から屋外の景色を背景として目視観察し、下記の判定基準で評価した。
○:アンテナ配線の存在を認識できない。
△:アンテナ配線がやや見える。
×:アンテナ配線の存在が明瞭に確認できる。
(2)環境への影響
環境への影響については、銅廃材などが発生しない場合を○、発生する場合を×とした。
(3)アンテナ配線部の比抵抗
日置電機社製の低抵抗計「3541」を用い四端子法により、配線回路部の比抵抗を測定した。
【0021】
実施例2
実施例1において、アンテナ配線の線幅を100μmとした以外は、実施例1と同様な操作を行い、アンテナシートを作製し、このアンテナシートについて、実施例1と同様にして評価を行った。その結果を第1表に示す。
比較例1
実施例1において、アンテナ配線の線幅を300μmとした以外は、実施例1と同様な操作を行い、アンテナシートを作製し、このアンテナシートについて、実施例1と同様にして評価を行った。その結果を第1表に示す。
比較例2
厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム[東レ社製、商品名「ルミラー T−60」]の片面に厚さ10μmの銅箔を貼り合せたのち、アンテナとして使用する部分以外は、電解銅箔処理により、不要な銅を溶かすことにより、線幅300μmのアンテナ配線回路を形成することによりアンテナシートを作製し、実施例1と同様にして評価を行った。その結果を第1表に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
実施例3
耐熱性透明基材シートとして、厚さ125μmのPENフィルム「テオネックスQ65FA」(前出)を一辺10cm角の正方形状に裁断したものを用い、その片面に、銀インク「S−Agナノメタルインク」(前出)を、インクジェットプリンタ「ID225D」(前出)により印刷し、200℃で2時間焼成処理して、線幅30μmのアンテナ配線を形成することにより、アンテナシートを作製した。
このアンテナシートについて、密着性及びカールを下記に示す方法に従って評価した。
(1)密着性
ニチバン社製セロハンテープ「CT24」をアンテナ配線に密着させた後、剥離し、アンテナ配線が剥がれなかった場合を○、アンテナ配線が剥がれた場合を×と評価した。
(2)カール
アンテナシートを水平な台の上に置き、シートの端部が持ち上がっていない場合を○、シートの端部が持ち上がってカールしている場合を×として評価した。
その結果、密着性及びカールは、いずれも○であった。
なお、耐熱性透明基材シートとして、PENフィルム「テオネックスQ65FA」の代わりに、厚さ125μmのPENフィルム[帝人デュポンフィルム社製、商品名「テオネックスQ51」、JIS C 2151にもとづく200℃、10分後の寸法変化率が0.8%]を用いた以外は、同様の操作及び評価を行ったところ、密着性は○であったが、カールは×であった。
【0024】
実施例4
耐熱性透明基材シートとして、厚さ125μmのPENフィルム「テオネックスQ51」(前出)の両面に、プライマー層を形成した「テオネックスQ51DW」を用いた。このPENフィルムを、一辺10cm角の正方形状に裁断し、そのプライマー層面に、銀インク[アルバックマテリアル社製、商品名「L−Agナノメタルインク」低温焼成タイプ、銀粒子の平均粒径4nm、23℃粘度10mPa・s]を、インクジェットプリンタ「ID225D」(前出)により印刷し、150℃で2時間焼成処理して、線幅30μm、厚さ1.5μmのアンテナ配線を形成することにより、アンテナシートを作製した。
このアンテナシートについて、密着性及びカールを評価したところ、いずれも○であった。
なお、耐熱性透明基材シートとして、プライマー層を設けていない厚さ125μmのPENフィルム「テオネックスQ51」を用いた以外は、同様の操作及び評価を行ったところ、カールは○であったが、密着性は×であった。
以上、実施例3及び実施例4の結果から、焼成温度が高い方がアンテナ配線の密着性がよく、耐熱性透明基材シートの寸法変化率が小さい方がカールがないことがわかる。また導電性インクの種類や焼成温度などに応じて、アンテナ配線の密着性を高めるために、プライマー層を設けるのが有利であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の配線回路部材は、肉眼では認識できないほどの線幅が狭い配線回路が密着性よく形成され、しかもカールの発生が少なく、意匠性の高いものであり、自動車用アンテナシートなどとして好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性支持基材の少なくとも一方の面に、平均粒子径1〜100nmの導電性金属系粒子を含む分散液をインクジェット記録方式で印刷し、焼成することにより形成された幅200μm以下の配線からなる配線回路を有することを特徴とする配線回路部材。
【請求項2】
耐熱性支持基材が、JIS K 7206に準じて測定されるビカット軟化温度150℃以上のプラスチックシートである請求項1に記載の配線回路部材。
【請求項3】
プラスチックシートが、全光線透過率70%以上の透明プラスチックシートである請求項2に記載の配線回路部材。
【請求項4】
幅200μm以下の配線の厚さが0.1〜10μmである請求項1〜3のいずれかに記載の配線回路部材。
【請求項5】
焼成温度が130〜250℃である請求項1〜4のいずれかに記載の配線回路部材。
【請求項6】
導電性金属系粒子が、金、銀、銅及び錫ドープ酸化インジウム(ITO)粒子の中から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5のいずれかに記載の配線回路部材。
【請求項7】
耐熱性支持基材が、ポリエチレンテレフタレートシート又はポリエチレンナフタレートシートである請求項2〜6のいずれかに記載の配線回路部材。
【請求項8】
耐熱性支持基材の配線回路が形成される面にプライマー層が形成されてなる請求項1〜7のいずれかに記載の配線回路部材。
【請求項9】
少なくとも片面に粘着剤層を有する請求項1〜8のいずれかに記載の配線回路部材。
【請求項10】
自動車窓ガラスの内側面に貼付される自動車用アンテナシートとして用いる請求項1〜9のいずれかに記載の配線回路部材。

【公開番号】特開2010−182871(P2010−182871A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24937(P2009−24937)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】